タイトル: | 公表特許公報(A)_アシルCoA:リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼおよびリン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼの同時発現による多価不飽和脂肪酸の産生の改善 |
出願番号: | 2015518454 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C12N 1/19,C12P 7/64,C12N 9/10,C12N 15/09,C12N 1/21,C12N 1/13 |
マイケル・ダブル・ボスティック ナレンドラ・エス・ヤーダヴ ホンシアン・チャン クイン・クン・チュー JP 2015519920 公表特許公報(A) 20150716 2015518454 20130613 アシルCoA:リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼおよびリン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼの同時発現による多価不飽和脂肪酸の産生の改善 イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー 390023674 E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY 結田 純次 100127926 竹林 則幸 100140132 マイケル・ダブル・ボスティック ナレンドラ・エス・ヤーダヴ ホンシアン・チャン クイン・クン・チュー US 61/661,615 20120619 US 61/661,623 20120619 C12N 1/19 20060101AFI20150619BHJP C12P 7/64 20060101ALI20150619BHJP C12N 9/10 20060101ALI20150619BHJP C12N 15/09 20060101ALI20150619BHJP C12N 1/21 20060101ALI20150619BHJP C12N 1/13 20060101ALI20150619BHJP JPC12N1/19C12P7/64C12N9/10C12N15/00 AC12N1/21C12N1/13 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC US2013045592 20130613 WO2013192002 20131227 97 20150209 4B024 4B050 4B064 4B065 4B024AA17 4B024BA10 4B024CA04 4B024CA20 4B024EA04 4B024FA17 4B024GA11 4B050CC04 4B050CC08 4B050DD04 4B050LL05 4B064AD85 4B064CA06 4B064CA19 4B064DA16 4B065AA72X 4B065AB01 4B065BA01 4B065CA13 本出願は、両方とも参照により全体として本明細書に援用されるそれぞれ2012年6月19日に出願された米国仮特許出願第61/661,615号明細書および米国仮特許出願第61/661,623号明細書の利益を主張する。 本発明は、バイオテクノロジーの分野におけるものである。より具体的には、本発明は、組換え微生物細胞中での長鎖多価不飽和脂肪酸[「PUFA」]の産生を改善する手段としてのアシルCoA:リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列およびリン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列の両方の過剰発現に関する。 生体膜の主な構成要素であるグリセロリン脂質は、sn−1位およびsn−2位においてR基として付着している脂肪酸と、sn−3位においてホスホジエステル結合を介して結合している極性頭部基とを有するグリセロールコアを含有する。規定の極性頭部基は、特定のグリセロリン脂質に与えられる名称を決定する(例えば、コリン頭部基は、ホスファチジルコリンをもたらす)。グリセロリン脂質は、様々なホスホリル頭部基から生じるだけでなく、その脂肪酸の種々の鎖長および飽和度の結果としての著しい多様性を有する。一般に、飽和および一価不飽和脂肪酸はsn−1位においてエステル化される一方、多価不飽和脂肪酸はsn−2位においてエステル化される。 グリセロリン脂質生合成は、特許文献1にまとめられており、種々のアシルトランスフェラーゼ、例としてグリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)[E.C.2.3.1.15]、アシルCoA:リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)[E.C.2.3.1.51]、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)[E.C.2.3.1.20]およびリン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)[E.C.2.3.1.158]を要求する。 これらのデノボ合成後、グリセロリン脂質は、sn−2位において脂肪酸アシル組成の急速な代謝回転を受け得る。この「リモデリング」または「アシルエディティング」は、膜構造および機能、ストレス条件に対する生物学的応答ならびにバイオテクノロジー的応用における脂肪酸組成および量の操作に重要である。具体的には、リモデリングは、グリセロリン脂質の脱アシル化および再アシル化の組合せに起因する。例えば、Landsサイクル(非特許文献1)において、リモデリングは、1)ホスファチジルコリンのsn−2位から脂肪酸を放出するホスホリパーゼ、例えばホスホリパーゼA2および;2)sn−2位においてリゾホスファチジルコリン[「LPC」]を再アシル化する(それにより、細胞アシルCoAプールからアシルCoA脂肪酸を除去し、リン脂質プール中のsn−2位においてリゾリン脂質基質をアシル化する)アシルCoA:リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ[「LPLAT」]、例えばアシルCoA:リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ[「LPCAT」]の協調的作用を介して生じる。リモデリングは、可逆的LPCAT活性にも起因する(非特許文献2)。 脂肪酸生合成はアシルCoAプールとリン脂質プールとの間のアシル基の急速な交換を要求するため、多価不飽和脂肪酸[「PUFA」]産生に対するLPCAT(およびLPCAT活性を有する他のLPLAT)の効果が企図されている。具体的には、不飽和化が主にリン脂質のsn−2位中で生じる一方、伸長がアシルCoAプール中で生じる。より具体的には、特許文献2は、アシルトランスフェラーゼ、例としてPDATおよびLPCATが、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のTAG画分中でのPUFA(例えば、エイコサペンタエン酸[「EPA」]、20:5 ω−3)の蓄積において重要であり得ることを仮定した。この文献に記載のとおり、この仮定は、以下の研究に基づくものであった:1)非特許文献2、アシルCoAプールとPCプールとの間の交換がLPCATの正および逆反応に起因し得ることを仮定した;2)非特許文献3、酵母中でのホスファチジルコリン[「PC」]のsn−2位におけるγ−リノレン酸[「GLA」]の蓄積およびアラキドン酸[「ARA」](20:4 ω−6)の効率的な合成不能が、アシルCoAプール内で生じるPUFA生合成に関与する伸長ステップの結果である一方、Δ5およびΔ6不飽和化ステップが主にPCのsn−2位において生じることを示唆した;3)非特許文献4、トランスジェニック油糧種子植物中でのPUFA蓄積の制約の分析に基づきLPCATがΔ6デサチュラーゼ/Δ6エロンガーゼ経路の良好な再構成において重要な役割を担うことを示唆した;および4)特許文献3、Δ6伸長に好適な外因性脂肪酸基質をフィードされたS.セレビシエ(S.cerevisiae)中で遺伝子導入されたΔ6デサチュラーゼ/Δ6エロンガーゼ経路における伸長の効率を実質的に改善したカエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)(T06E8.1)からのLPCATをコードする遺伝子を提供した。Renzらは、デサチュラーゼがPC結合脂肪酸中の二重結合の導入を触媒する一方、エロンガーゼがCoAエステル化脂肪酸(アシルCoA)の伸長を単独で触媒するため、LPCATがリン脂質とアシルCoAプールとの間で新たに合成された脂肪酸の効率的および継続的交換を可能とすることを結論づけた。 特許文献1は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のTAG画分中のLPCATがEPAおよびドコサヘキサエン酸[「DHA」](22:6 ω−3)の蓄積において実際に重要であるさらなる支持を提供した。LPCATの過剰発現は、Δ9エロンガーゼ変換効率および/またはΔ4デサチュラーゼ変換効率の改善をもたらし得ることが見出された(変換効率は、特定の酵素が基質を産物に変換し得る効率を指す用語である)。したがって、EPAを産生するように遺伝子操作された株において、Δ9エロンガーゼ変換効率の改善は、増加したEPA%TFAまたはEPA%DCWをもたらすことが実証された。同様に、DHAを産生するように遺伝子操作された株におけるΔ9エロンガーゼおよび/またはΔ4デサチュラーゼ変換効率の改善は、増加したDHA%TFAまたはDHA%DCWをもたらすことが実証された。 多数の他の参照文献は、一般に、トランスジェニック生物の油中の所望の脂肪酸の量を増加させ、総油含有量を増加させ、または所望の脂肪酸の含有量を選択的に増加させるためのLPLAT生合成遺伝子とPUFA生合成遺伝子の同時発現の利益を記載している(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8)。しかしながら、これらの参照文献は、LPCATおよびリン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)が両方とも過剰発現される場合にLC−PUFAの高レベル産生について遺伝子操作された生物において達成された利益を記載していない。PDATは、リン脂質(例えば、ホスファチジルコリン)のsn−2位から脂肪酸アシル基を1,2−ジアシルグリセロールのsn−3位に転移してアシルCoA非依存性機序を介してリゾリン脂質およびTAGを産生することを担う酵素である。 さらに、刊行物および特許文献の両方におけるLPCAT内の種々の保存膜結合O−アシルトランスフェラーゼ[「MBOAT」]ファミリータンパク質モチーフ配列の報告にかかわらず、それらのモチーフ内の規定の突然変異に関する詳細な調査はこれまで実施されていない。米国特許出願公開第2010−0317882−A1号明細書米国特許第7,932,077号明細書国際公開第2004/076617A2号パンフレット(Renzら)国際公開第2004/087902号パンフレット国際公開第2006/069936号パンフレット国際公開第2006/052870号パンフレット国際公開第2009/001315号パンフレット国際公開第2009/014140号パンフレットLands,J.Biol.Chem.,231:883−888(1958)Stymne and Stobart(Biochem J.,223(2):305−314(1984)Domergueら(J.Biol.Chem.,278:35115−35126(2003))Abbadiら(The Plant Cell,16:2734−2748(2004)) 一実施形態において、本発明は、少なくとも1つの長鎖多価不飽和脂肪酸(PUFA)の産生のための組換え微生物細胞に関する。組換え微生物細胞は、(a)アシルCoA:リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)活性を有する少なくとも1つのポリペプチド;(b)リン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)活性を有する少なくとも1つのポリペプチド;および(c)少なくとも1つの長鎖多価不飽和脂肪酸を産生し得る多価不飽和脂肪酸生合成経路を含み;(a)および(b)のポリペプチドは、組換え微生物細胞中で過剰発現される。組換え微生物細胞は、対照細胞中の総脂肪酸の重量パーセントとして計測されるPUFAの量と比較して増加量の、総脂肪酸の重量パーセントとして計測されるPUFAも含む。 第2の実施形態において、組換え微生物細胞は、以下:(i)対照細胞のC18からC20への伸長変換効率に対して増加したC18からC20への伸長変換効率または(ii)対照細胞中の乾燥細胞重量の重量パーセントとして計測される総脂肪酸の量と比較して増加量の、乾燥細胞重量の重量パーセントとして計測される総脂肪酸の少なくとも1つをさらに含む。 好ましくは、増加したC18からC20への伸長変換効率は、組換え微生物細胞中の増加したΔ9エロンガーゼ変換効率または増加したΔ6エロンガーゼ変換効率の効果である。 第3の実施形態において、PDAT活性を有するポリペプチドは、Clustal Wアラインメント法に基づき配列番号32(YlPDAT)および配列番号30(ScPDAT)からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して少なくとも90%または95%のアミノ酸同一性を有する。 第4の実施形態において、LPCAT活性を有するポリペプチドは、以下のものからなる群から選択される:(a)Clustal Wアラインメント法に基づき配列番号2(ScLPCAT)および配列番号4(YlLPCAT)からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して少なくとも45%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;(b)以下のものからなる群から選択される少なくとも1つの膜結合O−アシルトランスフェラーゼタンパク質ファミリーモチーフを含むポリペプチド:配列番号5(WHG−X3−GY−X3−F)、配列番号6(Y−X4−F)、配列番号7(Y−X3−YF−X2−H)、配列番号8(M−[V/I]−[L/I]−X2−K−[L/V/I]−X8−DG)、配列番号9(RxKYY−X2−W−X3−[E/D]−[A/G]−X5−GxG−[F/Y]−xG)、配列番号10(EX11WN−X2−[T/V]−X2−W)、配列番号11(SAxWHG−X2−PGY−X2−[T/F]−F)、配列番号12(M−[V/I]−[L/I/V]−[V/C/A/T]−[M/L/Q]−K−[L/V/I/M]−[S/T/Y/I]−[S/T/A/M/G]−[F/L/C/Y]−[C/A/G/S]−[W/Y/M/I/F/C]−[N/S/E/Q/D]−[V/Y/L/I]−[H/Y/A/N/S/T]−DG)、配列番号13(R−[L/M/F/W/P/Y]−KYY−[G/A/F/H/S]−[V/A/I/C]−W−[Y/E/T/M/S/L]−[L/I/N]−[T/S/A]−[E/D]−[G/A]−[A/S/I/V]−[C/S/I/N/H/L]−[V/I/N]−[L/I/N/A/C]−[S/C/W/A/I]−G−[M/I/L/A/F]−G−[Y/F]−[N/E/S/T/R/K]−G)、配列番号14(E−[T/F/L/M]−[A/S]−[Q/D/P/K/T]−[N/S]−[S/I/T/L/A/M/F]−[H/K/R/V]−[G/C/E/T/Q/D/M]−[Y/A/M/L/I/F]−[L/S/P/I]−[G/E/A/L/N/D]−[S/A/V/F/M/N]−WN−[K/M/I/C]−[N/K/Q/G]−[T/V]−[N/A/S]−[H/K/N/T/R/L]−W)、配列番号15(SA−[F/M/V/I]−WHG−[F/V/T/L]−[Y/S/R]−PGY−[Y/M/I]−[L/M/I/F]−[T/F]−F)、配列番号16(M−[V/I]−L−X2−KL)、配列番号17(RxKYY−X2−W)および配列番号18(SAxWHG);(c)以下のものからなる群から選択される少なくとも1つの突然変異膜結合O−アシルトランスフェラーゼタンパク質ファミリーモチーフを含むポリペプチド:(i)配列番号38に記載のアミノ酸配列を含む突然変異モチーフ(配列番号38は、配列番号16(M−[V/I]−L−X2−KL)と、V2C、I2C、L3A、L3C、L3G、K6H、K6G、K6N、K6Y、L7A、L7N、L7G、L7H、L7IおよびL7Mからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なる);(ii)配列番号39に記載のアミノ酸配列を含む突然変異モチーフ(配列番号39は、配列番号8(M−[V/I]−[L/I]−X2−K−[L/V/I]−X8−DG)と、V2C、I2C、L3A、L3C、L3G、I3A、I3C、I3G、K6H、K6G、K6N、K6Y、L7A、L7N、L7G、L7H、L7M、V7A、V7N、V7G、V7H、V7M、I7A、I7N、I7G、I7H、I7M、D16Q、D16N、D16H、G17A、G17VおよびG17Nからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なる);(iii)配列番号40に記載のアミノ酸配列を含む突然変異モチーフ(配列番号40は、配列番号5(WHG−X3−GY−X3−F)と、F12N、F12C、F12GおよびF12Tからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なる);ならびに(iv)配列番号41に記載のアミノ酸配列を含む突然変異モチーフ(配列番号41は、配列番号11(SAxWHG−X2−PGY−X2−[T/F]−F)と、T14A、T14C、T14S、F14A、F14C、F14S、F15N、F15C、F15GおよびF15Tからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なる);(d)Clustal Wアラインメント法に基づき配列番号21(MaLPAAT1)、配列番号23(YlLPAAT1)および配列番号24(ScLPAAT)からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して少なくとも43.9%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;ならびに(e)配列番号25(NHxxxxD)および配列番号26(EGTR)からなる群から選択される少なくとも1つの1−アシル−sn−グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼファミリーモチーフを含むポリペプチド。 第5の実施形態において、長鎖PUFAは、エイコサジエン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサテトラエン酸、ω−6ドコサペンタエン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ω−3ドコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される。好ましくは、PUFAはエイコサペンタエン酸である。 第6の実施形態において、組換え微生物細胞は、藻類、酵母、ユーグレナ、ストラメノパイル、卵菌および真菌からなる群から選択される。好ましくは、組換え微生物細胞は、油性酵母である。油性酵母は、ヤロウイア属(Yarrowia)のものであり得る。 本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの長鎖PUFAの産生を改善する方法に関する。この方法は、(a)本発明の組換え微生物細胞を発酵性炭素源の存在下で生育させること;および(b)場合により、長鎖PUFAを回収することを含む。 本方法の一態様において、組換え微生物細胞は、油性酵母であり、長鎖PUFAは、エイコサジエン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサテトラエン酸、ω−6ドコサペンタエン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ω−3ドコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される。好ましくは、PUFAは、エイコサペンタエン酸である。本方法の別の態様において、油性酵母は、ヤロウイア属(Yarrowia)のものである。PDATによるホスファチジルコリン(PC)基質使用およびLPCATによる再生のサイクルを説明する。PC1およびPC2は、リゾホスファチジルコリン(LPC)を生じさせるためにPDATによりPC1から除去される脂肪酸が、PC2を生じさせるLPCATによりLPCに付加される脂肪酸と異なり得るという点で異なり得る。ω−3/ω−6脂肪酸生合成経路を説明し、この経路の説明を考慮する場合に一緒に参照すべきである。以下の(A)pY196および(B)pY301についてのプラスミドマップを提供する。pY306−Nについてのプラスミドマップを提供する。 本発明は、以下の詳細な説明および本出願の一部を形成する付属の配列の説明(表1)からより十分に理解することができる。発明の詳細な説明 本明細書に引用される全ての特許、特許出願および刊行物は、参照により全体として本明細書に援用される。 量、濃度または他の値もしくはパラメータが範囲、好ましい範囲または好ましい上方値および好ましい下方値の列挙のいずれかとして挙げられる場合、これは、範囲が別個に開示されているかどうかにかかわらず、任意の範囲上限または好ましい上方値と、任意の範囲下限または好ましい下方値との任意のペアから形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解すべきである。本明細書において数値の範囲が引用されている場合、特に別記しない限り、この範囲は、その終点および範囲内の全ての整数および分数を含むものとする。本発明の範囲は、範囲を定義する場合において引用される規定の値に限定されるものではない。 本明細書において使用される用語「発明」または「本発明」は、特許請求の範囲および本明細書に記載の本発明の全ての態様および実施形態を指すものとし、いかなる特定の実施形態または態様にも限定されるものと読まれるべきではない。 本開示において、多数の用語および略語が使用される。アミノ酸は、参照により本明細書に援用されるNucleic Acids Research,13:3021−3030(1985)およびBiochemical Journal,219(2):345−373(1984)に記載のIUPAC−IYUB規格に準拠するアミノ酸についての一文字コードまたは三文字コードのいずれかにより同定される。 「オープンリーディングフレーム」は「ORF」と略される。 「ポリメラーゼ連鎖反応」は「PCR」と略される。 「American Type Culture Collection」は「ATCC」と略される。 「多価不飽和脂肪酸」は「PUFA」と略される。 「長鎖多価不飽和脂肪酸」は「LC−PUFA」と略される。 「トリアシルグリセロール」は「TAG」と略される。 「総脂肪酸」は「TFA」と略される。 「脂肪酸メチルエステル」は「FAME」と略される。 「乾燥細胞重量」は「DCW」と略される。 「アシルCoA:リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ」または「リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ」は「LPLAT」と略される。 「リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ」は「LPCAT」と略される。 「膜結合O−アシルトランスフェラーゼ」は「MBOAT」と略される。 「リン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ」は「PDAT」と略される。 用語「グリセロリン脂質」は、sn−1位およびsn−2位における脂肪酸と、sn−3位においてホスホジエステル結合を介して結合している極性頭部基(例えば、リン酸、コリン、エタノールアミン、グリセロール、イノシトール、セリン、カルジオリピン)とを有するグリセロールコアを有する幅広い分子クラスを指す。