タイトル: | 公表特許公報(A)_薄膜蒸留による高純度アンヒドロ糖アルコールの製造方法 |
出願番号: | 2015511366 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C07D 493/04 |
キョン,ドヒョン ジョン,ヨンゼ キム,ジンキョン リュ,フン JP 2015516413 公表特許公報(A) 20150611 2015511366 20130509 薄膜蒸留による高純度アンヒドロ糖アルコールの製造方法 サムヤン ジェネックス コーポレイション 599167412 植木 久一 100075409 植木 久彦 100129757 菅河 忠志 100115082 伊藤 浩彰 100125243 竹岡 明美 100125173 キョン,ドヒョン ジョン,ヨンゼ キム,ジンキョン リュ,フン KR 10-2012-0050316 20120511 C07D 493/04 20060101AFI20150515BHJP JPC07D493/04 101D AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN KR2013004077 20130509 WO2013169029 20131114 16 20150108 4C071 4C071AA01 4C071BB01 4C071CC12 4C071DD04 4C071EE05 4C071FF15 4C071HH05 4C071KK01 4C071LL07 本発明は、水素化糖(hydrogenated sugar)を原料として用い、アンヒドロ糖アルコール(anhydrosugar alcohol)を製造する技術に関する。より具体的には、本発明は、ヘキシトールに酸を加えて、当該水素化糖をアンヒドロ糖アルコールに転換させた後、転換反応で得られた反応液を、凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器(internal condenser type, thin film evaporator)を利用して、1段階蒸留することにより、純度97.5%以上(より好ましくは、98.5%以上)、蒸留液pH3.7以上(より好ましくは、pH4.0以上)の高純度アンヒドロ糖アルコール(特に、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド等)を蒸留収率87%以上(より好ましくは、90%以上)で製造することができる技術に関する。 デンプンは、代表的なバイオマスであり、今後展開される環境に優しいグリーン産業の主要な原料になり得る物質である。特に、デンプンは、石油資源を主に利用するプラスチック工業で使用され、地球温暖化の主な原因であると今日考えられている二酸化炭素の問題に、積極的に対応しうる物質である。しかし、デンプンをそのままプラスチック工業で利用する場合、デンプンの物性的な限界を克服することは難しい。 アンヒドロ糖アルコールは、デンプンに由来するヘキシトールを利用して製造でき、医薬品産業や化学工業の分野などで、その利用可能性が非常に高い。アンヒドロ糖アルコール誘導体は、心臓及び血管疾患に有用であり、パッチ剤の粘着剤、口腔清浄剤等の薬剤に利用することができ、化粧品組成物にも応用することができる。また、アンヒドロ糖アルコールを用いて、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂などを製造すると、樹脂に様々な物性を付与することができる。アンヒドロ糖アルコールは、可塑剤の原料、有機溶剤などとして利用することもできる。このように、アンヒドロ糖アルコールを樹脂製造の分野で利用すると、耐熱性PET、ポリエステル繊維、高強度シート、フィルム、ポリウレタンなどをより環境に優しい方法で製造することができる。 ヘキシトールを用いて、アンヒドロ糖アルコールを製造する技術は、多くの特許に紹介されている。その製造方法は、バッチ法(非特許文献1、特許文献1、2、3など)及び連続法(特許文献4)に大別される。 一般的なバッチ法では、酸触媒(例えば、無機酸、カチオン樹脂、ゼオライト等)を用い、ヘキシトールを減圧条件下のバッチ式反応器で脱水させた後、反応生成物に、蒸留、再結晶(例えば、アセトン、アルコール、酢酸エチル、水などを使用)、溶融結晶化、活性炭精製、イオン精製等の精製工程を、1つ又は2つ以上を組み合わせて適用することにより、アンヒドロ糖アルコールを製造する。