タイトル: | 公表特許公報(A)_トリアシルグリセロール(TAG)リパーゼの遺伝子操作による微細藻類における脂質含量の増大 |
出願番号: | 2014527803 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 1/15,C12N 1/19,C12N 1/21,C12N 9/16,C12N 5/10,C12P 7/64,C12N 1/13,C12N 15/113,C12R 1/89 |
ボーデ,ヘルゲ ビューヒェル,クラウディア バルカ,フレデリック ローレンツェン,ヴォルフラム JP 2014527803 公表特許公報(A) 20141023 2014528974 20120906 トリアシルグリセロール(TAG)リパーゼの遺伝子操作による微細藻類における脂質含量の増大 ヨハン ウォルフガング ゲーテ−ウニベルジテート フランクフルト アム マイン 514055831 庄司 隆 100088904 資延 由利子 100124453 大杉 卓也 100135208 曽我 亜紀 100152319 ボーデ,ヘルゲ ビューヒェル,クラウディア バルカ,フレデリック ローレンツェン,ヴォルフラム DE 102011113283.3 20110906 C12N 15/09 20060101AFI20140926BHJP C12N 1/15 20060101ALI20140926BHJP C12N 1/19 20060101ALI20140926BHJP C12N 1/21 20060101ALI20140926BHJP C12N 9/16 20060101ALI20140926BHJP C12N 5/10 20060101ALI20140926BHJP C12P 7/64 20060101ALI20140926BHJP C12N 1/13 20060101ALI20140926BHJP C12N 15/113 20100101ALI20140926BHJP C12R 1/89 20060101ALN20140926BHJP JPC12N15/00 AC12N1/15C12N1/19C12N1/21C12N9/16C12N5/00 101C12P7/64C12N1/13C12N15/00 GC12P7/64C12R1:89 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN EP2012067432 20120906 WO2013034648 20130314 30 20140331 4B024 4B050 4B064 4B065 4B024AA03 4B024AA17 4B024BA11 4B024BA80 4B024CA02 4B024CA09 4B024CA11 4B024DA01 4B024EA04 4B024FA20 4B050CC04 4B050DD13 4B050DD20 4B050LL05 4B064AD88 4B064CA08 4B064CA19 4B064DA20 4B065AA83X 4B065AA83Y 4B065AB01 4B065AC14 4B065AC20 4B065BA02 4B065BD16 4B065CA13 4B065CA54 4B065CA60 本発明は、トリアシルグリセロール(TAG)リパーゼの活性を調節することによって生物、特に微細藻類における脂質含量を増大させる方法に関する。本発明は、脂質含量が増大した、本方法によって産生される生物又は微細藻類、並びに産業及び医学における、特にオメガ3不飽和脂肪酸を得るためのそれらの使用にも関する。本発明は、新たなTAGリパーゼをコードするフェオダクチラム(Phaeodactylum tricornutum)に由来する核酸、及びバイオマスにおける脂肪酸の比率、特に多価不飽和脂肪酸の含量に影響を与える際のその使用に更に関する。 微細藻類は、ヒトの栄養及び健康に必須である顕著な比率の高多価不飽和オメガ3脂肪酸を含む脂質を大量に産生する。この理由のために、微細藻類は2つの点でバイオテクノロジー及び産業にとって高い関心を集めている。1つには、微細藻類はオメガ3脂肪酸の生産源としての魚油の代替品をもたらし、将来的にはバイオディーゼルの生産用の代替原料となる可能性がある。 現在、藻類バイオマスの生産は、他の原料源と比較して利益の上がるものではなく、従来の供給源と競合するにはあまりにも高コストである。高品質オメガ3脂肪酸は現在、魚油から生産され、バイオディーゼルはとりわけヤシ油から得られる。これまでの微細藻類に由来するオメガ3脂肪酸の唯一の市販品は、ドコサヘキサエン酸(DHA)の製品である。したがって、競合能を改善するには藻類中の脂質の量を増大させることが不可欠である。 微細藻類は、多くの他の生物と同様に脂質の形態で化学エネルギーを貯蔵する。脂肪酸は主にトリアシルグリセロール(TAG)の形態で貯留され、これはいわばエネルギー貯蔵である。必要に応じて、例えば藻類が光合成又は他のエネルギー貯蔵形態(例えばデンプン)の分解によってはエネルギー需要を満たすことができない場合、貯蔵脂質が活性化され、代謝に導入されることにより分解されて、そのエネルギーが取り出される。この活性化の開始反応は全ての生物で同じである。この反応は特定の種類の酵素、トリアシルグリセロール(TAG)リパーゼ(EC 3.1.1.3)によって触媒される。 