タイトル: | 公表特許公報(A)_アフィニティークロマトグラフィーマトリックス |
出願番号: | 2015503160 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C07K 14/31,C07K 1/22,C07K 17/04,C07K 17/10 |
アンダー,マッツ ボーレン,ゴーラン ビヨークマン,トマス アベルグ,パー−ミカエル ロドリゴ,グスタフ JP 2015511637 公表特許公報(A) 20150420 2015503160 20130326 アフィニティークロマトグラフィーマトリックス ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ 597064713 荒川 聡志 100137545 小倉 博 100105588 黒川 俊久 100129779 アンダー,マッツ ボーレン,ゴーラン ビヨークマン,トマス アベルグ,パー−ミカエル ロドリゴ,グスタフ SE 1250304-1 20120328 SE 1250493-2 20120515 C07K 14/31 20060101AFI20150324BHJP C07K 1/22 20060101ALI20150324BHJP C07K 17/04 20060101ALI20150324BHJP C07K 17/10 20060101ALI20150324BHJP JPC07K14/31C07K1/22C07K17/04C07K17/10 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC SE2013050335 20130326 WO2013147691 20131003 30 20141105 4H045 4H045AA10 4H045AA30 4H045BA10 4H045BA60 4H045BA61 4H045CA11 4H045DA50 4H045EA50 4H045FA71 4H045FA74 4H045GA26 本発明は、アフィニティークロマトグラフィーの分野に関し、より具体的には突然変異した1以上のプロテインAドメイン(E、D、A、B、C)、又はプロテインZを有するリガンドを含有する分離マトリックスに関する。本発明はまたかかる分離マトリックスによる対象とするタンパク質の分離方法にも関する。 免疫グロブリン、特にモノクローナル抗体(mAb)は、製造又は開発のいずれかで世界的に最も普及しているバイオ医薬品の代表である。この特定の治療市場に対する高い商業上の需要、従ってその価値のため、製薬会社は、それぞれのmAbの製造プロセスの生産性を最大限にする一方で関連するコストを制御するために多大な努力を払って来ている。 アフィニティークロマトグラフィーは、殆どの場合、モノクローナル又はポリクローナル抗体のようなこれらの免疫グロブリン分子の精製における重大な工程の1つとして使用される。特に興味のある1群のアフィニティー試薬は免疫グロブリン分子の不変の部分に特異的に結合することができるタンパク質であり、かかる相互作用は抗体の抗原結合特異性とは独立している。かかる試薬は、限定されることはないが血清若しくは血漿製剤又は細胞培養由来の供給材料のようないろいろな試料からの免疫グロブリンのアフィニティークロマトグラフィー回収のために広く使用することができる。かかるタンパク質の一例は、異なる種由来のIgG免疫グロブリンのFc及びFab部分に結合することができるドメインを含有するブドウ球菌のプロテインAである。 ブドウ球菌プロテインA(SpA)に基づく試薬は、その高い親和性及び選択性に起因して、バイオテクノロジーの分野で、例えば抗体の捕捉及び精製のため、並びに検出のためのアフィニティークロマトグラフィーにおいて、広範な用途が見出されている。現在、SpAに基づくアフィニティー媒体は、おそらく、細胞培養由来の工業用供給材料を含めていろいろな試料からモノクローナル抗体及びその断片を単離するための最も広く使用されているアフィニティー媒体である。従って、プロテインAリガンドを含む様々なマトリックスは、例えば、天然のプロテインA(例えばProtein A SEPHAROSE(商標)、GE Healthcare、Uppsala、Sweden)の形態で、また組換えプロテインA(例えばrProteinA SEPHAROSE(商標)、GE Healthcare)からなるものが商業的に入手可能である。より具体的には、商業用組換えプロテインA製品で行われる遺伝子操作は、支持体へのその付着を容易にするためのものである。 これらの応用では、他のアフィニティークロマトグラフィー用途と同様に、汚染物質の確実な除去に総合的な配慮が必要とされる。例えば、かかる汚染物質は、例えばタンパク質、炭水化物、脂質、細菌及びウィルスを始めとする望ましくない生体分子又は微生物のような、クロマトグラフィー手法において固定相又はマトリックスに吸着し溶出されない分子であり得る。マトリックスからのかかる汚染物質の除去は、通常、所望の産物の最初の溶出後、その後の使用の前にマトリックスを再生するために行われる。かかる除去では、通常、汚染物質を固定相から溶出することができる薬剤を使用する現場洗浄(cleaning-in-place, CIP)といわれる公知の手法を使用する。しばしば使用されるかかる種類の薬剤の1つは、固定相を通過するアルカリ性溶液である。現在最も広く使用されている洗浄・消毒用薬剤はNaOHであり、その濃度は汚染の程度及び性質に応じて0.1Mから例えば1Mまでの範囲であり得る。この方策は、13を超えるpH値にマトリックスを曝露することになる。タンパク質性のアフィニティーリガンドを含有する多くのアフィニティークロマトグラフィーマトリックスの場合、かかるアルカリ性環境は極めて苛酷な条件であり、その結果関与する高いpHに対するリガンドの不安定性のために能力が低下する。 従って、広範な研究が、アルカリ性pH値に耐える改良された能力を示す工学処理されたタンパク質リガンドの開発に集中して来ている。例えば、Guelich et al(Journal of Biotechnology 80(2000)、169−178)は、連鎖球菌のアルブミン結合性ドメイン(ABD)のアルカリ性環境における安定性を改良するためにタンパク質工学を提案している。Guelich et alは、4つのアスパラギン残基の全てがロイシン(1つの残基)、アスパラギン酸(2つの残基)及びリシン(1つの残基)により置換されたABDの突然変異体を創成した。さらに、Guelich et alは、彼らの突然変異体が天然のタンパク質と類似の標的タンパク質結合挙動を示し、工学処理されたリガンドを含有するアフィニティーカラムが、アルカリ性条件に繰り返して曝露された後、元の工学処理されてないリガンドを用いて製造されたカラムより高い結合能力を示すことを報告している。こうして、4つのアスパラギン残基全てを、構造及び機能に重大な影響を及ぼすことなく置換することができると結論されている。 最近の研究は、プロテインA(SpA)に変化を起こさせて同様な特性を奏することも可能であることを示している。米国特許出願公開第2005/0143566号は、少なくとも1つのアスパラギン残基をグルタミン又はアスパラギン酸以外のアミノ酸に突然変異させると、SpAのBドメイン、又はSpAのBドメインに由来する合成構築物であるプロテインZ(米国特許第5143844号)のような親のSpAと比較して、約13〜14までのpH値において増大した化学的安定性が付与されることを開示している。著者らは、これらの突然変異したタンパク質をアフィニティーリガンドとして使用すると、その分離媒体は予想通りアルカリ性の薬剤を用いた洗浄手順により良好に耐えることができるということを示している。米国特許出願公開第2006/0194955号は、突然変異したリガンドがプロテアーゼにより良好に耐えることにより、分離プロセスにおけるリガンドの漏出を低減することができるということを示している。別の米国特許出願公開第2006/0194950号は、アルカリに対して安定なSpAドメインを、例えばG29A突然変異によりさらに変性させて、リガンドがFabに対する親和性を欠くがFc親和性を保持するようにすることができるということを示している。 歴史的に、5つのIgG結合性ドメインを含有する天然のプロテインAがあらゆるプロテインAアフィニティー媒体の生産に使用されている。組換え技術を使用して、いずれも4又は5のIgG結合性ドメインを含有する多くのプロテインA構築物が生産されて来ている。最近の研究では、二量体リガンドが四量体リガンドと比較して同様な、又は増大した結合能力を有することが示されている(国際公開第2010/080065号)。米国特許第7993848号 ある種の抗体は低いpHで凝集する傾向があり、又は感受性である(例えば活性を失う可能性がある)ことがよく知られている。