他方、例えば、特許文献4に開示される連続法では、反応中に生成するアンヒドロ糖アルコールを、有機溶媒で連続的に抽出及び分離し、有機溶媒を再循環し、連続的にアンヒドロ糖アルコールを製造する。 アンヒドロ糖アルコールを経済的に製造するには、転換反応で得られた反応液からアンヒドロ糖アルコールを短時間に高収率及び高純度で蒸留する技術を採用することが必須である。 脱水反応後に転換反応液を蒸留する蒸留技術として、バッチ蒸留又は単蒸留が知られている。単蒸留では、転換反応後、直ちに反応器内でアンヒドロ糖アルコールを単純に減圧蒸留する。 しかし、バッチ蒸留又は単蒸留では、蒸留時間が長く、商業的規模の経済的な製造が難しいという短所がある。また、転換反応で得られた反応液を低い温度(例えば、170℃以下)で蒸留をすると、蒸留時間が長くなり、比較的高い温度(例えば、170℃以上)で蒸留すると、蒸留時間は短くなるが、アンヒドロ糖アルコールが170℃以上の温度で熱分解して、ギ酸、フルフラールなどの副産物が生成するため、生成物純度及び蒸留液pHが低下するという問題が生じる。即ち、バッチ蒸留又は単蒸留は、後述する薄膜蒸留に比べて、蒸留液の滞留時間が比較的長く、蒸留温度が高いため、アンヒドロ糖アルコールの熱分解を誘発し、蒸留液の純度及び収率を低下させる問題がある。このような熱分解を防止するには、添加剤の使用が必要とされる。 転換反応で得られた反応液からアンヒドロ糖アルコールを蒸留する際に、バッチ蒸留又は単蒸留の短所を克服するために、特許文献5では、アンヒドロ糖アルコールを凝縮器外装型の薄膜蒸留器で蒸留する技術が提案された。特許文献5に開示された薄膜蒸留技術では、凝縮器が蒸留器の外部で作動している。しかし、このタイプでは、蒸留器内に技術的に形成可能な高真空環境は、最大1mmHgまでであり、このような真空度では、蒸留温度を170℃又はそれ以上にしなければ、効果的に蒸留が行うのが困難である。しかし、上記のように、蒸留温度が170℃以上では、イソソルビドなどのアンヒドロ糖アルコールが熱分解し、その結果、蒸留収率及び蒸留純度が低下する。従って、特許文献5では、1段階蒸留による生成物の純度は97.1%の水準であり、蒸留収率は80%の水準である。しかし、このような水準の純度及び収率は、商業的規模の大規模生産プロセスに依然として適さない。 従って、転換反応で得られた反応液に対する1段階の処理だけでも、商業的規模の大規模生産プロセスに適した水準の高純度及び高収率を提供しうるアンヒドロ糖アルコール製造技術が求められている。米国特許第3,454,603号明細書米国特許第4,564,692号明細書米国特許第4,506,086号明細書国際出願公開第WO00/14081号米国特許第7,439,352号明細書Starch/Starke, vol. 38, pp. 26-30 本発明は、前述した従来技術の問題点を解決するものであり、その目的は、水素化糖をアンヒドロ糖アルコールに転換させた後、1段階の蒸留処理だけで商業的規模の大規模生産プロセスに適した水準の高純度及び高収率で、アンヒドロ糖アルコールを製造できる方法を提供することにある。 上記の技術的課題を解決するために、本発明は、水素化糖を脱水反応によってアンヒドロ糖アルコールに転換させる工程と、前記転換工程で得られた反応液を蒸留する工程とを含み、前記蒸留工程が、内蔵型凝縮器、原料投入ライン、蒸留残留物排出ライン、真空ライン及び蒸留液排出ラインを含む凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器内で行われることを特徴とするアンヒドロ糖アルコールの製造方法を提供する。 本発明の好ましい態様によれば、前記本発明のアンヒドロ糖アルコールの製造方法において、前記蒸留工程が行われる際に、前記蒸留器の内部が、前記真空ラインにより減圧されると共に、前記蒸留残留物排出ラインを介して、更に減圧される。 本発明の他の態様によれば、内蔵型凝縮器、原料投入ライン、蒸留残留物排出ライン、真空ライン及び蒸留液排出ラインを含み、前記蒸留残留物排出ラインが真空形成用分岐ラインを有することを特徴とする凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器が提供される。 