生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_てんかん波を伴う疾患治療剤
出願番号:2015154053
年次:2015
IPC分類:A61K 33/00,A61P 25/08,A61M 16/10,A61M 16/00


特許情報キャッシュ

大内田 守 大守 伊織 改田 祐子 JP 2015227365 公開特許公報(A) 20151217 2015154053 20150804 てんかん波を伴う疾患治療剤 国立大学法人 岡山大学 504147243 庄司 隆 100088904 資延 由利子 100124453 大杉 卓也 100135208 曽我 亜紀 100152319 大内田 守 大守 伊織 改田 祐子 JP 2010164770 20100722 A61K 33/00 20060101AFI20151120BHJP A61P 25/08 20060101ALI20151120BHJP A61M 16/10 20060101ALI20151120BHJP A61M 16/00 20060101ALI20151120BHJP JPA61K33/00A61P25/08A61M16/10 ZA61M16/00 375 6 5 2012525374 20110712 OL 18 4C086 4C086AA01 4C086AA02 4C086HA06 4C086HA21 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA13 4C086MA57 4C086NA14 4C086ZA06 本発明は、二酸化炭素を有効成分として含むことを特徴とする、てんかん波に伴う疾患の治療剤に関する。また、二酸化炭素を有効成分として含む、てんかん波に伴う疾患治療剤を投与するための医療機器に関する。 本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願、特願2010−164770号優先権を請求する。 わが国では約100万人のてんかん(epilepsy)患者が存在するといわれている(日本脳神経外科学会及び日本てんかん学会公表)。てんかんとは、脳の神経細胞の突発的な異常興奮によって起こる、発作性・反復性の運動、意識、知覚、行動、自律神経系の異常をさし、脳の病変によって起こる慢性反復性の発作を特徴とする。てんかんでは、脳波でてんかん波が検出される場合が多いが、発作が起こっていない状態など、てんかん波が必ずしも検出されない場合もある。一方、脳波でてんかん波を認める場合であっても、必ずしもてんかんとは診断されない場合もある。 てんかんの罹患率は1000人当たり約8〜10人で、神経疾患の中で頻度が高い疾患である。てんかんの主な症状には、けいれん(強直性又は間代性などの不随意運動)や、けいれんを伴わない欠神発作(意識消失)などがある。近年、分子遺伝学研究の発展によりてんかんの原因遺伝子が同定されつつある。その結果、てんかんと種々のチャネル遺伝子との関連性が明らかとなり、一部のてんかん症候群はチャネル遺伝子の変異によって発症する、いわゆる channelopathy(チャネル病) と考えられるようになってきた。特に、電位依存性Ca2+ チャネルや、電位依存性Na+ チャネル、K+ チャネルなどの変異がてんかん患者において検出されている。 現在のてんかん治療剤は、合成化合物の経口投与、座薬もしくは静脈投与である。現在のてんかん患者の治療薬としては、チャネルブロッカーなどの合成化合物の経口投与剤が挙げられる。特にてんかん重積状態の場合は即効性のある治療法が望まれるため、薬剤の静脈注射を行っている。しかし、次に示す少なくとも(1)〜(3)の事由により不都合がある。(1)薬剤抵抗性のてんかん症候群が存在し、まだ効果不十分な症例が存在する。(2)てんかん重積では静脈内への薬物投与が必要となるが、静脈ラインの確保が難しい患者(小児など)には対応が不可能である。(3)入院時での急な発作の場合には静脈内への薬物投与が可能であるが、各家庭などでの急な発作の場合、薬剤の静脈注射は不可能であるし、経口投与では効果が表れるまでに時間がかかりすぎ、けいれんの持続時間が長くなることによって後遺症を合併する危険性が増す。急な発作の場合、入院患者には静脈投与で対処可能であるが、入院時以外の場合は即効性のある治療法(従来技術)が存在しない。経口投与、座薬では効果が現れるまでに時間を要するからである。 他のてんかん薬で効果不十分な場合に使用可能な抗てんかん薬として、アセタゾラミド(AZA)が公知である(非特許文献1)。アセタゾラミドは、炭酸脱水酵素阻害剤であり、炭酸から水と二酸化炭素が生成する過程において炭酸脱水酵素を阻害する。その結果、重炭酸ナトリウムの排泄を増加させることにより、代謝性のアシドーシスを引き起こすことが知られている。しかしながら、アセタゾラミドは内服薬であるため、病院以外では急な発作に対しては即効性がない。また、投与により血中pHが下がりすぎる危険性がある。