したがって、グリセロリン脂質としては、ホスファチジルコリン[「PC」]、ホスファチジルエタノールアミン[「PE」]、ホスファチジルグリセロール[「PG」]、ホスファチジルイノシトール[「PI」]、ホスファチジルセリン[「PS」]およびカルジオリピン[「CL」]が挙げられる。 「リゾリン脂質」は、グリセロリン脂質からsn−2位の脱アシル化により誘導される。リゾリン脂質としては、例えば、リゾホスファチジン酸[「LPA」]、リゾホスファチジルコリン[「LPC」]、リゾホスファチジルエタノールアミン[「LPE」]、リゾホスファチジルセリン[「LPS」]、リゾホスファチジルグリセロール[「LPG」]およびリゾホスファチジルイノシトール[「LPI」]が挙げられる。 用語「アシルトランスフェラーゼ」は、ドナー脂質からのアシル基のアクセプター脂質分子への転移を担う酵素を指す。 用語「アシルCoA:リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ」または「リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ」[「LPLAT」]は、sn−2位において種々のリゾリン脂質基質をアシル化する能力を有する幅広いアシルトランスフェラーゼクラスを指す。種々のLPLAT、例としてLPAAT(LPAのPAへの変換を触媒する)、LPEAT(LPEのPEへの変換を触媒する)、LPSAT(LPSのPSへの変換を触媒する)、LPGAT(LPGのPGへの変換を触媒する)およびLPIAT(LPIのPIへの変換を触媒する)が同定されている。LPCアシルトランスフェラーゼ[「LPCAT」]は、本出願の焦点であり、LPCのPCへの変換を触媒する能力を有する。LPLAT命名法の標準化は正式には行われていないため、当技術分野においては他の種々の命名が使用される(例えば、LPCATは、アシルCoA:1−アシルリゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼと称されることが多い)。さらに、一部のLPLAT、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Ale1(ORF YOR175C;配列番号2)が幅広い特異性を有し、したがって単一の酵素が、いくつかのLPLAT反応、例としてLPAAT、LPCATおよびLPEAT反応を触媒し得ることに留意することが重要である(Tamakiら,J.Biol.Chem.,282:34288−34298(2007);Staahlら,FEBS Letters,582:305−309(2008);Chenら,FEBS Letters,581:5511−5516(2007);Benghezalら,J.Biol.Chem.,282:30845−30855(2007);Riekhofら,J.Biol.Chem.,282:28344−28352(2007))。 より具体的には、用語「リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ[「LPCAT」]活性を有するポリペプチド」は、反応:アシルCoA+1−アシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン→CoA+1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンを触媒し得る酵素(EC2.3.1.23)を指す。2つの構造的に区別されるタンパク質ファミリー、すなわちLPAATタンパク質ファミリー(Hishikawaら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,105:2830−2835(2008);国際公開第2004/076617号パンフレット)およびALE1タンパク質ファミリー(Tamakiら,Staahlら,Chenら,Benghezalら,Riekhofら)におけるLPCAT活性について記載されている。 用語「LPCAT」は、1)LPCAT活性を有し(EC2.3.1.23)、Clustal Wアラインメント法に基づき配列番号2(ScAle1)および配列番号4(YlAle1)からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して少なくとも約45%のアミノ酸同一性を共有し;ならびに/または2)LPCAT活性を有し(EC2.3.1.23)、下記の少なくとも1つの膜結合O−アシルトランスフェラーゼ[「MBOAT」]タンパク質ファミリーモチーフを有するALE1タンパク質ファミリーのタンパク質を指す。ALE1ポリペプチドの例としては、ScAle1およびYlLPCATが挙げられる。 用語「ScAle1」は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)から単離されたLPCAT(ORF「YOR175C」)を指す。ScAle1は、配列番号1に記載のヌクレオチド配列によりコードされる配列番号2のアミノ酸配列を有し得る。 用語「YlAle1」または「YlLPCAT」は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)から単離されたLPCATを指す。YlLPCATは、配列番号3に記載のヌクレオチド配列によりコードされる配列番号4のアミノ酸配列を有し得る。 用語「保存ドメイン」または「モチーフ」は、進化的関連性を示すタンパク質のアラインメントされた配列に沿った規定の位置において保存されている一組のアミノ酸を意味する。他の位置におけるアミノ酸は相同タンパク質間で変動し得る一方、規定の位置において高度に保存されているアミノ酸は、タンパク質の構造、安定性または活性に不可欠なアミノ酸を示す可能性が高い。これらのアミノ酸はタンパク質相同体ファミリーのアラインメントされた配列におけるそれらの高い保存度により同定されるため、新たに決定された配列を有するタンパク質が既に同定されているタンパク質ファミリーに属するかどうかを判断するための識別子または「シグネチャ」として使用することができる。 種々の膜結合O−アシルトランスフェラーゼ[「MBOAT」]ファミリーモチーフが提案されてきた。これらのモチーフは、以下の表2にまとめられ、米国特許出願公開第2010−0317882−A1号明細書においてさらに考察される。 用語「少なくとも1つの突然変異膜結合O−アシルトランスフェラーゼ[「MBOAT」]タンパク質ファミリーモチーフを含むLPCAT活性を有する突然変異ポリペプチド」または「少なくとも1つの突然変異MBOATモチーフを含むLPCAT活性を有する突然変異ポリペプチド」は、配列番号5〜18に関する少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む本発明のポリペプチドを指す。 本明細書に開示のMBOATモチーフ中のそれぞれのアミノ酸置換について、最初の文字は、野生型MBOATモチーフ中のアミノ酸に対応し、2番目の文字は、突然変異MBOATモチーフ中の同一位置に見出されるアミノ酸に対応し、例えば配列番号16[M−[V/I]−L−X2−KL]中のL3A突然変異は、配列番号16中の3位におけるLeu[L]からMBOAT突然変異体中のAla[A]への変化を示す。この命名法は、LPCATモチーフおよび本明細書に記載のタンパク質内の突然変異を指すために本明細書全体にわたり使用され;同様の表記は、ヌクレオチド配列内の置換を説明するために使用される(例えば、A9Gは、MBOATモチーフをコードするヌクレオチド配列中の塩基9位におけるアデニン[A]からグアニン[G]への変化を示す)。 好ましくは、少なくとも1つの突然変異MBOATモチーフを含む少なくともLPCAT活性を有する突然変異ポリペプチド(例えば、配列番号5〜8の1つの突然変異形態)は、突然変異ポリペプチド中の突然変異MBOATモチーフの野生型バージョンである少なくとも1つのMBOATモチーフを含むLPCAT活性を有する対照ポリペプチド(例えば、配列番号5〜18の1つ)と比較して同等のまたは改善されたLPCAT活性を有する。 「突然変異」としては、任意の欠失、挿入および点突然変異(またはそれらの組合せ)を挙げることができるが、好ましい実施形態において、少なくとも1つの突然変異MBOATモチーフを含むリゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ[「LPCAT」]活性を有する突然変異LPCATは、配列番号19に記載され、配列番号19は、配列番号4[YlLPCAT]と、少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なり:(a)少なくとも1つのアミノ酸突然変異の1つは、残基133、残基134、残基135、残基136、残基137、残基138、残基139、残基140、残基141、残基142、残基143、残基144、残基145、残基146、残基147、残基148からなる群から選択されるアミノ酸残基中に存在し;(b)少なくとも1つのアミノ酸突然変異の1つは、残基378、残基382、残基383、残基385、残基388、残基389および残基390からなる群から選択されるアミノ酸残基中に存在し;ならびに/または(c)前記少なくとも1つのアミノ酸突然変異は、少なくとも2つのアミノ酸突然変異を含み:(i)第1のアミノ酸突然変異は、区分(a)に記載の群から選択されるアミノ酸残基中に存在し、(ii)第2のアミノ酸突然変異は、区分(b)に記載の群から選択されるアミノ酸残基中に存在する。 用語「LPCAT」は、LPCAT活性(EC2.3.1.23)を有し、他のアシルCoA:リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ活性(例えば、LPAAT活性、LPEAT活性、LPSAT活性、LPGAT活性、LPIAT活性)も有し得るタンパク質も指す。例えば、ポリペプチドは、LPCATおよびLPAAT活性の両方を有し得、したがって従来の文献においてLPAATポリペプチドと分類されているにもかかわらず、本明細書においてLPCATとみなすべきである。これらのLPCATは、LPAATタンパク質の構造的特徴を有し得る。 用語「リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ[「LPAAT」]活性を有するポリペプチド」は、反応:アシルCoA+1−アシル−sn−グリセロール3−リン酸→CoA+1,2−ジアシル−sn−グリセロール3−リン酸を触媒し得る酵素(EC2.3.1.51)を指す。 用語「LPAAT」は、1)LPAAT活性を有し、Clustal Wアラインメント法に基づき配列番号21(MaLPAAT1)、配列番号23(YlLPAAT1)および配列番号24(ScLPAAT1)からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して少なくとも約43.9%のアミノ酸同一性を共有し;ならびに/または2)LPAAT活性を有し、NHxxxxD(配列番号25)およびEGTR(配列番号26)からなる群から選択される少なくとも1つの1−アシル−sn−グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼファミリーモチーフを有するタンパク質を指す。より具体的には、Lewinら(Biochemistry,38:5764−5771(1999))およびYamashitaら(Biochim,Biophys.Acta,1771:1202−1215(2007))は、細菌、酵母、線虫および哺乳動物からの配列のアラインメントに基づき以下の1−アシル−sn−グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼ[「LPAAT」]ファミリーモチーフが、「アシルCoA:リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ」または「リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ」[「LPLAT」]活性に重要であることを提案した:NHxxxxD(配列番号25)、GxxFI−[D/R]−R(配列番号27)、EGTR(配列番号26)および[V/I]−[P/X]−[I/V/L]−[I/V]−P−[V/I](配列番号28)またはIVPIVM(配列番号29)のいずれか。LPAATポリペプチドの例としては、ScLPAAT、MaLPAAT1およびYlLPAAT1が挙げられる。 用語「ScLPAAT」は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)から単離されたLPAAT(例えば、ORF「YDL052C」、配列番号24)を指す。 用語「MaLPAAT1」は、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)から単離されたLPAATを指す。MaLPAAT1は、配列番号20に記載のヌクレオチド配列によりコードされる配列番号21のアミノ酸配列を有し得る。NHxxxxD(配列番号25)およびEGTR(配列番号26)モチーフはMaLPAAT1中に存在するが、他のLPAATモチーフは存在しない。 用語「YlLPAAT1」および「YlLPAAT2」は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)から単離されたLPAATを指す。YlLPAATは、配列番号22に記載のヌクレオチド配列によりコードされる配列番号23のアミノ酸配列を有し得る。NHxxxxD(配列番号25)およびEGTR(配列番号26)モチーフはYlLPAAT1中に存在するが、他のLPAATモチーフは存在しない。 用語「リン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ[「PDAT」]活性を有するポリペプチド」は、リン脂質(例えば、ホスファチジルコリン)のsn−2位から脂肪酸アシル基を1,2−ジアシルグリセロールのsn−3位に転移し得[E.C.2.3.1.158]、したがってリゾリン脂質およびTAGをもたらす酵素を指す。PDATおよびアシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)[E.C.2.3.1.20]の両方がTAG生合成の最終ステップに関与するが、PDATのみがアシルCoA非依存性機序を介してTAGを合成し得る。配列番号30に記載の代表的なPDAT酵素は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)中のLRO1遺伝子によりコードされる(Dahlqvistら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,97:6487(2000))。 用語「YlPDAT」は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)から単離されたPDATを指す。YlPDATは、配列番号31に記載のヌクレオチド配列によりコードされる配列番号32のアミノ酸配列を有し得る(参照により本明細書に援用される米国特許第7,901,928号明細書)。 用語「オルソログ」は、系統樹分析の1つのクレードに存在することにより明らかなとおり共通の祖先タンパク質から進化し、同一の酵素反応を触媒する異なる種からの相同タンパク質を指す。 用語「油」は、25℃において液体であり、通常、多価不飽和の脂質物質を指す。油性生物において、油は総脂質の大部分を構成する。「油」は、主としてトリアシルグリセロール[「TAG」]から構成されるが、他の中性脂質、リン脂質および遊離脂肪酸も含有し得る。油中の脂肪酸組成と総脂質の脂肪酸組成とは一般に類似しており;したがって、総脂質中のPUFA濃度の増加または減少は油中のPUFA濃度の増加または減少に対応し、その逆も同様である。 「中性脂質」は、脂質体の細胞中に蓄積脂肪として一般に見出される脂質を指し、細胞pHにおいて脂質は荷電基を担持しないため、そのように呼ばれる。一般に、中性脂質は完全に非極性であり、水に対する親和性を有さない。中性脂質は、一般に、グリセロールと脂肪酸とのモノ−、ジ−および/またはトリエステルを指し、それぞれモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールもしくはトリアシルグリセロールとも、またはまとめてアシルグリセロールとも称される。アシルグリセロールから遊離脂肪酸を放出させるためには加水分解反応が生じなければならない。 用語「トリアシルグリセロール」[「TAG」]は、グリセロール分子にエステル化された3個の脂肪酸アシル残基から構成される中性脂質を指す。TAGは、LC−PUFAおよび飽和脂肪酸ならびにより短鎖の飽和および不飽和脂肪酸を含有し得る。 本明細書において用語「総脂肪酸」[「TFA」]は、例えばバイオマスまたは油であり得る所与の試料において塩基エステル交換反応法(当技術分野において公知のとおり)により脂肪酸メチルエステル[「FAME」]に誘導体化され得る全ての細胞脂肪酸の合計を指す。したがって、総脂肪酸は、中性脂質画分(ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロールおよびTAGを含む)および極性脂質画分(PCおよびPE画分を含む)からの脂肪酸を含むが、遊離脂肪酸を含まない。 細胞の「総脂質含有率」という用語は、乾燥細胞重量[「DCW」]のパーセントとしてのTFAの尺度であるが、総脂質含有率は、DCWのパーセントとしてのFAMEの尺度[「FAME%DCW」]として近似することができる。したがって、総脂質含有率[「TFA%DCW」]は、例えばDCW100ミリグラム当たりの総脂肪酸のミリグラム数と同等である。総脂質含有率は、油含有率と称することもできる。 総脂質中の脂肪酸の濃度は、本明細書においてTFAの重量パーセント[「%TFA」]、例えばTFA100ミリグラム当たりの所与の脂肪酸のミリグラム数として表現される。本明細書において具体的に別記しない限り、総脂質に対する所与の脂肪酸のパーセントの参照は%TFAとしての脂肪酸の濃度と同等である(例えば、総脂質の%EPAは、EPA%TFAと同等である)。 一部の場合、細胞中の所与の脂肪酸の含有率を、乾燥細胞重量のその重量パーセント[「%DCW」]として表現することが有用である。したがって、例えばEPA%DCWは、以下の式、すなわち(EPA%TFA)*(TFA%DCW)]/100に従って決定することができる。しかしながら、乾燥細胞重量の重量パーセント[「%DCW」]としての細胞中の所与の脂肪酸の含有率は、(EPA%TFA)*(FAME%DCW)]/100として近似することができる。 用語「脂質プロファイル」および「脂質組成」は同義であり、特定の脂質画分中、例えば総脂質中または油中に含有される個々の脂肪酸の量を指し、その量はTFAの重量パーセントとして表現される。混合物中のそれぞれの個々の脂肪酸のパーセントの合計は100であるべきである。 用語「脂肪酸」は、約C12からC22の様々な鎖長の長鎖脂肪酸(アルカン酸)を指すが、より長い鎖長およびより短い鎖長の酸の両方が公知である。大部分の鎖長はC16からC22である。脂肪酸の構造は「X:Y」の単純な表記体系により表され、Xは特定の脂肪酸中の炭素[「C」]原子の総数であり、Yは二重結合の数である。「飽和脂肪酸」とそれに対する「不飽和脂肪酸」、「一価不飽和脂肪酸」とそれに対する「多価不飽和脂肪酸」[「PUFA」]および「ω−6脂肪酸」[「n−6」]とそれに対する「ω−3脂肪酸」[「n−3」]との区別に関する追加の詳細は、参照により本明細書に援用される米国特許第7,238,482号明細書に提供されている。 本明細書においてPUFAを記載するために使用される命名法を表3に挙げる。表題「省略表記」の列に、ω参照体系を使用して炭素数、二重結合数およびこの目的のために番号1が付されるω炭素から数えてω炭素に最も近い二重結合の位置を示す。表3の残りの部分は、ω−3およびω−6脂肪酸およびそれらの前駆体の一般名、本明細書全体にわたり使用される略称ならびにそれぞれの化合物の化学名をまとめる。 表3に列挙されるω−3/ω−6PUFAは、本明細書に記載の方法を使用して微生物および植物宿主の油画分中に蓄積される可能性が最も高いが、この列挙は、限定としても完全なものとしても解釈すべきではない。 用語「長鎖多価不飽和脂肪酸」[「LC−PUFA」]は、C20以上の鎖長を有するPUFAを指す。したがって、用語LC−PUFAとしては、少なくともEDA、DGLA、ARA、ETrA、ETA、EPA、DTA、DPAn−6、DPAおよびDHAが挙げられる。 用語「PUFA生合成経路」は、オレイン酸をω−6脂肪酸、例えばLA、EDA、GLA、DGLA、ARA、DRA、DTAおよびDPAn−6ならびにω−3脂肪酸、例えばALA、STA、ETrA、ETA、EPA、DPAおよびDHAに変換する代謝プロセスを指す。このプロセスは文献に十分記載されている(例えば、参照により本明細書に援用される米国特許第7,7932,077号明細書参照)。要約すれば、このプロセスは、小胞体膜中に存在する「PUFA生合成経路酵素」と称される一連の特殊な伸長および不飽和化酵素を介する、炭素原子の付加を介する炭素鎖の伸長および二重結合の付加を介する分子の不飽和化を含む。より具体的には、「PUFA生合成経路酵素」は、PUFAの生合成に関連する以下の酵素(および前記酵素をコードする遺伝子)、例としてΔ4デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、Δ12デサチュラーゼ、Δ15デサチュラーゼ、Δ17デサチュラーゼ、Δ9デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ9エロンガーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼおよび/またはC20/22エロンガーゼのいずれかを指す。 用語「少なくとも1つの長鎖多価不飽和産物脂肪酸を産生し得るPUFA生合成経路」は、少なくとも1つの長鎖多価不飽和産物脂肪酸の産生を可能とするPUFA生合成経路酵素を含むPUFA生合成経路を指す。図2は、PUFA生合成経路の例を示す。 用語「変換効率」および「基質変換パーセント」は、特定の酵素、例えばデサチュラーゼまたはエロンガーゼが基質を産物に変換し得る効率を指す。変換効率は、以下の式:([産物]/[基質+産物])*100に従って計測され、式中、「産物」は、直接の産物およびそれから誘導された全ての産物を含む。より具体的には、それぞれのPUFA生合成経路酵素は、100%の効率で機能して基質を産物に変換することはまれであるため、宿主細胞中で産生される未精製油の最終脂質プロファイルは、典型的には、所望のω−3/ω−6脂肪酸からなる種々のPUFAおよび種々の上流の中間PUFAの混合物である。したがって、それぞれの酵素の変換効率は、規定の宿主生物中での所望の脂肪酸の生合成を最適化する場合に考慮されることが多い。 用語「C18からC20への伸長変換効率」は、C18/20エロンガーゼがC18基質(すなわちLA、ALA、GLA、STAなど)をC20産物(すなわちEDA、ETrA、DGLA、ETA、EPAなど)に変換し得る効率を指す。これらのC18/20エロンガーゼは、Δ9エロンガーゼまたはΔ6エロンガーゼのいずれかであり得る。 用語「Δ9伸長変換効率」および「Δ9エロンガーゼ変換効率」は、Δ9エロンガーゼがC18基質(すなわちLA、ALA)をC20産物(例えばEDA、ETrA、DGLA、ETA、ARA、EPA)に変換し得る効率を指す。Δ9エロンガーゼ変換効率は、本明細書において、「%変換」または「d9e CE(%)」と称される。 用語「Δ6伸長変換効率」および「Δ6エロンガーゼ変換効率」は、Δ6エロンガーゼがC18基質(例えばGLA、STA)をC20産物(例えばDGLA、ETA、ARA、EPAなど)に変換し得る効率を指す。 本明細書において用語「増加した」は、より大きい量または活性、例えば元の量もしくは活性よりもほんのわずかに大きい量もしくは活性、または例えば元の量もしくは活性と比較して大過剰の量もしくは活性を有することおよびその間の全ての量または活性を含むことを意味する。あるいは、「増加した」は、増加した量または活性が比較される量または活性よりも少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%大きい量または活性を指し得る。 用語「微生物細胞」および「微生物」は、本明細書において同義に使用され、外来または異種遺伝子を受容し得、それらの遺伝子を発現し得る微生物を指す。「組換え微生物細胞」は、組換え遺伝子操作された微生物宿主細胞を指す。 一般に、用語「油性」は、エネルギー源を油の形態で貯蔵する傾向がある生物を指す(Weete,Fungal Lipid Biochemistry,2ndEd.,Plenum,1980)。