生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_インテグリンβサブユニットの静脈血栓塞栓の診断における使用
出願番号:2015506062
年次:2015
IPC分類:G01N 33/53,G01N 33/533,C07K 14/705


特許情報キャッシュ

ワン, レミン JP 2015519548 公表特許公報(A) 20150709 2015506062 20120418 インテグリンβサブユニットの静脈血栓塞栓の診断における使用 ワン, レミン 514264879 池田 成人 100107456 酒巻 順一郎 100162352 野田 雅一 100123995 山口 和弘 100148596 ワン, レミン G01N 33/53 20060101AFI20150612BHJP G01N 33/533 20060101ALI20150612BHJP C07K 14/705 20060101ALN20150612BHJP JPG01N33/53 DG01N33/533C07K14/705 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN CN2012074284 20120418 WO2013155686 20131024 31 20141209 4H045 4H045AA30 4H045BA10 4H045CA40 4H045DA50 4H045EA50 本発明は静脈血栓塞栓(VTE)の技術分野に属する。具体的に、本発明は、対象の血液サンプルにおけるインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットのレベルを検出することを含む新規VTE診断方法に関する。本発明は、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットと特異性的に結合できる物質の、VTEを診断するための診断剤の製造への使用にも関する。さらに、本発明は、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットと特異性的に結合できる物質を含む、VTEを診断するためのキットを提供する。 静脈血栓塞栓は、静脈内に形成された血栓の総称で、肺動脈血栓塞栓(PE)と深部静脈血栓(DVT)を含む。そのうち、PEは、急性肺塞栓(APE)と、慢性血栓塞栓性肺動脈高血圧(CTEPH)を含む。VTEは、多発病に属し、特にPEは高い発病率、高い誤診率及び高い死亡率で世界的な健康上の難問になった(Prevention and treatment of venous thromboembolism. International Consensus Statement (guidelines according to scientific evidence). Int. Angiol. 2006;25(2):101−161)。 伝統的な静脉血栓形成理論(phlebothrombosis theory)によると、緩慢の血流状態で、静脈血管内皮細胞が損傷されたり、凝固因子が亢進状態になったりして、損傷された内皮細胞及び血小板が活性化され、凝固因子の機能が活発され、静脉血栓が形成される。静脈内に形成された血栓はフィブリンおよび赤血球に富み、血小板を僅かに含んでいる(Furie, Bruce; Furie, Barbara, Mechanisms of Thrombus Formation, The New England Journal of Medicine 2008;359 (9):938−949)。 本発明者らは最近研究したところ、APE血栓におけるタンパク成分が、主にフィブリノーゲンからなり、少量の血清タンパクおよび細胞骨格タンパクも含むことを発見した(Wang L, Gong Z, Jiang J, Xu W, Duan Q, Liu J, et al. Confusion of Wide Thrombolytic Time Window for Acute Pulmonary Embolism: Mass Spectrographic Analysis for Thrombus Proteins. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2011 184: 145−146)。この発見により、静脈血栓タンパクが主にフィブリンであるとの知見が変わり、VTEの診断および治療に新たな経路を提供する。例えば、VTE血栓中のフィブリノーゲンと血栓中の白血球や血小板や赤血球との間の結合方式を検討することにより、静脈血栓の形成機構についての情報を提供することが可能になる。 インテグリンはレセプタータンパク質であり、細胞-細胞、細胞-その周囲組織(例えばそのほかの細胞或いは細胞外マトリックス)の接着の主役である。インテグリンは細胞内信号伝達においても重要な作用を持ち、細胞と周囲環境との情報交換に仲介し、細胞を環境の変化に応じて速く応答させる(例えば血小板による血液凝集)( Hynes R, Integrins: bidirectional, allosteric signaling machines. Cell (2002), 110 (6): 673−87)。 インテグリンはヘテロ二量体であり、二本の異なる鎖を持ち、αサブユニットとβサブユニットと呼ばれる。今まで哺乳動物のインテグリンから18種類のαサブユニット、および9種類のβサブユニットが同定され、これらのサブユニットを別々に組み合わせると、20種類以上のインテグリンが構成される(Humphries MJ. Integrin structure. Biochem Soc Trans. 2000;28(4):311−39)。この20種類以上のインテグリンはインテグリン家族になり、そのうち、同一種類のβサブユニットを含むインテグリンがインテグリンβ亜族になる。例えばITGB1、ITGB2およびITGB3遺伝子にコードされるインテグリンβ1−3サブユニットは、それぞれITGB1(CD29とも呼ばれる)、ITGB2(CD18とも呼ばれる)およびITGB3(CD61とも呼ばれる)である。ITGB1サブユニットを含むインテグリンβ1亜族は広く分布し、主に細胞と細胞外マトリックスとの接着、リンパ球のホーミング、及び白血球と活性化内皮細胞との粘着に仲介する。β1亜族は主に活性化したリンパ球および血小板の膜表面に存在する(Billard MJ, McIntyre BW. CD45RA T−cell activation without proliferation by a partial agonist monoclonal antibody to beta1 integrin.Immunol Cell Biol. 2008 May−Jun;86(4):381−4)。