タイトル: | 公開特許公報(A)_メトキシ基を有する芳香族化合物の脱メチル化又は脱メトキシ化方法 |
出願番号: | 2015045503 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C07C 37/00,C07C 37/50,C07C 39/04,C07C 39/10,B01J 21/04,B01J 23/50,B01J 23/72,B01J 21/06,B01J 23/755,B01J 21/08,B01J 23/745,C07B 61/00 |
本間 信孝 末安 草 JP 2015134800 公開特許公報(A) 20150727 2015045503 20150309 メトキシ基を有する芳香族化合物の脱メチル化又は脱メトキシ化方法 トヨタ自動車株式会社 000003207 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 島村 直己 100101904 和田 洋子 100180932 本間 信孝 末安 草 JP 2012262608 20121130 C07C 37/00 20060101AFI20150701BHJP C07C 37/50 20060101ALI20150701BHJP C07C 39/04 20060101ALI20150701BHJP C07C 39/10 20060101ALI20150701BHJP B01J 21/04 20060101ALI20150701BHJP B01J 23/50 20060101ALI20150701BHJP B01J 23/72 20060101ALI20150701BHJP B01J 21/06 20060101ALI20150701BHJP B01J 23/755 20060101ALI20150701BHJP B01J 21/08 20060101ALI20150701BHJP B01J 23/745 20060101ALI20150701BHJP C07B 61/00 20060101ALN20150701BHJP JPC07C37/00C07C37/50C07C39/04C07C39/10B01J21/04 ZB01J23/50 ZB01J23/72 ZB01J21/06 ZB01J23/755 ZB01J21/08 ZB01J23/745 ZC07B61/00 300 4 1 2013146393 20130712 OL 23 4G169 4H006 4H039 4G169AA02 4G169AA03 4G169BA01A 4G169BA01B 4G169BA02B 4G169BC31B 4G169BC32B 4G169BC51B 4G169BC66B 4G169BC68B 4G169CB35 4G169CB66 4G169CB70 4G169DA05 4G169EC22X 4G169FA01 4G169FA02 4G169FB04 4G169FB14 4G169FB30 4G169FB31 4H006AA02 4H006AC13 4H006AC42 4H006BA05 4H006BA10 4H006BA19 4H006BA21 4H006BA68 4H006BA81 4H006BB31 4H006BC10 4H006BC11 4H006BC13 4H006BC14 4H006FC22 4H006FE13 4H039CA41 4H039CA60 本発明は、メトキシ基を有する芳香族化合物を脱メチル化又は脱メトキシ化する方法に関する。 リグニン又はリグニン含有材料に含まれる物質を熱分解又は可溶化し、さらに脱メチル化又は脱メトキシ化反応に付すことにより得られる芳香族化合物には、化学品やモノマー原料等として使用できる有用な物質が多く含まれる。 非特許文献1には、リグニンを可溶化して得られた、主にグアヤコール(メトキシフェノール)を含む生成物を改質してフェノール等を生成する技術として、固定床にZrO2−Al2O3−FeOx触媒を固定させたガス流通反応装置を用い、500℃で反応を行うことが開示されている。また非特許文献2には、アリールエーテル中の芳香族C−Oとの結合を切る触媒として、均一系ニッケルカルベン触媒が開示されている。 しかしながら、従来の方法は、ZrO2−Al2O3−FeOx触媒や、ニッケルカルベン錯体等作製に手間がかかる触媒を用いたものであり、触媒の製造に高額な費用がかかるという問題があった。 特許文献1には、周期表上で第7族〜第10族の元素からなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属を担持したゼオライトを用いて反応性の乏しいリグニンを熱処理することを特徴とする芳香族化合物の製造方法が記載されており、具体的には、リグニンを可溶化した後、これを気化させて気相反応に付すことにより、ベンゼン及びトルエンが得られたことが記載されている。しかしながら、当該方法によりカテコールやフェノールが得られたことは具体的に記載されていない。 特許文献2には、リグニン又はリグニン含有材料を、水及びアルコール溶媒中、固体酸触媒存在下で分解反応させ、リグニンを可溶化する方法が記載されている。