本出願の目的のため、用語「油性」は、乾燥細胞重量[「DCW」]の少なくとも約25%を油として蓄積し得る微生物を指す。 用語「油性酵母」は、油を作製し得、すなわち油がDCWの約25%を超えて蓄積し得る酵母として分類される油性微生物を指す。油性酵母の例としては、以下の属:ヤロウイア属(Yarrowia)、カンジダ属(Candida)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、ロドスポリジウム属(Rhodosporidium)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、トリコスポロン属(Trichosporon)およびリポミセス属(Lipomyces)が挙げられる。酵母のDCWの約25%を超えて油を蓄積する能力は、組換え遺伝子操作の試みを介してまたは生物の天然能力を介するものであり得る。 用語「保存的アミノ酸置換」は、所与のタンパク質中のアミノ酸残基の、そのタンパク質の化学的性質も機能的性質も変えない別のアミノ酸による置換を指す。例えば、所与の部位において化学的に同等のアミノ酸の産生をもたらす(しかし、コードされ、折り畳まれるタンパク質の構造的および機能的特性に影響を与えない)遺伝子の変更が一般的であることが当技術分野において周知である。本明細書における目的のため、「保存的アミノ酸置換」は、以下の5つの群の1つの中での交換と定義される:1.小型脂肪族非極性またはわずかに極性の残基:Ala[A]、Ser[S]、Thr[T](Pro[P]、Gly[G]);2.極性負荷電残基およびそのアミド:Asp[D]、Asn[N]、Glu[E]、Gln[Q];3.極性正荷電残基:His[H]、Arg[R]、Lys[K];4.大型脂肪族非極性残基:Met[M]、Leu[L]、Ile[I]、Val[V](Cys[C]);ならびに5.大型芳香族残基:Phe[F]、Tyr[Y]、Trp[W]。 したがって、わずかに疎水性のアミノ酸Alaは、別の低疎水性残基(例えばGly)により置換することができる。同様に、ある負荷電残基の、別のものに代える(例えばAspをGluに代える)またはある正荷電残基、別のものに代える(例えばLysをArgに代える)置換をもたらす変化を使用して機能的に同等の産物を産生することもできる。したがって、保存的アミノ酸置換は、一般に、1)置換の領域中のポリペプチド骨格の構造;2)標的部位中の分子の電荷もしくは疎水性;または3)側鎖のかさを維持する。さらに、多くの場合においてタンパク質分子のN末端およびC末端部分の変更も、タンパク質の活性を変更するとは予期されない。 用語「非保存的アミノ酸置換」は、タンパク質特性の最大変化を産生するために使用されるアミノ酸置換を指す。したがって、例えば非保存的アミノ酸置換は、以下のものである:1)親水性残基が疎水性残基に代えて/により(例えばSerまたはThrがLeu、Ile、Valに代えて/により)置換され;2)CysもしくはProが任意の他の残基に代えて/により置換され;3)陽性側鎖を有する残基が、陰性残基に代えて/により(例えばLys、ArgまたはHisがAspまたはGluに代えて/により)置換され;または4)かさ高い側鎖を有する残基が側鎖を有さないものに代えて/により(例えばPheがGlyに代えて/により)置換される。5つの群の2つの間の非保存的アミノ酸置換は、コードされるタンパク質の活性に影響を与えないこともある。 用語「サイレント突然変異」は、コードされるポリペプチド中のアミノ酸変化をもたらさないDNA配列中の突然変異を指す。これらの突然変異は、2つ以上のコドンが1つのアミノ酸を規定し得る遺伝子コードの縮重の結果として生じることが多い。例えば、TCT、TCA、TCGおよびTCCは全て、アミノ酸Serをコードし;したがって、DNA配列中のTCTからTCAへの突然変異は、合成タンパク質中のアミノ酸の変化が存在しないため、遺伝子(またはそのmRNA)のシーケンシングによってのみ検出される。 用語「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「核酸配列」、「核酸分子」、「核酸断片」および「単離核酸断片」は、本明細書において同義的に使用される。本明細書において使用される「単離核酸断片」は、場合により合成、非天然または変更ヌクレオチド塩基を含有する一本鎖または二本鎖であるRNAまたはDNAのポリマーである。DNAのポリマーの形態の単離核酸断片は、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1つ以上のセグメントを含み得る。 本明細書において使用される核酸断片は、一本鎖形態の核酸断片が温度および溶液イオン強度の適切な条件下で他の核酸断片にアニールし得る場合、別の核酸断片、例えばcDNA、ゲノムDNAまたはRNA分子と「ハイブリダイズ可能」である。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は周知であり、参照により本明細書に援用されるSambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nded.,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989)、特に第11章および表11.1に例示されている。 アミノ酸またはヌクレオチド配列の「実質的な部分」は、ポリペプチドのアミノ酸配列または遺伝子のヌクレオチド配列を、当業者による配列の手作業での評価またはアルゴリズム、例えばBLAST(Basic Local Alignment Search Tool;Altschul,S.F.,ら,J.Mol.Biol.,215:403−410(1993))を使用するコンピュータにより自動化された配列比較および同定のいずれかによりそのポリペプチドまたは遺伝子を推定上同定するのに十分に含む部分である。一般に、ポリペプチドまたは核酸配列を既知のタンパク質または遺伝子と相同であると推定上同定するためには、10個以上の連続するアミノ酸または30個以上のヌクレオチドの配列が必要である。さらに、ヌクレオチド配列に関して、配列依存的な遺伝子同定(例えば、サザンハイブリダイゼーション)および単離方法、例えば細菌コロニーまたはバクテリオファージプラークのインサイチュハイブリダイゼーションにおいては、20〜30個の連続するヌクレオチドを含む遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを使用することができる。さらに、PCRにおいて12〜15塩基の短鎖オリゴヌクレオチドを増幅プライマーとして使用してそのプライマーを含む特定の核酸断片を得ることができる。したがって、ヌクレオチド配列の「実質的な部分」は、その配列を含む核酸断片を具体的に同定し、および/または単離するのに十分な配列を含む。本明細書における開示は、特定のLPCATおよびPDATをコードする完全なアミノ酸およびヌクレオチド配列を教示する。当業者は、本明細書に報告される配列の利益を有し、目下、当業者に公知の目的のために開示される配列の全てまたは実質的な部分を使用することができる。 用語「相補的」は、互いにハイブリダイズし得るヌクレオチド塩基間の関係を説明するために使用される。例えば、DNAに関して、アデノシンはチミンと相補的であり、シトシンはグアニンと相補的である。 用語「相同性」、「相同的」、「実質的に類似」および「実質的に対応する」は、本明細書において同義的に使用される。これらは、類似するが同一でない配列を有する核酸断片またはポリペプチドを指す。これらの用語は、得られる核酸断片の機能的特性を初期の未改変断片に対して実質的に変えない(例えば、1つ以上のヌクレオチドの欠失または挿入を介する)核酸断片の改変を指すこともある。したがって、当業者が認識するとおり、本発明に包含されるのは具体的な例示的配列だけではないことが理解される。 核酸またはポリペプチド配列に関する「配列同一性」または「同一性」は、規定の比較窓上で最大対応についてアラインメントされた場合に同一である2つの配列中の核酸塩基またはアミノ酸残基を指す。 したがって、「配列同一性の割合」または「同一性パーセント」は、比較窓上で2つの最適にアラインメントされた配列を比較することにより決定される値を指し、比較窓中のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の一部は、2つの配列の最適なアラインメントのために参照配列(付加も欠失も含まない)と比較して付加または欠失(すなわちギャップ)を含み得る。割合は、両方の配列中の同一核酸塩基またはアミノ酸残基が生じる位置の数を決定してマッチ位置の数を得、マッチ位置の数を比較窓中の位置の総数により除し、結果に100を乗じて配列同一性の割合を得ることにより算出される。 「同一性パーセント」および「類似性パーセント」を決定する方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムにおいて体系化されている。同一性パーセントおよび類似性パーセントは、公知の方法、例として、限定されるものではないが、1)Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,Ed.)Oxford University:NY(1988);2)Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,Ed.)Academic:NY(1993);3)Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,Eds.)Humana:NJ(1994);4)Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,Ed.)Academic(1987);および5)Sequence Analysis Primer(Gribskov,M.and Devereux,J.,Eds.)Stockton:NY(1991)に記載のものにより容易に算出することができる。 配列アラインメントおよび同一性または類似性パーセント算出は、相同配列を検出するために設計された種々の比較法、例として、限定されるものではないが、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングパッケージソフト(DNASTAR Inc.,Madison,WI)のMegAlign(商標)プログラムを使用して決定することができる。配列の多重アラインメントは、「Clustalアラインメント法」を使用して実施され、この方法は、「Clustal Vアラインメント法」および「Clustal Wアラインメント法」(Higgins and Sharp,CABIOS,5:151−153(1989);Higgins,D.G.ら,Comput.Appl.Biosci.,8:189−191(1992)により記載)を含む数種類のアルゴリズムを包含し、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングパッケージソフト(DNASTAR Inc.)のMegAlign(商標)(バージョン8.0.2)プログラムに見出される。Clustal Wアラインメント法を使用する多重タンパク質アラインメントのデフォルトパラメータは、GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=0.2、Delay Divergent Seqs(%)=30、DNA Transition Weight=0.5、Protein Weight Matrix=Gonnet Series、DNA Weight Matrix=IUB、「slow−accurate」オプションに対応する。いずれかのClustalプログラムを使用する配列のアラインメント後、プログラムの「配列距離」表を確認することにより「同一性パーセント」を得ることが可能である。 配列同一性の多くのレベルが他の種からのポリペプチドの同定において有用であることが当業者により十分理解され、そのようなポリペプチドは、同一または類似の機能または活性を有する。好適な核酸断片、すなわち本明細書の開示による単離ポリヌクレオチドは、本明細書に報告されるアミノ酸配列と少なくとも約70〜85%同一であるポリペプチドをコードする一方、より好ましい核酸断片は、少なくとも約85〜95%同一であるアミノ酸配列をコードする。好ましい範囲は上記のものであるが、アミノ酸配列同一性パーセントの有用な例としては、45%から100%の任意の整数割合、例えば45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%が挙げられる。また、この単離ヌクレオチド断片の任意の全長または部分相補体も対象となる。 好適な核酸断片は上記の相同性を有するだけでなく、典型的には、少なくとも50アミノ酸、好ましくは少なくとも100アミノ酸、より好ましくは少なくとも150アミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも200アミノ酸、最も好ましくは少なくとも250アミノ酸を有するポリペプチドをコードする。 「コドン縮重」は、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列に影響を与えないヌクレオチド配列の変動を可能とする遺伝子コードにおける性質を指す。当業者は、所与のアミノ酸を指定するためのヌクレオチドコドンの使用において規定の宿主細胞により示される「コドンバイアス」を十分に理解する。したがって、宿主細胞中での発現を改善するために遺伝子を合成する場合、コドン使用頻度が宿主細胞の好ましいコドン使用頻度に接近するように遺伝子を設計することが望ましい。 「合成遺伝子」は、当業者に公知の手順を使用して化学合成されるオリゴヌクレオチドビルディングブロックから組み立てることができる。これらのオリゴヌクレオチドビルディングブロックをアニールし、次いでライゲートして遺伝子セグメントを形成し、次いでそれを酵素的に組み立てて遺伝子全体を構築する。したがって、遺伝子は、宿主細胞のコドンバイアスを反映するためのヌクレオチド配列の最適化に基づき、最適な遺伝子発現に適応させることができる。当業者は、コドン使用が宿主に好都合なコドンに偏っている場合に良好な遺伝子発現の可能性を認識する。好ましいコドンの決定は、配列情報が利用可能である宿主細胞に由来する遺伝子の調査に基づき得る。例えば、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)についてのコドン使用プロファイルが、参照により本明細書に援用される米国特許第7,125,672号明細書に提供されている。 「遺伝子」は、規定のタンパク質を発現する核酸配列を指し、これはコード領域単独を指し得、またはコード配列の上流および/もしくは下流の調節配列を含み得る(例えば、コード領域の転写開始部位の上流の5’非翻訳領域、3’非コード領域)。「天然遺伝子」は、それ自体の調節配列とともに天然に見出されるとおりの遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」は、天然遺伝子ではなく、天然では一緒に見出されない(すなわち互いに関して異種の)調節およびコード配列を含む任意の遺伝子を指す。したがって、キメラ遺伝子は、異なる供給源に由来する調節配列およびコード配列または同一の供給源に由来するが、天然に見出されるものとは異なる様式で配置された調節配列およびコード配列を含み得る。「内因性遺伝子」は、生物のゲノム中でその天然の位置に存在する天然遺伝子を指す。「外来」遺伝子は、遺伝子導入により宿主生物中に導入された遺伝子を指す。外来遺伝子は、非天然生物中に挿入された天然遺伝子、天然宿主内の新たな位置中に導入された天然遺伝子またはキメラ遺伝子を含み得る。「トランス遺伝子」は、形質転換手順によりゲノム中に導入された遺伝子である。「コドン最適化遺伝子」は、宿主細胞の好ましいコドン使用頻度を模倣するよう設計されたコドン使用頻度を有する遺伝子である。 「コード配列」は、規定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。「調節配列」は、コード配列の転写開始部位の上流に位置するヌクレオチド配列、5’非翻訳領域および3’非コード配列を指し、関連コード配列の転写、RNAプロセシングもしくは安定性または翻訳に影響し得る。調節配列としては、限定されるものではないが、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、5’非翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、ステム−ループ構造およびターミネーターを挙げることができる。 「プロモーター」は、コード配列または機能的RNAの発現を制御し得るDNA配列を指す。一般に、コード配列はプロモーター配列の3’側に位置する。プロモーターは、全体として天然遺伝子に由来し得、または天然に見出される異なるプロモーターに由来する異なるエレメントから構成されていてよく、またはさらには合成DNAセグメントを含み得る。当業者は、異なるプロモーターが異なる組織もしくは細胞型における、または異なる発生段階での、または異なる環境もしくは生理学的条件に応答して遺伝子の発現を指向し得ることを理解する。大部分の細胞型においてほとんどの場合に遺伝子の発現を生じさせるプロモーターは、一般に「構成的プロモーター」と称される。ほとんどの場合に調節配列(特にその5’末端におけるもの)の正確な境界は完全には定義されていないため、異なる長さのDNA断片が同一プロモーター活性を有し得ることがさらに認識される。 用語「3’非コード配列」、「転写ターミネーター」、「ターミネーター」および「終結配列」は、コード配列の3’下流に位置するDNA配列を指す。これはポリアデニル化認識配列と、mRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を与え得る調節シグナルをコードする他の配列とを含む。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸トラクトの付加に影響を与えることを特徴とする。3’領域は、関連コード配列の転写、RNAプロセシングもしくは安定性または翻訳に影響し得る。 「RNA転写産物」は、DNA配列のRNAポリメラーゼ触媒転写から生じる産物を指す。RNA転写産物がDNA配列の完全な相補的コピーである場合、それは一次転写産物と称され、または一次転写産物の転写後プロセシングに由来するRNA配列であり得、成熟RNAと称される。「メッセンジャーRNA」または「mRNA」は、イントロンを有さず、細胞によりタンパク質に翻訳され得るRNAを指す。「cDNA」は、mRNAと相補的な、およびそれから誘導される二本鎖DNAを指す。 用語「作動可能に連結している」は、一方の機能が他方により影響を受けるような単一核酸断片上の核酸配列の会合を指す。例えば、プロモーターは、それがコード配列の発現に影響を与え得る場合、そのコード配列と作動可能に連結している。すなわちコード配列はプロモーターの転写制御下にある。調節配列をコード配列にセンスまたはアンチセンス方向で作動可能に連結することができる。 用語「組換え」または「異種」は、例えば化学合成による、または遺伝子操作技術による核酸の単離セグメントの操作による2つの他では別個の配列セグメントの人為的な組換えを指す。 本明細書において使用される用語「発現」は、センス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定的な蓄積を指す。発現は、mRNAのタンパク質(前駆体または成熟のいずれも)への翻訳も指し得る。 「形質転換」は、遺伝的に安定な遺伝的形質をもたらす、核酸分子の宿主生物中への導入を指す。核酸分子は、例えば自己複製するプラスミドであり得、または核酸分子は宿主生物のゲノム中に組み込まれ得る。形質転換された核酸断片を含有する宿主生物は、「トランスジェニック」または「組換え」または「形質転換」または「形質転換体」生物と称される。 用語「プラスミド」および「ベクター」は、細胞の中央代謝の一部ではなく、通常、環状二本鎖DNA断片の形態の遺伝子を担持することが多い染色体外エレメントを指す。このようなエレメントは、自己複製配列、ゲノム組込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列を有し得、任意の供給源に由来する直鎖または環状の一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAであり得、そこでは多数のヌクレオチド配列が結合され、または組み換えられて発現カセットを細胞中に導入し得る固有の構成となっている。 用語「発現カセット」は、外来遺伝子を含有し、外来遺伝子に加えて外来宿主中でのその遺伝子の発現を可能とするエレメントを有するDNAの断片を指す。一般に、発現カセットは、選択された遺伝子のコード配列と、選択された遺伝子産物の発現に要求されるコード配列に先行する(5’非コード配列)および後続の(3’非コード配列)調節配列とを含む。したがって、発現カセットは、典型的には、1)プロモーター配列;2)コード配列[すなわちORF];および3)通常、真核生物においてはポリアデニル化部位を含有するターミネーターから構成される。発現カセットは、通常、ベクター内に含めてクローニングおよび形質転換を容易にする。それぞれの宿主について正確な調節配列が使用される限り、種々の発現カセットを種々の生物、例として細菌、酵母、植物および哺乳動物細胞中に形質転換することができる。 用語「組換え構築物」、「発現構築物」、「キメラ構築物」、「構築物」および「組換えDNA構築物」は、本明細書において同義的に使用される。組換え構築物は、核酸断片、例えば天然では一緒に見出されない調節およびコード配列などの人為的組合せを含む。例えば、組換えDNA構築物は、異なる供給源に由来する調節配列およびコード配列または同一の供給源に由来するが、天然に見出されるものとは異なる様式で配置された調節配列およびコード配列を含み得る。このような構築物は、それ自体で使用することができ、またはベクターと同時に使用することができる。ベクターが使用される場合、当業者に周知のとおり、ベクターの選択は、宿主細胞を形質転換するために使用される方法に依存する。例えば、プラスミドベクターを使用することができる。当業者は、本明細書に記載の単離核酸断片のいずれかを含む宿主細胞を良好に形質転換し、選択し、増殖させるために、ベクター上に存在しなくてはならない遺伝子エレメントを十分理解する。当業者は、異なる独立した形質転換イベントが、異なるレベルおよびパターンの発現をもたらすことも認識し(Jonesら,EMBO J.,4:2411−2418(1985);De Almeidaら,Mol.Gen.Genetics,218:78−86(1989))、したがって所望の発現レベルおよびパターンを示す株または系統を得るために、複数のイベントをスクリーニングしなくてはならないことも認識する。このようなスクリーニングは、とりわけDNAのサザン分析、mRNA発現のノザン分析、タンパク質発現のウエスタンおよび/もしくはELISA分析、規定産物の形成、表現型分析またはPUFA産物のGC分析により達成することができる。 用語「宿主細胞」および「宿主生物」は、本明細書において同義的に使用され、外来または異種遺伝子を受容し得、それらの遺伝子を発現し得る任意の生物、例えば微生物または植物(例えば、油料種子植物)を指す。「組換え宿主細胞」は、組換え遺伝子操作された宿主細胞を指す。 本明細書において使用される標準組換えDNAおよび分子クローニング技術は、当技術分野において周知であり、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989)において;Silhavy,T.J.,Bennan,M.L.and Enquist,L.W.,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1984)により;Ausubel,F.M.ら,Current Protocols in Molecular Biology,published by Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience,Hoboken,NJ(1987)により、より十分に記載されている。 第1の実施形態において、本明細書において、少なくとも1つの長鎖(LC)多価不飽和脂肪酸(PUFA)の産生のための組換え微生物細胞であって、(a)LPCAT活性を有する少なくとも1つのポリペプチド;(b)PDAT活性を有する少なくとも1つのポリペプチド;および(c)少なくとも1つの長鎖多価不飽和脂肪酸を産生し得るPUFA生合成経路を含み、(a)および(b)のポリペプチドは過剰発現され、対照細胞と比較して増加量の、総脂肪酸の重量パーセント[「重量%TFA」]として計測される少なくとも1つの長鎖多価不飽和脂肪酸を有する組換え微生物細胞が記載される。 