タイトル: | 公表特許公報(A)_血清代替物および不安定因子を備えるキット |
出願番号: | 2014533113 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C12N 5/071,C12N 5/073,C12N 5/074,C12N 5/0789,C12N 5/078,C12N 5/0775 |
エルホフィ アダム ウェーバー アラン JP 2014533113 公表特許公報(A) 20141211 2014541340 20121109 血清代替物および不安定因子を備えるキット エッセンシャル ファーマシューティカル エルエルシー 514118077 中島 淳 100079049 加藤 和詳 100084995 西元 勝一 100085279 エルホフィ アダム ウェーバー アラン US 61/558,740 20111111 C12N 5/071 20100101AFI20141114BHJP C12N 5/073 20100101ALI20141114BHJP C12N 5/074 20100101ALI20141114BHJP C12N 5/0789 20100101ALI20141114BHJP C12N 5/078 20100101ALI20141114BHJP C12N 5/0775 20100101ALI20141114BHJP JPC12N5/00 202AC12N5/00 202BC12N5/00 202DC12N5/00 202QC12N5/00 202JC12N5/00 202H AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC US2012064508 20121109 WO2013071151 20130516 25 20140702 4B065 4B065BB02 4B065BB04 4B065BB19 4B065BB32 4B065CA44 本出願は、2011年11月11日に出願の米国特許仮出願第61/558,740号に基づく優先権利益を主張するものであり、その開示の全体は、参照により本願に組み込まれる。 本開示は一般に、血清代替物と、一つ以上の不安定因子、例えば成長因子、サイトカインまたはホルモン等とを備えた、セルを培養するためにキットに関し、血清代替物および不安定因子は、キット内で別々にパッケージングされる。このキットは、成分の保存性を延ばし、培養における細胞成長の効能および一貫性を向上させるものである。 ヒトまたは動物への投与に関する試験管内試験または生体外培養のための、例えば哺乳動物細胞や昆虫細胞等の細胞の培養は、ヒト疾患の研究および治療のための重要なツールである。例えばウイルス性ワクチン、単クローン抗体、ポリペチド成長因子、ホルモン、酵素および腫瘍特異性抗原等の細胞培養株は、各種生物学上活性製品の生成のために広く使われている、しかしながら、細胞の培養に用いる培地または方法の多くは、細胞成長および/または未分化細胞培養株の維持の上で負の影響を与える成分を備えている。培養において増殖および細胞成長を促進する成長因子、キャリアタンパク質、接合および拡張因子、栄養源および微量元素に提供するため、例えば哺乳動物または昆虫の細胞培地は、ウシ胎仔血清(FCS)やウシ胎児血清(FBS)等の血液由来の血清でしばしば補われる。しかしながら、FCSまたはFBS中に見出される因子、例えば形質転換成長因子(TGF)ベータまたはレチノイン酸等が、特定タイプの細胞の分化を促進してしまい(Keら,Am J Pathol. 137:833−43, 1990)、または、細胞中に意図的でない下流シグナリングを開始して、培養に不必要な細胞の活性を促進してしまう(Veldhoen ら, Nat Immunol. 7(11): 1151−6, 2006)。 さらに、血清組成の性質が特徴付けられず、また、血清がロット間で変動するため、血清代替物および無血清培地中での培養を使用することが望ましくなる(Pei et al., Arch Androl. 49(5): 331−42, 2003)。さらに、細胞培養株中で成長させた治療用細胞、組み換え型タンパクまたはワクチンに対して、動物由来の成分を添加することは、ヒトに投与したときに、ウイルス汚染の危険性を生じ、および/または、動物タンパク質に免疫原性の影響に及ぼしうるので、望ましくない。 細胞培養株へのFCSの影響を最小にする試みや、ヒト細胞の培養のために用いられる動物タンパク質の量を最小にする試みの中で、血清代替物は開発されてきた。血清代替物、例えばKNOCKOUT(商標)血清代替物(インビトロジェン社、米国カリフォルニア州カールスバド)は、化学的に画定された培地のことをいい、血清を欠いていて細胞成長のために必須栄養素および他のタンパクを含んでいる。KNOCKOUT SR(商標)は、タンパク因子を含み、その全ては、商品の配合において含まれる半減期が短い。KNOCKOUT SR(商標)は、供給装置細胞の平板培養においてFBSのために代替物として用いられることができないが、それは接合因子が欠如しているためであり、そのため、この配合で細胞接合が不具合になる。PC−1(商標)無血清培地(Lonza社、米国メリーランド州ウォーカーズビル)は、低タンパクの、特別に変性したDMEM/F12培地ベースで処方される無血清培地であり、完全なHEPES緩衝作用システム含み、既知量のインスリン、トランスフェリン、脂肪酸および特許を有するタンパクを有している。PC−1培地におけるトランスフェリンは、溶液中での半減期が2〜4週である。 Cellgro COMPLETE(商標)(Cellgro社、米国バージニア州マナサス)は、DMEM/F12と、RPMI1640と、McCoy社の5Aとの混合物に基づく、無血清の低タンパク配合である。Cellgro COMPLETE(商標)は、インスリン、トランスフェリン、コレステロール、成長または接合因子を含まない。Cellgro COMPLETEは(商標)、微量元素および高分子量炭水化物、特別なビタミン、非動物性タンパク源およびウシ血清アルブミン(1グラム/リットル)の混合物を備える。Cellgro FREE(商標)(Cellgro社、米国バージニア州マナサス)は、無血清および無タンパク細胞増殖培養液であり、あらゆるホルモンまたは成長因子を含まない。 また、国際特許公開WO2009023194号、WO2008137641号、WO2006017370号、WO2001011011号、WO2007071389号、WO2007016366号、WO2006045064号、WO2003064598号、WO2001011011号、米国特許出願公開US20050037492号、US20080113433号、US20080299540号、米国特許第5,324,666号、第6,162,643号、第6,103,529号、第6,048,728号、第7,709,229号、および欧州特許出願公開EP2243827号に、無血清培地が記載されている。 米国特許第7,220,538号には、親油性ナノパーティクルおよび基本栄養培地を備える細胞培地が記載されている。 本開示は、インビトロでの細胞の培養のための試薬を備えるキットを提供するものである。キットは、血清代替物および不安定因子を提供し、別個の容器にパッケージングされ、細胞培養株に用いたとき、本明細書に記載されるキットに提供される試薬を用いて成長する細胞の成長および一貫性を向上させることを可能にするものである。 各種態様では、本開示は、血清代替物を備える第1の容器と、少なくとも1つの成長因子等の不安定因子を備える別個の容器1つ以上とを備える、インビトロでの改良された細胞培養キット、ならびに、使用説明書を提供するものである。 各種実施形態では、血清代替物は、i)リポソームおよびii)基本栄養培地を備えている。関連した実施形態において、リポソームはナノパーティクルである。 各種実施形態では、リポソームは、脂質、脂肪酸、ステロールおよび/または遊離脂肪酸を備える。各種実施形態では、ナノパーティクルは、約50〜500nm、約100nm〜約300nm、または約100〜200nmの各範囲の平均径を有する。 各種実施形態では、細胞培養株を行う前に、血清代替物を塩基性培地に加える。標準の塩基性培地は、当該技術分野で既知であり、市販されている。このような培地の非限定的な例としては、Dulbecco社のModified Eagle’s Medium(DMEM)、Dulbecco社のDMEM F12、Iscove社のModified Dulbecco Medium、Ham社のNutrient mixture F−10、Roswell Park Memorial Institute Medium(RPMI)、MCDB131、Click培地、McCoy社の5AMedium、 Medium199、William社の Medium E、および昆虫培地、例えばGrace培地およびTNM−FH等を挙げることができる。 