生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_DNAミスマッチ修復機能を判別する方法
出願番号:2014517733
年次:2014
IPC分類:C12Q 1/68,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

ナイストロム、ミンナ カンシカス、ミンッツ ペルトメキ、ペイビ JP 2014520515 公表特許公報(A) 20140825 2014517733 20120629 DNAミスマッチ修復機能を判別する方法 ヘルシンキ・イリオピスト 514002846 Helsingin yliopisto 蔵田 昌俊 100108855 福原 淑弘 100109830 野河 信久 100103034 峰 隆司 100075672 砂川 克 100140176 ナイストロム、ミンナ カンシカス、ミンッツ ペルトメキ、ペイビ FI 20115709 20110701 US 61/503,735 20110701 C12Q 1/68 20060101AFI20140730BHJP C12N 15/09 20060101ALN20140730BHJP JPC12Q1/68 AC12N15/00 A AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA EP2012062708 20120629 WO2013004618 20130110 32 20140219 4B024 4B063 4B024AA11 4B024BA80 4B024CA01 4B024CA09 4B024HA12 4B063QA05 4B063QA19 4B063QQ02 4B063QQ08 4B063QQ43 4B063QR08 4B063QR32 4B063QR42 4B063QS25 4B063QS34 4B063QX02発明の分野 本発明は、癌の診断法に関し、ヒト対象がDNAミスマッチ修復機能障害を有しているかどうかを判別するため、ならびに、それにより、遺伝性癌、特に、結腸直腸癌を発症するリスクが高まる、機能欠損を有するミスマッチ修復遺伝子を特定するためのDNAミスマッチ修復アッセイに基づく方法を提供する。本方法は、リンチ症候群の診断の新規の方法も提供する。本方法は、正常な組織、たとえば、線維芽細胞由来のサンプルに対して実施される。発明の背景 結腸直腸癌(CRC)は、米国およびヨーロッパにおいて癌に関連した死亡の2番目に一般的な原因である。Expert Rev Mol Diagn、10(5):651〜665、2010におけるPino,M.S.およびChung,D.D.による最近のレビュー論文によると、CRCは、米国において推定年間52,000名および欧州において年間146,000名の死亡の原因となっている。新たに診断されるCRCの症例のおよそ2〜5%は、リンチ症候群に起因する可能性がある。 遺伝性非ポリポーシス大腸癌症候群(HNPCC)と呼ばれることも多いリンチ症候群(LS)は、早期発症型の結腸直腸および子宮内膜癌、ならびに胃腸管(たとえば、胃、小腸、胆管)、泌尿器系(urinary collecting system)(腎盂、尿管)および女性生殖器系(卵巣)における他の場所の腫瘍を含む特定の結腸外の癌のリスクの増加により明らかになる。 選択されたLS家族の研究は、診断時の平均年齢が40代半ばで70〜80%の結腸癌の生涯リスクを推定した。LSにおいて2番目に一般的な癌は、子宮内膜癌であり、LSの女性は、子宮内膜および卵巣癌の発症の累積的な生涯リスクを有し、診断時の平均年齢が散発例よりもおよそ10年早い。LS患者の胃癌の生涯リスクは、母集団間で変化し、胃癌の高い固有のリスクがある地域、たとえば、中国および韓国において特に発病率が高く、およそ30%の生涯リスクである。これらの地域では、胃癌に対するリスクが子宮内膜癌に対するリスクを上回る。 リンチ症候群は、DNAミスマッチ修復(MMR)機構にとって重要な遺伝子における変異の常染色体優性遺伝と極めて関連づけられ、4つのDNAミスマッチ修復(MMR)遺伝子、MLH1、MSH2、MSH6およびPMS2のうちの1つにおける生殖細胞系列変異に起因する。さらに、散発性の結腸腫瘍の25%ならびに子宮内膜、卵巣および一部のその他の器官および組織のいくつかの腫瘍は、MMRに欠損がある。MMRタンパク質は、通常、マイクロサテライトとして知られる短い反復配列の複製過程においてDNAポリメラーゼのスリッページによって引き起こされた不適正なヌクレオチドおよび挿入/欠失ループを認識し、修復する。 ゲノムの完全性(genomic integrity)を維持するためにヘテロダイマーとして働くヒトのミスマッチ修復(MMR)機構に関与する5つのタンパク質は、MutLα(MLH1+PMS2)、MutSα(MSH2+MSH6)およびMutSβ(MSH2+MSH3)である。MMRタンパク質は、DNAの複製および組換えの過程で新たに合成された鎖上に生じる塩基/塩基ミスマッチおよび小さな挿入/欠失ループ(IDL)を修正する。 最も頻繁に変異がもたらされる遺伝子は、MLH1、MSH2、MSH6およびPMS2を含み、その生殖細胞系列変異(germline variation)は、LOVDデータベース(http://www.insight−group.org/;http://www.lovd.nl/)において報告されている。MMR遺伝子に影響を及ぼす大半の変異は切断であるが、かなりの割合の変異が1つのアミノ酸置換またはインフレームの欠失をもたらし、無害な遺伝子多型と区別することが難しい。そのような変化は、ポリペプチドの機能に対する変異の影響が特徴づけられていないため意義不明の変異(VUS)と呼ばれることが多い。 MMR欠損腫瘍は、マイクロサテライト不安定性(MSI)と強く関連づけられている。しかしながら、MSIの程度およびタイプは、変異がもたらされたMMR遺伝子により異なる(Kantelinenら、British J Cancer、1〜6、2010)。 LSでは、個人には変異対立遺伝子による遺伝性の易罹患性が既にあり、MMR機能を失い腫瘍形成が始まるためには体細胞に第2の打撃が必要なだけであるという事実に基づき、LSにおける癌発症の平均年齢は、散発性の結腸直腸癌のそれよりも著しく低い。したがって、LS腫瘍は、原因となるMMRタンパク質の欠如または量の低下ならびにMSIを引き起こすDNA修復障害によって特徴づけられる。 集中的な癌の監視を必要とすることになるハイリスクの患者を特定するために、LSの適時の識別が極めて重要である。大腸内視鏡検査スクリーニングおよび前駆病変、腺腫の除去は、MMR遺伝子変異保因者の癌罹患率および死亡率を著しく減少させる(Jarvinenら、Gastroenterology 118:829〜834、2000)。費用対効果の分析は、MMR遺伝子変異保因者の結腸直腸癌の監視は有効であり、監視なしの結果よりも大幅に費用が少ないことを示している。結腸直腸癌と新規診断をされた全個人には、年齢または家族歴にかかわらず、リンチ症候群についての遺伝子検査が提供されるべきであると合衆国の疾病管理予防センター(CDC)は勧告している。CDCの報告は、現在、いかなる特定のスクリーニング手順も代替手順と比較して推奨するための十分な証拠はないとさらに言明している。 