インテグリンβ2を含む亜族は主に各種の白血球の表面に存在し、細胞同士の相互作用を仲介し、主に好中球、単核球に分布する(Fu C, Tong C, Wang M, Gao Y, Zhang Y, Lu S, Liang S, Dong C, Long M.Determining beta2−integrin and intercellular adhesion molecule 1 binding kinetics in tumor cell adhesion to leukocytes and endothelial cells by a gas−driven micropipette assay. J Biol Chem. 2011 Oct 7;286(40):34777−87)。インテグリンβ3を含む亜族は主に血小板の表面に存在し、血小板の凝集を仲介したり、血栓の形成にも参与したりする(Sachs UJ, Bakchoul T, Eva O, Giptner A, Bein G, Aster RH, Gitter M, Peterson J, Santoso S. A point mutation in EGF−4 domain of β3 integrin is responsible for the formation of the Seca platelet alloantigen and affects receptor function. Thromb Haemost. 2011;107(1))。 一つの方面で、本発明はインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットと特異性的に結合する物質の、静脈血栓塞栓を診断するための診断剤の製造への使用に関する。 一つの実施態様において、本発明は、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットと特異性的に結合する物質の、対象の血液サンプルにおけるインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットのレベルを検出することにより静脈血栓塞栓(VTE)を診断するための診断剤の製造への使用に関する。 一つの実施態様において、本発明の血液サンプルは、末梢血サンプルであり、好ましくは末梢静脈血サンプルである。 一つの実施態様において、本発明は、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットからの少なくとも2種と特異性的に結合する物質の、対象の血液サンプルにおける、対応するインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットからの少なくとも2種のレベルを検出することにより静脈血栓塞栓を診断するための診断剤の製造への使用に関する。 一つの実施態様において、本発明は、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及びインテグリンβ3サブユニットとそれぞれ特異性的に結合する物質の、対象の血液サンプルにおける、対応するインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及びインテグリンβ3サブユニットの上昇レベルを検出することにより静脈血栓塞栓を診断するための診断剤の製造への使用に関する。 一つの実施態様において、本発明に記載の静脈血栓塞栓は急性肺塞栓症(APE)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)あるいは深部静脈血栓症(DVT)である。 一つの実施態様において、本発明に記載の静脈血栓塞栓は急性肺塞栓症(APE)あるいは深部静脈血栓症(DVT)である。 一つの実施態様において、本発明のインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットと特異性的に結合する物質は、抗体、リガンドあるいはアンタゴニストである。一つの実施態様において、本発明の抗体、リガンド及び/又はアンタゴニストは蛍光標識されたものである。一つの実施態様において、本発明の抗体、リガンド及び/又はアンタゴニストはフィコエリスリン(PE)で標識された抗体である。 もう一つの方面で、本発明は、対象の血液サンプル、例えば末梢静脈血サンプルにおけるインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットのレベルを検出することにより静脈血栓塞栓(VTE)を診断するためのキットを提供する。 一つの実施態様において、本発明は、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットとそれぞれ特異性的に結合する物質を含む、対象の血液サンプル、例えば末梢静脈血サンプルにおけるインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットのレベルを検出することにより静脈血栓塞栓(VTE)を診断するためのキットを提供する。 一つの実施態様において、本発明のキットは、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットからの少なくとも2種と特異性的に結合する物質を含む。一つの実施態様において、本発明のキットは、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及びインテグリンβ3サブユニットとそれぞれ特異性的に結合する物質を含む。 一つの実施態様において、本発明のキットに含まれているインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットと特異性的に結合する物質は、抗体、リガンド及び/又はアンタゴニストである。一つの実施態様において、本発明の抗体、リガンド及び/又はアンタゴニストは標識されたものである。一つの実施態様において、本発明の抗体、リガンド及び/又はアンタゴニストは蛍光標識されたものである。一つの実施態様において、本発明の抗体、リガンド及び/又はアンタゴニストはフィコエリスリン(PE)で標識された抗体である。ショットガン法による血栓タンパクサンプルの前分離結果を示す図である。血栓タンパクサンプルの酵素分解したペプチド断片、破片配列情報の結果を示す図である。急性PE患者の血栓サンプルのタンデムタンパク質量分析および情報分析、Gene Oncology分析の結果である。急性PE患者の血栓サンプルのタンデムタンパク質量分析および情報分析、交互網路分析の結果である。この図から、β2、β3及びβ1サブユニットインテグリンが赤色血栓のコアタンパクであることが分かった。