実施例において、固体酸触媒としてγ−アルミナを用いることが記載されている。しかしながら、当該固体酸触媒が脱メチル化性能又は脱メトキシ化性能を有すること、さらに、これによりリグニン又はリグニン含有材料からカテコールやフェノールが得られたことは具体的には記載されていない。 よって、低コストで簡便に調製し得る触媒を用いて上記のような工業的に有用な芳香族化合物を工業的規模で製造することを可能とする技術が求められていた。特開2011−127022号公報特開2012−102297号公報J. Japan. Petro. Inst, 53(3), 178−183(2010), Takao Masuda et al.Science Vol. 332 no. 6028 pp. 439−443 (2011), Alexey G. Sergeevand John F. Hartwig 本発明は、メトキシ基を有する芳香族化合物からの脱メチル化又は脱メトキシ化された芳香族化合物の製造方法、特に、低コストで簡便に調製可能な触媒を用いて高収率で脱メチル化又は脱メトキシ化された芳香族化合物を製造する方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、γ−アルミナに高い脱メチル化性能及び脱メトキシ化性能があることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の発明を包含する。(1)メトキシ基を有する芳香族化合物をγ−アルミナを含む触媒の存在下で脱メチル化又は脱メトキシ化反応を行う、芳香族化合物の製造方法。(2)触媒が、Ag、Zr及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物をさらに含む、上記(1)に記載の方法。(3)触媒が、Feの酸化物をさらに含む、上記(1)又は(2)に記載の方法。(4)触媒が、酸性シリカをさらに含む、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。(5)γ−アルミナが酸性シリカ表面に担持された形態にある、上記(4)に記載の方法。(6)メトキシ基を有する芳香族化合物がグアヤコールである、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。(7)液相中で反応を行う、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。(8)γ−アルミナを含む、メトキシ基を有する芳香族化合物の脱メチル化又は脱メトキシ化用触媒。(9)Ag、Zr及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物をさらに含む、上記(8)に記載の触媒。(10)Feの酸化物をさらに含む、上記(8)又は(9)に記載の触媒。(11)酸性シリカをさらに含む、上記(8)〜(10)のいずれかに記載の触媒。 本発明によれば、低コストで簡便に調製可能な触媒を用いてメトキシ基を有する芳香族化合物を高収率で脱メチル化又は脱メトキシ化することができる。図1は、本発明の方法を気相反応にて行うための装置を示す図である。図2は、本発明の方法を液相反応にて行うための装置を示す図である。図3は、実施例1−7及び比較例1−2の方法により得られたフェノール収率を示す図である。図4は、実施例1及び8−10の方法により得られたフェノール収率を示す図である。図5は、実施例1及び8−10の方法により得られた生成物の数(生成物種数)を示す図である。図6は、実施例8及び11−13の方法により得られたフェノール選択率を示す図である。図7は、実施例9及び14−16の方法により得られたフェノール選択率を示す図である。図8は、実施例10及び17−19の方法により得られたフェノール選択率を示す図である。図9は、実施例20及び21の方法により得られたフェノール収率を示す図である。図10は、実施例20及び21の方法により得られた芳香族化合物収率を示す図である。図11は、実施例8−10及び22−26の方法により得られたフェノール収率を示す図である。図12は、実施例22及び26−28の方法により得られたフェノール収率を示す図である。 本発明者らは、γ−アルミナに高い脱メチル化性能及び脱メトキシ化性能があることを見出し、メトキシ基を有する芳香族化合物をγ−アルミナを含む触媒の存在下で脱メチル化又は脱メトキシ化反応を行うことにより、高収率で脱メチル化又は脱メトキシ化された芳香族化合物が得られることを見出した。さらに、Ag、Zr及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物や酸性シリカを触媒に含ませることにより、さらに高い脱メチル化性能及び脱メトキシ化性能を有する触媒が得られることを見出した。本発明に使用される触媒は低コストで簡便に調製することができる。 