PDATおよびLPCATの過剰発現は、例えばそれらの酵素をコードするポリヌクレオチド(すなわちトランス遺伝子)を細胞に導入することにより達成することができる。好ましくは、このようなポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドを含有するように改変された細胞中での遺伝子発現を可能とする調節配列、例えばプロモーターに作動可能に連結している。PDATおよびLPCATの過剰発現は、対照細胞中のPDATおよびLPCATの発現に対するものである。 PDATおよびLPCATを過剰発現する組換え微生物細胞の総脂肪酸の重量パーセント[「重量%TFA」]として計測される少なくとも1つの長鎖PUFA(例えばEPA)の量の増加は、対照細胞の総脂肪酸の重量パーセントとして計測される少なくとも1つの長鎖PUFAの量に対して少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%であり得る。 PDATおよびLPCATの過剰発現に関して、対照細胞、対応する対照細胞または好適な対照細胞は、組換え微生物細胞に対応するが、過剰発現されるPDATおよびLPCATポリペプチドを含まない野生型または組換え細胞であり得る。例えば、対照細胞は、PDATおよびLPCATポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチド配列を含まないことによりPDATおよびLPCATポリペプチドを過剰発現しない。また、例えば、対照細胞は、PDATおよびLPCATポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチド配列を含むが、発現しないことによりPDATおよびLPCATポリペプチドを過剰発現しない。対照細胞は、PDATおよびLPCATポリペプチドを過剰発現するように改変される前に存在したままの組換え微生物細胞(すなわち親細胞)であり得、またはPDATおよびLPCATをコードする組換えポリヌクレオチドを含有するように改変されたが、組換えPDATおよびLPCATポリペプチドを過剰発現しない組換え微生物細胞(例えばPDATおよびLPCATポリペプチドを過剰発現する組換え微生物細胞と並行して調製された細胞)であり得る。 PDATは、リン脂質、例えばホスファチジルコリン[「PC」]、ホスファチジルエタノールアミン[「PE」]およびホスファチジン酸[「PA」]のsn−2位からアシル基を1,2−ジアシルグリセロール[「DAG」]のsn−3位に転移することによりTAG生合成を触媒する。この反応は、リゾリン脂質、例えばリゾホスファチジルコリン[「LPC」]、リゾホスファチジルエタノールアミン[「LPE」]、リゾホスファチジン酸[「LPA」]およびリゾホスファチジルグリセロール[「LPG」]をもたらす。LPCATは、アシルCoAからアシル基をその基質LPCのsn−2位に転移することによりPCを再生し得る。脂肪酸リモデリングは、このように生じ得る。それというのも、PC1(図1)は、PDATにより除去された脂肪酸を置き換えるためにアシルCoAプールからのどの脂肪酸が使用されるかに応じてPC2と同等であり得ないためである。PDATによるPC基質使用(PC1)およびLPCATによる再生(PC2)のこのサイクルを図1に図式化する。 LPCATおよびPDATを過剰発現する組換え微生物細胞が、対照細胞と比較して増加量の、重量%TFAとして計測される長鎖多価不飽和脂肪酸を産生する一方、組換え微生物細胞は、対照細胞と比較して(i)増加したC18からC20への伸長変換効率;および/または(ii)増加した総脂質含有率(すなわち乾燥細胞重量の重量パーセントとして計測される総脂肪酸の量[「TFA%DCW」])も有し得る。 増加したC18からC20への伸長変換効率は、増加したΔ9エロンガーゼ変換効率の効果(すなわち組換え微生物細胞のPUFA生合成経路がΔ9エロンガーゼを含む場合)および/または増加したΔ6エロンガーゼ変換効率の効果(すなわち組換え微生物細胞のPUFA生合成経路がΔ6エロンガーゼを含む場合)のいずれかであり得る。PDATおよびLPCATを過剰発現する組換え微生物細胞のC18からC20への伸長変換効率、Δ9エロンガーゼ変換効率および/またはΔ6エロンガーゼ変換効率の増加は、対照細胞のC18からC20への伸長変換効率、Δ9エロンガーゼ変換効率および/またはΔ6エロンガーゼ変換効率に対してそれぞれ少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%であり得る。 総脂質含有率[「TFA%DCW」]は、LPCATおよびPDATを過剰発現する組換え微生物細胞中で増加され得る。当業者に周知のとおり、組換え微生物宿主細胞中のLC多価不飽和脂肪酸の経済的な商業的産生には、種々の変量、例としてLC多価不飽和脂肪酸濃度[「LC多価不飽和脂肪酸%TFA」]、総脂質含有率[TFA%DCW]およびLC多価不飽和脂肪酸産生率[「LC多価不飽和脂肪酸%DCW」]の考慮が要求される。商業目的に好ましい株の選択には、LC多価不飽和脂肪酸%TFA)およびTFA%DCWの両方が考慮される。それというのも、この両方の因子が乾燥細胞重量のパーセントとしてのLC多価不飽和脂肪酸の細胞含有率に影響を与えるためである。 PDATおよびLPCATを過剰発現する組換え微生物細胞の総脂質含有率(TFA%DCW)の増加は、対照細胞の総脂質含有率に対して少なくとも約1%、2%、3%、4%または5%であり得る。総脂質含有率の増加は、EPA%TFAの増加と一致し得る。 本発明の組換え微生物細胞は、PDAT活性を有する少なくとも1つのポリペプチドを過剰発現する。Dahlqvistら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,97:6487−6492(2000))およびOelkersら(J.Biol.Chem.,275:15609−15612(2000))は、TAG合成がアシルCoAの不存在下で、アシルCoA非依存性PDAT酵素(タンパク質のレシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼファミリーに構造的に関連する)を介して生じ得ることを認識する最初の文献であった。より具体的には、DahlqvistらおよびOelkersらは、PDAT(配列番号30;「ScPDAT」)をコードするサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)LRO1遺伝子の過剰発現が増加したTAG含有率をもたらす一方、ScPDATの欠失がTAG合成の顕著な低減を引き起こすことを実証した。この研究後、米国特許第7,267,976号明細書は、PDATをコードするヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#90812遺伝子(本明細書における配列番号31および32)のクローニング、過剰発現およびノックアウトを記載し、それはScPDATと47.1%のアミノ酸配列同一性を共有することが決定された。PDATが破壊されたY.リポリティカ(Y.lipolytica)株は、野生型株と比較して低い油含有率[「TFA%DCW」](約29〜38%)を有することが見出された一方、PDAT2およびDGAT2の両方が破壊された株は、対照と比較して17〜27%の油含有率を有するにすぎないことが実証された。次いで、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)PDATが天然PDATおよびDGAT2遺伝子が破壊されたS.セレビシエ(S.cerevisiae)株中で発現され;TFA%DCWは、対照と比較して形質転換体株中で2倍になった。 本明細書の目的のため、PDAT活性を有するポリペプチドは、(a)本質的に配列番号30および配列番号32からなる群から選択される配列からなる配列;ならびに(b)Clustal Wアラインメント法に基づき配列番号30および配列番号32からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して少なくとも90%または95%のアミノ酸同一性を有するポリペプチドからなる群から選択することができる。この意味において、PDAT活性を有するポリペプチドは、例えば酵母に由来し得;好ましくは、酵母PDATポリペプチドは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に由来する。 当業者は、配列番号30および32に記載の配列のいずれかまたはその一部を使用して同一または他の藻類、真菌、卵菌、ユーグレナ、ストラメノパイル、酵母または植物種中のPDAT相同体を、配列分析ソフトウェアを使用して探索することができることを認識する。一般に、このようなコンピュータソフトウェアは、相同性の程度を種々の置換、欠失および他の改変に割り当てることにより類似配列をマッチさせる。ソフトウェアアルゴリズム、例えば低複雑性フィルタおよび以下のパラメータ:期待値=10、マトリックス=Blosum 62を有するBLASTPアラインメント法(Altschul,ら,Nucleic Acids Res.,25:3389−3402(1997))の使用が、任意のPDATタンパク質を核酸またはタンパク質配列のデータベースに対して比較し、それにより好ましい宿主生物内の類似の既知配列を同定するために周知である。 あるいは、公的に利用可能なPDAT配列またはそのモチーフが、相同体の同定のためのハイブリダイゼーション試薬であり得る。ハイブリダイゼーション法は、上記のとおり当業者に周知である。 配列依存性プロトコルを使用する相同遺伝子の単離が、当技術分野において周知である。配列依存性プロトコルの例としては、限定されるものではないが、1)核酸ハイブリダイゼーションの方法;2)核酸増幅技術の種々の使用により例示されるDNAおよびRNA増幅の方法、例えばポリメラーゼ連鎖反応[「PCR」](米国特許第4,683,202号明細書);リガーゼ連鎖反応[「LCR」](Taborら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,82:1074(1985));または鎖置換増幅[「SDA」](Walkerら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89:392(1992));ならびに3)ライブラリー構築および相補性によるスクリーニングの方法が挙げられる。 当業者に利用可能な周知の方法に基づき、選択された任意の好ましい真核生物中のPDAT遺伝子相同体を同定および/または単離することが可能である。任意の推定PDAT遺伝子の活性は、LC−PUFA産生宿主生物内での遺伝子の発現により容易に確認することができる。それというのも、TFAの重量%として計測されるLC多価不飽和脂肪酸は、LPCATおよびPDATトランス遺伝子を過剰発現しない対照内のものに対して増加するためである(好適なPDATと同時発現される場合)。 本発明の組換え微生物細胞は、LPCAT活性を有する少なくとも1つのポリペプチドを過剰発現し、ポリペプチドは、野生型タンパク質または合成により創成される(すなわち天然では生じない)突然変異タンパク質であり得る。このポリペプチドは、好ましくは、以下のものからなる群から選択される:(a)Clustal Wアラインメント法に基づき配列番号2(ScLPCAT)および配列番号4(YlLPCAT)からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して少なくとも45%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;(b)以下のものからなる群から選択される少なくとも1つの膜結合O−アシルトランスフェラーゼタンパク質ファミリーモチーフを含むポリペプチド:配列番号5(WHG−X3−GY−X3−F)、配列番号6(Y−X4−F)、配列番号7(Y−X3−YF−X2−H)、配列番号8(M−[V/I]−[L/I]−X2−K−[L/V/I]−X8−DG)、配列番号9(RxKYY−X2−W−X3−[E/D]−[A/G]−X5−GxG−[F/Y]−xG)、配列番号10(EX11WN−X2−[T/V]−X2−W)、配列番号11(SAxWHG−X2−PGY−X2−[T/F]−F)、配列番号12(M−[V/I]−[L/I/V]−[V/C/A/T]−[M/L/Q]−K−[L/V/I/M]−[S/T/Y/I]−[S/T/A/M/G]−[F/L/C/Y]−[C/A/G/S]−[W/Y/M/I/F/C]−[N/S/E/Q/D]−[V/Y/L/I]−[H/Y/A/N/S/T]−DG)、配列番号13(R−[L/M/F/W/P/Y]−KYY−[G/A/F/H/S]−[V/A/I/C]−W−[Y/E/T/M/S/L]−[L/I/N]−[T/S/A]−[E/D]−[G/A]−[A/S/I/V]−[C/S/I/N/H/L]−[V/I/N]−[L/I/N/A/C]−[S/C/W/A/I]−G−[M/I/L/A/F]−G−[Y/F]−[N/E/S/T/R/K]−G)、配列番号14(E−[T/F/L/M]−[A/S]−[Q/D/P/K/T]−[N/S]−[S/I/T/L/A/M/F]−[H/K/R/V]−[G/C/E/T/Q/D/M]−[Y/A/M/L/I/F]−[L/S/P/I]−[G/E/A/L/N/D]−[S/A/V/F/M/N]−WN−[K/M/I/C]−[N/K/Q/G]−[T/V]−[N/A/S]−[H/K/N/T/R/L]−W)、配列番号15(SA−[F/M/V/I]−WHG−[F/V/T/L]−[Y/S/R]−PGY−[Y/M/I]−[L/M/I/F]−[T/F]−F)、配列番号16(M−[V/I]−L−X2−KL)、配列番号17(RxKYY−X2−W)および配列番号18(SAxWHG);(c)下記の少なくとも1つの突然変異膜結合O−アシルトランスフェラーゼタンパク質ファミリーモチーフを含むポリペプチド;(d)Clustal Wアラインメント法に基づき配列番号21(MaLPAAT1)、配列番号23(YlLPAAT1)および配列番号24(ScLPAAT)からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して少なくとも43.9%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;ならびに(e)配列番号25(NHxxxxD)および配列番号26(EGTR)からなる群から選択される少なくとも1つの1−アシル−sn−グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼファミリーモチーフを含むポリペプチド。 あるいは、LPCAT活性を有するポリペプチドは、Clustal Wアラインメント法に基づき配列番号2(ScLPCAT)および配列番号4(YlLPCAT)からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して少なくとも90%または95%のアミノ酸同一性を有し得る。この意味において、LPCAT活性を有するポリペプチドは、例えば酵母から由来し得;好ましくは、酵母LPCATポリペプチドは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に由来する。 本明細書において配列番号2[ScLPCAT]および配列番号4[YlLPCAT]に記載のLPCAT配列のいずれかもしくはその一部、または本明細書において配列番号24[ScLPAAT]、配列番号21[MaLPAAT1]および配列番号23[YlLPAAT1]に記載のLPAATもしくはその一部を使用して同一または他の種中のLPCAT相同体を、PDATに関して上記の配列分析ソフトウェアを使用して探索することができる。 既知配列のデータベースを探索するためのソフトウェアアルゴリズムの使用は、公的に利用可能なLPCAT配列、例えば配列番号2および4に記載のものに対して比較的低い同一性パーセントを有する相同体の単離に特に好適である。単離は、公的に利用可能なLPCAT配列と少なくとも約70%〜85%の同一性のLPCAT相同体について比較的容易であることが予測可能である。さらに、少なくとも85〜90%同一であるそれらの配列は単離に特に好適であり、少なくとも約90〜95%同一であるそれらの配列は最も容易に単離される。 LPCAT相同体は、LPCAT酵素に特有のモチーフ、例えば膜結合O−アシルトランスフェラーゼ[「MBOAT」]ファミリーモチーフ、例えば表2に記載のものの使用により同定することもできる。LPCATおよびLPAAT活性の両方を有するLPCATを、LPAAT酵素に特有のモチーフ、例えばNHxxxxD(配列番号25)およびEGTR(配列番号26)からなる群から選択される1−アシル−sn−グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼファミリーモチーフの使用により同定することもできる。 当業者に利用可能な周知の方法に基づき、選択された任意の好ましい真核生物中のLPCAT遺伝子相同体を同定および/または単離することが可能である。任意の推定LPCAT遺伝子の活性は、LC−PUFA産生宿主生物内での遺伝子の発現により容易に確認することができる。それというのも、TFAの重量%として計測されるLC−PUFAは、LPCATおよびPDATトランス遺伝子の両方を過剰発現しない生物内のものに対して増加するためである(好適なPDATと同時発現される場合)(上記)。 本発明の一態様において、LPCAT活性を有する非天然存在突然変異ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドの同定にかなりの労力が投資され、前記突然変異ポリペプチドは、少なくとも1つの突然変異膜結合O−アシルトランスフェラーゼタンパク質モチーフを含み、前記突然変異モチーフは、以下のものからなる群から選択される:(a)配列番号33に記載のアミノ酸配列を含む突然変異モチーフ(配列番号33は、配列番号16(M−[V/I]−L−X2−KL)と少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なり、前記突然変異は、M1A、M1N、M1C、M1G、M1Q、M1H、M1I、M1L、M1F、M1P、M1S、M1T、M1W、M1Y、M1V、V2A、V2N、V2C、V2G、V2Q、V2H、V2L、V2M、V2F、V2P、V2S、V2T、V2W、V2Y、I2A、I2N、I2C、I2G、I2Q、I2H、I2L、I2M、I2F、I2P、I2S、I2T、I2W、I2Y、L3A、L3N、L3C、L3G、L3Q、L3H、L3M、L3F、L3P、L3S、L3T、L3W、L3Y、L3V、K6A、K6R、K6N、K6G、K6H、K6P、K6S、K6T、K6Y、L7A、L7N、L7C、L7G、L7Q、L7H、L7I、L7M、L7F、L7P、L7S、L7T、L7WおよびL7Yからなる群から選択される);(b)配列番号34に記載のアミノ酸配列を含む突然変異モチーフ(配列番号34は、配列番号8(M−[V/I]−[L/I]−X2−K−[L/V/I]−X8−DG)と少なくともアミノ酸突然変異だけ異なり、前記突然変異は、M1A、M1N、M1C、M1G、M1Q、M1H、M1I、M1L、M1F、M1P、M1S、M1T、M1W、M1Y、M1V、V2A、V2N、V2C、V2G、V2Q、V2H、V2L、V2M、V2F、V2P、V2S、V2T、V2W、V2Y、I2A、I2N、I2C、I2G、I2Q、I2H、I2L、I2M、I2F、I2P、I2S、I2T、I2W、I2Y、L3A、L3N、L3C、L3G、L3Q、L3H、L3M、L3F、L3P、L3S、L3T、L3W、L3Y、L3V、I3A、I3N、I3C、I3G、I3Q、I3H、I3M、I3F、I3P、I3S、I3T、I3W、I3Y、I3V、K6A、K6R、K6N、K6G、K6H、K6P、K6S、K6T、K6Y、L7A、L7N、L7C、L7G、L7Q、L7H、L7I、L7M、L7F、L7P、L7S、L7T、L7W、L7Y、V7A、V7N、V7C、V7G、V7Q、V7H、V7I、V7M、V7F、V7P、V7S、V7T、V7W、V7Y、I7A、I7N、I7C、I7G、I7Q、I7H、I7M、I7F、I7P、I7S、I7T、I7W、I7Y、D16A、D16N、D16G、D16E、D16Q、D16H、D16F、D16S、D16T、G17A、G17N、G17H、G17L、G17M、G17F、G17S、G17TおよびG17Vからなる群から選択される);(c)配列番号35に記載のアミノ酸配列を含む突然変異モチーフ(配列番号35は、配列番号5(WHG−X3−GY−X3−F)と少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なり、前記突然変異は、G7A、G7N、G7C、G7H、G7I、G7L、G7K、G7M、G7F、G7S、G7T、G7W、G7Y、G7V、Y8A、Y8G、Y8H、Y8L、Y8F、Y8P、Y8S、Y8T、Y8V、F12A、F12N、F12C、F12G、F12H、F12L、F12M、F12P、F12S、F12TおよびF12Vからなる群から選択される);(d)配列番号36に記載のアミノ酸配列を含む突然変異モチーフ(配列番号36は、配列番号11(SAxWHG−X2−PGY−X2−[T/F]−F)と少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なり、前記突然変異は、S1A、S1G、S1H、S1L、S1F、S1P、S1T、S1V、A2N、A2G、A2H、A2L、A2F、A2P、A2S、A2T、A2V、P9A、P9R、P9G、P9H、P9I、P9L、P9K、P9M、P9F、P9S、P9T、P9W、P9Y、P9V、G10A、G10N、G10C、G10H、G10I、G10L、G10K、G10M、G10F、G10S、G10T、G10W、G10Y、G10V、Y11A、Y11G、Y11H、Y11L、Y11F、Y11P、Y11S、Y11T、Y11V、T14A、T14C、T14G、T14H、T14I、T14L、T14M、T14F、T14P、T14S、T14W、T14Y、T14V、F14A、F14C、F14G、F14H、F14I、F14L、F14M、F14P、F14S、F14W、F14Y、F14V、F15A、F15N、F15C、F15G、F15H、F15L、F15M、F15P、F15S、F15TおよびF15Vからなる群から選択される);および(e)区分(a)、(b)、(c)または(d)のヌクレオチド配列の相補体(相補体およびヌクレオチド配列は、同数のヌクレオチドからなり、100%相補的である)。 したがって、本発明の一態様は、アシルCoA:リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)活性を有する突然変異ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドであって、突然変異ポリペプチドは、少なくとも1つの突然変異膜結合O−アシルトランスフェラーゼタンパク質モチーフを含み、少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結している単離ポリヌクレオチドに関する。 例えば、ポリヌクレオチドは、モチーフIおよび/またはモチーフII中の突然変異を有する突然変異酵母(例えば、ヤロウイア属(Yarrowia))LPCATポリペプチドをコードし得る。あるいは、ポリヌクレオチドは、Clustal Wアラインメント法に基づき配列番号4(野生型YlLPCAT)と少なくとも90%または95%同一であるLPCAT活性を有し、モチーフI(配列番号4の残基132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148)および/またはモチーフII(配列番号4の残基376、377、378、382、383、384、385、386、387、389、390)中の1つ以上の突然変異(例えば、アミノ酸置換、欠失および/または挿入)を有するアミノ酸配列をコードし得る。置換突然変異は、例えば本明細書に記載のもののいずれかであり得る。好ましくは、ポリヌクレオチドによりコードされる突然変異LPCATポリペプチドの活性は、野生型YlLPCAT(例えば配列番号4)の活性と同等以上である。このような活性は、突然変異LPCATを過剰発現する組換え細胞(例えば、微生物細胞)中のEPA%TFAおよび/またはd9eCE(%)を、対照細胞中のEPA%TFAおよび/またはd9eCE(%)と比較することにより測定することができる。 