さらには、重要な副作用として、ショック、貧血(再生不良性貧血、溶血性貧血、無顆粒球症、血小板減少性紫斑病)、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症、急性腎不全、腎・尿路結石、精神錯乱、けいれんなどの中枢神経症状などが現れる恐れがある。また、アセタゾラミドについても、効果が現れるまでには、時間がかかりすぎる点も問題である。 そこで、取り扱いが容易で副作用が低く、かつ即効性のあるてんかん発作治療剤の開発が望まれている。なお、生後8−11日目のラットを48±2℃で55分間おいた場合に、脳中アルカローシスが引き金となって熱性けいれん(febrile seizures)が起こり、5%二酸化炭素を含むチャンバー内に置くことで脳中アルカローシスを抑制しうることが報告されている(非特許文献2)。しかしながら、てんかんに対する二酸化炭素の効果について、検討した報告はない。また、熱性けいれんが生じる要因としては、遺伝的要因、発熱の程度、神経の幼弱性が複雑に絡んでいると考えられているが、当報告(非特許文献2)は最も大きな比重を占める遺伝的要因を考慮していない。Br Med J., March 24, 1956, 650-654Nature Medicine, 12, 817-823 (2006) 本発明は、てんかん波に伴う疾患治療剤として、取り扱いが容易で副作用が低く、かつ即効性のある治療剤を提供することを課題とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために、てんかんモデルラットを用いて鋭意検討を重ねた結果、当該モデルラットに二酸化炭素を吸引させ、吸気の二酸化炭素濃度を制御することにより、体液中のpHを酸性側に変動させ、てんかん波を抑制しうることに成功し、本発明を完成した。 すなわち本発明は、以下よりなる。1.二酸化炭素を有効成分として含む、てんかん波に伴う疾患治療剤。2.てんかん波に伴う疾患が、てんかんである請求項1に記載の疾患治療剤。3.疾患治療剤が吸入用治療剤である、請求項1又は2に記載の疾患治療剤。4.吸入の際の吸入される気体の二酸化炭素の濃度が、1〜10%(v/v)となるように含まれる、請求項3に記載の疾患治療剤。5.請求項1〜4のいずれか1に記載の疾患治療剤が、医療用ガスボンベに充填されていることを特徴とする、てんかん波に伴う疾患治療用ガスボンベ。6.請求項5に記載の疾患治療用ガスボンベが、医療用吸引ガス装置に接続されていることを特徴とする、てんかん波に伴う疾患治療用吸引ガス装置。7.てんかん波に伴う疾患治療用ガスボンベを用いて、請求項1〜4のいずれか1に記載の疾患治療剤を吸引することを特徴とするてんかん波に伴う疾患の処置方法。 本発明の二酸化炭素を有効成分として含むてんかん波に伴う疾患治療剤によると、てんかん波により生じるスパイク(棘波)の持続時間が抑制されることが観察された。これにより、てんかん波に伴う疾患に対して二酸化炭素を吸引させることで、てんかん波を抑制し、有効に作用しうる。 また、本発明のてんかん波に伴う疾患治療剤を用いたガスボンベ又は吸引用ガス装置の開発により、以下のような効果が期待される。(1)発作抑止効果は即効性である。(2)各家庭などでの急な発作時に、周囲の者(家族等)が容易に対応可能である。(3)使用が簡便である。(4)安価である。(5)てんかん重積では静脈への薬物投与が必要だが、静脈ラインの確保が難しい患者(小児など)に、即効性の治療が可能となる。(6)従来の薬物では抑制困難なてんかん症候群や、集中治療室でてんかん重積を治療するとき、呼吸を完全にコントロールしながら発作抑制が可能となる。本発明におけるてんかんモデルラットの脳波を測定するための電極を埋め込んだ脳を示す図である。(実施例1、実施例4、比較例1、参考例1)各濃度の二酸化炭素又は酸素を含むガス内にてんかんモデルラット(GRYラット)を静置したときの血中pHを示す図である。(実施例1)本発明におけるスパイクインデックスを示す説明図である。(実施例1)吸気混合ガス(二酸化炭素)濃度の変化によるてんかんモデルラット(GRYラット)の脳波(スパイク)の変化を示す図である。(実施例1)吸気混合ガス(二酸化炭素)濃度の変化によるてんかんモデルラット(GRYラット)の脳波(スパイク)のスパイクインデックスの結果を示す図である。(実施例1)各濃度の二酸化炭素又は酸素を含む吸気混合ガス内にてんかんモデルラット(GRYラット)を静置したときの血中二酸化炭素濃度を示す図である。(実施例2)各濃度の二酸化炭素又は酸素を含む吸気混合ガス内にてんかんモデルラット(GRYラット)を静置したときの血中酸素濃度を示す図である。(実施例2)各濃度の二酸化炭素又は酸素を含む吸気混合ガス内にてんかんモデルラット(GRYラット)を静置したときの血中重炭酸イオン濃度を示す図である。(実施例2)10%(v/v)二酸化炭素、または、17%(v/v)酸素の投与(15分から60分)における血中pH、血中二酸化炭素濃度、血中酸素濃度、血中重炭酸イオン濃度の計測結果を示す図である。 (実施例3)10%二酸化炭素を投与する前の5分間と、投与開始25秒後より5分間の脳波図である。(実施例4)10%二酸化炭素投与前後の15分毎のスパイクインデックスの結果を示す図である。