本発明の方法に用いられるメトキシ基を有する芳香族化合物は、特に制限されないが、例えば、リグニンを分解又は可溶化した際に得られる化合物が含まれ、具体的には、グアヤコール、アニソール、シリンゴール(2,6−ジメトキシフェノール)、2−メトキシ−4−メチルフェノール、イソオイゲノール及びこれらの誘導体が挙げられ、これらの中で、グアヤコール、アニソールが好ましい。上記誘導体としては、グアイアシルグリセロール−β−グアイアシルエーテル等が挙げられる。リグニンを含有する材料としては、例えば、パームヤシの樹幹・空房、バガス、稲わら、麦わら、トウモロコシ残渣(コーンストーバー、コーンコブ、コーンハル)、ヤトロファ種皮・殻、木材チップ等が挙げられる。また、リグニンを可溶化する方法としては、例えばJ. Japan. Petro. Inst, 53(3), 178−183(2010) Takao Masuda et al.に記載される方法が挙げられ、当該文献に記載される方法によればグアヤコールを主成分とした混合物が得られる。本発明の方法に用いられる原料は、少なくとも1種のメトキシ基を有する芳香族化合物を主成分として含有するものであれば、他の化合物を含有するものであってもよい。 本発明の方法により得られる芳香族化合物としては、具体的には、フェノール、カテコール、クレゾール、2−メチルカテコール、4−メチルカテコール、ピロガロール、3−メトキシカテコールが挙げられる。クレゾールは、o−、m−及びp−クレゾールのいずれでもよいが、o−クレゾールが好ましい。 本発明の方法に用いられる触媒はγ−アルミナを含む。γ−アルミナを用いることにより、メトキシ基を有する芳香族化合物の改質率(メトキシ基を有する芳香族化合物の反応率)及び目的とする生成物の選択率(反応生成物中に含まれる目的とする生成物の割合)を向上させ、その結果、従来の触媒(ZrO2−Al2O3−FeOx触媒等)と比較して、目的とする生成物の収率を向上させることができる。当該効果を有効に発揮させる観点から、γ−アルミナの含有量は、触媒に対して、50〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることが特に好ましい。γ−アルミナとしては、市販の活性アルミナ、例えば、住友化学株式会社製の活性アルミナKC−501及びKHS−46を用いることができる。尚、上記含有量は触媒原料に基づき算出したものであるが、得られた触媒中の当該成分の含有量は、触媒原料に基づき算出した含有量と比較して0〜3%減少する可能性がある。 本発明の方法に用いられる触媒は、Ag、Zr及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物をさらに含むことが好ましく、Niの酸化物を含むことが特に好ましい。Ag、Zr及びNiの酸化物としては、それぞれ、Ag2O3、ZrO2及びNiOを挙げることができる。これにより、目的とする生成物の収率を向上させることができる。当該効果を有効に発揮させる観点から、γ−アルミナのAl原子量と上記金属の原子量とのモル比は、99.9:0.1〜98.0:2.0であることが好ましく、99.85:0.15〜99.0:1.0であることが特に好ましい。尚、上記γ−アルミナのAl原子量と上記金属の原子量とのモル比は触媒原料に基づき算出したものであるが、得られた触媒においては、上記比は、好ましくは99.9:0.1〜98.2:1.8、特に好ましくは99.8:0.2〜99.2:0.8となる可能性がある。 本発明の方法に用いられる触媒は、Feの酸化物をさらに含むことが好ましい。鉄の酸化物としては、FeO、Fe3O4、Fe2O3、FeOOH及びこれらの混合体を挙げることができる。これにより、目的とする生成物の収率を向上させることができる。当該効果を有効に発揮させる観点から、γ−アルミナのAl原子量と上記金属の原子量とのモル比は、99.9:0.1〜98.0:2.0であることが好ましく、99.85:0.15〜99.0:1.5であることが特に好ましい。尚、上記γ−アルミナのAl原子量と上記金属の原子量とのモル比は触媒原料に基づき算出したものであるが、得られた触媒においては、上記比は、好ましくは99.9:0.1〜98.2:1.8、特に好ましくは99.8:0.2〜99.2:0.8となる可能性がある。 本発明の方法に用いられる触媒は、酸性シリカをさらに含むことが好ましい。これにより、反応後に生成する反応生成物種数を低減させることができ、反応生成物からの目的とする生成物の精製をより効率的に行うことができる。また、酸性シリカのような固体酸はその表面にH原子が存在するため、H原子を効率的に反応系に供給することができ、よって反応速度を向上させることができると考えられる。当該効果を有効に発揮させる観点から、γ−アルミナのAl原子量と酸性シリカ由来のSi原子量とのモル比は、97:3〜60:40であることが好ましく、80:20〜70:30であることが特に好ましい。また、酸性シリカは、比表面積が大きいため反応点を多く確保することができ、その表面にγ−アルミナが担持された形態で触媒中に含まれることが好ましい。尚、上記γ−アルミナのAl原子量と酸性シリカ由来のSi原子量とのモル比は触媒原料に基づき算出したものであるが、得られた触媒においては、上記比は、好ましくは96:4〜65:35、特に好ましくは80:20〜75:25となる可能性がある。 