別の例において、ポリヌクレオチドは、LPCAT活性を有し、ポリペプチドが136位におけるセリンおよび389位におけるアラニンを有する配列番号79;ポリペプチドが136位におけるセリンおよび389位におけるシステインを有する配列番号81;ポリペプチドが136位におけるセリンおよび389位におけるセリンを有する配列番号83;ポリペプチドが136位におけるバリンおよび389位におけるシステインを有する配列番号85;ポリペプチドが144位におけるアラニンおよび390位におけるセリンを有する配列番号87;ポリペプチドが148位におけるアラニンおよび390位におけるセリンを有する配列番号89;ポリペプチドが148位におけるアスパラギンおよび382位におけるイソロイシンを有する配列番号91;またはポリペプチドが148位におけるアスパラギンおよび390位におけるセリンを有する配列番号93と少なくとも90%または95%同一であるポリペプチドをコードし得る。 配列を合成し、配列を編成する方法は、文献において十分確立されている。天然存在遺伝子の突然変異(このような突然変異としては、欠失、挿入および点突然変異またはそれらの組合せを挙げることができる)を得るために多くの技術が一般に用いられる。本研究は、少なくとも1つのLC−多価不飽和脂肪酸を産生するように遺伝子操作された微生物細胞中で発現される場合に酵素内で許容されるLPCAT(例えば、YlLPCAT[例えば配列番号4])内の好適な突然変異の同定を目的として実施した。より好ましくは、TFAの重量%および/またはC18からC20への伸長変換効率として計測されるLC−多価不飽和脂肪酸の量を増加させる突然変異の同定が、PUFA生合成の全体の比率および量を増加させる手段として特に望まれた。 ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LPCATポリペプチド内の2つの規定の保存モチーフ中の種々のLPCAT突然変異が、本明細書に記載される。具体的には、一組の部位飽和ライブラリーを、配列番号8(M−[V/I]−[L/I]−X2−K−[L/V/I]−X8−DG)に対応するモチーフI内の17アミノ酸残基内で、および配列番号11(SAxWHG−X2−PGY−X2−[T/F]−F)に対応するモチーフIIの15アミノ酸残基の12残基内で、YlLPCAT(配列番号4)をテンプレートとして使用して創成し、YlLPCATは、キメラYAT1::YlLPCAT::Lip1遺伝子を含むプラスミド構築物内に含有させた。次いで、YlLPCATポリペプチドに関する単一アミノ酸変化をそれぞれ含む部位飽和ライブラリーを、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中に形質転換し、改善されたΔ9エロンガーゼ変換効率[「%変換」](すなわちC18PUFAからC20PUFAへの変換率に基づく)および/またはGC分析に基づくTFAの重量パーセント[「EPA%TFA」]としての改善されたEPAの産生についてスクリーニングした。直接的方法とは対照的に、これらの間接的手段を利用してLPCAT活性を分析した。 より具体的には、YlLPCAT内のアミノ酸残基132から148(モチーフI)およびアミノ酸残基376から378および382から390(モチーフII)を個々に突然変異させた。突然変異体の全329種は、EPA%TFAが対照YlLPCATポリペプチドのEPA%TFAの少なくとも75%であるように機能し;突然変異体の全ては、対照YlLPCATポリペプチドの%変換の少なくとも87.6%である%変換で機能した。56種のYlLPCAT突然変異体が、同等のまたは改善されたEPA%TFAおよび同等のまたは改善された%変換を示すことが見出された。別の14種のYlLPCAT*突然変異体は、対照と比較して同等のまたは改善されたEPA%TFAを有することが決定され(しかし、同等の%変換も改善された%変換も有さなかった);別の12種の突然変異体は、対照と比較して同等のまたは改善された%変換を有することが決定された(しかし、同等のEPA%TFAも改善されたEPA%TFAも有さなかった)。したがって、この研究により、YlLPCATのLPCAT活性は、実際に悪影響なしで改変することができ、さらにはタンパク質遺伝子操作により改善することができたことが実証された。 同等のまたは改善されたLPCAT活性をもたらす突然変異体を、モチーフI内のアミノ酸残基133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147および148において生成し、それにより、配列番号8(M−[V/I]−[L/I]−X2−K−[L/V/I]−X8−DG)のメチオニン[M]残基のみが変異を許容し得ないと考えられることを実証した。同様に、同等のまたは改善されたLPCAT活性をもたらす突然変異体を、モチーフII中のアミノ酸残基378、382、383、385、388、389および390において生成し、それにより、配列番号11(SAxWHG−X2−PGY−X2−[T/F]−F)のセリン[S]、アラニン[A]、プロリン[P]およびチロシン[Y]が変異を許容し得ないと考えられることを実証した。残基379〜381におけるアミノ酸(すなわちWHG)は、突然変異に供しなかった。それというのも、YlLPCATのH380に対応する他のLPCATのヒスチジンは、活性部位残基である可能性が高いと報告されているためである(Leeら,2008,Mol.Biol.Cell 19:1174−1184)。 したがって、本明細書の一実施形態において、少なくとも1つの突然変異膜結合O−アシルトランスフェラーゼタンパク質モチーフを含むリゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ[「LPCAT」]活性を有する非天然存在突然変異ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドであって、(a)突然変異ポリペプチドは、配列番号19に記載のアミノ酸配列を含み、配列番号19は、配列番号4(YlLPCAT)と少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なり、(i)アミノ酸突然変異は、残基133、残基134、残基135、残基136、残基137、残基138、残基139、残基140、残基141、残基142、残基143、残基144、残基145、残基146、残基147および残基148からなる群から選択される残基におけるアミノ酸置換であり;(ii)アミノ酸突然変異は、残基378、残基382、残基383、残基385、残基388、残基389および残基390からなる群から選択される残基におけるアミノ酸置換であり;または(iii)少なくとも2つのアミノ酸突然変異が存在し:(1)第1のアミノ酸突然変異は、区分(i)に記載の群から選択されるアミノ酸置換であり、(2)第2のアミノ酸突然変異は、区分(ii)に記載の群から選択されるアミノ酸置換であり;(b)少なくとも1つの長鎖多価不飽和脂肪酸を産生し得る多価不飽和脂肪酸生合成経路を含む組換えヤロウイア属(Yarrowia)細胞中の突然変異ポリペプチドの過剰発現は、(i)対照ヤロウイア属(Yarrowia)細胞により産生される量と少なくとも同一以上である、総脂肪酸の重量パーセントとして計測される少なくとも1つの長鎖多価不飽和脂肪酸の量;および(ii)対照ヤロウイア属(Yarrowia)細胞の変換効率と少なくとも同一以上であるC18からC20への伸長変換効率からなる群から選択される結果を産生する単離ポリヌクレオチドが開示される。 上記単離ポリヌクレオチドによりコードされるLPCAT活性を有する突然変異ポリペプチドも、本明細書において本出願人らにより想定される。 1つの好ましい実施形態において、突然変異YlLPCATポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号37に記載のアミノ酸配列を含み、配列番号37は、配列番号4(YlLPCAT)と異なり、前記差異は、L134A、L134C、L134G、C135D、C135I、M136G、M136P、M136S、M136V、K137N、K137G、K137H、K137Y、L138A、L138H、L138M、S139L、S139W、S140N、S140H、S140P、S140W、F141A、F141M、F141W、G142H、W143L、N144A、N144K、N144F、N144T、N144V、V145A、V145G、V145E、V145M、V145F、V145W、Y146G、Y146L、Y146M、D147N、D147Q、D147H、G148A、G148N、T382I、T382P、R383M、L388G、L388Y、T389A、T389C、T389S、F390C、V133C、M136N、L138G、L138I、L138N、S139G、S139N、W143H、G148V、L388H、L388T、F390G、F390N、F390T、C135F、M136T、S140Y、S140I、F141V、G142I、G142V、D147E、F378Y、T382Y、R383AおよびF390Sからなる群から選択されるアミノ酸突然変異である。 より具体的には、任意の組換え微生物細胞(例えば、前記LC多価不飽和産物脂肪酸産生細胞は、PDATおよびLPCATの両方を過剰発現している)における使用のための適用可能性について、少なくとも1つの突然変異膜結合O−アシルトランスフェラーゼタンパク質モチーフを含むLPCAT活性を有するポリペプチドも本明細書において記載され、突然変異モチーフは、以下のものからなる群から選択される:(a)配列番号38に記載のアミノ酸配列を含む突然変異モチーフ(配列番号38は、配列番号16(M−[V/I]−L−X2−KL)と、V2C、I2C、L3A、L3C、L3G、K6H、K6G、K6N、K6Y、L7A、L7N、L7G、L7H、L7IおよびL7Mからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なる);(b)配列番号39に記載のアミノ酸配列を含む突然変異モチーフ(配列番号39は、配列番号8(M−[V/I]−[L/I]−X2−K−[L/V/I]−X8−DG)と、V2C、I2C、L3A、L3C、L3G、I3A、I3C、I3G、K6H、K6G、K6N、K6Y、L7A、L7N、L7G、L7H、L7I、L7M、V7A、V7N、V7G、V7H、V7M、I7A、I7N、I7G、I7H、I7M、D16Q、D16N、D16H、G17A、G17VおよびG17Nからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なる);(c)配列番号40に記載のアミノ酸配列を含む突然変異モチーフ(配列番号40は、配列番号5(WHG−X3−GY−X3−F)と、F12N、F12C、F12GおよびF12Tからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なる);および(d)配列番号41に記載のアミノ酸配列を含む突然変異モチーフ(配列番号41は、配列番号11(SAxWHG−X2−PGY−X2−[T/F]−F)と、T14A、T14C、T14S、F15N、F15C、F15GおよびF15Tからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なる)。 上記の規定の突然変異は、上記の方法に従ってYlLPCAT内で同定された突然変異に対応し、それは同等のまたは改善されたEPA%TFAおよび/または同等のまたは改善された%変換を有する突然変異体をもたらすことが実証された。 単一アミノ酸突然変異をYlLPCAT(配列番号4)のモチーフIまたはモチーフII内のいずれかで創成した上記研究後、次いで18種の異なる単一モチーフI突然変異を16種の好ましい単一モチーフII突然変異の1つと組み合わせ、167種の二重突然変異体(すなわちLPCATは、モチーフI内の単一突然変異およびモチーフII内の単一突然変異の両方を含む)の生成をもたらした。これらの二重突然変異体をヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株Y8406U2中に形質転換し、次いで二重突然変異体の脂質プロファイルを親YlLPCATの脂質プロファイルと比較した。 ここでも、得られた突然変異YlLPCATタンパク質のLPCAT活性に対するそれぞれの二重突然変異の効果を、EPA%TFAおよび%Δ9変換効率に基づきスクリーニングした。167種のYlLPCAT突然変異体の大部分は、YlLPCATと比較してほぼ同等のまたは改善された活性で機能した。より具体的には、二重突然変異体の106種は、対照と比較して同等のまたは改善されたEPA%TFAおよび同等のまたは改善された%変換を示し、二重突然変異体の15種は、同等のまたは改善されたEPA%TFAを有した一方、二重突然変異体の別の6種は、対照と比較して同等のまたは改善された%変換を有することが決定された。 次いで、これらの二重突然変異体の25種を、総脂質含有率および組成の詳細分析についてのフラスコアッセイに供した。これらの二重突然変異体の17種は、同等のまたは改善されたEPA%TFAおよび同等のまたは改善された%変換を有する一方、残りの8種は、同等のまたは改善された%変換を有することが観察された。さらに、これら25種の突然変異体の22種は、モチーフI内の単一突然変異およびモチーフII内の単一突然変異を含む突然変異YlLPCATを発現していない対照株と比較して改善されたEPA産生率[「EPA%DCW」]を有することが実証された。 したがって、本明細書において、配列番号42に記載のアミノ酸配列を含む突然変異YlLPCATポリペプチドのアミノ酸配列が開示され、配列番号42は、配列番号4(YlLPCAT)と異なり、前記差異は、表4に記載の突然変異のペアのいずれか1つである(例えば、モチーフI中のL134A突然変異を、モチーフII中のT382I突然変異、L388G突然変異、F390G突然変異またはF390T突然変異のいずれかと組み合わせることができ、それにより突然変異体L134A_T382I、L134A_L388G、L134A_F390GおよびL134A_F390Tを生成する)。 上記に基づき、代替的なモチーフI内の単一突然変異およびモチーフII内の単一突然変異を組み合わせることにより種々の他の二重突然変異を生成することができることが当業者により理解され、単一突然変異は、好ましくは、対照に対して同等のまたは改善されたEPA%TFAを示すことが見出された14種のYlLPCAT突然変異体内に存在したものから、または対照と比較して同等のまたは改善された%変換を示すことが見出された12種のYlLPCAT突然変異体内に存在したものから選択される。より好ましくは、単一突然変異は、同等のまたは改善されたEPA%TFAおよび同等のまたは改善された%変換を示すことが見出された56種のYlLPCAT突然変異体内に存在したものである。 本発明の一態様において、単離ポリヌクレオチドによりコードされる突然変異LPCATポリペプチドは、配列番号79、81、83、85、87、89、91および93からなる群から選択される配列を含む。 LPCATアミノ酸突然変異のある組合せは本明細書に開示されるが、当業者は、本明細書に開示のモチーフIおよびモチーフII突然変異の他の組合せを組み合わせることもできることを容易に認識する。したがって、開示のモチーフI突然変異の1つ以上を、突然変異LPCATポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの調製において開示のモチーフII突然変異の1つ以上との組合せにおいて使用することができる。 本明細書に記載の突然変異ポリペプチド(すなわち少なくともLPCAT活性を有する)は、少なくとも1つの長鎖[「LC」]多価不飽和脂肪酸の改善された産生のための組換え微生物細胞中でのPDAT活性を有するポリペプチドの過剰発現と同時の過剰発現に有用であり、PDATおよび突然変異LPCATの過剰発現は、対照細胞と比較して、重量%TFAとして計測される少なくとも1つの長鎖多価不飽和脂肪酸の増加をもたらす。これらの結果は、PDATの過剰発現なしの本明細書に記載の突然変異LPCATポリペプチドの過剰発現時にも達成されることにも留意すべきである。 具体的には、本明細書において、LPCAT活性を有する非天然存在突然変異ポリペプチドをコードする本明細書に記載の単離ポリヌクレオチドのいずれか1つを含む組換え細胞であって、少なくとも1つの長鎖多価不飽和脂肪酸を産生し得るPUFA生合成経路をさらに含み、単離ポリヌクレオチドは過剰発現され、以下:(a)対照細胞により産生される量と少なくとも同一以上である総脂肪酸の重量パーセントとして計測される少なくとも1つの長鎖多価不飽和脂肪酸の量または(b)対照細胞の変換効率と少なくとも同一以上であるC18からC20への伸長変換効率(例えば、Δ9エロンガーゼ変換効率またはΔ6エロンガーゼ変換効率)の少なくとも1つを含む組換え細胞が開示される。 組換え細胞中での突然変異LPCAT(モチーフIおよび/またはモチーフII中の突然変異を含有する)の過剰発現に関して、突然変異LPCATの過剰発現は、例えば突然変異LPCATをコードするポリヌクレオチド(すなわちトランス遺伝子)を細胞に導入することにより達成することができる。好ましくは、このようなポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドを含有するように改変された細胞(例えば微生物細胞)中での遺伝子発現を可能とする調節配列、例えばプロモーターに作動可能に連結している。突然変異LPCATの過剰発現は、対照細胞中のLPCATの発現に対するものである。 突然変異LPCAT(モチーフIおよび/またはモチーフII内の突然変異を含有する)を過剰発現する組換え細胞の総脂肪酸の重量パーセント[「重量%TFA」]として計測される少なくとも1つの長鎖PUFA(例えば、EPA)の量の増加は、対照細胞の総脂肪酸の重量パーセントとして計測される少なくとも1つの長鎖PUFAの量に対して少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%であり得る。 突然変異LPCAT(モチーフIおよび/またはモチーフII中の突然変異を含有する)を過剰発現する組換え細胞のC18からC20への伸長変換効率、Δ9エロンガーゼ変換効率および/またはΔ6エロンガーゼ変換効率の増加は、対照細胞のC18からC20への伸長変換効率、Δ9エロンガーゼ変換効率および/またはΔ6エロンガーゼ変換効率に対してそれぞれ少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%または15%であり得る。 総脂質含有率(TFA%DCW)は、突然変異LPCATを過剰発現する組換え細胞中で増加され得る。組換え細胞の総脂質含有率の増加は、対照細胞の総脂質含有率に対して少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%または12%であり得る。総脂質含有率の増加は、EPA%TFAの増加と一致し得る。 突然変異LPCATの過剰発現に関して、対照細胞、対応する対照細胞または好適な対照細胞は、組換え微生物細胞に対応するが、過剰発現される突然変異LPCATポリペプチドを含まない野生型または組換え細胞であり得る。例えば、対照細胞は、突然変異LPCATポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチド配列を含まないことにより突然変異LPCATポリペプチドを過剰発現しない。また、例えば、対照細胞は、突然変異LPCATポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチド配列を含むが、発現しないことにより突然変異LPCATポリペプチドを過剰発現しない。対照細胞は、突然変異LPCATポリペプチドを過剰発現するように改変される前に存在したままの組換え微生物細胞(すなわち親細胞)であり得、または突然変異LPCATをコードする組換えポリヌクレオチドを含有するように改変されたが、突然変異LPCATポリペプチドを過剰発現しない組換え細胞(例えば、突然変異LPCATポリペプチドを過剰発現する組換え細胞と並行して調製された細胞)であり得る。 当業者は、1)巨大分子、例えばDNA分子、プラスミドなどの構築、操作および単離のための規定の条件および手順;2)組換えDNA断片および組換え発現構築物の生成:ならびに3)クローンのスクリーニングおよび単離を説明する標準的文献資料を認識する。上記のManiatis、SilhavyおよびAusubel参照。 一般に、組換え発現構築物中に含まれる配列の選択は、所望の発現産物、宿主細胞の性質および形質転換細胞と非形質転換細胞とを分離する提案手段に依存する。典型的には、ベクターは、少なくとも1つの発現カセット、選択マーカーおよび自己複製または染色体組込みを可能とする配列を含有する。好適な発現カセットは、典型的には、プロモーター、選択遺伝子のコード配列(例えば、少なくともLPCATまたはPDAT活性を有するポリペプチドをコードする)およびターミネーター(すなわちキメラ遺伝子)を含む。好ましくは、対照領域の両方は、形質転換宿主細胞からの遺伝子に由来する。 本明細書における本発明のポリペプチドをコードするORFの発現を指向し得る実質的に任意のプロモーター(すなわち天然、合成またはキメラ)が好適であるが、宿主種からの転写および翻訳領域が特に有用である。宿主細胞中での発現は、誘導または構成的様式で生じ得る。誘導的発現は、関心対象のLPCATおよび/またはPDAT遺伝子に作動可能に連結している調節可能なプロモーターの活性を誘導することにより生じる一方、構成的発現は、関心対象の遺伝子に作動可能に連結している構成的プロモーターの使用により生じる。 ターミネーターは、プロモーターが得られた遺伝子の3’領域に、または異なる遺伝子に由来し得る。多数の終結領域が公知であり、それらが由来したのと同一および異なる属および種の両方で利用される場合、種々の宿主中で十分に機能する。ターミネーターは、通常、任意の特定の特性のためにというよりも、便宜上選択される。好ましくは、ターミネーターは酵母遺伝子に由来する。当業者は、利用可能な情報を利用してターミネーターを設計および合成することができるため、ターミネーターは合成物でもよい。ターミネーターは不要なこともあるが、高度に好ましい。 高い発現率を得るため、多くの特殊化した発現ベクターが創成されている。このようなベクターは、転写、RNA安定性、翻訳、タンパク質安定性および位置ならびに宿主細胞からの分泌を制御するある特性を調整することにより作製される。これらの特性として、以下のものが挙げられる:関連転写プロモーターおよびターミネーター配列の性質;クローニング遺伝子のコピー数(追加のコピーを単一発現構築物内でクローニングすることができ、および/またはプラスミドコピー数を増加させ、もしくはクローニング遺伝子のゲノム中への多重組込みにより、追加のコピーを宿主細胞中に導入することができる);遺伝子が、プラスミド由来かまたは宿主細胞ゲノム中に組み込まれているか;合成タンパク質の最終細胞局在;宿主生物中でのタンパク質の翻訳および正確な折り畳みの効率;宿主細胞内のクローニング遺伝子のmRNAおよびタンパク質の固有安定性;ならびにコドン使用頻度が、宿主細胞の好ましいコドン使用頻度に接近するようなクローニング遺伝子内のコドン使用。 適切な細胞中での発現に好適なDNAカセット(例えば、プロモーター、LPCAT活性またはPDAT活性を有するポリペプチドをコードするORFおよびターミネーターを含むキメラ遺伝子を含む)を得たら、宿主細胞中で自己複製し得るプラスミドベクター中に入れ、またはそれを宿主細胞のゲノム中に直接組み込む。発現カセットの組込みは、宿主ゲノム内でランダムに行うことができ、または宿主遺伝子座との組換えをターゲティングするために十分な宿主ゲノムとの相同性の領域を含有する構築物の使用を介してターゲティングすることができる。構築物を内因性遺伝子座にターゲティングする場合、転写および翻訳調節領域の全部または一部を内因性遺伝子座により提供することもできる。 関心対象のキメラ遺伝子を含む構築物は、任意の標準的技術により例えば油性酵母中に導入することができる。このような技術としては、形質転換(例えば酢酸リチウム形質転換[Methods in Enzymology,194:186−187(1991)])、バイオリスティックインパクト、エレクトロポレーション、マイクロインジェクションまたは関心対象の遺伝子を宿主細胞中に導入する他の任意の方法が挙げられる。Y.リポリティカ(Y.lipolytica)に適用可能なより具体的な教示としては、参照により本明細書に援用される米国特許第4,880,741号明細書および米国特許第5,071,764号明細書ならびにChenら(Appl.Microbiol.Biotechnol.,48(2):232−235(1997))が挙げられる。宿主のゲノム中への線状DNA断片の組込みは、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)宿主細胞の形質転換において好ましい。