(実施例4)てんかんモデルラット(GRYラット)に、アセタゾラミドを投与したときの血中濃度及び血中pHを示す図である。(比較例1)アセタゾラミドを投与によるてんかんモデルラット(GRYラット)の脳波(スパイク)の変化を示す図である。(比較例1)熱性けいれんの発作前と発作後、及び、吸気混合ガス(二酸化炭素)処理後のてんかんモデルラット(Kyo811ラット)の血中pHを示す図である。(参考例1)吸気混合ガス(二酸化炭素)濃度の変化によるてんかんモデルラット(Kyo811ラット)の脳波(スパイク)の変化を示す図である。(参考例1)吸気混合ガス(二酸化炭素)濃度の変化によるてんかんモデルラット(Kyo811ラット)の発作の持続時間(Seizure duration (秒))の結果を示す図である。(参考例1) 本発明は、二酸化炭素を有効成分として含むことを特徴とする、てんかん波に伴う疾患治療剤に関する。本発明において、てんかん波に伴う疾患とは、てんかんに限定されるものではなく、てんかん波に伴うあらゆる疾患を意味する。ここで、てんかん波とは、棘波、棘徐波、棘波結合、鋭波、鋭波結合などをいう。本発明において、てんかん波に伴う疾患とは、具体的には、てんかん、又は脳血管障害や代謝異常(低血糖、電解質異常)などが挙げられるが、てんかん(epilepsy)とは関係しない熱性けいれん(febrile seizures)は、本発明の範囲からのぞかれる。本発明において、てんかん波に伴う疾患とは、好ましくはてんかん(epilepsy)である。てんかんと熱性けいれんの違いは、熱性けいれんは発熱時に発症する良性疾患であるが、てんかんは無熱時に発症し、症状、持続時間および予後が重篤化する傾向にある疾患である。 ヒトを始めとする高等生物は、生命活動に必要なエネルギーを得るために体内で酸素を消費して二酸化炭素を発生させている。体内で発生した二酸化炭素は静脈血に乗って肺に運ばれる。肺では呼吸によって血液中の二酸化炭素を放出する一方、酸素を血液中に取り込んでいる。生命活動により体内では様々な有機酸が合成されるが、調節機構の働きにより、体内環境としてpHの基準値は7.35〜7.45に保たれている。 本発明のてんかん波に伴う疾患治療剤は、二酸化炭素を有効成分として含有するものである。本発明において、二酸化炭素は、血中pHを一時的に7.4よりも低い値で、かつ生命に異常をきたさない値に低下させるために使用される。具体的には血中pHを7.25〜7.40、好ましくは7.30〜7.35に一時的に下げることができればよい。血中pHを前記のように低下させるために、二酸化炭素ガスを吸入させて使用することができる。本発明の疾患治療剤は、具体的には、二酸化炭素を有効成分として含む吸入用治療剤とすることができる。本発明は、さらにはてんかん波に伴う疾患治療のための医療用ガスボンベ又は医療用吸引用ガス装置にも及ぶ。二酸化炭素を有効成分として含むてんかん波に伴う疾患治療剤は、医療用ガスボンベに充填されていても良く、又は医療用ガスボンベが医療用吸引ガス装置に接続されていてもよい。このような吸入用治療剤、医療用ガスボンベ又は医療用吸引ガス装置に充填される二酸化炭素の濃度は、吸引の際に、吸引される気体の二酸化炭素濃度が1〜10%(v/v)、好ましくは3〜10%(v/v)、より好ましくは5〜10%(v/v)となるように含まれるのが好適である。大気中の二酸化炭素ガス濃度は、通常1〜2%(v/v)で不快感が起こり、3〜4%(v/v)で呼吸中枢が刺激されて、呼吸の増加、脈拍の上昇、頭痛、めまい等の症状が起こり、6〜7%(v/v)で呼吸困難となり、7〜10%(v/v)では数分で意識不明となるといわれている。従って、本発明に使用する二酸化炭素濃度は、吸引した際に、一時的に血中pHを下げることができる濃度であって、生命に異常をきたさない濃度であればよい。 二酸化炭素は、常温常圧では無色無臭の気体であり、−79℃ で昇華して固体(ドライアイス)となる。水に比較的よく溶け、水溶液(炭酸)は弱酸性を示す。さらに、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液及び固体は二酸化炭素を吸収して、炭酸塩又は炭酸水素塩を生ずる。三重点(−56.6℃、0.52MPa)以上の温度と圧力条件下では、二酸化炭素は液体化する。さらに温度と圧力が臨界点(31.1℃、7.4MPa)を超えると超臨界状態となり、気体と液体の特徴を兼ね備えるようになる。これらの状態の二酸化炭素は圧縮二酸化炭素又は高密度二酸化炭素と呼ばれている。本発明の吸入用治療剤、医療用ガスボンベ又は医療用吸引用ガス装置に含まれる二酸化炭素は、吸入の際に気体であればよく、二酸化炭素ガスの発生源としては、気体、液体、あるいはドライアイスのような固体であっても良い。本発明のてんかん波に伴う疾患治療剤には、二酸化炭素のほかに、通常の大気成分(窒素、酸素、アルゴン)を含むことができる。さらには、生体に基本的に悪影響を与えないガス成分、例えばヘリウムを含ませても良い。 