多種多様の臨床表現型がLS診断法を複雑にしているにもかかわらず、一般的なCRCの負荷とLS家族を区別するためのいくつかの臨床ガイドラインが確立された。現在、LSの臨床診断は、アムステルダム基準または改訂ベセスダガイドラインに大きく依存しており、これは、癌発症年齢、家族内の罹患した個人の数および分離ならびにMSIの程度を考慮するものである(Pino&Chung、上記)。しかしながら、多くの推定上のLS家族は、これらの基準に合わず、彼らにおける病因の生殖細胞系列MMR遺伝子変異を特徴づけることによってのみLS家族として識別されるであろう。 MMR遺伝子変異保因者、すなわち、リンチ症候群に冒された対象を特定するための従来の診断ワークフローは、いくつかの段階、たとえば、腫瘍研究、DNA分析、変異の病原性についてのインビトロ試験を含み、遺伝子異常の検出から、MMR能の低下と関連づけられるかの評価に進む。LSに関連した腫瘍を診断する際の最初の臨床的ステップは、免疫組織化学的検査(IHC)およびMSI分析を含み、IHCおよびMSIの結果によって決まった変異スクリーニングが続く。変異をスクリーニングするための一手順は、全4つのMMR遺伝子(MLH1、MSH2、MSH6およびPMS2)を分析することである。病因の変異が見つかると、LSが確認でき、またはMMR遺伝子変異がないと、可能性は低いと見なされるが除外はされない(単独または組み合わせて使用されるかのいずれにしても、100%の感度かつ特異的な方法はないため)。 本発明者らによる最近の発表(Kansikasら、Hum Mutat 32:107〜115、2011)は、インビトロにおけるMMR能に関する合成変異タンパク質の試験が、病原性試験に関する基礎を形成することを開示している。発表されたインビトロMMRアッセイは、相同的なヒトMMR系におけるLS変異の表現型の結果について研究している。LS変異タンパク質の構築は、問題の遺伝子異常が発見され、DNA配列レベルで完全に特徴づけられることを必要とする。3ステップの決定木が次のように提案された(Couchら、Hum Mutat 29:1314〜1326、2008): しかしながら、臨床診断の確立のために使用される本試験と関連していくつかの欠点がある: MSI試験は、労働集約的であり、専門の分子病理学的サービス(molecular pathologic service)を必要とし、MSIは、LSの特徴ではあるが、LSに特有のものではない。およそ10〜25%の散発性CRCおよび多くの結腸外の癌もMSIを示す。さらに、LS関連および散発性MSI陽性CRCは、多くの共通の病理組織学的特徴を有しているが、散発性MSI CRCは、家族歴陽性と関連づけられない点で異なる。 IHC試験の固有の潜在的な欠点は、技術がいくぶん主観的であり、組織標本の品質、染色および結果の解釈によって決まることである。興味深いことに、異常な染色パターンは、組織保存および腫瘍の微小環境に起因する場合もある。たとえば、遺伝学的にMMR能力のある組織においてであっても、組織低酸素または酸化ストレスがMMRタンパク質の機能を弱める場合もあり、限局的な減少または薄い染色につながる。MMR遺伝子における二次的な異常がまれな染色パターンにつながる場合もある。 しかしながら、LSを診断する現在の方法に関する最も明らかな制約は、試験が、LS病歴がわかっているか、もしくは疑わしい家族からの対象または癌に既に冒されている対象に対する遺伝子検査および変異分析に基づくものであることである。この事実が、現在の診断法を保因者であることが疑われる健康な対象の通常のスクリーニングに適さないものにしている。さらに、現在の試験方式は、十分な設備が整った研究所ならびに極めて技量のある検査技師を必要とする非常に困難なものである。IHC、MSIおよび変異分析を含むステップの金額が1試験あたり約3500ユーロになると推定され、これは、通常の試験としては高価である。 したがって、正確で、より単純であるが、より安価で、人がリンチ症候群に関連しており、それにより、結腸直腸癌ならびにその他の癌の高いリスクにさらされるMMR遺伝子変異の保因者であるかどうかを特定するために臨床的に適した試験に対して十分に確立し、認識されたニーズがある。 本発明の目的は、対象のLS病歴または癌の予備知識なしでMMR効率の低下を検出するための正確で単純で安価な臨床的に適した試験を実現するための新規の方法および手段を提供することであり、それにより、診断法の現在の方法の課題を解決する。本発明は、ヒト対象がDNAミスマッチ修復機能障害を有しているかどうかを判別するための定量的方法であって、a)前記ヒト対象から得られたサンプルから核抽出物を生成すること、b)それぞれ陽性および陰性対照として、MMR能力のあるおよびMMR欠損のある核タンパク質抽出物を準備すること、c)個別のバイアル中で各核抽出物を少なくとも1つのミスマッチ含有ヘテロ二重鎖DNA基質と組み合わせること、d)前記サンプルおよび対照核タンパク質抽出物ならびに前記基質に対してミスマッチ修復アッセイを実施すること、ならびにe)前記サンプル核抽出物が前記基質DNA分子を修復できるかどうかを判別することを含む、方法に関する。好ましくは、前記サンプルは、構成組織から得られた正常な細胞、より好ましくは、線維芽細胞または血液由来細胞を含む。 本発明の一態様において、前記基質は、配列番号1を有するプラスミドに由来し、好ましくは、前記基質は、配列番号2および配列番号3からなる群から選択される核酸配列をさらに含む。 別の態様において、MMR欠損核抽出物は、HCT116およびLoVo細胞からなる群から選択される細胞株に由来する。特定の態様において、バイアル当たりの核抽出物の総量は、50〜500μg、好ましくは50〜200μg、より好ましくは75〜100μgの範囲である。 本発明はさらに、機能欠損を有するミスマッチ修復遺伝子を特定するための定量的方法であって、a)ヒト対象から得られたサンプルから核タンパク質抽出物を生成すること、b)陽性および陰性対照としてそれぞれ、MMR能力のあるおよびMMR欠損のある核タンパク質抽出物を準備すること、c)少なくとも1つのMMR欠損核タンパク質抽出物を前記サンプル抽出物と混合すること、d)個別のバイアル中でステップa〜cにおいて準備された各核抽出物を少なくとも1つのミスマッチ含有ヘテロ二重鎖DNA基質と組み合わせること、e)前記核抽出物および前記基質に対してミスマッチ修復アッセイを実施すること、ならびにf)前記サンプル核抽出物が前記基質を修復でき、前記MMR欠損核抽出物を補完できるかどうかを判別することによって前記欠損遺伝子を特定することを含む、方法に関する。好ましくは、前記サンプルは、構成組織から得られた正常な細胞、より好ましくは、線維芽細胞または血液由来細胞を含む。 本発明の一態様において、前記基質は、配列番号1を有するプラスミドに由来し、好ましくは、前記基質は、配列番号2および配列番号3からなる群から選択される核酸配列をさらに含む。 別の態様において、MMR欠損核抽出物は、HCT116およびLoVo細胞からなる群から選択される細胞株に由来する。特定の態様において、バイアル当たりの核抽出物の総量は、50〜200μg、好ましくは75〜100μgの範囲である。 さらに、本発明は、ヒト対象の構成組織から得られた臨床サンプルから、本発明によるMMRアッセイを使用して欠損DNAミスマッチ修復遺伝子を特定することに基づいて、ヒトのリンチ症候群を診断するための新規の方法に関する。 