ゲノム内の複数の位置中への組込みは、高レベルの遺伝子発現が望まれる場合、特に有用であり得る。好ましい遺伝子座としては、米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書に教示されているものが挙げられる。 形質転換宿主細胞は、導入された構築物上に含有されるマーカーについての選択により同定することができる。あるいは、多くの形質転換技術は多くのDNA分子を宿主細胞中に導入するため、別個のマーカー構築物を所望の構築物とともに同時形質転換することができる。 微生物宿主細胞中に組み込まれたDNA断片の安定性は、個々の形質転換体、受容株および使用されるターゲティングプラットフォームに依存することが多い。したがって、所望の発現レベルおよびパターンを示す株を得るため、特定の組換え微生物宿主の複数の形質転換体をスクリーニングすべきである。DNAブロットのサザン分析(Southern,J.Mol.Biol.,98:503(1975))、mRNA発現のノザン分析(Kroczek,J.Chromatogr.Biomed.Appl.,618(1−2):133−145(1993))、タンパク質発現のウエスタン分析、表現型分析またはGC分析が、好適なスクリーニング方法である。 本明細書において、本発明の単離ポリヌクレオチドを含む組換え構築物が開示される。例えば、組換え構築物は、LPCAT活性を有する非天然存在突然変異ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含み得、突然変異ポリペプチドは、少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結している少なくとも1つの突然変異膜MBOATタンパク質モチーフを含む。 本明細書において、本発明の組換え構築物を含む組換え細胞が開示される。本明細書に記載の組換え細胞は全て、少なくとも1つのLC多価不飽和脂肪酸を産生し得るPUFA生合成経路を含む。好ましくは、長鎖多価不飽和脂肪酸は、エイコサジエン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサテトラエン酸、ω−6ドコサペンタエン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ω−3ドコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される。 オレイン酸がLC−PUFAに変換される代謝プロセスは、炭素原子の付加を介する炭素鎖の伸長および二重結合の付加を介する分子の不飽和化を含む。これには、小胞体膜中に存在する一連の特殊な不飽和化および伸長酵素が要求される。しかしながら、図2において把握されるとおり、および下記のとおり、LC−PUFA産生には複数の代替経路が存在する。 具体的には、図2は下記の経路を示す。全ての経路には、オレイン酸がΔ12デサチュラーゼにより1番目のω−6脂肪酸であるリノール酸[「LA」]に最初に変換されることが要求される。次いで、「Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路」および基質としてのsLAを使用して、以下のとおり長鎖ω−6脂肪酸が形成される:1)LAがΔ9エロンガーゼによりエイコサジエン酸[「EDA」]に変換され;2)EDAがΔ8デサチュラーゼによりジホモ−γ−リノレン酸[「DGLA」]に変換され;3)DGLAがΔ5デサチュラーゼによりアラキドン酸[「ARA」]に変換され;4)ARAがC20/22エロンガーゼによりドコサテトラエン酸[「DTA」]に変換され;5)DTAがΔ4デサチュラーゼによりドコサペンタエン酸[「DPAn−6」]に変換される。 「Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路」は、基質としてα−リノレン酸[「ALA」]も使用して以下のとおり長鎖ω−3脂肪酸を産生し得る:1)LAがΔ15デサチュラーゼによりALAに変換され;2)ALAがΔ9エロンガーゼによりエイコサトリエン酸[「ETrA」]に変換され;3)ETrAがΔ8デサチュラーゼによりエイコサテトラエン酸[「ETA」]に変換され;4)ETAがΔ5デサチュラーゼによりエイコサペンタエン酸[「EPA」]に変換され;5)EPAがC20/22エロンガーゼによりドコサペンタエン酸[「DPA」]に変換され;6)DPAがΔ4デサチュラーゼによりドコサヘキサエン酸[「DHA」]に変換される。場合により、ω−6脂肪酸はω−3脂肪酸に変換され得る。例えば、ETAおよびEPAは、Δ17デサチュラーゼ活性によりそれぞれDGLAおよびARAから産生される。 ω−3/ω−6脂肪酸の生合成の代替経路はΔ6デサチュラーゼおよびC18/20エロンガーゼを利用し、すなわち「Δ6デサチュラーゼ/Δ6エロンガーゼ経路」である。より具体的には、LAおよびALAがΔ6デサチュラーゼによりそれぞれGLAおよびステアリドン酸[「STA」]に変換され得;次いでC18/20エロンガーゼがGLAをDGLAに、および/またはSTAをETAに変換する。 LC−PUFA産生組換え細胞は、上記の生合成経路の少なくとも1つを有し、この経路は、細胞由来であるか遺伝子操作によるかを問わない。好ましくは、組換え細胞は、組換え細胞の総脂質中の少なくとも約2〜5%のLC−PUFA、より好ましくは、総脂質中の少なくとも約5〜15%のLC−PUFA、より好ましくは、総脂質中の少なくとも約15〜35%のLC−PUFA、より好ましくは、総脂質中の少なくとも約35〜50%のLC−PUFA、より好ましくは、総脂質中の少なくとも約50〜65%のLC−PUFA、最も好ましくは、総脂質中の少なくとも約65〜75%のLC−PUFAを産生し得る。LC−PUFAの構造形態は限定されず;したがって、例えばEPAまたはDHAが総脂質中に遊離脂肪酸としてまたはエステル化形態、例えばアシルグリセロール、リン脂質、スルホ脂質もしくは糖脂質で存在し得る。 「LC多価不飽和脂肪酸」は、PUFA生合成経路が産生するように設計されたPUFAを指す。したがって、例えば本実施例において、Δ12デサチュラーゼ、Δ9エロンガーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼおよびΔ17デサチュラーゼ遺伝子を含むPUFA生合成経路を発現するように遺伝子操作されたヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株は、脂質中の種々の脂肪酸、例としてパルミテート、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、LA、ALA、EDA、DGLA、ARA、ETrA、ETA、EPAを産生した。しかしながら、株はPUFA生合成経路の産物として主としてEPAを産生するように設計されたため、この脂肪酸は、LC多価不飽和産物脂肪酸としてみなすべきである。 種々の真核生物、例えば植物、真菌および微生物、例として酵母、藻類、ストラメノパイル、卵菌およびユーグレナを本明細書において使用してLC−PUFAを産生(または産生するように遺伝子操作)することができる。これらは、種々の原料、例として単炭水化物または複合炭水化物、脂肪酸、有機酸、油、グリセロールおよびアルコールおよび/または炭化水素上で広範な温度およびpH値にわたり生育する細胞を含み得る。したがって、これらの生物のいずれも、本発明のポリヌクレオチドによる形質転換に好適な宿主細胞である。 好ましい微生物は油性生物である。これらの油性生物は、天然に油合成および蓄積し得、総油含有率は、乾燥細胞重量の約25%超、より好ましくは、乾燥細胞重量の約30%超、最も好ましくは、乾燥細胞重量の約40%超を構成し得る。種々の細菌、藻類、ユーグレナ、蘚類、真菌、酵母およびストラメノパイルは、必然的に油性と分類される。この微生物の広いグループ内で、ω−3/ω−6脂肪酸を天然で産生する生物に特に関心が持たれる。例えば、ARA、EPAおよび/またはDHAは、キクロテラ属種(Cyclotella sp.)、クリプテコジニウム属種(Crypthecodinium sp.)、モルティエレラ属種(Mortierella sp.)、ニッチア属種(Nitzschia sp.)、クサレカビ属(Pythium)、ヤブレツボカビ属種(Thraustochytrium sp.)およびシゾキトリウム(Schizochytrium)種により産生される。したがって、例えば誘導性または調節プロモーターの制御下における、本LPCAT遺伝子のいずれかによる(場合によりPDATの同時発現とともに)、ARAの産生のために商業的に使用されるモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)の形質転換は、増加量のARAを合成し得る形質転換生物を生じ得た。M.アルピナ(M.alpina)の形質転換法は、Mackenzieら(Appl.Environ.Microbiol.,66:4655(2000))により記載されている。同様に、ヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)微生物(例えばヤブレツボカビ属(Thraustochytrium)、シゾキトリウム属(Schizochytrium))の形質転換法は、米国特許第7,001,772号明細書に開示されている。代替的な実施形態において、非油性生物、例えば酵母、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を油性になるように遺伝子改変することができる(米国特許出願公開第2007/0015237−A1号明細書)。 より好ましい実施形態において、微生物細胞は油性酵母である。油性酵母として典型的に同定されている属としては、限定されるものではないが、ヤロウィア属(Yarrowia)、カンジダ属(Candida)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、ロドスポリジウム属(Rhodosporidium)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、トリコスポロン属(Trichosporon)およびリポミセス属(Lipomyces)が挙げられる。より具体的には、例示的な油合成酵母としては、ロドスポリジウム・トルイデス(Rhodosporidium toruloides)、リポミセス・スターケイ(Lipomyces starkeyii)、L.リポフェラス(L.lipoferus)、カンジダ・レブカウフィ(Candida revkaufi)、C.プルケリマ(C.pulcherrima)、C.トロピカリス(C.tropicalis)、C.ユチリス(C.utilis)、トリコスポロン・プランス(Trichosporon pullans)、T.クタネウム(T.cutaneum)、ロドトルラ・グルティナス(Rhodotorula glutinus)、R.グラミニス(R.graminis)およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)(以前はカンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)として分類されていた)が挙げられる。油性酵母ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)が最も好ましく;さらなる実施形態において、ATCC#76982、ATCC#20362、ATCC#8862、ATCC#18944および/またはLGAM S(7)1と命名されるY.リポリティカ(Y.lipolytica)株が最も好ましい(Papanikolaou S.,and Aggelis G.,Bioresour.Technol.,82(1):43−9(2002))。 Y.リポリティカ(Y.lipolytica)中でのARA、EPAおよびDHA産生の遺伝子操作に適用可能な具体的教示は、それぞれ全て参照により本明細書に援用される米国特許第7,588,931号明細書、米国特許第7,932,077号明細書、米国特許出願公開第2009−0993543−A1号明細書、米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書および米国特許出願公開第2012−0052537−A1号明細書ならびに米国特許第7,550,286号明細書に提供されている。これらの参照文献は、線状DNA断片を宿主のゲノム中に組み込むことによりヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中で遺伝子を発現させる好ましい方法、好ましいプロモーター、終結領域、組込み遺伝子座および破壊ならびにこの特定の宿主種を使用する場合に好ましい選択法も記載している。 同様に、種々の植物は、少なくとも1つのLC多価不飽和脂肪酸を産生し得る(または産生するように遺伝子操作することができる)(例えば、国際公開1998/46764号パンフレット、米国特許出願公開第2004−0172682−A1号明細書参照)、したがって、本明細書に記載のポリヌクレオチドによる形質転換に好適な宿主細胞である。例えば、米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書は、一般に「油糧種子」植物(例えばグリシンおよびダイズ属種[GlycineおよびSoja sp.]、ナタネ属種[Brassica sp.]、ヒマワリ属種[Helianthus sp.]、トウモロコシ、ワタ、アマ属種[Linum sp.]およびベニバナ属種[Carthamus sp.]が挙げられる)と称される油性植物に関する詳細な考察ならびにこれらの種のための好適な組換え構築物を遺伝子操作し、形質転換および形質転換された植物組織および細胞の再生を可能とする手段を提供している。 形質転換された組換え細胞は、本発明のキメラ遺伝子の発現を最適化し、LC多価不飽和脂肪酸の最大および最も経済的な収率を産生する条件下で生育させる。一般に、培地条件は、炭素源の種類および量、窒素源の種類および量、炭素/窒素比、様々なミネラルイオンの量、酸素レベル、生育温度、pH、バイオマス産生期の長さ、油蓄積期の長さならびに細胞収集の時間および方法を改変することにより最適化することができる。 ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)は、一般に、複合培地、例えば酵母エキス−ペプトン−デキストロースブロス[「YPD」]または生育に必要な構成要素を欠き、それにより所望の発現カセットの選択を強制する規定最小培地(例えば酵母窒素基礎培地(DIFCO Laboratories,Detroit,MI))中で生育させる。 本明細書に記載の方法および宿主細胞のための発酵培地は、例えば米国特許第7,238,482号明細書および米国特許出願公開第2011−0059204−A1号明細書に教示される好適な炭素源を含有しなければならない。利用される炭素源は多種多様な炭素含有供給源を包含し得ることが企図されるが、好ましい炭素源は、糖、グリセロールおよび/または脂肪酸である。グルコース、スクロース、転化スクロース、フルクトースおよび/または10〜22個の炭素を含有する脂肪酸が最も好ましい。例えば、発酵性炭素源は、転化スクロース、グルコース、フルクトースおよびそれらの組合せからなる群から選択することができ、但し、グルコースは転化スクロースおよび/またはフルクトースとの組合せで使用される。 窒素は、無機源(例えば(NH4)2SO4)または有機源(例えば尿素またはグルタメート)から供給することができる。適切な炭素および窒素源に加え、発酵培地は、好適なミネラル、塩、補因子、緩衝液、ビタミンおよび/または当業者に公知の、宿主細胞の生育およびLC多価不飽和脂肪酸産生のための酵素的経路の促進に好適な他の構成要素も含有しなければならない。特に、脂質およびPUFAの合成を促進するいくつかの金属イオン、例えばFe+2、Cu+2、Mn+2、Co+2、Zn+2およびMg+2に留意される(Nakahara,T.ら,Ind.Appl.Single Cell Oils,D.J.Kyle and R.Colin,eds.pp 61−97(1992))。 本明細書に記載の方法および宿主細胞に好ましい生育培地は、一般の市販調製培地、例えば酵母窒素基礎培地(DIFCO Laboratories,Detroit,MI)である。他の規定または合成生育培地を使用することもでき、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の生育に適切な培地は微生物学または発酵科学の当業者に公知である。発酵に好適なpH範囲は、典型的には約pH4.0からpH8.0であり、pH5.5からpH7.5が初期生育条件のための範囲として好ましい。発酵は好気性または嫌気性条件下で実施することができ、微好気性条件が好ましい。 典型的には、油性酵母細胞中での高レベルのPUFAの蓄積には、生育と脂肪の合成/貯蔵との間で代謝状態を「平衡」させなければならないため、2段階プロセスが要求される。したがって、最も好ましくは、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中でのLC多価不飽和脂肪酸の産生には2段階発酵プロセスが必要である。このアプローチは、米国特許第7,238,482号明細書に、種々の好適な発酵プロセス設計(すなわち回分、流加および連続)および生育の間の考慮事項として記載されている。 したがって、一態様において、本発明は少なくとも1つのLC多価不飽和脂肪酸の産生を改善する方法であって、(a)本発明の組換え微生物細胞を発酵性炭素源の存在下で生育させること;および(b)場合により、LC多価不飽和脂肪酸を回収することを含む方法を対象とする。 好ましくは、本方法において生育させる組換え微生物細胞は、油性酵母、例えばヤロウイア属(Yarrowia)(例えばY.リポリティカ(Y.lipolytica))のものである。本方法により産生されるLC PUFAは、好ましくは、エイコサジエン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサテトラエン酸、ω−6ドコサペンタエン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ω−3ドコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される。 本発明をさらに以下の実施例において記載し、実施例は本発明の実施の簡略を説明するが、その考えられる変法の全てを完全に定義するものではない。一般的方法 本実施例において使用される標準的な組換えDNAおよび分子クローニング技術は当技術分野において周知であり、1)Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989);2)T.J.Silhavy,M.L.Bennan,and L.W.Enquist,Experiments with Gene Fusions;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1984);および3)Ausubel,F.M.ら,Current Protocols in Molecular Biology,published by Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience,Hoboken,NJ(1987)により記載されている。 微生物培養物の維持および生育に好適な材料および方法は、当技術分野において周知である。以下の実施例における使用に好適な技術は、Manual of Methods for General Bacteriology(Phillipp Gerhardt,R.G.E.Murray,Ralph N.Costilow,Eugene W.Nester,Willis A.Wood,Noel R.Krieg and G.Briggs Phillips,Eds,American Society for Microbiology:Washington,D.C.(1994))において;またはThomas D.BrockによりBiotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology,2nd ed.,Sinauer Associates:Sunderland,MA(1989)に記載のとおり見出すことができる。微生物細胞の生育および維持に使用される全ての試薬、制限酵素および材料は、別記しない限り、Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI)、DIFCO Laboratories(Detroit,MI)、New England Biolabs,Inc.(Beverly,MA)、GIBCO/BRL(Gaithersburg,MD)またはSigma Chemical Company(St.Louis,MO)から入手した。大腸菌(E.coli)株は、典型的にはルリア・ベルターニ[「LB」]プレート上で37℃において生育させた。 一般的な分子クローニングは、標準的方法に従って実施した(Sambrookら,上記)。DNA配列は、ベクターおよびインサート特異的プライマーの組合せを使用するダイターミネーター技術を使用してABI Automaticシーケンサー上で生成した。配列編集は、Sequencher(Gene Codes Corporation,Ann Arbor,MI)中で実施した。 ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株ATCC#20362は、American Type Culture Collection(Manassas,VA)から購入した。Y.リポリティカ(Y.lipolytica)株は、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書に記載のとおり28〜30℃においていくつかの培地(例えば基礎最小培地[「MM」]、最小培地+5−フルオロオロチン酸[「MM+5−FOA」]、高グルコース培地[「HGM」]および発酵培地[「FM」])中で定型的に生育させた。 Y.リポリティカ(Y.lipolytica)の形質転換は、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書に記載のとおり実施した。 脂肪酸[「FA」]分析のため、細胞を遠心分離により回収し、Bligh and Dyer(Can.J.Biochem.Physiol.,37:911−917(1959))による記載のとおり脂質を抽出した。ナトリウムメトキシドによる脂質抽出物のエステル交換反応により脂肪酸メチルエステル[「FAME」]を調製し(Roughan and Nishida,Arch Biochem Biophys.,276(1):38−46(1990))、続いて30m×0.25mm(内径)のHP−INNOWAX(Hewlett−Packard)カラムを装着したHewlett−Packard 6890 GCにより分析した。オーブン温度は、3.5℃/分において170℃(25分間保持)から185℃とした。 直接の塩基エステル交換反応のため、ヤロウィア属(Yarrowia)細胞(0.5mL培養物)を収集し、蒸留水中で1回洗浄し、Speed−Vac中で5〜10分間真空下で乾燥させた。ナトリウムメトキシド(1%の100μl)および既知量のC15:0トリアシルグリセロール(C15:0TAG;カタログ番号T−145、Nu−Check Prep,Elysian,MN)を試料に添加し、次いで試料を50℃において30分間ボルテックスにかけ、揺動させた。3滴の1MのNaClおよび400μlのヘキサンを添加した後、試料をボルテックスにかけ、回転させた。上層を取り出し、GCにより分析した。 あるいは、Lipid Analysis,William W.Christie,2003に記載の塩基触媒エステル交換反応法の改変法を、発酵またはフラスコ試料のいずれかからのブロス試料のルーチン分析に使用した。具体的には、ブロス試料を室温水中で急速解凍し、次いで0.22μmのCorning(登録商標)Costar(登録商標)Spin−X(登録商標)遠心チューブフィルタ(カタログ番号8161)を備えた、タール被覆の2mL微小遠心チューブ中に0.1mgに秤量した。試料(75〜800μl)は、予め測定されたDCWに応じて使用した。Eppendorf5430遠心分離機を使用して、試料を14,000rpmにおいて5〜7分間またはブロスを除去するのに必要な限り、遠心分離した。フィルタを取り出し、液体を排水し、約500μlの脱イオン水をフィルタに添加して試料を洗浄した。遠心分離して水を除去した後、フィルタを再び取り出し、液体を排水し、フィルタを再挿入した。