本発明の方法に用いられる触媒は、目的とする生成物の選択率をさらに向上させる観点から、γ−アルミナに加えて、酸性シリカとNiの酸化物の両方を含有することが好ましい。Niの含有量は、γ−アルミナのAl原子量と酸性シリカ由来のSi原子量との総モル量100モル%に対して、0.1〜2.0モル%であることが好ましく、0.15〜1.0モル%であることが特に好ましい。尚、上記含有量は触媒原料に基づき算出したものであるが、得られた触媒中の当該成分の含有量は、触媒原料に基づき算出した含有量と比較して0〜5%減少する可能性がある。 本発明の方法に用いられる触媒は、含浸担持法、イオン交換法等により製造することができる。 本発明の方法に用いられる触媒は、好ましくは乾燥及び粉砕後に、例えば大気中で、焼成処理を行って得られたものであることが好ましい。焼成温度は、350℃〜800℃であることが好ましく、450℃〜600℃であることが特に好ましい。焼成処理は、好ましくは1〜4.5時間、特に好ましくは1.5〜2.5時間行う。焼成処理を行うことにより、目的とする生成物の収率を向上させることができる。特に本発明の方法を気相にて行う場合上記のような条件を採用することが好ましい。 本発明の方法に係る脱メチル化反応及び脱メトキシ化反応は、気相又は液相にて行うことができる。 本発明の方法は、反応後の生成物の分離を容易にする観点から、気相にて行うことが好ましい。気相反応は、例えば、図1に示すような装置を用いて行うことができる。 本発明の方法を気相にて行う場合、溶媒としては、水、二酸化炭素(特に、超臨界二酸化炭素)を用いることが好ましく、水を用いることが特に好ましい。水としては、通常の水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられ、水道水、工業用水等も使用できる。 本発明の方法を気相にて行う場合、原料(メトキシ基を有する芳香族化合物)の溶媒に対する質量比は、特に制限されないが、十分な量の溶媒を使用して流動性を上げることにより触媒に原料を供給しやすくし、かつ経済性の面から溶媒により消費される熱量を抑える観点から、通常0.1〜5、好ましくは0.3〜1である。 本発明の方法を気相にて行う場合、触媒の原料(メトキシ基を有する芳香族化合物)に対する質量比は、特に制限されないが、通常1〜10000、好ましくは100〜1000である。触媒は劣化し始めた時点で交換することが好ましいが、経済性の面から初期活性より50%低下した時点で交換してもよい。また触媒は、流動層反応装置を用いて再生を繰り返しながら使用してもよい。 本発明の方法を気相にて行う場合、反応温度は、特に制限されないが、通常350〜550℃、好ましくは400〜500℃である。 本発明の方法を気相にて行う場合、反応時間(原料と触媒との接触時間)は、特に制限されないが、通常0.01〜1秒、好ましくは0.1〜1秒である。 本発明の方法を気相にて行う場合、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。 本発明の方法を気相にて行う場合、反応圧力(絶対圧)は、特に制限されないが、0.1(大気圧)〜1MPaが好ましい。より好ましい条件は、溶媒と温度によって影響されるため適宜設定する。 本発明の方法は、原料を気化させるためのエネルギーを必要とせず経済的である点で、液相にて行うことが好ましい。液相反応は、例えば、図2に示すような装置を用いて行うことができる。 本発明の方法を液相にて行う場合、溶媒としては、水、反応後の生成物から有用物を除いた後の残渣水、溶融塩、イオン流体を用いることが好ましく、水を用いることが特に好ましい。水としては、通常の水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられ、水道水、工業用水等も使用できる。 本発明の方法を液相にて行う場合、原料(メトキシ基を有する芳香族化合物)の溶媒に対する質量比は、特に制限されないが、反応物の均一性を確保する観点から、通常0.1〜100、好ましくは1〜20である。液相反応の場合、高濃度スラリー状で反応を行うことができる。 本発明の方法を液相にて行う場合、触媒の原料(メトキシ基を有する芳香族化合物)に対する質量比は、特に制限されないが、通常1〜100、好ましくは1〜50である。 本発明の方法を液相にて行う場合、反応温度は、特に制限されないが、通常300〜400℃である。 本発明の方法を液相にて行う場合、反応時間は、特に制限されないが、通常0.5〜3時間、好ましくは1〜2時間である。 本発明の方法を液相にて行う場合、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下又は大気等の含酸素雰囲気下で行うことが好ましい。 本発明の方法を液相にて行う場合、反応圧力は、特に制限されないが、5〜15MPaが好ましい。より好ましい条件は、溶媒と温度によって影響されるため適宜設定する。 本発明の方法により得られる生成物は、カラムクロマトグラフィー、再結晶法、及び溶媒抽出法等の通常の方法により、反応液中から分離・精製することができる。