本発明は、上述のてんかん波に伴う疾患治療剤、疾患治療用ガスボンベ及び疾患治療用吸引ガス装置の他、てんかん波に伴う疾患治療用ガスボンベ又はてんかん波に伴う疾患治療用吸引ガス装置を用いて、前記疾患治療剤を吸引することを特徴とするてんかん波に伴う疾患の処置方法にも及ぶ。例えば、一般家庭や教育施設に、本発明のてんかん波に伴う疾患治療用ガスボンベや装置等を備えておいたり、小型のボンベを持ち歩くことなどで、てんかん波に伴う疾患が生じた場合には、ボンベから二酸化炭素を有効成分とする治療剤、具体的には吸引される気体の二酸化炭素濃度が1〜10%(v/v)、好ましくは3〜10%(v/v)、より好ましくは5〜10%(v/v)となるように含まれる二酸化炭素ガスを吸引することで、簡便に疾患に伴う発作等の症状を軽減化することができる。 本発明の理解を助けるために、実施例、比較例及び参考例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものでないことはいうまでもない。(実施例1)てんかんモデルラットへの二酸化炭素の投与 本実施例では、GRYラットを用いて、各濃度の二酸化炭素を投与し、血中pH測定、血中二酸化炭素濃度測定、脳波測定、ビデオ脳波同時記録技術のシステムの確立及び発作評価の指標、スパイクインデックス(spike index)の計測を行った。1)材料及び方法[てんかんモデルラット] 本実施例では、てんかんモデルラットとしてGRY ラット(groggy rat, Cacna1a)を使用した。GRYラットは通常の状態で、常時てんかん発作を呈しているため、治療を施して発作評価を行うには非常に優れた系である。GRYラットはP/Q-型電位依存性カルシウムチャネルCav2.1のα1サブユニット遺伝子Cacna1aの変異を持つラットで、運動失調及び欠神発作を主症状とするてんかんモデルラットである。常染色体劣性遺伝様式をとる。Cacna1a遺伝子の第752位のヌクレオチド「T」が「A」に変異しており、その結果、第251位のアミノ酸であるメチオニンを指定するコドン「ATG」が、リジンを指定するコドン「AAG」に変異している(M251K)。本変異はカルシウムチャネルドメイン1のポアを形成するp-loop の細胞外領域に位置しており、当該変異(M251K)によって、ラットの電位依存性カルシウムイオンチャネルCav2.1の機能が異常になることが報告されている(参考文献1、2)。後肢の伸展異常、歩行異常及び運動失調を特徴とし、生後6−8週齢より脳波上に7−8Hzの棘徐波(spike and wave discharges)を伴う発作の症状が現れる。本モデルラットは、京都大学医学研究科附属動物実験施設より分与された。[脳波測定のための電極埋め込み手術] 雄のGRYラットを、ペントバルビタールナトリウム(ネンブタール、大日本住友製薬)35mg/kg腹腔内投与により麻酔し、脳定位固定装置(SR-5M、成茂科学器械研究所)に固定した。頭部の毛を刈り、皮膚を正中線に沿って切開し頭蓋骨を露出させた。両側の前頭葉皮質及び後頭葉皮質に歯科用ドリル(FALCON、モリタ)で小孔を開け、直径0.2mmのステンレス線(エム・ティ技研)を接続した直径0.9mm、長さ1.7mmのステンレス製ネジ電極(フクオカ精密)を埋め込んだ(図1参照)。また、Z電極として鼻根部に、不関電極として小脳にネジ電極を埋め込んだ。各電極は、コネクターソケット(ヒロセ電機)に接続し、頭蓋骨に歯科用セメント(ユニファストII、ジーシーデンタルプロダクツ)で固定した。[二酸化炭素濃度制御] 二酸化炭素濃度制御のために、マルチガス濃度制御装置としてマルチガスインキュベータ(MCO-5M;三洋電気株式会社)を用い、インキュベータ内の二酸化炭素の濃度を調節した。また、比較のために酸素濃度についても調節を行なった。普段の乾燥空気の主要成分は、二酸化炭素0.032%(v/v)、酸素20.946%(v/v)、窒素78.084%(v/v)である。そこで、上述のマルチガス濃度制御装置を用い、二酸化炭素濃度を5%(v/v)、7%(v/v)、10%(v/v)、又は、酸素濃度を17%(v/v)に設定した。二酸化炭素の濃度を調節する際は、装置に接続した炭酸ガスボンベから供給した二酸化炭素ガスを外気の空気で希釈するため、二酸化炭素=10%(v/v)、酸素=約18.85%(v/v)、窒素=約70.28%(v/v)となる。酸素を17%(v/v)にする際は、同様に、装置に接続した窒素ガスボンベから供給した窒素ガスで調節するため、二酸化炭素=0.026%(v/v)、酸素=約17%(v/v)、窒素=約82.974%(v/v)となる。設定条件下のインキュベータ内の各濃度が正しいことはガスアナライザAGA-2008(アステック社)を用いて確認した。2)ラットへの各濃度の二酸化炭素の投与 雄のGRYラット(9週齢)8匹について、上記脳波測定のための電極埋め込み手術を行い、1週間の回復期間の後、二酸化炭素濃度5%(v/v)、7%(v/v)、10%(v/v)、又は酸素濃度17%(v/v)に調節したマルチガス濃度制御装置内に1時間静置した。