急性下肢VTE患者の血栓サンプルのタンデムタンパク質量分析および情報分析、Gene Oncology分析の結果である。急性下肢VTE患者の血栓サンプルのタンパク質量分析および情報分析、交互網路分析の結果である。この図から、β3サブユニットインテグリンおよびITGA2B(すなわちインテグリンα鎖IIb)が赤色血栓のコアタンパクであることが分かった。健康人対照群におけるインテグリンβ1、β2、β3サブユニットの分布である。図7 aにおいて、インテグリンβ1サブユニットが正規分布を呈する、図7 bにおいて、インテグリンβ2サブユニットが非正規分布を呈する、図7 cにおいて、β3サブユニットが正規分布を呈することが示される。健康人対照群におけるインテグリンβ1サブユニットの発現情報である。図8 aは対照群におけるインテグリンβ1サブユニットの発現平均値およびベースライン区間を表し、そのうち、平均値が8.18±2.69(%)、ベースライン区間が2.8〜13.56(%)である。図8 bは対照群におけるインテグリンβ1サブユニットの発現レベルの分布を示す。健康人対照群におけるインテグリンβ2サブユニットの発現情報である。図9 aは対照群におけるインテグリンβ2サブユニットの発現平均値およびベースライン区間を表し、そのうち、発現中央値が88.6 (%)、ベースライン区間が71.1〜95.8 (%)である。図9 bは対照群におけるインテグリンβ2サブユニットの発現レベルの分布を示す。健康人対照群におけるインテグリンβ3サブユニットの発現情報である。図10 aは対照群におけるインテグリンβ3サブユニットの発現平均値およびベースライン区間を表し、その平均値が9.65±2.53 (%)、ベースライン区間が4.59〜14.71 (%)である。図10 bは対照群におけるインテグリンβ3サブユニットの発現レベルの分布を示す。 特に断りのない限り、すべての技術や科学上の専門用語は本分野によく知られる一般的な意味を持つ。特に断りのない限り、すべての特許、特許出願、出版物、配列及びそのほかの開示された資料は援用により本文に納入される。 本発明において、検討したところ、あるβサブユニットを含むインテグリンがVTE血栓形成に重要な役割を果たし、静脈血栓タンパク網路のコアタンパクであることを発見した。前記インテグリンはβ1〜3亜族のインテグリンを含む。この発見に基づいて、本発明は、対象の血液サンプルにおけるインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットのレベルを検出や、調節することを含む、静脈血栓塞栓を診断あるいは治療する新規方法を提供する。また、本発明は、インテグリンβサブユニットと特異性的に結合、検出あるいは調節する物質、及びこの物質の、VTEを診断するためのキットの製造への使用に関する。 専門用語「血栓」は血管内に形成される血の塊であり、血流を障害あるいは閉塞させる。血管が損傷される時、血液中の血小板はあるタンパク(例えばフィブリン、フィブリノーゲン、血清蛋白および細胞骨格タンパクなど)と凝集し、血の塊になることにより、損傷した部位を回復させる。ただし、もし血の塊が脱落すると、血栓になる可能性がある。 専門用語「静脈血栓塞栓」は静脈内に形成される血栓の総称であり、肺動脈血栓塞栓(PE)と深部静脈血栓(DVT)を含む。そのうち、PEは急性肺塞栓(APE)と、慢性血栓塞栓性肺高血圧(CTEPH)を含む。深部静脈血栓は急性および慢性深部静脈血栓を含む。 専門用語「インテグリン」は細胞表面受容体蛋白である。このタンパクはヘテロ二量体であり、二本の異なる鎖を持ち、それぞれαサブユニットとβサブユニットと呼ばれる。同一種類のβサブユニットを含むインテグリンはインテグリンβ亜族になる。例えば、インテグリンβ1サブユニット(CD29とも呼ばれる)を含むβ1亜族、インテグリンβ2サブユニット(CD18とも呼ばれる)を含むβ2亜族およびインテグリンβ3サブユニット(CD61とも呼ばれる)を含むβ3亜族がある。前記αサブユニットとβサブユニットは差別的スプライシング(differential splicing)による変異株を包含し、例えばITGB1の4種の変異株。 本発明書において、「差別的スプライシング」とは、同一のmRNA前駆体内において、異なるスプライシング方式で(すなわち異なるグスプライス部位によるエキソンの組合せ) 異なるmRNAスプライシングイソフォームを得る手順である。差別的スプライシングにより得られたタンパク産物は互いにイソフォームであり、異なる機能や構造特性を表現し、あるいは同じ細胞内に異なる発現によって異なる表現型を呈する。 専門用語「対象」とは哺乳動物の個体を指し、好ましくはヒトである。 一つの方面で、本発明は、静脈血栓塞栓を診断する新規方法を提供する。 一つの実施態様において、本発明の方法は、対象の血液サンプルにおけるインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットのレベルを検出し、その結果を対照となる健康対象の血液サンプルの検出したレベルと比べ、このレベルの上昇が、VTEを診断するための兆候である。 血液サンプルにおけるタンパクを定量検出する方法は、本分野によく知られる技術である。当業者は具体的な要求に応じて選択することができる。例えばフローサイトメトリーや、ELISAなどの抗体に基づく方法を用いる。 専門用語「血液サンプル」は対象の循環システムからの血液組織サンプルであり、好ましくは末梢静脈の血液サンプルである。本発明の血液サンプルの中に血細胞および細胞外液(すなわち血漿)が含まれることができる。 本発明における「レベルの上昇」は、下記方法のように確定される。すなわちある数量の健康人群を対照群として、健康人群における正常レベルの範囲を調べ、被験対象のレベルが正常レベル範囲を超える場合、被験対象においてレベルが上昇すると判断する。 健康人群における正常レベルの範囲について、統計学上の方法により確定される。例えば、Kolmogorov−Smirnov検定により正規性の検定を行ったところ、P>0.05の場合、正規分布と判断する。正規分布のデータについて、健康人群で計測した平均値と標準偏差から正常レベルの範囲を確定する。非正規分布のデータについて、中央値を統計学上のP2.5〜P97.5と組み合わせて正常レベルの範囲を表示する。 本発明において、「レベルの上昇」とは、例えば検出したレベルが対照となる健康対象の血液サンプルのレベルと比べ、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%及びそれ以上に上昇することを指す。 「健康対象」は健康検査で正常な対象群である。「対照レベル」は健康の対象群で検出し得たインテグリン関連タンパクのレベルであり、その統計学上の平均値を標準偏差と組合せたものを対照レベルとする。