本発明は、本発明による方法に使用するためのキットであって、少なくとも1つのミスマッチ含有ヘテロ二重鎖DNA基質、少なくとも1つのMMR欠損核抽出物および陽性対照としてMMR能力のある核抽出物を含む、キットにも関する。好ましくは、前記MMR欠損核抽出物は、MLH1、MSH2またはMSH6のいずれかについてのMMR欠損を有する細胞株、好ましくは、HCT116またはLoVo細胞に由来する。 本発明の特定の態様において、本キットは、少なくとも2つのMMR欠損核抽出物を含む。 さらなる態様において、本キットは、MMRアッセイを実施するために必要な追加の試薬、たとえば、200mMのトリス−HCL、pH7.6、400mMのKCl、50mMのMgCl2、10mMのグルタチオン、BSA 500μg/ml、1mMの各dNTPおよび15mMのATP含む10×MMR緩衝液;ならびに42mMのEDTA、1.2%のSDS、50.4μg/mlのプロテイナーゼKを含むMMRアッセイ用停止液も含んでもよい。任意に、本キットは、サンプルを清澄にするための試薬、たとえば、TE緩衝液、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールおよびクロロホルム;前記サンプルを沈殿させるための試薬、たとえば、NaClおよびエタノール;ならびに修復を検出するための試薬、たとえば、RNase Aならびに緩衝液とともに制限酵素BglIIおよびEco31Iならびにローディングダイを含んでもよい。 以下に、添付の図面を参照して好適な態様によって、本発明がより詳細に記載される。図1は、本発明の方法の概要である。図2は、MMR能力のある細胞株(HeLa)から得られる核抽出物および核タンパク質を含まないMMR欠損アッセイ対照(MOCK)と比較した健康な線維芽細胞核抽出物(FB−WT、野生型)のMMR分析である。図3は、ウエスタンブロット分析であり、a)MLH1が部分的に発現抑制された線維芽細胞由来細胞株FB−M1と比較した健康な線維芽細胞核抽出物(FB−WT)のMMRタンパク質含有量(MLH1およびその対応物、PMS2)ならびにb)MSH2が部分的に発現抑制された線維芽細胞由来細胞株FB−SH13と比較したFB−WTのMMRタンパク質含有量(MSH2およびその対応物、MSH6)を示している。図4は、定量的MMR分析であり、FB−M1におけるMLH1およびFB−SH13におけるMSH2の欠損が変化する強度で修復効率の低下として検出されることを示している。相対的修復パーセンテージは、FB−WTの修復効率に対して示される。図5は、定量的MMR分析であり、MLH1欠損核抽出物HCT116と組み合わせて使用されると、FB−WTおよびFB−M1の異なるMMR能力が検出されうることを示している。図6-1は、基質調製の図式的な説明であり、pGEM−IDL40、pGEM−IDLGTおよびpGEM−IDL39プラスミドの説明ならびにそれらの誘導された構築物、5’IDLGTおよび5’IDL1を含む。図6-1の続葉である。発明の詳細な説明 ここで、遺伝性MMR欠損を有する、したがって、癌を発症する顕著なリスクがある個人を識別するためにDNAミスマッチ修復(MMR)効率の機能評価を使用できることが驚くべきことに発見された。本発明は、新規のMMRアッセイを提供し、これは、MMRの能力欠損を特定することを目的とする(図1)。本発明によるアッセイは、基礎となるMMR遺伝子配列もしくは調節変化、家族歴、癌の病歴またはIHCの結果のいかなる事前知識なしに適用でき、したがって、診断用途のための新規のアプローチを成す。本アッセイは、大きな母集団においてMMR変異保因者をスクリーニングする用途、したがって、癌発症のリスクが高い人を見つけるために理想的である。 MMR遺伝子(リンチ症候群)変異保因者を特定するための従来の診断ワークフローは、いくつかの試験を含み、遺伝子異常の検出から、MMR能の低下と関連づけられるかの評価に進むのに対して、本発明は、たった1つアッセイからなる単純な試験プロトコルに関する。本発明は、個人が、定量的MMRアッセイによって判別される生殖細胞系列におけるMMR異常を持っているかどうかを評価する1ステップの手順を提供する。本発明による方法は、検査される対象から得られた正常な組織サンプル、たとえば、血液、粘膜または線維芽細胞、好ましくは、線維芽細胞もしくはリンパ芽球における低下したMMR能の検出に基づく。 ここで使用される場合、「正常な」組織という用語は、任意の健康な非悪性組織、好ましくは、構成組織を含むことが意図される。 ここで使用される場合、「構成組織」という用語は、出生時に受け継いだ遺伝子構成を実質的に表わし、サンプリングに利用できるヒトの体の任意の部分、たとえば、粘膜または線維芽細胞から得られてもよい非悪性細胞の組織を指す。 本発明の試験プロトコルは、定量的方法に関する。ここで使用される場合、「定量的方法」という用語は、変化する強度でMMR効率の結果を示す方法を指し、すなわち、これは、オン/オフ試験ではない。本発明のMMRアッセイは、修復効率の低下としてMMRタンパク質の欠損を検出する(MLH1およびMSH2に関する図4を参照)。ここで使用される場合、MMR遺伝子またはタンパク質は、MMRプロセスに関与する、たとえば、MLH1、MSH2、MSH6、MLH3、MSH3、PMS1、PMS2およびEXO1からなる群から選択されるあらゆる遺伝子またはタンパク質を指す。特定の態様において、MMRタンパク質、MLH1、MSH2および/またはMSH6の欠損は、本発明の方法または手段によって検出される。実際、たとえば、LS家族のすべてのMMR遺伝子変異保因者の正常な細胞の場合と同様に、1つ正常なMMR対立遺伝子のみが存在する場合またはMMR遺伝子が部分的に不活化されている場合は、ミスマッチを修正するための一部の能力が依然としてある。比較すると、癌細胞に使用される先行技術の試験は、MMRが起こる(両野生型対立遺伝子あり)か、またはそれがない(両野生型対立遺伝子なし)かを明らかにするMMRに関するオン/オフ試験ということになる。 DNAのMMRは、細胞の核内で行われ、核のMMRタンパク質のみが、修復プロセスに関与する。本発明の方法によって、修復作業のために核に向かったこれらのMMRタンパク質の機能をインビボにおいてアッセイすることができる。それは、本方法の出発材料が核抽出物であるためである。それとは逆に、従来のワークフローにおけるMMRアッセイは、構築された変異型MMRタンパク質生成物のMMR効率をインビトロにおいて研究するために使用される。これらのインビトロ試験では、もともと核に存在するタンパク質のみを研究する可能性はなく、検査されるタンパク質は核抽出物に人工的に添加される。したがって、核の実際のMMRの能力を明らかにすることによる本発明の病原性試験は、先行技術の機能試験とは異なる。したがって、本発明の方法によって、MMRタンパク質の核局在化の問題を見つけることも可能である。 先行技術の方法は、核抽出物の代わりに細胞抽出物、すなわち、細胞質抽出物(CE:cytoplasmic extract)を利用する。細胞質抽出物を用いた試験は、実際に修復プロセスを可能とするMMRタンパク質の量および割合の誤った情報を示す。したがって、細胞質抽出物を用いた試験は、オン/オフ試験にのみ適しており、MMRの定量的な試験には適していない。 