リパーゼは、TAG等の脂質から水の消費下で脂肪酸が切断される反応(脂肪分解)を触媒する。分解中に、ジアシルグリセリド及びモノアシルグリセリドが中間体として産生され、最終的に遊離脂肪酸及びグリセロールが産生される。リパーゼは概して工業的に非常に重要であり、様々なプロセスに適用される。このため、リパーゼは石鹸の生産のために油脂化学に使用されるか、又は食品の処理、例えばバターの塗布性のために使用される。 珪藻のフェオダクチラムは、多くの他の脂質に加えて、オメガ3脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA、20:5 n−3)を高度に産生する。ヒトの代謝にとってのEPAの重要性が多数の研究において示されており(とりわけ非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)、既に栄養剤として、また医学において炎症性リウマチ障害の治療に使用されている(例えばMerckによるEPAMAX)。これらのEPA製品は現在、もっぱら魚油から得られている。 リパーゼは現行の技術水準で既知である。特許文献1は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)からのTAGリパーゼをコードする核酸の単離を記載している。シロイヌナズナTAGリパーゼを脂質含量が変更された植物の産生に使用することが提唱されている。それにより、特許文献1は、遺伝的構築物によるトランスジェニック植物におけるTAGリパーゼ発現の増大を提案している。しかしながら、これはTAG、ひいては貯蔵脂質の含量の低下をもたらす可能性がある。 微生物、特に植物の種子又は海洋生物からのEPA又はDHAを含有する脂質画分のバイオテクノロジー生産が、特許文献2に記載されている。単離された脂質画分は特に栄養補助食品として使用される。微細藻類等の海洋微生物からの脂質画分の抽出も同様に提唱されている。独国特許出願公開第10026845号欧州特許出願公開第1392623号Braden and Carol 1986Simopoulus 1991Ramjor et al. 1996 したがって、従来技術に基づくと、本発明の課題は、バイオマスから脂質及び脂質画分を産生する新たな可能性をもたらすことである。特に、本発明は、藻類バイオマスからの脂質産生のエネルギーバランスの不均衡という問題を克服し、ひいては産業上の利用可能性をもたらそうとするものである。 上記の課題は、第1の態様において、生物における脂質含量を増大させる方法であって、(a)脂質含量を増大すべき生物を準備する工程と、(b)生物におけるリパーゼの発現及び/又は機能を調節する工程とを含み、該リパーゼが、(i)配列番号1〜配列番号10から選択される配列、又は(ii)配列番号1〜配列番号10の1つとの配列同一性が少なくとも50%の配列、又は(iii)標準条件下で配列番号1〜配列番号10の配列とハイブリダイズする配列を含む核酸配列によってコードされる、方法によって解決される。 本発明の全ての実施の形態について、「リパーゼ」という用語は、配列番号1に含まれる全てのリパーゼのアイソフォームも示すものとする。コード配列が配列番号1の3449位の終止コドンによって規定されるアイソフォームが特に好ましい。特に、配列番号1の3449位の終止コドンと、配列番号1の663位(配列番号2)、969位(配列番号3)、977位(配列番号4)、1028位(配列番号5)、1055位(配列番号6)、1058位(配列番号7)、1178位(配列番号8)又は1218位(配列番号9)から選択される開始コドンとの間に位置するコード配列を有するリパーゼのアイソフォームが好ましい。配列番号1の3449位の終止コドンと、663位の開始コドン(配列番号2)との間に位置するコード配列を有するリパーゼのアイソフォームが特に好ましい。 本明細書に記載の本発明において、驚くべきことに、脂質蓄積の増大をもたらすには脂肪代謝の鍵酵素であるTAGリパーゼの発現の阻害が有利であることが見出された。本発明は例示的には、フェオダクチラムの遺伝子組換え突然変異体が野生型と比較して、はるかに多くの脂質を蓄積する一方で、同等の成長速度を示したという事実によって確認される。 脂肪酸異化の中心的な酵素の抑制は、本明細書に示されるように、そのような脂質含量の増大をもたらす。さらに、TAGリパーゼの発現の抑制により脂質含量が増大する原理は、それぞれの標的遺伝子の同定が可能である限り、藻類の他の種にも適用可能であるものとする。 したがって、本発明は、別の実施の形態において、生物が好ましくは、クロムアルベオラータ、好ましくは珪藻綱(珪藻)、好ましくはナビキュラ目、好ましくはフェオダクチラム科、特に好ましくはフェオダクチラムから選択される上記の方法に関する。例えば、生物は藻類培養物の形態で準備される。 さらに、リパーゼが配列番号1〜配列番号10の配列と少なくとも50%同一な配列を含む核酸配列によってコードされることが好ましい。この場合、リパーゼは、一実施の形態においてTAGリパーゼとしての活性を特徴とする。その上、リパーゼが配列番号1〜配列番号10の配列の1つと55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%及び100%の程度まで同一な配列を含む核酸によってコードされることが好ましい。 