対照となる健康対象群は、50、100、150、200、250、300、500及びそれ以上の人数である。 本発明の方法は以下のステップを含む。被験対象から血液サンプル、例えば末梢静脈血サンプルを採り、各種のインテグリンβサブユニットと特異性的に結合する物質、例えば抗体により、前記血液サンプルにおける各種のインテグリンβサブユニットの量をフローサイトメトリー、ELISAなどの常用定量方法で定量検出する。例えば200人あるいはそれ以上の健康人の末梢血サンプルを採り、前記と同様の方法により、各種のインテグリンβサブユニットの量をそれぞれ検出し、その統計学上の平均値を標準偏差と組み合わせたものを対照レベルとする。被験対象で検出した各種のインテグリンβサブユニットの量を相応する対照レベルと比べ、そのうち、各種のインテグリンβサブユニットの上昇がVTEを診断するための兆候である。 一つの実施態様において、本発明の方法は、対象の血液サンプルにおけるインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットからの少なくとも2種のレベルを検出することを含む。一つの実施態様において、本発明の方法は、対象の血液サンプルにおけるインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットからの少なくとも2種のレベルを検出することを含む。一つの実施態様において、本発明の方法は、対象の血液サンプルにおけるインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及びインテグリンβ3サブユニットのレベルを検出することを含む。 本発明に記載の静脈血栓塞栓は、急性肺塞栓(APE)、慢性血栓塞栓性肺高血圧(CTEPH)あるいは深部静脈血栓(DVT)であってもよく、好ましくは急性肺塞栓あるいは深部静脈血栓である。 一つの実施態様において、本発明の方法は、フローサイトメトリーによりインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットのレベルを検出する。 フローサイトメトリーは本分野の常用技術であり、その具体的な操作について、関連文献、教科書あるいはメーカーの操作ガイドを参照すること。例えば、(Loken MR (1990). Immunofluorescence Techniques in Flow Cytometry and Sorting (2nd ed.). Wiley. pp. 341−53)を参照することができる。 もう一つの方面で、本発明は、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットのレベルを特異性的に検出する物質を提供する。一つの実施態様において、本発明は抗体、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットと特異性的に結合する物質を提供し、前記物質は、例えば、リガンド及び/又はアンタゴニストである。一つの実施態様において、本発明の抗体、リガンド及び/又はアンタゴニストは標識されたものである。一つの実施態様において、本発明の抗体、リガンド及び/又はアンタゴニストは蛍光標識されたものである。一つの実施態様において、本発明の抗体、リガンド及び/又はアンタゴニストはフィコエリスリン(PE)で標識されたものである。 インテグリンβ1サブユニットとのリガンドは、例えばラミニン(LM)、コラーゲンタンパク(COL)、フィブロネクチン(FN)、血管細胞接着分子−1(VCAM−1)などがある。インテグリンβ2サブユニットとのリガンドは、例えばフィブリノーゲン(FB)、細胞間接着分子−1、細胞間接着分子−2、細胞間接着分子−2(ICAM−1、ICAM−2、ICAM−3)、X因子、ic3bなどがある。インテグリンβ3サブユニットとのリガンドは、例えばFB、FN、ビトロネクチン(VN)、von Willebrand因子(vWF)、トロンボスポンジン(TSP)などがある。 もう一つの方面で、本発明は、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットと特異性的に結合する物質の、対象の血液サンプルにおけるインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットのレベルを検出することにより、静脈血栓塞栓を診断するための診断剤の製造への使用に関する。 一つの実施態様において、本発明は、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットからの少なくとも2種とそれぞれ特異性的に結合する物質の、静脈血栓塞栓を診断するための診断剤の製造への使用に関する。 一つの実施態様において、本発明は、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットからの少なくとも2種とそれぞれ特異性的に結合する少なくとも2種の物質、静脈血栓塞栓を診断するための組成物の製造への使用に関する。 一つの実施態様において、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットからの少なくとも2種とそれぞれ特異性的に結合する物質は、少なくとも2種の異なるものであり、そのうちの一つはインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、又はインテグリンβ3サブユニットからの1種と特異性的に結合し、もう一つはインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットからの別の1種と特異性的に結合する。 一つの実施態様において、本発明は、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及びインテグリンβ3サブユニットとそれぞれ特異性的に結合する物質の、静脈血栓塞栓を診断するための組成物の製造への使用に関する。 一つの実施態様において、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及びインテグリンβ3サブユニットとそれぞれ特異性的に結合する物質は、少なくとも3種の異なるものであり、そのうちの第一種はインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、あるいはインテグリンβ3サブユニットからの第1種と特異性的に結合し、第二種はインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、あるいはインテグリンβ3サブユニットからの第2種と特異性的に結合し、第三種はインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、あるいはインテグリンβ3サブユニットからの第3種と特異性的に結合する。 