タイトル: | 公表特許公報(A)_抗体ライブラリスクリーニングのための一般戦略 |
出願番号: | 2014546358 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C12N 1/19,C40B 30/04,G01N 33/535,C12N 7/02,C40B 40/08,C12N 15/09 |
ベッカー,ステファン ヘイセラー,ティム マース,アレクサンダー コルマー,ハラルド JP 2015505675 公表特許公報(A) 20150226 2014546358 20121214 抗体ライブラリスクリーニングのための一般戦略 メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 591032596 Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung 葛和 清司 100102842 ベッカー,ステファン ヘイセラー,ティム マース,アレクサンダー コルマー,ハラルド EP 11009901.7 20111216 C12N 1/19 20060101AFI20150130BHJP C40B 30/04 20060101ALI20150130BHJP G01N 33/535 20060101ALI20150130BHJP C12N 7/02 20060101ALI20150130BHJP C40B 40/08 20060101ALI20150130BHJP C12N 15/09 20060101ALI20150130BHJP JPC12N1/19C40B30/04G01N33/535C12N7/02C40B40/08C12N15/00 A AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC EP2012005162 20121214 WO2013087215 20130620 38 20140812 4B024 4B065 4B024AA20 4B024CA07 4B024DA05 4B024DA12 4B024EA04 4B024FA02 4B024FA07 4B024GA11 4B024HA20 4B065BA02 4B065CA46 4B065CA60 ファージディスプレイ技術は、25年以上も前に、George Smithによって初めて導入され(Smith 1985)、所定の結合特性を有するペプチド、特に抗体分子を大きなライブラリから同定する分子生物工学技術において不可欠のツールになった。それ以来、多くの改善点が報告されており、スクリーニング概念は、現在、事実上任意の標的タンパク質に対する結合分子を同定するのに利用可能である(Bradbury et al. 2011)。さらに、近年、細菌の表面ディスプレイ、特に酵母表面ディスプレイは、ファージディスプレイスクリーニング適用の代替手段として人気上昇中である(Pepper et al., 2008, van Blois et al. 2011)。 ライブラリスクリーニングは、一般に、結合分子の集団を複製実体の表面上に暴露することと、それらを、抗体ディスプレイの場合は抗原分子である関心のある相互作用パートナーに接触させることとを含む。実験の設定は、標的に特異的な抗体を表示するそれらファージ粒子または微生物細胞が、前記集団から、例えばバイオパニングまたは細胞選別によって、単離され得るように、策定される。所望のタンパク質バリアントを得るのに、理想的には、単回ラウンドのスクリーニングしか必要としないであろう。しかしながら、特異的な結合物の濃縮は、ライブラリから最も良好な結合物を得るためにスクリーニングと増幅とのラウンドを繰り返すことを必要とする非特異的な結合物によって、制限される(Vodnik et al. 2011)。大きなライブラリでは、非特異的な結合物が特異的に相互作用するものより大多数を占めるように、特異的な結合物が最初の集団のほんの一部分しか構成しないことが予測され得るため、特に、第1スクリーニングラウンドは重大である。結果として、条件は、非特異的な結合物を除去するのに足りるストリンジェントであるが、特異的に相互作用する無傷のライブラリメンバーの標的結合を維持するのに十分に温和な各単回スクリーニング実験について、注意深く制御され、かつ最適化される必要がある(Liu et al. 2009)。 高親和性の結合物を得る確率がライブラリの大きさとともに増加することから(Steiner, Forrer 2008)、次第により大きなライブラリが確立され、該ライブラリは1010の異なるバリアントを超え得る(Rothe et al. 2008, Brockmann et al. 2011)。しかしながら、ライブラリの繰り返される増幅は、それが各スクリーニングラウンドで生じるため、多様性を減少させることが知られ、ライブラリスクリーニング実験において同定され得る候補の数を制限する。(Derda et al. 2011)。結果として、スクリーニングラウンドの回数を最小限に、最適には単回ラウンドにまで、減少させることが極めて望ましい。概念的に、これは、標的とライブラリメンバーとの一過的かつ相対的に弱い相互作用を精製用の取っ手(purification handle)として使用され得る標識分子の共有結合とし、かつ非特異的に結合したライブラリメンバーを除去するかなりストリンジェントな条件の適用を可能にさせる方法を設定することによって達成され得る。 異化レポーター沈着(catalysed reporter deposition)(CARD)は、免疫組織化学において、タンパク質ビオチン化に広く使用されている(Bobrow et al., 1989, 1991, 1992)。それは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に仲介されるビオチンチラミドラジカルの形成に依存しており、該ラジカルは、極めて接近しているタンパク質と容易に反応し、その結果、ビオチンとタンパク質のチロシン残基との間で共有結合を形成する(図1)。標的分子が結合したファージまたは細胞の表面ディスプレイのライブラリメンバーの選択的なビオチン化を確立するために、我々は、HRPに仲介されるビオチン化が過酸化水素の存在を必要とするという事実を利用する。ここに記載される3CARDシステムは、3つの異なる酵素、すなわち、ペルオキシダーゼ、オキシダーゼおよびカタラーゼの活性を組み合わせる。まず、HRPは、出発集団の全メンバー上に連結されており、それはファージディスプレイライブラリの実験のセッティングにおいての使用について例示されている(図1a)。HRPによるファージビオチン化は、ビオチンチラミド(図5)および過酸化水素の存在を必要とする。3CARD設定において、H2O2は、関心のある抗原にコンジュゲートされた第2酵素によって生成される(図1b、c)。