加えて、リパーゼが標準条件下で配列番号1〜配列番号10の核酸とハイブリダイズする核酸配列によってコードされることが好ましい。「標準条件」という用語は、特に核酸ハイブリダイゼーションの文脈で、条件が十分にストリンジェントであることを意味する。ストリンジェントな条件とは、特に高温で低塩濃度を意味する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は分子生物学の当業者に既知である。Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (1989) ColdSpring Harbor Laboratory Press, New York, USAを参照されたい。 上述の核酸配列は、リパーゼ、特にTAGリパーゼの生物活性を有するタンパク質をコードする上述のDNA配列のフラグメント、誘導体及び対立遺伝子多型も包含する。「フラグメント」とは、核酸配列の一部が記載のタンパク質の1つをコードするのに十分に長いことを意味する。したがって、本発明の核酸はDNA分子又はRNA分子であるのが好ましい。この文脈での「誘導体」という用語は、配列が1つ又は幾つかの位置で上述のDNA配列とは異なるが、依然としてこれらの配列と高度の相同性、すなわち配列同一性を示すことを意味する。上述の核酸配列からの逸脱は、例えば欠失、置換、挿入又は組換えによってもたらされ得る。 上述のリパーゼの変異体又は誘導体は、配列が変更された酵素である。しかしながら、新規の酵素変異体は元の生物活性及び触媒活性を保持する。配列変化は、例えば遺伝子コードの縮重のために生じる自然発生的な配列変異であってもよく、又は例えばそれぞれの配列の標的突然変異誘発によって人工的に導入されてもよい。かかる技法は当業者に既知である。 本方法は、生物における脂質含量の増大を可能にすることを意図する。リパーゼが脂質異化の中心点として作用するため、本発明においては、リパーゼの発現及び/又は機能の調節が発現及び/又は機能の低減であることが好ましい。特に、リパーゼの発現が低減されることが好ましい。 本発明の更なる実施の形態では、生物における脂質含量が、非処理対照と比較して110%〜250%まで増大し、好ましくは脂質含量が120%〜200%、150%〜200%、より好ましくは180%〜200%、最も好ましくは約190%まで増大する方法が記載される。言い換えると、本方法は、野生型と比較して少なくとも1.1倍、より好ましくは1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9若しくは2倍又はそれ以上の突然変異体の絶対脂質含量の増大をもたらす。 この関連で、一実施の形態では、生物において個々の脂肪酸も増大し得る。ここで、本方法は14個、16個、18個、20個、22個又はそれ以上の炭素原子を有し、1個、2個、3個、4個、5個又はそれ以上の二重結合を有する脂肪酸の含量の増大を可能にする。特に、14:0、16:4、16:3、16:1、18:4、18:2、18:1、18:0、20:4、20:5及び22:6脂肪酸(炭素原子:二重結合)の含量が増大する。 本発明の方法は生物における脂質含量の増大をもたらし、脂質含量の増大は驚くべきことに生物の一定の成長速度で起こる。 本発明の一実施の形態では、生物におけるリパーゼの発現及び/又は機能の変化が、リパーゼの発現及び/又は機能を阻害することによって達成される方法がより好ましい。この点で、リパーゼの阻害がRNA干渉構築物を生物に導入し、発現させることによって達成されることが好ましい。RNA干渉構築物はリパーゼの配列に対して指向性を有する。 いわゆるアンチセンスRNA(標的mRNAに相補的なRNA)の発現を用いて、対応する標的遺伝子の発現を微細藻類において抑制することができる(Riso De et al. 2009)。フェオダクチラムにおけるTAGリパーゼのmRNAに相補的なアンチセンスRNAの発現は、TAGリパーゼの発現を阻害し、それにより突然変異体は貯留脂質を活性化するか、又はその分解の程度をより少なくすることができる。実際に、本明細書に記載の本発明の一環として、それぞれの遺伝的に修飾されたフェオダクチラム突然変異体が、第1の結果によると、同等の成長速度で顕著に高い脂質含量及びトリアシルグリセロールの顕著な蓄積を有することが示された。 したがって、方法は更なる実施の形態において、リパーゼ活性の調節のためのRNA干渉技術(RNAi)の使用に関し、RNA干渉構築物はセンス構築物、アンチセンス構築物又は逆方向反復構築物から選択される。「逆方向反復」とは反対の、ひいては逆行した方向に配置される繰り返し核酸配列である。このため、逆方向反復はそれ自身とハイブリダイズすることができ、これにより分子はいわゆるヘアピン構造として折り畳まれる。したがって、逆方向反復の発現はヘアピンRNAをもたらし、それにより細胞においてRNAiプロセスを誘起する二本鎖RNAを生じる。かかる構築物の設計及び発現は既知であり、技術者にとっていかなる特別な課題ももたらさない。 RNAi構築物は、阻害すべきmRNAに対して少なくとも高度の相同性を示す配列を有することを特徴とする。これは、細胞RNAi機構が標的mRNAに対するRNAi構築物の配列類似性に従って配向するためである。RNAiにおいて発現は転写後に阻害される。これは例えば、ヌクレアーゼによる標的mRNAの分解、又は標的mRNAの翻訳の阻害によって起こる。