これらの培地のいずれかは任意に、塩、アミノ酸、ビタミン、バッファ、ヌクレオチド、抗生物質、微量元素およびグルコースまたは等価のエネルギー源が補われる。また、他の随意の補助成分が、当業者に既知の適切な濃度で含まれてもよい。培地補助成分は従来技術において周知であり、市販されており、発明の詳細な説明において更に詳細に説明される。 各種実施形態では、血清代替物は、基本培地の各要素と、上記補助成分、例えば、塩、アミノ酸、ビタミン、バッファ、ヌクレオチド、抗生物質、微量元素およびグルコースまたは等価のエネルギー源等とを備えることにより、血清代替物が無血清完全培地として提供されるようになることが、さらに意図される。 各種実施形態では、不安定因子は、凍結状、液状または凍結乾燥状の形態である。 各種実施形態では、不安定因子は、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン(ステロイドホルモンまたはペプチドホルモン)、鉄輸送体、ペプチド因子またはステロイドである。 各種実施形態では、ホルモンは、インスリン、ソマトスタチン、成長ホルモン、ハイドロコーチゾン、デキサメサゾン、3,3’,5−トリヨード−L−サイロニンおよびL−チロキシンから成る群より選択される。 各種実施形態では、不安定因子は、インスリン成長因子(IGF)、上皮細胞成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、ソマトスタチンおよびトリヨード−L−サイロニンから成る群より選択される成長因子である。キットでの使用が意図される付加的な成長因子は、従来技術においても知られており、発明の詳細な説明の中でさらに説明する。 各種実施形態では、不安定因子はヒト不安定因子である。各種実施形態では、不安定因子は齧歯目(例えばマウス、ラット)の不安定因子である。 各種実施形態では、血清代替物に加えた時の不安定因子の終末濃度が約0.05〜250ng/mlの範囲にあるように、不安定因子はパッケージングされ、この濃度は、約0.05〜100ng/ml、約0.05〜50ng/ml、約0.05〜10ng/ml、約0.1〜5ng/ml、約0.5〜2.5ng/ml、または約1〜5ng/mlの各範囲にあってもよい。不安定因子の終末濃度は、約0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ng/mlであるように、さらに意図される。 各種実施形態では、血清代替物に加えた時の成長因子の終末濃度が約0.05〜250ng/mlの範囲にあるように、成長因子はパッケージングされ、この濃度は、約0.05〜100ng/ml、約0.05〜50ng/ml、約0.05〜10ng/ml、約0.1〜5ng/ml、約0.5〜2.5ng/ml、または約1〜5ng/mlの各範囲にあってもよい。成長因子またはサイトカインの終末濃度は、約0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ng/mlであるように、さらに意図される。各種実施形態では、成長因子は、ヒト成長因子である。各種実施形態では、成長因子は、齧歯目(例えばマウス、ラット)の成長因子である。 各種実施形態では、血清代替物は、鉄供与源または鉄輸送体を更に含む。各種実施形態では、鉄供与源または鉄輸送体は、トランスフェリン、ラクトフェリン、硫酸第一鉄、クエン酸第一鉄、クエン酸第二鉄、クエン酸第二鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、フマル酸第二鉄アンモニウム、リンゴ酸第二鉄アンモニウムおよびコハク酸第二鉄アンモニウムから成る群より選択される。 各種実施形態では、血清代替物は、銅供与源または銅輸送体(例えばGHK−Cu)を更に含む。例示的な銅供与源の非限定的な例としては、塩化銅および硫酸銅を挙げることができる。 各種実施形態では、血清代替物および一つ以上の不安定因子は、培養中に細胞の分化を引き起こさないことが意図される。各種実施形態では、血清代替物培地及び一つ以上の不安定因子は、培養中の細胞の分化を引き起こさない。 各種実施形態では、キットは、細胞接着を促進するための薬剤を備える容器を更に含む。各種実施形態では、細胞接着を促進する薬剤は、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、合成マイクロキャリアおよびラップカーボンチューブから成る群より選択される。 各種実施形態では、鉄供与源または鉄輸送体、銅供与源または細胞接着薬剤はパッケージングされて、これらが血清代替物に加えられた時の鉄輸送体、銅供与源または細胞接着薬剤の終末濃度が約0.05〜250ng/mlの範囲になるようにされ、この濃度は、約0.05〜100ng/ml、約0.05〜50ng/ml、約0.05〜10ng/ml、約0.1〜5ng/ml、約0.5〜2.5ng/ml、または約1〜5ng/mlの各範囲にあってもよい。鉄輸送体、銅供与源または細胞接着薬剤の終末濃度は、約0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ng/mlであるように、さらに意図される。 各種実施形態では、不安定因子補助成分は、IGF、EGF、FGF、トランスフェリン、ソマトスタチン及びトリヨード−L−サイロニンのうちの2、3、4、5以上を備えている反応混液として処方される。各種実施形態では、FGFは、塩基性FGF(bFGF(FGF−2))または酸性のFGF(aFGF(FGF−1))である。 各種実施形態では、反応混液の中の成長因子は、血清代替物に加えた時にIGFの終末濃度が、0.5〜3ng/ml、EGFの終末濃度が、1〜10ng/ml、FGFの終末濃度が、3〜10ng/ml、トランスフェリンの終末濃度が、3〜10ng/ml、ソマトスタチン及びトリヨード−L−サイロニンの終末濃度が、5〜15ng/mlとなるようパッケージングされる。各種実施形態では、IGFは1ng/mlの終末濃度である。各種実施形態では、EGF及びFGFは、5ng/mlの終末濃度である。各種実施形態において、トランスフェリンは5ng/mlの終末濃度である。各種実施形態では、ソマトスタチン及びトリヨード−L−サイロニンは、10ng/mlの終末濃度である。 各種実施形態において、キットはビトロネクチンを備え、血清代替物に加えた時にビトロネクチンの終末濃度が100〜500ng/mlの濃度であるように、パッケージングされる。各種実施形態では、ビトロネクチンは250ng/mlの終末濃度である。 各種実施形態において、血清代替物は動物成分を含まない(animal−component free)。 各種実施形態では、別々にパッケージングされた成長因子等の不安定因子の血清代替物に導入した際の半減期は、同一不安定因子を血清代替物または塩基性培地にあらかじめパッケージングした場合よりも長くなっている。 各種実施形態では、血清代替物からの1つ以上の不安定因子を別々にパッケージすることにより、不安定因子を含むようにあらかじめパッケージングした培地による細胞培養と比較して、細胞培養における細胞の成長および一貫性が向上する。例えば、不安定因子を含むようにあらかじめパッケージングした別の培地における細胞の成長と比較して、培養における細胞の外観は一貫し、細胞は決まった速度で増殖することが、意図される。 各種実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞および昆虫細胞から成る群より選択される。各種実施形態では、細胞は哺乳動物被験体から隔離される。各種実施形態では、細胞は、細胞系統の初代培養である。各種実施形態では、細胞は、多能性幹細胞、胚性幹細胞、骨髄間質細胞、造血系前駆細胞、リンパ球系幹細胞、骨髄幹細胞、T細胞、B細胞、マクロファージ、肝細胞、膵細胞および細胞系統から成る群より選択される。 意図される哺乳動物細胞系統の非限定的な例としては、CHO、CHOK1、DXB−11、DG−44、CHO/−DHFR、CV1、COS−7、HEK293、BHK、TM4、VERO、HELA、MDCK、BRL3A、W138、HepG2、SK−Hep、MMT、TRI、MRC5、FS4、T細胞系統(例えばジャーカット)、B細胞系統(例えばBJAB、EW36、CA46、ST486およびMC116、Raji、NamalvaおよびDaudi)、3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6、SP2/0、NS−0、U20S、HT1080、ハイブリドーマ、がん細胞系統および従来技術において周知の他の細胞系統を挙げることができる。意図される昆虫細胞系統の非限定的な例としては、Sf9、Sf21、HIGHFIVE(商標)、EXPRESSF+(登録商標)、S2、Tn5、TN−368、BmN、Schneider2、D2、C6/36およびKC細胞を挙げることができる。 