また、生成物の同定には、元素分析、NMRスペクトル、IRスペクトル、質量分析等の各種手段が用いられる。 本発明の方法により得られる、カテコール及びフェノール等の芳香族化合物は、化学品やモノマー原料等として使用することができる。 以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。実施例1−21及び比較例1−2気相反応 気相反応の手順を図1を参照しながら以下に説明する。 図1に示す装置において、触媒をセットする反応管の下流側に、反応後の生成物をトラップするバブリングトラップを2つ設けた。バブリングトラップA中にはアセトンを入れ、0℃(氷冷)で生成物をトラップした。さらに下流のバブリングトラップB中にはアセトン/水=6mL/2mL溶液を入れ、バブリングトラップAで取りきれなかった生成物をトラップした。また、石英で作られた反応管の上流側に、グアヤコール(メトキシフェノール)と、窒素+水蒸気を導入する開口部を設けた。 上記のようにセットされた装置の管状炉の均熱帯となる箇所に触媒を約0.5gセットした。窒素及び水蒸気を上流側から30分流通させ、反応管内のガス雰囲気を調整した(窒素流量100cc/分、飽和蒸気量22.5g/m3)。次に、管状炉を500℃にセットし、熱電対(図示せず)にて触媒温度が500℃に到達したことを確認した。 窒素+水蒸気を流通させた状態で、原料のグアヤコールを細管にて直接、触媒に触れさせて反応を開始させた。 5分後、ガス流通を停止し、2つのトラップ中にトラップされた反応生成物をガスクロマトグラフィ(FID−GC[島津製作所製、FID−GC2010plus]、カラムDB−17MS[アジレントテクノロジー社製])を用いて分析した。液相反応 液相反応は図2に示すようなSUS製オートクレーブを用いて以下の手順で行った。 オートクレーブの中に所定量のグアヤコール、水及び触媒をこの順に入れ、200rpmで撹拌しながら昇温した。所定の温度を2時間保持した後、撹拌を停止して急冷した。反応中、オートクレーブに装着した圧力計により圧力を計測した。 液相反応後の生成物の分析は以下のように行った。 オートクレーブに残存した液状物を遠心分離にかけた後、上澄みをアセトンに溶解させて、ガスクロマトグラフィ(FID−GC[島津製作所製、FID−GC2010plus]、カラムDB−17MS[アジレントテクノロジー社製])を用いて分析した。さらに、オートクレーブが常温になった後、シリンジで内部のガスを採取し、ガスクロマトグラフィ(TCD−GC[島津製作所製、TCD−GC2010plus]、FID−GC[島津製作所製、FID−GC2010plus])を用いて生成ガスを分析した。[実施例1] 住友化学株式会社製の活性アルミナKC−501(住化アルケム株式会社より入手)を400℃×2時間で焼成して得られた触媒を用いて、表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例2] 住友化学株式会社製の活性アルミナKC−501(住化アルケム株式会社より入手)に下記の方法にて銀を担持させた。 500ccビーカーに150cc〜200ccのイオン交換水を入れ、活性アルミナKC−501(約10g)を加えた。得られた溶液を室温下、200rpmで約10分間攪拌した。 硝酸銀(ナカライテスク製)を、活性アルミナKC−501のAl原子量:Ag原子量=99:1(mol)となる量加えて、室温下、200rpmで約10分間攪拌した。 その後、80℃に設定したホットスターラーを用いて、水が蒸発するまで溶液を攪拌した後、120℃乾燥機(Air雰囲気)にて一昼夜乾燥させた。 得られた粉末を、めのう乳鉢で約5分間粉砕し、粉砕した粉末を400℃電気炉(Air雰囲気)で2時間焼成した。さらに、得られた粉末を、めのう乳鉢で約5分間粉砕して触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例3] 硝酸銀の代わりに酸化銅(II)(ナカライテスク製)を活性アルミナKC−501のAl原子量:Cu原子量=99:1(mol)となる量で用いた以外は実施例2と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例4] 硝酸銀の代わりにオキシ塩化ジルコニウム(ナカライテスク製)を活性アルミナKC−501のAl原子量:Zr原子量=99:1(mol)となる量で用いた以外は実施例2と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例5] 硝酸銀の代わりに硝酸ニッケル(ナカライテスク製)を活性アルミナKC−501のAl原子量:Ni原子量=99.85:0.15(mol)となる量で用いた以外は実施例2と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例6] 硝酸銀の代わりに硝酸ニッケル(ナカライテスク製)を活性アルミナKC−501のAl原子量:Ni原子量=99.30:0.70(mol)となる量で用いた以外は実施例2と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例7] 硝酸銀の代わりに硝酸ニッケル(ナカライテスク製)を活性アルミナKC−501のAl原子量:Ni原子量=99:1(mol)となる量で用いた以外は実施例2と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例8] 500ccビーカーに150cc〜200ccのイオン交換水を入れ、酸性シリカ[ローディア製](約0.5g)を加え、室温下、200rpmで約10分間攪拌した。 