ガラクトースオキシダーゼまたはグルコースオキシダーゼとしての糖オキシダーゼは、酸素への電子移動を介して糖の酸化を触媒し、その結果、過酸化水素が形成される。反応混合物が極めて効率良く過酸化水素を解体するカタラーゼを第3酵素として含むため、過酸化水素は、抗原−オキシダーゼ複合体が結合したそれらファージ粒子の濃度がより高い場合にのみ生成される。結果として、H2O2のHRPへの移動、続くファージビオチン化は、HRPに極めて接近しているオキシダーゼを有する抗原結合ファージにのみ生じるはずである。特異的に標識されたファージは、その後、固定化されたストレプトアビジンに対するバイオパニングを介して救出され得、細菌のファージ感染の前の極めてストリンジェントな洗浄条件に供され得る。 しかしながら、CARDが当該技術分野におけるファージの、細菌の、または酵母のディスプレイシステムの有効性を高めることについては何ら言及されていない。 当該技術分野においては、かかる有効性を高めるニーズが強い。先に説明されているように、特異的な結合物の単離が未だに経験に強く基づくものであり、基本的に、所定のディスプレイシステムおよび特定のリガンドを含む具体的な設定ごとに、実験のセッティングを適合させる必要がある。 したがって、とりわけ、高度に特異的な結合物を単離するのに必要な選択/増幅ステップを減らすことを可能にする効率的なディスプレイシステムを提供することが、本発明の目的であった。 本発明は、当該技術分野において知られているディスプレイシステムの、驚くほど容易な確立、および高効率な改善点を開示する。 第一の態様において、本発明は、特異的に標識された複製実体の単離のための新規方法に関し、該方法は、 a)複製実体の一群であって、それらの表面上に受容体分子のバリアントを表示し、かつ前記表面と繋がった第1酵素または第2酵素のいずれかを有する、前記一群を、反応混合物中に供すること、 b)前記実体が前記第2酵素と繋がっている場合には前記第1酵素と繋がったリガンド分子、または、前記実体が前記第1酵素と繋がっている場合には前記第2酵素と繋がった前記リガンドのいずれかを、ステップa)の前記混合物に加えること、 c)前記第2酵素のための基質を、前記反応混合物に加えること、ここで、前記基質が、酵素反応において、前記第2酵素に利用されることによって、前記第1酵素に利用される産物が産生し、前記第1酵素の補基質が、前記複製実体の夫々に物理的に繋がる反応性マーカー分子に変換され、それによって、前記複製実体が特異的に標識される、および d)前記の特異的に標識された複製実体を単離することを含む。 好ましい態様において、ステップa)の反応混合物は、第1酵素および/または第2酵素の過剰産物を分解することができる酵素である第3酵素をさらに含む。 さらに好ましい態様において、複製実体は、ファージ、ファージミドまたは細胞からなる群から選択される。 さらに好ましい態様において、複製実体は、酵母細胞、好ましくはSaccharomyces cerevisiaeである。 さらに好ましい態様において、第1酵素はペルオキシダーゼ、好ましくは西洋ワサビペルオキシダーゼであり、第2酵素はオキシダーゼ、好ましくはグルコースオキシダーゼであり、第3酵素はカタラーゼである。 さらに好ましい態様において、第2酵素の基質はグルコースであり、産物はH2O2である。 さらに好ましい態様において、前記第1酵素の補基質は、マーカー分子とコンジュゲートしたチラミドである。 さらに好ましい態様において、マーカー分子は、ビオチン、(2,4)−ジニトロフェニル、フルオレセインまたはジオキシゲニン誘導体である。 さらに好ましい態様において、チラミドが、開裂可能なリンカー、好ましくはジスルフィド結合またはプロテアーゼによって開裂され得るペプチド配列、によって、マーカー分子と繋がっている。 さらに好ましい態様において、マーカー分子はビオチンであり、単離ステップd)は、アビジンマトリックスまたはストレプトアビジンマトリックスでの親和性クロマトグラフィによって達成される。 さらに好ましい態様において、マーカー分子は、フルオレセイン、または、ビオチンと結合した蛍光アビジンもしくは蛍光ストレプトアビジンであり、単離ステップd)は、蛍光活性化細胞選別によって達成される。 さらに好ましい態様において、マーカー分子はビオチンであり、単離は、ビオチン標識された実体と結合した、ストレプトアビジンまたはアビジンで被覆された常磁性粒子を用いる磁気細胞選別を含む。 本発明の特別に好ましい態様は、天然には存在しない複製実体であって、その表面上に様々な受容体分子を表示し、かつ、その表面に連結された酵素を有する。 本発明のさらに特別に好ましい態様は、先行する段落の天然には存在しない複製実体であって、酵素が、ペルオキシダーゼまたはオキシダーゼからなる群から選択される。 本発明のさらに特別に好ましい態様は、先行する段落の天然には存在しない複製実体であって、受容体分子が、抗体または抗体由来のフラグメントである。 本発明のさらに特別に好ましい態様は、本発明の天然には存在しない複製実体、基質および補基質を含むパーツのキットである。 本発明のさらに特に好ましい態様は、実体が、ファージ、ファージミドまたは細胞からなる群から選択され、細胞が、好ましくは酵母細胞、より好ましくはSaccharomyces cerevisiaeであり、受容体分子が、抗体であり、実体の表面に繋げられた酵素が、グルコースオキシダーゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼであり、基質が、グルコースであり、補基質が、マーカー分子、好ましくはビオチンに連結されたチラミドである、先行する段落のキットである。 例えば、標的分子が結合したファージまたは細胞表面ディスプレイのライブラリメンバーの選択的ビオチン化を確立するために、好ましい一態様における本発明は、西洋ワサビペルオキダーゼ(HRP、E.C.1.11.1.7)を仲介するビオチン化が過酸化水素の存在を必要とするという事実を利用する。ここに記載された3CARDシステムは、3つの異なる酵素、すなわち、ペルオキシダーゼ、オキシダーゼおよびカタラーゼの活性を組み合わせる。第一に、HRPは出発集団の全メンバーと連結しており、このことは、ファージ粒子の集団をスクリーニングするファージディスプレイライブラリの実験のセッティングのうちである(図1a)。HRPによるファージビオチン化は、ビオチンチラミドおよび過酸化水素の存在を必要とする。3CARD設定において、H2O2は、関心のある抗原とコンジュゲートした第2酵素によって生成される(図1b、c)。ガラクトースオキシダーゼまたはグルコースオキシダーゼとしての糖オキシダーゼは、酸素への電子移動を介して糖の酸化を触媒し、その結果、過酸化水素が形成される。過酸化水素は、抗原−オキシダーゼ複合体が結合したそれらファージ粒子のより高い濃度においてにのみ生成される。なぜなら、反応混合物が、極めて効率良く過酸化水素を解体するカタラーゼを第3酵素として含むからである。