一つの実施態様において、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットと特異性的に結合でき、血液サンプルにおけるインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットのレベルを特異性的に検出することに使用できる物質は、抗体、リガンド及び/又はアンタゴニストであり、好ましくは標識された抗体、リガンド及び/又はアンタゴニストである。一つの実施態様において、本発明の抗体、リガンド及び/又はアンタゴニストは蛍光標識されたものであり、例えばフィコエリスリン(PE)で標識されたものである。 もう一つの方面で、本発明は、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットのレベルを特異性的に検出する物質を含む、静脈血栓塞栓診断用のキットを提供する。前記物質は、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットと特異性的に結合できるものである。 一つの実施態様において、本発明のキットは、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットからの少なくとも2種と特異性的に結合する物質を含む。 一つの実施態様において、本発明のキットは、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、あるいはインテグリンβ3サブユニットからの少なくとも2種とそれぞれ特異性的に結合する物質を含む。 一つの実施態様において、本発明のキットは、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及びインテグリンβ3サブユニットとそれぞれ特異性的に結合する物質を含む。 もう一つの発明において、本発明は、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットとのリガンド、抗体、アンタゴニスト及び/又は活性抑制剤にも関する。 本発明に用いられる専門用語「リガンド」、「抗体」、「アンタゴニスト」、「活性抑制剤」などは、本分野によく使われる専門用語であり、その意味は当業者の一般的な理解に合い、常用の教科書やガイドブックに記載された定義を参照することもできる。 本発明において、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットからの少なくとも2種とそれぞれ特異性的に結合する物質は、少なくとも2種の異なるものであり、そのうちの一つは、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、あるいはインテグリンβ3サブユニットからの1種と特異性的に結合し、もう一つは、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、あるいはインテグリンβ3サブユニットからの別の1種と特異性的に結合する。インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及びインテグリンβ3サブユニットとそれぞれ特異性的に結合する物質は、少なくとも3種の異なるものであり、そのうちの第一種はインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、あるいはインテグリンβ3サブユニットからの第1種と特異性的に結合し、第二種はインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、あるいはインテグリンβ3サブユニットからの第2種と特異性的に結合し、第三種はインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、あるいはインテグリンβ3サブユニットからの第3種と特異性的に結合する。 もう一つの方面で、本発明は、本発明の方法により診断を行う装置にも関する。例えば、臨床の迅速診断をすることができる装置。 本発明を下記の実施例によりさらに説明する。これらの実施例はただ示例的に挙げられるものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。本発明は具体的に下記の実施例を挙げる。 例1:カテーテルで急性VTE血栓を採集 大腿静脈穿刺法により、7F右冠状動脈カテーテル(Metronic,USA)で39歳の男性の急性PE(APE)患者の肺動脈内および50歳の男性の急性DVT(ADVT)患者の下肢大腿静脈内(ADVT)から5−15mm長さ、10gの赤色血栓を3〜5本採集した。得られた新鮮な血栓を下記の実施例におけるタンデムタンパク質量分析に供する。 例2:タンデムタンパク質量分析およびデータ情報の分析方法: 1.方法学:タンデムタンパク質量(MS/MS)分析およびデータ情報の分析方法のフローチャート:急性PE、DVT血栓−MS/MS(型番LTQ,Thermo Finnigan USA)−データベース−タンパク検索−対応の遺伝子−GO(Gene Oncology)分析−差別的遺伝子−差別的タンパク−KEGG Pathway解析−遺伝子交互網路分析−交互網路コア蛋白の同定。 1.1血栓タンパクのショットガン実験について、得られたペプチド断片データをバイオインフォマティクス分析し、ペプチド断片に対応するタンパクを正確に同定し、このタンパクに機能分類及び生物学的経路を分析した。 1.2 GO解析: GOデータベースは遺伝子の、参加する生物学的過程、その細胞にある部位およびその果たす分子機能の三つの機能情報を含む。差別的発現タンパクは入力としてGO解析に用いられた。差別的遺伝子はそれぞれGOデータベースの各節点にマップされた。各節点の遺伝子数を数えた。 1.3 KEGG Pathway解析方法: 差別的発現タンパクに対してKEGG Pathway解析を行った。 1.4 Gene Network解析方法: 下記の三種類の異なる相互作用関係を統合した。(1) KEGGデータベースにおける遺伝子の間のタンパク相互作用、遺伝子調節、タンパク質修飾などの関係;(2)既存のハイスループット実験;(3)従来の文献に報告された遺伝子同士の相互作用。 R(http://www.r−project.org/)のKEGGSOAPソフトウェアパッケージ(http://www.bioconductor.org/packages/2.4/bioc/html/KEGGSOAP.html)により、KEGGデータベースのシグナル経路のデータを分析し、ゲノム内範囲内の遺伝子同士の相互作用を同定し、下記の三種類の関係が存在した。