タイトル: | 公表特許公報(A)_硝酸塩レベルに関連する植物における転写因子及びそれを用いる方法 |
出願番号: | 2014560455 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A01H 1/00,C12N 15/09,C12N 15/00,C12N 5/10,A01H 5/00,A01H 5/10 |
イラバカ,ロドリゴ,エー.,グティエレス エレーラ,ホセ,ミゲル,アルバレス JP 2015511486 公表特許公報(A) 20150420 2014560455 20130305 硝酸塩レベルに関連する植物における転写因子及びそれを用いる方法 ポンティフィシア・ユニバーシダッド・カトリカ・デ・チリ 506161430 小林 浩 100092783 大森 規雄 100120134 鈴木 康仁 100104282 イラバカ,ロドリゴ,エー.,グティエレス エレーラ,ホセ,ミゲル,アルバレス US 61/606,852 20120305 A01H 1/00 20060101AFI20150324BHJP C12N 15/09 20060101ALI20150324BHJP C12N 15/00 20060101ALI20150324BHJP C12N 5/10 20060101ALI20150324BHJP A01H 5/00 20060101ALI20150324BHJP A01H 5/10 20060101ALI20150324BHJP JPA01H1/00 AC12N15/00 AC12N15/00C12N5/00 103A01H5/00 AA01H5/10 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC IB2013000535 20130305 WO2013132326 20130912 47 20141104 2B030 4B024 4B065 2B030AA02 2B030AB03 2B030AD06 2B030CA14 2B030CA17 2B030CB02 4B024AA08 4B024CA04 4B024CA20 4B024DA01 4B024EA04 4B024FA02 4B024GA11 4B065AA88X 4B065AA88Y 4B065AB01 4B065BA01 4B065CA53 本出願は、「硝酸塩レベルに関連する植物における転写因子及びそれを用いる方法」について2012年3月5日に出願した米国仮特許出願第61/606,852号の出願日の利益を主張するものである。 本開示は、植物における遺伝子発現に対する窒素の影響に関する。実施形態は、環境における窒素含有分子に対する植物の応答に寄与する、遺伝子及びそれによりコードされる調節因子に関する。 窒素(N)は、植物の必須主要栄養素であり、その利用可能性は、植物の成長及び作物の生産の主要な制限因子である。硝酸塩(NO3)は、好気性土壌中の植物のための無機窒素の主な源である。例えば、Crawford及びGlass(1998年) Trends Plant Sci.、3巻、389〜95頁、Hirsch及びSussman(1999年)、Trends Biotechnol.、17巻356〜61頁を参照のこと。硝酸塩は、AtNRT1.1(Tsayら(1993年) 、Cell、72巻、705〜13頁)、AtNRT1.2(Huangら(1999年)、Plant Cell、11巻、1381〜92頁)、AtNRT2.1(Littleら(2005年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、102巻、13693〜8頁)及びAtNRT2.2(Liら(2007年)、Plant Physiol.、143巻、425〜33頁)などの特定のトランスポーターを介して植物根によって取り込まれる。いったん根細胞に入れば、硝酸塩は、それぞれ硝酸還元酵素(NR)及び亜硝酸還元酵素(NIR)の作用により亜硝酸塩(NO2−)に、次にアンモニウム(NH4+)に還元され得る(Crawford及びGlass(1998年)、前出)。結果として生じるアンモニウムは、次にグルタミン合成酵素(GS)及びグルタミン酸合成酵素(GOGAT)サイクルによりグルタミン酸及びグルタミンに同化される(Stitt(1999年)、Curr. Opin. Plant Biol.、2巻、178〜86頁)。 シロイヌナズナ属(Arabidopsis)において、硝酸塩は、栄養素としての、また遺伝子発現及び発育応答を制御する強力なシグナルとしての機能を果たす(Vidal及びGutierrez(2008年)、Curr. Opin. Plant Biol.、11巻、521〜9頁、Kroukら(2010年a)、Curr. Opin. Plant Biol.、13巻、266〜73頁、Tsayら(2011年)、Annu. Rev. Plant Biol.、62巻、207〜26頁)。亜硝酸塩と同様に、硝酸塩もシロイヌナズナ属(Arabidopsis)における全体的な遺伝子発現を調節するシグナルとしての機能を果たし得る(Wangら(2007年) Plant Physiol、145巻、1735〜45頁)。亜硝酸塩のシグナル伝達作用についてはほとんどわかっておらず、特定の機能が亜硝酸応答遺伝子に関連付けられなかった。しかし、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)根における硝酸塩検出システムが硝酸塩と同様に亜硝酸塩も認識することが提唱された。その理由は、両シグナルが広範な重複した応答を有するためである(同上)。 硝酸トランスポーター、NR及びNIR、転写因子、ストレス応答遺伝子、N/Cバランスに関与する炭素(C)同化酵素、並びにその産物がシグナル伝達経路に関与する遺伝子を含む、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)における硝酸応答遺伝子は、多く、変化する(Vidal及びGutierrez(2008年)、前出、Kroukら(2010年a)、前出、Tsayら(2010年)、前出)。トランスクリプトミクス解析により、多くのシロイヌナズナ属(Arabidopsis)硝酸応答遺伝子が同定された(Wangら(2003年)、Plant Physiol.、132巻、556〜7頁、Scheibleら(2004年)、Plant Physiol.、136巻、2483〜99頁、Wangら(2004年)、Plant Physiol.、136巻、2512〜22頁、Gutierrezら(2007年)、Genome Biol.、8巻、R7頁)。しかし、硝酸応答の惹起に関与するほんの一握りの調節因子が同定されたにすぎなかった。 硝酸トランスポーターNRT1.1は、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)における硝酸塩センサーとして報告された(Hoら(2009年)、Cell、138巻、1184〜94頁)。さらに、NIN様タンパク質7転写因子は、硝酸塩同化の調節に関与すると記載された(Castaingsら(2009年)、Plant J.、57巻、426〜35頁)が、ANR1 MADS-box遺伝子は、外部硝酸塩に応答する側根成長のレギュレーターとして同定された(Zhang及びForde(1998年)、Science、279巻、407〜9頁)。さらに、カルシニューリンB様(CBL)相互作用プロテインキナーゼ(CIPK)遺伝子CIPK8が硝酸塩の検出に関与することが見いだされた(Huら(2009年)、Plant J.、57巻、264〜78頁)。また、N応答遺伝子を抑制するLBD37/38/39転写因子が硝酸塩の取込み及び同化に必要であることが見いだされた(Rubinら(2009年)、Plant Cell、21巻、3567〜84頁)。つい最近、硝酸応答miR393/AFB3モジュールがシロイヌナズナ属(Arabidopsis)における外部及び内部N利用可能性に応じて根系構造を制御することが見いだされ(Vidalら(2010年b)、Proc. Natl. Sci. USA、107巻、4477〜82頁)、側根構造の制御に関与する根におけるグルタミンによる細胞特異的調節がmiR167/ARF8モジュールに帰せられた(Giffordら(2008年)、Proc. Natl. Acad. Sci, USA、105巻、803〜8頁)。 新規な窒素応答調節因子TGA1及びTGA4を本明細書で説明する。TGA1及びTGA4は、窒素の取込み及び還元に関与する遺伝子の発現の窒素調節を媒介する。実施形態において、これらの転写因子は、根組織の成長に影響を及ぼし、及び/又は植物の成長及び生産性に影響を及ぼす、窒素の吸収及び同化を改善するために用いることができる。 一次根及び側根の成長は、硝酸塩の存在下で根の成長を促進する正の役割を示す、tga1/tga4二重突然変異体において影響を受けることが認められた。したがって、いくつかの実施形態において、TGA1及び/又はTGA4は、例えば、窒素制限条件下での植物における一次根及び/又は側根の成長を促進するために用いることができる。 TGA1及びTGA4の調節制御下でtga1/tga4二重突然変異植物において同定された遺伝子のほぼすべて(97%)が窒素により調節される。したがって、いくつかの実施形態において、TGA1及び/又はTGA4は、窒素に応答する遺伝子(例えば、図5で特定した遺伝子)の発現に用いることができる。例えば、特定の実施形態において、TGA1及び/又はTGA4は、硝酸トランスポーターNRT2.1、NRT2.2及び/又は亜硝酸還元酵素NIRの発現に影響を及ぼすために用いることができる。特定の実施形態において、TGA1及び/又はTGA4は、TGA1又はTGA4結合モチーフに作動可能に連結された遺伝子の発現に用いることができる。 いくつかの実施形態において、本明細書で述べる方法に用いるTGA1ポリペプチドは、配列番号1〜10、又は配列番号1〜10の1つ若しくは複数と配列同一性を共有する相同体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書で述べる方法に用いるTGA4ポリペプチドは、配列番号11〜14、又は配列番号11〜14の1つ若しくは複数と配列同一性を共有する相同体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書で述べる方法に用いる核酸は、TGA1又はTGA4ポリペプチドをコードするヌクレオチドを含み得る。 いくつかの実施形態は、異種TGA1ポリペプチド及び/又はTGA1コード核酸、並びに/又は異種TGA4ポリペプチド及び/又はTGA4コード核酸を含む遺伝子導入植物又はその子孫を含む。特定の実施形態において、異種TGA1及び/又はTGA4コード核酸は、遺伝子導入植物又はその子孫において発現する。特定の実施形態において、異種TGA1及び/又はTGA4コード核酸が発現する組織は、根である。いくつかの実施形態による方法は、制限窒素源を有する環境条件下で前述の遺伝子導入植物又はその子孫を生育させるステップを含む。いくつかの例において、異種TGA1及び/若しくはTGA4ポリペプチド並びに/又は異種TGA1及び/若しくはTGA4コード核酸を含む遺伝子導入植物又はその子孫は、窒素制限条件(例えば、低窒素条件)下で成長及び/又は耐性の増大を示す。 いくつかの実施形態は、一次根及び/又は側根の成長が促進される、植物を作製する方法を含む。そのような方法は、例えば、及び制限なしに、TGA1及び/又はTGA4コード核酸(例えば、ベクター中)を植物又はその細胞若しくは組織に導入するステップと、植物を再生するために細胞又は組織を場合によって培養するステップと、一次根及び/又は側根の成長の促進を目的として植物を選択するステップとを含み得る。いくつかの例において、選択される植物は、窒素制限条件下で栽培する。 いくつかの実施形態において、本明細書で述べる方法に用いる植物は、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)の種であり得る。いくつかの実施形態において、植物は、アブラナ科(Brassicaceae)、マメ科(Fabaceae)、イネ科(Poaceae)、ナス科(Solanaceae)、ブドウ科(Vitaceae)、トウダイイグサ科(Euphorbiaceae)、ヤナギ科(Salicaceae)及びフトモモ科(Myrtaceae)からなる群から選択することができる。前述の方法のいずれかにより得られる植物、植物物質、植物細胞及び種子も特定の実施形態の特徴である。硝酸塩に対する、及び硝酸塩還元のシグナル下流に対するTGA1及びTGA4の応答の例示を含む図である。図1Aは、野生型「Col−0」植物におけるTGA1の硝酸応答を含む。図1Bは、Col−0植物におけるTGA4の硝酸応答を含む。図1Cは、NRヌル突然変異植物におけるTGA1の硝酸応答を含む。図1Dは、NRヌル突然変異植物におけるTGA4の硝酸応答を含む。TGA1(E)及びTGA4(F)遺伝子の亜硝酸応答。TGA1(G)及びTGA4(H)遺伝子のアンモニウム応答。アステリスク(*)は、対照条件と処理条件の間で有意に異なることを意味する(P<0.05)。アンモニウムと比較した、TGA1及びTGA4の亜硝酸応答の例示を含む図である。図2Aは、TGA1の亜硝酸応答を含む。図2Bは、TGA4の亜硝酸応答を含む。図2Cは、TGA1のアンモニウム応答の欠如を示している。図2Dは、TGA4のアンモニウム応答の欠如を示している。アステリスク(*)は、対照条件と処理条件の間で有意に異なることを意味する(P<0.05)。硝酸塩に応答する一次根及び側根の成長に対するTGA1及びTGA4の効果の例示を含む図である。図3Aは、tga1/tga4及びCol−0植物の出始めている及び出現している側根(initiating and emerging root)の数を含む。図3Bは、KNO3又はKClで処理したときのCol−0、tga1、tga4及びtga1/tga4植物の15日目に測定した一次根の長さを含む。バーは、標準偏差を表す。異なる文字は、統計的に異なる平均値を示す(P<0.05)。内鞘細胞におけるTGA1及びTGA4の硝酸塩調節の例示を含む図である。図4Aは、KNO3又はKClで2時間処理した幼植物の内鞘細胞におけるRT−qPCRにより測定したTGA1 mRNAの相対量を含む。図4Bは、KNO3又はKClで2時間処理した幼植物の内鞘細胞におけるRT−qPCRにより測定したTGA4 mRNAの相対量を含む。プロットした値は、3回の反復測定の平均値±標準偏差である。アステリスク(*)は、処理の間で有意に異なることを意味する(P<0.05)。N代謝に関与する遺伝子を含む、TGA1/TGA4により制御される硝酸応答遺伝子ネットワークの表出を含む図である。個々の遺伝子を三角形(転写因子)及び正方形(標的遺伝子)として示す。緑色の直線は、予測転写活性化を示すが、赤色の直線は、予測転写抑制を示す。細い直線は、対応する遺伝子の上流領域における1つの転写因子結合部位を示すが、太い直線は、結合部位の過剰表出を示す。矢印は、正の調節を示すが、末端に垂直線を有する端は、負の調節を示す。結節点(nodes)は、次のように機能に基づいて色分けされている:シグナル伝達(紫)、未知遺伝子(白)、ストレス応答(緑がかった青)、窒素代謝(黄)及び他の機能(灰)。NIR、NRT2.1及びNRT2.2遺伝子の硝酸依存性上方制御に対するTGA1及びTGA4の効果の例示を含む図である。図6Aは、示した時間にわたりKNO3又はKClで処理したCol−0及びtga1/tga4植物におけるNRT2.1 mRNA転写物レベルを含む。図6Bは、示した時間にわたりKNO3又はKClで処理したCol−0及びtga1/tga4植物におけるNRT2.2 mRNA転写物レベルを含む。図6Cは、示した時間にわたりKNO3又はKClで処理したCol−0及びtga1/tga4植物におけるNIR mRNA転写物レベルを含む。NRT2.1及びNRT2.2プロモーター領域への硝酸依存的様式でのTGA1結合の例示を含む図である。抗TGA1を用いてNRT2.1及びNRT2.2プロモーターを含むDNAを免疫沈降させた。非特異的IgGを陰性対照として用いた。免疫沈降プロモーターDNAは、NRT2.1及びNRT2.2プロモーター領域と対照してデザインしたプライマーを用いた定量的PCRにより定量した。硝酸塩に応答するTGA1及びTGA4の発現がchl1−5及びchl1−9突然変異体において影響を受けることを示す図である。Col−0、chl1−5、chl1−9及びT101D植物を唯一の窒素源としての1mMアンモニウムを用いて水耕法で栽培した。15日目の明期の開始時に、植物を5mM KNO3又は対照としての5mM KClで示した時間にわたり処理した。RNAを単離し、RT−qPCRによりmRNAレベルを測定した。クラスリン遺伝子(At4g24550)を標準化基準として用いた。(A)TGA1転写物レベル、(B)TGA4転写物レベル。プロットした値は、3つの独立した生物学的反復測定の平均値±標準偏差に相当する。アステリスクは、突然変異及び野生型植物間で有意に異なる平均値を示す(P<0.05)。側根及び一次根の維管束組織において発現したTGA1及びTGA4を示す図である。