硝酸アルミニウム9水和物(ナカライテスク製)を、硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量=95:5(mol)となる量加えて、室温下、200rpmで約10分間攪拌した。 その後、60℃に設定したホットスターラーを用いて、水が蒸発するまで溶液を低速回転で攪拌した後、120℃乾燥機(Air雰囲気)にて一昼夜乾燥させた。 得られた粉末を、めのう乳鉢で約5分間粉砕し、粉砕した粉末を700℃電気炉(Air雰囲気)で4時間焼成した。さらに、得られた粉末を、めのう乳鉢で約5分間粉砕して触媒を得た。 酸性シリカは、昇温脱離法測定装置(Temperature−Programmed Desorption:TPD)を用い、酸性シリカ担体(SiO2)に塩基プローブ分子であるアンモニアを吸着させた後、触媒温度を昇温させ100℃〜550℃までに脱離したアンモニア量が酸性シリカ担体重量当たり0.65mmol/gである酸性性質を有するものを用いた。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例9] 酸性シリカと硝酸アルミニウム9水和物とを硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量=90:10(mol)となる量で用いた以外は実施例8と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例10] 酸性シリカと硝酸アルミニウム9水和物とを硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量=80:20(mol)となる量で用いた以外は実施例8と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例11] 実施例8で得られた触媒1gを150cc〜200ccのイオン交換水に入れ、室温下、200rpmで約10分間攪拌した。 硝酸ニッケル(II)6水和物(ナカライテスク製)を、硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量:Ni原子量=95:5:0.15(mol)となる量加えて、室温下、200rpmで約10分間攪拌した。 その後、80℃に設定したホットスターラーを用いて、水が蒸発するまで溶液を攪拌した後、120℃乾燥機(Air雰囲気)にて一昼夜乾燥させた。 得られた粉末を、めのう乳鉢で約5分間粉砕し、粉砕した粉末を400℃電気炉(Air雰囲気)で2時間焼成した。さらに、得られた粉末を室温に戻した後、めのう乳鉢で約5分間粉砕して触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例12] 硝酸ニッケルを、硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量:Ni原子量=95:5:0.7(mol)となる量で用いた以外は実施例11と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例13] 硝酸ニッケルを、硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量:Ni原子量=95:5:1.0(mol)となる量で用いた以外は実施例11と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例14] 硝酸ニッケルを、硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量:Ni原子量=90:10:0.15(mol)となる量で用いた以外は実施例11と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例15] 硝酸ニッケルを、硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量:Ni原子量=90:10:0.7(mol)となる量で用いた以外は実施例11と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例16] 硝酸ニッケルを、硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量:Ni原子量=90:10:1.0(mol)となる量で用いた以外は実施例11と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例17] 