各種実施形態では、細胞培養において1、2、3、4、5、6または7日中の使用で、血清代替物と1つ以上の不安定因子とを組み合わせている。 一実施形態では、血清代替物は、10ml、50ml、100ml、500mlまたは1Lの体積にパッケージングされる。関連した実施形態では、血清代替物は、1倍、5倍、10倍または20倍の溶液でパッケージングされる。 各種実施形態では、キットは、抗菌性、抗真菌性または抗微生物性の薬剤を含む選択係数または感応係数を更に含む。意図した薬剤の非限定的な例示としては、ゲンタミシン、アンピシリン、アンフォテリシンB、ペニシリン、ストレプトマイシン、ヒグロマイシンB、カナマイシン、ネオマイシン、メトトレキセート、イソプロピルβ−D−1チオガラクトピラノシド(IPTG)、並びに従来技術において既知の他の選択因子または誘起因子またはこれらの組合せを用いることができる。 各種実施形態では、容器は、チューブ、バイアル、アンプルおよびボトルから成る群より選択される。容器は、従来技術で周知の材料から作られることが意図され、ガラス、ポリプロピレン、ポリスチレンおよび他のプラスチックを含むがこれに限られない。 各種実施形態では、容器は、タンパクの失活を防止するためにコーティングされる。コーティングは、容器への添加物を含むことにより、容器内の成長因子または他のタンパクが、容器壁に接着することを防止する。添加物の非限定的な例としては、非動物由来のキャリアタンパク質、界面活性剤、アミノ酸および糖を挙げることができる。添加剤は、成長因子の凍結乾燥された形態または水様液の形態に適応することが意図される。 各種実施形態では、キットは別個の容器中にパッケージングされる細胞を更に含む。 別の態様では、本開示は、細胞インビトロの培養のために、本明細書に記載されるキットが使用されることが意図される。 本明細書に記載される各特徴もしくは実施形態またはそれらの組合せは、本発明の態様のいずれの非限定的、例示的な例であることが理解され、このように、本明細書に記載される他の特徴もしくは実施形態またはこれらの組合せとも結合可能であることが意味される。これらの各々の実施形態は、本明細書に記載される他の全ての特徴または特徴の組合せと組み合わせができることが意図される特徴の非限定的な例であり、想定される全ての組合せをここに挙げる必要はないものである。このような特徴または特徴の組合せは、本発明の態様のいずれかに適用される。数値が特定の範囲に含まれる実施例が開示された場合は、その実施例はこの範囲の両端においても実現されることが意図され、また、これら両端の間のあらゆる数値においても実現されることが意図され、さらに、上端と下端のあらゆる組合せが想定されていることが意図されるものである。(細胞培養の前に相当の期間をかけて)成長因子を血清代替物と同時に製造した場合(培地+10%の同時製造されたSR)に、血清代替物(SR)を含む培地による細胞の培養が試験管内での刺激の後においても細胞増殖を促進しないことを示す図(図1A)と、細胞培養の直前に成長因子を加えた血清代替物による培養(培地+10%SR+成長因子)が細胞増殖をもたらしたことを示す図(図1B)とを含む。450nmでの光学濃度(OD)を増加させることで、増殖が発現した。 本開示は、血清代替物培地および不安定因子を備えた、試験管内での細胞培養のためのキットを提供し、血清代替物および不安定因子は、キットにおいて別々にパッケージングされる。このキットは、血清代替物または培地組成とは別々に、不安定因子、例えば成長因子、サイトカイン、ホルモンなどをパッケージすることによって、不安定因子を備える他の無血清培地または血清代替物と比較して、優れた細胞培養条件を提供する。本キットは、不安定因子を別個にパッケージングすることにより、他の血清代替物または培地に対して、不安定因子の半減期を向上させ、かつ、培養においてより効率的かつ一貫した細胞成長を提供する利点を提供する。理論によって縛られるものではないが、発送時に培地に不安定因子、例えば成長因子、サイトカイン、ホルモンなどが含まれていたり、細胞培養の相当以前に不安定因子を添加したりすれば、細胞培養に用いた時には因子の寿命および効力を低減してしまい、インビトロの細胞の成長または生残が、最適なものとはいえなくなると考えられる。本キットは、この問題を解決し、従来技術において今まで開示されていない利点を提供する。 定義 ここで用いられる例では、「血清代替物」または「血清代替物培地」は、培養内の細胞成長および生残を促進するため基本培地とともにまたは完全培地として用いられることができる組成を指す。各種実施形態では、血清代替物は、あらゆる血清の代替物として基本培地または完全培地に用いられ、インビトロの細胞培養のために培地に特徴的に加えられる。血清代替物は、培養中の細胞の成長および生残のためのタンパクおよび他の因子を備えることが意図される。各種実施形態では、血清代替物は、細胞培養に用いる前に、基本培地に加えられる。各種実施形態では、血清代替物が細胞培養のための無血清完全培地として有用となるよう、血清代替物は、基本培地および、例えば塩、アミノ酸、ビタミン、微量元素等のベースの栄養源を備えてもよいことがさらに意図される。 ここで用いられる例では、「基本培地(basal media)」、「基本培地(base media)」、「基本培地(base medium)」または「基本栄養培地(base nutritive media)」は、細胞に水と、正常細胞新陳代謝に必須でかつ細胞内および細胞外浸透バランスを維持する一定のバルク無機イオンを提供する基礎塩栄養源または塩水溶液および他の要素を指す。各種実施形態では、基本培地は、エネルギー源として少なくとも1つの炭水化物および/またはバッファシステムを備えることにより、培地を生理学的なpH範囲内に維持する。市販の基本培地の非限定的な例としては、Dulbecco社のModified Eagle’s Medium (DMEM),Minimal Essential Medium(MEM),Basal Medium Eagle(BME),RPMl 1640、Ham社のF−10、Ham社のF−12、α−Minimal Essential Medium (αMEM)、Glasgow社のMinimal Essential Medium (G−MEM)、Iscove社のModified Dulbecco’s Mediumまたは多能性細胞の用途に変性した多目的培地、例えばX―VIVO(Lonza)または造血性基本培地等を挙げることができる。発明の詳細な説明において更に詳細に説明するように、基本培地に栄養源を補ってもよい。「完全培地」とは、基本培地に成長補助成分がすでに加えられている細胞培養培地のことである。 ここで用いられる例では、「不安定因子」は、特異的な生化学反応または身体のプロセスの中で作用し、例えば、因子が経時的に劣化され得るような化学変化を受けることができる物質を指す。例示的な不安定因子の非限定的な例としては、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン(ステロイド及びペプチドホルモン)、鉄輸送体、ペプチド因子及びステロイドを挙げることができる。 ここで用いられる例では、「成長因子」とは、成長、増殖または細胞の分化を促進する薬剤を指す。意図する成長因子の非限定的な例としては、サイトカイン、ケモカイン、またはペプチド成長因子を挙げることができる。本キットのために、意図される成長因子は従来技術で周知であり、発明の詳細な説明においてさらに説明される。各種実施形態では、成長因子はヒト成長因子である。各種実施形態では、成長因子は齧歯目の(例えばマウス、ラット)成長因子である。 各種実施形態では、成長因子または不安定因子は、大多数の細胞タイプの成長を促進する汎用のまたは非特異の成長因子である。一実施形態では、成長因子は、インスリン成長因子、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、ソマトスタチン、トリヨード−L−サイロニン、インターロイキン(IL)−2、IL−6またはIL−3から成る群より選択される。別の実施形態では、成長因子は、特定の細胞タイプの成長を促進するために特異的である。 各種実施形態では、不安定因子は、単一因子として、または2以上の不安定因子を備える混合物として、供給される。2以上の不安定因子の混合物は、ここでは、不安定因子反応混液という。各種実施形態では、不安定因子反応混液は、2以上の成長因子を備える。 不安定因子がパッケージングされる時、血清代替物に加えた時に、不安定因子が細胞培養に適切な終末濃度となるように、パッケージングされることが意図される。明細書で不安定因子の濃度を指す場合は、それは実際には血清代替物または細胞培地の中で用いられる因子の終末濃度を指していると理解される。 