pTGA1:GUS及びpTGA4:GUS系(lines)を唯一の窒素源としての1mMアンモニウムを用いて2週間にわたり水耕法で栽培し、5mM KNO3又はKClで2時間にわたり処理し、GUS活性について染色した。5mM KNO3処理pTGA1:GUS(A)、5mM KCl処理pTGA1:GUS(B)、5mM KNO3処理pTGA4:GUS(C)及び5mM KCl処理pTGA4:GUS(D)。一次根の成熟部分の断面(E)及び硝酸塩で処理したpTGA1:GUS植物の一次根から出現した側根の縦断面(G)。一次根の成熟部分の断面(F)及び硝酸塩で処理したpTGA4:GUS植物の側根及び一次根の縦断面(H)。(スケールバー:0.1mm)。(E)及び(F)における数は、1:中心柱及び2:内皮を示す。同様の局在化パターンが各遺伝子型についての8つの独立した遺伝子導入系に認められた。唯一のN源としての1mMアンモニウムを用いて2週間水耕法で栽培した表皮(Epi)、皮層(Cortex)、内皮(Endo)、内鞘(Peri)及び中心柱(Stele)GFPマーカー系のTGA1及びTGA4転写物レベルを示す図であり、15日目に幼植物を5mM KNO3又は5mM KClで2時間処理した。NTR2.1、NTR2.2及びNIR遺伝子の硝酸塩による細胞特異的調節を示す図である。表皮(Epi)、皮層(Cortex)、内皮(Endo)、内鞘(Peri)及び中心柱(Stele)GFPマーカー系を唯一のN源としての1mMアンモニウムを用いて2週間水耕法で栽培した。15日目の夜明けに幼植物を5mM KNO3又は5mM KClで2時間処理した。全RNAを単離し、NTR2.1、NTR2.2及びNIRのmRNAレベルをRT−qPCRにより測定した。(A)NTR2.1転写物レベル、(B)NTR2.2転写物レベル及び(C)NIR転写物レベルを例示する。低硝酸塩濃度での処理のもとでのNTR2.1及びNTR2.2の発現のTGA1及びTGA4調節を示す図である。Col−1及びtga1/tga4植物を唯一の窒素源としての1mMアンモニウムを用いて水耕法で栽培した。15日目の明期の開始時に、植物を250μM KNO3又は対照としての5μM KClで2時間処理した。RNAを単離し、RT−qPCRによりmRNAレベルを測定した。(A)NTR2.1転写物レベル、(B)NTR2.2転写物レベル並びに(C)Col−0及びtga1/tga4植物の正味の硝酸塩取込みを例示する。示した時間にわたり5mM KNO3又は5mM KClに曝露したTGAファミリーメンバーの硝酸応答を示す図である。示した時間にわたり5mM NH4Cl又は5mM KClに曝露した植物におけるGDH2に対する影響を示す図である。示した時間にわたり5mM KNO3又は5mM KClに曝露したchl1−5及びT101D突然変異体における硝酸塩に応答したNRT2.1の発現を示す図である。5mM KNO3又は5mM KClで処理したCol−0及びtga1/tga4植物のNIA1遺伝子mRNAレベルの硝酸依存性上方制御を示す図である。 I.いくつかの実施形態の概要 硝酸塩の同化は、変化する環境における植物の最適の生育のために他の代謝及び生理的過程と正しく調和させなければならないエネルギーの必要な過程であるので、硝酸塩取込み及び同化遺伝子の転写調節は、植物にとって非常に重要である。本明細書で開示することは、硝酸塩に対する植物の応答における転写因子TGA1及びTGA4の新規な役割である。 統合バイオインフォマティクスアプローチを用いて、TGA1及びTGA4がシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)根における窒素応答を媒介する調節因子と同定された。TGA1及びTGA4 mRNAは両方とも、硝酸塩及び亜硝酸塩処理後に根組織に急速に蓄積する。TGA1及びTGA4は、硝酸塩調節一次根及び側根成長に関与し、硝酸塩処理によるNTR2.1、NTR2.2及びNIR遺伝子の正常な誘導は、TGA1及びTGA4を必要とする。tga1/tga4二重突然変異植物の表現型解析により、TGA1及びTGA4が硝酸依存性一次根成長及び硝酸依存性側根成長の両方に必要であることが示された。網羅的遺伝子発現解析により、tga1/tga4二重突然変異体における発現の変化を有する遺伝子の97%が硝酸塩処理により調節されることが明らかになり、TGA1及びTGA4転写因子が根における硝酸応答において特異的役割を有することがわかる。 遺伝子発現の正常な窒素調節のためのTGA1及びTGA4に依存する硝酸応答遺伝子のうちで、硝酸トランスポーター遺伝子NRT2.1、NRT2.2及び亜硝酸還元酵素(NIR)遺伝子が同定された。これらの標的遺伝子のプロモーター上のその同族DNA配列へのTGA1の特異的結合は、クロマチン免疫沈降アッセイにより確認された。 TGA因子は、病原体攻撃に対する植物の防御、ストレス応答(Kesarwaniら(2007年)、Plant Physiol.、144巻、336〜46頁)及び葯の発達(Murmuら(2010年)、Plant Physiol.、154巻、1492〜1504頁)に関連付けられた。しかし、TGA転写因子は、以前には硝酸応答又はいずれかの栄養素応答に関連付けられなかった。したがって、本開示は、窒素とTGA1及びTGA4転写因子に関連する防御シグナル伝達との間の新規かつ予期しない相互作用を明らかにする。 本明細書における実施例で述べるトランスクリプトミクスデータのネットワーク解析に基づいて、硝酸応答の調節に関与する前述の遺伝子のいずれもTGA1及びTGA4の下流に存在しないと思われる。Vidalら(2010年a)、Wiley Interdiscip. Rev. Syst. Biol. Med.、2巻、683〜93巻を参照のこと。また、CIPK8、NLP7及びLDB37/38/39レベルの変化は、先の網羅的遺伝子発現解析に基づいて、硝酸塩に応答するTGA1又はTGA4発現に影響を及ぼさない。Castaingsら(2009年)、前出、Huら(2009年)、前出、Rubinら(2009年)、前出を参照のこと。したがって、TGA1及びTGA4は、以前に特徴付けられたものと異なり、無関係の硝酸及び/又は亜硝酸応答を調節する経路において機能する可能性が高い。 II.略語 ANOVA 分散分析 bZIP 塩基性ロイシンジッパードメイン BLAST(登録商標) Basic Local Alignment Search Tool ChIP クロマチン免疫沈降 ELISA 酵素結合免疫吸着測定法 EMSA 電気泳動移動度シフトアッセイ FACS 蛍光活性化セルソーティング FDR 偽陽性率 NCBI 国立バイオテクノロジー情報センター PCR ポリメラーゼ連鎖反応 qPCR 定量的ポリメラーゼ連鎖反応 RMA 頑健マルチアレイ解析(robust multi-array analysis) RT−PCR 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応 III.用語 本開示の様々な実施形態の再検討を促進するために、特定の用語についての以下の説明を記載する。 内因性:本明細書で用いているように、「内因性」という用語は、特定の生物、組織又は細胞内に由来する物質(例えば、核酸分子及びポリペプチド)に適用される。例えば、植物細胞において発現する「内因性」ポリペプチドは、同一種の非遺伝子改変植物の同タイプの細胞において通常発現するポリペプチドを意味し得る。同様に、植物細胞に含まれる「内因性」核酸は、同一種の非遺伝子改変植物の同タイプの細胞中に通常見いだされる核酸(例えば、ゲノムDNA)を意味し得る。例えば、「天然」又は「内因性」核酸は、核酸が通常天然で見いだされる染色体又は他の遺伝物質に通常存在するもの以外の核酸エレメントを含まない核酸(例えば、遺伝子)である。内因性遺伝子転写物は、その天然染色体座におけるヌクレオチド配列によりコードされ、細胞に人工的に供給されない。 対照的に、「外因性」又は「異種」分子は、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列及び/又はゲノム位置に関して、並びにポリペプチドのアミノ酸配列及び/又は細胞局在に関して、特定の系(例えば、生殖質、品種、優良品種及び/又は植物)に生来的なものでない分子である。実施形態において、外因性又は異種ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、生体系(例えば、植物細胞、植物遺伝子、特定の植物種若しくは品種及び/又は植物染色体)に人工的に供給された分子であり得、当該特定の生体系に生来的なものでない。したがって、「外因性」としての核酸の意味は、核酸が天然に存在する源以外の源に由来することを示し得るか、又は核酸が非天然構造、遺伝子座若しくはエレメントの配置を有することを示し得る。 発現:本明細書で用いているように、コーディング配列(例えば、遺伝子又は導入遺伝子)の「発現」は、核酸転写単位(例えば、ゲノムDNA又はcDNAを含む)のコード化情報が細胞の作動(operational)、非作動又は構造部分(例えば、タンパク質)に変換される過程を意味する。遺伝子発現は、外部シグナル、例えば、その中に含まれる遺伝子の発現を増大又は低下させる物質への細胞、組織又は生物の曝露による影響を受け得る。遺伝子の発現は、DNAからRNAへの、RNAからタンパク質への経路のどこにおいても調節することができる。遺伝子発現の調節は、例えば、転写、翻訳、RNA輸送及びプロセシング、mRNAなどの中間分子の分解に作用する制御により、及び/又はそれらが構築された後の特定のタンパク質分子の活性化、不活性化、コンパートメント化若しくは分解により、又は前述のもののいずれかの組合せにより、起こる。遺伝子発現は、制限なしに、ノーザンブロット、RT−PCR、ウエスタンブロット及びin vitro、in situ又はin vivoタンパク質活性アッセイ(複数可)を含む、当技術分野で公知の方法によりRNAレベル又はタンパク質レベルで測定することができる。 発現増加:本明細書で用いているように、「発現増加」という用語は、発現の開始並びに鋳型構築物から産生される発現産物の量の量的な増加を意味する。いくつかの実施形態において、遺伝子によりコードされるポリペプチドの発現を増加させるために、少なくとも1つの異種遺伝子を、同じ遺伝子の内因性コピーを別に含む細胞又は生物に供給することができる。そのような実施形態において、発現の増加は、異種及び内因性遺伝子を含む細胞において産生されたポリペプチドの量と内因性遺伝子のみを含む細胞において産生された量との比較により判断することができる。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドの制御下の遺伝子によりコードされる第2のポリペプチドの発現を増加させるために、転写に影響を及ぼす第1のポリペプチド(例えば、TGA1及び/又はTGA4)を細胞又は生物に供給することができる。そのような実施形態において、発現の増加は、第1のポリペプチドの存在下で遺伝子から産生されたポリペプチドの量と第1のポリペプチドの非存在下で遺伝子から産生された量との比較により判断することができる。いくつかの実施形態において、遺伝子の発現を増加させるために、調節配列を遺伝子に作動可能に連結させることができる。そのような実施形態において、発現の増加は、遺伝子への調節配列の作動可能連結の後に遺伝子から産生されたポリペプチドの量と調節配列の作動可能連結又は導入の前に遺伝子から産生された量との比較により判断することができる。 異種:本明細書で用いているように、「異種」という用語は、特定の生物、組織、又は細胞内に由来しない物質(例えば、核酸分子及びポリペプチド)を意味する。例えば、植物細胞において発現する「異種」ポリペプチドは、同一種の非遺伝子改変植物からの同タイプの細胞において通常は発現しないポリペプチドを意味し得る(例えば、同じ生物の異なる細胞、又は異なる生物の細胞において発現するポリペプチド)。 単離(した):「単離(した)」生体成分(核酸又はポリペプチド等)は、成分の化学的又は機能変化を生じさせている間に、該成分が天然で存在する生物の細胞中の他の生体成分(例えば、他の染色体及び染色体外DNA及びRNA並びにタンパク質)から実質的に分離され、から別にして産生され、又はから引き離して精製されている。例えば、核酸は、染色体における残りのDNAに該核酸を連結している化学結合を切断することによって染色体から単離することができる。「単離」された核酸分子及びタンパク質は、標準的精製方法により精製された核酸分子及びタンパク質を含み得る。該用語は、宿主細胞中の組換え発現により調製された核酸及びタンパク質並びに化学的に合成された核酸分子、タンパク質及びペプチドを包含する。 窒素制限条件:本明細書で用いているように、「窒素制限条件」という用語は、限られた量の窒素源(例えば、硝酸塩及びアンモニウム)が土壌又は培地中に存在する状態を意味する。「制限」である量は、いくつかの例において、0.0〜0.2mM、例えば、0〜0.1mM、0〜0.03mM、0〜0.05mMの窒素濃度範囲にある。 核酸分子:本明細書で用いているように、「核酸分子」という用語は、RNAのセンス及びアンチセンス鎖両方、cDNA、ゲノムDNA並びに上述のものの合成体及び混合ポリマーを含み得る、ヌクレオチドの多量体型を意味し得る。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、及びいずれかの型のヌクレオチドの修飾形態を意味し得る。「核酸分子」は、本明細書で用いているように、「核酸」及び「ポリヌクレオチド」と同義である。核酸分子は、特に指定しない限り、通常長さが少なくとも10塩基である。該用語は、一本及び二本鎖型のDNAを含む。核酸分子は、天然及び/又は非天然ヌクレオチド結合により結合した天然及び修飾ヌクレオチドのいずれか又は両方を含み得る。核酸分子は、当業者により容易に理解されるように、化学的若しくは生化学的に修飾することができ、又は非天然若しくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含んでいてもよい。 いくつかの実施形態は、特定の型の核酸、すなわちオリゴヌクレオチド(例えば、「プライマー」オリゴヌクレオチド)を用いる。オリゴヌクレオチドは、一般的に50個又はそれより少ない核酸塩基を含む(一部のオリゴヌクレオチドは50個を超える核酸塩基を含み得るが)比較的に短い核酸分子である。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド配列を含むより長い核酸の切断(例えば、制限消化)により形成させることができ、又は個々のヌクレオシドホスホルアミダイトから配列特異的様式で化学的に合成することができる。 オリゴヌクレオチドは、特定のヌクレオチド配列を含む核酸分子を検出するためのプローブ配列として用いることができる。前述のことによれば、オリゴヌクレオチドプローブは、合成により又はクローニングにより調製することができる。適切なクローニングベクターは、当業者に公知である。オリゴヌクレオチドプローブは、標識されていても又は非標識でもあってもよい。例えば、及び制限なしに、用いるヌクレオチドが、例えば、放射性32Pで標識されている、ニック翻訳、ランダムプライミング及び末端デオキシトランスフェラーゼによるテイリングによる放射性標識を含む、核酸分子を標識するための多種多様な技術が存在する。用いることができる他の標識は、例えば、及び制限なしに、発蛍光団、酵素、酵素基質、酵素補因子及び酵素阻害剤を含む。或いは、それ自体で又は他の反応性物質とともに検出可能なシグナルをもたらす標識を使用することは、それら自体で又は他の試薬とともにのいずれかで検出可能なシグナルをもたらすために受容体が標識されている(例えば、上で示した標識により)場合に、受容体が結合する配位子をその代わりとすることができる。例えば、Learyら(1983年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、80巻、4045〜9頁を参照のこと。 本発明のいくつかの実施形態は、ヌクレオチド標的配列と「特異的にハイブリダイズし得る」又は「特異的に相補的」であるポリヌクレオチドを含む。「特異的にハイブリダイズし得る」及び「特異的に相補的」は、ポリヌクレオチドと特定のヌクレオチド標的配列を含む核酸分子との間に安定的及び特異的な結合が起こるような十分な程度の相補性を示す用語である。核酸分子は、特異的にハイブリダイズし得るためにその標的配列と100%相補的である必要はない。特異的結合が望まれる条件下、例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で非標的配列への核酸の非特異的結合を避けるのに十分な程度の相補性が存在する場合に、核酸分子は、特異的にハイブリダイズし得る。 特定の程度のストリンジェンシーをもたらすハイブリダイゼーション条件は、最適なハイブリダイゼーション方法の性質並びにハイブリダイズする核酸配列の組成及び長さによって異なる。洗浄時間もストリンジェンシーに影響を及ぼすが、一般的に、ハイブリダイゼーションの温度及びハイブリダイゼーション緩衝液のイオン強度(特にNa+及び/又はMg++濃度)は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに寄与する。