ECrel 酵素‐酵素の関係、継続的反応段階を触媒する二種類の酵素PPrel タンパク‐タンパクの相互作用、例えば結合および修飾GErel 遺伝子発現の相互作用、転写因子と標的遺伝子産物との関係を表す タンパク‐タンパク同士の相互作用のデータはMIPSデータから得られる(http://mips.helmholtz−muenchen.de/proj/ppi/)。Co−citationアルゴリズムを採用し、具体的方法は下記のようである。PubMedデータベースの要約をダウンロードし、各要約をセンテンスに分けて、そしてセンテンスに共存している遺伝子の名称を分析し、即ちCo−citationの遺伝子とした。各Co−citationの遺伝子対の現れる頻度を合計した。遺伝子対の現れる頻度が高ければ高いほど、この遺伝子対の間に相互作用が存在する可能性が高い。PubMedデータベースの資料数をNとし、遺伝子対の二つの遺伝子がPubMedデータベースにおける独立に現れる頻度をそれぞれm、nとし、遺伝子対を実際に同時に現れる回数をkとし、超幾何分布(hypergeometric distribution)に基づいて、完全ランダムの条件でk回以上のCo−citationの確率を計算した。 ここで、最後のデータ結果に基づいて、遺伝子の間の相互関係交互網路を統合した。この関係交互網路はmedusaソフトにより図で示した。 2.質量分析とデータ処理 例1で得たAPE、ADVT血栓サンプルに対し、それぞれ質量分析を行い、質量分析計の型番がLTQ(Thermo Finnigan USA)である。 2.1 LC−MS/MS EttanTM MDLCシステム(GE Healthcare)によりトリプシンペプチド混合物に対し脱塩および単離をした。このシステムにおいて、サンプルがRPトラップカラム(RP trap column, Zorbax 300 SB C18, Agilent Technologies)で脱塩され、続いてRPカラム(150 μm i.d., 100 mm長さ、ColumnTechnology Inc., Fremont, CA)で単離された。移動相A(HPLC用水に0.1%ギ酸)及び移動相B(アセトニトリルに0.1%ギ酸)が選択された。トリプシンペプチド混合物20μgをカラムに添加し、4−50%線形勾配のBにより流速2μL/minで120分間の単離をした。電気噴霧界面を備えるFinniganTM LTQTMリニアイオントラップMS(Thermo Electron)を前記LC装置に連続し、溶出されたペプチドを検出した。同時にデータ依存性のMS/MSスペクトラムも得られた。各スキャニングサイクルが下記のようである。一つの完全なProfileモードMSスキャニング、それから五個のCentroidモードMS/MSスキャニングであり、ここでDynamic ExclusionTMの設置は繰り返し回数=2、繰り返し時間=30s、除外時間=90sである。サンプルずつに三重に分析された。 2.2データ分析 BioworksBrowser rev. 3.1(Thermo Electron, San Jose, CA.)を使い非冗長性International Protein Index (IPI)の人類タンパクデータベース(バージョン3.26, 67687条目)に対し、MS/MSスペクトラムを自動に検索した。BuildSummaryによりSEQUEST出力ファイルからタンパク同定の結果を抽出した(Dai J, Shieh CH, Sheng QH, Zhou H, Zeng R: Proteomic analysis with integrated multiple dimensional liquid chromatography/mass spectrometry based on elution of ion exchange column using pH steps. Anal Chem)。 ペプチドはトリプシンペプチドの形に制限され、多くとも二つの割れ目が欠損すると容許された。システインのカルバモイルメチル化は固定修飾とされ、メチオニン残基の酸化は可変修飾にされる。容許された質量許容差はそれぞれ前駆イオンが2.0 Da、断片イオンが0.8 Daであった。Delta CN (≧0.1)及び相互相関点数(Xcorr、一個の電荷≧1.9、二個の電荷≧2.2、三個の電荷≧3.75)に準じてタンパクを同定した。 3.結果および分析: 結果を上海敏芯科技有限会社(中国上海)に依頼し、下記のバイオインフォマティクス分析を行った。(例1由来のAPE患者サンプルの調製、ショットガン法によるタンパクサンプル前分離の結果を図1に示し、酵素分解したペプチド断片、破片配列情報の結果を図2に示す。)データベースに依拠−タンパク検索−対応遺伝子の同定−Gene Oncology(GO)解析−差別的遺伝子の同定−差別的タンパクの同定−KEGG Pathwayのシグナル経路解析−タンパク相互作用の交互網路の獲得−交互網路コア蛋白の同定。 結果: (1)GO解析方法:差別的発現タンパクがGO解析の入力とされた。差別的遺伝子がそれぞれgene ontologyデータベースの各節点にマップされ、各節点の遺伝子数を数えた。統計結果が下記に示す。 (2) KEGGシグナル経路解析:遺伝子をGenMAPP v2.1によりKEGG Pathwayデータベースにマップし、各経路における遺伝子の累積程度(p−値)を合計した。APE血栓サンプルに対し合計で35個の相関シグナル経路が見つかれた。AVDT血栓サンプルに対し、合計で94個の相関シグナル経路が見つかれた。 (3)タンパク相互作用交互網路解析:同時に3種類の異なる相互作用関係を統合し、タンパク相互作用の交互網路を得た。すなわち、前記相互作用は以下の通りです:(a) KEGGシグナル経路解析データにおけるタンパク相互作用、遺伝子調節、タンパク質修飾などの関係、(b)既存のハイスループット実験、例えば酵母ツーハイブリッドなどに証明されたタンパク−タンパク相互作用、(c)報告された遺伝子同士およびタンパク同士の相互作用。 APE血栓サンプルのバイオインフォマティクス分析結果を図3と図4に示す。この結果から、β2、β3およびβ1サブユニットインテグリンは赤色血栓のコア蛋白であることが分かった。 AVDT血栓サンプルのバイオインフォマティクス分析結果を図5と図6に示す。この結果から、β3サブユニットインテグリンおよびITGA2B(すなわちインテグリンα鎖IIb)は赤色血栓のコア蛋白であることが分かった。 例3:急性VTE患者由来の血栓のタンデムタンパク質量分析 1.臨床対象の情報: (1) VTE患者24例は患者群で、図像学(CTA、MRA、肺換気/潅流スキャン、血管造影あるいは下肢血管超音波検査)によりVTEと診断された。 