このため、更に好ましい実施の形態では、方法は、配列番号1〜配列番号10から選択される配列と少なくとも50%同一であるか、又はかかる配列と標準条件下でハイブリダイズすることができる配列を含むアンチセンス構築物に関する。 この場合、リパーゼを阻害する能力を有するアンチセンス構築物が特に好ましく、該リパーゼは、(i)配列番号1〜配列番号10から選択される配列、又は(ii)配列番号1〜配列番号10の1つとの配列同一性が少なくとも50%の配列、又は(iii)標準条件下で配列番号1〜配列番号10の配列とハイブリダイズする配列を含む核酸配列によってコードされる。配列番号10を含むか、又は配列番号10と少なくとも50%同一な核酸配列によってコードされるリパーゼが特に好ましい。 さらに、RNAi構築物が遺伝子のコード領域のみならず、特に標的遺伝子のmRNAの5’領域及び3’領域中の非翻訳領域にも指向性を有することが当業者に既知である。したがって、一実施の形態において、RNAi構築物が配列番号1の663位、969位、977位、1028位、1055位、1058位、1178位若しくは1218位から選択される開始コドンの1つの5’領域に位置するか、又は3449位の終止コドンの3’領域に位置する配列を含むことが好ましい。 アンチセンス構築物が配列番号10を含むことが特に好ましい。 アンチセンス構築物、センス構築物又は逆方向反復構築物を導入し、生物の細胞を形質転換することが好ましい。したがって、生物は微細藻類等の微生物であることが好ましい。ここで、形質転換プロセスを行う当該技術分野で既知の全ての可能性を用いて方法を行うことができる。微細藻類の形質転換の場合、実施例に例示的に記載されるように遺伝子銃形質転換が好ましい。 生物における阻害構築物の発現を確実にするために、好ましい実施の形態では、構築物は発現プロモーターを含有する。プロモーターは阻害配列、例えばアンチセンス構築物、センス構築物又は逆方向反復の構成的発現又は誘導性発現を可能にする。この目的で、発現プロモーターは阻害構築物と操作可能に連結する。培養条件に応じて構築物の誘導又は構成的発現を可能にする硝酸還元酵素プロモーター「ProNr」の使用が、微細藻類におけるアンチセンス構築物の発現に特に好ましい。 本方法はRNAiの適用のみに限定されない。むしろ、本明細書に開示のリパーゼの活性の低減をもたらす全てのプロセスが可能であり、包含される。これは生物のゲノム配列への突然変異の導入によっても達成することができる。かかる突然変異は酵素の活性若しくは安定性に影響を与えるか、又はリパーゼの発現の低減をもたらすことができる。リパーゼの発現を低減させるために、それぞれの遺伝子の調節配列に突然変異を導入するのが好ましい。この目的で、遺伝子の特定のプロモーター配列又はエンハンサー配列が望ましい。突然変異誘発技法としては、例えば相同的組換えによる点突然変異若しくは欠失の導入、又はリパーゼのオープンリーディングフレームの破壊をもたらす任意の他の技法が挙げられる。さらに、いわゆる「小分子」又はリパーゼに対する抗体等の阻害分子によって、リパーゼの触媒活性の特異的阻害を引き起こす方法が考えられる。 この文脈では、本発明は別の態様において、リパーゼのモジュレーターを同定する方法であって、該リパーゼが、(i)配列番号1〜配列番号10から選択される配列、又は(ii)配列番号1〜配列番号10の1つとの配列同一性が少なくとも50%の配列、又は(iii)標準条件下で配列番号1〜配列番号10の配列とハイブリダイズする配列を含む核酸配列によってコードされる、方法を含む。この方法はリパーゼを準備する工程と、リパーゼを潜在的モジュレーターと接触させる工程と、候補モジュレーターの存在下でリパーゼの触媒活性を決定する工程とを含む。 好ましいモジュレーターは、特にいわゆる「小分子」又は核酸及びタンパク質、具体的には阻害抗体の既知のコレクションから選択することができる。この場合、リパーゼの活性のアンタゴニストが本発明におけるモジュレーターとして特に好ましい。 上記のプロセスでは、TAGからジアシルグリセリド及び遊離脂肪酸、モノアシルグリセリド及び遊離脂肪酸及び/又はグリセロール及び遊離脂肪酸への変換を決定することによってリパーゼの活性を試験することができる。 本発明の別の態様は、上述の方法を行うことを含む、脂質含量が増大した生物を産生する方法に関する。 本発明の一態様は、上述のプロセスによって作製された生物に関する。この文脈では、「産生」とは、上述のような脂質含量の増大をもたらす生物の遺伝的修飾を意味する。これは特に、アンチセンス構築物の導入による遺伝的修飾によって増大した脂質含量を示す微細藻類に関する。 更なる態様では、本発明は、生物の培養特性を改善する方法であって、該生物におけるリパーゼの発現及び/又は機能を修飾することを含み、該リパーゼが、(i)配列番号1〜配列番号10から選択される配列、又は(ii)配列番号1〜配列番号10の1つとの配列同一性が少なくとも50%の配列、又は(iii)標準条件下で配列番号1〜配列番号10の配列とハイブリダイズする配列を含む核酸配列によってコードされる、方法に関する。 本明細書に記載のリパーゼの発現の調節の過程で、驚くべきことに、本明細書に開示の配列番号1の配列によるリパーゼの発現が損なわれた微細藻類が、特に有利な培養特性を示すことが見出された。修飾された微細藻類は、野生型変異体と比較して藻類培養物のフラスコ壁面への藻類残留物(algae-remains)の沈着が低減する。