本発明によれば、水素化糖をアンヒドロ糖アルコールに転換させた後、1段階の蒸留処理だけでも、商業的規模の大規模生産プロセスに適した水準の高純度(純度97.5%以上、より好ましくは、98.5%以上;蒸留液pH3.7以上、より好ましくは、4.0以上)及び高収率(蒸留収率87%以上、より好ましくは、90%以上)で、アンヒドロ糖アルコールを製造することができる。本発明のアンヒドロ糖アルコール製造方法に使用可能な凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器の好ましい具体例の構造を概略的に示す断面図である。 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明によるアンヒドロ糖アルコールの製造方法は、水素化糖を脱水反応によってアンヒドロ糖アルコールに転換する工程を含む。 水素化糖は、一般に、糖アルコールとも呼ばれており、糖類の還元性末端基に水素を添加して得られる化合物を意味する。水素化糖は、炭素数に応じて、テトリトール、ペンチトール、ヘキシトール及びヘプチトール(それぞれ、炭素数4、5、6及び7)に分類される。そのうち、炭素数6のヘキシトールには、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトールなどが含まれ、特に、ソルビトールとマンニトールは非常に有用な物質である。 本明細書では、用語「アンヒドロ糖アルコール」とは、任意の方法により、1つまたはそれ以上の工程で、前記水素化糖の元々の内部構造から1個またはそれ以上の水分子を除去して得られる任意の物質を意味する。 本発明では、水素化糖として、ヘキシトールが好ましく用いられ、より好ましくは、ソルビトール、マンニトール、イジトール及びこれらの混合物から選択される水素化糖を用いてもよい。 本発明では、アンヒドロ糖アルコールとして、ヘキシトールの脱水物であるジアンヒドロヘキシトールが好ましく得られ、より好ましくは、イソソルビド(1,4−3,6−ジアンヒドロソルビトール)、イソマンニド(1,4−3,6−ジアンヒドロマンニトール)、イソイジド(1,4−3,6−ジアンヒドロイジトール)及びこれらの混合物から選択されるアンヒドロ糖アルコールが得られる。そのうち、イソソルビドは、産業及び医療用途に、特に有用である。 水素化糖は、脱水反応によってアンヒドロ糖アルコールに転換される。水素化糖を脱水する方法には、特に制限がなく、当該分野で公知の方法をそのまま又は適宜変形して利用することができる。 水素化糖を脱水してアンヒドロ糖アルコールに転換させるには、酸触媒を用いることが好ましく、より好ましくは、第1の酸と第2の酸の酸混合物を用いてもよい。酸触媒としては、単一酸触媒の場合、硫酸、塩酸、リン酸などが用いられる。酸混合物の場合には、第1の酸として、硫酸が用いられ、第2の酸として、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸及び硫酸アルミニウムよりなる群から選択される1種またはそれ以上の硫黄含有酸またはその塩が用いられる。酸触媒の使用量は、水素化糖(例えば、ヘキシトール)100重量部当たり、0.5〜10重量部が好ましい。酸触媒の量が上記範囲より少なすぎると、アンヒドロ糖アルコールへの転換時間が長くなりすぎることがある。他方、酸触媒の量が上記範囲より多すぎると、糖類高分子の生成が多くなり、転化率が低下することがある。 本発明のある態様によれば、水素化糖をアンヒドロ糖アルコールに転換する工程は、前述のような酸触媒の存在下、100℃〜190℃の温度、20mmHg以下の圧力下で、1時間〜10時間、行うことができる。 水素化糖の脱水反応時に酸触媒を用いる場合、反応液を中和することが好ましい。脱水反応後、反応液を(例えば、100℃以下に)冷却し、水酸化ナトリウムなどの通常のアルカリを添加することにより、中和を行えばよい。中和された反応液のpHは6〜8が好ましい。 本発明によるアンヒドロ糖アルコール製造方法の好ましい態様によれば、水素化糖をアンヒドロ糖アルコールに転換する工程で得られた反応液は、蒸留工程に供する前に前処理してもよい。この前処理は、転換工程で得られた反応液中に残留する水分及び低沸点物質を除去するためであり、転換工程で得られた反応液を、通常、90℃〜110℃の温度、10mmHg〜100mmHgの圧力下で、1時間以上(例えば、1〜4時間)撹拌することにより行ってもよいが、これに限定されない。 水素化糖をアンヒドロ糖アルコールに転換する工程で得られた反応液(好ましくは、上記のように前処理された反応液)は、凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器で蒸留される。 