この分野では、抗体又は関連標的に対して増大した溶出pHを有するタンパク質リガンドを含有する分離マトリックスを得る必要性が相変わらず存在する。さらに、mAbプロセスの初めの捕捉工程において選択性が改良され、そのため宿主細胞タンパク質及び抗体凝集体の排除が改良される必要性がある。 本発明の第1の局面は、増大したpHにおける結合した免疫グロブリン又はFc含有タンパク質の放出、並びに結合した宿主細胞タンパク質及び/又は免疫グロブリン又はFc含有タンパク質の凝集体に対するよりも高いpH値における単量体の免疫グロブリン又はFc含有タンパク質の選択的な放出を含めて改良された解離特性をもつ突然変異した免疫グロブリン−又はFc−結合性タンパク質を提供することである。これは請求項1に定義されている突然変異した免疫グロブリン−又はFc−結合性プロテインAによって達成される。 本発明の第2の局面は、増大したpHにおける結合した免疫グロブリン又はFc含有タンパク質の溶出、並びに結合した宿主細胞タンパク質及び/又は免疫グロブリン又はFc含有タンパク質の凝集体に対するよりも高いpH値における単量体の免疫グロブリン又はFc含有タンパク質の選択的な溶出を含めて改良された溶出特性をもつアフィニティー分離マトリックスを提供することである。これは請求項9に定義されているアフィニティー分離マトリックスによって達成される。 本発明の第3の局面は、1以上のFc含有タンパク質を分離する方法を提供することであって、この方法では増大したpHにおける結合したFc含有タンパク質の溶出並びに結合した宿主細胞タンパク質及び/又はFc含有タンパク質の凝集体に対するよりも高いpH値における単量体のFc含有タンパク質の選択的な溶出が可能になる。これは請求項16に記載の方法によって達成される。 本発明の第4の局面は、吸着したFc含有タンパク質を有するマトリックスのための溶出バッファーを選択する方法を提供することであって、この方法では、結合した宿主細胞タンパク質及び/又はFc含有タンパク質の凝集体に対するよりも高いpH値における単量体のFc含有タンパク質の選択的な溶出を可能にするバッファーの選択が可能になる。これは請求項28に記載の方法によって達成される。 本発明のさらなる適切な実施形態は従属請求項に記載されている。図1は、プロテインZの3つの変種と共に、プロテインAの5つのドメインの各々のアミノ酸配列のアラインメントを示す。プロテインAのBドメインのH18に対応する位置のアスパラギン又はヒスチジンは太字で表示されている。3つのα−ヘリックスの位置も示されている(Graille et al、PNAS 2000、97(10):5399−5404;Deisenhofer、Biochemistry 1981、20(9):2361−2370)。図2は、プロトタイプZ(H18S,P57I)4に対するモノクローナル抗体及び宿主細胞タンパク質のpH勾配溶出クロマトグラムのオーバーレイを示す。図3は、比較のプロトタイプZ4に対するモノクローナル抗体及び宿主細胞タンパク質のpH勾配溶出クロマトグラムのオーバーレイを示す。図4は、図2に記載したZ(H18S,P57I)4を用いた実験のmAb画分B7、B12及びC2に対するサイズ排除クロマトグラフィーの結果を示す代表的なクロマトグラムのオーバーレイである。定義 用語「タンパク質」は、本明細書において、タンパク質並びにその断片を記載するために使用されている。すなわち、三次元構造を示すいかなるアミノ酸の鎖も用語「タンパク質」に含まれ、従ってタンパク質断片が包含される。 タンパク質の「機能性変異体」という用語は、本明細書において、本発明に関連してアフィニティー(親和性)及び安定性と定義される機能が本質的に保持されている変異体タンパク質を意味する。従って、機能に関連しない1以上のアミノ酸は交換されてもよい。 用語「親分子」は、本明細書において、本発明による突然変異が導入される前の対応するタンパク質に対して使用されている。 用語「構造安定性」とは分子の三次元形態の完全性(integrity)をいい、「化学的安定性」は化学的分解に耐える能力を指す。 用語「Fc結合性」タンパク質は、そのタンパク質が免疫グロブリンのFc(「断片、結晶化可能」ともいわれる)領域に結合することができることを意味する。しかしながら、Fc結合性プロテインが免疫グロブリンのFab領域のような他の領域にも結合できることを除外するわけではない。 用語「Fc含有タンパク質」は、免疫グロブリンのFc領域又は断片を含むタンパク質を意味する。Fc含有タンパク質は、Fc領域/断片を含むか又は免疫グロブリン全体を含む免疫グロブリン又は融合タンパク質若しくはコンジュゲートであることができる。 本明細書において、アミノ酸は、その完全な名称でいわない場合、慣用の1文字又は3文字記号で表示する。 突然変異は、本明細書において、交換された位置の数、その前の野生型又は突然変異してないアミノ酸、そしてその数の後の突然変異したアミノ酸によって定義される。すなわち、例えば、位置18のヒスチジン(H)からグルタミン酸(E)への突然変異はH18Eと表示される。欠失突然変異は、欠失された位置の数の前に野生型又は突然変異してないアミノ酸を、そして数の後に「del」を続けて記載して定義される。すなわち、例えば、位置18におけるヒスチジンの欠失はH18delと表示される。 第1の局面において、本発明は、ブドウ球菌プロテインAの1以上の突然変異した免疫グロブリン−又はFc−結合性ドメイン(単量体ともいわれる)(すなわちE、D、A、B及び/又はCドメイン)又はプロテインZ若しくは配列番号7又は配列番号8で定義される変異体のようなこれらの機能性変異体を含む免疫グロブリン−又はFc−結合性タンパク質を開示する。1以上の突然変異した単量体の少なくとも1つにおいて、プロテインAのBドメイン(配列番号4)又はプロテインZ(配列番号6)のH18に対応する位置のアスパラギン又はヒスチジンは、プロリン又はアスパラギンではない第1のアミノ酸残基で置換されている。さらに、プロテインAのBドメイン又はプロテインZのP57に対応する位置のアミノ酸残基がプロリンであり、プロテインAのBドメイン又はプロテインZのN28に対応する位置のアミノ酸残基がアスパラギンである場合、プロテインAのBドメイン又はプロテインZのH18に対応する位置のアミノ酸残基はセリン、スレオニン又はリシンである。この突然変異したタンパク質の利点は、H18突然変異をもたない免疫グロブリン−又はFc−結合性タンパク質より高いpHレベルで、その突然変異したタンパク質が免疫グロブリン及びFc含有タンパク質と結合し、またそれらを放出するということである。プロテインAのBドメイン又はプロテインZのH18に対応する位置のアスパラギン又はヒスチジン残基の突然変異は、免疫グロブリン及びFc含有タンパク質、例えばIgG、IgA及び/又はIgM、又はFc断片を含有する融合タンパク質の溶出pHを予想外に増大する。好ましくは、溶出pHは0.2〜1.0超のpHだけ増大する。より好ましくは、溶出pHは少なくとも0.3pH増大し、最も好ましくは溶出pHは少なくとも0.4pH増大する。或いは、溶出pHは>4.0、好ましくはpH>4.2に増大し、一方標的分子の収率は少なくとも80%、又は好ましくは>95%である。免疫グロブリン及びその他のFc含有タンパク質は低いpHレベルで凝集する傾向があるので、バイオプロセシングにおけるタンパク質の使用にとって重要である。これらの凝集体は潜在的に免疫原性であり、免疫グロブリン又はFc含有タンパク質の医薬使用の前に除去する必要がある。このため、プロセスのコストが大きく上昇する。 プロテインAのBドメイン又はプロテインZのH18に対応する位置のアスパラギン又はヒスチジン残基の突然変異の追加の利点は、マトリックスに吸着する宿主細胞タンパク質(HCP)又は抗体若しくはFc含有タンパク質の凝集体が、抗体/Fc含有タンパク質単量体よりも高いpHで溶出することである。次に、HCP及び凝集体がまだマトリックスに結合しているpHで溶出することによって、単量体の抗体又はFC含有プロテインをより高い純度で回収することが可能である。H18突然変異をもたないリガンドを有する比較のマトリックスの場合、結合したHCP及び凝集体は抗体の単量体と共に溶出する。 幾つかの実施形態では、リガンドはまた、例えば、SpAドメインB又はプロテインZの少なくとも1つの単量体ドメインの少なくとも1つのアスパラギン残基をグルタミン以外のアミノ酸に突然変異させることによって、アルカリに対して安定にされる。既に述べたように、米国特許出願公開第2005/0143566号は、少なくとも1つのアスパラギン残基がグルタミン又はアスパラギン酸以外のアミノ酸に突然変異すると、その突然変異によって高いpHにおける増大した化学的安定性がリガンドに付与される(例えば、N23T)ことを開示している。