ここで用いられる例では、「リポソーム」は、外側脂質二層膜または多層膜を備え内部水様液の空間を包囲するクローズされた構造を指す。リポソームは、多層状または単層状であってもよい。リポソームは、直径5〜10μMからナノパーティクルサイズまでの大きさの範囲にあることが意図される。特定の実施形態では、リポソームナノパーティクルは、直径が、約50〜500nm、約100nm〜300nmまたは約100〜200nmである。 ここで用いられる例では、「細胞の培養を向上させた」とは、本明細書に記載したキットを用いて培養する場合に、本明細書に記載したキットを用いていない細胞の培養と比較して、細胞増殖の増加、細胞の成長の増加、細胞死の低減または細胞タンパク生成(組み換え型または内因性)の増加を指す。増殖の増加、成長の増加および細胞死における変化を、従来技術で周知の方法を用いて計測し、この方法には、成長曲線解析、トリパンブルーによる顕微鏡による評価、トリチウムチミジン(3H)増殖アッセイ、MTTアッセイ、レサズリンベースのアッセイおよびDNAラダー分析が含まれる。細胞のタンパク生成の増加が、総タンパクもしくはmRNAの定量、または着目の特定のタンパクのレベルの定量を含む従来技術で既知の方法を用いて、測定される。 ここで用いられる例では、「細胞の分化を引き起こさない」とは、培養における細胞の発達の状態であって、このキットを用いて培養された細胞は、本明細書のキットの使用により、別のタイプの細胞の特性を呈するようにはならず、あるいは、形態、タンパク生成プロファイルまたは細胞表面マーカー発現において実質的に異なっている状態を指す。本明細書に用いられる例で、幹細胞および始原細胞に対して、分化させずに細胞を培養することとは、細胞は、培養で増殖することができるが、細胞培養の後に実質的に未分化の細胞が残り、ステムまたは始原細胞のマーカーを発現するということを意味する。例えば、集団内での相当な比率の幹細胞およびそれらの派生株が、多能性細胞の形態学的性質を呈し、複数の細胞タイプを発現させることができる時に、幹細胞または他の始原細胞は、「未分化である」といえる。多能性幹細胞の特性は、米国特許出願公開第20050037492号および国際特許公開WO2001/011011号に記載されている。あるいは、細胞がすでに充分に分化する細胞タイプまたは細胞系統である場合、このキットを用いる細胞培養は、上記に定義されるような分化をこれらの細胞に引き起こさない。 ここで用いられる例では、「動物成分を含まない(animal−component free)」とは、成分が動物に由来しない組成を指す。成分は、組み換えにより生成されるかまたは、直接動物から単離した以外の植物またはその他の供与源に由来することが意図される。ここで用いられる例では、動物成分を含まないことにより、動物ベースの細胞系統中の不安定因子の組み換え型生成が可能になる。 ここで用いられる例では、「容器」は、例えば血清代替物、成長因子または接着薬剤等の組成物を保持する入れ物を指す。本明細書に記載のキットにおいて有用な組成物は、キットの輸送のために容器内にパッケージングされることが意図される。例示的な容器の非限定的な例としては、ベッセル、バイアル、チューブ、アンプル、ボトル、フラスコ等を挙げることができる。容器は、血清代替物、成長因子または接着薬剤を凍結乾燥状、液状または凍結状の形態でパッケージングされることに適していることが、さらに意図される。容器は、従来技術で周知の材料から作られ、非限定的な例としては、ガラス、ポリプロピレン、ポリスチレンおよび他のプラスチック等であることが意図される。 ここで用いられる例では、「あらかじめパッケージングされる」または「不安定因子と共にあらかじめパッケージングされる」とは、培地および不安定因子が生産の時点で混合されるよう、成長因子をはじめとする不安定因子と同時に製造した血清代替物または培地、または、不安定因子が使用前に顕著な期間を経過した血清代替物または培地を指し、この時間は例えば、使用前4月、5月、6月または1年以上である。例えば、商業販売される血清代替物または培地の中には、製品が、販売の際に既に、血清代替物または培地中に混合した成長因子やトランスフェリン等の不安定因子を含むよう、細胞成長を促進する因子を含んで製造されるものもあり、すなわち予め不安定因子を含んでパッケージングされている。 血清代替物 各種実施形態では、血清代替物は、(i)リポソームおよびii)基本栄養培地を備えている。 リポソームは、多層状または単層状であってもよい。リポソームのサイズは、直径5〜10μMからナノパーティクルサイズの範囲であることが意図される。一部の実施形態では、リポソームは、ナノパーティクルである。特定の実施形態では、ナノパーティクルの平均径は、約50〜500nm、約100nm〜約300nmまたは約100〜200nmの各範囲である。リポソームサイズは、従来技術で既知の方法を用いて計測することができ、これは、動的光散乱法によって全粒子の平均径の値として粒度を計測するZetasizer(Malvern Instruments社、イギリス)の使用が含まれる。 一部の実施形態では、リポソームは、脂質、脂肪酸、ステロールおよび/または遊離脂肪酸を備える。リポソームを作製する方法は、従来技術で既知であり、例えば、液体の水和または溶媒球状体の調製による多層状ベシクルの(脂質の同心二層系を有する)の作製、および、サニテーション、フレンチプレス、溶媒注入、界面活性剤除去、逆相蒸発、カルシウム誘発融合、マイクロ流動化法または凍結−解凍法による単層状ベシクル(脂質の単一層を有する)の調製、を含む。 リポソーム調製は、米国特許第7,220,538号(参照事項として本願に包含される)、米国特許第6,217,899号、米国特許出願公開第20100021531号、Lichtenberg et al., Methods Biochem Anal. 33:337−462, 1988、ならびに G. Gregoriadis: “Liposome Technology Liposome Preparation and Related Techniques,” 2nd edition, Vol. I−III, CRC Press に記載される。 各種実施形態では、血清代替物が、塩基性培地に加えられる。標準塩基性培地は、従来技術で既知であり市販されている。塩基性培地の非限定的な例としては、Dulbecco社のModified Eagle’s Medium(DMEM)、DMEM F12(1:1)、Iscove社のModified Dulbecco Medium、Ham社のNutrient mixture F−10、Roswell Park Memorial Institute Medium(RPMI)、MCDB131、Click Medium、McCoy社の5A Medium、Medium199、William社のMedium E、および昆虫培地、例えばGrace社のmediumおよびTNM−FH等を挙げることができる。 これらのいずれかの培地は任意に、塩(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸)、アミノ酸、ビタミン、バッファ(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えばゲンタミシンドラッグ)、微量元素(マイクロモル濃度の範囲の終末濃度で通常存在する無機化合物として定義)、およびグルコースまたは等価のエネルギー源等で補われることができる。また、他の全ての必要な補助成分が、当業者に既知の適切な濃度で含まれてもよい。培養条件、例えば温度、pH、などは、通常、当業者には明らかである。 各種実施形態では、血清代替物は、上記のように基本培地、ならびに例えば、塩、アミノ酸、ビタミン、バッファ、ヌクレオチド、抗生物質、微量元素およびグルコースまたは等価のエネルギー源等の補助成分を備えることにより、血清代替物は、無血清完全培地として使用できる。 各種実施形態では、血清代替物は鉄供与源または鉄輸送体を備える。例示的な鉄供与源の非限定的な例としては、例えば硫酸第一鉄、クエン酸第一鉄、クエン酸第二鉄等の第二鉄塩および第一鉄塩、例えばクエン酸第二鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、フマル酸第二鉄アンモニウム、リンゴ酸第二鉄アンモニウムおよびコハク酸第二鉄アンモニウム等の第二鉄アンモニウム化合物を挙げることができる。例示的な鉄輸送体の非限定的な例としては、トランスフェリン及びラクトフェリンを挙げることができる。 各種実施形態において、血清代替物は銅供与源または銅輸送体(例えば、GHK−Cu)を更に含む。例示的な銅供与源の非限定的な例としては、塩化銅および硫酸銅を挙げることができる。 