そのうち、男性12例、女性12例、年齢25−82歳、平均年齢62±16歳であった。8例は急性VTE(1カ月内で発病)で、9例は亜急性(1−3カ月内で発病)で、7例は慢性VTE(3カ月前で発病)であり、そのうちの4例はCTEPH臨床症状がひどくなり再入院した患者であったある。急性期VTEで入院した患者8例毎に低分子ヘパリン5000単位/Bidを7−10日間皮下注射し、低分子ヘパリンを停止する3−4日間前にワルファリン2.5mG/Qdを経口投与した。亜急性期VTEの入院患者9例毎に低分子ヘパリン5000単位/Bidを7日間皮下注射し、及び/またはワルファリン2.5mG/Qdを経口投与した。再入院のCTEPH患者4例は亜急性期の抗凝固療法を受け、そのほかの慢性期VTE患者3例は追跡治療で外来通院し、ワルファリン2.5mG/Qdの経口投与により治療されていた。本研究の検査期間内に、24例のVTE患者は何れも悪性腫瘍、自己免疫疾患および動脈血栓症にかかっていなかった。 健康検査で健康の人270例を対照群とした。そのうち、140人の男性 (年齢20−75歳) において、20−39歳群49人、40−59歳群48人、60歳以上群43人であった。130人の女性(年齢21−72歳)において、20−39歳群46人、40−59歳群44人、60歳以上群40人であった。 PE、DVTの診断にはいずれも図像学(CT、MRA、ECTあるいは血管造影)の証拠及び臨床症状が必要である。診断標準について、(Torbicki A, Perrier A, Konstantinides S, et al. Guidelines on the diagnosis and management of acute pulmonary embolism: the Task Force for the Diagnosis and Management of Acute Pulmonary Embolism of the European Society of Cardiology (ESC)[J]. Eur Heart J, 2008, 29(18):2276−2315;およびQaseem A, Snow V, Barry P, et al. Current diagnosis of venous thromboembolism in primary care: a clinical practice guideline from the American Academy of Family Physicians and the American College of Physicians[J]. Ann Intern Med, 2007,146(6):454−458)に参照することができる。 2.インテグリンβ分子の検出 (1)対象(VTE患者あるいは対照)から2mlの末梢静脈血を採血し、試験管に抗凝固する2mgの EDTAおよび20μlの蛍光抗体を添加した。そのうちの抗体について、それぞれインテグリンβ1サブユニット(CD29)に対する抗体は、PEで標識され、マウス抗ヒトIgG2a,κタイプで、クローンナンバーHUTS−21で、濃度50mg/Lであり、インテグリンβ2サブユニット(CD61)に対する抗体は、PEで標識され、マウス抗ヒトIgG1,κタイプで、クローンナンバー6.7で、濃度50mg/Lであった。インテグリンβ3サブユニット(CD61)に対する抗体は、PEで標識され、マウス抗ヒトIgG1,κタイプで、クローンナンバーVI−PL2で、濃度50mg/Lであった。CD29−PE(β1)、CD18−PE(β2)、CD61−PE(β3)蛍光抗体はアメリカBD社(Becton, Dickinson and Company,アメリカ)から購入された。 (2)サンプルを添加し十分に混合した後、30分間避光反応させた。 (3)試験管に溶血素を500μl添加した。赤血球を溶解するための溶血素のタイプはOptiLyse Cであり、アメリカBeckman−Coulter社から購入された。 (4) 37℃の水浴に30分間置いた。 (5)洗濯した後バッファ液(0.01MのPBS,PH7.2)を100μl添加し、フローサイトメトリー検出を行った。ここでアメリカBECKMAN−COULTER社のEPICS XL−4型フローサイトメトリーが使用された。 3.細胞免疫およびインテグリンフロー検出の操作手順: (1)実験のとき、試験管に抗凝固するEDTAを2mg添加し、同時に同型の対照管を設定し、蛍光標識によってそれぞれ20μlのマウスIgG1−PC5、IgG1−FITC、IgG1−PE(CD29分子検出の場合20μlのマウスIgG2−PE、50mg/L)を加え、更に相応の蛍光抗体20μl(50mg/L)を添加した。十分に混合した後、室温において30分間避光反応させた。タイプOptiLyse Cの溶血素(アメリカBECKMAN−COULTER社製)を500μl加え、37℃水浴において30分間反応させた。取り出した後洗浄し、管毎にアメリカBeckman−Coulter社からのシース液(活性成分として硫酸ナトリウム9.84g/L、塩化ナトリウム4.07 g/L、プロカイン塩酸塩0.11 g/Lである)を500μlを添加し、フローサイトメトリー(アメリカBECKMAN−COULTER社製、タイプEPICS XL−4)検出を行った。 BECKMAN−COULTER標準蛍光細粒によりフローサイトメトリーのPMT電圧、蛍光補償、感度を調節し、検出方針を設けた。管毎に10000個の細胞を収集した。同型の対照管の散布図中に対応する細胞群に応じて口を置き、標識する蛍光に対応した象元によって、陽性細胞の百分率(%)を確定し、フローサイトメトリー付属のSYSTEM−IIソフトで結果を分析した。 統計学分析:対象群に対しSPSS18統計学ソフトで統計分析を行った。Kolmogorov−Smirnov検定により正規性を検定し、P>0.05の場合、正規分布を呈すると判断される。正規分布のデータをで表し、年齢別に群間の比較について分散分析を行い、P<0.05である場合、統計学上の差異があると判断する。非正規性分布のデータに対し中央値及び統計学上のP2.5−P97.5で表し、性別の群間の比較についてWilcoxon順位和検定を行い、P<0.05である場合、統計学上の有意差があると判断する。年齢別の群間の比較についてKruskal−Wallis H検定を行い、P<0.05である場合、統計学上の差異があると判断する。 正規分布のデータに対し、健康人群で得た平均値および標準偏差で表し、正常レベルの範囲を確定した。非正規分布のデータに対し、中央値及び統計学上のP2.5−P97.5で正常レベルの範囲を表す。 VTE群のβ1、β2およびβ3は対照群と比較し、正常の参照値の区間を超える場合、発現の増加があると判断する。 