さらに、これらのリガンドを含むアフィニティー媒体はアルカリ性薬剤を用いる洗浄手順に対してより良好に耐えることができる。米国特許出願公開第2006/0194955号は、突然変異したリガンドはまた、プロテアーゼに対してもより良好に耐えることができ、従って分離工程においてリガンドの漏出が低減することを示している。これらの出願の開示は援用によりその全体が本明細書の一部をなす。 幾つかの実施形態では、そのように製造されたリガンドは抗体のFab部分/領域に対する実質的な親和性を欠如しているが、Fc部分/領域に対する親和性を有している。幾つかの実施形態では、リガンドの少なくとも1つのグリシンはアラニンで置換されている。米国特許出願公開第2006/0194950号は、アルカリ安定なドメインを、例えばG29A突然変異によりさらに変性させて、リガンドがFabに対する親和性を欠くがFc親和性を保持するようにすることができるということを示している。この出願の開示は援用によりその全体が本明細書の内容の一部をなす。本明細書で使用するアミノ酸の番号付けは当技術分野で従来から使用されており、プロテインAのドメインB上の位置によって例示され、当業者はE、D、A、B、Cの各ドメインに対する突然変異するべき位置を容易に認識することができる。 幾つかの実施形態ではは、ロイシン残基とグルタミン残基との間に位置するアスパラギン残基も、例えばスレオニン残基に突然変異されている。すなわち、1つの実施形態では、配列番号6で定義される配列の位置23のアスパラギン残基は、例えばスレオニン残基に突然変異されている。特定の実施形態ではは、配列番号6で定義される配列の位置43のアスパラギン残基も、例えばグルタミン酸に突然変異されている。アミノ酸位置43が突然変異されている実施形態ではは、N23Tのような少なくとも1つの追加の突然変異と組み合わせるのが最も有利のようである。 従って、幾つかの実施形態では、本発明の突然変異したタンパク質は配列番号4又は6で定義される配列の少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%又は好ましくは少なくとも約95%を含み、但しアスパラギン突然変異が位置21にはない。 本明細書で、配列番号4はSpAのBドメインのアミノ酸配列を定義する。ADNKFNKEQQNAFYEILHLPNLNEEQRNGFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAPK配列番号6はプロテインZとして公知のタンパク質を規定する。VDNKFNKEQQNAFYEILHLPNLNEEQRNAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAPK プロテインZはSpAのBドメインに由来する合成の構築物であり、位置29のグリシンがアラニンに交換されている。例えば、Stahl et al、1999:Affinity fusions in Biotechnology:focus on protein A and protein G、in The Encyclopedia of Bioprocess Technology:Fermentation、Biocatalysis and Bioseparation.M.C.Fleckinger及びS.W.Drew編 John Wiley及びSons Inc.、New York、8−22参照。 1つの実施形態では、上記突然変異体タンパク質は、配列番号4、5、6、7又は8で定義されるアミノ酸配列からなるか、又はその機能性変異体であって、プロテインAのBドメイン又はプロテインZのH18に対応する位置のヒスチジンが置換されている機能性変異体である。もう1つ別の実施形態では、上記突然変異体タンパク質は、配列番号1、2又は3で定義されるアミノ酸配列からなるか、又はその機能性変異体であって、プロテインAのBドメインのH18に対応する位置のアスパラギンが置換されている機能性変異体である。この関連で使用されている用語「機能性変異体」は、突然変異体タンパク質の、免疫グロブリン又はFc含有タンパク質に対する親和性又は増大したpH値の環境における改良された化学的安定性に影響を及ぼさないアミノ酸位置に1以上の追加の変化を含むあらゆる類似の配列を包含する。 上述したように、長期間アルカリ性条件で高い結合能力を有するリガンドとして有用な突然変異体タンパク質を達成するために、位置21のアスパラギン残基の突然変異は回避される。1つの実施形態では、位置3のアスパラギン残基は突然変異させない。 当業者には容易に理解されるように、位置18でのアスパラギン又はヒスチジンの突然変異、位置57及び28の突然変異、アルカリ安定性を提供するための突然変異、並びにGからAへの突然変異は慣用の分子生物学技術を用いていかなる順序でも実施できる。さらに、リガンドは、突然変異したタンパク質リガンドをコードする核酸配列を含有するベクターによって発現することができる。或いは、タンパク質合成技術によって作成することもできる。所定の配列のペプチド及びタンパク質を合成する方法は当技術分野で周知であり一般に利用可能である。 幾つかの実施形態では、嵩高い側鎖を有するアミノ酸、例えばチロシン、トリプトファン又はメチオニンはH18位での置換基として回避することができる。嵩高い側鎖はタンパク質の三次構造を乱し得、そのため免疫グロブリン又はFc結合特性に影響を及ぼし得る。 幾つかの実施形態では、加えて、位置57でのプロリン及び位置28でのアスパラギンの少なくとも1つが第2のアミノ酸残基で置換されている。これの利点は、より高い結合能力と共にさらにより高い溶出pH値を達成することができるということである。幾つかの実施形態では、位置57及び28のアミノ酸残基はプロリンでもアスパラギンでもない。 幾つかの実施形態では、位置18のアミノ酸残基はセリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、スレオニン及びリシンからなる群から選択される。これらのアミノ酸で、特に高い溶出pHレベルを達成することができる。 幾つかの実施形態では、位置57及び28のアミノ酸残基の少なくとも1つはアラニン及びイソロイシンからなる群から選択される。 幾つかの実施形態では、タンパク質は、配列番号5、6、7又は8で定義され親分子に由来する1以上の突然変異した単量体を含み、突然変異はH18E、H18S,N28A、H18S,P57I、N28A,P57I、及びH18S,N28A,P57Iからなる群から選択される。 幾つかの実施形態では、タンパク質は、配列番号14、16、17又は18で定義される1以上の突然変異した単量体を含む。 幾つかの実施形態では、タンパク質は、3、4、5又は6量体のように少なくとも2つの突然変異した単量体を含み、多量体タンパク質を形成する。単量体は共有結合し得、例えば単一のポリペプチド鎖の一部を形成し得る。突然変異した単量体は同一であってもよいが、本発明のいろいろ異なる突然変異した単量体であることもできる。多量体タンパク質は、本発明の単量体に加えて、プロテインAの他の突然変異した又は突然変異してないIgG結合性ドメインも含み得る。幾つかの実施形態では、多量体リガンドの単量体ドメインの少なくとも1つにおいてプロテインAのBドメイン又はプロテインZのH18に対応する位置のアスパラギン又はヒスチジンが置換される。他の実施形態では、多量体リガンドの全ての単量体ドメインのアスパラギン又はヒスチジン残基が置換される。 幾つかの実施形態では、本発明の多量体タンパク質は、一続き、好ましくは0〜15のアミノ酸、例えば0〜5、0〜10又は5〜10のアミノ酸の範囲のアミノ酸により互いに結合した単量体単位を含む。好ましくは、かかる結合の性質はタンパク質単位の空間的立体構造を不安定化しない。これは、例えば、その結合中におけるプロリンの存在を回避することによって達成することができる。さらにまた、結合は、好ましくは、アルカリ性環境中で、突然変異したタンパク質単位の特性を損なわない程充分に安定であるべきである。このために、結合がアスパラギンを含有しなければ有利である。結合がグルタミンを含有しなければさらに有利であり得る。 幾つかの実施形態では、本二量体リガンドは配列番号9の配列を含む。VDAKFDKEQQNAFYEILELPNLTEEQRNAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAPKVDAKFDKEQQNAFYEILELPNLTEEQRNAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAPKC 幾つかの実施形態では、本四量体リガンドは配列番号11の配列を含む。