硝酸ニッケルを、硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量:Ni原子量=80:20:0.15(mol)となる量で用いた以外は実施例11と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例18] 硝酸ニッケルを、硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量:Ni原子量=80:20:0.7(mol)となる量で用いた以外は実施例11と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例19] 硝酸ニッケルを、硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量:Ni原子量=80:20:1.0(mol)となる量で用いた以外は実施例11と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。[実施例20] 住友化学株式会社製の活性アルミナKC−501(住化アルケム株式会社より入手)を400℃×2時間で焼成して得られた触媒を用いて、表1に示す条件下で液相反応を行った。オートクレーブ容量は40mLであった。[実施例21] 住友化学株式会社製の活性アルミナKC−501(住化アルケム株式会社より入手)を400℃×2時間で焼成して得られた触媒を用いて、表1に示す条件下で液相反応を行った。オートクレーブ容量は200mLであった。[比較例1] 触媒を用いずに表1に示す条件下で気相反応を行った。[比較例2] 鉄−アルミ−ジルコニア系触媒をJ. Japan. Petro. Inst, 53(3), 178−183(2010)に記載の方法を参照に以下のように合成した。 テフロンビーカー中の撹拌下の蒸留水1.5Lに、Fe(NO3)3−9H2O(226.2g)、Al(NO3)3−9H2O(52.5g)及びZrOCl2−8H2O(11.3g)をこの順序で加えてすべてを溶解させ、約2時間撹拌した。得られた溶液を撹拌しながら、これに48.7%NaOH水溶液(300g)を320μl/分で滴下して、共沈させた。滴下完了後一昼夜攪拌を続けた。 70℃〜80℃の湯を用いてpHが7〜8になるまで湯洗を行った後、固液分離を行い、得られたケーキ状の固形物を120℃で一昼夜乾燥させた。 乾燥した固形物をめのう乳鉢で粉砕し、700℃で4時間焼成を行った。 得られた触媒を用いて表1に示す条件下で気相反応を行った。 実施例1−21及び比較例1及び2の反応条件及びその結果を表1に示す。 図3より、γ−アルミナを用いると(実施例1)、触媒を用いない場合(比較例1)、従来のFe系の触媒を用いる場合(比較例2)と比較してフェノール収率が向上することがわかる。また、Ag、Zr、Niの酸化物をさらに含有する触媒を用いた場合に(実施例2及び4−7)、γ−アルミナ単独である場合(実施例1)と比較してフェノール収率が顕著に向上した。 図4及び5より、γ−アルミナにさらに酸性シリカを担持させた場合(実施例8−10)、γ−アルミナ単独である場合(実施例1)と比較してフェノール収率が向上し、かつ生成物種数(ガスクロマトグラフィ検出限界である0.002%以上のピークとして検出可能な生成物の数)が低減することがわかる。 図6及び7より、γ−アルミナと酸性シリカにNiの酸化物をさらに含有する触媒(実施例11−13、14−16)を用いた場合に、Niの酸化物を含有しない場合(実施例8、9)と比較して、フェノール選択率が向上することがわかる。酸性シリカを5又は10%担持させた場合はNiが1.0%である場合に最も活性が向上した。これに対し、図8に示すように、酸性シリカを20%担持させた場合はNiが0.15%である場合にフェノール選択率が最も活性が向上した。これは、Niが多くなると触媒活性が過剰に上がり、生成したフェノールがさらに別の化合物に変化することが理由として考えられる。 γ−アルミナを用いて液相反応を行った場合、反応温度350℃(実施例20)ではフェノール収率が顕著に向上し(図9)、反応温度300℃(実施例21)ではカテコールを主成分とする芳香族化合物の収率が顕著に向上した(図10)。実施例22−28気相反応[実施例22] 500ccビーカーに150cc〜200ccのイオン交換水を入れ、酸性シリカ[ローディア製](約0.5g)を加え、室温下、200rpmで約10分間攪拌した。 硝酸アルミニウム9水和物(ナカライテスク製)を、硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量=70:30(mol)となる量加えて、室温下、200rpmで約10分間攪拌した。 その後、60℃に設定したホットスターラーを用いて、水が蒸発するまで溶液を低速回転で攪拌した後、120℃乾燥機(Air雰囲気)にて一昼夜乾燥させた。 得られた粉末を、めのう乳鉢で約5分間粉砕し、粉砕した粉末を400℃電気炉(Air雰囲気)で4時間焼成した。