結果として、H2O2のHRPへの移動、続くファージビオチン化は、HRPに極めて接近しているオキシダーゼを有する抗原結合ファージにのみ生じるはずである。特異的に標識されたファージは、その後、固定化されたストレプトアビジンに対するバイオパニングを介して救出され、細菌のファージ感染の前の極めてストリンジェントな洗浄条件に供され得る。 本特許の例のパートにおいて、本発明者らは、ファージ上の組み合わせた酵素の反応が、選択的ビオチン化および単回ラウンドのスクリーニングにおける単離をもたらすように、単一ドメイン抗体ライブラリスクリーニングへの3CARDの適用、および、ファージ表面上にHRPを連結し、かつ標的タンパク質にオキシダーゼをコンジュゲートするための直接的な本方法を記載する。 機能的であるようにここに記載されたファージディスプレイスクリーニング手順において、本発明者らは、オキシダーゼとペルオキシダーゼとの連結反応が、ファージ粒子上で実施され得ることを示す必要があった。ここで、抗原/抗体相互作用を介するファージ表面に連結されているオキシダーゼにより生成される過酸化水素によって、最終的に、結合されたファージが選択的に標識され、それによって遺伝型と表現型との連結がもたらされる。加えて、関心のある標的タンパク質のオキシダーゼとのコンジュゲートのための単純な方法が確立される必要があった。 これらの点に取り組むために、Pseudomonas aeruginosaのLipHシャペロンに選択的に結合するラクダ科動物のVHH単鎖抗体フラグメントのファージディスプレイに依存するモデル実験を実施した(Wilhelm et al. 2007)。抗LipH VHHドメインのファージ上の提示は、ファージディスプレイベクターpAK200を使用し、トランケートされたpIIIとVHHフラグメントとの遺伝的融合を介して達成された(Habicht et al. 2007)。 本発明を、下記図により一部説明する:図1は、3CARDファージディスプレイスクリーニング手順の概要を示す。(a)抗体バリアント(AB)のライブラリを表示するファージ粒子の表面への西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の共有結合性の沈着。(b、c)抗原−オキシダーゼコンジュゲート(AgOx)による過酸化水素(H2O2)の生成、およびビオチンチラミド(BT)を、ファージの表面に捕捉されるラジカルに変換するHRPによる連結された反応。図2は、ファージ上の連結された酵素反応を示す。(a)ファージ粒子の表面に連結するHRP。LipHタンパク質を、マイクロタイタープレートのウェルに連結させた。抗LipH VHH(αLipH VHH)または対照としての役割を果たす無関係なタンパク質を表示するファージを、HRPで装飾し(+HRP)、ウェルに加えた(濃灰色のバー)。αLipH VHHがコンジュゲートされていないファージは、対照としての役割を果たした(薄灰色のバー)。非装飾の抗LipH−VHHファージについて、ファージの標的タンパク質結合を、抗pVIII抗体がコンジュゲートされたペルオキシダーゼの添加によって、確認した。HRP活性を、TMBの添加および450nmでの吸光度の測定によって検出した。(b)オキシダーゼに仲介されたファージ上のHRPの活性化。マイクロタイタープレートのウェルは、LipH−GOアーゼのコンジュゲートか、または、対照としてのウシ血清アルブミン(BSA)の夫々で被覆した。HRPで装飾された抗LipH VHHファージ(黒色のバー)または対照ファージ(白色のバー)の添加およびプレート洗浄の後、ガラクトースを添加し、HRP活性を、TMBの添加後、450nmで測定した。エラーバーは、3つの測定値からの標準偏差を表す。図3は、3CARDスクリーニングを介する結合物の濃縮を示す。(a)スクリーニングラウンド前(ラウンド0)およびスクリーニングラウンド1、2および3の後の、対照ファージに対するLipH結合ファージの1:10,000(白色)および1:100,000(灰色)混合物のLipH結合についてのファージELISA。LipHで被覆されたマイクロタイタープレートへのファージ結合を、ペルオキシダーゼがコンジュゲートされた抗pVIII抗体および発色性のHRP基質を使用し、450nmでの吸光度の測定を介して決定した。エラーバーは、3つの測定値からの標準偏差を示す。(b、c)pIIIをコードする配列と融合した遺伝子に隣接する、プライマーを使用してスクリーニングラウンド2の後に得られた個別のファージミドのPCRスクリーニング。抗LipH VHHを提示するファージでは、676bpのフラグメントが予測され、配列をコードするより小さいミニタンパク質を含む対照ファージでは、394bpのフラグメントが生成される。P:PCRの対照としての役割を果たした抗LipH VHH提示ファージミドに由来するファージミドDNA。図4は、夫々の標的に対する3CARDスクリーニング後の64種の個々のクローンのファージELISAを示す。マイクロタイタープレートを、夫々の標的タンパク質セツキシマブ、第XIII因子およびサグリン(Saglin)の夫々で被覆した。ファージの結合を、発色性のHRP基質であるTMBを使用するペルオキシダーゼとコンジュゲートした抗pVIII抗体の添加と、450nmでの吸光度の測定とを介して検出した。可溶性タンパク質としての発現およびKdの決定に関して選択されたクローンに星印が付けられている。非結合を示す吸光度の平均値を、OD450値が最も低い各実験の10種のクローンから決定した。この値の少なくとも2.5倍を超えるクローンを、標的タンパク質結合物である可能性があると考え、黒色のバーとして表示した。図5は、ビオチンチラミドの化学構造を示す。図6は、(a)オキシダーゼまたは標的タンパク質のためのコード配列を含み、夫々遺伝的に融合したコイル配列を有する産生ベクターのスキームを示す。(b)LipH−オキシダーゼ(L+G、160kDa)、LipH−Eコイル(L、55kDa)およびGOアーゼ−Kコイル(G、70kDa)を含む、SDSのないブルーネイティブゲル。モデルは、形成されたコンジュゲート産物を例証するものである。図7は、結果として生じるGOアーゼ−KコイルとLipH−Eコイルとの融合産物のGFCクロマトグラムを示す。図8は、ox.GOXのLipHへの連結を確認するためのクマシーゲルを示す。最初の2列に遊離体を示す(グルコースオキシダーゼ 70kDa、LipH 50kDa)。また、結果として生じる3列目の170kDaの相互作用産物の存在をウェスタンブロットによっても確認した(示さず)。図9は、ビオチンチラミド(黒色のバー)またはガラクトース(灰色のバー)の夫々を添加しないモックの3CARDスクリーニングのファージELISAを示す。非結合ファージに対する結合の同じ混合比を有するスクリーニングを、記載のとおり(「遺伝型−表現型の連結の確認」を参照)実施した。結合物の濃縮は、3パニングラウンド後のファージELISAまたはPCRスクリーニング(0/10)によっても検出できなかった。