各種実施形態では、血清代替物に加えた時に、不安定因子の終末濃度が約0.05〜250ng/ml、約0.05〜100ng/ml、約0.05〜50ng/ml、約0.05〜10ng/ml、約0.1〜5ng/ml、約0.5〜2.5ng/ml、または約1〜5ng/mlの各範囲となるよう、鉄供与源または銅供与源はパッケージングされる。鉄供与源または銅供与源の終末濃度は、約0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ng/mlであるように、さらに意図される。 不安定因子 キット中での使用が意図される不安定因子は、試験管内での成長および細胞増殖の促進に有効であることが意図される。成長因子の非限定的な例としては、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン(ステロイドまたはペプチドホルモン)鉄輸送体、ペプチド因子、ステロイドまたは成長刺激アミン、例えばヒスタミン等の薬剤を挙げることができる。各種実施形態では、不安定因子はヒト不安定因子である。各種実施形態では、成長因子は齧歯目の(例えばマウス、ラット)不安定因子である。 各種実施形態では、不安定因子または成長因子は、汎用のまたは非特異の成長因子であり、大部分のタイプの細胞の成長を促進する。各種実施形態では、成長因子は特定の細胞タイプに特異的であり、例えば、細胞タイプのファミリーまたは、例えばリンパ球またはT細胞等の特定のタイプの細胞の成長を促進する。各種実施形態では、成長因子はヒト成長因子である。各種実施形態では、不安定因子または成長因子は、齧歯目の(例えばマウス、ラット)成長因子である。 キット内のパッケージングを意図する例示的な成長因子の非限定的な例としては、骨形態形成タンパク(BMP)1、(骨形態形成タンパク2)骨形態形成タンパク3、骨形態形成タンパク4、骨形態形成タンパク5、骨形態形成タンパク6、骨形態形成タンパク7、骨形態形成タンパク8、骨形態形成タンパク9、骨形態形成タンパク10、骨形態形成タンパク11、骨形態形成タンパク12、骨形態形成タンパク13、骨形態形成タンパク14、骨形態形成タンパク15、脳由来神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、サイトカイン誘導好中性化学走性因子1、サイトカイン誘導好中性化学走性因子2α、サイトカイン誘導好中性化学走性因子2β、β内皮細胞成長因子、エンドセリン1、上皮細胞成長因子、上皮由来好中性誘引物質、線維芽細胞成長因子(FGF)4、線維芽細胞成長因子5、線維芽細胞成長因子6、線維芽細胞成長因子7、線維芽細胞成長因子8、線維芽細胞成長因子8b、線維芽細胞成長因子8c、線維芽細胞成長因子9、線維芽細胞成長因子10、酸性の線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、成長関連タンパク、成長関連タンパクα、成長関連タンパクβ、成長関連タンパクγ、ヘパリン結合上皮細胞成長因子、肝細胞成長因子、インスリン様増殖因子I、インスリン様増殖因子II、IGF結合蛋白質、ケラチン合成細胞成長因子、白血病阻止因子、神経栄養因子−3、神経栄養因子−4、胎座成長因子、胎座成長因子2、血小板由来内皮細胞成長因子、血小板由来成長因子、血小板由来成長因子A連鎖、血小板由来成長因子AA、血小板由来成長因子AB、血小板由来成長因子B連鎖、血小板由来成長因子BB、プレB細胞成長刺激因子、幹細胞因子、形質転換成長因子α、形質転換成長因子β、形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β1.2、形質転換成長因子β2、形質転換成長因子β3、休眠形質転換成長因子β1、形質転換成長因子β結合タンパク質I、形質転換成長因子β結合タンパク質II、形質転換成長因子β結合タンパク質IIIおよび血管内皮成長因子を挙げることができる。 キット内のパッケージングのための例示的なサイトカインの非限定的な例としては、インターロイキン(IL)−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、インターフェロン(IFN)、IFN−γ、腫瘍壊死因子(TNF)0、TNF1、TNF2、TNF−α、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球単核細胞コロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒白血球コロニー刺激因子(G−CSF)、巨核球コロニー刺激因子(Meg−CSF)、トロンボポイエチン、幹細胞因子およびエリスロポイエチンを挙げることができる。キットのために意図されるケモカインの非限定的な例としては、IP−10および間質細胞由来因子1αを挙げることができる。 キット内でパッケージングが意図される例示的なホルモンの非限定的な例としては、ステロイドホルモン及びペプチドホルモン、例えば、インスリン、ソマトスタチン、成長ホルモン、ハイドロコーチゾン、デキサメサゾン、3,3’,5−トリヨード−L−サイロニンおよびL−チロキシンを挙げることができる。 各種実施形態では、不安定因子は、インスリン成長因子(IGF)、上皮細胞成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、ソマトスタチン、トリヨード−L−サイロニン、インターロイキン(IL)−2、IL−6およびIL−3から成る群より選択される。 不安定因子は、細胞培養において、細胞のタイプに対する適切な濃度で含まれることが意図される。各種実施形態では、培地に加えた時に、成長因子の終末濃度が約0.05〜250ng/ml、約0.05〜100ng/ml、約0.05〜50ng/ml、約0.05〜10ng/ml、約0.1〜5ng/ml、0.5〜2.5ng/ml、または1〜5ng/mlの各範囲となるよう、成長因子がパッケージングされる。成長因子またはサイトカインの終末濃度は、約0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ng/mlであるように、さらに意図される。 各種実施形態では、不安定因子は、本明細書に記載される不安定因子2つ、3つ、4つ、5つ、6つ以上を備える反応混液として処方される。各種実施形態では、不安定因子補助成分は、IGF、EGF、FGF、トランスフェリン、ソマトスタチン及びトリヨード−L−サイロニンのうちの2、3、4、5以上を備える反応混液として処方される。 各種実施形態では、反応混液の中の成長因子は、血清代替物に加えた時にIGFの終末濃度が0.5〜3ng/ml、EGFの終末濃度は、1〜10ng/ml、FGFの終末濃度は、3〜10ng/ml、トランスフェリンの終末濃度は、3〜10ng/ml、ソマトスタチン及びトリヨード−L−サイロニンの終末濃度は、5〜15ng/mlとなるようパッケージングされる。各種実施形態では、IGFは1ng/mlの終末濃度である。各種実施形態では、EGF及びFGFは、5ng/mlの終末濃度である。各種実施形態において、トランスフェリンは5ng/mlの終末濃度である。各種実施形態では、ソマトスタチン及びトリヨード−L−サイロニンは、10ng/mlの終末濃度である。 血清代替物培地および一つ以上の不安定因子は、培養中に細胞の分化を引き起こさないことが意図される。各種実施形態では、血清代替物培地及び一つ以上の不安定因子は、培養中の細胞の分化を引き起こさない。 各種実施形態では、キットは、細胞接着を促進するための因子を備える容器を更に含む。各種実施形態では、細胞接着を促進する因子は、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ゼラチン、ラミニン、合成マイクロキャリアおよびラップカーボンチューブから成る群より選択される。 各種実施形態では、血清代替物に加えた時に、細胞接着剤の終末濃度が約0.05〜250ng/ml、約5〜100ng/ml、約50〜500ng/ml、約100〜500ng/ml、約0.05〜100ng/ml、約0.05〜50ng/ml、約0.05〜10ng/ml、約0.1〜5ng/ml、約0.5〜2.5ng/ml、または約1〜5ng/mlの各範囲となるよう、細胞接着剤はパッケージングされる。細胞接着剤の終末濃度は、約0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ng/mlであるように、さらに意図される。 各種実施形態では、キットは、100〜500ng/mlの終末濃度範囲でパッケージングされるビトロネクチンを備える。各種実施形態では、ビトロネクチンは250ng/mlの終末濃度である。 合成マイクロキャリアは、従来技術において既知であり、ヒドロゲルと、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトンおよびこれらの混合物等のアルファヒドロキシ酸ファミリーポリマーとを含む。