とりわけ大型リアクターでの培養については、バイオマスの一部が不活性となり、リアクターを短い間隔で洗浄する必要もあるため、かかる沈着物には問題がある。 したがって、方法の好ましい実施の形態では、生物がクロムアルベオラータ、好ましくは珪藻綱(珪藻)、好ましくはナビキュラ目、好ましくはフェオダクチラム科、特に好ましくはフェオダクチラムから選択される。 方法の更なる実施の形態では、培養特性の改善は培養容器における藻類沈着物の低減を特徴とする。 本明細書に記載の本発明の更なる態様では、(i)配列番号1〜配列番号10から選択される配列、又は(ii)配列番号1〜配列番号10の1つとの配列同一性が少なくとも50%の配列、又は(iii)標準条件下で配列番号1〜配列番号10の配列とハイブリダイズする配列を含む核酸が提供される。上述のそれぞれの好ましい実施の形態が特許請求される配列に適用可能である。特に、本発明は新たなリパーゼの配列変異体に関する。 本発明の別の態様は、本明細書に記載の核酸の1つを含むベクターに属する。この文脈では、核酸の発現を可能にする当該技術分野で既知の全ての必要な配列を含有する発現ベクターが特に好ましい。したがって、本発明は本発明の核酸又は本発明のベクターを含む宿主細胞に更に関する。 本発明の別の態様は、本発明の核酸によってコードされるアミノ酸配列を有するリパーゼである。 本発明の別の態様は、脂質を抽出する方法であって、(a)本発明による脂質含量が増大した生物の培養物を準備することと、(b)培養物を所望の培養密度が達成されるまで拡大することと、(c)脂質を培養物から抽出することとを含む、脂質を抽出する方法に関する。 このため、更なる態様では、上述のような脂質を産生する方法によって作製された藻類抽出物又は脂質混合物も含まれる。 本明細書に記載の方法及び材料は、補助食品の製造、並びに化粧品及び医薬品の分野において用いることができる。 以下に添付の図面を参照し、実施例を用いて本発明をより詳細に記載するが、本発明はこれに限定されるものではない。NCBIの他のデータベースの他のアミノ酸配列との自動BLASTの結果を示す図である。活性部位「活性部位」の特徴的なアミノ酸に(#)の印を付ける。(Http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/cdd/cddsrv.cgi)クエリー/gi 217403967=フェオダクチラムのTAGリパーゼの一部(配列番号l);gi 15237603=SDP1(糖依存型1)、トリアシルグリセロールリパーゼ(シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana));gi 168015698=予測タンパク質(ヒメツリガネゴケ(Physcomitrellapatens subsp. patens));gi 159467198=予測タンパク質(コナミドリムシ(Chlamydomonasreinhardtii));gi 116055873=α−βヒドロラーゼスーパーファミリーの予測エステラーゼ(ISS)(オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri));gi 125588353=仮想的タンパク質OsJ_13065(ジャポニカイネ(Oryza sativa Japonica Group));gi 168068153=予測タンパク質(ヒメツリガネゴケ)NCBIの他のデータベースの他のアミノ酸配列との自動BLASTの結果を示す図である。特徴「求核性屈曲(nucleophilic elbow)」の特徴的なアミノ酸に(#)の印を付ける。(Http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/cdd/cddsrv.cgi)クエリー/gi 217403967=フェオダクチラムのTAGリパーゼの一部(配列番号l);gi 15237603=SDP1(糖依存型1)、トリアシルグリセロールリパーゼ(シロイヌナズナ);gi 168015698=予測タンパク質(ヒメツリガネゴケ);gi 159467198=予測タンパク質(コナミドリムシ);gi 116055873=α−βヒドロラーゼスーパーファミリーの予測エステラーゼ(ISS)(オストレオコッカス・タウリ);gi 125588353=仮想的タンパク質OsJ_13065(ジャポニカイネ);gi 168068153=最後の予測タンパク質)(ヒメツリガネゴケ)配列番号Chr_24:281259〜284752(配列番号1)のリパーゼの遺伝子配列を示す図である。アンチセンス構築物loAS(配列番号11)及びshAS(配列番号10)のトリガー配列を示す図である。プライマー結合部位には下線を引いている。リパーゼ遺伝子(put_lip)並びにアンチセンス構築物shAS及びloASの注釈付き遺伝子配列の概略図である。アンチセンスフラグメントのベクターpPhaNRへのクローニングの概要を示す図である。フェオダクチラム野生型UTEX 646及び突然変異体ShASlの光学顕微鏡写真を示す図である。フェオダクチラム野生型UTEX 646及び突然変異体ShASlの蛍光顕微鏡写真を示す図である。細胞を蛍光色素ナイルレッドで予め処理して、細胞内の脂質滴を可視化した。