次いで、チューブを遠心分離機中に再挿入し、今度は上部を約3〜5分間開口して乾燥させた。次いで、フィルタをチューブのほぼ中段で切断し、新たな2mL丸底Eppendorfチューブ(カタログ番号22 36 335−2)中に挿入した。 カットフィルタ容器の縁部に接触するのみで、試料にもフィルタ材料にも接触しない適切な道具を用いてチューブの底部にフィルタを押しつけた。トルエン中の既知量のC15:0TAG(上記)を添加し、新たに作製された500μlの1%ナトリウムメトキシドのメタノール中溶液を添加した。試料ペレットを強く崩壊させ、チューブを密封し、50℃加熱ブロック(VWRカタログ番号12621−088)中で30分間静置した。次いで、チューブを少なくとも5分間放冷した。次いで、400μlのヘキサンおよび500μlの1MのNaCl水溶液を添加し、チューブを2×6秒間ボルテックスにかけ、1分間遠心分離した。約150μlの上部(有機)層をインサートを有するGCバイアルに入れ、GCにより分析した。 GC分析を介して記録されたFAMEピークは、それらの保持時間を既知脂肪酸の保持時間と比較して同定し、FAMEピーク面積を既知量の内部標準(C15:0TAG)のFAMEピーク面積と比較することにより定量した。したがって、任意の脂肪酸FAMEの近似量(μg)[「μg FAME」]は式:(規定の脂肪酸についてのFAMEピーク面積/標準FAMEピーク面積)*(標準C15:0TAGのμg)に従って計算する一方、任意の脂肪酸の量(μg)[「μg FA」]は、1μgのC15:0TAGが0.9503μgの脂肪酸に等しいため、式:(規定の脂肪酸についてのFAMEピーク面積/標準FAMEピーク面積)*(標準C15:0TAGのμg)*0.9503に従って計算する。0.9503の変換係数は、0.95から0.96の範囲である大部分の脂肪酸について決定された値の近似であることに留意されたい。 TFAの重量パーセント(すなわちFA%TFA)としてそれぞれ個々の脂肪酸の量をまとめた脂質プロファイルは、個々のFAMEピーク面積を全てのFAMEピーク面積の合計により除し、100を乗じて決定した。 個々の脂肪酸または総脂肪酸の量を乾燥細胞重量の重量パーセント[「%DCW」]として定量するため、10mLの培養物からの細胞を遠心分離により回収し、10mLの水により1回洗浄し、遠心分離により再度回収した。細胞を1〜2mLの水中で再懸濁させ、予め秤量されたアルミニウム秤量パン中に注ぎ、1〜2mLの水によりすすぎ、さらに同一の秤量パンに添加した。パンを真空下で80℃において一晩静置した。パンを秤量し、空のパンの重量を減じることによりDCWを算出した。次いで、%DCWとしての脂肪酸の測定は、μg DCWの分数としてのμg FAMEまたはμg FAのいずれかに基づき算出することができる(例えば、FAME%DCWは、μg FAME/μg DCW*100として算出した)。 特定のY.リポリティカ(Y.lipolytica)株中の総脂質含有率および組成を詳細に分析するため、フラスコアッセイを以下のとおり実施した。具体的には、新たに画線された細胞の1つのループを3mLのFM培地中に接種し、250rpmおよび30℃において一晩生育させた。OD600nmを計測し、125mLフラスコ中の25mLのFM培地中に0.3の最終OD600nmまで細胞のアリコートを添加した。250rpmにおける30℃の振とうインキュベータ中で2日後、6mLの培養物を遠心分離により収集し、125mLフラスコ中の25mLのHGM中で再懸濁させた。250rpmにおける30℃の振とうインキュベータ中で5日後、1mLのアリコートを脂肪酸分析に使用し、10mLを乾燥細胞重量測定のために乾燥させた。実施例1ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LPCATの単離 参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2010−0317882−A1号明細書は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Ale1(すなわち「ScAleI」;配列番号2;GenBank受託番号NP_014818;米国特許第7,732,155号明細書;国際公開第2009/001315号パンフレット)に対するY.リポリティカ(Y.lipolytica)相同体の同定を記載している。この相同体は、その文献においてYlAleIまたはYlLPCAT(配列番号4)のいずれかと命名され、ORF YALI0F19514p(GenBank受託番号XP_505624;国際公開第2009/001315号パンフレット)に対応し、ScAleIと45%同一であることが見出された。 YlLPCATを分析し、参照により本明細書に援用される米国特許第7,732,155号明細書および米国特許出願公開第2008−0145867−A1号明細書に同定されたAle1相同体中に存在する非植物モチーフの存在または不存在を決定した。具体的には、これらのモチーフは、配列番号8〜15(表2)である。他のLPCATの研究(Leeら,2008,Mol.Biol.Cell 19:1174−1184)を考慮すると、配列番号11(SAxWHG−X2−PGY−X2−[T/F]−F)中のHis残基は、タンパク質内の活性部位残基であり得る。YlLPCATは、少なくともモチーフ配列番号8〜11を含むことが決定された。本明細書において、これらの保存モチーフは、触媒作用に関与する可能性が高いと仮定される。 EPAを産生するように遺伝子操作されたY.リポリティカ(Y.lipolytica)株中のYlLPLATの過剰発現は、TFAの重量%としてのLA(18:2)の濃度[「LA%TFA」]の顕著な低減、TFAの重量%としてのEPAの濃度[「EPA%TFA」]の増加およびΔ9エロンガーゼの変換効率の増加をもたらした(米国特許出願公開第2010−0317882−A1号明細書)。実施例2ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中でのPDATとLPCATまたはLPAATとの同時発現 本実施例は、高レベルのエイコサペンタエン酸[「EPA」]含有脂質を産生するように遺伝子操作されたY.リポリティカ(Y.lipolytica)株中でのY.リポリティカ(Y.lipolytica)PDAT(リン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ[EC2.3.1.158])と、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)LPCAT(アシルCoA:リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ[EC2.3.1.23])またはY.リポリティカ(Y.lipolytica)LPAAT(アシルCoA:リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ[EC2.3.1.51])のいずれかとの過剰発現を記載する。PDATおよびLPAATを同時発現するヤロウイア属(Yarrowia)形質転換体と比較して、PDATおよびLPCATを同時発現する形質転換体は、増加量の、総脂肪酸の重量パーセント(EPA%TFA)として計測されるEPAを産生した。さらに、PDATおよびLPCATの同時発現は、増加したΔ9エロンガーゼ変換効率パーセントとして計測される増加したC18からC20への伸長変換効率および増加量の、乾燥細胞重量の重量パーセント(TFA%DCW)として計測される総脂肪酸をもたらした。PDATとLPAATまたはLPCATとの過剰発現のためのベクターの構築 PDATおよびLPCATの酵素活性が相乗的に機能してヤロウイア属(Yarrowia)中での油およびEPA産生を改善するかどうかを試験するため、PDATとLPAATとの同時発現の効果をPDATとLPCATとの同時発現の効果と比較した。 プラスミドpY196(図3A、配列番号43)およびpY301(図3B、配列番号44)をそれらの酵素ペアをY.リポリティカ(Y.lipolytica)中で同時発現するように構築した。表5および6にそれぞれ列挙されるとおり、これらのプラスミドの両方は、野生型Y.リポリティカ(Y.lipolytica)PDAT(配列番号32)を発現するためのキメラYAT1::YlPDAT::Pex16遺伝子を含有した。pY196は、野生型Y.リポリティカ(Y.lipolytica)LPAAT1(配列番号23)を発現するためのキメラFBAINm::YlLPAAT1::Lip1遺伝子も含有した一方、pY301は、野生型Y.リポリティカ(Y.lipolytica)LPCAT(配列番号4)を発現するためのキメラYAT1::YlLPCAT::Lip1遺伝子も含有した。pY196またはpY301により形質転換されたY.リポリティカ(Y.lipolytica)株Z5567U19中での脂質産生 プラスミドpY196およびpY301をPmeIおよびSwaIにより消化した。それぞれの消化物の大きいほうの断片をカナマイシン耐性遺伝子断片から離してアガロース精製し、それを使用してヤロウイア属(Yarrowia)株Z5567U19を染色体組込みにより形質転換した。Z5567U19は、Z5567のUra−株であり、増加量の長鎖多価不飽和脂肪酸含有脂質を産生する。株Z5567およびZ5567U19の開発に関する詳細は、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2012−0052537A1号明細書に提供されている。プラスミドDNAを含めない対照形質転換も実施した。 形質転換細胞をMMプレート上にプレーティングし、30℃において5日間維持した(MMは、1リットル当たり:20gのグルコース、1.7gのアミノ酸を有さない酵母窒素基礎培地、1.0gのプロリン、pH6.1(調整不要)を含む)。次いで、それぞれの実験形質転換(すなわちPDAT+LPCAT[pY301]またはPDAT+LPAAT[pY196]のいずれか)についての11個のコロニーをMMプレート上に再画線し、続いて脂質含有率について分析した。 表7は、それぞれの形質転換体および対照における総乾燥細胞重量[「DCW」]、TFA%DCW、TFAの重量パーセントとしてのEPAの濃度[「EPA%TFA」]、EPA%DCWならびにLAおよびALAのEPAへの総Δ9エロンガーゼパーセント変換効率[「d9E CE」]をまとめる。d9e CEの算出は、式:(EDA+HGLA+ARA+ERA+ETA+EPA)/(C18:2+C18:3+EDA+HGLA+ARA+ERA+ETA+EPA)*100に従って行った。 pY196およびpY301形質転換体の両方が、対照と比較して改善されたEPA%TFAおよびd9e CEを有した。具体的には、pY301形質転換体(PDAT+LPCAT)に関して、それらは、対照に対してそれぞれ約6.5%および6.6%のEPA%TFAおよびd9e CEの平均増加を示した。さらに、pY301形質転換体は、pY196形質転換体について計測されたそれぞれの平均値よりもそれぞれ20.5%、1.6%、2.1%および2.5%高い平均DCW、TFA%DCW、EPA%TFAおよびd9E CE値をそれぞれ有した。 ある個々の形質転換体の脂質の差異も比較した。具体的には、pY196形質転換体L314およびpY301形質転換体L317の脂質プロファイルを相互および対照の株L313と比較してさらに分析した(表8)。 形質転換体L317は、対照および形質転換体L314の両方と比較して改善されたTFA%DCW、EPA%TFA、EPA%DCWおよびd9e CEを有した。 他の方針によるヤロウイア属(Yarrowia)中の脂質を向上させる従来の試みは、大部分が増加した総脂質含有率[TFA%DCW]を生じたが、TFAの重量パーセントとしてのEPA濃度[EPA%TFA]は減少し、その逆も同様であった(すなわちTFA%DCWが低下すればEPA%TFAが高くなる)。しかしながら、形質転換体L317において、これらの因子の両方が対照およびL314に対して増加した。したがって、形質転換体L317中でのPDATおよびLPCATの同時過剰発現は、ホスファチジルコリン[「PC」]中に含有されるEPAがDAGに転移される比率を増加させる一方、EPA−CoAを使用してPCがリゾホスファチジルコリンから再貯蔵される比率も増加させることにより、アシルCoA貯蔵物(すなわちEPA−CoA)からのEPAのTAGへの平衡移動を可能とし得る。 PDATおよびLPCATの過剰発現(株L317)は、PDATおよびLPAATの過剰発現(株L314)と比較して利点を有すると考えられる。これは、リン脂質由来脂肪酸を使用するTAGの合成におけるPDATとLPAATとの間よりも大きいPDATとLPCATとの間の相乗作用を指摘し得る。両方の過剰発現系において、PDATは、PCおよびホスファチジン酸[「PA」]貯蔵物から脂肪酸をDAGに転移する。PDATおよびLPCATを使用して観察されたPDATおよびLPAATと比較して高レベルの脂質産生は、継続PDAT活性のための脂肪酸源としてのそれぞれLPCATおよびLPAATによるPCおよびPAの再生の比率のこれまで認識されなかった差異を反映し得る。実施例3バリアントYlLPCATを含むプラスミドpY306−Nの合成 本実施例は、バリアントYlLPCAT配列を含むヤロウイア属(Yarrowia)自己複製ベクター(プラスミドpY306−N、配列番号48)の構築を記載する。本明細書においてYlLPCAT*(配列番号45)と命名されるバリアントYlLPCATポリヌクレオチド配列は、野生型YlLPCATコード領域中に存在する2つのNcoI制限酵素部位を欠く。これらの内部NcoI部位の除去は、後続のクローニング手順を容易にした。 対照として、野生型YlLPCAT ORF(配列番号3;実施例1)をヤロウイア属(Yarrowia)自己複製ベクター中にクローニングし、ColE1プラスミド複製起点、アンピシリン耐性遺伝子、f1複製起点およびY.リポリティカ(Y.lipolytica)Ura3遺伝子(GenBank受託番号AJ306421)を含むプラスミドpY306(配列番号47)をもたらした。 バリアントYlLPCAT配列は、GenScript Corporation(Piscataway,NJ)により合成した。2つの内部NcoI制限部位をサイレント突然変異の創成により除去した一方、NcoIおよびNotI部位をYlLPCATオープンリーディングフレームの5’および3’末端においてそれぞれ付加してクローニングを容易にした。具体的には、A12T突然変異(すなわちYlLPCAT(配列番号3)中の12位におけるアデノシン[A]のYlLPCATバリアント中のチミン[T]への変化)およびT918C突然変異(すなわちYlLPCAT(配列番号3)中の918位におけるチミン[T]の、YlLPCATバリアント中のシトシン[C]への変化)を、YlLPCATコード配列中に導入した。これら2つのヌクレオチド置換は、バリアント配列によりコードされるアミノ酸に関してサイレントであった。内部NcoI部位を欠くバリアントYlLPCAT(すなわちYlLPCAT*)をコードするヌクレオチド配列を配列番号45により表わす一方、それによりコードされるアミノ酸を配列番号46により表し、それは配列番号4(野生型YlLPCAT)と同一である。 続いて、YlLPCAT*をプラスミドpY306中にクローニングし、それによりpY306−N(配列番号48;図4)を産生した。したがって、構築物pY306−Nは以下の構成要素を含有した。 プラスミドpY306−Nを使用してYlLPCATタンパク質の単一および二重突然変異体をそれぞれ以下の実施例4および6に記載のとおり調製した。実施例4改変モチーフを有する突然変異YlLPCAT酵素の設計および合成 YlLPCAT内の保存アミノ酸モチーフが触媒作用に関与する可能性が高いという前提に基づき、バリアントモチーフを有する突然変異体の生成が、改善された機能活性を有するLPCAT酵素の同定をもたらし得ることが結論づけられた。 一連の単一アミノ酸置換を、配列番号4のアミノ酸残基132から148に跨る保存配列(すなわちモチーフI)内および配列番号4のアミノ酸残基376から390に跨る保存配列(すなわちモチーフII)内で設計した。モチーフI内では、表10に示されるとおり、モチーフ内の17アミノ酸残基のそれぞれにおける種々の置換を創成することにより合計195種のアミノ酸置換を設計した。 同様に、モチーフII内では、表11に示されるとおり、モチーフ内の15アミノ酸残基の12残基内の種々の置換を創成することにより合計134種のアミノ酸置換を設計した。置換は、W379、H380およびG381において行わなかった。それというのも、YlLPCATのH380に対応する他のLPCATのヒスチジンは、活性部位残基である可能性が高いことが報告されているためである(Leeら,2008,Mol.Biol.Cell 19:1174−1184)。 上記表10および11に記載の329種のYlLPCAT突然変異体のそれぞれを、GenScript Corporation(Piscataway,NJ)により個々に合成し、NcoI/NotI切断pY306−Nベクター中にクローニングした。実施例5改善されたLPCAT活性を有するYlLPCAT中の単一アミノ酸置換の同定 本実施例は、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)株Y8406U2中へのYlLPCAT突然変異ポリヌクレオチド配列(実施例4)を含む329種のpY306−Nベクターのそれぞれの形質転換と、それに続く形質転換体の脂質プロファイルの分析を記載する。 改善されたLPCAT活性は、米国特許出願公開第2010−0317882−A1号明細書に記載の観察に基づき間接的に評価し、実施例1(上記)にまとめた。具体的には、突然変異YlLPCATを含むY.リポリティカ(Y.lipolytica)株Y8406U2形質転換体内の改善されたLPCAT活性が、TFAの重量%としてのEPAの濃度[「EPA%TFA」]の増加および/またはΔ9エロンガーゼの変換効率の増加(因子のいずれかを親野生型YlLPCATタンパク質を発現するY.リポリティカ(Y.lipolytica)株Y8406U2中のEPA%TFAまたはΔ9エロンガーゼの変換効率とそれぞれ比較した場合)に基づき結論づけられた。Y.リポリティカ(Y.lipolytica)株Y8406U2の形質転換 実施例4において調製された突然変異YlLPCATを含有するpY306−Nベクターのそれぞれの1つを個々に発現するように株Y8406U2を形質転換した。Y8406U2は、Y8406のUra−株である。株Y8406およびY8406U2の開発に関する詳細は、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2010−0317882−A1号明細書に提供されている。形質転換後、細胞をMMプレート上に入れ、次いでそれぞれの形質転換の3つの個々の形質転換体を新たなMMプレート上で画線し、30℃のインキュベータ中で2日間保持した。画線されたプレートからの細胞を、3mLのMMを有する24ウェルブロック中で培養し、250rpmにおいて振とうさせながら30℃において2日間インキュベートした。次いで、細胞を遠心分離により回収し、3mLの高グルコース培地[「HGM」](高グルコース培地は、1リットル当たり:80gのグルコース、2.58gのKH2PO4および5.36gのK2HPO4、pH7.5(調製不要)を含む)中で再懸濁させた。細胞を200rpmにおいて振とうさせながら30℃においてさらに5日間インキュベートした。HGM中での生育の5日後、細胞を遠心分離により回収し、脂質を抽出し、FAMEをナトリウムメトキシドによる脂質抽出物のエステル交換反応(Roughan,G.,and Nishida I.,Arch.Biochem.Biophys.,276(1):38−46(1990))により調製し、続いてガスクロマトグラフィー(GC)により分析した。YlLPCATの単一突然変異体の発現のために形質転換されたヤロウイア属(Yarrowia)内の脂質プロファイルの分析 以下の表12(バッチ1)、13(バッチ2)、14(バッチ3)、15(バッチ4)および16(バッチ5)は、特定の単一突然変異YlLPCAT(モチーフIまたはモチーフII中の単一アミノ酸置換)を発現するためのプラスミドを含む個々のY8406U2形質転換体の脂肪酸プロファイルおよびΔ9エロンガーゼ変換効率を示す。これらの計測は、ある対照についても行った:空のベクター[「EV」](すなわちLPCAT遺伝子を有さない複製プラスミド[バッチ#1のみ])またはpY306−N(野生型YlLPCATタンパク質発現[「WT」])を含む形質転換体。 より具体的には、それぞれの表は、それぞれの特定の形質転換体について分析されたレプリケートの数[「#」]、TFAの重量パーセントとしてのそれぞれの脂肪酸の平均濃度[「%TFA」]、EPA%TFAについての標準偏差[「EPA SD」]およびΔ9エロンガーゼ変換効率[「%変換」]をまとめる。%変換は、それぞれの形質転換体について以下の式:(EDA+HGLA+ARA+ERA+ETA+EPA)/(C18:2+C18:3+EDA+HGLA+ARA+ERA+ETA+EPA)*100に従って算出した。 計測された脂肪酸は、16:0(パルミテート)、16:1(パルミトレイン酸)、18:0(ステアリン酸)、18:1(オレイン酸)、18:2(リノール酸)、ALA(α−リノレン酸)、EDA(エイコサジエン酸)、DGLA(ジホモ−γ−リノレン酸)、ARA(アラキドン酸)、ETrA(エイコサトリエン酸)、ETA(エイコサテトラエン酸)およびEPA(エイコサペンタエン酸)であった。 野生型YlLPCAT対照に対するそれぞれの突然変異体の性能の比較は、それぞれの突然変異体が分析された特定のバッチ内でのみ行うべきである(すなわち例えば比較はバッチ#1とバッチ#2との間で行うべきではない)。太字フォントとそれに続く「+」により示される突然変異体を、下記のさらなる試験のために選択した。 上記データに基づくと、YlLPCAT単一アミノ酸突然変異体のいくつかは、親野生型YlLPCAT酵素(配列番号46)と比較してほぼ同等のまたは改善された活性で機能することが明らかであった。この結論は、EPA%TFAおよび/または%変換に応じたLPCAT活性の計測に基づきなされた。実際、突然変異体YlLPCAT形質転換体の全ては、対照(野生型YlLPCATによる形質転換体)において計測されたEPA%TFAの少なくとも75%のEPA%TFAを有した。また、突然変異YlLPCAT形質転換体の全ては、対照において計測された%変換の少なくとも87.6%の%変換を有した。 56種のYlLPCAT突然変異体(配列番号46に関して以下の突然変異の1つを含む:L134A、L134C、L134G、C135D、C135I、M136G、M136P、M136S、M136V、K137N、K137G、K137H、K137Y、L138A、L138H、L138M、S139L、S139W、S140N、S140H、S140P、S140W、F141A、F141M、F141W、G142H、W143L、N144A、N144K、N144F、N144T、N144V、V145A、V145G、V145E、V145M、V145F、V145W、Y146G、Y146L、Y146M、D147N、D147Q、D147H、G148A、G148N、T382I、T382P、R383M、L388G、L388Y、T389A、T389C、T389SおよびF390C)は、同等のまたは改善されたEPA%TFAおよび同等のまたは改善された%変換を示すことが見出された。別の14種のYlLPCAT突然変異体は、対照と比較して同等のまたは改善されたEPA%TFAを有することが決定され(しかし、同等のまたは改善された%変換を有さなかった)、それとしては突然変異体V133C、M136N、L138G、L138I、L138N、S139G、S139N、W143H、G148V、L388H、L388T、F390G、F390NおよびF390Tが挙げられる。別の12種の突然変異体は、対照と比較して同等のまたは改善された%変換を有することが決定され(しかし、同等のまたは改善されたEPA%TFAを有さなかった)、それとしては突然変異体C135F、M136T、S140Y、S140I、F141V、G142I、G142V、D147E、F378Y、T382Y、R383AおよびF390Sが挙げられる。 