pos:被覆されたLipHに結合することができる抗LipHファージを使用するファージELISA。neg:無関係のタンパク質を表示するファージのバックグラウンドの結合。LipHで被覆されたマイクロタイタープレートへのファージの結合を、ペルオキシダーゼがコンジュゲートされた抗pVIII抗体と、発色性のHRP基質の450nmでの吸光度の測定とを使用して決定した。実験を、3重に行った。図10は、最初のライブラリの47種の単一クローンのファージELISAを示す。予測されるとおり、標的タンパク質であるサグリンおよびセツキシマブへの特異的な結合は、最初のライブラリであるLibAおよびLibBにおいて検出されなかった。陽性対照として、既に選択されたセツキシマブおよびサグリンの結合ファージを使用した(最後のウェル)。図11は、セツキシマブの結合物についてのファージライブラリの単回ラウンドスクリーニングを示す。A:技術水準のスクリーニング、B:3CARDスクリーニング。>0.3のELISAシグナルを与えるクローンを、結合物と見なした。A:1種のクローン、B:36種のクローン。PD:古典的なファージディスプレイスクリーニング。図12は、LipHの結合物についてのファージライブラリの単回ラウンドスクリーニングを示す。A:技術水準のスクリーニング、B:3CARDスクリーニング。>0.2のELISAシグナルを与えるクローンを、結合物と見なした。A:0種のクローン、B:2種のクローン。PD:古典的なファージディスプレイスクリーニング。図13は、ビオチンチラミド(A)および開裂可能なジスルフィド結合を有するビオチンチラミド(B)の夫々の構造を示す。図14は、CTLA4の結合物についてのファージライブラリのスクリーニングを示す。左:ビオチンチラミドを使用、右:ビオチン−SS−チラミドを使用。>0.2のELISAシグナルを与えるクローンを、結合物と見なした。左:2種のクローン、右:4種のクローン。図15は、MreBの結合物についてのファージライブラリのスクリーニングを示す。左:ビオチンチラミドを使用、右:ビオチン−SS−チラミドを使用。>0.15のELISAシグナルを与えるクローンを、結合物と見なした。左:2種のクローン、右:8種のクローン。図16は、チオレドキシンの結合物についてのファージライブラリのスクリーニングを示す。左:ビオチンチラミドを使用、右:ビオチン−SS−チラミドを使用。>0.2のELISAシグナルを与えるクローンを、結合物と見なした。左:3種のクローン、右:6種のクローン。 本発明者らは、多様なライブラリのスクリーニングが、抗体とその抗原との一過性の相互作用を、永久的な標識、すなわちファージまたは微生物細胞の表面とビオチンとの共有結合に変換することを介する3CARDを使用して、有意に加速され得ることを示す。これは、ファージまたは酵母の表面上に連結された酵素反応の適用を介して達成され、ここで、標的が結合されたオキシダーゼは、ビオチンチラミドを活性化するためファージ結合ペルオキシダーゼに必要とされるH2O2を生成する。ビオチンチラミドは免疫組織化学において、また、選択的に標識する酵素を表示する細胞に対しても、広範囲に使用されている。酵素が形成されたチラミドラジカルは、水性溶液中のその短い半減期のせいで、形成部位で反応し、よって、ビオチンの部位特異的な共有結合性の沈着を可能にする(Bobrow et al., 1989, 1991,1992, Becker et al.2007, 2008, Lipovsek et al. 2007)。 遺伝型−表現型の繋がりを生じさせるためには、ビオチン化反応は、注意深く制御されなければならず、所定の相互作用パートナーと特異的に相互作用することができる希少なライブラリメンバーの集団に限定されなければならない。この目的のため、チラミドラジカルを形成するHRPの活性がオキシダーゼを介する過酸化水素の形成によって制御される、連結された酵素反応が確立された。この場合、溶液中の抗原−オキシダーゼコンジュゲートは、ファージ粒子より膨大な過剰量で存在する。しかしながら、チラミドを活性化するためHRPに必要とされるH2O2の過剰な産生は、過酸化水素を効率的かつ連続的に解体するカタラーゼの添加により回避され得る。さらに、連結反応を、過剰の過酸化水素をさらに減らすために、各オキシダーゼに準最適なpHで、実施する。結果として、オキシダーゼに極めて近接しているHRP分子のみが、過酸化水素分子がカタラーゼにより分解される前にそれを捕捉する機会がある。同時に、当該システムは、抗原結合ファージ上のHRPにH2O2を独占的に利用可能にさせることと、その短い半減期のせいで局所的に作用するチラミドラジカルを生成させることとの両方によって、標的に結合したファージを選択的にビオチン標識することを保証する数層の安全性を継承する。 本発明者らが知っている限りでは、これが、連結された酵素反応をファージディスプレイスクリーニングに適用する初めてのものである。標的を結合するバクテリオファージを永久的に標識する単一酵素アプローチは、10年以上前にMcCaffertyおよび共働者により記載されている。それは「草分け技術」と称され、抗体を表示するファージの、細胞表面または標的タンパク質上の特定の部位でのHRPが仲介するビオチン化に依存する(Osbourn et al. 1998)。この実験の設定において、ペルオキシダーゼは、ファージ粒子とは直接連結しなかった。代わりに、ファージ抗体結合部位から離れた標的タンパク質に結合する、標的タンパク質(例えば抗体)に対するペルオキシダーゼがコンジュゲートされたリガンドを使用した。標的上の、標的に結合したファージとHRPとの共局在化によって、ファージのビオチン化がもたらされる。この方法は、もっぱら、標的タンパク質を暴露した細胞表面に適用されるものであって、ストレプトアビジンビーズへの結合を介してファージを捕捉する前に、細胞の遠心分離および洗浄によって、過剰のペルオキシダーゼ−リガンドコンジュゲートと、ビオチン化されていようとなかろうと非結合のファージ粒子との除去を可能にする。ここに記載された方法は、ペルオキシダーゼの基質である過剰の過酸化水素を排除するカタラーゼの添加によりファージ粒子の交差ビオチン化を強力に低減することで、可溶性の標的のスクリーニングに首尾よく適用することができる。 結合物と標的タンパク質との一過性の相互作用を共有結合性のビオチン標識に変換することによって、吸着マトリックスへ非特異的に結合するファージを除去するための極めてストリンジェントな洗浄条件を適用することができるという主要な利点が提供される。ビオチンとストレプトアビジンとの相互作用がこれらの条件下で安定であることが知られているため(Hofmann et al. 1980)、我々は、pHを2.2まで低下させるのと同様、界面活性剤を使用することを含む広範囲な洗浄手順を使用してきた。低pHでは、ファージが結合した標的タンパク質複合体が変性し、したがって解離することは予測され得ることであるが、暴露されたpIIIタンパク質を必要とするE. coli細胞のファージ感染とっては有益であり得る。