VDAKFDKEQQNAFYEILSLPNLTEEQRNAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAIKVDAKFDKEQQNAFYEILSLPNLTEEQRNAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAIKVDAKFDKEQQNAFYEILSLPNLTEEQRNAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAIKVDAKFDKEQQNAFYEILSLPNLTEEQRNAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAIKC 幾つかの実施形態では、本四量体リガンドは配列番号12の配列を含む。VDAKFDKEQQNAFYEILSLPNLTEEQRAAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAPKVDAKFDKEQQNAFYEILSLPNLTEEQRAAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAPKVDAKFDKEQQNAFYEILSLPNLTEEQRAAFIQSLKDDPSQSANLAEAKKLNDAQAPKVDAKFDKEQQNAFYEILSLPNLTEEQRAAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAPKC 幾つかの実施形態では、本四量体リガンドは配列番号13の配列を含む。VDAKFDKEQQNAFYEILSLPNLTEEQRAAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAIKVDAKFDKEQQNAFYEILSLPNLTEEQRAAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAIKVDAKFDKEQQNAFYEILSLPNLTEEQRAAFIQSLKDDPSQSANLAEAKKLNDAQAIKVDAKFDKEQQNAFYEILSLPNLTEEQRAAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAIKC 幾つかの実施形態では、タンパク質はさらにC末端のシステインを含む。システインは、本発明のタンパク質のC末端の単量体に直接結合することができるし、又は一続き、好ましくは0〜15のアミノ酸、例えば0〜5、0〜10又は5〜10のアミノ酸の範囲のアミノ酸を介して結合することもできる。また好ましくは、この一続きは、アルカリ性環境で、突然変異したタンパク質の性質を損なわない程充分に安定であるべきである。このために、一続きがアスパラギンを含有しなければ有利である。加えて、一続きがグルタミンを含有しなければ有利であることができる。C末端のシステインを有することの利点は、タンパク質のエンドポイントカップリングが、システインチオールと支持体上の親電子性の基との反応によって達成することができるということである。これは、結合能力にとって重要なカップリングしたタンパク質の優れた可動性を提供する。 第2の局面において、本発明はアフィニティー分離マトリックスを開示し、これは支持体にカップリングされた上記実施形態のいずれかのタンパク質を含む。このマトリックスは免疫グロブリン及びその他のFc含有タンパク質のクロマトグラフィー分離に有用であり、より高い溶出pH及び改良された溶出選択性のために最初の捕捉工程後のより良好な回収率及びより低い不純物レベルが可能になる。 当業者には理解されるように、発現されたタンパク質は支持体に固定化される前に適当な程度に精製されなければならない。かかる精製方法は当技術分野で周知であり、タンパク質に基づくリガンドの支持体への固定化は標準的な方法を用いて容易に行われる。適切な方法及び支持体は以下でより詳細に述べる。 本発明のマトリックスの固体支持体はいかなる適切な周知の種類のものであることができる。慣用のアフィニティー分離マトリックスは、有機性であって、親水性の表面を使用する水性媒体に曝露する、すなわちその外面上、及び存在するならばその内面上のヒドロキシ(−OH)、カルボキシ(−COOH)、カルボキサミド(−CONH2、おそらくN−置換形態)、アミノ(−NH2、おそらく置換形態)、オリゴ−若しくはポリエチレンオキシ基を曝露するポリマーに基づくことが多い。 リガンドは、例えばリガンドに存在するアミノ及び/又はカルボキシ基を利用する慣用のカップリング技術によって支持体に結合され得る。ビスエポキシド、エピクロロヒドリン、CNBr、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)等が周知のカップリング試薬である。支持体とリガンドとの間に、リガンドの利用性を改良し、リガンドと支持体の化学的カップリングを容易にするスペーサーといわれる分子を導入することができる。或いは、リガンドは、物理的吸着又は生物特異的な吸着のような非共有結合によって支持体に結合されてもよい。 幾つかの実施形態では、マトリックスは、支持体とカップリングした5〜15mg/ml、例えば6〜11mg/mlのタンパク質を含む。カップリングしたタンパク質の量は、カップリングプロセスに使用するタンパク質の濃度、使用するカップリング条件及び使用する支持体の細孔構造によって調節することができる。一般原則として、マトリックスの絶対的な結合能力は、少なくとも細孔がカップリングしたタンパク質により著しく狭窄されるようになるまでは、カップリングしたタンパク質の量と共に増大する。カップリングしたタンパク質1mg当たりの相対的な結合能力は高いカップリングレベルで低下し、上記範囲内で最適な費用便益となる。 幾つかの実施形態では、タンパク質はチオエーテル架橋を介して支持体にカップリングする。かかるカップリングを実施する方法は当技術分野で周知であり、標準的な技術及び装置を用いて当業者により容易に実施される。 幾つかの実施形態では、タンパク質は、上記のようにタンパク質上に存在するC末端のシステインを介してカップリングする。これにより、システインチオールと、支持体上の親電子性の基、例えばエポキシド基、ハロヒドリン基等との効率的なカップリングが可能となり、チオエーテル架橋結合が生じる。 幾つかの実施形態では、支持体は、多糖類のようなポリヒドロキシポリマーを含む。多糖類の例としては、例えばデキストラン、デンプン、セルロース、プルラン、寒天、アガロース等がある。多糖類は本来親水性で、非特異的な相互作用の程度が低く、反応性の(活性化可能な)ヒドロキシル基の高い含有量を提供し、バイオプロセシングで使用するアルカリ性の洗浄溶液に対して一般に安定である。 幾つかの実施形態では、支持体は、寒天又はアガロースを含む。本発明で使用する支持体は逆懸濁ゲル化(inverse suspension gelation)(S Hjerten:Biochim Biophys Acta 79(2)、393−398(1964))のような標準的な方法に従って容易に製造することができる。或いは、ベースマトリックスはSEPHAROSE(商標)FF(GE Healthcare)のような市販の製品である。大規模の分離に殊に有利な1つの実施形態では、支持体は米国特許第6602990号又は同第7396467号に記載されている方法を用いてその剛性を増大するように適合させられており、従ってマトリックスは高い流量に対してより適切になっている。 幾つかの実施形態では、支持体は、例えばヒドロキシアルキルエーテル架橋により架橋されている。かかる架橋を生成する架橋剤試薬は、例えばエピクロロヒドリンのようなエピハロヒドリン、ブタンジオールジグリシジルエーテルのようなジエポキシド、アリルハライド又はアリルグリシジルエーテルのようなアリル化試薬であることができる。架橋は、支持体の剛性に有益であり、化学的安定性を改良する。ヒドロキシアルキルエーテル架橋はアルカリに対して安定であり、有意な非特異的吸着を生じない。 或いは、固体支持体は、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド等のような合成のポリマーをベースとする。ジビニル及びモノビニル−置換ベンゼンをベースとするマトリックスのような疎水性ポリマーの場合、マトリックスの表面は、上で定義したような親水性の基を回りの水性液体に曝すように親水化されることが多い。かかるポリマーは標準的な方法に従って容易に製造される。例えば、「Styrene based polymer supports developed by suspension polymerization」(R Arshady:Chimica e L’Industria 70(9)、70−75(1988))参照。