3)血中pH、二酸化炭素濃度 上記マルチガス濃度制御装置内に静置したラットの尾静脈から採血し、血液ガス分析装置であるアイスタットアナライザー(扶桑薬品工業)を用いて、血中pHと血中二酸化炭素濃度を測定した。 マルチガス濃度制御装置内の二酸化炭素濃度を5%(v/v)、7%(v/v)、10%(v/v)と上昇させるに従いラットの血中二酸化炭素濃度が上昇し、同酸素濃度を17%(v/v)にすると、ラットの血中二酸化炭素濃度が低下することが確認された。同様の条件下で、血中pHを測定した結果、同二酸化炭素濃度を5%(v/v)、7%(v/v)、10%(v/v)と上昇させるに従いラットの血中pHが低下し、同酸素濃度を17%(v/v)にするとラットの血中pHが上昇することが確認された。以上より、マルチガス濃度制御装置内の二酸化炭素濃度を5%(v/v)、7%(v/v)、10%(v/v)にすると血中二酸化炭素濃度が上昇し、血中pHが低下することが明らかになった(図2)。 二酸化炭素濃度を上げると、吸気として高濃度の二酸化炭素を取り込む結果、呼吸性アシドーシスとなる。一方、酸素濃度を下げると、呼吸回数が増加し、結果二酸化炭素が多く放出され、呼吸性アルカローシスとなる。ここで、アシドーシスとは、本来の血液の酸塩基平衡はpH7.4になるように保たれているが、平衡が酸性側になる状態をいい、アルカローシスとは、血液の酸塩基平衡が塩基性側になる状態をいう。 血液や体液のpHは以下のヘンダーソン−ハッセルベルヒ(Henderson-Hasselbalch)式で表される。 pH = pKa + log[HCO3-]/[CO2] (pKa=6.1) 血液や体液のpH緩衝系として最も重要なものは、重炭酸-二酸化炭素(HCO3-/CO2)緩衝系である。二酸化炭素は体内で水分子と反応して重炭酸を生じる。 CO2+H2O ←→HCO3-+H+ [CO2]は呼吸により、[HCO3-]は肝臓と腎臓により調節されている。よって、本発明のてんかん波に伴う疾患治療剤は、有効成分として含まれる二酸化炭素により、吸気二酸化炭素濃度を上昇させることにより呼吸性アシドーシスを生じさせ、てんかん波を抑制すると考えられる。 健常人の場合、血液のpHは通常pH7.4(正常域は女性=pH7.40±0.015、男性=pH7.39±0.015)であり、血液のpHが7.0以下や7.8以上になると生命の存続ができないといわれているが、本実施例での10%(v/v)二酸化炭素の環境下ではpH7.27であった。4)発作評価 上記二酸化炭素濃度5%(v/v)、7%(v/v)、10%(v/v)に調節したマルチガス濃度制御装置内に静置したラットについて、ビデオ脳波同時記録を行った。コントロールは、大気内に静置したラットとした。 上記ラットの前頭葉皮質及び後頭葉皮質の脳波を、脳波計(Neurofax EEG-1200、日本光電)を用いて測定した。発作評価の指標としてスパイクインデックス(spike index) を用いた。スパイクインデックスとは、測定時間(15分)におけるスパイク(棘波)の持続時間の割合を表したものである。棘波とは、短い時間に急激に電位が変化したことを示す波形をいう(図3参照)。 吸気混合ガス濃度の変化による脳波を図4に、スパイクインデックスの結果を図5に示した。その結果、二酸化炭素濃度を7%(v/v)又は10%(v/v)にすることで、てんかん波、すなわちスパイクの持続時間を有意に抑制しうることが確認された。(実施例2)てんかんモデルラットへの二酸化炭素の投与2 雄のGRYラット(9週齢)について、実施例1と同手法により二酸化炭素濃度5%(v/v)、7%(v/v)、10%(v/v)、又は酸素濃度17%(v/v)に調節したマルチガス濃度制御装置内に1時間静置した(各6匹)。 各条件下のモデルラットについて、血中二酸化炭素濃度、血中酸素濃度及び血中重炭酸イオン濃度を測定した。二酸化炭素濃度を5%(v/v)、7%(v/v)、10%(v/v)と上昇させるに従いラットの血中二酸化炭素濃度が上昇し、同酸素濃度を17%(v/v)にすると、ラットの血中二酸化炭素濃度が低下することが確認された(図6)。同様の条件下での血中酸素濃度、血中重炭酸イオン濃度を示したのが図7、8である。 実施例1及び2の結果より、マルチガス濃度制御装置内の二酸化炭素濃度を5%(v/v)、7%(v/v)、10%(v/v)にすると血中二酸化炭素濃度が上昇し、血中pHが低下することが明らかになった。(実施例3)てんかんモデルラットへの二酸化炭素の投与3 本実施例では、GRYラットに10%(v/v)二酸化炭素、又は17%(v/v)酸素を、投与時間を変えて投与した場合について、血中pH、血中二酸化炭素濃度、血中酸素濃度、血中炭酸イオン濃度の計測を行った。1)材料及び方法 モデル動物、及び二酸化炭素濃度制御については実施例1と同手法により行った。ラットを二酸化炭素濃度10%(v/v)又は酸素濃度17%(v/v)に調節したマルチガス濃度制御装置内に15分、30分、45分、又は60分静置することで、ラットに二酸化炭素又は酸素を投与した(各5−6匹)。対照として、通常大気濃度に調節したマルチガス濃度制御装置内に静置したラットを用いた。これらのラットについて、血中pH、二酸化炭素、酸素、重炭酸イオン濃度は実施例1又は2と同手法により測定した。