特定の程度のストリンジェンシーを達成するのに必要なハイブリダイゼーション条件に関する計算は、当業者に公知であり、例えば、Sambrookら(編)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、1-3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989年、9及び11章並びにHames 及び Higgins(編)、Nucleic Acid Hybridization、IRL Press、Oxford、1985年に述べられている。核酸のハイブリダイゼーションに関するさらなる詳細な説明書及び手引きは、例えば、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology - Hybridization with Nucleic Acid Probes、Part 1、2章におけるTijssen、「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays」、Elsevier、NY、1993年及びAusubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、2章、Greene Publishing and Wiley-Interscience、NY、1995年に見いだすことができる。 本明細書で用いているように、「ストリンジェントな条件」は、ハイブリダイゼーション分子とDNA標的との間に25%未満のミスマッチが存在する場合にのみハイブリダイゼーションが起こる条件を含む。「ストリンジェントな条件」は、さらなる特定レベルのストリンジェンシーを含む。したがって、本明細書で用いているように、「軽度にストリンジェト」な条件は、25%を超える配列ミスマッチを有する分子がハイブリダイズしない条件であり、「中度にストリンジェント」な条件は、15%を超えるミスマッチを有する分子がハイブリダイズしない条件であり、「高度にストリンジェント」な条件は、10%を超えるミスマッチを有する配列がハイブリダイズしない条件である。「非常に高度にストリンジェント」な条件は、6%を超えるミスマッチを有する配列がハイブリダイズしない条件である。 特定の実施形態において、ストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーション緩衝液(例えば、6x生理食塩水−クエン酸ナトリウム(SSC)緩衝液、5xデンハルト溶液、0.5%SDS及び100μgせん断サケ精巣DNA)中で65℃で終夜のハイブリダイゼーションとそれに続く0.1XSSC/0.1%SDSによる65℃における40分の連続洗浄である。 作動可能に連結したヌクレオチド配列:第1のヌクレオチド配列が第2のヌクレオチド配列と機能的関係にある場合、第1のヌクレオチド配列は、第2のヌクレオチド配列と又はそれに「作動可能に連結」されている。例えば、プロモーターがコーディング配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合、プロモーターは、コーディング配列に作動可能に連結されている。組換えにより産生させる場合、作動可能に連結したヌクレオチド配列は、一般的に隣接しており、2つのタンパク質コーディング領域を連結するために必要な場合、同じ読み枠にある。しかし、ヌクレオチド配列は、作動可能に連結させるために隣接している必要はない。 「作動可能に連結」という用語は、遺伝子調節配列及びコーディング配列に関して用いる場合、調節配列が連結したコーディング配列の発現に影響を及ぼすことを意味する。「調節配列」又は「制御エレメント」は、転写の時期及びレベル/量、RNAプロセシング若しくは安定性、又は作動可能に連結したコーディング配列の翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を意味する。通常の調節配列は、例えば、及び制限なしに、5’非翻訳領域、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、エンハンサー、ステム−ループ構造、レプレッサー結合配列、終結配列及びポリアデニル化認識配列を含む。特定の調節配列は、それに作動可能に連結されているコーディング配列の上流及び/又は下流に位置し得る。また、コーディング配列に作動可能に連結されている特定の調節配列は、二本鎖核酸分子の関連相補鎖上に位置し得る。 コーディング配列に「作動可能に連結」させることができるエレメントは、プロモーター又は他の通常の調節配列に限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、転写因子ポリペプチド(例えば、TGA1又はTGA4)は、コーディング配列の上流又は下流にあるヌクレオチド配列に結合して、コーディング配列の転写に影響を及ぼし得る。そのような例において、ヌクレオチド配列が転写因子の非存在下でコーディング配列の転写に全く影響を及ぼし得ないにしても、該転写因子ポリペプチドが結合しているヌクレオチド配列は、コーディング配列に「作動可能に連結」されている。 調節エレメント:本明細書で用いているように、「調節エレメント」という用語は、遺伝子調節活性を有する核酸分子、すなわち、作動可能に連結した転写可能核酸分子の転写又は翻訳に影響を及ぼす能力を有するものを意味する。プロモーター、リーダー、イントロン及び転写終結領域などの調節エレメントは、生存細胞における遺伝子の全体的な発現における不可欠な役割を果たす遺伝子調節活性を有する非コーディング核酸分子である。したがって、植物において機能する単離調節エレメントは、分子工学の技術により植物の表現型を改変するのに有用である。したがって、「調節エレメント」は、特定の遺伝子が、発現するかどうか、いつ、どのようなレベルで発現するかを決定する一連のヌクレオチドであり得る。いくつかの例において、調節エレメントは、TGA1及び/又はTGA4などの調節タンパク質と特異的に相互作用するDNA配列である。 本明細書で用いているように、「遺伝子調節活性」という用語は、作動可能に連結した核酸分子の転写又は翻訳に対して核酸分子又はポリペプチドによって及ぼされた効果を意味する。遺伝子調節活性を有する単離核酸分子は、作動可能に連結した核酸分子の、時間的若しくは空間的発現をもたらし、及び/又は発現のレベルと速度を調節し得る。本明細書で述べるいくつかの例において、TGA1及び/又はTGA4は、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチド(複数可)に特異的に結合する調節DNAエレメントに作動可能に連結されている少なくとも1つのヌクレオチド配列の発現を増加させる、遺伝子調節活性を有するポリペプチドとして提供される。 プロモーター:本明細書で用いているように、「プロモーター」という用語は、転写の開始の上流にあってよく、RNAポリメラーゼ及び転写を達成するための他のタンパク質の認識及び結合に関与し得るDNAの領域を意味する。プロモーターは、細胞中での発現のためにコーディング配列に作動可能に連結させることができ、又はプロモーターは、細胞中での発現のためにコーディング配列に作動可能に連結させることができるシグナル配列をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結させることができる。「植物プロモーター」は、植物細胞中で転写を開始することができるプロモーターであり得る。 発達制御下のプロモーターの例は、特定の組織、例えば、及び制限なしに、葉、根、種子、繊維、木質導管、仮導管又は厚壁組織における転写を優先的に開始するプロモーターを含む。そのようなプロモーターは、「組織優先型」と呼ばれる。特定の組織における転写のみを開始するプロモーターは、「組織特異的」と呼ばれる。「細胞型特異的」プロモーターは、1つ又は複数の器官における特定の細胞型、例えば、及び制限なしに、根又は葉における維管束細胞における転写を主としてもたらす。具体例としての組織特異的又は組織優先型プロモーターは、例えば、及び制限なしに、根優先型プロモーター(例えば、ファセオリン遺伝子プロモーター);キャブ又はルビスコからのそれなどの葉特異的及び光誘導性プロモーター;LAT52からのそれなどの葯特異的プロモーター;Zm13からのそれなどの花粉特異的プロモーター;及びapgからのそれなどの小胞子優先型プロモーターを含む。 「誘導性」プロモーターは、環境制御下にあるプロモーターであり得る。Wardら(1993年)、Plant Mol, Biol.、22巻、361〜366頁を参照のこと。誘導プロモーターにより転写を開始し得る環境条件の例は、例えば、及び制限なしに、嫌気性条件及び光の存在を含む。誘導性プロモーターにより、転写の速度は、誘発剤に反応して増加する。具体例としての誘導性プロモーターは、銅に応答するACEIシステムからのプロモーター;ベンゼンスルホンアミド除草剤解毒剤に応答するトウモロコシからのIn2遺伝子プロモーター;Tn10からのTetレプレッサー;及びその転写活性がグルココルチコステロイドホルモンにより誘導され得る、ステロイドホルモン遺伝子からの誘導性プロモーターを含むが、これらに限定されない(Schenaら(1991年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻0421頁)。 組織特異的、組織優先型、細胞種特異的及び誘導性プロモーターは、「非構成的」プロモーターのクラスを構成する。「構成的」プロモーターは、ほとんどの環境条件下で活性であり得るプロモーターである。具体例としての構成的プロモーターは、例えば、及び制限なしに、植物ウイルスプロモーター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV))からの35Sプロモーター;イネアクチン遺伝子からのプロモーター;ユビキチンプロモーター;pEMU;MAS;トウモロコシH3ヒストンプロモーター;及びALSプロモーター、すなわち、アブラナ(Brassica napus)ALS3構造遺伝子の5’側のXbal/NcoI断片(又はXbal/NcoI断片と類似のヌクレオチド配列)(PCT国際特許公開番号WO96/30530)を含む。 前述の構成的及び非構成的プロモーターのいずれかは、特定の実施形態で用いることができる。例えば、植物細胞中で硝酸塩及び 又は亜硝酸塩により調節される遺伝子を植物細胞に供給することができ、該遺伝子がTGA1及び/又はTGA4ポリペプチド(複数可)並びにプロモーターに特異的に結合する調節DNAエレメントに作動可能に連結される。さらなる例として、TGA1又はTGA4遺伝子を細胞に供給することができ、TGA1又はTGA4遺伝子の発現を可能にし、プロモーターにより制御される状況下のシロイヌナズナ属(Arabidopsis)の硝酸応答の特性を与えるために、該遺伝子が構成的及び非構成的プロモーターに作動可能に連結される。 配列同一性:「配列同一性」(又は「同一性」)という用語は、本明細書で用いているように、2つの核酸又はポリペプチド配列という状況で、特定の比較ウインドウにわたる最大の一致を得るように整列させたときに同じである2つの配列における残基を意味し得る。 本明細書で用いているように、「配列同一性の百分率」という用語は、比較ウインドウにわたり2つの最適に整列させた配列(例えば、核酸配列及びアミノ酸配列)を比較することによって決定される値を意味し、比較ウインドウにおける配列の一部が、2つの配列の最適な整列のために参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。百分率は、同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基が両配列に存在する位置の数を測定して、一致する位置の数を求め、一致する位置の数を比較ウインドウにおける位置の総数で割り、結果に100を乗じて、配列同一性の百分率を得る。 比較のために配列を整列させる方法は、当技術分野で周知である。様々なプログラム及びアライメントアルゴリズムが例えば、Smith及びWaterman(1981年)、Adv. Appl. Math.、2巻、482頁、Needleman及びWunsch(1970年)、J. Mol. Biol.、48巻、443頁、Pearson及びLipman(1988年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、85巻、2444頁、Higgins及びSharp(1988年)、Gene、73巻237〜44頁、Higgins及びSharp(1989年)、CABIOS、5巻、151〜3頁、Corpetら(1988年)、Nucleic Acids Res.、16巻、10881〜90頁、Huangら(1992年)、Comp. Appl. Biosci.、8巻、155〜65頁、Pearsonら(1994年)、Methods Mol. Biol.、24巻、307〜31頁、Tatianaら(1999年)、FEMS Microbiol. Lett.、174巻、247〜50頁に記載されている。配列整列法及び相同性計算の詳細な検討は、例えば、Altschulら(1990年)、J. Mol. Biol.、215巻、403〜10頁に見いだすことができる。 いくつかの配列解析プログラムとともに用いるための国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のBasic Local Alignment Search Tool(BLAST(商標);Altschulら(1990年))がインターネットを含むいくつかの情報源から入手できる。このプログラムを用いて配列同一性をどのようにして決定するのかの説明は、BLAST(商標)の「help」セクションのもとでインターネット上で入手できる。核酸配列の比較のために、デフォルトパラメーターを用いるBLAST(商標)(Blastn)プログラムの「Blast 2 sequences」関数を用いることができる。参照配列とのより大きい類似性を有する核酸配列は、この方法により評価するとき、同一性の百分率の増加を示す。 ヌクレオチド配列に関して本明細書で用いているように、「実質的に同一」という用語は、85%を超えて同一である配列を意味し得る。例えば、実質的に同一のヌクレオチド配列は、参照配列と少なくとも85.5%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%同一であり得る。 特異的結合:ポリペプチド及びタンパク質ドメインに関して本明細書で用いているように、「特異的結合」という用語は、結合相手(複数可)との安定的及び特異的な結合が起こるが、特異的に結合するポリペプチドにより認識される特定のアミノ酸配列又は特定のヌクレオチド配列を欠く他の分子とのそれが起こらないような、ポリペプチド又はタンパク質ドメインとその結合相手(複数可)(例えば、特定のヌクレオチド配列を含む核酸(複数可))との間の十分に強い相互作用を意味する。安定的及び特異的な結合は、「プルダウン」アッセイ(例えば、GSTプルダウン)、酵母−2−ハイブリッドアッセイ、酵母−3−ハイブリッドアッセイ、ELISA等などの当業者が常用の技術により確認することができる。互いに対する「特異的結合」の特性を有する分子は、互いに「特異的に結合する」と言うことができる。 形質転換:本明細書で用いているように、「形質転換」という用語は、1つ又は複数の核酸分子(複数可)の細胞内への転移を意味する。核酸分子の細胞ゲノム内への取込みにより、又はエピソーム複製のいずれかにより、核酸分子が細胞により安定的に複製される状態になる場合に、細胞は、細胞内に転移した核酸分子により「形質転換」される。本明細書で用いているように、「形質転換」という用語は、核酸分子をそのような細胞に導入することができるすべての技術を含む。例は、ウイルスベクターによるトランスフェクション、プラスミドベクターによる形質転換、エレクトロポレーション(Frommら(1986年)、Nature、319巻、791〜3頁)、リポフェクション(Felgnerら(1987年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84巻、7413〜7頁)、マイクロインジェクション(Muellerら(1978年)、Cell、15巻、579〜85頁)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介転移(Fraleyら(1983年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、80巻、4803〜7頁)、直接DNA取込み及び微粒子ボンバードメント(Kleinら(1987年)、Nature、327巻、70頁)を含むが、これらに限定されない。 導入遺伝子:外因性核酸配列。いくつかの例において、導入遺伝子は、TGA1又はTGA4ポリペプチドをコードする配列であり得る。いくつかの例において、導入遺伝子は、TGA1及び/又はTGA4に特異的に結合する調節DNAエレメントに作動可能に連結した対象の遺伝子(例えば、リポーター遺伝子又は農業上重要な植物の形質に寄与する遺伝子)をコードし得る。