或いは、SOURCE(商標)(GE Healthcare)のような市販の製品が使用される。もう1つ別の選択肢において、本発明の固体支持体は、支持体、例えばシリカ、酸化ジルコニウム等を含む。 さらに別の実施形態では、固体支持体は表面、チップ、毛細管、又はフィルターのような別の形態である。 本発明のマトリックスの形状に関して、1つの実施形態では、マトリックスは多孔質モノリスの形態である。代わりの実施形態では、マトリックスは、多孔質又は非多孔質であることができるビーズ状又は粒子形態である。ビーズ状又は粒子形態のマトリックスは充填層として、又は懸濁形態で使用することができる。懸濁形態には膨張床及び純粋な懸濁物として公知のものがあり、粒子又はビーズは移動が自由である。モノリス、充填層及び膨張床の場合、分離手順は一般に濃度勾配を有する慣用のクロマトグラフィーに従う。純粋な懸濁液の場合、バッチ式モードが使用される。 第3の局面において、本発明は、a)上記実施形態のいずれかによるアフィニティー分離マトリックスを準備し、b)Fc含有タンパク質及び少なくとも1種の他の物質を含む溶液を準備し、c)溶液を分離マトリックスと接触させ、d)場合により、分離マトリックスを少なくとも1種の洗浄用緩衝液で洗浄し、e)分離マトリックスを溶出バッファー、又はpHが低下する溶出バッファー勾配で溶出して、Fc含有タンパク質を含む溶出液を得、f)溶出液を回収する工程を含む、Fc含有タンパク質を他の物質から分離する方法に関する。 本質的に一定のpHを有する溶出バッファーを使用する場合(溶出工程)溶出バッファーは4.0〜6.0のpHを有し、溶出バッファー勾配を使用する場合(勾配溶出)溶出バッファー勾配の少なくとも一部分は6.0〜4.0のpH範囲である。 天然又は組換えプロテインA(例えば、MABSELECT(商標)及びrProteinA SEPHAROSE(商標)4 Fast Flow)に基づく普通のプロテインA媒体は通常、主としてそのVH3結合に依存して、pH3.1〜4.0(ピーク頂点で測定)で溶出する(例えば、Ghose,S.et al.Biotechnology and Bioengineering 92 665−673[2005]参照)。プロテインAのBドメインに由来するアルカリ性で安定化された製品MABSELECT SURE(商標)は、本質的にVH3結合を欠如し、より高い溶出pH:3.7〜4.0を与える。アフィニティークロマトグラフィーの原理の一般的な概論については、例えばWilchek,M.及びChaiken,I. 2000.An overview of affinity chromatography.Methods Mol.Biol.147:1−6を参照されたい。 プロテインAのBドメイン又はプロテインZのH18に対応する位置のアスパラギン又はヒスチジン残基の置換は意外にも免疫グロブリン、又はFc断片を含有する融合タンパク質の溶出pHを増大する。従って、この置換は、pH4.0超、好ましくは4.2超での溶出を可能とするリガンドを提供し、一方標的分子の収率は少なくとも80%又は好ましくは>95%である。この結果、標的分子の凝集又は不活性化のリスクを最小化するより穏やかな溶出条件が得られる。 単量体からの凝集体分離は抗体精製において、殊により高い分解能では難問であった。本リガンドは単量体と凝集体との改良された分離を示し、そのため大規模であっても捕捉工程における凝集体除去のための実行可能なアプローチとなる(図5及び6参照)。また、本発明の方法で、例えばDNA、望ましくない抗体アイソフォーム(例えば、ある種の電荷アイソフォーム及び糖型)、エンドトキシン、ウィルス、発酵添加物(例えば抗生物質)等のような他の汚染物質を除去することも可能である。 本発明の幾つかの実施形態では、吸着工程の条件は慣用的に使用されているものであり得、標的抗体のpIのような特性に応じて適当に適合させる。任意の洗浄工程はPBSバッファーのような一般に使用されるバッファーを用いて実施することができる。また、1種以上の洗浄用緩衝液、例えば異なるpH、イオン強度又は添加物を用いて実施してもよい。溶媒、塩若しくは洗浄剤又はこれらの混合物のような添加物を1以上の洗浄用緩衝液中に使用し得る。 本方法は、例えば治療又は診断用の抗体の精製プロトコルにおける最初の工程などで標的抗体を捕捉するのに有用である。1つの実施形態では、少なくとも75%の抗体が回収される。1つの有利な実施形態では、特定のリガンド系に適切なpHを有する溶出液を用いて少なくとも80%、例えば少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の抗体が回収される。こうして、特定の実施形態では、約98%を超える抗体が回収される。本方法では次いで、他のクロマトグラフィー工程のような1以上の追加の工程を実施し得る。追加の工程(複数でもよい)は、例えばカチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、多モードクロマトグラフィー(正又は負に荷電したマトリックスを用いる)、チオ親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー及び/又はゲルろ過からなり得る。追加のクロマトグラフィー工程は結合−溶出又はフロースルーモードのいずれかで実施することができ、充填層で、又は膜吸収体若しくはモノリスカラムを用いて実施することができる。保持タンクを工程間に使用してもしなくてもよく、工程間の保持タンクを回避するために例えばインライン条件を使用することが可能である。 幾つかの実施形態では、方法はさらに、工程e)の終了時に、溶出バッファーのpH又は溶出バッファー勾配のpHより少なくとも0.1pH単位低いpHを有するストリッピングバッファーで分離マトリックスをストリップする工程g)を含む。結合した宿主細胞タンパク質、凝集体及びその他の不純物がより低いpHで溶出する場合、低pHストリップはこれらの物質をマトリックスから効率的に除去する。さらに不純物を除去するためにアルカリ性洗浄工程を後に行うとしても、低pHストリップはアルカリ性洗浄の効率を増大することができ、アルカリ性工程中の詰まり(fouling)を防ぎ得る。 幾つかの実施形態では、Fc含有タンパク質及び少なくとも1種の他の物質を含む溶液は宿主細胞タンパク質(HCP)、例えばCHO細胞又は大腸菌タンパク質を含む。CHO細胞及び大腸菌タンパク質の含有量はこれらのタンパク質に向けたイムノアッセイ、例えばCygnus TechnologiesのCHO HCP又はE Coli HCP ELISAキットにより都合よく決定することができる。 幾つかの実施形態では、宿主細胞タンパク質又はCHO細胞/大腸菌タンパク質は工程g)中に脱着する。 幾つかの実施形態では、Fc含有タンパク質及び少なくとも1種の他の物質を含む溶液は、Fc含有タンパク質の凝集体を、例えば、溶液中のFc含有タンパク質の総量に基づいて計算して少なくとも1%、少なくとも5%又は少なくとも10%の凝集体を含む。多くの場合、抗体又はその他のFc含有タンパク質は発酵ブロス内で既に凝集体を含有する。大量の凝集体の存在はその後の精製中の主要な困難を創成し、凝集体を捕捉工程で直接除去することができることは本発明の1つの利点である。凝集体のレベルは、例えば、凝集体が単量体Fc含有タンパク質の前に溶出する分析的ゲルろ過によって便利に決定することができる。 幾つかの実施形態では、凝集体は工程g)中に脱着する。 幾つかの実施形態では、回収された溶出液中の凝集体含有率は、回収された溶出液中のFc含有タンパク質の総量に基づいて計算して1%未満、例えば0.5%未満又は0.2%未満の凝集体である。上記したように、捕捉工程における凝集体の有意なクリアランスは本プロセスにおけるその後の精製工程を容易にする。他の場合には高過ぎる凝集体含有率のために生産に使用できない供給材料を使用することも可能になり得る。 溶出は、プロテインA媒体からの溶出に使用するのに適した任意の溶液を使用して実施することができる。幾つかの実施形態では、溶出バッファー又は溶出バッファー勾配は酢酸イオン、クエン酸イオン、グリシン、コハク酸イオン、リン酸イオン、及びギ酸イオンからなる群から選択される少なくとも1種のアニオン種を含む。 幾つかの実施形態では、溶出バッファー又は溶出バッファー勾配はアルギニン又は尿素のような少なくとも1種の溶出添加剤を含む。かかる添加剤の使用は、Fc含有タンパク質の溶出のためのpHレベルをさらに増大することができる。 幾つかの実施形態では、工程f)の溶出液はプールに収集され、プールのpHは工程e)の終了時の溶出バッファーのpH又は溶出バッファー勾配のpHより少なくとも0.5pH単位高い。プールのpHレベルは少なくとも4.5、例えば少なくとも5.0若しくは少なくとも5.5、又は4.5〜6.5若しくは5.0〜6.5であることができる。