2)血中pH、二酸化炭素、酸素、重炭酸イオン濃度の測定結果 上記各ラットにおける血中pH、血中二酸化炭素濃度、血中酸素濃度、血中炭酸イオン濃度の計測結果を図9に示した。10%(v/v)二酸化炭素を投与すると、15分から60分の間、血中二酸化炭素濃度が上昇を示し、血中pHが低下することが確認された。(実施例4)てんかんモデルラットへの二酸化炭素の投与4 本実施例では、GRYラットに10%(v/v)二酸化炭素投与したときのビデオ脳波同時記録、てんかん発作抑制効果(スパイクインデックス)の計測を行った。1)材料及び方法 モデル動物、脳波測定のための電極埋め込み手術、二酸化炭素濃度制御、脳波測定については実施例1と同手法により行った。ラットを二酸化炭素濃度10%(v/v)に調節したマルチガス濃度制御装置内に静置することで、ラットに二酸化炭素を投与した(9匹)。2)発作評価 上記マルチガス濃度制御装置内に静置することで10%(v/v)二酸化炭素を投与したラットについて、実施例1と同手法により前頭葉皮質及び後頭葉皮質の脳波を測定した結果を図10に示した。10%(v/v)二酸化炭素を投与する前の5分間と、投与開始25秒後からの5分間の脳波図である。その結果、本発明からなる治療剤(10%(v/v)二酸化炭素)を投与することで、てんかん波、すなわちスパイクの持続時間を有意に抑制しうることが確認された。3)発作抑制実験 上記マルチガス濃度制御装置内に静置することで10%(v/v)二酸化炭素を投与したラットについて、15分毎のビデオ脳波同時記録を1時間行い、二酸化炭素投与前と後のてんかん発作抑制効果(スパイクインデックス)の計測を行った。 10%(v/v)二酸化炭素投与前後の15分毎のスパイクインデックスの結果を示した(図11)。二酸化炭素投与前15分間のスパイクインデックスを1とすると、開始15分間(0〜15分)のスパイクインデックスの平均は0.0074で、その後の15分間(16〜30分)は0.054で、その後の15分間(31〜45分)は0.275で、その後の15分間(46〜60分)は0.416であった。 以上の結果より、本発明からなる治療剤(10%(v/v)二酸化炭素)は、投与15分間でほとんど完全に発作を抑制可能であること、この発作抑制効果は少なくとも30分まで持続可能であること、その後、徐々に抑制効果が低下していくことが確認された。上記実施例3では、二酸化炭素投与1時間の間、血中二酸化炭素濃度と血中pHはそれほど変動を示してはいないにもかかわらず、10%(v/v)二酸化炭素投与後の31分〜45分、及び、46分〜60分で徐々に発作抑制効果が低下していくことが示された。このことは、二酸化炭素投与後の31分〜60分では血中pHは低下を維持しているにも関わらず、何かの原因で徐々に発作抑制効果が低下してきたと考えられる。(比較例1)アセタゾラミドを用いた比較例 アセタゾラミド (Acetazolamide、商品名「ダイアモックス(R)」「アセタモックス(R)」) は、炭酸脱水酵素阻害薬であり、炭酸から水と二酸化炭素が生成する過程において炭酸脱水酵素を阻害する。その結果、重炭酸ナトリウムの排泄を増加させることにより代謝性のアシドーシスを引き起こす。 まず初めにアセタゾラミド投与後の血中濃度及び血中pHの測定を行った。雄のGRYラットにアセタゾラミド(50mg/kg)を腹腔内投与し、投与前、投与15分、30分、45分、60分後に尾静脈から採血し、血中アセタゾラミド濃度、血中pH及び重炭酸イオンを測定した。コントロールとしては生理食塩水の投与を行った(各8匹)。血中アセタゾラミドは、株式会社エスアールエル(SRL)に委託して濃度測定を行った。又、pHの測定は、実施例1と同手法により行なった。 アセタゾラミド投与後の血中アセタゾラミド濃度は、15分後に最も高くなり、時間とともに減少を示した(図12)。血中pHについて調べてみると、アセタゾラミド投与群では、コントロール群と比べ、投与15分、30分、45分及び60分後で有意に低下(酸性側)を示していた(図12)。データは示していないが、血中重炭酸イオンに関してもアセタゾラミド投与群では、コントロール群と比べ、投与15分、30分、45分及び60分後で有意に低下を示していた。本条件下ではアセタゾラミド投与後60分以内で非呼吸性(代謝性)アシドーシスにより血中pHは酸性になることが判明した。 次に、脳波測定を行った。9週齢のGRYラットをペントバルビタール麻酔下で脳定位固定装置に固定し、実施例1と同手法により前頭葉皮質及び後頭葉皮質に脳波測定用の慢性電極を埋め込んだ(図1参照)。 術後1週間後にアセタゾラミド(50mg/kg)を腹腔内投与し、脳波測定を開始した(投与群10匹、非投与群10匹)。脳波の測定及びスパイクインデックスの算出は、実施例1と同手法により行なった。その結果、アセタゾラミドは発作のスパイク持続時間を有意に抑制(短縮)することが明らかとなった(図13)。また、その作用経過時間は血中pH及び重炭酸イオン変化と相関していた。 以上により、アセタゾラミド投与によっても、てんかん発作を抑制することが可能であることが示された。