例示的なマイクロキャリアの非限定的な例としては、ポリ(D,L−ラクチド−コグリコシド)マイクロキャリア、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)マイクロスフェア、アルギン酸エステルマイクロゲル、およびゼラチンマイクロスフェアを挙げることができる。例えばカーボンナノチューブ(CNT)等の例示的なラップカーボンチューブは従来技術で既知であり、米国特許第5,753,088号、第5,641,466号、第5,292,813号および第5,558,903号ならびにおよび米国特許出願公開第20090148417号に記載され、例えばフラーレン、カーボンバッキーボール(バックミンスターフラーレン)、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびカーボンナノパーティクル等のカーボンナノチューブを記載する。カーボンナノチューブは、多層シェル、多壁ナノチューブまたは単一壁ナノチューブとして有用である。一部の実施形態において、カーボンナノチューブは官能化される。CNTに結合する例示的な官能性基としては、チオール基およびカルボキシル基を含む。DNAラップカーボンチューブは、Lee et al., Angewandte Chemie International Edition 48: 5116−5120, 2009に記載されている。 各種実施形態では、不安定因子は、凍結乾燥状、液状または凍結状の形態である。これら異なる形態で不安定因子を保存するための方法は、従来技術において周知である。例えば、タンパクまたは他の材料を凍結乾燥する方法は、Tang et al., Pharm Res. 21: 191−200, (2004)およびChang et al., Pharm Res. 13: 243−9 (1996)に記載されている。凍結乾燥された材料は、相当量(典型的には凍結乾燥中に取り除かれた体積に等しい)の純水または滅菌した注入用水(WFI)、または他の適切なバッファを、加え直すことにより、再構成することができる[Chen, Drug Development and Industrial Pharmacy, 18:1311−1354 (1992)]。液体配合または凍結配合のための不安定因子は、成長因子の凝集または沈降を防止する所望の濃度および適切なバッファ溶液中で、調製され、これらは通常の方法で決定される。 細胞培養 本明細書に記載のキットは、好ましくは典型的には、血清補助成分または適切な試験管内成長のための定義された培地を必要とする細胞に対しての、試験管内で細胞の培養に有用であることが意図される。このような細胞は、例えば哺乳類の真核細胞および昆虫細胞を含む。キットの使用から利益を得ることが意図される哺乳動物細胞の非限定的な例としては、ハムスター、サル、チンパンジー、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジおよびヒトの各細胞を挙げることができる。昆虫細胞は、スポドプテラフルギペルダ(イモムシ)、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、キイロショウジョウバエ(ミバエ)およびカイコにそれぞれ由来する細胞を含む。 血清代替物で培養された細胞は、不死化細胞(細胞系統)または非不死化(初代または二代目)細胞であり、また、例えば、線維芽細胞、ケラチン合成細胞、上皮細胞、子房細胞、血管内皮細胞、膠細胞、神経細胞、血液を形成する成分(例えばリンパ球、骨髄細胞)、軟骨細胞その他の骨由来細胞、肝細胞、膵臓細胞およびこれらの体細胞タイプの前駆体等、生体内で見出される多種多様な細胞タイプのいずれかであることが、意図される。 各種実施形態では、キットの使用が意図される細胞は、哺乳動物被験体から単離される。哺乳動物被験体から単離する細胞の非限定的な例としては、多能性幹細胞、胚性幹細胞、骨髄間質細胞、造血系前駆細胞、リンパ球系幹細胞、骨髄幹細胞、リンパ球、T細胞、B細胞、マクロファージ、血管内皮細胞、膠細胞、神経細胞、軟骨細胞およびその他の骨由来の細胞、肝細胞、膵臓細胞、体細胞タイプの前駆体、および、あらゆる癌または腫瘍由来の細胞を挙げることができる。 各種実施形態では、細胞は、細胞系統である。例示的な細胞系統の非限定的な例としては、CHOK1、DXB−11、DG−44、およびCHO/−DHFRを含むチャイニーズハムスター卵巣細胞、サル腎臓CV1、COS−7、ヒト胚性腎臓(HEK)293、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(TM4)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO)、ヒト子宮頚癌細胞(HELA)、犬歯腎臓細胞(MDCK)、スイギュウラット肝細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒトヘパトーマ細胞(Hep G2;SK−Hep)、マウス乳腺腫瘍(MMT)、TRI細胞、MRC5細胞、FS4細胞、T細胞系統(ジャーカット)、B細胞系統、マウス3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6(登録商標)、SP2/0、NS−0、U20S、HT1080、ハイブリドーマ、腫瘍細胞および不死化初代細胞を挙げることができる。 例示的な昆虫細胞系統の非限定的な例としては、Sf9、Sf21、HIGH FIVE(商標)、EXPRESSF+(登録商標)、S2、Tn5、TN−368、BmN、Schneider 2、D2、C6/36およびKC細胞を挙げることができる。 本キットにおいて意図される血清代替物および細胞培養条件は、成長細胞のために適切なあらゆる培養基質に適していてもよい。適切な表面を有する基体は、組織培養ウェル、培養フラスコ、ローラーボトル、気体浸透性の容器、平坦または平行板バイオリアクターまたはセルファクトリーを含むものである。また、意図される培養条件としては、細胞は、撹拌タンク容器内の懸濁液中に保たれるマイクロキャリアまたは粒子に接着される。 細胞培養方法は一般に、以下の文献、Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 6th Edition, 2010 (R. I. Freshney ed., Wiley & Sons)、General Techniques of Cell Culture (M. A. Harrison & I. F. Rae, Cambridge Univ. Press), and Embryonic Stem CellsおよびMethods and Protocols (K. Turksen ed., Humana Press)に記載されている。他の参照文献としては、Creating a High Performance Culture (Aroselli, Hu. Res. Dev. Pr. 1996) and Limits to Growth (D. H. Meadows et al., Universe Publ. 1974)を挙げることができる。組織培養供給者および試薬は当業者に周知であり、市販もされている。 細胞は、特定の細胞系統またはキットの成分とともに用いる単離する細胞タイプに適切な密度で培養内に配置されることが理解される。特定の実施形態では、細胞は、1x103、5x103、1x104、5x104、1x105、5x105、1x106または5x106個/mlで培養された。 各種実施形態では、細胞培養において1、2、3、4、5、6または7日中の使用で、血清代替物と1つ以上の不安定因子またはサイトカインとを組み合わせている。 血清代替物から別々に不安定因子をパッケージすることにより、不安定因子をすでに備えた状態でパッケージングされる培地と比較して細胞培養における不安定因子の効能を向上させることが意図される。例えば、本キットの場合のように用いた場合、不安定因子を備えている培地と比較して不安定因子の半減期は延びることが、意図される。さらに、1つ以上の不安定因子を血清代替物とは別々にパッケージすることにより、不安定因子が予めパッケージングされた培地で培養された細胞と比較して、細胞培養における細胞の成長が向上することが意図される。 各種実施形態では、血清代替物および不安定因子組成物は、例えば溶封ボトルまたはベッセルまたは本明細書に開示したその他の容器等の容器内にパッケージングされ、試験管内(インビトロ)、生体内(インヴィーヴォ)、または生体外で(エクスヴィーヴォ)で組成物を使用することを記載するラベルを、容器に貼り付け、またはパッケージに含ませる。各種態様における、組成物は、投与量単位の形態でパッケージングされる。