本発明の方法において、MMRの能力は、任意の間接的な先行技術の検出方法、たとえば、検出がlacZαの発現によって分類される大腸菌における相補性アッセイを使用することなく、アガロースゲルから直接検出される。 本発明による1ステップアッセイは、望むなら、基礎となる遺伝学的または後成的に欠損した遺伝子を特定するためのステップが任意に続いても、またはそれを含んでもよいが、これは、臨床診断に必須ではない。従来の試験とは違って、本発明による方法は、家族が癌を発症していない、変異試験が検出可能な変化をもたらさないかつ/または基礎となる変化が遺伝子的ではなく、後成的である(制御性)場合であっても、欠損MMRに起因して癌の易罹患性が高い個人の識別を可能にする。 提案されるアッセイの基本的な原則ならびにさまざまな態様は、表1のアレイ構成に示され、ここで、Yは、MMR欠損核タンパク質抽出物、Xは、試験サンプルの核タンパク質抽出物およびZは、MMR能力のある陽性対照核タンパク質抽出物を指す。 本発明の一態様では、試験サンプルの核タンパク質抽出物(X)は、検査される対象から得られた培養された正常な細胞、たとえば、線維芽細胞から調製され、本発明によるMMRアッセイは、それぞれY(MMR欠損核抽出物)、XおよびZ(MMR能力のある陽性対照核抽出物)を含むバイアル中で実施される。修復反応は、制限酵素により切断されにくいヘテロ二重鎖を切断されうるホモ二重鎖(homoduplex)に変える。サンプルXがMMR能力のある場合、基質ヘテロ二重鎖は、それにより、切断され、直鎖状にされて3つのフラグメントになるのに対して、Xが、MMR欠損である場合は、直鎖化により1つのみフラグメントがもたらされる。同様に、Yは、1つのみのフラグメントをもたらすのに対して、Zは、3つもたらす。本発明のこの態様、MMR+/−アッセイ(+/−は、MMR遺伝子のうち一方の対立遺伝子が機能しており、もう一方に欠損があることを示す)は、検査されたヒト対象が損なわれた/欠損したMMR機能または正常なMMR機能を有するかの判別を可能にすることになる。 本発明の別の態様において、サンプル核抽出物(X)は、MMR欠損核抽出物(Y)を補完してX+Yを形成するために使用される。補完された試験サンプル(X+Y)ならびに陽性(Z)および陰性(Y)対照は、その後、ミスマッチを修復する能力を研究するための本発明によるMMRアッセイに使用される。修復効率は、例8および図4に例示されるように参照レベルとして能力のある線維芽細胞核抽出物(Z)の修復効率を使用して切断効率を測定することによって定量される。 欠損(複数可)が特定するのに重要だと考えられるかどうかに応じて、アッセイに含まれるMMR欠損核抽出物(Yn)の数を変えてもよい。本発明による方法の好適な一態様において、Y1は、MLH1欠損があり、Y2は、MSH2/MSH6欠損がある。本発明のさらなる態様において、Y3は、PMS2欠損があるであろう。しかしながら、前記MMR欠損核抽出物(Yn)のうちのいずれか1つが、除外されるか、または追加されて、任意の組合せで使用されるであろう。当業者は、問題の臨床的状況に適した試験パネルを構築することができるであろう。 本発明による典型的な診断アッセイは、以下により詳細に記載されるように実施される。 A.組織サンプル 検査される組織サンプルは、任意の正常な組織であってもよい。これは、容易に得られ、処理される。本発明の特定の一態様において、最適な組織サンプルは、ヒト皮膚パンチまたは切除生検であり、これは、医療分野の当業者に周知の任意の方法によって得られていてもよい。 本発明による方法に使用されてもよいその他の組織サンプルは、血液サンプルおよび粘膜スワブを含む。 B.サンプル細胞の増殖 細胞のミスマッチ修復(MMR)の能力を調べるために、そこから核タンパク質を抽出する前に十分な量の細胞が増殖させられなければならない。細胞は、使用される細胞の種類に適しており、当該技術分野において周知の標準的な細胞培養条件において増殖させられ、その後、穏やかにそれを遠心沈殿することによって回収される。 腫瘍由来の悪性細胞を含む、ヒト対象から採取された臨床サンプル由来の任意の細胞種が本発明による方法に使用されてもよい。本発明による試験への使用に好適な細胞種は、ヒト線維芽細胞である。別の好適な細胞種は、血液由来のヒト細胞、たとえば、リンパ球細胞である。 最も好ましくは、本発明の試験のための細胞は、正常な初代細胞またはトランスフォームされた正常な細胞である。 C.ヒト線維芽細胞からの核タンパク質の抽出 MMRタンパク質は、細胞の核から抽出される。細胞は、遠心沈殿され、計数され、あらゆる残存トリプシンを除去するために生理食塩水緩衝液で洗浄される。細胞は、遠心沈殿される前に等張緩衝液でさらに洗浄され、続く低張の洗浄の浸透作用により膨張させられる。顕微鏡下で大半の細胞が溶解したことが確認されるまで細胞膜を破壊するために細い針が使用される。 細胞を遠心沈殿した後、細胞質部分を含む上清が除去される。塩を含む冷えた抽出緩衝液中でインキュベーションすることによって核タンパク質は、残った核部分から抽出され、その後、残存した核のいかなる破片も、遠心沈殿され、残ったペレットとして除去される。抽出された核タンパク質サンプルは、その後、プロテイナーゼ阻害剤の存在下で透析され、−80℃において保存する前に遠心分離によってさらに澄んだ状態にされる。サンプルのタンパク質含有量は、蛍光光度計によって定量される。 D.基質調製 本発明によるMMRアッセイに使用するための環状ヘテロ二重鎖プラスミド基質は、一本鎖DNA(ssDNA)と1つ非相同部位をもつ変性された対応するプラスミドDNAの再アニーリングによって作製される。 ssDNAは、厳しい抗生物質選択下において細菌細胞および市販のヘルパーファージを用いてプラスミドから産生される。細胞の破片は、遠心沈殿され、ファージ粒子は、沈殿およびさらなる遠心分離によって回収される。細菌細胞も、遠心分離によって除去され、残った細菌に由来するあらゆる染色体DNAも酵素処理を用いて除去される。サンプルを清浄にするときに、プロテイナーゼ酵素によりファージカプシドタンパク質からssDNAが放出される。 ミスマッチエラーを含む二本鎖(ds)プラスミド鋳型が細菌細胞中で増幅され、そこから精製される。エラーの部位の上流の5’の切れ目をもつように、構築物を直鎖状にするために特定の制限酵素が使用され、その後、サンプルは、沈殿させられ、適切な体積の緩衝液に溶解させられる。 本発明によるMMRアッセイのための、ミスマッチ含有ヘテロ二重鎖基質を作製するために、ssDNAおよび上記の対応するプラスミドDNAが、変性され、ともに再アニールされる。塩およびハイブリット形成していない直鎖状dsDNAならびにハイブリット形成していないssDNAの除去に続く、エタノール沈殿を含む次の洗浄ステップが最終生成物の純度を確保する。分光光度計により、ならびにゲル電気泳動によって濃度が測定され、これも、サンプルの純度を検証するために役に立つ。 E.本発明によるMMRアッセイ 本発明によるMMRアッセイは、試験サンプルのMMR機能が欠損しているかどうかを判別することのみに使用されてもよいが、上記のとおり、MMR欠損細胞から抽出された核タンパク質のMMR能力と、MMR能力のある細胞から抽出されたMMR能力とを区別することもできる。