これら及び他の例において、導入遺伝子は、導入遺伝子コーディング配列に作動可能に連結した1つ又は複数の調節配列を含み得る。本開示の目的のために、「遺伝子導入」という用語は、生物(例えば、植物)に適用するために用いる場合、外因性核酸配列を含む生物に適用される。いくつかの例において、外因性核酸配列を含む生物は、分子形質転換技術により核酸配列が導入された生物であり得る。他の例において、外因性核酸配列を含む生物は、例えば、遺伝子移入又は植物における人工授粉により核酸配列が導入された生物であり得る。 ベクター:本明細書で用いているように、「ベクター」という用語は、例えば、形質転換細胞を得るために、細胞に導入することができる核酸分子を意味する。ベクターは、複製起点のような、宿主細胞内でそれが複製することを可能にする核酸配列を含み得る。ベクターの例は、プラスミド、コスミド、バクテリオファージ及び外因性DNAを細胞中に運ぶウイルスを含むが、これらに限定されない。ベクターは、1つ若しくは複数の遺伝子、アンチセンス分子及び/又は選択可能マーカー遺伝子並びに当技術分野で公知の他の遺伝要素も含み得る。ベクターは、細胞に形質導入し、形質転換し、又は感染させ、それにより、細胞に核酸分子及び/又はベクターによりコードされるタンパク質を発現させる。ベクターは、細胞内への核酸分子の侵入を達成する助けとなる物質を場合によって含む(例えば、リポソーム、タンパク質コーティング等)。 特に示さない又は暗示しない限り、「a」、「an」及び「the」という語は、本明細書で用いているように、「少なくとも1つ」を意味する。 特に説明しない限り、本明細書で用いているすべての技術及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般的に理解されているのと同じ意味を有する。分子生物学における一般的用語の定義は、例えば、Lewin B.、Genes V、Oxford University Press、1994年(ISBN 0-19-854287-9); Kendrewら(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、Blackwell Science Ltd.、1994年(ISBN 0-632-02182-9);及びMeyers R. A.(編)、Molecular Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference、VCH Publishers, Inc.、1995年(ISBN 1-56081-569-8)に見いだすことができる。 IV.窒素応答調節因子TGA1及びTGA4 本開示は、転写因子TGA1及びTGA4の新規及び予期しない使用を活用する組成物及び方法を提供する。本明細書で開示するように、TGA1及びTGA4は、環境における特定の窒素源に応答する多くの特定の標的遺伝子の発現に影響を及ぼす転写因子である。したがって、例えば、TGA1及び/又はTGA4は、植物細胞、植物物質、植物組織又は植物の硝酸及び/又は亜硝酸応答を調節するために用いることができる。本明細書で述べるTGA1及びTGA4の特性は、例えば、変更された硝酸及び亜硝酸応答表現型を有する遺伝子導入植物を得るために、及び対象の遺伝子が、植物又は植物細胞に利用可能な窒素源(又はその欠如)によって少なくとも一部調節される、遺伝子導入植物又は植物細胞を得るために用いることができる。例えば、植物における一次根及び/又は側根の成長を開始し、及び/又は増大させるためにTGA1及び/又はTGA4を植物において発現又は過剰発現させることができる。 いくつかの実施形態は、TGA1塩基性ロイシンジッパー転写因子ポリペプチドを含む。特定の実施形態によるTGA1ポリペプチドは、配列番号1(シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)TGA1)と整列させるとき、漸増(increasing)同一性百分率を示すアミノ酸配列を含む。これら及び他の実施形態内の特定のアミノ酸配列は、配列番号1との例えば、少なくとも約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する配列を含み得る。例えば、いくつかの実施形態は、配列番号2(ハロフィラ(Thellungiella halophila))、配列番号3(ミヤマハタザオ(Arabidopsis lyrata))、配列番号4(カブ(Brassica rapa))、配列番号5(アラビドプシス・アレノサ(Arabidopsis arenosa))、配列番号6(ブドウ(Vitis vinifera))、配列番号7(インゲンマメ(Phaseolus vulgaris))、配列番号8(タルウマゴヤシ(Medicago truncatula))、配列番号9(ダイズ(Glycine max))及び配列番号10(ヒマ(Ricinus communis))からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むTGA1ポリペプチドを含む。 いくつかの実施形態は、TGA4塩基性ロイシンジッパー転写因子ポリペプチドを含む。特定の実施形態によるTGA4ポリペプチドは、配列番号11(シロイヌナズナ(A.thaliana)TGA4)と整列させるとき、漸増同一性百分率を示すアミノ酸配列を含む。これら及び他の実施形態内の特定のアミノ酸配列は、配列番号11との例えば、少なくとも約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する配列を含み得る。例えば、いくつかの実施形態は、配列番号12(タルウマゴヤシ(M.truncatula))、配列番号13(ブドウ(V.vinifera))及び配列番号14(トウモロコシ(Zea mays))からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むTGA4ポリペプチドを含む。 多くの実施形態において、配列番号1(TGA1ポリペプチド)及び/又は配列番号11(TGA4ポリペプチド)と整列させるとき前述の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドは、硝酸及び亜硝酸応答調節活性を有するペプチド内に又はそのようなペプチドの一部に含まれる。TGA1ポリペプチドは、例えば、配列番号1との閾配列同一性を有するポリペプチド配列に関する配列データベースを検索することによって同定することができる。TGA4ポリペプチドは、例えば、配列番号11との特定の配列同一性を有するポリペプチド配列に関する配列データベースを検索することによって同定することができる。有用な配列データベースは、当業者に公知の多くの方法のいずれか(例えば、NCBIのBLAST(登録商標)ツールを用いて)により検索することができる。他のデータベースは、様々な公的及び私的な商業的情報源により多くの植物及び他の生物について利用可能である。当業者により理解されるように、TGA1及びTGA4は、相同タンパク質であり、したがって、配列番号1又は配列番号11と配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むと認められる特定のポリペプチドは、配列番号1及び11のその他との配列同一性も共有し得る。 いくつかの実施形態は、上述のような、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む。例えば、いくつかの実施形態における核酸配列は、配列番号15(シロイヌナズナ(A.thaliana)TGA1)及び/又は配列番号16(シロイヌナズナ(A.thaliana)TGA4)と整列させるとき、漸増同一性百分率を示す。これら及び他の実施形態内の特定の核酸配列は、配列番号15及び/又は配列番号16との例えば、及び制限なしに、少なくとも約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する配列を含み得る。 TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む多数の核酸は、当業者が容易に同定することができる。例えば、核酸分子は、例えば、コドン同義性に従って許容されるヌクレオチド置換を導入することにより、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列を実質的に変更せずに修飾することができる。したがって、所定のアミノ酸配列を有する任意のTGA1又はTGA4ポリペプチドを多くの重複ヌクレオチド配列のいずれかに直接的にリバースエンジニアリングすることができることは、理解される。さらなる例として、TGA1又はTGA4ポリペプチドをコードする遺伝子は、多くの利用可能な植物ゲノムライブラリ、cDNAライブラリ、ESTライブラリなどのいずれかから選択することができ(例えば、配列番号14若しくは配列番号15との相同性により、又はコードされたポリペプチドと配列番号1〜14の1つ若しくは複数のものとの配列類似性により)、又は、そのような遺伝子は、分子生物学における信頼でき及び周知の技術により生物からクローニングすることができる。 ありとあらゆるTGA1ポリペプチド、TGA4ポリペプチド及びそれをコードする核酸分子は、本発明の特定の実施形態において使用される。 いくつかの実施形態は、調節ヌクレオチド配列に作動可能に連結されているヌクレオチド配列に硝酸及び/又は亜硝酸制御を付与するように、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドに特異的に結合する調節ヌクレオチド配列を含む核酸を含む。いくつかの例において、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドに特異的に結合する調節ヌクレオチド配列は、TGA1及び/又はTGA4により調節される遺伝子、例えば、及び制限なしに、NRT2.1、NRT2.2及びNIRからなる群から選択される遺伝子の内因性シロイヌナズナ(A.thaliana)プロモーター内に含まれる。調節ヌクレオチド配列へのTGA1及び/又はTGA4ポリペプチドの特異的結合は、当業者に公知の任意の技術、例えば、クロマチン免疫沈降又はEMSAにより検出することができる。 いくつかの実施形態において、本発明の核酸分子は、遺伝子調節エレメント(例えば、プロモーター)を含む。プロモーターは、ベクター構築物が挿入される細胞型に基づいて選択することができる。細菌、酵母及び植物において機能するプロモーターは、当技術分野で周知である。プロモーターはまた、それらの調節上の特徴に基づいて選択することができる。そのような特徴の例は、転写活性の増大、誘導性、組織特異性及び発育段階特異性を含む。植物において、誘導性であり、ウイルス又は合成由来であり、構成的に活性であり、時間的に調節され、空間的に調節されるプロモーターが記載された。例えば、Poszkowskiら(1989年)、EMBO J.、3巻、2719頁、Odellら(1985年)、Nature、313巻、810頁及びChauら(1989年)、Science、244巻、174〜81頁を参照のこと。 有用な誘導性プロモーターは、例えば、解毒剤(置換ベンゼンスルホンアミド除草剤)の施用により誘導されるサリチル酸又はポリアクリル酸により誘導されるプロモーター、熱ショックプロモーター、ホウレンソウ硝酸レダクターゼ転写性核酸分子配列に由来する硝酸塩誘導性プロモーター、ホルモン誘導性プロモーター並びにRuBPカルボキシラーゼ及びLHCPファミリーの小サブユニットに関連する光誘導性プロモーターを含む。 他の有用なプロモーターは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の腫瘍誘導プラスミド上で運ばれる、ノパリンシンターゼ、マンノピンシンターゼ及びオクトピンシンターゼプロモーター;CaMV19S及び35Sプロモーター;増強CaMV35Sプロモーター;フィグオート(Figwort)モザイクウイルス35Sプロモーター;リブロース−1,5−ビスホスフェートカルボキシラーゼの小サブユニット(ssRUBISCO)の光誘導性プロモーター;タバコのEIF−4Aプロモーター(Mandelら(1995年)、Plant Mol. Biol.、29巻、995〜1004頁);トウモロコシスクロースシンテターゼ;トウモロコシアルコールデヒドロゲナーゼI;トウモロコシ光収穫複合体(light harvesting compolex);トウモロコシ熱ショックタンパク質;シロイヌナズナ属(Arabidopsis)のキチナーゼプロモーター;LTP(脂質輸送タンパク質)プロモーター;ペチュニアカルコンイソメラーゼ;マメグリシンリッチプロテイン1;ジャガイモパタチン;ユビキチンプロモーター;並びにアクチンプロモーターを含む。特に有用なプロモーターは、根特異的プロモーターを含む。 異種遺伝子(複数可)のより高い発現を得るために、遺伝子が発現宿主細胞(例えば、植物細胞、例えば、カノーラ、イネ、タバコ、トウモロコシ、綿及びダイズ)中でより十分に発現するように遺伝子(複数可)をリエンジニアリングすることが好ましい可能性がある。したがって、植物発現のためのTGA1及び/又はTGA4ポリペプチドをコードする遺伝子の設計における任意選択の追加のステップ(すなわち、1つ又は複数の遺伝子調節エレメントの用意に加えて)は、最適発現のための異種遺伝子タンパク質コーディング領域のリエンジニアリングである。特定の実施形態は、最初の(すなわち、非修飾)シロイヌナズナ属(Arabidopsis)遺伝子配列により形質転換された第2の植物種からの植物細胞よりも第2の植物種からの遺伝子導入植物細胞における発現レベルを増加させる(すなわち、より多くのタンパク質を産生する)ように最適化された再設計シロイヌナズナ属(Arabidopsis)遺伝子を含む。 遺伝コードの重複性/同義性によってもたらされる可塑性(すなわち、いくつかのアミノ酸が複数のコドンにより指定される)のため、異なる生物又は生物のクラスにおけるゲノムの進化は、同義コドンの差別的使用をもたらした。この「コドンバイアス」は、タンパク質コーディング領域の平均塩基組成に反映される。例えば、比較的に低いG+C含量を有するゲノムを有する生物は、同義コドンの第3の位置にA又はTを有するより多くのコドンを利用するが、より高いG+C含量を有するそのような生物は、第3の位置にG又はCを有するより多くのコドンを利用する。さらに、mRNA内の「マイナー」コドンの存在が、特にマイナーコドンに対応する荷電tRNAの相対存在量が低い場合に当mRNAの絶対翻訳速度を低下させ得ると考えられる。この推論の拡張は、個々のマイナーコドンによる翻訳速度の減少は、複数のマイナーコドンに対して少なくとも相加的であるということである。したがって、特定の発現宿主における比較的高い相対含量のマイナーコドンを有するmRNAは、それに相応して低い翻訳速度を有することとなる。この速度は、それに相応して低いレベルのコード化タンパク質に反映され得る。 植物細胞(例えば、イネ、タバコ、トウモロコシ、綿及びダイズ)における発現のためにTGA1及び/又はTGA4ポリペプチドをコードする最適化遺伝子を遺伝子工学により改変するに際して、予期される宿主植物(複数可)のコドンバイアスが決定されたならば、有益である。植物ゲノム又は様々な植物遺伝子のタンパク質コーディング領域のコドン分布に関する情報を見いだすことができる、多数の公的に利用できるDNA配列データベースが存在する。 コドンバイアスは、発現宿主がそのタンパク質のアミノ酸をコード化するために用いるコドンの統計的分布である。コドンバイアスは、すべてのアミノ酸に対するコドンと比べた、単一コドンが用いられる頻度として計算することができる。或いは、コドンバイアスは、当該アミノ酸に対するすべての他のコドン(同義コドン)と比べた、特定のアミノ酸をコードするために単一コドンが用いられる頻度として計算することができる。 TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドの植物発現のために最適化コーディング領域を設計するに際して、複数の選択が存在する場合、植物により選ばれる第1の(「第一選択」)コドン並びに選好コドンの第2、第3、第4等の選択を決定すべきである。次に、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドのアミノ配列をコードする新たなDNA配列を設計することができ、新たなDNA配列は、アミノ配列内の各位置におけるアミノ酸を指定する発現宿主選好(第1の選好、第2の選好、第3の選好又は第4の選好等)コドンの置換が、天然DNA配列(ポリペプチドをコードする)と異なる。次に、新たな配列を、修飾によって作られた可能性がある制限酵素部位について解析する。これらのコドンを次の選好コドンで置換することによって同定された推定制限部位をさらに修飾して、制限部位を除去する。異種配列の転写又は翻訳に影響を及ぼし得る配列における他の部位は、エクソン:イントロン接合(5’若しくは3’)、ポリA付加シグナル及び/又はRNAポリメラーゼ終結シグナルである。