タンパク質はかなりの長期間(少なくとも数時間)プール条件に曝露されるので、プール内の高いpHレベルは、溶出した単量体のFc含有タンパク質からの凝集体の形成を防止するために重要である。 幾つかの実施形態では、本方法はさらに、場合により工程g)の後に行われる工程h)を含み、pH13〜14のアルカリ性溶液、例えば0.1M〜0.5Mの水酸化ナトリウムを含む溶液を使用してマトリックスを清浄化する。既に述べたように、SpA(ドメインE、D、A、B、C)又はプロテインZのリガンドの場合、少なくとも1つのアスパラギン残基をグルタミン又はアスパラギン酸以外のアミノ酸に突然変異させると、これらの突然変異リガンドを含むアフィニティー媒体はアルカリ性薬剤を用いる洗浄手順により良好に耐えることができる(米国特許出願公開第2005/0143566号)。増大した安定性とは、免疫グロブリンに対する突然変異したタンパク質の初めの親和性が長期間本質的に保持されることを意味する。従って、その結合能力は、アルカリ性環境中で親の分子より遅く低下する。この環境はアルカリ性として定義することができ、一般的に表示されるアルカリ性条件で増大したpH値、例えば約10超、例えば約13又は14まで、すなわち10〜13又は10〜14を意味する。或いは、これらの条件はNaOHの濃度によって定義することができ、約1.0M以下、例えば0.7M又は特に約0.5M以下、従って0.7〜1.0Mの範囲内であることができる。 このように、既に述べたアスパラギン突然変異の存在下でのリガンドの免疫グロブリンに対する親和性、すなわち結合特性、従ってマトリックスの能力は、アルカリ性薬剤による処理によって本質的に変化しない。従来、アフィニティー分離マトリックスの現場洗浄処理の場合、使用されるアルカリ性薬剤はNaOHで、その濃度は0.75M、例えば0.5M以下である。従って、その結合能力は、0.5MのNaOHで7.5時間処理した後、約70%未満、好ましくは約50%未満、より好ましくは約30%未満、例えば約28%に低下する。 幾つかの実施形態では、本方法はさらに、溶出液又はプールのpHを調節することなく溶出液又はプールをa カチオン交換樹脂に適用するという工程i)を含む。本発明の方法で生成した溶出液(及び従ってプール)は慣用のプロテインA媒体の場合より高いので、溶出液/プールを中間でpH調節することなくカチオン交換体に直接適用することが可能である。このため、プロセスが簡略化され、直接の加工処理が可能になる。 幾つかの実施形態では、方法はさらに、工程i)の前に、溶媒−洗浄剤ウィルス不活化の工程を含む。一般に使用される2つのウィルス不活化方法は低pH不活化及び溶媒−洗浄剤不活化である。低いpHへの曝露は凝集を起こすので、タンパク質を低いpHに曝露することなく分離を可能にする現在の方法ではあまり望ましくない。しかし、溶媒−洗浄剤不活化は、例えばカチオン交換工程に適用する前にプール/溶出液への適用が可能である。この方法では、洗浄剤(例えば0.3〜1.5%の非イオン性界面活性剤、例えばDow ChemicalのTriton(商標)X−100又はUniqemaのTween(商標)80)及び溶媒(例えば0.1〜0.5%リン酸トリ−n−ブチル)を溶出液/プールに適用し、30〜90分間、例えば約45分間作用させる。 本発明は、本発明のリガンド又はマトリックスを使用する、IgG、IgA及び/又はIgMのような免疫グロブリンを単離する方法に関する。従って、本発明は、上記リガンド又はマトリックスへの吸着によって少なくとも1種の標的化合物を液体から分離する、クロマトグラフィープロセスを包含する。目的とする生成物は分離された化合物又は液体であることができる。従って、本発明のこの局面は、広く使用されている周知の分離技術であるアフィニティークロマトグラフィーに関する。手短に言うと、最初の工程において、標的化合物、好ましくは上述したような抗体を含む溶液を、分離マトリックス上に存在するリガンドへの標的化合物の吸着を可能にする条件下でマトリックスに通す。かかる条件は溶液中の、例えばpH及び/又は塩濃度、すなわちイオン強度により制御される。マトリックスの容積を越えないように注意すべきであり、すなわち流れは申し分のない吸着が可能となるように充分に遅くするべきである。この工程において、溶液の他の成分は原則として妨げられることなく通過する。 第4の局面において、本発明は、Fc含有タンパク質が吸着した上記いずれかの実施形態のマトリックスのための溶出バッファーを選択する方法を開示し、この方法は、a)Fc含有タンパク質及び少なくとも1種の他の物質を含む溶液を準備し、b)Fc含有タンパク質及び他の物質の少なくとも一部が分離マトリックスに吸着する条件下で溶液を分離マトリックスに接触させ、c)場合により、分離マトリックスを少なくとも1種の洗浄用緩衝液で洗浄し、d)pHが低下する溶出バッファー勾配を用いて分離マトリックスを溶出させ、ここで溶出バッファー勾配の少なくとも一部は6.0〜4.0のpH範囲にあり、e)工程d)で得られた溶出液中のFc含有タンパク質及び他の物質の含有量を測定し、f)Fc含有タンパク質の少なくとも90%、例えば少なくとも95%が溶出し、吸着した他の物質の25%未満、例えば10%未満が溶出するバッファー勾配のpHを有する溶出バッファーを選択する工程を含む。 幾つかの実施形態では、他の物質は宿主細胞タンパク質、例えばCHO細胞タンパク質、又はFc含有タンパク質の凝集体を含む。 以下、例示の目的のみで提供され、従って添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲を限定するものと考えるべきでない実施例を用いて本発明を説明する。以下及び本出願中で挙げる文献は全て援用により本明細書の内容の一部をなす。 タンパク質の突然変異誘発 定義されたアミノ酸置換体をコードするオリゴヌクレオチドを用いるツーステップPCRにより部位特異的な突然変異誘発を行った。鋳型として、野生型のZ(配列番号6)又は突然変異したZ(2以上の突然変異体を創成した)の単一のドメインを含有するプラスミドを使用した。PCR断片を大腸菌(E.coli)発現ベクター(pGO)に連結した。DNA配列決定法を使用して挿入された断片の正しい配列を確認した。 Z(H18E)、Z(H18del)、Z(H18S,P57I)、Z(H18S,N28A)及びZ(H18S,N28A,P57I)の多量体を形成するために、C又はZドメインのアミノ酸VDに対応する開始コドン(GTA GAC)内に位置するAccI部位を使用した。pGO Z(H18E)1、pGO Z(H18del)1、pGO Z(H18S,P57I)1、pGO Z(H18S,N28A)1及びpGO Z(H18S,N28A,P57I)1をAccIで消化し、CIP処理した。各変異体に特異的なAccI粘着末端プライマーを設計し、2つのオーバーラップするPCR産物を各々の鋳型から生成した。PCR産物を精製し、PCR産物を2%アガロースゲル上で比較することによってその濃度を評価した。等量の対合PCR産物を連結バッファー中でハイブリダイズさせた(45分で90℃→25℃)。得られた産物はAccI部位(正しいPCR断片及び/又は消化したベクター)に連結されそうな断片のおよそ1/4である。連結及び形質転換の後コロニーをPCRでスクリーニングして、Z(H18E)2、Z(H18del)2、Z(H18S,P57I)4、Z(H18S,N28A)4及びZ(H18S,N28A,P57I)4を含有する構築物を同定した。DNA配列決定法によってポジティブなクローンを確認した。 構築物の発現及び精製 構築物を、標準的な媒体内においてE.coli K12の発酵により細菌のペリプラズム内で発現させた。発酵後細胞を熱処理してペリプラズムの中味を媒体中に放出させた。媒体中に放出された構築物を、0.2μmの細孔径を有する膜を用いた精密ろ過により回収した。 この時点ではろ過工程からの透過液中にある各々の構築物を親和性により精製した。この透過液を、固定化されたIgGを含有するクロマトグラフィー媒体上にロードした。ロードした産物をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、pHを下げることによって溶出した。 溶出プールを中性のpHに調節し、ジチオトレイトールの添加により還元した。次に、試料をアニオン交換体上にロードした。洗浄工程後構築物をNaCl勾配で溶出し、あらゆる汚染物質から分離した。溶出プールを限外ろ過で40〜50mg/mlに濃縮した。 精製されたリガンドをLC−MSで分析して、純度を決定し、その分子量が(アミノ酸配列に基づいて)期待されたものに対応することを確認した。 突然変異体Z(H18del)2(配列番号10)はアフィニティー工程でIgG媒体に結合しなかった。