UTEX 646及び突然変異体ShASlの脂質抽出物の薄層クロマトグラフィーを示す図である(固定相:シリカゲル60 F254、Merck)。移動相はNL:ヘキサン−ジエチルエーテル−酢酸(80:20:1)及びPL:クロロホルム−メタノール−水(95:35:5)である。A:可視光でのクロマトグラフィー。B:primolin色素。標準においては、以下の意味がある:PG:ホスファチジルグリセロール、PC:ホスファチジルコリン、PI:ホスファチジルイノシトール、TAG:トリアシルグリセロール、DAG:ジアシルグリセロール、MAG:モノアシルグリセロール。野生型(Wt UTEX 646)及びアンチセンス突然変異体(ShASl)の成長曲線を示す図である。野生型UTEX 646及びアンチセンス突然変異体Shas1の培養フラスコを示す図である。左側:qRT−PCRの相対量の図。3回の異なるRNA単離を用いて、野生型(Wt、黒色バー)又は突然変異体(ShASl、白色バー)における新たなリパーゼ(配列番号2)の相対発現レベルを決定し、参照のヒストンH4と比較した。mRNAレベルの定量化を三連で行った。野生型の平均値を較正基準(calibrator)として使用し、1に設定した。右側:フェオダクチラム野生型(黒色バー)及びリパーゼノックダウン突然変異体(ShASl、白色バー)の4つの独立した培養物の乾燥重量(TG)当たりの脂質収量。色素含量は水玉模様で表し、TAG(灰色)を表示する。SIGMAリパーゼアッセイによるリパーゼ活性アッセイを示す図である。問題のリパーゼは本発明による新たなリパーゼであり(配列番号2によってコードされる)、これを大腸菌(E. coli)において組換えにより過剰発現させた。フェオダクチラム(P. tricornutum)野生型に由来する脂質抽出物(暗色バー)及びリパーゼノックダウン突然変異体(明色バー)におけるメチルエステル(FAME)として測定された脂肪酸の相対比率を示す図である。データは3回の独立実験の平均を表す。1. リパーゼの説明1.1 新たなTAGリパーゼの現在注釈付けられている遺伝子配列 推定TAGリパーゼを、他のTAGリパーゼとの類似性に基づき完全にシークエンシングされたフェオダクチラムのゲノムにおいて探索した。TAGリパーゼ配列の特徴を有するフェオダクチラムに由来する潜在的TAGリパーゼの遺伝子配列の一部(put_lip)が、とりわけNCBI(全米バイオテクノロジー情報センター)のデータベースに見られる。この部分配列はNCBI「アクセッション番号」XP 002184517.1を有し、「仮想的タンパク質「PHATRDRAFT_1971」として注釈付けられている。1971は、JGI(Joint Genome Institute、http://genome.jgi-psf.org/Phatr2/Phatr2.home.html)の遺伝子データのタンパク質/遺伝子IDである。「CCAP 1055/1」は、ゲノムシークエンシングに用いたフェオダクチラム株を表す。 個々の塩基の配位を含むリパーゼの遺伝子配列を図3に示す。1.2 他の生物のリパーゼに対する相同性 本明細書に記載の核酸配列に対する対応するタンパク質のアミノ酸配列における配列相同性に基づき、潜在的リパーゼを「パタチン−SDP1様」リパーゼの群に割り当てる。特に、他のリパーゼと一致する触媒中心(「活性部位」)、第2の保存領域として「求核性屈曲」という2つの保存領域を配列中に見ることができる。図1に触媒中心の触媒アミノ酸を示し、図2では対応する配列中の「求核性屈曲」の特徴的アミノ酸を#で示す。 同様に「パタチン−SDP1様」リパーゼの群に割り当てられた、他の生物に由来する選択された(潜在的)TAGリパーゼのアミノ酸配列の自己配列比較から、この群内の配列相同性の品質が示される(表1)。表1:他の生物の様々な「パタチンSDP1様」リパーゼのアミノ酸配列のアラインメントの結果;Phaeo=フェオダクチラムの配列番号1に由来するTAGリパーゼの一部(PHATRDRAFT_1971);Taps=タラシオシラ・シュードナナ(T. pseudonana)に由来するpot TAGリパーゼ;Saccha=サッカロマイセス・セレビシエ(S. cerevisiae)に由来するTAGリパーゼ(Tgl3);Arab=シロイヌナズナ(A. thaliana)に由来するSDP1、Chlamy=コナミドリムシ(C.reinhardtii)に由来するpot TAGリパーゼ;homo=ヒト脂肪TAGリパーゼ2. リパーゼの阻害の説明 例えば相同的組換えによる標的遺伝子「ノックアウト」は現在、フェオダクチラム及び他の珪藻においては可能ではない。しかしながら、アンチセンス構築物の組換え発現による「ノックダウン」としての遺伝子発現の阻害は、確立された方法とみなされる(De Riso et al. 2009)。これを本明細書に記載の突然変異体に用いた。代替的には、逆方向反復構築物を使用することもできる(De Riso et al. 2009)。2.1 構築物の産生 潜在的TAGリパーゼの阻害のために、リパーゼ遺伝子put_lip(配列番号1)に対する、 1. 290bpのアンチセンスRNA(短いアンチセンス;shAs−配列番号10)、及び、 2. 319bpのアンチセンスRNA(長いアンチセンス;loAs−配列番号11)、を発現する2つの構築物をクローニングした。