我々は、磁性ビーズに結合したファージ粒子が細菌感染に直接使用され得ることを観察したことから、pH2.2でも安定した状態を保つ極めて安定なビオチンとストレプトアビジンとの相互作用を破壊し、マトリックスからファージ粒子を脱着するのに苦労しなかった。ストレプトアビジンマトリックスからビオチン化ファージを選択的に切り離すことを可能にする開裂可能なリンカーを有するビオチンチラミドのコンジュゲートの使用は、非特異的に結合したファージの不要なバックグラウンドをさらに低減させることができる。 ここに記載された手順は、中程度の親和性の結合物を生み出した。両ライブラリが、同様の親和性を有する結合物を生み出す従来のファージディスプレイ(LibA)および酵母表面ディスプレイ(LibB)の戦略を適用するVHHの単離に既に使用されていたため(データは示さず)、これは予測できないものではなかった。さらに、LibBは、in vivoでの親和性成熟の欠如ため自体が低親和性および中程度の親和性の結合物の広範なレパートリーを含むと予測される非免疫ラマに由来する。目下、3CARDファージディスプレイスクリーニングによって低親和性の結合物と高親和性の結合物との識別が可能になるか、したがって親和性成熟スクリーニングに使用することができるかについては、まだ実験的に解明されていない。オキシダーゼ−標的のコンジュゲートの濃度が自由に変動され得るため、標的濃度の低減を介するまたはオフレート選択(off-rate selection)を介する親和性選択により高親和性の結合物をスクリーニングすることは実現可能であり得る(Hawkins, Russell 1992)。親和性選択では、抗原がファージより過剰に存在するが、抗体の解離定数(Kd)より抗原濃度が小さくなるようにするように、ファージが、少量の可溶性オキシダーゼがコンジュゲートされた抗原と混合され得る。抗原と結合したそれらファージは、その後、3CARDにより標識され、磁性ビーズへの捕捉により単離される。オフレート選択では、抗体は、オキシダーゼと連結した抗原に予めロードされ、ストレプトアビジン被覆常磁性ビーズへの3CARD捕捉前に、非コンジュゲートの過剰の抗原へ希釈され得る。 結論として、ここに記載された戦略は、109を超える異なるバリアントを有する極めて大きなファージディスプレイまたは微生物ディスプレイのライブラリの最初のスクリーニングに特に有用であり、ここで重要なのは、第1のスクリーニングラウンドにおいて、大きなバックグラウンドの非特異的ファージに対し、希少な標的結合物を濃縮することである。連結された酵素反応とレポーター沈着とを介する遺伝型と表現型との繋がりはまた、将来的な適用に対して興味深い派生効果を有する、細菌細胞および酵母細胞の表面上に表示されたライブラリのスクリーニングにも適用可能であり得る。 下記の例は、例示する目的のために提供されるが、決して本発明の範囲を制限することを意図していない。特に、本発明の説明における例および他のどこかに記される異なる態様の新規な特定の組み合わせは、それらが具体的に言及されていないとしても、常に予期される。例1:オキシダーゼの標的タンパク質へのコンジュゲーション オキシダーゼと標的タンパク質との共有結合のための2つの直接的な連結方法を確立した。最初のコンジュゲーションスキームは、E. coli内で発現することができるガラクトースオキシダーゼ(GOアーゼ)のM1バリアントの使用に依存する(Sun et al. 2001)。GOアーゼへの標的タンパク質の連結のために、酵素と関心のあるタンパク質との間のコイルドコイル形成に依存する先に確立された手順を使用した。この目的のため、標的タンパク質およびオキシダーゼは、カルボキシ末端のヘキサヒスチジンタグに続いて、緊密なヘテロ二量体を形成することが知られている(Steinman et al. 2010)グルタミン酸残基(Eコイル)またはリジン残基(Kコイル)を含むコイルドコイル配列が与えられた。Eコイル配列(EVSALEK)5は、遺伝的にLipHと融合し、Kコイル配列(KVSALKE)5は、ガラクトースオキシダーゼのカルボキシ末端と融合した。両タンパク質を、E. coli内で別々に発現させ、精製した。ヘテロ二量体形成を、単にオキシダーゼとLipHとを混合することによって達成し、ネイティブポリアクリルアミドゲル電気泳動により確かめた(図6、7)。代替的なコンジュゲーション方法では、市販のグルコースオキシダーゼを使用した。この酵素がグリコシル化されていることから、標的タンパク質とのタンパク質コンジュゲーションは、末端糖部分の過ヨウ素酸塩(periodate)酸化に続いて、標的タンパク質の表面上に存在するリジン残基と、結果として生じるアルデヒドとのシッフ塩基形成により、容易に達成され得る(Greg T. Hermanson, 1996)。この目的のために、Fusarium spec.からの酸化されたグルコースオキシダーゼを、モル過剰のLipHタンパク質とインキュベートし、その融合物を、LipH部分のヘキサヒスチジンタグを使用する金属キレート親和性クロマトグラフィにより、コンジュゲートされていないオキシダーゼから精製した(図8)。例2:ファージ上の連結された酵素反応 西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)が、抗原結合との負の干渉なしに、線状ファージの表面に連結され得るか調査するため、抗LipH VHHを表示するファージ粒子と、無関係なペプチドを表示する対照ファージとを、酸化されたHRPとともにインキュベートし、ポリエチレングリコールを使用する数回のファージ沈殿を介して精製した。マイクロタイタープレートのウェルを、LipH標的タンパク質で被覆した。HRPで被覆された、抗LipH VHH抗体を表示したファージの、固定化抗原への結合を、発色性の基質TMBを使用するペルオキシダーゼ活性の測定を介して確かめることができた(図2a)。連結された反応が、オキシダーゼがHRPに必要とされる過酸化水素を送達するファージ表面上で生じ得るかは、まだ解明されないままであった。マイクロタイタープレートをLipH−GOアーゼのコンジュゲートで被覆した。HRPで被覆され、抗LipH VHHを表示するファージまたは無関係な抗原を表示する対照ファージの夫々を加えた。洗浄後、ガラクトースを添加し、ペルオキシダーゼ活性を検出することができ、(図2b)これは、連結された反応がファージ上で起こっていることを示す。例3:遺伝子型−表現型の連結の確認 遺伝型−表現型の連結の確認のため、抗LipH VHHを提示するファージを対照ファージと、1:10,000および1:100,000の夫々の比率で混合した。HRPコンジュゲーションおよびLipH−GOアーゼ複合体添加の後、連結酵素反応を、ガラクトース、ビオチン、チラミドおよびカタラーゼの添加によって開始させた。