さらに、得られた粉末を、めのう乳鉢で約5分間粉砕して触媒を得た。 酸性シリカは、昇温脱離法測定装置(Temperature−Programmed Desorption:TPD)を用い、酸性シリカ担体(SiO2)に塩基プローブ分子であるアンモニアを吸着させた後、触媒温度を昇温させ100℃〜550℃までに脱離したアンモニア量が酸性シリカ担体重量当たり0.65mmol/gである酸性性質を有するものを用いた。 得られた触媒を用いて表2に示す条件下で気相反応を行った。[実施例23] 実施例8で得られた触媒1gを150cc〜200ccのイオン交換水に入れ、室温下、200rpmで約10分間攪拌した。 硝酸鉄(III)9水和物(ナカライテスク製)を、硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量:Fe原子量=95:5:1(mol)となる量加えて、室温下、200rpmで約10分間攪拌した。 その後、80℃に設定したホットスターラーを用いて、水が蒸発するまで溶液を攪拌した後、120℃乾燥機(Air雰囲気)にて一昼夜乾燥させた。 得られた粉末を、めのう乳鉢で約5分間粉砕し、粉砕した粉末を500℃電気炉(Air雰囲気)で2時間焼成した。さらに、得られた粉末を室温に戻した後、めのう乳鉢で約5分間粉砕して触媒を得た。 得られた触媒を用いて表2に示す条件下で気相反応を行った。[実施例24] 硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量:Fe原子量=90:10:1(mol)とした以外は実施例23と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表2に示す条件下で気相反応を行った。[実施例25] 硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量:Fe原子量=80:20:1(mol) とした以外は実施例23と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表2に示す条件下で気相反応を行った。[実施例26] 硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量:Fe原子量=70:30:1(mol) とした以外は実施例23と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表2に示す条件下で気相反応を行った。[実施例27] 硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量:Fe原子量=70:30:1(mol)とし、700℃で焼成した以外は実施例23と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表2に示す条件下で気相反応を行った。[実施例28] 硝酸アルミニウムのAl原子量:Si原子量:Fe原子量=70:30:1(mol)とし、400℃で焼成した以外は実施例23と同様にして触媒を得た。 得られた触媒を用いて表2に示す条件下で気相反応を行った。 実施例22−28の反応条件及びその結果を表2に示す。 図11より、γ−アルミナと酸性シリカにFeの酸化物をさらに含有する触媒(実施例23−26)を用いた場合に、それぞれ対応するFeの酸化物を含有しない触媒(実施例8−10および22)と比較して、フェノール収率が向上することがわかる。 図12より、酸性シリカを30%担持させた場合(実施例26−28)、500℃で焼成を行った場合にフェノール収率が最も向上した。これは500℃で焼成を行った場合には、鉄酸化物が十分活性化され、かつγ−アルミナ及び酸性シリカ表面の細孔がつぶれることによる活性の低下が生じないことが理由として考えられる。 本発明の方法は低コストかつ簡便に行うことができるため、リグニンからの、有用な化学物質であるカテコール及びフェノール等の芳香族化合物の工業的規模での製造に好ましく適用できる。 グアヤコールを主成分として含む混合物をγ−アルミナを含む触媒の存在下、液相中で脱メチル化又は脱メトキシ化反応を行う、フェノールの製造方法であって、 350〜400℃、水中で反応を行う、上記方法。 5〜15MPaで反応を行う、請求項1に記載の方法。 γ−アルミナを含む、グアヤコールを主成分として含む混合物の、液相中での脱メチル化又は脱メトキシ化反応用触媒であって、 脱メチル化又は脱メトキシ化反応が、350〜400℃、水中で行われる、上記触媒。 脱メチル化又は脱メトキシ化反応が、5〜15MPaで行われる、請求項3に記載の方法。 【課題】メトキシ基を有する芳香族化合物からの脱メチル化又は脱メトキシ化された芳香族化合物の製造方法、特に、低コストで簡便に調製可能な触媒を用いて高収率で脱メチル化又は脱メトキシ化された芳香族化合物を製造する方法を提供する。【解決手段】本発明は、メトキシ基を有する芳香族化合物をγ−アルミナを含む触媒の存在下で脱メチル化又は脱メトキシ化反応を行う、芳香族化合物の製造方法に関する。【選択図】図1