配列をさらに解析し、修飾して、TA又はCGダブレットの頻度を減少させる。これらのダブレットに加えて、約6個を超え、同じであるG又はCヌクレオチドを有する配列ブロックも配列の転写又は翻訳に悪影響を及ぼし得る。したがって、これらのブロックは、第1又は第2選択等のコドンを次の好ましい最適のコドンで置換することにより有利に修飾される。 上述のような方法は、遺伝子が植物において最適に発現するように当業者が個々の植物に異質である遺伝子(複数可)を修飾することを可能にするものである。方法は、PCT国際特許公開番号WO97/13402A1にさらに説明されている。したがって、いくつかの実施形態のTGA1及び/又はTGA4遺伝子と機能的に同等である最適化合成遺伝子を植物及び植物細胞を含む宿主を形質転換するために用いることができる。さらに、TGA1及びTGA4をコードするヌクレオチド配列も最初のアミノ酸配列からin silicoで設計することができる。合成遺伝子の産生に関するさらなる手引きは、例えば、米国特許第5,380,831号に見いだすことができる。 TGA1及び/又はTGA4をコードするヌクレオチド配列が紙上又はin silicoで設計されたならば、設計された配列と配列が正確に対応するように該配列を含む実際の核酸分子を実験室において合成することができる。そのような合成DNA分子は、あたかもそれらが自然又は天然源から得られたかのように、クローニングし、他の方法で正確に操作することができる。 V. TGA1及び/又はTGA4による植物窒素応答の媒介 いくつかの実施形態は、TGA1及びTGA4が、正常な硝酸塩調節遺伝子発現(例えば、NRT2.1、NRT2.2及びNIRの発現)のために、並びに硝酸塩及び亜硝酸塩に対する植物の応答を生成させるために必要であるという発見を活用している。特定の実施形態において、例えば、及び制限なしに、TGA1若しくはTGA4をコードする核酸を細胞又は生物に導入することにより、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを細胞又は生物に導入することにより、並びに/又はシグナル(複数可)と細胞若しくは生物におけるTGA1又はTGA4をコードする核酸に作動可能に連結された調節エレメントとの相互作用によるTGA1及び/又はTGA4ポリペプチドの発現を促進するのに十分な正若しくは負のシグナルを与えることにより、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを細胞又は生物において発現又は過剰発現させることができる。さらなる実施形態において、例えば、及び制限なしに、TGA1及び/又はTGA4をコードする核酸(例えば、TGA1及び/又はTGA4遺伝子(複数可))を破綻させる、突然変異させる又は不活性化することにより、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドをコードする核酸を標的とするアンチセンス核酸を細胞又は生物に導入することにより、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを抗体又は他の特異的結合タンパク質と結合させることにより細胞又は生物の細胞機構からTGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを物理的に除去することにより、並びに/又はシグナル(複数可)と細胞若しくは生物におけるTGA1又はTGA4をコードする核酸に作動可能に連結された調節エレメントとの相互作用によるTGA1及び/又はTGA4ポリペプチドの発現を減少又は無くすのに十分な正又は負のシグナルを与えることにより、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを細胞又は生物においてノックアウト又は過小発現させることができる。 いくつかの実施形態において、硝酸トランスポーターNRT2.1及びNRT2.2の1つ又は両方の発現を促進するために、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを植物細胞又は生物において発現又は過剰発現させることができる。さらなる実施形態において、硝酸トランスポーターNRT2.1及びNRT2.2の1つ又は両方の発現を減少又は無くすために、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを植物細胞又は生物において除去又は過小発現させることができる。 NRT2.1及び/又はNRT2.2の発現の増加は、多くの理由のために望ましい場合があり得る。その硝酸塩輸送機能に加えて、NRT2.1トランスポーターは、側根の発生及び側根の成長を統合する役割を果たす(Littleら(2005年)、前出、Remansら(2006年)、Plant Physiol.、140巻、909〜21頁)。nrt2.1/nrt2.2シロイヌナズナ属(Arabidopsis)突然変異系統は、硝酸塩を添加した培地中で側根成長の減少を示した(Liら(2007年)、前出)。したがって、TGA1及び/又はTGA4の発現のみを変化させることによる又は植物の栄養状態の付随する変化と併せてその発現を変化させることによるNRT2.1及びNRT2.2のレベルの操作は、植物における根の成長及び発育プログラムの変化をもたらし得る。 いくつかの実施形態において、少なくとも1つの他の窒素応答遺伝子の発現を促進するために、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを植物細胞又は生物において発現又は過剰発現させることができる。例えば、図5に示す遺伝子の発現を促進するために、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを植物細胞又は生物において発現又は過剰発現させることができる。さらなる実施形態において、少なくとも1つの他の窒素応答遺伝子の発現を減少又は無くすために、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを植物細胞又は生物において除去又は過小発現させることができる。例えば、図5に示す遺伝子の発現を減少又は無くすために、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを植物細胞又は生物において除去又は過小発現させることができる。 いくつかの実施形態において、一次根及び/又は側根の成長(例えば、硝酸塩に応答する)に影響を及ぼすために、TGA1及び/又はTGA4の発現を植物細胞又は植物において操作することができる。例えば、一次根及び/又は側根の成長を刺激し、及び/又は増加させるために、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを植物細胞又は生物において発現又は過剰発現させることができる。逆に、一次根及び/又は側根の成長を無くし、及び/又は減少させる(例えば、硝酸塩に応答する一次根及び/又は側根の成長を減少させる)ために、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを植物細胞又は生物において除去又は過小発現させることができる。 いくつかの実施形態において、窒素制限条件下の植物細胞又は植物の成長に影響を及ぼすために、TGA1及び/又はTGA4の発現を植物細胞又は植物において操作することができる。例えば、窒素制限条件下の植物の成長を刺激し、及び/又は増加させるために、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを植物細胞又は生物において発現又は過剰発現させることができる。逆に、窒素制限条件下の植物の成長を無くし、及び/又は減少させる(例えば、硝酸塩に応答する植物の成長を減少させる)ために、TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを植物細胞又は生物において除去又は過小発現させることができる。 TGA1は、リン酸化(Popescuら(2009年)、Genes Dev.、23巻、80〜92頁)又はS−ニトロシル化(Lindermayrら(2010年)、Plant Cell、22巻、2894〜907頁)により翻訳後修飾することができる。これら及び他の翻訳後修飾は、TGA1及び/又はTGA4の調節に役割を果たし得る。例えば、生理学的一酸化窒素(NO)ドナーである、S−ニトロソグルタチオンによる処理の後に、TGA1をS23ニトロシル化することができることが最近示された(Lindermayrら(2010年)、前出)。このS23ニトロシル化は、TGA1のDNA結合活性を増大させる(同上)。NOの産生がNR活性に関連しており(Kolbert及びErdei(2008年)、Plant Signal Behav.、3巻、972〜3頁)、亜硝酸塩がNOの形成のための基質としての役割を果たす(Yamasakiら(1999年)、Trends Plant Sci.、4巻、128〜9頁、Rockelら(2002年)、J. Exp. Bot.、53巻、103〜10頁、Leaら(2004年)、Planta、219巻、59〜65頁、Meyerら(2005年)、Photosynth. Res.、83巻、181〜9頁、Planchetら(2005年)、Plant J.、41巻、732〜43頁)ため、硝酸塩由来代謝物(例えば、亜硝酸塩又はNO)は、硝酸/亜硝酸転写応答を達成するためにTGA1及びTGA4転写因子活性を活性化することに関与している可能性がある。 したがって、特定の実施形態は、TGA1及び/又はTGA4の活性に影響を及ぼすために、TGA1及び/又はTGA4の翻訳後修飾の操作又は模倣を含む。さらに、例えば、熟練医師の裁量内で影響を所望のレベルに調整するために、TGA1及び/又はTGA4発現と並行して硝酸応答経路の上流シグナル伝達分子を備えるか又は除去することができる。 特定の理論に拘束されるものでないが、TGA1及びTGA4は、硝酸塩処理に応答して活性化される少なくとも2つの調節機構の一部であり得る。第1に、硝酸塩及び/硝酸塩由来シグナル(例えば、亜硝酸塩又はNO)は、TGA1及びTGA4転写因子を活性化して、それらの標的遺伝子のプロモーター領域へのTGA1及びTGA4の結合を可能にするであろう。その結果として、これらの硝酸応答標的遺伝子の発現が増加して、細胞(及び細胞を含む植物)を硝酸塩に富む環境に蓄積させるであろう。第2に、硝酸塩及び/又は硝酸塩由来シグナルは、比較的より長い期間にわたりTGA1及びTGA4遺伝子発現の誘導ももたらし得る。この遺伝子発現の誘導は、独立した調節機能の一部であり得る。これらの応答の時間差は、調節される過程の性質(例えば、代謝対発育)及び/又は異なる空間的機能(局所的対全身性)に関連し得る。したがって、特定の実施形態において、1つ又は複数の特定の所望の硝酸応答(複数可)を達成するために、TGA1及び/又はTGA4を植物又は細胞において時間依存的様式で操作することができる。 VI.TGA1及び/又はTGA4を含む植物、植物部分及び植物物質 いくつかの実施形態は、1つ又は複数のTGA1及び/又はTGA4ポリペプチド(述べたような、前出)並びに 又はTGA1及び/又はTGA4ポリペプチドをコードする核酸配列を含む1つ又は複数の核酸分子(複数可)を含む形質転換細胞を産生する方法を対象とする。そのような核酸分子は、例えば、プロモーターなどの非コーディング調節エレメントも含み得る。他の配列も非コーディング調節エレメント及び転写可能核酸分子配列とともに細胞に導入することができる。これらの他の配列は、3’転写ターミネーター、3’ポリアデニル化シグナル、他の非翻訳配列、トランジット又は標的配列、選択マーカー、エンハンサー及びオペレーターを含み得る。 形質転換の方法は、一般的に適切な宿主細胞を選択し、宿主細胞を組換えベクターにより形質転換し、形質転換宿主細胞を得るステップを含む。細胞へのDNAの導入のための技術は、当業者に周知である。これらの方法は、一般的に以下の5つのカテゴリーに分類することができる:(1)化学的方法(Graham及びVan der Eb(1973年)、Virology、54巻(2号)、536〜9頁、Zatloukalら(1992年)、Ann. N.Y. Acad. Sci.、660巻、136〜53頁)、(2)マイクロインジェクション(Capechi(1980年)、Cell、22巻(2号)、479〜88頁)、エレクトロポレーション(Wong及びNeumann(1982年)、Biochim. Biophys. Res. Commun.、107巻(2号)、584〜7頁、Frommら(1985年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、82巻(17号)、5824〜8頁、米国特許第5,384,253号)及び粒子加速(Johnston及びTang(1994年)、Methods Cell Biol.、43巻(A)、353〜65頁、Fynanら(1993年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻(24号)、11478〜82頁)などの物理的方法、(3)ウイルスベクター(Clapp(1993年)、Clin. Perinatol.、20巻(1号)、155〜68頁、Luら(1993年)、J. Exp. Med.、178巻(6号)、2089〜96頁、Eglitis及びAnderson(1988年)、Biotechniques、6巻(7号)、608〜14頁)、(4)リポーター媒介メカニズム(Curielら(1992年)、Hum. Gen. Ther.、3巻(2号)、147〜54頁、Wagnerら(1992年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻(13号)、6099〜103頁)並びに(5)アグロバクテリウム(Agrobacterium)を用いるなどの細菌媒介メカニズム。或いは、核酸は、植物の生殖器官に直接注入することにより花粉に直接導入することができる(Zhouら(1983年)、Methods in Enzymology、101巻、433頁、Hess(1987年)、Intern. Rev. Cytol.、107巻、367頁、Luoら(1988年)、Plant Mol. Biol. Reporter、6巻、165頁、Penaら(1987年)、Nature、325巻、274頁)。他の形質転換の方法は、例えば、米国特許第5,508,184号に示されているようなプロトプラスト形質転換を含む。核酸分子を未熟胚に注入することもできる(Neuhausら(1987年)、Theor. Appl. Genet.、75巻、30頁)。 植物細胞の形質転換に最も一般的に用いられている方法は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介DNA転移法(Fraleyら(1983年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、80巻、4803頁)(米国特許第5,824,877号、米国特許第5,591,616号、米国特許第5,981,840号及び米国特許第6,384,301号に例示されている)及びバイオリスティック又は微粒子ボンバードメント媒介法(すなわち、遺伝子銃)(米国特許第5,550,318号、米国特許第5,538,880号、米国特許第6,160,208号、米国特許第6,399,861号及び米国特許第6,403,865号に記載されているような)である。一般的に、核形質転換が望ましいが、葉緑体又はアミロプラストなどの色素体を特に形質転換することが望ましい場合、例えば、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)、タバコ、ジャガイモ及びアブラナ属(Brassica)種などの特定の植物種における所望の核酸分子の微粒子媒介送達を用いて、植物色素体を形質転換することができる。 アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属に属する遺伝子組換え土壌細菌を使用することにより達成される。いくつかのアグロバクテリウム属(Agrobacterium)種は、DNAの任意の所望の断片を多くの植物種内に運ぶように遺伝子工学手法により改変することができる「T−DNA」として公知の特定のDNAの転移を媒介する。T−DNA媒介性病原の過程を特徴付ける主要な事象は、病原性遺伝子の誘導並びにT−DNAのプロセッシング及び転移である。この過程は、多くのレビューの主題である。例えば、Ream(1989年)、Ann. Rev. Phytopathol.、27巻、583〜618頁、Howard及びCitovsky(1990年)、Bioassays、12巻、103〜8頁、Kado(1991年)、Crit. Rev. Plant Sci.、10巻、1〜32頁、Zambryski(1992年)、Annual rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol.、43巻、465〜90頁、Gelvin(1993年)、In Transgenic Plants、Kung及びWu編、Academic Press、San Diego、CA、49〜87頁、Binns及びHowitz(1994年)、In Bacterical Pathogenesis of Plants and Animals、Dang編、Berlin: Springer Verlag、119〜38頁、Hooykaas及びBeijersbergen(1994年)、Ann. Rev. Phytopathol.、32巻、157〜79頁、Lessl及びLanka(1994年)、Cell、77巻、321〜4頁並びにZupan及びZambryski(1995年)、Annual Rev. Phytopathol.、27巻、583〜618頁を参照のこと。 形質転換の方法論に無関係に形質転換植物細胞を選択又は評価するために、細胞に導入されるDNAは、他の状態では有毒な化合物に対する耐性を植物組織に付与する化合物を産生するために再生可能植物組織において機能する遺伝子を含んでいてもよい。選択可能、スクリーニング可能又は評価可能マーカーとして用いる対照の遺伝子は、β−グルクロニダーゼ(GUS)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ及び抗生物質又は除草剤耐性遺伝子を含むが、これらに限定されない。抗生物質耐性遺伝子の例は、ペニシリン、カナマイシン(及びネオマイシン、G418、ブレオマイシン)、メトトレキセート(及びトリメトプリム)、クロラムフェニコール並びにテトラサイクリンに耐性を付与する遺伝子を含む。例えば、グリホセート耐性は、除草剤耐性遺伝子により付与され得る(Della-Cioppaら(1987年)、Bio/Technology、5巻、579〜84頁)。例えば、及び制限なしに、ホスフィノトリシン、ビアラホスに対する耐性及び正の選択メカニズム(Joersbroら(1998年)、Mol. Breed.、4巻、111〜7頁)を含む、他の選択デバイスも導入することができ、本発明の実施形態の範囲内にあると考えられる。 選択又はスクリーニングにより同定し、再生を支持する適切な培地中で培養した形質転換細胞は、次に植物中で成熟させることができる。 今回開示する方法は、任意の形質転換可能な植物細胞又は組織とともに用いることができる。形質転換可能な細胞及び組織は、本明細書で用いているように、さらに増殖して、植物になることができる細胞又は組織を含むが、これらに限定されない。当業者は、外因性DNAの挿入後及び植物細胞又は組織が分化植物を形成し得る適切な培養条件で、多くの植物細胞又は組織が形質転換可能であることを認識している。これらの目的に適する組織は、未熟胚、胚盤組織、懸濁細胞培養、未熟花部、茎頂分裂組織、節外植片、カルス組織、胚軸組織、子葉、根及び葉を含み得るが、これらに限定されない。 形質転換植物プロトプラスト又は外植片からの植物の再生、発育及び栽培は、当技術分野で公知である(Weissbach及びWeissbach(1988年)、Methods for Plant Molecular Biology、(編) Academic Press, Inc.、San Diego、CA; Horschら(1985年)、Science、227巻、1229〜31頁)。この再生及び発育過程は、一般的に形質転換細胞を選択し、根付き幼植物の段階までの胚の発育の通常の段階までそれらの細胞を培養するステップを含む。遺伝子導入胚及び種子も同様に再生させる。この方法において、形質転換細胞は、一般的に、成功裏に形質転換された細胞を選択し、苗条の再生を誘発する選択培地の存在下で培養する(Fraleyら(1993年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、80巻、4803頁)。これらの苗条は、一般的に2〜4カ月以内に得られる。得られた遺伝子導入根付き苗条をその後、土壌などの適切な植物増殖培地に植える。選択剤への曝露で生残した細胞又はスクリーニングアッセイで陽性と評価された細胞は、植物の再生を支持する培地中で培養することができる。次いで、苗条を、選択剤及び細菌の増殖を防ぐための抗生物質を含む適切な根誘導培地に移すことができる。苗条の多くは、根を発達させる。次いで、これらを根の持続的な発達を可能にする土壌又は他の培地に移植する。上で略述した方法は、用いられる個々の植物の系統によって一般的に異なり、したがって、方法の詳細は、当業者の裁量内にある。 再生遺伝子導入植物は、同型接合性遺伝子導入植物を得るために自家受粉させることができる。或いは、再生遺伝子導入植物から得られる花粉は、好ましくは農学的に重要な種の近交系の非遺伝子導入植物と交配させることができる。逆に、非遺伝子導入植物からの花粉を再生遺伝子導入植物に受粉するのに用いることができる。 遺伝子導入植物は、形質転換核酸配列をその子孫に伝え得る。遺伝子導入植物は、好ましくは形質転換核酸配列に対して同型接合性であり、当配列を、有性生殖により、またその結果として、その子孫のすべてに伝達する。子孫は、遺伝子導入植物によって産生された種子から生育することができる。これらの付加的な植物は、植物の真の育種系統を得るために自家受粉させることができる。 これらの植物からの子孫は、とりわけ、遺伝子発現について評価することができる。遺伝子発現は、ウエスタンブロッティング、ノーザンブロッティング、免疫沈降及びELISAなどのいくつかの一般的な方法により検出することができる。形質転換植物は、導入されたDNAの存在並びに本発明の核酸分子及びアミノ酸分子によってもたらされる発現レベル及び/又は脂肪酸プロファイルについても解析することができる。当業者は、形質転換植物の解析に利用可能な多くの方法を知っている。例えば、植物の解析の方法は、サザンブロット又はノーザンブロット、PCRベースのアプローチ、生化学的アッセイ、表現型スクリーニング法、実地評価及び免疫診断アッセイを含むが、これらに限定されない。 双子葉植物を特異的に形質転換する方法は、当業者に周知である。これらの方法を用いる形質転換及び植物再生は、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)のメンバー、綿(Gossypium hirsuytum)、ダイズ(Glycine max)、ラッカセイ(Arachis hypogaea)及びアブラナ属(Brassica)のメンバーを含むが、これらに限定されない多くの作物について記載された。主としてアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)を用いて双子葉植物を形質転換し、遺伝子導入植物を得る方法は、綿(米国特許第5,004,863号、米国特許第5,159,135号、米国特許第5,518,908号)、ダイズ(米国特許第5,569,834号、米国特許第5,416,011号、McCabeら(1988年)、Biotechnology、6巻、923頁、Christouら(1988年)、Plant Physiol.、87巻、671〜4頁)、アブラナ属(Brassica)(米国特許第5,463,174号)、ラッカセイ(Chengら(1996年)、Plant Cell Rep.、15巻、653〜7頁、McKentlyら(1995年)、Plant Cell Rep.、14巻、699〜703頁)、パパイヤ及びナシ(Grant(1995年)、Plant Cell Rep.、15巻、254〜8頁)について公表された。 単子葉植物を形質転換する方法も当業者に周知である。これらの方法を用いる形質転換及び植物再生は、オオムギ(Hordeum vulgarae)、トウモロコシ(Zea mays)、オートムギ(Avena saytiva)、カモガヤ(Dactylis glomerata)、イネ(Oryza sativa、インディカ及びジャポニカ品種を含む)、ソルガム(Sorghum bicolor)、サトウキビ(Saccharum sp)、ヒロハノウシノケグサ(Festuca arundinacea)、芝生種(例えば、ハイコヌカグサ(Agrostis stolonifera)、ケンタッキーブルーグラス(Poa pratensis)、イヌシバ(Stenotaphrum secundatum))、コムギ(Triticum aestivum)及びムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa)を含むが、これらに限定されない多くの作物について記載された。任意の数の関心のある標的作物のための安定的な遺伝子導入植物を生産するために、多くの形質転換の方法を用いることができ、改変することができることは、当業者には明らかである。 今回開示する方法に用いるためにあらゆる植物を選択することができる。本発明による改変に好ましい植物は、例えば、及び制限なしに、油料種子植物、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)の種(例えば、シロイヌナズナ(A.thaliana))、ルリジサ(Borage spp.)、カノーラ(Brassica spp.)、カストール(Ricimus communis)、ココアマメ(Theobroma cacao)、トウモロコシ(Zea mays)、綿(Gossypium spp)、ハマナ属種(Crambe spp.)、クフェア属種(Cuphea spp.)、アマ(Linum spp.)、レスクェレラ(Lesquerella)及びリムナンテス(Limnanthes)属種、リノラ、ノウゼンハレン(Tropaeolum spp.)、マツヨイグサ属種(Oenothera spp.)、オリーブ(Olea spp.)、ヤシ(Elaeis spp.)、ラッカセイ(Arachis spp.)、ナタネ、ベニバナ(Carthamus spp.)、ダイズ(Glycine及びSoja spp.)、ヒマワリ(Helianthus spp.)、タバコ(Nicotiana spp.)、ベルノニア属種(Vernonia spp.)、コムギ(Triticum spp.)、オオムギ(Hordeum spp.)、イネ(Oryza spp.)、オートムギ(Avena spp.)、ソルガム(Sorghum spp.)及びライムギ(Secale spp.)又はイネ科(Gramineae)の他のメンバーを含む。 任意の数の関心のある標的作物から安定的な遺伝子導入植物を生産するために、多くの形質転換の方法を用いることができ、改変することができることは、当業者には明らかである。 以下の実施例は、特定の個別の特徴及び/又は実施形態を例示するために記載する。これらの実施例は、本発明を記載する個別の特徴又は実施形態に限定すると解釈すべきではない。[実施例] 材料及び方法 硝酸塩調節遺伝子を予測するためのバイオインフォマティクス解析:硝酸塩調節遺伝子を特定するために植物遺伝子相互作用のネットワークモデルを用いてバイオインフォマティクス解析を実施した。モデルの予測を充実させるために、硝酸塩処理に対応する利用可能なマイクロアレイ発現データを用いた(Wangら(2003年)、前出、Scheibleら(2004年)、前出、Wangら(2004年)、前出、Gutierrezら(2007年)、前出)。 第1に、すべてのシロイヌナズナ属(Arabidopsis)転写因子遺伝子を選択した。第2に、硝酸塩により有意に調節された遺伝子を選択した。第3に、マイクロアレイ解析のそれぞれにおいて処理及び対照実験を比較した場合に認められた大きさ(変化倍率)に基づいて順位スコアを遺伝子に割り当てた。第4に、ネットワークモデルで認められた接続の数に基づいて順位スコアを遺伝子に割り当てた(Gutierrezら(2007年)、前出)。高度に接続された遺伝子は、「調節ハブ」であり得る(Barabasi及びOltvai(2004年)、Nat. Rev. Genet.、5巻、101〜13頁)。第5に、我々は遺伝子ファミリーのサイズに基づいて順位スコアを遺伝子に割り当てた。遺伝子ファミリーサイズは、Gutierrezら(2004年)、Genome Biol.、5巻、R53頁の方法を用いてBLASTCLUST(商標)を用いて決定した。この最後の基準は、機能的冗長性に起因して対応する突然変異体に表現型の欠如の可能性を減少させるために用いた。最後に、すべての独立に得られたスコア順位の中央値を計算し、順位付けし、それにより、遺伝子の最終リストを得た。 植物物質及び生育条件:野生型シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Columbia−0(「Col−0」)をすべての実験に用いた。用いたすべての突然変異体もCol−0バックグラウンドにあった。tga1、tga4単一突然変異体及びtga1/tga4二重突然変異植物は、Duke University、North Carolina、USAのDr.Xinnian Dongによってご好意により提供された(Kesarwani(2007年)、前出)。硝酸還元酵素(NR)−NULL突然変異体系列は、University of California San Diego、La Jolla、CAのNigel Crawford氏によってご好意により提供された(Wangら(2004年)、前出)。内鞘(E374)を標識する用いたGFP系統の源は、University of PennsylvaniaのGFPエンハンサートラップラインから入手できる。 植物は、窒素不含有のMS31修正基礎塩類培地(Phytotechnology Laboratories)を用いて水耕栽培で生育させた。この培地に0.5mMコハク酸アンモニウム及び3mMスクロースを添加した。22℃で長日(16/8時間明/暗)条件下(Percivalインキュベーター中)で14日後に、植物を15日目の明サイクルの開始時に表示した期間にわたり5mM KNO3又は対照としての5mM KClで処理した。硝酸塩処理に対する根の応答の表現型解析のために、幼植物を上述のように生育させ、5mM KNO3又は5mM KCl(陰性対照としての)で3日間処理した。一次根の測定のために、EPSON(商標)Perfection V700 Photoスキャナーを用いて植物の画像を取得し、IMAGEJ(商標)プログラムを用いて根を測定した。側根は、NIKON(商標)Eclipse 80i顕微鏡上のDIC光学系を用いて計数した。 RNA単離及びRT−qPCR:RNAは、製造業者(Invitrogen)の指示に従ってTRIZOL(登録商標)試薬を用いて全根から単離した。cDNA合成は、製造業者(Promega)の指示に従ってImProm−II(商標)逆転写酵素を用いて行った。RT−qPCRは、Stratagene MX3000P qPCRシステムでBrilliant SYBR(登録商標)Green QPCR試薬を用いて行った。RNAレベルは、クラスリン(Atg4g24550)に対して標準化した。図13に示すように、プロットした値は、3つの生物学的複製物(replicates)の平均値±標準偏差に相当する。統計学的に異なる平均値は認められなかった(p<0.05)。 内鞘細胞のプロトプラストの生成及び細胞選別:内鞘を標識したエンハンサートラップラインE374幼植物を上で述べたのと同じ実験条件下で生育させた。唯一の窒素源としての0.5mMコハク酸アンモニウムを用いて水耕法で生育させた植物を15日目の始まりに5mM KNO3又は5mM KClで2時間処理した。根を採取し、Birnbaumら(2005年)、Nat. Methods、2巻、615〜9頁及びGiffordら(2008年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、105巻、803〜8頁の方法に従ってセルラーゼ及びペクトリアーゼを用いて処理することにより、プロトプラストを生成させた。GFP24発現系統は、FACSを用いて単離し、mirVana(商標)全RNA抽出キット(Ambion、1560M)から溶解緩衝液中に直接収集した。cDNA合成及び遺伝子発現解析は、前述のように実施した。 遺伝子発現及びネットワーク解析:cDNA合成、アレイハイブリダイゼーション及びシグナル強度の標準化は、Affymetrixにより提供された説明書に従って実施した。データは、頑健マルチアレイ解析(RMA)を用いてRソフトウエア(Affymetrix)で標準化した(Irizarryら(2003年)、Biostatistics、4巻、249〜64頁)。標準化データを偽発見率を5%として2元ANOVA分析(P<0.05)に供した。ANOVA分析のために、以下のような所定の遺伝子Yの式を考慮したモデルを用いた: Yi=β0T+β1G+β2TG+ε 式1ここで、β0は、総平均値であり、β1、β2及びβ3は、それぞれ処理、遺伝子型及びこれらの2つの因子間の相互作用の効果であり、εは、非説明分散である。 重要な処理を処理する遺伝子の分子ネットワーク:遺伝子型相互作用因子を、VirtualPlant(商標)(virtualplant.org)を介して利用可能な「Gene networks」ツールを用いて構築した。上流遺伝子領域における少なくとも1つの転写因子結合部位及びゲノムにおけるすべての上流配列における平均存在量を上回る転写因子結合部位の過剰表出(2標準偏差)を考慮した、タンパク質−DNA相互作用を含めた。