本発明によるアンヒドロ糖アルコールの製造方法における蒸留工程に使用可能な凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器の好ましい具体例の構造を図1に概略的に示す。図1に示す凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器1は、内蔵型凝縮器5、原料投入ライン6、蒸留残留物排出ライン7、真空形成用分岐ライン7−1、真空ライン8及び蒸留液排出ライン9を備え、更に、加熱するための加熱ジャケット2、ワイパー3、凝縮器ガード4及び冷却水流入/流出ライン(それぞれ、10及び11)を含む。本発明に使用可能な凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器は、図1に示す構造のものに限定されることはなく、上記の構成要素以外に、必要に応じて、追加の構成要素を更に含んでいてもよく、その形態も多様である。 蒸留工程は、好ましくは100℃〜200℃、より好ましくは100℃〜170℃、さらに好ましくは110℃〜160℃の温度条件下で、効果的に行うことができる。蒸留温度が100℃未満であると、アンヒドロ糖アルコールの蒸留を効果的に行えない。また、蒸留温度が200℃より高いと、アンヒドロ糖アルコールが炭化したり、高分子物質が生成したりして、発色物質の形成により色が濃くなり、脱色が困難になる。更に、アンヒドロ糖アルコールが高温で熱分解して、ギ酸、フルフラールなどの副産物が生成し、これらが蒸留液の純度とpHを低下させることになり、産業的な観点から好ましくない。 上記の好ましい温度条件下で、蒸留工程の(蒸留器内部での)圧力条件は、好ましくは10mmHg以下(例えば、0.0001〜10mmHg)、より好ましくは5mmHg以下(例えば、0.001〜5mmHg)、さらに好ましくは1mmHg以下(例えば、0.01〜1mmHg、より具体的には0.1〜0.7mmHg)である。蒸留圧力が10mmHgより高いと、アンヒドロ糖アルコールを蒸留するには、蒸留温度を高くする必要があり、その場合には、上記のような問題を生じることがある。他方、蒸留圧力を低くするには、高真空装置の余分なコストが必要になるため、過度に低い蒸留圧力は好ましくない。 本発明の好ましい態様によれば、蒸留工程を行う際に、蒸留器の内部を、真空ラインで減圧すると共に、蒸留残留物排出ラインを介して、更に減圧してもよい。 従来の凝縮器外装型の薄膜蒸留器では、1mmHg以下の高真空条件が得られないことから、蒸留温度を高くする必要があるという短所があった。しかし、凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器を使用する本発明では、蒸留器内の圧力をさらに効果的に下げることができ、より好ましくは、蒸留残留物排出ラインによる更なる減圧により、蒸留器内の圧力を1mmHg以下に下げることができる。これにより、蒸留温度をさらに(例えば、170℃以下、100℃まで)下げることができ、目的生成物であるアンヒドロ糖アルコールの熱分解を防止し、蒸留液の純度及び収率をさらに向上させることができる。さらに、より好ましくは、蒸留残留物排出ラインによる更なる減圧により、蒸留残留物の流動性が改善され、これにより、蒸留残留物による凝縮器の汚染問題も解決することができる。 特に、蒸留温度を低くすることにより、蒸留液pHを改善する効果が得られる。アンヒドロ糖アルコールであるイソソルビドが熱分解すると、ギ酸、フルフラールなどの副産物が生成するが、これらの副産物が蒸留液のpHを低下させる。蒸留液のpHが低いほど、製造されたイソソルビドの安定性が低下する。従って、イオン精製により最終的な蒸留液のpHを6.0以上に保持する必要がある。しかし、蒸留温度が高く、副産物が多量に生成すると、その後のイオン精製に過剰な負荷がかかるという問題がある。本発明では、蒸留器内の圧力を効果的に下げることでき、これにより、蒸留温度を更に下げて、熱分解による副産物の生成を防止できるため、蒸留液のpHを上げることができ、その結果、蒸留工程以降のイオン精製工程にかかる負荷を低減することができ、より経済的にアンヒドロ糖アルコールを製造することができる。