MMR欠損遺伝子を特定するために、サンプル核抽出物は(X)は、MLH1(Y1)およびMSH2/MSH6(Y2)欠損核抽出物を別々に補完するために使用される。 本発明によるMMRアッセイは、約50〜500μg、好ましくは、約50〜200μg、より好ましくは、約75〜100μgの核タンパク質抽出物を過量の環状プラスミド基質(ヘテロ二重鎖)と組み合わせることによって行われるのに対して、欠損を引き起こすMMR遺伝子を判別するために十分に特徴づけられたMMR欠損細胞株を補完する場合は、アッセイに使用される2つの抽出物の総量は、200μgを超えるべきではない。修復反応は、最適な塩濃度を確保する一方でATPおよびオキシリボヌクレオチドも提供するMMR緩衝液の存在下で誘導される。修復反応は、酵素的に終了され、タンパク質は、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出によってサンプルから除去される。 沈殿後、サンプルは、二重消化に供され、これは、修復プロセスが成功した場合、基質のヘテロ二重鎖DNAを2つのより小さなフラグメントに切断する。これらの2つのより小さなフラグメントは、アガロースゲル電気泳動によって視覚化される。基質のDNAが過剰に添加されるため、直鎖状にされた完全長生成物も常に見えることになる。修復が起こらなかった場合、完全な長さの直鎖状にされたプラスミドDNAのみが見えることになる。 本発明のさらなる目的は、本発明による方法を実施するために必要な試薬を含むキットを提供することである。本発明によるキットは、標準的な試薬、たとえば、必要なミスマッチ含有ヘテロ二重鎖DNA基質(複数可)を含む基質;少なくとも1つであるが、好ましくは2つのMMR欠損核抽出物;および陽性対照としてMMR能力のある核抽出物を含む。本発明の特定の態様において、前記MMR欠損核抽出物は、それぞれMLH1およびMSH2/MSH6に関する欠損がある細胞株に由来する。さらに具体的には、前記MMR欠損核抽出物は、HCT116およびLoVo細胞に由来する。 本発明によるキットに含まれる試薬は、表1に開示される基本的な原則に従って選択されるべきである。一態様において、第1の核抽出物(Y1)は、MLH1の欠損があるのに対して、第2の核抽出物(Y2)は、MSH2/MSH6の欠損がある。検査されるサンプルが前記第1の核抽出物を補完しないが、前記第2の核抽出物を補完する場合、前記試験サンプルは、MLH1欠損を示す。しかしながら、前記検査されるサンプルが前記第1の核抽出物を補完するが、前記第2の核抽出物を補完しない場合、前記試験サンプルは、検査される対象がMSH2またはMSH6のいずれかの欠損を有することを示す。 任意に、本発明によるキットは、MMR欠損核抽出物をさらに含んでもよく、これは、MSH2およびMSH6遺伝子の間の欠損を明確に区別する。そのような核抽出物は、細胞株、たとえば、MSH6欠損HCT−15/DLD−1(ATCC CCL−225/221)由来のものであってもよい。 任意に、本発明によるキットは、MMRアッセイを実施するために必要な追加の試薬、たとえば、必要な緩衝液およびヌクレオチドも含んでよい。 本発明によるキットの一例は、下記の例において示される。[実施例] 以下の例は、本発明の態様をさらに説明するために提供されるが、本発明の範囲を限定する意図はない。技術が進歩するにつれ、本発明の概念は、さまざまな方法で実装できることが当業者に明らかになるであろう。本発明およびその態様は、したがって、ここに記載される例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で変化してもよい。 例1. 検査される対象から採取された線維芽細胞の培養 線維芽細胞を、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(Invitrogen、カタログ#31966−021)中、37℃、5%CO2のインキュベーター内で増殖させる。その増殖培地に、10%のウシ胎仔血清(Invitrogen、カタログ#10106−169)、2×非必須アミノ酸(Invitrogen、カタログ#10370−070)および2%のペニシリン−ストレプトマイシン(Invitrogen、カタログ#15070−063)を補充する。細胞を、およそ80〜90%コンフルエントのときに、トリプシン0.25%EDTA(Invitrogen、カタログ#25200−072)を用いて1:2〜1:6に継代する。MLH1−欠乏誘導細胞株(depleted derivative cell line)FB−M1またはMSH2−欠乏誘導細胞株FB−SH13の発現抑制を維持するために、150μg/μlのハイグロマイシンB(Invitrogen、カタログ#10687−010)を増殖培地に添加する。核タンパク質の抽出のために、およそ5×108〜109細胞が収集されるまで、その細胞をフィルターでキャップされた175cm2ボトル(NUNC、カタログ#145−178883)で処理された培地中で増殖させる。 例2. 細胞株および核抽出物 付着性のヒト癌細胞株HeLa、LoVoおよびHCT116(American Type Culture Collection、マナッサス、VA、米国)を、製造業者の取扱説明書に従って培養する。HeLa細胞(ATCC CCL−2)は、女性個人の子宮頸部由来のMMR能力のある上皮細胞であるのに対して、HCT116(ATCC CCL−247)およびLoVo細胞(ATCC CCL−229)は、男性個人の結腸由来のMMR欠損上皮細胞である。HCT116細胞は、MLH1が欠如しているのに対して、LoVo細胞では、MSH2遺伝子が不活化しており、MSH2、MSH3およびMSH6タンパク質の欠損を引き起こす。MSH2の欠如は、その対応物MSH3およびMSH6のタンパク質分解と関連づけられている。 HeLa細胞を、2%のL−グルタミン、10%のFBSおよび5%のPSを補充したDMEM培地中で増殖させる。LoVo細胞を、2%のL−グルタミン、10〜20%のFBSおよび5%のPSを補充したF12(またはF12:DMEM)培地(Invitrogen、カタログ#31765−027/31331−028)中で増殖させるのに対して、HCT116細胞を、2%のL−グルタミン、10%のFBSおよび5%のPSを補充したMcCoys5A培地(Invitrogen、カタログ#22330−021)中で増殖させる。 FB−M1細胞株を、McDaidら、BJC、101:441〜451、2009に記載されるように作製した。簡単にいうと、MLH1を標的とするsiRNAを産生する重複オリゴヌクレオチド(overlapping oligonucleotide)AACTGTTCTACCAGATACTCAを設計し、市販のshRNAベクターpSilencer(商標)(Ambionカタログ#AM7209)と連結した。直鎖状にし、1μgのDNAとともに1×107の細胞を電気穿孔する前に配列決定によって構築物を確認した。血清を多く含んだ培地をすぐに添加し、10〜14日間のハイグロマイシン添加による選択(150μg/μl)の前に、細胞を5×105で蒔いた。同様に、FB−SH13細胞株を、pSilencer(商標)shRNAベクター中の、MSH2を標的とするsiRNAを産生する重複オリゴヌクレオチドTCTGCAGAGTGTTGTGCTTを使用して生成した。 