調節相互作用予測を改善するために、その発現値が我々のマイクロアレイ実験において有意に相関していた(P<0.05)転写因子/標的対のみを含めるためにタンパク質−DNA相互作用をフィルターした。得られたネットワークをCytoscape(商標)ソフトウエアを用いて視覚化した(Shannonら(2003年)、Genome Res.、13巻、2498〜504頁)。 クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイ:ChIPアッセイは、Salehら(2008年)、Nat. Protoc.、3巻、1018〜25頁の方法に従って実施した。手短に述べると、唯一の窒素源としての0.5mMコハク酸アンモニウムを用いて2週間水耕法で生育させた植物を15日目の明け方(明期の始まり)に5mM KNO3又は対照としての5mM KClで処理した。根を採取し、直ちに室温で真空中で1%ホルムアルデヒドで10分間固定した。0.125Mの最終濃度にグリシンを加えることにより架橋を停止させた。 クロマチンの単離のために核を準備した。単離したクロマチンを1サイクル及び40%振幅でそれぞれ15秒間にわたり22回音波処理した(Dr.Hielscher GmbH Bioruptor)。せん断クロマチンの小アリコートを除去して、対照(インプット)とした。希釈クロマチンを抗TGA1抗体とともにIPに用い、非特異的IgGを陰性対照として用いた。免疫沈降DNAを次のプライマーの組を用いて定量的PCRにより増幅した:AtNRT2.1(フォワード、5’−CTATCCTGTATCACTGTATGTAACCAG(配列番号17);リバース、5’−GGATGGATAGTCAACAATATGGTTGTG(配列番号18))及びAtNRT2.2(フォワード、5’−CTCAACAGAGGGAACACCGG(配列番号19);リバース、5’−CCCAAAATATATTACAATGTAGTTG(配列番号20))。 多様なデータ型を統合するために順位付けシステムを開発した。このシステムにより、TGA1及びTGA4がシロイヌナズナ属(Arabidopsis)における窒素応答を制御する潜在的に重要な調節因子であると同定された。我々は、重要な窒素応答調節因子としてのTGA1及びTGA4の重要性を実験的に実証し、TGA1及びTGA4が硝酸塩の取込み及び還元に関与する重要な遺伝子の窒素調節を媒介することをさらに実証した。TGA1及びTGA4が硝酸塩に応答する一次根及び側根の成長の重要な調節因子であることも確定された。これらの結果は、TGA1及びTGA4転写因子が植物の根の窒素応答における重要な調節因子であることを確認するものである。 シロイヌナズナ属(Arabidopsis)における硝酸応答調節因子の決定 実施例1で示した方法に従って、硝酸塩処理に対する絶対応答に基づいて転写因子を各実験において順位付けした(最強応答が最良の順位、誘導又は抑制)。各実験の順位を平均して、硝酸塩調節に関する1つのスコアを得た。解析の最上位候補は、硝酸応答に以前に関連付けられなかったbZIP転写因子であるTGA1(At5g65210)であった。bZIPファミリーの密接に関連するメンバーであるTGA4(At5g10030)もより低いスコアを有する順位付けにあることが認められた。それらの報告された機能的冗長性(Kesarwaniら(2007年)、前出)のため、TGA1及びTG4の両方をさらなる解析のために選択した。 硝酸塩はTGA1及びTGA4の発現を調節する 硝酸応答におけるこれらの転写因子の可能な役割を解析するための第1のステップとして、硝酸塩処理後の経時的実験でTGA1及びTGA4 mRNAレベルを測定した。野生型Col−0植物を唯一の窒素源としての0.5mMコハク酸アンモニウムを用いて水耕法で2週間生育させた。15日目の明期の開始時に、植物を5mM KNO3又はKCl(対照)に曝露した。その後1、2、4及び8時間目にRNAの単離のために根組織を採取した。TGA1及びTGA4の転写レベルを定量的RT−qPCRを用いて測定し、クラスリン遺伝子を参照標準として用いた。mRNAレベルは、時間0を基準とした(図1(A〜B))。図1A及び1Bに示すように、TGA1及びTGA4 mRNAの両方がKNO3処理の後に急速に蓄積したが、KCl処理の後には蓄積しなかったことから、これらの遺伝子の発現が根における硝酸塩処理により調節されることがわかる。TGA1及びTGA4の硝酸塩調節がすべてのTGAファミリーメンバーに共通であるかどうかを評価するために(Jakobyら(2002年)、Trends Plant Sci.、7巻、106〜11頁)、TGA2、TGA3、TGA5、TGA6、TGA7、TGA9、TGA10及びPANについてmRNAレベルを測定した。上述と同じ実験条件下で、硝酸塩処理は、図13に示すように、これらの他のTGA転写因子の発現に影響を及ぼさなかった。同じ実験条件下で、硝酸塩処理は、他のTGA転写因子の発現に影響を及ぼさなかった。これらの結果は、硝酸塩処理が根におけるTGA1及びTGA4発現に特異的に影響を及ぼすことを示すものである。 硝酸塩代謝物はTGA1及びTGA4の発現を調節する 観察された調節が硝酸塩に直接的に起因するのか、又は硝酸塩の還元の後に産生したN−代謝物に起因するのかを評価するために、同様な実験をNRヌル突然変異体において行った(Wangら(2004年)、前出)。植物を唯一の窒素源としてのアンモニウムを含む水耕栽培用培地中で生育させた。15日目の明期の開始時に、根を採取する(時間0)か又は250mM KNO3、250mM KCl、5mM NH4Cl又は5mM KClに示した時間にわたり曝露した。根を採取し、全RNAをRT−qPCR解析のために単離し、クラスリン遺伝子をRNAレベルの標準化のために用いた(図1C及び1D)。 NRヌル突然変異体におけるNR活性の欠如は、硝酸塩の還元を妨げ、下流シグナルの産生を阻止する(Wangら(2004年)、前出)。したがって、野生型及びNRヌル突然変異体の両方における硝酸塩に応答する遺伝子は、硝酸塩により直接的に調節される。NRヌル突然変異体においては、TGA1及びTGA4 mRNAレベルの両方が1時間後に硝酸塩処理により誘導された(図1C及び1D)。しかし、硝酸塩処理の後のTGA1及びTGA4 mRNAの蓄積は、野生型植物と比較して、NRヌル突然変異体において有意に低かった。大幅な減少にもかかわらず、硝酸塩処理の後のNRヌル突然変異植物におけるTGA1及びTGA4 mRNAレベルの増加が検出されたことは、硝酸塩及び他のN代謝物によるこれらの遺伝子の発現の調節を示すものである。 TGA1及びTGA4の調節に寄与するさらなるN代謝シグナルを同定するために、我々は、亜硝酸塩又はアンモニウム処理の後のTGA1及びTGA4 mRNAレベルの時間的推移を評価した。以前の試験で、250μM亜硝酸塩が亜硝酸応答遺伝子の誘導のピークを得るための最適濃度であることが示された(Wangら(2007年))。250μM亜硝酸塩処理により、TGA1及びTGA4転写レベルの両方が誘導された(図1E及び1F)。GDH2及び他のアンモニウム応答遺伝子のアンモニウム調節を評価するための報告された条件(Pattersonら、2010年)(図14)を用いたアンモニウム処理後のこれらの遺伝子についてmRNAレベルの有意な変化は認められなかった(図1G及び1H)。これらの結果は、TGA1及びTGA4がシロイヌナズナ属(Arabidopsis)根において硝酸塩及び亜硝酸塩により誘導されることを示すものである。 亜硝酸塩はTGA1及びTGA4の発現を調節する TGA1及びTGA4の調節に寄与するさらなる窒素代謝シグナルを同定するために、亜硝酸塩又はアンモニウム処理の後のTGA1及びTGA4 mRNAレベルの時間的推移を評価した。亜硝酸塩処理は、TGA1及びTGA4転写レベルの両方を誘導した(図2(A〜B))。しかし、いずれのmRNAのレベルの有意な変化もアンモニウム処理の後のTGA1及びTGA4について認められなかった(図2(C〜D))。これらの結果は、TGA1及びTGA4が根において硝酸塩及び亜硝酸塩により誘導されることを示すものであり、これらの転写因子が硝酸塩の取込み及び還元の両方の初期のN−代謝ステップの調節に関与し得ることが示唆される。 TGA1及びTGA4は一次根及び側根の成長を促進する 根の成長及び発達に対するTGA1及びTGA4の影響を評価するために、tga1、tga4単一突然変異体及びtga1/tga4二重突然変異植物の3日KNO3又はKCl(対照)処理に対する応答(Kesarwaniら(2007年)、前出)を解析した。上述と同じ実験条件下で2週間にわたり水耕法で生育させた植物において、及び3日間の5mM KNO3又はKCl処理の後に一次根長を測定した。具体的には、植物を唯一の窒素源としての0.5mMコハク酸アンモニウムを用いて水耕法で2週間生育させた。15日目の明け方に、幼植物を5mM KNO3又は5mM KClで3日間処理した。Col−0、tga1、tga4及びtga1/tga4植物のこれらの条件下の一次根長を実施例1で述べたように測定した(図3)。 両tga1及びtga4単一突然変異体は、KNO3及びKCl処理の両方のもとで野生型植物と比較したとき正常な一次根成長を示した(図3A)。単一突然変異体系列における表現型の欠如は、これらの2つの遺伝子間の高い配列類似性(Xiangら(1997年)、Plant Mol. Biol.、34巻、403〜15頁)及び病原性応答調節の文脈内のそれらの以前に報告された機能的冗長性(Kesarwaniら(2007年)、前出)と一致していた。 単一突然変異体と対照的に、tga1/tga4二重突然変異体は、KNO3処理のもとでの野生型植物と比較して低い一次根成長を示したが、KCl対照処理のもとではそうでなかった(図3A)。さらに、同じ実験条件下で硝酸塩に応答する側根密度を評価したところ、硝酸塩処理が、TGA1及びTGA4対立遺伝子を含む野生型(Col−0)植物における側根密度を増加させた。しかし、tga1/tga4二重突然変異植物は、側根応答の変化を示し、硝酸塩処理において野生型植物と比較して低い側根密度を示した(図3B)。 内鞘は、中心柱の最も外側の部分であり、側根は、内鞘組織から発生する(Dolanら(1993年)、Development、119巻、71〜84頁、Malamy及びBenfey(1997年)、Development、124巻、33〜44頁)。硝酸塩処理が内鞘細胞層におけるTGA1及びTGA4の発現を調節するかどうかを評価するために、内鞘マーカーライン植物を唯一の窒素源としての0.5mMコハク酸アンモニウムを用いて水耕法で2週間生育させた。15日目の明け方に、幼植物を5mM KNO3又は5mM KClで2時間処理した。プロトプラストを根から調製し、GFPを発現する内鞘細胞をFACSにより選別した。全RNAを内鞘細胞から単離し、RT−qPCRを用いてTGA1及びTGA4のmRNAレベルを測定した。TGA1及びTGA4 mRNAは、内鞘細胞において、KNO3処理後に蓄積することが認められたが、KCl処理後には認められなかった(図4)。この結果は、TGA1及びTGA4発現が、側根の発生が起こる、内鞘細胞において硝酸塩処理により調節されることを示すものである。これらの結果は、TGA1及びTGA4が硝酸塩に応答して根系の構造を調節するのに重要であることを示すものである。 TGA1及びTGA4により制御される硝酸応答遺伝子ネットワーク 窒素の存在下での一次根及び側根の成長におけるこれらの転写因子の役割の基礎にあり得るTGA1及びTGA4標的遺伝子を同定するために、我々は、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)遺伝子チップ(ATH1;Affymetrix)を用いて野生型及びtga1/tga4二重突然変異植物の根における硝酸塩の影響を評価するためにトランスクリプトミクス解析を実施した。植物は、唯一の窒素源としてのコハク酸アンモニウムを含むMS培地中で生育させ、上述のように5mM KNO3又はKClで2時間処理した。全RNAを根組織から単離し、実施例1で述べたような遺伝子チップハイブリダイゼーションに備えた。遺伝子発現データをRMAを用いて標準化し、Kroukら(2009年)、PloS Comput. Biol.、5巻、e1000326頁の方法に従って2元ANOVAを用いて差次的遺伝子発現を確認した。ANOVAモデルに考慮した要因は、植物遺伝子型(G)、処理(T)及び遺伝子型と処理との交互作用(TG)であり、5%FDRを遺伝子発現の有意な変化を定義するために用いた。結果は、我々の実験条件下では827遺伝子が硝酸塩処理(T)により調節されることを示すものであった。これらの実験において硝酸塩により調節された遺伝子の数及び性質は、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)硝酸応答の全ゲノム解析で以前に報告されたものと同等であった(Wangら(2003年)、前出、Scheibleら(2004年)、前出、Wangら(2004年)、前出)。 TG要因が有意であった96遺伝子が同定された。これらの96遺伝子は、硝酸塩に対するその応答が野生型TGA1/TGA4植物と比較してtga1/tga4二重突然変異体において変化している遺伝子に対応する。4つの遺伝子のみがモデルにおける唯一の有意な要因としての遺伝子型を示し、tga1/tga4突然変異の効果が硝酸応答の状況において最も周知のものであることがわかる。全体的にみて、遺伝子の15%がtga1/tga4二重突然変異体における硝酸塩に応答する発現の調節の変化を示した。さらに、tga1/tga4二重突然変異体における遺伝子発現の変化を有する遺伝子の97%も硝酸塩により調節された。この結果は、TGA1及びTGA4を硝酸応答の特異的な側面と強く関連付けている。 硝酸塩に対するその応答がTGA1及びTGA4に依存する遺伝子の調節相互作用を明らかにするために、有意なTG因子を示す遺伝子のネットワーク図をVirtualPlant(商標)ウェブサイトを介して利用可能であるGene Networksツールを用いて生成させた(Katariら(2010年)、Plant Physiol.、152巻、500〜15頁)。Cytoscape(商標)を用いて得られたネットワークを視覚化したが、遺伝子は、調節相互作用を示す端により接続された結節点として表出されている(図5)。ネットワークによれば、TGA1及びTGA4の両方が硝酸トランスポーターNRT2.2の発現を正に調節する。NRT2.2は、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)における硝酸塩の取込みのために重要である(Liら(2007年)、前出)。さらに、他のシグナル伝達経路に関与する遺伝子がネットワークに認められた。例えば、セリン/トレオニンタンパク質ホスファターゼ2A(PP2A、At5g25510);タンパク質ホスファターゼ2C(PP2C、At4g38520);CBL相互作用プロテインキナーゼ3(CIPK3、At2g26980)及びオーキシン/インドール−3−酢酸7(IAA7、At3g23050)転写因子である。ペルオキシダーゼなどのストレス応答に関与するいくつかの遺伝子もTGA1及びTGA4により調節されることが認められた。 これらの結果は、硝酸塩処理に応答して、TGA1及びTGA4が硝酸塩の取込み並びに細胞シグナル伝達及びストレス応答に関与する標的遺伝子の発現を調節することを示すものである。tga1/tga4二重突然変異体における硝酸塩処理に応答するそのような標的遺伝子の発現の調節の変化は、認められた表現型の変化を説明し得るものである。 硝酸応答におけるTGA1及びTGA4の調節的役割 我々のデータは、硝酸塩の取込みに直接的に関与する遺伝子が硝酸応答におけるTGA1及びTGA4の標的であることを予測するものである。硝酸塩の取込み及び還元に関与する遺伝子の発現がtga1/tga4二重突然変異体において影響を受けるかどうかを判断するために、公知の硝酸応答遺伝子NRT2.1、NRT2.2、NIA1及びNIRのmRNAレベルを、野生型及びtga1/tga4突然変異植物における硝酸塩処理の後にRT−qPCRを用いて測定した。具体的には、Col−0及びtga1/tga4植物を唯一の窒素源としてのアンモニウムを含む水耕栽培システムにおいて生育させた。15日目の明期の開始時に、植物を5mM KNO3又は5mM KCl(対照)で示した時間にわたり処理した。RNAを単離し、mRNAレベルをRT−qPCRにより測定し、クラスリン遺伝子を標準化のために用いた。 野生型植物においては、4つの遺伝子のすべてNRT2.1、NRT2.2、NIA1及びNIRが硝酸塩処理により高度に誘導された。しかし、NRT2.1、NRT2.2及びNIR遺伝子の硝酸塩誘導は、tga1/tga4突然変異体において有意により低かった。図6A〜B(野生型よりもそれぞれNRT2.1及びNRT2.2について処理後2時間に25%及び48%低い);図6C(野生型よりもNIRについて処理後1時間目に41%低い)。野生型植物とtga1/tga4突然変異植物の間にNIA1の発現の差は認められなかった。これらの結果から、NRT2.1、NRT2.2及びNIRが硝酸塩処理に応答してTGA1及びTGA4によって調節されることがわかる。 