フェオダクチラム(Phaeodactylum)のゲノムDNAに由来するアンチセンス構築物の増幅のために、以下のプライマーを使用した:SalI_AS_fw:5’−CTTC GTC GACGGC GTT AGC GGG TAC CAA AG−3’(配列番号12)XbaI_shAS_rv:5’−CTT TCT AGATGG CAC ACA CGA GCG AAC−3’(配列番号13)XbaI_loAS_rv:5’−CTT TCT AGAGCA TTC TTC GTC TGT CCG TG−3’(配列番号14) プライマーは各々、リパーゼ特異的配列に加えて5’末端に、その後の発現ベクターpPha−NRへのクローニングのための制限部位を含有する(プライマー配列中に下線で示される)。5’末端の付加的な塩基はPCR産物の効率的な制限に必要とされる。 アンチセンス構築物loAS(配列番号11)及びshAS(配列番号10)のトリガー配列を図4に示す。配列中のプライマー結合部位には下線を引いている。リパーゼ配列中のアンチセンス構築物の位置を図5に示す。 アンチセンスフラグメントをSalI/XbaI認識部位によってベクターpPha−NRにクローニングし(図6)、大腸菌をベクターで形質転換した。プラスミドを大腸菌から抽出した後、そのようにして得られたDNAをフェオダクチラムの形質転換に使用した(下記を参照されたい)。 したがって、突然変異体におけるアンチセンス構築物の組換え発現はプロモーター「ProNR」の制御下にある。これはフェオダクチラムに由来する硝酸還元酵素のプロモーターである。このプロモーターは通常誘導可能である、すなわちアンチセンス構築物の発現がそれぞれオン又はオフされる可能性がある。しかしながら、本発明者らにより選ばれたフェオダクチラムの成長条件下では、硝酸還元酵素プロモーターは構成的に活性である。2.2 フェオダクチラムの形質転換 野生型の形質転換のために、初めに培養物を採取し、初期指数増殖期で濃縮した(およそ4日〜5日及びおよそ3×106細胞/ml〜5×106細胞/ml)。続いて、細胞を遺伝子銃形質転換した。このために、およそlμgのDNAを3mgの洗浄済みタングステン粒子でスペルミジン及びCaCl2を用いて沈殿させ、エタノールで洗浄し、そのように作製された粒子を寒天プレート上、成長培地(プレート1枚当たり108個の細胞)中での細胞の衝撃に使用した。翌日、ゼオシンを含有する寒天プレートに細胞を移し、更に3週間後に液体培養を行った。3. 結果3.1 リパーゼ突然変異体ShASlの特性化 日常的な顕微鏡による細胞計数で細胞内の脂質滴の数が著しく多いために注目された突然変異体ShASlを、その後広範に研究した(図7及び図8)。qRT−PCRを行い、細胞培養物において野生型(WT)リパーゼ及びRNAiノックダウン突然変異体(ShASl)の相対mRNAレベルを決定した。どちらの場合も、リパーゼ転写産物の量を構成的に発現されたヒストンH4 mRNAによって正規化した。野生型リパーゼmRNAの平均値を1に設定した。突然変異体におけるリパーゼの相対発現は、RNAi構築物によって44%(±6%)まで低減した。これらのデータは3回の独立したRNA単離の平均に基づく(図12、左側)。3.2 野生型UTEX 646及び突然変異体ShAS1の脂質抽出 脂質の抽出及び分析のために、フェオダクチラム野生型UTEX 646及びリパーゼ「ノックダウン」突然変異体shASlの各々のエアリフト培養物5Lを培養した。フラスコにおよそ500000細胞/mlで播種し、ASP培地中、以下の条件下で4日間培養した:18℃、明暗サイクル:16時間/8時間;およそ40μEm−2s−1;採取時の細胞数:3×106細胞/ml〜4×106細胞/ml(指数増殖期)。脂質分析 脂質抽出(採取後の細胞計数及び並行した乾燥重量決定)の出発物質(いずれの場合にも、3mlを脂質抽出に使用した):UTEX646:2.8×109細胞/mlShAS1:2.5×109細胞/ml これにより以下の量の抽出物が得られた:UTEX646:56.2mg(およそ6.7pg/細胞、0.22±0.03mg(脂質抽出物)/mg(乾燥重量)に相当)ShAS1:96.5mg(およそ12.9pg/細胞、0.28±0.01mg(脂質抽出物)/mg(乾燥重量)の突然変異体に相当(図12、右側)) 抽出物の量を重量測定により決定したが、脂質だけでなく、様々な色素も含有されていた。しかしながら、野生型と突然変異体とで色素含量が同様であると仮定すると(図12、右側)、以下の野生型と突然変異体との脂質レベル比を算出することができる:6.7pg/細胞(野生型)と比較して12.9pg/細胞(突然変異体)=1.93 これにより、突然変異体では野生型と比較して1細胞当たりおよそ90%多い抽出物が得られる。突然変異体では、0.04±0.01mg(TAG)/mg(乾燥重量)であったが、この培養条件下でWTにはTAGは存在しなかった。3.3 脂質抽出物の薄層クロマトグラフィー 抽出物を薄層プレート上で標準に対して分析すると(図9)、突然変異体において野生型(WT)と比較して強いトリアシルグリセリドの濃縮が観察された。加えて、エステル化後の質量分光分析による野生型UTEX 646及び突然変異体shASlの全脂肪酸組成の調査(GC−MSによる脂肪酸メチルエステル(FAME)分析)(酢酸メチル=ME)を行った(表2及び表3、並びに図14)。