本発明の好ましい態様によれば、蒸留温度を145℃に下げることができ、その結果、純度98.5%以上(例えば、98.5%〜100%)、蒸留液pH4.0以上(例えば、4.0〜7.0)のアンヒドロ糖アルコールを、蒸留収率90%以上(例えば、90%〜100%)で得ることができる。 本発明の好ましい態様において、蒸留器の内部を、蒸留残留物排出ラインを介して、さらに減圧する方法には、特に制限がない。例えば、真空ラインに連結された真空ポンプを残留物排出ラインの真空形成用分岐ラインにも共に連結し、蒸留残留物排出ラインと真空ラインに同じ真空度がかかるようにすればよい。別法として、蒸留残留物排出ラインの真空形成用分岐ラインに別の真空ポンプを連結して、蒸留残留物排出ラインに、真空ラインと異なる真空度が適用されるようにしてもよい。 以下、図1を参照して、蒸留残留物排出ラインの真空形成用分岐ラインと真空ラインに同じ真空ポンプを連結して、蒸留を行う態様について説明する。 従来の薄膜蒸留では、真空ポンプ(図示せず)が真空ライン8のみに連結されている。これにより、蒸留器の内部における相対的な圧力の大きさは、[真空ライン8<凝縮器ガード4の内部<凝縮器ガード4の外部=蒸留残留物排出ライン7]となる。このとき、蒸留残留物排出ライン7における圧力が、凝縮器ガード4の内部及び外部の圧力より高いため、蒸留残留物の流れが妨げられる。これに対し、本発明の好ましい態様により、真空ラインと蒸留残留物排出ラインの真空形成用分岐ライン7−1に同じ真空ポンプを連結して作動させると、蒸留器の内部における相対的な圧力の大きさが、[真空ライン8=蒸留残留物排出ライン7<凝縮器ガード4の外部=凝縮器ガード4の内部]となり、高真空状態をさらに効果的に保持することができ、蒸留残留物の流れも効果的に向上させることができる。ここで、「=」は、圧力が同一又は同等の水準であることを意味する。 本発明によるアンヒドロ糖アルコールの製造方法は、蒸留工程後、蒸留により得られたアンヒドロ糖アルコールに対して、吸着剤処理、イオン精製及びこれらの組合せから選択される後処理を行う工程を更に含むことができる。 吸着剤処理は、脱色を目的としており、活性炭などの公知の吸着剤を用いて、吸着剤処理の従来法により行うことができる。活性炭としては、木材、ヤシなどの植物系原料や、褐炭、有煙炭、瀝青炭、無煙炭などの鉱物系原料を活性化して得られた活性炭群から選択される1種またはそれ以上を使用できる。 イオン精製は、アンヒドロ糖アルコール中に存在しうるイオンを除去することを目的としており、存在しうるイオンの種類に応じて、強カチオン性、弱カチオン性、強アニオン性及び弱アニオン性のイオン交換樹脂群から選択されるイオン交換樹脂を1種またはそれ以上用いて、1回またはそれ以上行うことができる。 本発明の好ましい態様によれば、水素化糖であるヘキシトールをアンヒドロ糖アルコールに転換させた後、1段階の蒸留処理だけでも、純度98.5%以上、蒸留液pH4.0以上の高純度アンヒドロ糖アルコールを蒸留収率90%以上で得ることができ、その後、吸着剤による脱色及びイオン精製を行えば、白色のイソソルビドを得ることができる。 本発明の好ましい態様による蒸留方法は、好ましくは、アンヒドロ糖アルコールを蒸留する際に用いられるが、その他の物質の蒸留にも用いることができる。この観点から、本発明の他の態様によれば、内蔵型凝縮器、原料投入ライン、蒸留残留物排出ライン、真空ライン及び蒸留液排出ラインを備えた凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器を用いて、液状物質を蒸留するにあたり、前記蒸留器の内部が、前記真空ラインにより減圧されると共に、前記蒸留残留物排出ラインを介して、更に減圧されることを特徴とする液状物質の蒸留方法が提供される。 また、本発明の更に他の態様によれば、内蔵型凝縮器、原料投入ライン、蒸留残留物排出ライン、真空ライン及び蒸留液排出ラインを含み、前記蒸留残留物排出ラインが真空形成用分岐ラインを有することを特徴とする凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器が提供される。本発明による凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器に関する具体例及びその使用例は、上記の説明と同様であるが、これらに限定されるものではない。 以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。