同様に、その他のMMR遺伝子変異、たとえば、発現抑制されたMSH6を含む線維芽細胞株を、shRNAベクターpSilencer(商標)4.1−CMV Hygro(カタログ#AM5777)を使用して調製してもよい。以下のプロトコルに従って線維芽細胞核抽出物を調製した(Lahueら、Science、245:160〜164,1989):1. トリプシンにより5×108〜109の対数期細胞を回収する。2. 細胞を計数する。3. 500×g、+4℃において10分間遠心分離する。4. 細胞ペレットを20〜30mLの冷えた1×等張緩衝液(20mMのHepes、pH7.5、5mMのKCl、1.5mMのMgCl2、250mMのスクロース、0.2mMのPMSF、1×コンプリートEDTA−フリープロテアーゼインヒビター混合物(Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)、0.25μg・ml−1のアプロチニン、0.7μg・ml−1のペプスタチン、0.5μg・ml−1のロイペプチン、1mMのDTT)に再懸濁し、前述のように遠心分離する。5. 血中血球容積を概算し、それを、20〜30mlの冷えた1×低張緩衝液(スクロースを含まない等張緩衝液)に再懸濁し、前述のようにすぐに遠心分離する。6. 上清を除去し、細胞ペレットを1×冷えた低張緩衝液に再懸濁して1〜2×108細胞/mlの細胞密度を得る。血中血球容積を再懸濁体積から引く。7. 細いゲージの針の付いたシリンジにより細胞をシリンジ中にゆっくりと引き入れ、その後、急速な一押しによりそれらを放出することによって細胞を破壊する。顕微鏡下で確認しながら、80〜90%の細胞が溶解するまで細胞破壊を行う(45μlのPBSおよび5μlの細胞を含む50μlの0.4%トリパンブルーPBS)。8. 破壊した細胞を3000×g、+4℃において10分間遠心分離し、上清を除去する。9. 核ペレット体積を概算し、そのペレットの体積に対して1/3から1/5の冷えた抽出緩衝液(25mMのHepes、pH7.5、10%のスクロース、1mMのPMSF、0.5mMのDTT、1μg・ml−1のロイペプチン)を添加する。ピペットで上下することによってペレットを十分に再懸濁する。10. 新しい体積を測定し、混合しながら最終濃度の0.155MまでNaClを添加する。11. 4℃において60分間混合物を循環させる。12. 14500×g、2℃において20分間遠心分離する。13. サンプルを、3.500MWCOカセットにおいて1Lの冷えた透析緩衝液(25mMのHepes、pH7.5、50mMのKCl、0.1mMのEDTA、pH8、10%のスクロース、1mMのPMSF、2mMのDTT、1μg・ml−1のロイペプチン)中で2×50分間透析する。最初の50分間の後、緩衝液を変える。14. 20000×g、2℃における15分間の遠心分離によって抽出物を清澄にする。15. 液体窒素中で核タンパク質を瞬間凍結し(snap freeze)、−80℃で保存する。 例3. ウエスタンブロット分析 ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動による50mgの核抽出物(NE:nuclear extract)および0.1〜5μlの野生型総タンパク質抽出物を使用したウエスタンブロット分析によって、NEのタンパク質発現量を調査した。そのタンパク質をニトロセルロース膜(Amersham Hypond(商標)、PVDF、Amersham Pharmacia Biotech、ウプサラ、スウェーデン)にブロットし、それを、その後、モノクローナル抗体、抗−MSH2(Calbiochem、サンディエゴ、CA、米国、MSH2−Ab1、NA−26、0.2mg/ml)、抗−MSH3(BD Transduction Laboratories、レキシントン、KY、米国、M94120、250mg/ml)、抗−MSH6(BD Transduction Laboratories、clone 44、0.02mg/ml)、抗−PMS2(Calbiochem/Oncogene Research、サンディエゴ、CA、米国、Ab−1、0.2mg/ml)および抗−MLH1(BD Biosciences/Pharmingen、サンディエゴ、CA、米国、clone 168−15、0.5mg/ml)とともにインキュベートした。ローディングコントロール(loading control)として偏在的に発現されるα−チューブリンを使用して、抽出物中のMMRタンパク質量を概算した(抗−α−チューブリン;Sigma、ルイス、MO、米国、DM1A、0.2mg/ml)。 例4. 野生型ヘテロダイマータンパク質複合体の産生。 Spodoptera frugiperda(Sf9)(Invitrogen、カールズバッド、CA、米国)昆虫細胞を、野生型(WT)MSH2、MSH3、MSH6、PMS2またはMLH1cDNAフラグメントを保有するバクミドDNAによりトランスフェクトし、その後、細胞を再感染させてさらに高い収率の組換え型バキュロウイルスを得た(Nystrom−Lahtiら、2002)。アッセイされるヘテロダイマー複合体を形成するタンパク質:MutLα(MLH1+PMS2)、MutSα(MSH2+MSH6)およびMutSβ(MSH2+MSH3)産生のためのSf9細胞を同時感染させるために、これらのWT−組換え型バキュロウイルスを使用した。ヘテロダイマー複合体を総タンパク質抽出物(TE:total protein extract)として50h(MutLα)または72h(MutSαおよびMutSβ)で、細胞を溶解させ、遠心沈殿することによって抽出した。 例5. 基質調製 ヘテロ二重鎖分子の調製。ヘテロ二重鎖DNA分子は、ミスマッチの部位から445bp上流に一本鎖の切れ目をもつ環状の3192bp長の分子である。これは、完全なBglII制限部位を含む。pGEM−IDL40プラスミドからの一本鎖DNA(図6)を、同じ構築物ベースのエラー導入プラスミド(error introducing plasmid)(5’GT基質のためのpGEM−IDL GTまたは5’IDL1基質のためのpGEM−IDL−39)とともにアニールすることによってこの分子を作製する。 pGEM IDL40を、M13K07バクテリオファージ(Amersham Biosciences、ピスカタウェイ、NJ、米国)によりトランスフォームされたXL1−blue細菌細胞を感染させることによって一本鎖DNA(ssDNA)を調製した。これは、その後、細胞から抽出されうるアンチセンス鎖を複製する。M13ファージによって増幅される下側の(−)鎖は、配列番号1で表わされる配列を有し、BglII制限部位はアノテーションされる。 2つの異なるヘテロ二重鎖構築物を調製した;G−Tミスマッチ(5’GT)および単一ヌクレオチド5’IDL1。製造業者の取扱説明書に従ってpGEM−IDL40に部位特異的変異誘発を行って(QuikChange(登録商標)Site−directed mutagenesis、Stratagene、ラホーヤ、CA、米国)、エラー含有pGEM IDLGTおよびpGEM IDL39プラスミドを作製した。 ssDNAをミスマッチ含有pGEM−IDLGTとアニールすることによって5’GT基質を作製した。