総細胞数に対する相応のインテグリンサブユニットを含有する細胞(陽性細胞)の百分率で結果(すなわち、10000個の細胞に対する陽性細胞の百分率)を表し、図7〜10および下記の表3に示す。270例の対照群において、インテグリンβ1、β3サブユニットは正規分布を呈し、インテグリンβ2サブユニットは非正規分布を呈した。性別の結果の間に有意差がなく、年齢の増加に従ってβ1およびβ3は降りる傾向があった。インテグリンβ1サブユニットの基線区間は2.8−13.56%で、インテグリンβ2サブユニットの基線区間は71.1−95.8%で、インテグリンβ2サブユニットの基線区間は4.59−14.71%であった。 本研究における24例の急性期、亜急性期及び慢性期VTE患者において、抗凝固療法や抗凝固治療の時間が異なっても、この24例のVTE患者のインテグリンβサブユニット単一あるいは共同の発現が何れも健康人群の区間の上限値より高い。ここで、15/24例(62.5%)VTE患者のインテグリンβサブユニット単一の発現が上昇し、11/24例(45.8%)のインテグリンβ1サブユニットが上昇し、その中で急性期4/11例、亜急性期4/11例、慢性期3/11例であり、13/24例(54.2%)のインテグリンβ2サブユニットが上昇し、その中で急性期4/13例、亜急性期4/13例、慢性期5/13例であり、10/24例(41.7%)のインテグリンβ3サブユニットが上昇し、その中で急性期3/10例、亜急性期6/10例、慢性期1/10例であった。9/24例のインテグリンβサブユニット二項以上の発現が共同に上昇し(37.5%)、ここでβ1,β2及びβ3の共同に上昇したのは3/24例(12.5%)であり、β1及びβ2の共同に上昇したのは6/24例(25%)であり、β1及びβ3の共同に上昇したのは1/24例(4.2%)であり、β2及びβ3の共同に上昇したのは1/24例(4.2%)であった。以上の細胞学検査結果によると、VTE患者のインテグリンβ亜族の高発現はVTEの診断に用いられることができる。 上記の例の結果によると、健康人群の血細胞インテグリンβ1、β2及びβ3サブユニットの発現は検出されることが可能であり、β1およびβ2サブユニットの発現は正規分布を呈し、β3サブユニットの発現は非正規分布を呈する。性別の間に統計学上の有意差はない。年齢の増加に従って、β1及びβ3サブユニットの発現は下がる傾向がある。本発明の8例急性期、9例亜急性期および7例慢性期のVTE患者におけるインテグリンβ1、β2及びβ3サブユニットの発現は別々にあるいは共同に上昇し、何れも対照群の参考区間の上限値を超え、血栓タンデムタンパク質量分析の分析結果に合う。本研究におけるVTE群のインテグリンβ1、β2及びβ3サブユニットの発現は別々にあるいは共同に顕著に上昇することは、インテグリンの活性化及び信号伝達作用は増加されることが分かった。インテグリンβ1、β2、β3サブユニットのVTE患者の持続的抗凝固療法の過程での高発現は、患者が安定性、感受性および特異性があり、塞栓しやすい状態にあることを明らかに表する。 インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットと特異性的に結合する物質の、対象の血液サンプル、例えば末梢静脈血サンプルにおけるインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットのレベルを検出することにより、静脈血栓塞栓(VTE)を診断するための診断剤の製造への使用。 前記診断剤は、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットからの少なくとも1種とそれぞれ特異性的に結合する少なくとも1種の物質、好ましくはインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット及びインテグリンβ3サブユニットとそれぞれ異性的に結合する物質を含む、請求項1に記載の使用。 前記静脈血栓塞栓は、急性肺塞栓(APE)、慢性血栓塞栓性肺高血圧(CTEPH)あるいは深部静脈血栓(DVT)であり、好ましくは急性肺塞栓あるいは急性深部静脈血栓である、請求項1に記載の使用。 前記物質は、抗体、リガンド、及び/又はアンタゴニストであり、好ましくは標識された抗体、リガンド、及び/又はアンタゴニストである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。 前記抗体、リガンド、及び/又はアンタゴニストは、蛍光標識されたものであり、例えばフィコエリスリン(PE)で標識されたものである、請求項4に記載の使用。 インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットとそれぞれ特異性的に結合する物質を含む、対象の血液サンプル、例えば末梢静脈血サンプルにおけるインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットのレベルを検出することにより静脈血栓塞栓(VTE)を診断するためのキット。 インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットからの少なくとも1種とそれぞれ特異性的に結合する少なくとも2種の物質、好ましくはインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット及びインテグリンβ3サブユニットとそれぞれ特異性的に結合する物質を含む、請求項6に記載のキット。 前記静脈血栓塞栓は、急性肺塞栓(APE)、慢性血栓塞栓性肺高血圧(CTEPH)あるいは深部静脈血栓(DVT)であり、好ましくは急性肺塞栓あるいは急性深部静脈血栓である、請求項6に記載のキット。 前記物質は、抗体、リガンド、及び/又はアンタゴニストであり、好ましくは標識された抗体、リガンドあるいはアンタゴニストである、請求項6〜8のいずれか1項に記載のキット。 前記抗体、リガンド、及び/又はアンタゴニストは、蛍光標識されたものであり、例えばフィコエリスリン(PE)で標識されたものである、請求項9に記載のキット。 本発明は、対象の血液サンプルにおけるインテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットのレベルを検出することを含む、静脈血栓塞栓(VTE)を診断する方法を提供する。また、インテグリンβ1サブユニット、インテグリンβ2サブユニット、及び/又はインテグリンβ3サブユニットと特異性的に結合できる物質を含む、VTE診断するためのキットを提供する。【選択図】なし


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