しかし、下記実施例は、本発明の理解を容易にすることを意図するものであり、本発明の範囲は、これらに限定されるものではない。 実施例1 ソルビトール粉末(D−ソルビトール、Samyang Genex Inc.製)10,000gを、撹拌器付きのバッチ式反応器に投入し、110℃に昇温して融解させた。そこに、硫酸(Duksan Chemical製)100gとメタンスルホン酸(Duksan Chemical製)42gを加え、反応器を約140℃に昇温した。約30mmHgの減圧条件下で脱水反応を行って、ソルビトールをアンヒドロ糖アルコールに転換させた。脱水反応の完了後、反応混合物を110℃に冷却し、そこに、50%水酸化ナトリウム溶液(Samjeon Pure Chemical製)約300gを加えて、反応液を中和した。中和反応液を100℃に昇温した後、40mmHg以下の減圧条件下で、1時間以上濃縮して、反応液内に存在する水分及び低沸点物質を除去した。中和及び水分除去の完了後、反応液を分析した。その結果、ソルビトールの転化率は74%であり、反応液のソルビタン及びソルビタン異性体含量は1重量%であり、その他の高分子含量は15%であった。 中和及び水分除去後の転換反応液を、凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器を用いて、蒸留温度170℃、蒸留器内部圧力0.70mmHgの条件下で蒸留した。このとき、真空ライン以外に、蒸留残留物排出ラインの真空形成用分岐ラインにも真空ポンプを追加的に連結し、蒸留を行っており、蒸留器内部圧力1.40mmHg以下でも連続蒸留が可能であった。得られた蒸留液は、イソソルビド純度97.5%、pH3.70、黄色であり、蒸留収率は92.0%、蒸留時間は4時間以下であった。 生成物の分析には、ガスクロマト分析器(HP社製)を使用した。−転化率=[生成したアンヒドロ糖アルコールのモル数/投入されたヘキシトール(ソルビトール)のモル数]×100−蒸留収率=[蒸留液中のアンヒドロ糖アルコールのwt%/転換反応液中のアンヒドロ糖アルコールのwt%]×100 実施例2 実施例1の中和及び水分除去後に得られた転換反応液を薄膜蒸留した。蒸留温度を160℃、蒸留器内部圧力を0.45mmHgに設定したこと以外は、実施例1と同様の薄膜蒸留器を用いて、同様の方式で蒸留を行った。得られた蒸留液は、イソソルビド純度が98.5%、pH4.00、黄色であり、蒸留収率は92.0%、蒸留時間は4時間以下であった。 実施例3 実施例1の中和及び水分除去後に得られた転換反応液を薄膜蒸留した。蒸留温度を150℃、蒸留器内部圧力を0.14mmHgに設定したこと以外は、実施例1と同様の薄膜蒸留器を用いて、同様の方式で蒸留を行った。得られた蒸留液は、イソソルビド純度が98.5%、pH4.50、黄色であり、蒸留収率は91.6%、蒸留時間は4時間以下であった。 実施例4 実施例1の中和及び水分除去後に得られた転換反応液を薄膜蒸留した。蒸留温度を145℃、蒸留器内部圧力を0.10mmHgに設定したこと以外は、実施例1と同様の薄膜蒸留器を用いて、同様の方式で蒸留を行った。得られた蒸留液は、イソソルビド純度が98.5%、pH4.75、黄色であり、蒸留収率は92.0%、蒸留時間は4時間以下であった。 実施例5 実施例1の中和及び水分除去後に得られた転換反応液を薄膜蒸留した。蒸留温度を170℃、蒸留器内部圧力を1.40mmHg、真空形成用分岐ラインに真空ポンプを連結しないこと以外は、実施例1と同様の薄膜蒸留器を用いて、同様の方式で蒸留を行った。得られた蒸留液は、イソソルビド純度が97.6%、pH3.70、黄色であり、蒸留収率は87.0%、蒸留時間は4時間以下であった。 比較例1 実施例1の中和及び水分除去後に得られた転換反応液を薄膜蒸留した。凝縮器外装型の薄膜蒸留器を用い、蒸留残留物排出ラインによる追加減圧も行わなかった。蒸留温度は、180℃であり、蒸留器内部圧力は、約3.0mmHgであった。得られた蒸留液は、イソソルビド純度が96.6%、pH3.50、黄色であり、蒸留収率は78.0%、蒸留時間は4時間以下であった。 比較例2 実施例1の中和及び水分除去後に得られた転換反応液を薄膜蒸留した。蒸留温度を170℃、蒸留器内部圧力を約2.0mmHgに設定したこと以外は、比較例1と同様の凝縮器外装型の薄膜蒸留器を用いて、同様の方式で蒸留を行った。得られた蒸留液は、イソソルビド純度が97.2%、pH3.70、黄色であり、蒸留収率は80.2%、蒸留時間は4時間以下であった。 