直鎖状dsDNAについてのこの3192bp長のベースプラスミド(pGEM−IDLGT)は、不完全なBglII制限部位(GGATCT)を含む。BglII部位において相補的であろうAに取って代わっているGを除けば、上側の(+)鎖は、IDL40から産生されるssDNAと相補的である。pGEM−IDLGTの配列は、配列番号2において表わされ、不完全なBglII制限部位はアノテーションされる。 ssDNAをエラー含有pGEM−IDL1とアニールすることによって5’IDL1基質を作製した。直鎖状dsDNAについてのこの3191bp長のベースプラスミド(pGEM−IDL39)は、不完全なBglII制限部位(−GATCT)を含む。BglII部位の欠失したAを除けば、上側の(+)鎖は、IDL40から産生されるssDNAと相補的である。5’の切れ目を作り出すために、再アニーリングの前に環状の基質をBamIIまたはDraIIIにより直鎖状にした。pGEM−IDL39の配列は、配列番号3において表わされ、不完全なBglII制限部位はアノテーションされる。 例6. 本発明によるMMRアッセイ 本発明は、以前に示されたインビトロMMRアッセイの修正版であり(Nystrom−Lahtiら、2002)、核抽出物のMMR能力を直接アッセイすることを可能にする。さらに、表1に示されるように特徴づけられたMMR欠損抽出物を補完することによって、サンプル中の離脱されたMMR遺伝子を特徴づけるために相補性が使用できる。修復反応は、合計75〜100μgのNEを含むよう統一する。過量のヘテロ二重鎖DNA基質(5’GTまたは5’IDL1)は100ngとする。修復反応を、20μlの体積で以下の試薬により実施する:−100ngのヘテロ二重鎖基質−75〜100μg核抽出物−2μlの10×MMR緩衝液(200mMのトリス−HCL、pH7.6、400mMのKCl、50mMのMgCl2、10mMのグルタチオン、BSA 500μg/ml、1mMの各dNTP、15mMのATP)−110mMの最終濃度になるまでのKCl−20μl以下のH2Oの添加。 この反応は、20μlの全体積および最終的なKCl濃度の110mMにおいて行われるべきであるため、核抽出物のKCl含有量を考慮する必要がある(2μlの10×MMR緩衝液は、反応混合物のKCl含有量を40mMにする)。核抽出物のKCl含有量は、75mM/μlであると推定される。 本発明によるMMRアッセイの典型的なプロトコルは、以下の通りである。1. 修復反応の構成成分をピペットで取り氷上で一緒にし、37℃において30分間インキュベートする。2. 30μlの新しい停止液(42mMのEDTA、1.2%のSDS、50.4μg/mlのプロテイナーゼK)を添加することによって反応を停止させる。37℃で20分間インキュベートする。3. 1容量(50μl)のpH8.0のTE緩衝液を添加する。4. 1容量のフェノール−クロロフォルム−イソアミルアルコール(25:24:1)を添加し、10秒間ボルテックスする。最高速度、室温において10分間遠心分離する。5. 上相(およそ90μl)を新しいチューブに移し、同量のクロロホルムを添加する。10秒間ボルテックスし、最高速度、室温において10分間遠心分離する。6. エタノール沈殿のために85μlの上相を新しいチューブに移す。7. 150mMの最終濃度を得るためにNaClを、続いて2.5容量の冷えた無水エタノールを添加する。−20℃において30分間インキュベートする。8. サンプルをフルスピードで、+4℃において30分間遠心分離することによってDNAをペレット化する。9. 150μlの70%エタノールでペレットを洗浄し、フルスピードで10分間遠心乾燥し、ペレットを6μlのddH2Oに再懸濁する。10. 4μlの新たに調製された10×消化混合物(2.5μlのFastDigest(登録商標)BglII(Fermentas、カタログ#FD0083)、2.5μlのFastDigest(登録商標)Eco31I(Fermentas、カタログ#FD0293)、10μlのFastDigest(登録商標)緩衝液および25μlのddH2O)を添加し、37℃において10分間インキュベートする。11. 40μg/ml以下のRNAse Aを添加し、37℃において10分間インキュベートする。12. 修復が起こったかどうかを確認するために、サンプルを1×TAEとともに作製した1.0%アガロースゲル上に載せる。 修復パーセンテージを、Image−Pro(登録商標)4.0(Media Cybernetics、シルバースプリング、MD、米国)を使用して分析する。 MMR能力のあるHeLa NEを陽性対照として使用し、補完されないMMR欠損NEを陰性対照として使用する。基質をEco31I制限酵素により直鎖状にする。修復反応は、GTヘテロ二重鎖をATホモ二重鎖に変えるか、1または2ntループ構造を埋めて、BglII制限部位を再生するため、修復効率は、二重消化の効率によって測定されてもよい。 例7. 本発明によるMMRアッセイに使用される線維芽細胞 この例は、MMRアッセイが正常な組織、たとえば、線維芽細胞に対して実施できることを示すために実施した。例2に記載されるように調製された野生型線維芽細胞核抽出物(FB−WT:Wild-type fibroblast nuclear extract)、MMR能力のあるHeLa細胞からの核抽出物およびタンパク質を含まない陰性対照(MOCK)を、例3に記載されるような本発明によるMMRアッセイに供した。 修復反応を行わせた後、基質DNAの二重消化は、修復が起こらなかった場合、およそ3000bpの1つのより大きなバンドを、修復が起こった場合、さらに2つのより小さな(およそ1800および1300bpの)フラグメントをもたらすことになる。基質DNAは、常に過剰に添加されるため、MMR能力のある抽出物でも、二重の切断フラグメントに加えて直鎖状にされた基質が存在することになる。 このアッセイの結果を図2に示し、これは、MOCK細胞を含むレーン1は、1つの大きなバンドのみを有する(=修復なし)のに対して、それぞれFB−WTおよびHeLa核抽出物を含むレーン2および3は、修復反応を示す2つの追加のより小さなバンドを示すことを示している。 したがって、この例は、正常な線維芽細胞からの核抽出物が、MMR能力のある対照細胞株(HeLa)のMMR能力と同等のMMR能力を有していることを明白に示しており、これは、本発明によるアッセイによって確認できる。 例8. 部分的に発現抑制されたMMR遺伝子をもつヒト線維芽細胞は、本発明によるMMRアッセイにおいてMMR能力の低下を示す この例は、それぞれMLH1遺伝子またはMSH2遺伝子が(sh)RNA技術によって部分的に発現抑制されたヒト線維芽細胞株FB−M1およびFB−SH13(例2に記載される)が、MMR能力に明らかな低下を示すことを示している。 最初に、野生型線維芽(FB−WT)細胞およびFB−M1細胞またはFB−WTおよびFB−SH13細胞からの同量の核抽出物に対してウエスタンブロットを実施した。結果として(図3)、FB−SH13細胞におけるMSH2の量と同様に、FB−WTと比較した場合、FB−M1細胞におけるMLH1タンパク質の量が明らかに減少していることがわかる。ローディングコントロールとしてα−チューブリンが含まれている。 