30分のインキュベート後、ビオチン化ファージを、ストレプトアビジンで被覆された磁性ビーズへの結合を介して捕捉した。PBS、PSB−ツイーンおよびpH2.2のグリシン緩衝液の夫々による完全な洗浄の後、ファージが結合したビーズを、E. coli細胞を感染させるために、直接使用した。同じスクリーニング手順のラウンドをさらに2回適用し、抗LipH−VHHを提示するファージの濃縮を、ファージELISAおよびPCR解析により確認した。単回スクリーニングラウンド後の両混合物において、標的結合ファージが、かなりの程度まで蓄積した(図3a)。スクリーニングラウンド2の後の個々のクローンのPCR解析により、1:10,000希釈の16種のクローンのうち6種と、1:100,000希釈の16種のクローンのうち3種が、VHH遺伝子の存在を示す676bpフラグメントを含むことが明らかになった。方法プロトコルを最適化し、その再現性を確保するため、この混合実験を同様の結果で数回繰り返した。濃縮は、ビオチンチラミドとガラクトースとの両方の存在によって決まる(図9)。例4:3CARD VHHライブラリスクリーニング 3CARDファージスクリーニングが、ファージライブラリから抗原結合物の高速の選択に使用することができるかを調査するため、ラクダ科動物の2種のVHHファージディスプレイライブラリを使用した。LibAは、ランダムにまだら入りの超可変ループ配列を有するラクダ科動物の可変重鎖の約108バリアントを含む(Habicht et al. 2007)。LibBは、公開された手順(Monegal et al. 2009)を使用する12頭の非免疫ラマのVHHレパートリーをファージディスプレイベクターpAK200へクローニングを介して得られた未処理のVHHドメインライブラリ(3×109クローン)である。グルコースオキシダーゼに連結された3つの異なる標的タンパク質、すなわち、抗上皮成長因子受容体抗体であるセツキシマブ(Robert et al. 2001)、マラリア原虫の種虫(マラリアの原因病原体)による蚊の侵入プロセスに関与するハマダラカ由来の唾液腺タンパク質であるサグリン(Okulate et al. 2007)および血液凝固に関与するヒトトランスグルタミナーゼである第XIII因子(Komaromi et al. 2010)を、スクリーニングに使用した。スクリーニングラウンド1または2の後、夫々、ファージを、64種の個々のクローンから生成させ、ファージELISAを介して標的タンパク質結合を精査し、3種の全標的において、標的結合ファージクローンの蓄積が示された(図4)。 各スクリーンからの想定される1つの結合物のコード配列を、発現ベクターpEXに移し、夫々のVHHタンパク質を産生させ、E. coli細胞溶解物から精製した。夫々の標的タンパク質との相互作用を、バイオレイヤー干渉法(biolayer interferometry)により確認し、ナノモル範囲中間の解離定数を得(表1)、スクリーニングスキームが、1回または2回のスクリーニングラウンドにおいて、いくつかの無関係な標的に対し、異なるライブラリから単一ドメイン抗体を得るのに十分に着実であるという考えを裏付けた。オキシダーゼ、ペルオキシダーゼまたはファージタンパク質結合物を、最初のファージライブラリからスクリーニング前に除去するのに苦労しなかった。したがって、選択されたファージ集団が有意な割合で構成され得る。例5:オキシダーゼの抗原へのコイルドコイル形成を介するコンジュゲーション オキシダーゼと標的抗原とのヘテロ二量体を得るため、C末端のヘキサヒスチジンタグに続いて酸性コイル(EVSALEK)5をコードする配列を有するP. aeruginosaのLipHを、E. coli内で発現させた(Steinmann et al 2010)。同様に、ガラクトースオキシダーゼM1に、C末端にヘキサヒスチジン精製タグに続いて、(KVSALKE)5を与えた。両タンパク質を、金属キレート親和性クロマトグラフィにより精製し、スクリーニング実験に使用する前に、1:1のモル比で混合した。例6:過ヨウ素酸ナトリウム酸化 18.8mgの過ヨウ素酸ナトリウム(87,8μmol、Sigma)を、1mlのH2O中に希釈した。酸化されるべきタンパク質であるHRPまたはグルコースオキシダーゼ(Sigma)のいずれかを、H2O中、10mg/mlの最終濃度まで希釈した。酸化させるため、200μlのタンパク質溶液を、20μlの過ヨウ素酸ナトリウム保存溶液と混合した。暗中室温で20分間インキュベートした後、反応混合物を、100mMのホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.1)で予め平衡化したPD10カラム(GE Healthcare)で精製した。酸化されたタンパク質を含む1.4mlの溶出液に、ホウ酸ナトリウム緩衝液を満たして2mlとし、アリコートにして−20℃で保管した。例7:グルコースオキシダーゼへの標的タンパク質連結 過ヨウ素酸塩で酸化された0.1mgのグルコースオキシダーゼ(1mg/mlの濃度)を、200μl緩衝液中の同モル量または同モルより少ない量の標的タンパク質とともに、暗中、室温で180分間インキュベートし、続いて、Superdex 75 pg 16/60または Superdex 200 pg 16/60カラムの夫々を使用するゲル濾過クロマトグラフィを行い、初めに溶出した画分を回収した。 重要不可欠なステップ:コンジュゲート形成は、ネイティブゲル電気泳動またはゲル濾過クロマトグラフィのいずれかで検査すべきである。ヘテロ二量体コンジュゲートの収量が、標的タンパク質の表面上の接近可能なリジン残基の数に応じて変動し得るため、一般的に、コンジュゲーション産物を、SepharoseまたはSuperdexカラムを使用するゲル濾過クロマトグラフィにより精製し、初めに溶出する画分を回収することを推奨する。例8:M13ファージへのHRP連結 HRP連結の前に、ストレプトアビジン結合物を、ファージライブラリから除去した。この目的のために、100μlのpAK200−VHHファージ(3*1010ファージ)を、10μlのストレプトアビジン−Dynabeads(T1、Invitrogen)とともに、振盪器中40rpmで、RTで30分間インキュベートした。磁性粒子濃縮機を使用してビーズを分離した後、上清を、1.5ml反応チューブ内へ移し、100μlの酸化されたHRP(pH9.1のホウ酸塩(borate)緩衝液中2mg/ml)を加えた。反応混合物を、ゆっくりとした撹拌の下、暗中、室温で45分間インキュベートした。非連結のHRPを除去するため、ファージ沈殿緩衝液(20%のPEG 6000、1,5MのNaCl)を加え、続いて氷上45分間インキュベートした。卓上遠心分離機で遠心分離(30分間)した後、ファージペレットを、50μlのPBS中に溶解した。例9:ファージ上の連結した酵素反応 5μl(3pMol)の抗原−オキシダーゼコンジュゲートを、HRPがコンジュゲートした50μlのファージ懸濁液に加え、軽く撹拌しながら4℃で90分間インキュベートした。