従って、この突然変異はIgG結合能力の喪失を起こすと結論し、H18del変異体ではそれ以上実験を行わなかった。 活性化 使用したベースマトリックスは平均直径85ミクロンの堅い架橋アガロースビーズであり、米国特許第6602990号の方法に従って製造され、細孔径はGel Filtration Principles and Methods,Pharmacia LKB Biotechnology 1991,pp 6−13に記載されている方法に従ってMw110kDaのデキストランに対して0.70の逆ゲルろ過クロマトグラフィーKav値に対応する。 100mLのフラスコ中で、25mL(g)のドレインしたベースマトリックス、10.0mLの蒸留水及び2.02gのNaOH(s)を機械的に撹拌しながら10分間25℃で混合した。4.0mLのエピクロロヒドリンを加え、2時間反応を進行させた。活性化されたゲルを10ゲル堆積容積(GV)の水で洗浄した。 カップリング 50mlのFalconチューブ内の20mLのリガンド溶液(50mg/mL)に、169mgのNaHCO3、21mgのNa2CO3、175mgのNaCl及び7mgのEDTAを加えた。Falconチューブをローラーテーブル上に5〜10分間載せた後、77mgのDTEを加えた。還元を45分より長く続行した。その後リガンド溶液を、Sephadex G−25を充填したPD10カラム上で脱塩した。276nmのUV吸収を測定することによって、脱塩した溶液中のリガンド含有量を決定した。 活性化されたゲルを3〜5GV{0.1Mのリン酸塩/1mMのEDTA pH8.6}で洗浄し、次にリガンドを米国特許第6399750号に記載されている方法に従ってカップリングした。実験で使用した全てのバッファーは少なくとも5〜10分間窒素ガスでガス抜きした。 固定化後ゲルを3xGVの蒸留水で洗浄した。ゲル+1GV{0.1Mリン酸塩/1mM EDTA/10%チオグリセロール pH8.6}を混合し、チューブを室温で一晩振動台に載せておいた。次にゲルを3xGV{0.1M TRIS/0.15M NaCl pH8.6}及び0.5M HAc及び次に8〜10xGVの蒸留水で交互に洗浄した。ゲル試料をアミノ酸分析のために外部の試験所に送り、リガンド含有量(mg/mlゲル)を総アミノ酸含有量から計算した。 プロトタイプ 変異体Z(H18E)2(配列番号9):各々がH18E置換(Z(H18E)2)を含有するプロテインZの2つのコピーを含有するリガンド二量体、リガンド密度5.2mg/ml、 比較プロトタイプZ2(配列番号9と類似だが、H18はEに置換されてない):プロテインZvar2(Z2)の2つのコピーを含有するリガンド二量体、リガンド密度5.9mg/ml、 変異体Z(H18S,P57I)4(配列番号11):各々がH18S,P57I置換Z(H18S,P57I)4を含有するプロテインZの4つのコピーを含有するリガンド四量体、リガンド密度5.3mg/ml、 変異体Z(H18S,N28A)4(配列番号12):各々がH18S,N28A置換を含有するプロテインZの4つのコピーを含有するリガンド四量体、リガンド密度6.9mg/ml、 比較プロトタイプZ4(配列番号11と類似だが、H18とP57はそれぞれSとIに置換されてない):プロテインZvar2(Z2)の4つのコピーを含有するリガンド四量体、リガンド密度6.0mg/ml、 比較プロトタイプZ(H18S)4(配列番号12と類似だが、N28はAに置換されてない):各々がH18S置換を含有するプロテインZの4つのコピーを含有するリガンド四量体、リガンド密度6.7mg/ml、 比較プロトタイプZ(N28A)4(配列番号12と類似だが、H18はSに置換されてない):各々がN28A置換を含有するプロテインZの4つのコピーを含有するリガンド四量体、リガンド密度7.7mg/ml。 各々のプロトタイプで、2mlの樹脂をTricorn 5 100カラムに充填した。 タンパク質 Gammanorm 165mg/ml(Octapharma)、平衡化バッファー中1mg/mlに希釈。 平衡化バッファー APBリン酸塩バッファー20mM+0.15M NaCl、pH7.4(Elsichrom AB)。 溶出バッファー クエン酸塩バッファー0.1M、pH6 クエン酸塩バッファー0.1M、pH3。 CIP 0.1M NaOH。 実験の詳細と結果 貫流容量(breakthrough capacity)は、AKTAExplorer 10システムを用いて2.4分の滞留時間で決定された。安定なベースラインが得られるまで平衡バッファーをバイパスカラムに貫流させた。これは、オートゼロ化(auto zeroing)の前に行った。試料は、100%UVシグナルが得られるまでバイパスを通して適用した。その後、安定なベースラインが得られるまで再び平衡バッファーをカラムに適用した。最大吸光度の85%のUVシグナルに達するまで試料をカラムにロードした。その後、UVシグナルが最大吸光度の20%になるまでカラムを平衡バッファーにより流量0.5ml/minで洗浄した。タンパク質は、0.5ml/minの流量でpH6.0から出発しpH3.0で終了するまで10カラム容積に渡り直線勾配で溶出した。その後、カラムを流量0.5ml/minの0.1M NaOHで清浄化し、平衡バッファーで再平衡化した後20%エタノールを加えた。この最後の工程は、100%UVシグナルが得られるまでバイパスカラムを通して試料をロードすることにより試料濃度をチェックするためのものであった。 10%での貫流容量の計算には、下記式を用いた。すなわち、カラム流出液中のIgGの濃度が供給材料中のIgG濃度の10%になるまでカラムにロードしたIgGの量である。A100% = 100%UVシグナル;Asub = 非結合性IgGサブクラスによる吸光度寄与;A(V) = 所与の適用容積での吸光度;Vc = カラム容積;Vapp = 10%貫流までの適用容積;Vsys = システムの死容積;C0 = 供給材料濃度。 10%貫流での動的結合容量(DBC)を計算し、曲線の外観を検討した。また曲線を結合、溶出及びCIPピークに関しても検討した。5、10及び80%貫流について動的結合容量(DBC)を計算した。幾つかの結果を表1に示す。親のH18リガンド(Z2又はZ4)と比較してH18S置換を有するリガンドについて類似の容量が観察された。 ポリクローナルヒトIgG及びいろいろなmABに対するIgG容量及び溶出の検討をZ(H18E)2、Z(H18S,P57I)4、Z(H18S,N28A)4、Z2及びZ4について行った。幾つかの例を表1に示す。 異なる細胞培養上清(mAb C、mAb D)又はポリクローナルヒトIgGについてリン酸塩バッファーにおける溶出研究を行った。溶出pHはZ(H18E)2、Z(H18S,P57I)4及びZ(H18S,N28A)4についてZ2及びZ4と比較して0.6〜1.8pH単位増大する。最大の差はポリクローナルIgG(Gammanorm)で示されるが、mAb Dは幾つか小さい差を示す。これらの溶出研究においてはおよそ10mgの細胞培養上清(いろいろな細胞培養上清を使用、表2参照)をカラムにロードした。pH6からpH3の勾配溶出は0.1Mのクエン酸塩バッファーを用いて行った。ピーク頂点のpHを記録した(表2参照)。注:pH hIgG(最初のピーク)及びpH hIgG(第2のピーク)はポリクローナルIgG(Gammanorm)である。 Z(H18E)2、Z(H18S,P57I)4及びZ(H18S,N28A)4に対するより高い溶出pHを除いて、Z2及びZ4よりも良好な分離特性を示す。図2及び3は、低下するpH勾配におけるZ4(図3)及びZ(H18S,P57I)4(図2)からの抗体E及び吸着した宿主細胞タンパク質の溶出を示す。Z4(並びにH18突然変異をもたない他のマトリックス)の場合、抗体及びHCPは共溶出し、マトリックスに結合したHCPがクロマトグラフィー工程で除去されないことを意味する。Z(H18S,P57I)4の場合、HCPは勾配中で後に溶出し、このため、勾配溶出により、又は抗体が溶出するpHを有する溶出バッファーを適用した後、例えばより低いpHでストリッピングバッファーを適用してHCPを除去することにより、結合したHCPを除去する選択的な溶出の可能性が生まれる。 また、抗体凝集体も、図4に示されているように、抗体単量体より低いpHで溶出する。この図は、Z(H18S,P57I)4でのモノクローナル抗体の溶出液画分(図2に示したのと同じ画分)に対するSECクロマトグラムを示す。主要な抗体ピーク(画分B7)は凝集体を含有しないが、B12で凝集体が現れ始め、その後の画分C1は殆ど全部が凝集体からなることが分かる。 上記実施例は本発明の特定の局面を例証しており、いかなる意味でもその範囲を限定するものではなく、そのように解するべきではない。