表2:FAME−GC−MS分析による脂肪酸の組成脂質抽出物の総量及びFAME−GC−MS分析に基づく(UTEX 646については6.7pg/細胞、ShASlについては12.9pg/細胞)表3:脂肪酸のアシル鎖長に応じて分類された脂肪酸の組成3.4 成長比較 成長の比較のために、300mlのASP培地の3つの独立した培養フラスコに5×106細胞/mlで野生型及び突然変異体を播種した。培養物を18℃の温度、明暗サイクル:16時間/8時間;およそ40μEm−2s−1でインキュベートし、バッチ培養として培養した。トーマ型血球計算板(Thoma counting chamber)を用いて細胞数を決定した。野生型UTEX 646及び突然変異体ShASlの成長速度は、有意な差を示さなかった(図10)。3.5 リパーゼ活性 本発明の単離リパーゼの酵素活性を、SIGMAリパーゼアッセイによって更に検査した。このために、リパーゼを大腸菌中で組換えにより過剰発現させた。本発明の新たなリパーゼはバッファー又はBSAタンパク質を含む対照と比較して、数分後には既に酵素活性を示していた(図13)。4. 付加的結果 野生型UTEX 646及び突然変異体ShASlの成長曲線の記録時に、突然変異体は更に注目に値する特性を示した。通常、フェオダクチラム細胞は培養フラスコの縁に沈殿する傾向がある(「壁面成長(Wall Growth)」)。この現象は、使用した光バイオリアクターから残屑を入念に取り除く必要があるために、とりわけ微細藻類の大量培養において大きな問題となる。野生型と比較して、突然変異体ShASlは培養フラスコの壁面への沈着の顕著な低減を示した(図11)。 生物における脂質含量を増大させる方法であって、 a.脂質含量を増大すべき生物を準備する工程と、 b.前記生物におけるリパーゼの発現及び/又は機能を調節する工程と、を含み、 該リパーゼが、 i.配列番号1〜配列番号10から選択される配列、又は、 ii.配列番号1〜配列番号10の1つとの配列同一性が少なくとも50%の配列、又は、 iii.標準条件下で配列番号1〜配列番号10の配列とハイブリダイズする配列、を含む核酸配列によってコードされる、方法。 前記生物が、藻類培養物の形態のクロムアルベオラータ、又は珪藻綱(珪藻)、又はナビキュラ目、又はフェオダクチラム科、又はフェオダクチラムから選択される、請求項1に記載の方法。 前記発現及び/又は機能の調節が低減、又は発現の低減である、請求項1又は2に記載の方法。 前記生物における前記脂質含量が、非処理対照と比較して110%〜250%まで増大し、又は該脂質含量が120%〜200%、150%〜200%、又は180%〜200%、又は約190%まで増大する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。 前記脂質含量の増大が前記生物の一定の成長速度で起こる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 前記生物におけるリパーゼの発現及び/又は機能の調節が、該リパーゼの発現及び/又は機能の阻害、又は該リパーゼの配列に対して指向性を有するRNA干渉構築物の前記生物への導入及び発現によって達成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。 前記RNA干渉構築物が、配列番号1〜配列番号10の1つと少なくとも50%同一な配列を含み、又は該RNA干渉構築物が配列番号10を含む、請求項6に記載の方法。 請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法を行うことを含む、脂質含量が増大した生物を産生する方法。 請求項8に記載の方法によって産生される生物。 生物の培養特性を改善する方法であって、該生物におけるリパーゼの発現及び/又は機能を修飾することを含み、 該リパーゼが、 i.配列番号1〜配列番号10から選択される配列、又は、 ii.配列番号1〜配列番号10の1つとの配列同一性が少なくとも50%の配列、又は、 iii.標準条件下で配列番号1〜配列番号10の配列とハイブリダイズする配列、を含む核酸配列によってコードされる、方法。 (i)配列番号1〜配列番号10から選択される配列、又は(ii)配列番号1〜配列番号10の1つとの配列同一性が少なくとも50%の配列、又は(iii)標準条件下で配列番号1〜配列番号10の配列とハイブリダイズする配列を含む核酸。 請求項11に記載の核酸を含むベクター。 請求項11に記載の核酸又は請求項12に記載のベクターを含有する宿主細胞。 請求項11に記載の核酸によってコードされるアミノ酸配列を有するリパーゼ。 脂質を抽出する方法であって、 a.請求項9に記載の生物の培養物を準備することと、 b.前記培養物を所望の培養密度が達成されるまで拡大することと、 c.前記脂質を前記培養物から抽出することと、を含む、方法。 請求項15に記載の方法によって得られる脂質混合物。 本発明は、トリアシルグリセロール(TAG)リパーゼの活性の調節を用いて生物、特に微細藻類における脂質含量を増大させる方法に関する。本発明は、上記方法によって得られ、脂質含量が増大した生物又は微細藻類、並びに産業及び医学における、特にオメガ3不飽和脂肪酸を得るためのそれらの使用に更に関する。本発明は、新たなTAGリパーゼをコードするフェオダクチラムに由来する核酸、及びバイオマスにおける脂肪酸の割合、特に多価不飽和脂肪酸の含量に影響を与える際の該核酸の使用に更に関する。【選択図】なし 配列表