キットは、不安定因子を血清代替物と組み合わせるため、あるいは不安定因子および血清代替物を塩基性培地と組み合わせるために適切なデバイスを、任意に含む。各種態様では、キットは、細胞培養用に不安定因子および血清代替物を使用していることを記載するラベルを含む。 キットが、適切なパッケージング材料にパッケージングされることが、さらに意図される。「パッケージング材料」とは、キットの成分を収容する物理構造を指す。パッケージング材料は、殺菌状態で成分を維持することができ、この目的に対して一般に用いられる材料製である(例えば、紙、波形ファイバ、ガラス、プラスチック、フォイル、アンプルおよびその他の従来技術で既知の材料)。 本キットの付加的な態様および詳細は、以下の限定ではなく例示を目的とする実施例から明らかになる。 実施例1 新しい不安定因子による血清代替物は、試験管内で細胞増殖を促進する。 培養中の細胞の成長を促進する血清代替物の能力を試験する目的で、標準的な方法を用いてB細胞をマウス脾臓から単離し、細菌性リポ多糖(LPS)(100ng/ml)を用いて、刺激して増殖させた。 簡単に説明すれば、メッシュステンレス鋼篩を通した機械的破壊により、脾臓からの単個細胞浮遊液を、マウスから単離した。トリス−NH4Cl(pH7.3)中での低張ショックにより、脾臓サンプル中の赤血球を溶解し、細胞をHBSS中で再懸濁した。次いで、細胞は再び洗浄され、96個のウェルプレート(Corning−Costar社、米国マサチューセッツ州アクトン)内でDMEM(Life Technologies社)中での生存細胞が5x106個/mlの密度で培養され[Lグルタミン(米国カリフォルニア州カールスバドのLife Technologies社)を2mM、ペニシリン(Life Technologies社)を100U/ml、ストレプトマイシン(Life Technologies社)を100μg/ml、非必須アミノ酸(Life Technologies社)0.1Mおよび5×10−5M 2−ME)]、10%のFBS(米国ユタ州ローガンのHyClone社)または基本培地および必須栄養素を含む完全培地としてここで用いられる血清代替物を含む。図1Aで用いられる血清代替物は、あらかじめ不安定因子と共にパッケージングされてまたは製造され、試験の実行の前6月にわたって混合状態にあった血清代替物であった。 図1Bにおける血清代替物は、培養の直前(例えば1日以内)に不安定因子(FGF、EFGおよびIGFおよびトランスフェリン)を加えた血清代替物であった。細胞は、7.5%のCO2を含む湿った雰囲気中で、37℃でインキュベートされた。 図1Aは、培地+10%FBSが、LPSによって刺激した時に、B細胞の顕著な増殖を可能にしたことを示す。試験前6月より一緒にパッケージングされた不安定因子を含む血清代替物中でのB細胞の培養では、LPS刺激の後さらにB細胞の増殖を可能にするに十分な栄養源を提供しなかった(図1A)。対照的に、不安定因子を細胞培養の直前に加えた血清代替物中で培養された細胞は、10%FBSを含む培地中で培養された細胞と同様に増殖した(図1B)。 上記のようにマウスから単離され、新しい10%血清代替物培地中で培養されたT細胞およびマクロファージはそれぞれ、増殖し、または細胞培養活性化された。更に、上記のように血清代替物中で培養されたCHO−K1およびA−549細胞系統は、良い増殖反応を示した。 これらの結果は、培地をパッケージする際に細胞培養培地中に不安定因子を包含させたことにより、経時的に成長因子が分解して、培養中の細胞の成長及び生残が非能率化かつ低下したことに至り得ることを示す。 不安定因子を、細胞培養における培地の使用直前に血清代替物に添加すれば、血清代替物培地の能力が回復し、培養細胞の健康な成長及び増殖が可能になる。 実施例2血清代替物及び不安定因子中の細胞系統の成長 無血清培地中での成長は、特定の細胞系統を、無血清環境中の成長に対して順応させることが必要となり得る。細胞系統が、新たに加えた不安定因子を備える血清代替物中で成長することに適応できるかどうかを決定するため、生存能力及び成長アッセイを遂行した。 細胞順応は、6〜10週の期間で遂行した。CHO−K1細胞およびA549−NFkB SEAP細胞を、ウェル6つのプレート内に、ウェル当たり細胞2x104個で接種し、集団が倍増するまでの時間及び72時間以後の細胞生存能力を計測した。24、48及び72時間で、プレートのウェル1つを採取し、細胞の全数を血球計算器により計数し、採取された細胞の生存能力を顕微鏡による細胞形態により評価した。適応するCHO細胞は10%の血清代替物を加えた培地中で成長し、適応するA549細胞は10%の血清代替物を加えた培地中で成長させられた。コントロールウェルは、5%のFBSを含んでいる培地中で成長した。 CHO細胞は、95%の生存能力(コントロールは96%の生存能力)を示し、菌体群は約30時間(コントロールは約24時間)までに2倍になった。A549細胞は、コントロール細胞の約2.5日と比較して、約3.5日で、細胞が倍増を示した。A549生存能力及びコントロール生存能力は、72時間以後、約98%であった。 これらの結果は、FBSを含む培地中で典型的に成長した細胞系統が、本血清代替物を備える培地中で成長するために適応可能であることを示すものである。 上記のように、新しい不安定因子を培地に追加することにより、培養細胞の増殖及び生存能力を向上させることができる。新しい不安定因子の添加は、血清代替物培地中で培養する細胞系統に有益な効果を与えるか否かを決定するためには、不安定因子を単独または組合せで培地に加え、製造業者のプロトコルに従い、Resazurin蛍光アッセイを用いて細胞増殖を計測した(Sigma社、米国ミズーリ州セントルイス)。蛍光(Resazurin蛍光単位(RFU))の増加は、サンプル中で細胞が増殖して増加したことを示す。 試験した初期成長因子は、インスリン成長因子(IGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)及び上皮細胞成長因子(EGF)を含んでいた。10%の血清代替物培地中で単独でまたは成長因子と共に行ったCHO細胞(5x106個/ml)の培養を、細胞培地中の終末濃度で以下に掲げ、RFUを計測した。(1)コントロール、成長因子のない血清代替物(SR)、約1000RFU、(2)SR+1ng/ml IGF、約2000RFU、(3)SR+VEGF及び1ng/ml IGF、試験した全てのVEGF濃度で約2200RFU、(4)SR+FGF及び1ng/ml IGF、1.5〜3.5ng/ml FGFで約2700RFU、5ng/ml FGFで約3000RFU、(5)SR+EGF、試験した全てのEGF濃度で約2100RFU。 トランスフェリン(終末濃度5ng/ml)を単独で血清代替物に添加した場合、CHO細胞の成長を少し向上させたが、トランスフェリンに加えて成長因子(IGF及びEGF)を添加した場合は、培養細胞の成長を向上させる影響があった。トランスフェリンプラスIGFの及びEGFを血清代替物中に添加したことにより、細胞増殖の速度が、FBS中で培養した細胞の速度に比べて50%を超える増加を示し、例えば、SR+成長因子及びトランスフェリンに対して約15500RFUであり、これはFBSコントロールの約18000RFUと比較された。血清代替物に因子を加えて、増殖を観測すれば、血清代替物単独または市販の他の血清代替物の場合と比較して、増殖は著しく向上した。例えば、一定の血清代替物は、FBS中の培養よりも劣っていて一貫性が低かったことを記載するLund et al., Cytotherapy 11(2): 189−97, 2009を参照されたい。 FBSは、例えば付着細胞を可能にしてより効率的にプレートに接着させる付着因子等の一定の因子を提供することで、細胞成長を向上させ、培養中に指数増殖に到達するまでの時間を早める。付着因子を血清代替物培地に加え、付着したCHO−K1細胞の成長を評価した。適応するCHO−K1細胞(5x106個/ml)を、コントロール培地(10%FBS)または10%血清代替物培地に250ng/mlの終末濃度でビトロネクチンを加えた培地の中で培養され、細胞接着及び形態を視覚化した。ビトロネクチンの存在下で培養された細胞は、FBS中で培養される対照細胞に匹敵する細胞形態を示し、培養の約24時間後に接着された。FBSなしで血清代替物中で培養された細胞は、培養後の約96時間まで接着せず、表面に良好に広がらなかった。 また、成長ホルモンは、培地中に用いる典型的FBS中に存在する(Brunner et al., ALTEX 27: 53−62, 2010)。