その後、反応体積を、PBS緩衝液の添加により500μlまで増やした。GOアーゼをレポーター酵素として使用するとき、pHを、ホウ酸塩緩衝液の添加を介して9.1に調整した。その後、1μlのカタラーゼ(2mg/ml)と、2.5μlのビオチンチラミドの保存溶液(11.5μM)とを加えた。酵素反応を、10μlの10mMグルコースまたは10μlの10mMガラクトースを夫々加えることによって、開始させた。反応混合物を、暗中、室温で15分間インキュベートし、200μlのカタラーゼ(2mg/ml)の添加により停止させた。3分後、700μlのファージ沈殿緩衝液を加え、混合物を氷上45分間インキュベートした。ファージペレットを、卓上遠心分離機で遠心分離(20分間、4℃)することによって回収し、200μlのPBS中に再懸濁した。 必要不可欠なステップ:夫々のオキシダーゼに準最適なpHで反応を実施することによってオキシダーゼ活性を低下させることが必須である。この目的のため、ファージ上に連結された酵素反応は、GOアーゼを使用する場合、pH9.1のホウ酸塩緩衝液中で実施すべきである。該pHは、該酵素に最適なpH(pH7.0)をはるかに超えており、これによって、酵素性反応の速度が落ち、過剰な過酸化水素の産生が回避される。グルコースオキシダーゼのケースでは、最適なpHは5.5であるから、反応は、pH7.4のPBS中で実施すべきである。ファージに結合していないオキシダーゼによって産生された過剰な過酸化水素を破壊するカタラーゼを加えることもまた重要である。該過酸化水素は、そうでなければ、その形成場所から離れて拡散し、近隣のファージ粒子上に取り付けられたペルオキシダーゼの基質として作用し得る。例10:ビオチン化ファージの捕捉 ストレプトアビジンが連結された20μlの磁性ビーズ(Dynabeads T1、Invitrogen)を試料に加え、撹拌によって30分間インキュベートした。その後、ビーズを、200μlのPBS緩衝液で5回洗浄した。磁性粒子収集器を使用して、上清からビーズを分離した。後に、回収されたビーズを、200μlのPBS緩衝液中に懸濁し、新しいチューブに移すことによって、見せ掛けの結合をした可能性のある抗体−ファージを排除した。ビーズを回収し、200μlの10mMグリシン−HCl(pH2.2)中に再懸濁し、8分間インキュベートし、非特異的に結合したファージをビーズから除去した。この手順をもう1回繰り返した。最後に、ビーズを、PBSツイーン緩衝液(PBS緩衝液中0.05%のツイーン20)を使用して5回、PBS緩衝液で5回、洗浄した。例11:E. coli細胞の感染 最後の洗浄ステップの後、ファージが結合した、ストレプトアビジンで被覆されたビーズを、200μlのPBS中に再懸濁し、OD600が0.5のとき20mlの細菌の培養液体中に希釈することを介して、E. coli ER 2738の感染に使用し、振盪せずに37℃で30分間インキュベートした。細胞を、遠心分離によって回収し、1.5mlのPBS中に溶解し、クロラムフェニコール(25μg/ml)を含む寒天プレート上に、500μlのアリコートから画線し、37℃で終夜インキュベートした。例12:ファージ産生のための一般的方法 ファージミドpAK200−VHHを含むE.coli菌株ER2738(Gough 1983, Woodcock 1989)を、37℃で、50mlのdYT(CMが25μg/ml、TETが100μg/ml)中、OD600が0.1になるまで成長させ、10μlのヘルパーファージM13VCSを加えた。感染を、37℃で45分間細胞をインキュベートすることによって、実施した。カナマイシン(75μg/ml)を加え、培養物を、OD600が0,5に達するまで、37℃でインキュベートした(200rpm)。その後、50μlの1MのIPTGを、VHH−pIII合成の誘導のため、加え、インキュベートを28℃で12h続けた。産生されたファージを、ファージ沈殿により収集した。この目的のため、細胞を、遠心分離(3200g、12分間、4℃)により回収し、35mlの上清を、50ml高速ファルコンチューブに移した。8mlのファージ沈殿緩衝液(20%のPEG 6000、1,5MのNaCl)を加え、混合物を、氷上で4時間インキュベートした。沈殿されたファージを、遠心分離(20200g、4℃、30分間)により回収した。その結果生じたファージペレットを、1.6mlのPBS中に溶解し、ファージを、400μlの沈殿緩衝液を加え、4℃で10分間インキュベートすることによって、再沈殿させた。遠心分離(16000g、10分間、RT)後、残りのファージペレットを、1mlのPBS中に溶解した。ファージタイターを、段階希釈のファージ粒子のER2738への感染によって決定するか、またはO.D320およびOD269の決定を介して分光測定で決定した(Smith, Scott 1993)。ファージを、さらに使用するまで、4℃で保管した。例13:ビオチンチラミドの合成 10mg(17.96μmol)のSulfo-NHS-LC-ビオチン(Thermo Scientific)を、800μlの乾燥DMF中に希釈し、200μlの乾燥DMF中2mg(11.51μmol)のチラミド(Sigma-aldrich)の溶液と混合した。その後、3μlのトリエチルアミンを加え、反応混合物を、RTで2hインキュベートした。残りの過剰なSulfo-NHS-LC-ビオチン(Pierce)をクエンチするため、20μlの1−プロピルアミンを溶液に加えた。RTで4hインキュベートした後、その結果生じた産物を、さらに精製せずに、−20℃で保管した。ビオチン−チラミドの形成を、HPLCおよびLC−MSにより確かめた。ビオチンチラミドの化学構造を図5に示す。例14:技術水準のファージディスプレイとの比較 本発明のファージライブラリスクリーニング方法が、現状のスクリーニング方法よりも優れていることを示すため、古典的なスクリーニングおよび3CARDスクリーニングを、同一のスクリーニング条件を使用して並行して実施した。標的:セツキシマブおよびLipH(標的は既に、本発明ならびにスクリーニング方法論において説明した)。3CARDスクリーニングを、1回のスクリーニングラウンド対して、記載のように実施した。古典的スクリーニングにおいて、3CARDと同じ濃度(4.5nM)のビオチン化標的タンパク質を使用した。ファージライブラリを、ビオチン化標的タンパク質とともにRTでインキュベートした。20分後、標的結合ファージを、ストレプトアビジンで被覆された磁性ビーズに捕捉させた(15分間)。ビーズを1mlのTPBSで10回洗浄した後、残りの結合したファージを、pH2.2のグリシン緩衝液で溶出させ、E. coli細胞の感染のために使用した。1回のスクリーニングラウンドの後、ファージを、96種の個々のクローンから調製し、ファージELISAを使用して、夫々の標的タンパク質に結合するそれらの能力について精査した。結果を図11および12に示す。