モチーフIまたはモチーフII内のいずれかの単一突然変異をそれぞれ含み、同等のもしくは改善されたEPA%TFAおよび/または同等のもしくは改善された%変換を有する合計26種のYlLPCAT突然変異体を、さらなる評価(以下、実施例6)のために選択した:L134A(100.4%、100.6%)、L134G(101.3%、100.7%)、M136S(104.0%、104.0%)、M136V(102.2%、103.3%)、K137H(107.3%、104.4%)、K137N(101.8%、102.0%)、S140H(107.3%、104.3%)、S140W(103.2%、103.8%)、F141M(105.4%、106.7%)、F141W(101.2%、101.6%)、N144A(105.3%、103.4%)、N144T(101.8%、101.6%)、V145M(102.0%、104.0%)、V145W(100.4%、100.5%)、D147H(105.3%、102.3%)、D147Q(103.6%、101.2%)、G148A(101.3%、101.8%)、G148N(102.2%、101.8%)、T382I(102.9%、102.5%)、T382P(100.2%、100.2%)、R383M(103.6%、104.0%)、L388G(101.6%、100.2%)、L388Y(100.0%、99.9%)、T389A(102.2%、101.2%)、T389C(102.1%、101.5%)、T389S(101.9%、101.7%)、それぞれの括弧の組内の1番目および2番目の割合は、野生型YlLPCAT対照形質転換体におけるEPA%TFAおよび%変換に対する突然変異YlLPCAT形質転換体におけるEPA%TFAおよび%変換の割合比にそれぞれ対応する。モチーフIまたはモチーフII内のいずれかの単一突然変異をそれぞれ含む別の8種の突然変異体も、さらなる評価(以下、実施例6)のために選択した:F378Y(99.6%、101.1%)、T382Y(99.8%、100.8%)、P384A(98.7%、99.0%)、P384G(99.2%、98.6%)、L388T(100.5%、98.3%)、F390G(102.4%、99.8%)、F390S(99.4%、100.5%)およびF390T(101.6%、99.3%)、括弧の組は上記のとおりである。実施例6改善されたLPCAT活性を有するYlLPCAT中の二重アミノ酸置換の同定 本実施例は、モチーフI内の単一突然変異およびモチーフII内の単一突然変異の両方を含む二重YlLPCAT突然変異体の合成を記載する。これらの二重突然変異体をY.リポリティカ(Y.lipolytica)株Y8406U2中に形質転換し、次いで形質転換体の脂質プロファイルを分析した。実施例5におけるとおり、改善されたLPCAT活性がEPA%TFAおよび%変換に基づき間接的に評価された。二重YlLPCAT突然変異体の生成 好ましいモチーフI内の単一突然変異(L134A、L134G、M136S、M136V、K137H、K137N、S140H、S140W、F141M、F141W、N144A、N144T、V145W、V145M、D147H、D147Q、G148AおよびG148N)を、好ましいモチーフII内の単一突然変異(F378Y、T382I、T382P、T382Y、R383M、P384A、P384G、L388G、L388T、L388Y、T389A、T389C、T389S、F390G、F390S、F390T)と組み合わせて二重突然変異YlLPCAT配列の種々の組合せを生成した。したがって、例えば、モチーフI内のS140W突然変異およびモチーフII内のT382I突然変異を含むYlLPCAT突然変異体は、本明細書においてYlLPCAT突然変異体S140W_T382Iと称される。これらの二重突然変異体をGenScript Corporation(Piscataway,NJ)により個々に合成し、NcoI−NotI切断pY306−Nベクター中にクローニングし;配列番号42が、クローニングされた配列によりコードされる突然変異YlLPCATタンパク質を表す。Y.リポリティカ(Y.lipolytica)株Y8406U2の形質転換およびpY306−N形質転換体内の脂質プロファイルの分析 プラスミドをY.リポリティカ(Y.lipolytica)株Y8406U2中に形質転換し、続いて形質転換体を生育させ、実施例5に記載のとおり脂質分析に供した。表17(バッチ6)、18(バッチ7)、19(バッチ8)および20(バッチ10)は、Y8406U2の個々の形質転換体の脂肪酸プロファイルおよびΔ9エロンガーゼ変換効率を示す。これらの計測は、pY306−N(野生型YlLPCATタンパク質発現[「WT」])を含む対照形質転換体についても行った。表を実施例5に記載のとおり形式化する。 野生型YlLPCAT対照に対するそれぞれの突然変異体の性能の比較は、それぞれの突然変異体が分析された特定のバッチ内でのみ行うべきである(すなわち比較は、バッチ#6とバッチ#7との間で行うべきではない)。太字フォントとそれに続く「+」により示される突然変異体を、下記のフラスコアッセイを含むさらなる試験のために選択した。 上記データセットに基づくと、上記で分析された167種のYlLPCAT二重突然変異体の大部分が、親野生型酵素(配列番号46)と比較してほぼ同等のまたは改善された活性で機能したことが明らかである。この結論は、EPA%TFAおよび/または%変換に応じたLPCAT活性の計測に基づきなされた。 より具体的には、モチーフI内の単一アミノ酸突然変異およびモチーフII内の単一アミノ酸突然変異を含む106種のYlLPCAT突然変異体は、同等のまたは改善されたEPA%TFAおよび同等のまたは改善された%変換を示すことが見出された。これらの突然変異体は、L134A_T382I、L134A_L388G、L134A_F390T M136S_F378Y、M136S_T382I、M136S_T382P、M136S_T382Y、M136S_R383M、M136S_P384A、M136S_L388Y、M136S_T389A、M136S_T389C、M136S_T389S、M136V_T382P、M136V_T382Y、M136V_P384A、M136V_L388Y、M136V_T389A、M136V_T389C、M136V_T389S、K137H_P384G、K137H_L388G、K137H_L388T、K137H_F390S、K137H_F390T、K137N_T382P、K137N_R383M、K137N_P384G、K137N_F378Y、K137N_L388G、K137N_L388T、K137N_T389A、K137N_T389C、K137N_T389S、K137N_F390G、K137N_F390S、K137N_F390T、S140H_T382I、S140H_P384G、S140H_L388G、S140H_L388T、S140H_F390G、S140H_F390S、S140W_T382I、S140W_T382P、S140W_T382Y、S140W_R383M、S140W_P384A、S140W_L388Y、S140W_T389A、S140W_T389C、F141M_F378Y、F141M_T382Y、F141M_R383M、F141M_P384A、F141M_T389C、F141W_F378Y、F141W_T382I、F141W_T382P、F141W_T382Y、F141W_R383M、F141W_P384A、F141W_T389A、F141W_T389C、F141W_T389S、N144A_P384G、N144A_L388G、N144A_L388T、N144A_F390G、N144A_F390S、N144A_F390T、N144T_F378Y、N144T_T382P、N144T_T382Y、N144T_R383M、N144T_P384A、N144T_L388Y、N144T_T389A、N144T_T389C、N144T_T389S、V145M_T382I、V145M_R383M、V145M_T389A、V145M_T389C、V145W_T382I、D147H_T382I、D147H_L388G、D147H_L388T、D147H_F390S、D147Q_T382I、D147Q_F390S、G148A_F378Y、G148A_T382I、G148A_T382Y、G148A_R383M、G148A_P384G、G148A_L388G、G148A_L388Y、G148A_T389A、G148A_T389C、G148A_F390S、G148A_F390T、G148N_T382I、G148N_L388T、G148N_F390GおよびG148N_F390S)であった。 別の15種のYlLPCAT二重突然変異体(分析された167種のうち)は、対照と比較して同等のまたは改善されたEPA%TFAを有した一方、別の6種のYlLPCAT二重突然変異体(分析された167種のうち)は、対照と比較して同等のまたは改善された%変換を有することが決定された。フラスコアッセイによる改善されたLPCAT活性の確認 モチーフI内の単一アミノ酸突然変異およびモチーフII内の単一アミノ酸突然変異をそれぞれ含み、同等のもしくは改善されたEPA%TFAおよび/または同等のもしくは改善された%変換を有する合計23種のYlLPCAT二重突然変異体を、さらなる評価のために選択した(これらの突然変異体は、表17〜20に太字および「+」により示す)。これらの突然変異体は、S140W_T382P、S140W_T389A、M136V_T389A、M136V_T389C、M136V_T389S、K137N_T389A、K137N_T389C、K137N_T389S、M136S_T389A、M136S_T389C、M136S_T389S、F141W_T382I、L134A_T382I、K137N_F390G、K137H_L388G、K137H_L388T、S140H_T382I、S140H_L388G、N144A_F390S、D147H_T382I、G148A_F390S、G148N_T382IおよびG148N_F390Sであった。さらに、対照と比較してわずかに縮小したEPA%TFAおよびわずかに縮小した%変換をそれぞれ有する突然変異体M136V_F378YおよびG148A_L388Tをさらなる評価のために選択した。 これらの二重突然変異YlLPCATタンパク質を発現する形質転換体を、総脂質含有率および組成の詳細分析のためにフラスコアッセイに供した。具体的には、二重突然変異株を15mLのFalcon(商標)チューブ中の3mLのFM中に個々に接種し、30℃および250rpmにおいて一晩生育させた。OD600nmを計測し、125mLのフラスコ中の25mLのFM培地中に0.3の最終OD600nmまで細胞のアリコートを添加した。250rpmおよび30℃におけるMultitron振とうインキュベータ中で2日後、6mLの培養物を遠心分離により収集し、元の125mLのフラスコ中の25mLのHGM中で再懸濁させた。250rpmおよび30℃における振とうインキュベータ中で5日後、水をフラスコに添加して総容量を25mLに戻した(それにより蒸発分を占めた)。アリコートを脂肪酸分析(上記)に使用し、10mLの培養物を乾燥細胞重量測定のために乾燥させた。 DCW測定のため、10mLの培養物をBeckman GS−6R遠心分離機中のBeckman GH−3.8ロータ中で4000rpmにおける5分間の遠心分離により収集した。ペレットを25mLの水中で再懸濁させ、上記のとおり再収集した。洗浄されたペレットを20mLの水中で再懸濁させ、予め秤量されたアルミニウムパンに移した。細胞懸濁液を真空オーブン中で80℃において一晩乾燥させた。細胞の重量を測定した。 フラスコアッセイ結果を、以下の表21(グループI)および22(グループII)に示す。表は、それぞれの特定の形質転換体について分析されたレプリケートの数[「#」]、細胞の平均総乾燥細胞重量[「DCW」]、細胞の平均総脂質含有率[「TFA%DCW」]、TFAの重量パーセントとしてのそれぞれの脂肪酸の平均濃度[「%TFA」]、Δ9エロンガーゼ変換効率[「%変換」]および乾燥細胞重量のパーセントとしての平均EPA含有率[「EPA%DCW」]をまとめる。 モチーフI内の単一アミノ酸突然変異およびモチーフII内の単一アミノ酸突然変異をそれぞれ含む分析された25種のYlLPCAT二重突然変異体のうち、17種が同等のまたは改善されたEPA%TFAおよび同等のまたは改善された%変換の両方を有する一方、残りの8種は同等のまたは改善された%変換を有することが観察された。 上記データセットに基づくと、上記で分析された25種のYlLPCAT二重突然変異体の22種は、親野生型酵素(配列番号46)と比較して改善された活性で機能した。 また、ある二重突然変異LPCATタンパク質の過剰発現は、組換えヤロウイア属(Yarrowia)中で増加した総脂質含有率(TFA%DCW)をもたらした。例えば、S140W_T382P、S140W_T389A、M136V_T389SおよびF141W_T382IまたはK137H_L388G突然変異ペアを含む突然変異LPCATポリペプチドの過剰発現は、対照の総脂質含有率に対して8%以上増加した総脂質含有率をもたらした(表21および22)。興味深いことに、ある形質転換体は、増加した総脂質含有率およびEPA%TFAの両方を有した。例えば、S140W_T389A、M136V_T389C、M136S_T389AまたはM136S_T389S突然変異ペアを有するLPCATを過剰発現する形質転換体は、対照に対して総脂質含有率の少なくとも5%の増加およびEPA%TFAの少なくとも約3%の増加を有した(表21および22)。従来、総脂質含有率およびEPA%TFAの両方の同時増加を誘導することは困難であったため、このことは重要な観察である。通常、総脂質含有率の増加はEPA%TFAの減少に対応し、その逆も同様であった。 表21および22に太字および「+」により列挙された二重突然変異YlLPCATポリペプチド、すなわちM136S_T389A、M136S_T389C、M136S_T389S、M136V_T389C、N144A_F390S、G148A_F390S、G148N_T382IおよびG148N_F390Sは、本明細書においてそれぞれ配列番号79、81、83、85、87、89、91および93として開示される。実施例7EPA産生のための突然変異ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LPCATの過剰発現と同時のヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)PDATの過剰発現 本実施例は、高レベルのエイコサペンタエン酸[「EPA」]含有脂質を産生するように遺伝子操作されたY.リポリティカ(Y.lipolytica)株中でのY.リポリティカ(Y.lipolytica)PDATの過剰発現を記載し、株は、モチーフI内の単一突然変異および/またはモチーフII内の単一突然変異を含む突然変異Y.リポリティカ(Y.lipolytica)LPCATも過剰発現する。 より具体的には、実施例6に記載の好ましい突然変異YlLPCATポリヌクレオチドのいずれかを発現プラスミドpY301(配列番号44、実施例2)中にクローニングして野生型YlLPCATをコードするポリヌクレオチドを突然変異YlLPCATをコードするポリヌクレオチドにより置き換える。次いで、この改変プラスミドを使用してPUFA、例えばEPAを産生するように遺伝子操作されたY.リポリティカ(Y.lipolytica)の任意の好ましい株を形質転換する。形質転換されたヤロウイア属(Yarrowia)を生育させ、実施例2におけるとおり脂質含有率およびPUFA産生について分析する。 少なくとも1つの長鎖多価不飽和脂肪酸の産生のための組換え微生物細胞であって、 (a)アシルCoA:リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)活性を有する少なくとも1つのポリペプチド; (b)リン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)活性を有する少なくとも1つのポリペプチド;および (c)少なくとも1つの長鎖多価不飽和脂肪酸を産生し得る多価不飽和脂肪酸生合成経路を含み、 (a)および(b)の前記ポリペプチドは過剰発現され、対照細胞と比較して増加量の、総脂肪酸の重量パーセントとして計測される多価不飽和脂肪酸を有する組換え微生物細胞。 対照細胞と比較して以下: (i)増加したC18からC20への伸長変換効率または (ii)増加量の、乾燥細胞重量の重量パーセントとして計測される総脂肪酸の少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の組換え微生物細胞。 前記増加したC18からC20への伸長変換効率は、増加したΔ9エロンガーゼ変換効率または増加したΔ6エロンガーゼ変換効率の効果である、請求項2に記載の組換え微生物細胞。 PDAT活性を有する前記ポリペプチドは、Clustal Wアラインメント法に基づき配列番号32(YlPDAT)および配列番号30(ScPDAT)からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して少なくとも90%のアミノ酸同一性を有する、請求項1に記載の組換え微生物細胞。 LPCAT活性を有する前記ポリペプチドは、以下のものからなる群から選択される、請求項1に記載の組換え微生物細胞: (a)Clustal Wアラインメント法に基づき配列番号2(ScLPCAT)および配列番号4(YlLPCAT)からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して少なくとも45%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド; (b)以下のものからなる群から選択される少なくとも1つの膜結合O−アシルトランスフェラーゼタンパク質ファミリーモチーフを含むポリペプチド:配列番号5(WHG−X3−GY−X3−F)、配列番号6(Y−X4−F)、配列番号7(Y−X3−YF−X2−H)、配列番号8(M−[V/I]−[L/I]−X2−K−[L/V/I]−X8−DG)、配列番号9(RxKYY−X2−W−X3−[E/D]−[A/G]−X5−GxG−[F/Y]−xG)、配列番号10(EX11WN−X2−[T/V]−X2−W)、配列番号11(SAxWHG−X2−PGY−X2−[T/F]−F)、配列番号12(M−[V/I]−[L/I/V]−[V/C/A/T]−[M/L/Q]−K−[L/V/I/M]−[S/T/Y/I]−[S/T/A/M/G]−[F/L/C/Y]−[C/A/G/S]−[W/Y/M/I/F/C]−[N/S/E/Q/D]−[V/Y/L/I]−[H/Y/A/N/S/T]−DG)、配列番号13(R−[L/M/F/W/P/Y]−KYY−[G/A/F/H/S]−[V/A/I/C]−W−[Y/E/T/M/S/L]−[L/I/N]−[T/S/A]−[E/D]−[G/A]−[A/S/I/V]−[C/S/I/N/H/L]−[V/I/N]−[L/I/N/A/C]−[S/C/W/A/I]−G−[M/I/L/A/F]−G−[Y/F]−[N/E/S/T/R/K]−G)、配列番号14(E−[T/F/L/M]−[A/S]−[Q/D/P/K/T]−[N/S]−[S/I/T/L/A/M/F]−[H/K/R/V]−[G/C/E/T/Q/D/M]−[Y/A/M/L/I/F]−[L/S/P/I]−[G/E/A/L/N/D]−[S/A/V/F/M/N]−WN−[K/M/I/C]−[N/K/Q/G]−[T/V]−[N/A/S]−[H/K/N/T/R/L]−W)、配列番号15(SA−[F/M/V/I]−WHG−[F/V/T/L]−[Y/S/R]−PGY−[Y/M/I]−[L/M/I/F]−[T/F]−F)、配列番号16(M−[V/I]−L−X2−KL)、配列番号17(RxKYY−X2−W)および配列番号18(SAxWHG); (c)以下のものからなる群から選択される少なくとも1つの突然変異膜結合O−アシルトランスフェラーゼタンパク質ファミリーモチーフを含むポリペプチド: (i)配列番号38に記載のアミノ酸配列を含む突然変異モチーフ(配列番号38は、配列番号16(M−[V/I]−L−X2−KL)と、V2C、I2C、L3A、L3C、L3G、K6H、K6G、K6N、K6Y、L7A、L7N、L7G、L7H、L7IおよびL7Mからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なる); (ii)配列番号39に記載のアミノ酸配列を含む突然変異モチーフ(配列番号39は、配列番号8(M−[V/I]−[L/I]−X2−K−[L/V/I]−X8−DG)と、V2C、I2C、L3A、L3C、L3G、I3A、I3C、I3G、K6H、K6G、K6N、K6Y、L7A、L7N、L7G、L7H、L7M、V7A、V7N、V7G、V7H、V7M、I7A、I7N、I7G、I7H、I7M、D16Q、D16N、D16H、G17A、G17VおよびG17Nからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なる); (iii)配列番号40に記載のアミノ酸配列を含む突然変異モチーフ(配列番号40は、配列番号5(WHG−X3−GY−X3−F)と、F12N、F12C、F12GおよびF12Tからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なる);ならびに (iv)配列番号41に記載のアミノ酸配列を含む突然変異モチーフ(配列番号41は、配列番号11(SAxWHG−X2−PGY−X2−[T/F]−F)と、T14A、T14C、T14S、F14A、F14C、F14S、F15N、F15C、F15GおよびF15Tからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸突然変異だけ異なる); (d)Clustal Wアラインメント法に基づき配列番号21(MaLPAAT1)、配列番号23(YlLPAAT1)および配列番号24(ScLPAAT)からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して少なくとも43.9%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;ならびに (e)配列番号25(NHxxxxD)および配列番号26(EGTR)からなる群から選択される少なくとも1つの1−アシル−sn−グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼファミリーモチーフを含むポリペプチド。 前記長鎖多価不飽和脂肪酸は、エイコサジエン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサテトラエン酸、ω−6ドコサペンタエン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ω−3ドコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の組換え微生物細胞。 藻類、酵母、ユーグレナ、ストラメノパイル、卵菌および真菌からなる群から選択される、請求項1に記載の組換え微生物細胞。 油性酵母である、請求項7に記載の組換え微生物細胞。 前記油性酵母は、ヤロウイア属(Yarrowia)のものである、請求項9に記載の組換え微生物細胞。 少なくとも1つの長鎖多価不飽和脂肪酸の産生を改善する方法であって、 (a)請求項1に記載の組換え微生物細胞を発酵性炭素源の存在下で生育させること;および (b)場合により、前記長鎖多価不飽和脂肪酸を回収することを含む方法。 前記組換え微生物細胞は、油性酵母であり、前記長鎖多価不飽和脂肪酸は、エイコサジエン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサテトラエン酸、ω−6ドコサペンタエン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ω−3ドコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。 前記油性酵母は、ヤロウイア属(Yarrowia)のものである、請求項11に記載の方法。 アシルCoA+1−アシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンを、CoA+1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンに変換する能力を有するアシルCoA:リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ[「LPCAT」](EC2.3.1.23)を、リン脂質(例えば、ホスファチジルコリン)のsn−2位から脂肪酸アシル基を1,2−ジアシルグリセロールのsn−3位に転移し、したがってリゾリン脂質およびTAGをもたらす能力を有するリン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ[「PDAT」][E.C.2.3.1.158]の過剰発現と同時に過剰発現させるべきことが本明細書において開示される。組換え微生物宿主細胞中でのこれらの酵素の同時発現は、長鎖多価不飽和脂肪酸[「PUFA」]の産生増加をもたらした。 配列表