一つ以上のホルモンの添加が、本明細書に記載される血清代替物を含む培地中での細胞成長を向上させたかどうか決定するため、ホルモンの混合物(ソマトスタチン 10ng/ml、デキサメサゾン 20ng/mlまたは3,3,5−トリヨード−L−サイロニン 10ng/ml)または成長因子(EGF 10ng/ml、IGF 1ng/ml及びFGF 5ng/ml)(全て濃度は培地中の終末濃度で与える)を、培地に加えた。コントロール細胞は、FBSを5%加えた培地中で培養した。 IGF及びトランスフェリン(5ng/ml終末)に加えホルモンを含む混合血清代替物中でCHO細胞を培養した結果、増殖が約14000RFUと計測され、一方、コントロール増殖では約20000のRFUであった。ホルモン配合からのデキサメサゾンの除去は、CHO細胞増殖に影響を有しなかった。ホルモンを含む培地に成長因子配合(EGF、IGF及びFGF)を添加した結果、増殖が約9500RFUに低下した。これらの結果は、IGF及びトランスフェリンのみを含む血清代替物の中の培養と比較して、血清代替物へホルモンの添加をした場合、細胞増殖を向上させることができることを例証するものである。 本明細書に意図されるキット中での別個のバイアルの数を最小にするため、一つの態様では、不安定因子は、基礎の血清代替物培地から別々にパッケージングされる不安定因子のうちの2つ以上を備える反応混液中で処方される。本開示以前に、本分野で優勢な考え方があり、それは、細胞の培養のために適切な濃度で単一配合中、複数の不安定因子を組み合わせることは不必要であり、医薬品製造品質管理基準(GMP)下での基準を遂行するためには複雑かつ困難であるという考えがあった。全ての因子を組み合わせるために必要な能力は、多くの製造業者の生産能力を超えている。しかしながら、本発明者らは、このキットに用いられる複数の不安定因子を備える反応混液を製造する方法を、製造業者と共に工夫することにより、本分野の困難を克服した。 当業者には、上記の例示的な実施例の中で述べた本発明の多数の変更及び変形が行われることが予想される。従って、添付の請求項で記載の限定のみが本発明に置かれるべきである。 インビトロでの改良された細胞培養キットであって、 血清代替物を備える第1の容器と、 少なくとも1つの不安定因子を備える1以上の別個の容器と、 使用説明書と、を備えるキット。 前記血清代替物が、i)リポソームと、ii)基本栄養培地とを備える、請求項1に記載のキット。 前記リポソームが、ナノパーティクルである、請求項2に記載のキット。 前記ナノパーティクルが、約50nm〜約500nmの範囲の平均径を有する、請求項3に記載のキット。 前記リポソームが、脂質、脂肪酸、ステロールおよび/または遊離脂肪酸を備える、請求項2、3または4に記載のキット。 前記不安定因子が、凍結状、液状または凍結乾燥状である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のキット。 前記キットが、2、3、4、5または6以上の不安定因子を備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載のキット。 前記不安定因子が、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、ステロイドホルモン、ペプチドホルモン、鉄輸送体、ペプチド因子及びステロイドから成る群より選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のキット。 前記不安定因子が、インスリン成長因子、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、ソマトスタチン及びトリヨード−L−サイロニンから成る群より選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のキット。 前記培地に加えた時に成長因子の終末濃度が0.05〜250ng/mlまでの範囲にあるように、前記不安定因子がパッケージされる、請求項9に記載のキット。 鉄供与源または鉄輸送体を更に備える、請求項1〜10のいずれか一項に記載のキット。 前記鉄供与源または鉄輸送体が、トランスフェリン、ラクトフェリン、硫酸第一鉄、クエン酸第一鉄、クエン酸第二鉄、クエン酸第二鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、フマル酸第二鉄アンモニウム、リンゴ酸第二鉄アンモニウム及びコハク酸第二鉄アンモニウムから成る群より選択される、請求項11に記載のキット。 銅供与源を更に備える、請求項1〜12のいずれか一項に記載のキット。 前記血清代替物培地及び1以上の不安定因子は、培養中の細胞の分化を引き起こさない、請求項1〜13のいずれか一項に記載のキット。 細胞接着を促進するための薬剤を備える容器を更に備える、請求項1〜14のいずれか一項に記載のキット。 前記細胞接着を促進する薬剤が、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、合成マイクロキャリア及びラップカーボンチューブから成る群より選択される、請求項15に記載のキット。 不安定因子補助成分が、インスリン成長因子(IGF)、上皮細胞成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、トランスフェリン、ソマトスタチン及びトリヨード−L−サイロニンのうちの2以上を備えている反応混液である、請求項1〜16のいずれか一項に記載のキット。 IGFの終末濃度が、0.5〜3ng/mlであり、EGFの終末濃度は、1〜10ng/mlであり、FGFの終末濃度は、3〜10ng/mlであり、トランスフェリンの終末濃度は、3〜10ng/mlであり、ソマトスタチン及びトリヨード−L−サイロニンの終末濃度は、5〜15ng/mlである、請求項17に記載のキット。 前記ビトロネクチンの終末濃度が、100〜500ng/mlの範囲にある、請求項16に記載のキット。 前記血清代替物が、動物成分を含まない、請求項1〜19のいずれか一項に記載のキット。 前記別々にパッケージされた不安定因子が、同一の不安定因子が血清代替物中にあらかじめパッケージされた場合に比べて、血清代替物に導入した時により長い半減期を有する、請求項1〜20のいずれか一項に記載のキット。 前記血清代替物とは別個に1以上の不安定因子をパッケージすることにより、不安定因子を予めパッケージした培地による培養と比較して、細胞培養中の細胞の成長を向上させる、請求項1〜21のいずれか一項に記載のキット。 前記細胞が、多能性幹細胞、胚性幹細胞、骨髄間質細胞、造血系前駆細胞、リンパ球系幹細胞、骨髄幹細胞、T細胞、B細胞、マクロファージ、肝細胞、膵細胞、カルシノーマ細胞及び細胞系統から成る群より選択される、請求項1〜22のいずれか一項に記載のキット。 前記細胞系統が、CHO、CHOK1、DXB−11、DG−44、CHO/−DHFR、CV1、COS−7、HEK293、BHK、TM4、VERO、HELA、MDCK、BRL3A、W138、HepG2、SK−Hep、MMT、TRI、MRC5、FS4、T細胞系統、B細胞系統、3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6、SP2/0、NS−0、U20S、HT1080、ハイブリドーマおよびがん細胞系統から成る群より選択される、請求項23に記載のキット。 前記血清代替物と前記1以上の不安定因子とを、前記細胞培養において1、2、3、4、5、6または7日以内の使用で組み合わせている、請求項1〜24のいずれか一項に記載のキット。 前記血清代替物が、50ml、100ml、500mlまたは1Lの容積でパッケージされる、請求項1〜25のいずれか一項に記載のキット。 前記血清代替物が、1x、5x、10xまたは20xの溶液でパッケージされる、請求項1〜26のいずれか一項に記載のキット。 選択薬剤または誘起薬剤を備える容器を更に備える、請求項1〜27のいずれか一項に記載のキット。 前記容器が、チューブ、バイアル、アンプル及びボトルから成る群より選択される、請求項1〜28のいずれか一項に記載のキット。 前記不安定因子を備える容器が、タンパクの失活を防止するためにコーティングされる、請求項1〜29のいずれか一項に記載のキット。 前記キットが、別個の容器でパッケージされた細胞を更に含む、請求項1〜30のいずれか一項に記載のキット。 前記血清代替物及び不安定因子が、塩基性培地に加えられる、請求項1または3〜31のいずれか一項に記載のキット。 前記血清代替物が、完全培地である請求項1〜31のいずれか一項に記載のキット。 インビトロでの細胞の培養における、請求項1〜33のいずれか一項のキットの使用。 本開示は一般に、血清代替物と、キット中で別々にパッケージされる成長因子等の一つ以上の不安定因子とを備えるキットに関する。キットは、本明細書に記載のキットを用いずに培養される細胞と比較して、培養中の細胞成長を向上させる利点を提供することが意図される。