ただし、アセタゾラミド投与(50mg/kg)30分後でpH7.08±0.03となり、生命維持に非常に危険なpHになってしまう可能性が示唆された(図12参照)。また、アセタゾラミドは炭酸脱水酵素阻害薬であるが、本発明の二酸化炭素は、アセタゾラミドのように特定の酵素活性に対して作用するものではないので、より安全性が高いと考えられる。(参考例1)てんかんモデルラットへの二酸化炭素の投与 本参考例では、Kyo811ラットを用いて、10%(v/v)の二酸化炭素を投与し、血中pH測定、脳波測定、ビデオ脳波同時記録及び発作の持続時間(Seizure duration)の計測を行った。1)材料及び方法[てんかんモデルラット] てんかんの中でも、難治性のDravet症候群(以前は乳児重症ミオクロニーてんかんSevere Myoclonic Epilepsy in Infancy: SMEIと呼ばれていた)患者の約80%、良性の全般てんかん熱性けいれんプラス(generalized epilepsy with febrile seizure plus: GEFS+)患者の約5〜10%には電位依存性ナトリウムチャネルαサブニット1型(SCN1A)遺伝子のミスセンス変異を持っていることより、SCN1A遺伝子の変異が熱性けいれん発症に関わっていると考えられている(参考文献3、4)。本参考例では、遺伝的要因としてScn1a遺伝子に変異を持つKyo811ラットを用いて、二酸化炭素によるけいれんの抑制効果の検討を行った。このラットは温熱負荷により熱性けいれんを誘発する熱性けいれんモデルラットであり、GEFS+モデルラットである。 Kyo811ラットは、雄のF344ラットの腹腔内に突然変異剤(N-nitro-N-ethylurea; ENU)を導入し、精子のDNAに人為的な変異を導入後、精子を搾取し、得られた精子を雌ラットの卵に人工授精(intracytoplasmic sperm injection)する技術により、電位依存的ナトリウムチャネルScn1a遺伝子に変異を持つラットとして作製された(参考文献5)。遺伝子解析の結果、Kyo811ラットは、Scn1a遺伝子の4251番目のヌクレオチド「A」が「C」へ変異を生じており、その結果、1417番目のアミノ酸であるアスパラギン(AAT)がヒスチジン(CAT)に変化していた(N1417H)。1417番目のアスパラギンはナトリウムイオンチャネル第3ドメインのイオン透過に関わるポア形成領域に位置しており、変異型電位依存的ナトリウムチャネルの機能解析の結果、N1417H変異型ナトリウムイオンチャネルはチャネル機能に異常が生じ、けいれんを起こしやすくなっていることが判明した。本変異型ホモ接合型ラットは、45℃の温浴につけると約3〜4分後で熱性けいれんを引き起こすため、温浴負荷による熱性けいれんモデルラットとして非常に有用なラットである。本モデルラットは、京都大学医学研究科附属動物実験施設より分与された。[脳波測定のための電極埋め込み手術] 実施例1と同手法により行なった。[二酸化炭素濃度制御] 実施例1と同手法により行なった。2)ラットの温熱負荷による熱性けいれん誘発 雄のKyo811 ラット(5週齢)各5匹を実施例1と同手法により脳波測定用の慢性電極を埋め込み、1週間の回復期間の後、45℃の温浴に約3〜4分間つけることにより、熱性けいれんを誘発させ、脳波測定を行なった。3)ラットへの二酸化炭素の投与 けいれん誘発直後に、二酸化炭素濃度10%(v/v)、又は通常大気濃度に調節したマルチガス濃度制御装置内に静置し、脳波測定を継続しながら発作状況を観察した。4)血中pH 上記マルチガス濃度制御装置内に静置したラットの発作が終結次第、実施例1と同手法により尾静脈から採血し、血液ガス分析装置であるアイスタットアナライザーを用いて、血中pHを測定した(各5匹)。対照として、熱性けいれん誘発前のラット(10匹)の血中pHを測定した。その結果、二酸化炭素濃度を10%(v/v)に上昇させると、ラットの血中pHが低下することが確認された(図14)。5)発作評価 上記ラットの前頭葉皮質及び後頭葉皮質の脳波を、実施例1と同手法により測定した。そのデータの一例を示す。その結果、二酸化炭素濃度を10%(v/v)にすることで、てんかん波、すなわちスパイクの持続時間を有意に抑制しうることが確認された(図15)。発作の持続時間(Seizure duration (秒))の結果を示した(図16)。二酸化炭素濃度を10%(v/v)にすることで、発作を有意に抑制しうることが確認された。6)結果 上記の結果、より重篤なてんかんモデルであるKyo811 ラットについても、二酸化炭素の投与により、血中pHが低下し、脳波が改善することが確認された。