1 薄膜蒸留器 2 加熱ジャケット 3 ワイパー 4 凝縮器ガード 5 内蔵型凝縮器 6 原料投入ライン 7 蒸留残留物排出ライン 7−1 真空形成用分岐ライン 8 真空ライン 9 蒸留液排出ライン 10 冷却水流入ライン 11 冷却水流出ライン 水素化糖を脱水反応によってアンヒドロ糖アルコールに転換させる工程と、前記転換工程で得られた反応液を蒸留する工程とを含み、 前記蒸留工程が、内蔵型凝縮器、原料投入ライン、蒸留残留物排出ライン、真空ライン及び蒸留液排出ラインを含む凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器内で行われることを特徴とするアンヒドロ糖アルコールの製造方法。 前記蒸留工程が行われる際に、前記蒸留器の内部が、前記真空ラインにより減圧されると共に、前記蒸留残留物排出ラインを介して、更に減圧される請求項1に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。 前記水素化糖がヘキシトールであり、前記アンヒドロ糖アルコールがジアンヒドロヘキシトールである請求項1又は2に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。 水素化糖を脱水反応によってアンヒドロ糖アルコールに転換させる前記工程において、酸触媒が用いられる請求項1又は2に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。 水素化糖をアンヒドロ糖アルコールに転換させる前記工程で得られた前記反応液が、前記蒸留工程に投入される前に、水分及び低沸点物質を除去するために前処理される請求項1又は2に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。 前記蒸留工程が、100℃〜170℃の温度条件下で行われる請求項1又は2に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。 前記蒸留工程が、1mmHg以下の圧力条件下で行われる請求項1又は2に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。 前記蒸留工程が行われる際に、前記真空ラインの真空度と前記蒸留残留物排出ラインの真空度が同じである請求項1又は2に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。 前記蒸留工程後、蒸留液のアンヒドロ糖アルコール純度が97.5%以上であり、蒸留液pHが3.7以上であり、蒸留収率が87%以上である請求項1又は2に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。 前記蒸留工程後、蒸留により得られたアンヒドロ糖アルコールに対して、吸着剤処理、イオン精製及びこれらの組合せから選択される後処理を行う工程を更に含む請求項1又は2に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。 内蔵型凝縮器、原料投入ライン、蒸留残留物排出ライン、真空ライン及び蒸留液排出ラインを備えた凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器を用いて、液状物質を蒸留するにあたり、前記蒸留器の内部が、前記真空ラインにより減圧されると共に、前記蒸留残留物排出ラインを介して、更に減圧されることを特徴とする液状物質の蒸留方法。 内蔵型凝縮器、原料投入ライン、蒸留残留物排出ライン、真空ライン及び蒸留液排出ラインを含み、前記蒸留残留物排出ラインが真空形成用分岐ラインを有することを特徴とする凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器。 本発明は、水素化糖を用いて高純度のアンヒドロ糖アルコールを製造する方法に関し、より詳しくは、ヘキシトールに酸を加えて、アンヒドロ糖アルコールに転換させた後、凝縮器内蔵型の薄膜蒸留器を用いて、転換生成物を1段階で蒸留することにより、純度97.5%以上(より好ましくは、98.5%以上)、蒸留液pH3.7以上(より好ましくは、4.0以上)、蒸留収率87%以上(より好ましくは、90%以上)で、高純度のアンヒドロ糖アルコール(特に、イソソルビド、イソマンニド、イソイジドなど)を製造する方法に関する。【選択図】図1