上に記載した本発明の教示に接した当業者は数多くの修正を加えることができる。これらの修正は、後続の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲内に包含されると考えられたい。 ブドウ球菌プロテインA(E、D、A、B、C)若しくはプロテインZの1以上の突然変異した免疫グロブリン結合性ドメイン(単量体)又はその機能性変異体を含む免疫グロブリン結合性タンパク質であって、1以上の突然変異した単量体の少なくとも1つにおいて、プロテインAのBドメイン又はプロテインZのH18に対応する位置のアスパラギン又はヒスチジンがプロリン又はアスパラギンではない第1のアミノ酸残基で置換されており、位置57のアミノ酸残基がプロリンであり、位置28のアミノ酸残基がアスパラギンである場合、プロテインAのBドメイン又はプロテインZのH18に対応する位置のアミノ酸残基がセリン、スレオニン又はリシンではない、タンパク質。 さらに、位置57のプロリン及び位置28のアスパラギンの少なくとも1つが第2のアミノ酸残基で置換されている、請求項1記載のタンパク質。 位置57及び28のアミノ酸残基のいずれもプロリン又はアスパラギンではない、請求項1記載のタンパク質。 位置18のアミノ酸残基がセリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、スレオニン及びリシンからなる群から選択される、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のタンパク質。 位置57及び28のアミノ酸残基の少なくとも1つがアラニン及びイソロイシンからなる群から選択される、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のタンパク質。 タンパク質が、配列番号5、6、7又は8で定義される親の分子から誘導された1以上の突然変異した単量体を含み、突然変異がH18E、H18S,N28A、H18S,P57I、N28A,P57I及びH18S,N28A,P57Iからなる群から選択される、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のタンパク質。 タンパク質が配列番号14、16、17、又は18で定義される1以上の突然変異した単量体を含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のタンパク質。 少なくとも2つの突然変異した単量体、例えば3、4、5又は6つの単量体を含む、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載のタンパク質。 さらに、C末端のシステインを含む、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載のタンパク質。 支持体にカップリングした、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載のタンパク質を含むアフィニティー分離マトリックス。 支持体にカップリングした、5〜15mg/ml、例えば6〜11mg/mlのタンパク質を含む、請求項10記載のマトリックス。 タンパク質がチオエーテル架橋を介して支持体にカップリングしている、請求項10又は請求項11記載のマトリックス。 タンパク質がC末端のシステインを介してカップリングしている、請求項10又は請求項11記載のマトリックス。 支持体が多糖のようなポリヒドロキシポリマーを含む、請求項10乃至請求項13のいずれか1項記載のマトリックス。 支持体が寒天又はアガロースを含む、請求項14記載のマトリックス。 支持体が、例えばヒドロキシアルキルエーテル架橋により架橋されている、請求項10乃至請求項15のいずれか1項記載のマトリックス。 Fc含有タンパク質を他の物質から分離する方法であって、g)請求項10乃至請求項16のいずれか1項記載のアフィニティー分離マトリックスを準備し、h)Fc含有タンパク質及び少なくとも1種の他の物質を含む溶液を準備し、i)接触させるing 溶液 with 分離マトリックス;j)場合により、分離マトリックスを少なくとも1種の洗浄用緩衝液で洗浄し、k)分離マトリックスを、溶出バッファー、又はpHが低下する溶出バッファー勾配で溶出して、Fc含有タンパク質を含む溶出液を得、l)溶出液を回収する工程を含み、溶出バッファーが4.0〜6.0のpHを有するか、又は溶出バッファー勾配の少なくとも一部が6.0〜4.0のpH範囲範囲内である、方法。 さらに、溶出バッファーのpH又は工程e)の終了時の溶出バッファー勾配のpHより少なくとも0.1pH単位低いpHを有するストリッピングバッファーを用いて分離マトリックスをストリッピングする工程g)を含む、請求項17記載の方法。 溶液が宿主細胞タンパク質、例えばCHO細胞又は大腸菌タンパク質を含む、請求項17又は18記載の方法。 宿主細胞タンパク質が工程g)中に脱着される、請求項19記載の方法。 溶液が、Fc含有タンパク質の凝集体を、例えば溶液中のFc含有タンパク質の総量に基づいて計算して少なくとも1%、少なくとも5%又は少なくとも10%の凝集体を含む、請求項17乃至請求項20のいずれか1項記載の方法。 凝集体が工程g)中に脱着される、請求項21記載の方法。 回収された溶出液中の凝集体含有率が、回収された溶出液中のFc含有タンパク質の総量に基づいて計算して1%未満、例えば0.5%未満又は0.2%未満の凝集体である、請求項21又は22記載の方法。 溶出バッファー又は溶出バッファー勾配が、酢酸イオン、クエン酸イオン、グリシン、コハク酸イオン、リン酸イオン、及びギ酸イオンからなる群から選択される少なくとも1種のアニオン種を含む、請求項17乃至請求項23のいずれか1項記載の方法。 溶出バッファー又は溶出バッファー勾配が少なくとも1種の溶出添加剤、例えばアルギニン又は尿素を含む、請求項17乃至請求項24のいずれか1項記載の方法。 工程f)で溶出液がプールに収集され、プールのpHが溶出バッファーのpH又は工程e)の終了時の溶出バッファー勾配のpHより少なくとも0.5pH単位高い、請求項17乃至請求項25のいずれか1項記載の方法。 さらに、場合により工程g)の後に実施される、pH13〜14のアルカリ性溶液、例えば0.1M〜0.5Mの水酸化ナトリウムを含む溶液の適用によりマトリックスを清浄化する工程h)を含む、請求項17乃至請求項26のいずれか1項記載の方法。 さらに、溶出液又はプールのpHを調節することなく溶出液又はプールをカチオン交換樹脂に適用する工程i)を含む、請求項17乃至請求項26のいずれか1項記載の方法。 さらに、工程i)の前に溶媒−洗浄剤ウィルス不活化工程を含む、請求項27記載の方法。 Fc含有タンパク質が吸着された、請求項10乃至請求項16のいずれか1項記載のマトリックスのための溶出バッファーを選択する方法であって、a)Fc含有タンパク質及び少なくとも1種の他の物質を含む溶液を準備し、b)Fc含有タンパク質及び他の物質の少なくとも一部が分離マトリックスに吸着する条件下で溶液を分離マトリックスと接触させ、c)場合により、分離マトリックスを少なくとも1種の洗浄用緩衝液で洗浄し、d)pHが低下する溶出バッファー勾配を用いて分離マトリックスを溶出し、ここで溶出バッファー勾配の少なくとも一部は6.0〜4.0のpH範囲内であり、e)工程d)で得られた溶出液中のFc含有タンパク質及び他の物質の含有量を測定し、f)Fc含有タンパク質の少なくとも90%、例えば少なくとも95%が溶出し、吸着された他の物質の25%未満、例えば10%未満が溶出する、バッファー勾配のpHを有する溶出バッファーを選択する工程を含む、方法。 他の物質が宿主細胞タンパク質、例えばCHO細胞タンパク質、又はFc含有タンパク質の凝集体を含む、請求項30記載の方法。 さらに、Fc含有タンパク質の10%未満、例えば5%未満が溶出する、バッファー勾配のpHを有する少なくとも1種の洗浄用緩衝液を選択する工程g)を含む、請求項30又は請求項31記載の方法。 本発明は、ブドウ球菌のプロテインA(E、D、A、B、C)又はプロテインZの1以上の突然変異した免疫グロブリン−結合性ドメイン(単量体)又はその機能性変異体を含む免疫グロブリン−結合性タンパク質を開示し、ここで、1以上の突然変異した単量体の少なくとも1つにおいて、プロテインAのBドメイン又はプロテインZのH18に対応する位置のアスパラギン又はヒスチジンは、欠失されているか、又はプロリン又はアスパラギンではない第1のアミノ酸残基で置換されており、位置57のアミノ酸残基がプロリンであり、位置28のアミノ酸残基がアスパラギンである場合、プロテインAのBドメイン又はプロテインZのH18に対応する位置のアミノ酸残基はセリン、スレオニン又はリシンではない。【選択図】 図2 配列表