硝酸塩の還元に関与する遺伝子の発現がTGA1及びTGA4により調節されるかどうかを判断するために、我々は同じ実験条件下でのNIA1及びNIRの発現を評価した。野生型植物とtga1/tga4突然変異植物の間にNIA1の発現の差は認められなかった(図16)。しかし、NIR遺伝子の硝酸塩誘導は、硝酸塩処理後1時間目にtga1/tga4突然変異体において有意により低かった(41%)(図6C)。これらの結果から、NRT2.1、NRT2.2及びNIRがTGA1及びTGA4の標的遺伝子であることがわかる。 TGA1及びTGA4が組織特異的様式で調節されるので、我々は硝酸塩処理に応答するTGA1/TGA4標的遺伝子の根細胞特異的発現を評価した。図11A及び11BにNRT2.1及びNRT2.2が表皮、内皮 内鞘及び中心柱において硝酸塩により調節されることを示す。対照的に、NIRは、すべての細胞型において硝酸塩により調節される。TGA1/TGA4発現ドメインとそれらの標的遺伝子との間に重複が存在するが、硝酸塩に応答するNRT2.1、NRT2.2及びNIRの組織特異的パターンを調節するためにさらなる調節因子が必要である。 NRT2.1及びNRT2.2の発現に対するTGA1の影響 ネットワークモデルは、NRT2.2の発現に対するTGA1の直接的な影響も予測するものである。以前の報告で、NRT2.1及びNRT2.2がシロイヌナズナ属(Arabidopsis)のゲノム内に非常に接近して位置していることが示された(Orselら(2002年)、Plant Physiol.、129巻、886〜96頁)。他の研究で、同様な転写メカニズムがNRT2.1及びNRT2.2の硝酸応答に関与していることが提唱された(Girinら(2007年)、Plant Cell Environ.、30巻、1366〜80頁)。NRT2.1がTGA1の直接的な標的であるかどうかを判断するために、NRT2.1のプロモーター領域を手作業で調べたところ、TGA1結合モチーフ(Schindlerら(1992年)、Plant Cell、4巻、1309〜19頁)が転写開始部位から−309位と−304位との間に存在することがわかった。これらの知見から、NRT2.1及びNRT2.2の発現がTGA1により直接調節されることが示唆される。 NRT2.1及びNRT2.2の発現がTGA1により直接調節されることを検証するために、TGA1特異抗体及び陰性対照としての非特異的IgGを用いてクロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイを実施した。植物を15日目の明け方に5mM KNO3又は5mM KClで20、60又は120分間処理した。免疫沈降DNAは、TGA1結合モチーフを含むNRT2.1又はNRT2.2プロモーター領域と対照して設計した特異的プライマーを用いてqPCRにより定量した。TGA1は、NRT2.1及びNRT2.2プロモーターに硝酸塩依存的様式で結合する。(図7)。これらの特異的占有は、非特異的IgGを用いた又はKCl処理植物試料における免疫沈降では認められなかった。したがって、TGA1は、硝酸塩処理に応答するNRT2.1及びNRT2.2遺伝子の発現を直接調節する転写因子である。さらに、硝酸塩処理後20分という早期に、TGA1がその標的遺伝子のプロモーター領域に検出され、TGA1及びTGA4が硝酸塩/亜硝酸塩に対する早期応答に役割を果たすことが示唆される。 TGA1/TGA4表現型は、硝酸塩の取込みの欠陥に起因しない NRT2.1及びNRT2.2は、低い硝酸塩濃度のもとでの硝酸塩の取込みに必要な高親和性輸送システム(HATS)の一部である(Liら(2007年))。Huらは、NRT2.1が広範囲の硝酸塩濃度により誘導され、NRT2.1硝酸応答が低及び高親和性相から構成されることを示した(Huら、2009年)。図6A及び6Bに示すように、TGA1及びTGA4は、低親和性範囲にある濃度である5mMのKNO3処理のもとでのNRT2.1及びNRT2.2の硝酸塩誘導に必要である。TGA1及びTGA4が高親和性相におけるNRT2.1及びNRT2.2の硝酸塩誘導に関与するかどうかを探究するために、我々は、250μM KNO3又は250μM KCl処理の2時間後におけるNRT2.1及びNRT2.2遺伝子発現を評価した。図12A及び12BにTGA1及びTGA4が250μM KNO3処理のもとでのNRT2.1及びNRT2.2の硝酸塩誘導に必要であることを示す。これらの結果から、TGA1及びTGA4が、低及び高親和性相の両方におけるNRT2.1及びNRT2.2遺伝子発現の正の調節因子であることがわかる。 tga1/tga4二重突然変異体におけるNRT2.1及びNRT2.2の発現の低下が硝酸塩の取込みに影響を及ぼすかどうかを判断するために、我々は、15NO3−同位体標識を用いた正味の硝酸塩取込み実験を実施した。植物は、上述のように水耕法で生育させ、10%15NO3−で強化した250μM又は5mM NO3−で示した時間にわたり処理した。正味の硝酸塩取込みは、野生型及びtga1/tga4二重突然変異植物で同様であることが認められた(図12C)。我々は長期15NO3−曝露(8時間)において野生型とtga1/tga4との間の硝酸塩取込みの差を認めなかった(図12C)ことから、図3A及び3Bに示す観察されたtga1/tga4表現型は、硝酸塩の吸収の欠陥に起因しない可能性がある。この結果から、tga1/tga4における硝酸塩に応答する遺伝子発現に対する影響がシグナル伝達経路の欠陥に起因する可能性があることが示唆される。 TGA1はNRT2.1及びNRT2.2プロモーターに硝酸依存的様式で結合する ネットワークモデル(図5)は、NRT2.2の発現に対するTGA1/TGA4の直接的な影響を予測する。NRT2.1もTGA1/TGA4の直接的標的であるかどうかを判断するために、我々は、NRT2.1のプロモーター領域を手作業で調べたところ、翻訳開始部位から−1338位と−1333位との及び−371位と−266位との間の2つの以前に記載されたTGA1結合モチーフ(Schindlerら、1992年)を認めた。興味深いことに、Girinら、2007年は、硝酸塩誘導を制御する領域を同定するためにNRT2.1プロモーターの欠失を作り、−456と−245との間の領域を欠失させた場合に硝酸塩に応答する遺伝子発現の強い減少を観察した(Girinら、2007年)。したがって、TGA1結合部位は、遺伝子発現の硝酸塩誘導に重要であるNRT2.1プロモーターの領域に含まれている。我々は、NRT2.1及びNRT2.2がTGA1の直接的な標的遺伝子であるかどうかを評価するために、TGA1特異抗体及び陰性対照としての非特異的IgGを用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイを用いた。植物は、上で行ったように15日目の明け方に5mM KNO3又は陰性対照としての5mM KClで20、60又は120分間処理した。 免疫沈降DNAは、−371及び−366位におけるTGA1結合モチーフを含むNRT2.1プロモーター領域又は−1287及び−1282並びに−1194及び−1189位における2つのTGA1結合モチーフを含むNRT2.2プロモーター領域と対照して設計した特異的プライマーを用いてqPCRにより定量した。図7A及び7Bに示すように、TGA1は、NRT2.1及びNRT2.2プロモーターに硝酸依存的様式で結合する。我々がNRT2.1及びNRT2.2コーディング配列と対照して設計したプライマーを用いた場合に増幅が認められなかったので、この結合は、NRT2.1及びNRT2.2プロモーター領域に対して特異的であり、該遺伝子の他の領域に対して特異的でない(図7)。硝酸塩に応答する、NRT2.1発現レベルは、NRT2.2よりも3倍高く(図6)、したがって、TGA1は、NRT2.2プロモーター領域よりもNRT2.1プロモーター領域に大きい程度に動員される。我々がTGA1及びTGA4により調節されない硝酸応答遺伝子である、NIA1プロモーター領域を増幅した場合に占有は認められなかった(図7)。TGA1占有は、非特異的IgGを用いた又はKClを用いた対照条件における免疫沈降で認められなかった。この結果から、それらの発現を調節するための硝酸塩処理によってNRT2.1及びNRT2.2のプロモーター領域にTGA1が動員されることがわかる。 硝酸塩に応答するNRT2.1の発現はchl1−5及びT101D突然変異体において影響を受ける Col−0、chl1−5、Chl1−9及びT101D植物を材料及び方法で述べたシュー実験条件(thewe experimental conditions)を用いて水耕法で生育させた。15日目の明期の開始時に、植物を5mM KNO3又は対照としての5mM KClで示した時間にわたり処理した。RNAを単離し、RT−qPCRによりNRT2.1 mRNAレベルを測定した。クラスリン遺伝子(At4g24550)を標準化基準として用いた。プロットした値は、3つの独立した生物学的反復測定の平均値±標準偏差に相当する(図15)。アステリスクは、突然変異体系統とCol−0との間で有意に異なる平均値を示す(P<0.05)。 pTGA1:GUS及びpTGA4:GUS遺伝子融合の構築並びにGUS活性アッセイ キメラpTGA1:GUS及びpTGA4:GUS遺伝子融合のために、TGA1及びTGA4翻訳開始コドンの上流の2000bp断片をシロイヌナズナ(A.thaliansa)生態型Col−0のゲノムDNAから増幅した。以下のプライマーを用いて、TGA1及びTGA4プロモーターを増幅し、BamHI及びNcoI部位を導入するように設計した:TGA1プロモーター(フォワード、5’−TTGGATCCTTACTACGTCACCAGAATC(配列番号21)及びリバース、5’−AACCATGGTTTTCCTCAACTGAAAACAAAG(配列番号22))並びにTGA4プロモーター(フォワード、5’−TTGGATCCAGAAGTTGTGGTCACC(配列番号23)及びリバース、5’−AACCATGGATTTCTTCAACTAGCAAC(配列番号24))。組換えプラスミドをBamHI及びNcoIで消化し、DNA断片をpCAMBIA1381(CAMBIA、Canberra、Australia)にライゲーションした。構築物の構造をDNA配列決定により検証した。次いで、構築物をエレクトロポレーションによりアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)GV3101に導入した。シロイヌナズナ属(Arabidopsis)植物のアグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.umefaciens)媒介形質転換は、フローラルディッププロトコール(Clough及びBent、1998年)を用いて遂行した。T1世代の種子をハイグロマイシンに対する耐性のために選択した。少なくとも8つの独立した遺伝子導入系が各構築物について得られ、導入遺伝子の存在は、PCRにより検証した。GUS活性の組織化学的分析のために、幼植物をGUS反応緩衝液(100mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0、0.5mMフェリシアン化カリウム、0.5mMフェロシアン化カリウム、0.1%(容積/容積)Triton X−100、0.1%(重量/容積)ラウロイルサルコシンナトリウム)に1mM 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド(X−Gluc)を補充した緩衝液中で37℃でインキュベートした。染色後、試料を20%メタノール中0.24N HClとともに57℃で15分間インキュベートすることにより透明にした。この溶液を60%エタノール中7%NaOH、7%ヒドロキシルアミン−HClで置換し、室温で15分間インキュベートした。次いで、幼植物をそれぞれ40%、20%及び10%エタノール中で5分間再水和し、5%エタノール、25%グリセロールで15分間浸透させた。試料を50%グリセロールに入れてガラス製顕微鏡スライド上にマウントし、NIKON Eclipse 80i顕微鏡上のDIC光学系を用いて撮像した。各マーカーライン及び処理について、少なくとも15個の植物を分析した。 植物における栄養効率を増加させる方法であって、 少なくとも1つの異種ポリペプチドを植物の根組織に導入するステップを含み、前記異種ポリペプチドがTGA1、TGA4及びそれらの組合せからなる群から選択される、方法。 異種ポリペプチドがTGA1である場合、異種ポリペプチドが配列番号1からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。 異種ポリペプチドがTGA4である場合、異種ポリペプチドが配列番号11からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。 栄養素利用効率の増加が、同一種の植物と比較して硝酸塩調節の効率の増加を含む、請求項1に記載の方法。 植物における根の成長を増加させる方法であって、 異種TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを植物の根組織に導入し、それにより、異種TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを含む改変植物を作製するステップを含み、改変植物が異種TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを含まない同一種の植物と比較して、根の成長の増加を含む、方法。 根の成長が一次根又は側根の成長である、請求項5に記載の方法。 異種TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドを導入するステップが、核酸を根組織に導入するステップを含み、核酸が異種TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項5に記載の方法。 窒素制限条件で改変植物を生育させるステップを含む、請求項5に記載の方法。 異種ポリペプチドがTGA1転写因子である、請求項5に記載の方法。 TGA1転写因子が配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の方法。 異種ポリペプチドがTGA4転写因子である、請求項5に記載の方法。 TGA4転写因子が配列番号11と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の方法。 TGA1転写因子ヌクレオチド配列が配列番号15と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列又は配列番号15からなる核酸とハイブリダイズする核酸配列を含む、請求項7に記載の方法。 TGA4転写因子ヌクレオチド配列が配列番号16と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列又は配列番号16からなる核酸とハイブリダイズする核酸配列を含む、請求項7に記載の方法。 根組織が根細胞である、請求項1に記載の方法。 異種TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドをコードする核酸配列が根組織特異的プロモーターに作動可能に連結されている、請求項7に記載の方法。 請求項1に記載の方法により作製された改変植物。 請求項17に記載の改変植物から産生された種子。 農業機能を有する核酸配列を含む核酸分子であって、核酸配列が、配列番号15と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列、配列番号15からなる核酸とハイブリダイズする核酸配列、配列番号16と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列、及び配列番号16からなる核酸とハイブリダイズする核酸配列からなる群から選択され、前記核酸配列が異種転写可能ポリヌクレオチド分子に作動可能に連結されている、核酸分子。 請求項19に記載の核酸分子により安定的に形質転換された遺伝子導入植物細胞。 遺伝子導入植物を作製する方法であって、 異種TGA1及び/又はTGA4ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸を植物の根組織に導入し、それにより遺伝子導入植物を作製するステップを含む、方法。 請求項21に記載の方法により作製された遺伝子導入植物。 請求項22に記載の遺伝子導入植物により産生された種子。 植物が、同一種の野生型植物と比較して、図5に示す遺伝子の発現の増加を含む、請求項22に記載の遺伝子導入植物。 遺伝子が硝酸トランスポーターNRT2.1、硝酸トランスポーターNRT2.2又は亜硝酸還元酵素(NIR)である、請求項22に記載の遺伝子導入植物。 同一種の野生型植物と比較して、高い一次根及び/又は側根の成長を含む、請求項22に記載の遺伝子導入植物。 本開示は、植物の窒素応答に関する。実施形態は、植物における窒素源及び/又はそれらの代謝物に対する応答に寄与する調節因子に関する。 配列表