(参考文献1) Tokuda S, Kuramoto T, Tanaka K, Kaneko S, Takeuchi IK, Sasa M, Serikawa T. The ataxic groggy rat has a missense mutation in the P/Q-type voltage-gated Ca2+ channel alpha1A subunit gene and exhibits absence seizures. BRAINRESEARCH 1133 (2007) 168-177(参考文献2) Tanaka K, Shirakawa H, Okada K, Konno M, Nakagawa T, Serikawa T, Kaneko S. Increased Ca2+ channel currents in cerebellar Purkinje cells of the ataxic groggy rat. Neuroscience Letters 426 (2007) 75-80(参考文献3) Ohmori I, Ouchida M, Ohtsuka Y, Oka E, Shimizu K. Significant correlation of the SCN1A mutations and severe myoclonic epilepsy in infancy. Biochem Biophys Res Commun. 295(1), 17-23 (2002).(参考文献4) Escagy A, Heils A, MacDonald BT, Haug K, Sander T, Meisler MH. A novel SCN1A mutation associated with generalized epilepsy with febrile seizure plus -and prevalence of variants in patients with epeilpsy. Am J Hum Genet 68: 866-873 (2001).(参考文献5) Mashimo T, Ohmori I, Ouchida M, Ohno Y, Tsurumi T, Miki T, Wakamori M, Ishihara S, Yoshida T, Takizawa A, Kato M, Hirabayashi M, Sasa M, Mori Y, Serikawa T. A missense mutation of the gene encoding voltage-dependent sodium channel (Nav1.1) confers susceptibility to febrile seizures in rats. J Neurosci. 30(16):5744-5753 (2010). 以上詳述したように、一般家庭や教育施設に、本発明のてんかん波に伴う疾患治療用ガスボンベや装置等を備えておいたり、小型のボンベを持ち歩くことなどで、てんかん波に伴う疾患が生じた場合には、ボンベから二酸化炭素を有効成分とする治療剤、具体的には二酸化炭素ガスを吸引することで、簡便に疾患に伴う発作等の症状を軽減化することができる。 また、本発明のてんかん波に伴う疾患治療剤を用いたガスボンベ又吸引用ガス装置の開発により、以下のような効果が期待される。(1)発作抑止効果は即効性である。(2)各家庭などでの急な発作時に、周囲の者(家族等)が容易に対応可能である。(3)使用が簡便である。(4)安価である。(5)てんかん重積では静脈内への薬物投与が必要だが、静脈ラインの確保が難しい患者(小児など)に、即効性の治療が可能となる。(6)従来の薬物では抑制困難なてんかん症候群や、集中治療室でてんかん重積を治療するとき、呼吸を完全にコントロールしながら発作抑制が可能となる。 本発明により、従来のような治療薬服用とは比較にならないほど、発作時に即、対応可能で、即効性の治療が期待できる。特にてんかん患者の多くは小児であることより、各家庭に簡易型吸引ガス(ボンベ)を携帯し、発作時に瞬時に対応できるようなシステム作りが期待される。わが国では約100万人のてんかん患者が存在するといわれているが、てんかんのみならず、てんかん波に伴う疾患に対して有効に作用しうることから、より大きな市場が期待される。二酸化炭素を有効成分として含む、てんかん波に伴う疾患(P/Q-型電位依存性カルシウムチャネルCav2.1のα1サブユニット遺伝子変異による疾患を除く)の発作治療剤。てんかん波に伴う疾患が、てんかんである請求項1に記載の発作治療剤。発作治療剤が吸入用治療剤である、請求項1又は2に記載の発作治療剤。吸入の際の吸入される気体の二酸化炭素の濃度が、1〜10%(v/v)となるように含まれる、請求項3に記載の発作治療剤。請求項1〜4のいずれか1に記載の発作治療剤が、医療用ガスボンベに充填されていることを特徴とする、てんかん波に伴う疾患の発作治療用ガスボンベ。請求項5に記載の発作治療用ガスボンベが、医療用吸引ガス装置に接続されていることを特徴とする、てんかん波に伴う疾患の発作治療用吸引ガス装置。 【課題】てんかん波に伴う疾患治療剤として、取り扱いが容易で副作用が低く、かつ即効性のある治療剤を提供する。【解決手段】吸気の二酸化炭素濃度を制御することにより、体液中のpHを酸性側に変動させ、てんかん波を軽減しうる。二酸化炭素を有効成分とする疾患治療剤による。【選択図】図5


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