例15:3CARD技術のさらに好ましい態様 標的結合ファージに標識するための新規化合物として、ビオチン部分とチラミド部分との間に、繋げるための分子であるジスルフィド結合を含むビオチンチラミド誘導体を使用した。結果として、標識されたファージから、ビオチン部分を、例えばジチオスレイトール等のマイルドな還元剤の添加を介して、開裂して除くことができる。ビオチンチラミドの合成 10mg(17.96μmol)のSulfo-NHS-LC-ビオチン、Sulfu-NHS-SS-ビオチン(Thermo Scientific)の夫々を、800μlの乾燥DMF中に希釈し、200μlの乾燥DMF中の2mg(11.51μmol)のチラミド(Sigma-aldrich)の溶液と混合した。その後、3μlのトリエチルアミンを加え、反応混合物をRTで2hインキュベートした。残りの過剰なSulfo-NHS-LC-ビオチン、Sulfo-NHS-SS-ビオチンの夫々をクエンチするため、20μlの1−プロピルアミンを溶液に加えた。RTで4hインキュベートした後、その結果生じた産物を、さらに精製せずに−20℃で保管した。ビオチンチラミドの形成は、HPLCおよびLC−MSにより確かめた。 標的結合ファージについて3つの追加のスクリーニングを、この新規標識分子を使用して実施した。標的タンパク質として、E. coliタンパク質であるMreB、ヒトCTLA4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4)の細胞外ドメインおよびチオレドキシンを使用した。 ファージライブラリスクリーニングにおいて、既に記載されたものと同じファージライブラリを使用した。また、標的−オキシダーゼの連結も、記載されたように実施した。ファージ標識後、ビオチン化ファージを、ストレプトアビジンで被覆された磁性ビーズに捕捉された。完全に洗浄後、捕捉されたファージを、ビオチンチラミを使用するケースにおいて、E coli細胞の感染のために直接使用した(図14〜16、左パネル)。ビオチン−SS−チラミドを使用して標識したファージにおいて、磁性ビーズに結合したファージ粒子を、還元剤として50mMのジチオスレイトールを加えることを介して、開裂して除いた。その後、溶出されたファージを、E. coli細胞に感染するために使用した。各スクリーニングにおいて、ファージを、96種の単一クローンから調製し、ファージELISAを使用して夫々の標的タンパク質に結合するそれらの能力を精査した。 本スクリーニングによって、単回スクリーニングラウンド1回の後には既に、標的結合ファージが提供される。改善された基質および改善されたファージ単離手順を使用することによって、陽性候補の数が、より大きな数まで増加した。 特異的に標識された複製実体の単離のための方法であって、該方法は、 a)複製実体の一群であって、それらの表面上に受容体分子のバリアントを表示し、かつ前記表面と繋がった第1酵素または第2酵素のいずれかを有する、前記一群を、反応混合物中に供すること、 b)前記実体が前記第2酵素と繋がっている場合には前記第1酵素と繋がったリガンド分子、または、前記実体が前記第1酵素と繋がっている場合には前記第2酵素と繋がった前記リガンドのいずれかを、ステップa)の前記混合物に加えること、 c)前記第2酵素のための基質を、前記反応混合物に加えること、ここで、前記基質が、酵素反応において、前記第2酵素に利用されることによって、前記第1酵素に利用される産物が産生し、前記第1酵素の補基質が、前記複製実体の夫々に物理的に繋がる反応性マーカー分子に変換され、それによって、前記複製実体が特異的に標識される、および d)前記の特異的に標識された複製実体を単離することを含む、前記方法。 ステップa)の反応混合物が、第1酵素および/または第2酵素の過剰産物を分解することができる第3酵素を含む、請求項1に記載の方法。 複製実体が、ファージ、ファージミドまたは細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。 複製実体が、酵母細胞、好ましくはSaccharomyces cerevisiaeである、請求項3に記載の方法。 第1酵素が、ペルオキシダーゼであり、第2酵素が、オキシダーゼであり、第3酵素が、カタラーゼである、請求項1に記載の方法。 第2酵素の基質が、グルコースであり、産物が、H2O2である、請求項2に記載の方法。 第1酵素の補基質が、マーカー分子にコンジュゲートされたチラミドである、請求項1に記載の方法。 マーカー分子が、ビオチン、(2,4)−ジニトロフェニル、フルオレセインまたはジオキシゲニン誘導体である、請求項7に記載の方法。 チラミドが、開裂可能なリンカー、好ましくはジスルフィド結合またはプロテアーゼによって開裂され得るペプチド配列、によって、マーカー分子と繋がっており、好ましくは下記構造:の開裂可能なジスルフィド結合を有するビオチンチラミドである、請求項7に記載の方法。 マーカー分子が、ビオチンであり、単離ステップd)が、アビジンマトリックスまたはストレプトアビジンマトリックスでの親和性クロマトグラフィによって達成される、請求項7に記載の方法。 マーカー分子が、フルオレセイン、または、ビオチンと結合した蛍光アビジンもしくは蛍光ストレプトアビジンであり、単離ステップd)が、蛍光活性化細胞選別によって達成される、請求項7に記載の方法。 マーカー分子が、ビオチンであり、単離が、前記のビオチンが標識された実体と結合した、ストレプトアビジンまたはアビジンで被覆された常磁性粒子の磁気細胞選別を含む、請求項1に記載の方法。 天然には存在しない複製実体であって、その表面上に様々な受容体分子を表示し、かつ、その表面に連結された酵素を有する、前記実体。 酵素が、ペルオキシダーゼまたはオキシダーゼからなる群から選択される、請求項13に記載の実体。 受容体分子が、抗体または抗体由来のフラグメントである、請求項13の実体。 請求項13に記載の実体、基質および補基質を含む、キット。 実体が、ファージ、ファージミドまたは細胞からなる群から選択され、前記細胞が、好ましくは酵母細胞、より好ましくはSaccharomyces cerevisiaeであり、受容体分子が、抗体であり、前記実体の表面と繋がった酵素が、グルコースオキシダーゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼであり、基質が、グルコースであり、補基質が、マーカー分子、好ましくはビオチン、と連結したチラミドである、請求項16に記載のキット。 下記構造:のビオチンチラミド。 ライブラリスクリーニングの単回ラウンドから特異的な結合物が得られる複製実体への、受容体分子の選択的な共有結合のための、一般に適用可能な方法を開示する。例えば、結合物を所定のあらゆる標的に対して表示するファージ粒子および酵母細胞の選択的なビオチン化は、ペルオキシダーゼ、オキシダーゼおよびカタラーゼを含む、連結された酵素反応の適用によって達成され得る。