次に、例6に記載されるように、同量の以下の同じ核抽出物を使用してMMRアッセイを実施した:MOCK−核抽出物を含まない陰性アッセイ対照;FB−WT−野生型ヒト線維芽細胞核抽出物(陽性対照);およびFB−M1−部分的に発現抑制されたMLH1をもつヒト線維芽細胞からの核抽出物;またはFB−SH13−部分的に発現抑制されたMSH2をもつヒト線維芽細胞からの核抽出物。 このアッセイの結果は、1つの重要なMMRタンパク質の濃度の低下が離脱されたMMR機構と関連づけられることを示している。この結果は図4に示されており、本発明によるMMRアッセイは、野生型ヒト線維芽細胞核抽出物と比較して、MLH1およびMSH2の欠損を修復効率の低下として検出することを明らかに示している。さらに、MMR欠損核抽出物のMMR能力は、図5に示され、表1に示され、10〜11ページに記載される試験によって示されるように、野生型またはMMRが部分的に欠損した核抽出物とともに(この場合、FB−WTまたはFB−M1を含むHCT116)アッセイされると、差次的に回復されうる。 本発明によるMMRアッセイにおいて、修復効率は、反応における全基質DNAのうち修復されたDNAのパーセンテージと見なされる。重要なMMRタンパク質の不足は、修復効率を変化する強度で低下させるのに対して、重要なMMRタンパク質の完全な欠如は、修復効率を検出不可能なレベルにまで低下させる。 例9. MMRにおける異常を診断するためのアッセイに使用するためのキット 本発明によるキットは、MMRアッセイを実施するための全試薬を予め入れたバイアルとして好ましくは提供される。試験サンプル核抽出物のみが添加される。本発明の一態様では、検査される異なるMMR欠損のために個別のバイアルが提供される。 この例は、対象がMLH1遺伝子に、またはMSH2もしくはMSH6遺伝子のいずれかに異常があるかどうかを判別することによって、後者の間の区別はせずに、前記対象がリンチ症候群であるかどうかを判別するためのキットについて記載する。そのようなキットは、少なくとも5個の個別のバイアルを有する。 前記バイアルに含まれる試薬は以下のものである:−基質のヘテロ二重鎖−核抽出物(HCT116、LoVoまたはFB−WT)−10×MMR緩衝液(200mMのトリス−HCL、pH7.6、400mMのKCl、50mMのMgCl2、10mMのグルタチオン、BSA 500μg/ml、1mMの各dNTP、15mMのATP)。 これに加えて、MMRアッセイ用停止液(42mMのEDTA、1.2%のSDS、50.4μg/mlのプロテイナーゼK)が必要とされ、したがって、キットとともに提供されてもよいであろう。 さらに、前記キットは、サンプルを清澄にするため(TE緩衝液、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールおよびクロロホルム)、それを沈殿させるため(NaClおよびエタノール)ならびに修復を検出するため(RNase Aならびに緩衝液とともに制限酵素BglIIおよびEco31Iならびにローディングダイ)に必要とされる試薬を任意に含んでもよい。 キットのさらなる任意の構成要素は、サンプル核タンパク質が抽出される細胞を培養するために必要とされる試薬ならびにそこから核タンパク質を抽出するために必要とされる試薬である(例2を参照)。 本発明によるキットは、いかなる特定のバイアルの形態または種類にも制限されない。例6に記載されるような取り扱いおよびインキュベーションに適した任意の種類のバイアル、たとえば、eppendorf(登録商標)チューブが適している。 ヒト対象がDNAミスマッチ修復機能障害を有しているかどうかを判別するための定量的方法であって、a)前記ヒト対象から得られたサンプルから核タンパク質抽出物を生成すること、b)陽性および陰性対照としてそれぞれ、MMR能力のあるおよびMMR欠損のある核タンパク質抽出物を準備すること、c)個別のバイアル中で各核抽出物を少なくとも1つのミスマッチ含有ヘテロ二重鎖DNA基質と組み合わせること、d)前記サンプルおよび対照核タンパク質抽出物ならびに前記基質に対してミスマッチ修復アッセイを実施すること、ならびにe)前記サンプル核抽出物が前記基質DNA分子を修復できるかどうかを判別することを含む、方法。 前記サンプルは、構成組織から得られた正常な細胞を含む、請求項1に記載の方法。 前記正常な細胞は、線維芽細胞である、請求項2に記載の方法。 前記正常な細胞は、血液由来細胞である、請求項2に記載の方法。 前記基質は、配列番号1を有するプラスミドに由来する、請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。 前記基質は、配列番号2および配列番号3からなる群から選択される核酸配列をさらに含む、請求項5に記載の方法。 前記MMR欠損核抽出物は、HCT116およびLoVo細胞からなる群から選択される細胞株に由来する、請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。 バイアル当たりの核抽出物の総量は、50〜500μg、好ましくは50〜200μg、より好ましくは75〜100μgの範囲である、請求項7に記載の方法。 機能欠損を有するミスマッチ修復遺伝子を特定するための定量的方法であって、a)ヒト対象から得られたサンプルから核タンパク質抽出物を生成すること、b)陽性および陰性対照としてそれぞれ、MMR能力のあるおよびMMR欠損のある核タンパク質抽出物を準備すること、c)少なくとも1つのMMR欠損核タンパク質抽出物を前記サンプル抽出物と混合すること、d)個別のバイアル中でステップa〜cにおいて準備された各核抽出物を少なくとも1つのミスマッチ含有ヘテロ二重鎖DNA基質と組み合わせること、e)前記核抽出物および前記基質に対してミスマッチ修復アッセイを実施すること、ならびにf)前記サンプル核抽出物が前記基質を修復でき、前記MMR欠損核抽出物を補完できるかどうかを判別することによって前記欠損遺伝子を特定することを含む、方法。 前記サンプルは、構成組織から得られた正常な細胞を含む、請求項9に記載の方法。 前記正常な細胞は、線維芽細胞である、請求項10に記載の方法。 前記正常な細胞は、血液由来細胞である、請求項10に記載の方法。 前記基質は、配列番号1を有するプラスミドに由来する、請求項9〜12の何れか1項に記載の方法。 前記基質は、配列番号2および配列番号3からなる群から選択される核酸配列をさらに含む、請求項13に記載の方法。 前記MMR欠損核抽出物は、HCT116およびLoVo細胞からなる群から選択される細胞株に由来する、請求項9〜14の何れか1項に記載の方法。 バイアル当たりの核抽出物の総量は、50〜500μg、好ましくは50〜200μg、より好ましくは75〜100μgの範囲である、請求項15に記載の方法。 請求項9〜16の何れか1項に記載の方法を使用して欠損DNAミスマッチ修復遺伝子を特定することにより、ヒトのリンチ症候群を診断するための方法であって、前記サンプルは、ヒト対象の構成組織から得られた臨床サンプルである、方法。 請求項1〜17の何れか1項に記載の方法に使用するためのキットであって、少なくとも1つのミスマッチ含有ヘテロ二重鎖DNA基質、少なくとも1つのMMR欠損核抽出物および陽性対照としてMMR能力のある核抽出物を含む、キット。 前記MMR欠損核抽出物は、MLH1、MSH2またはMSH6のいずれかについてのMMR欠損を有する細胞株から得た、請求項18に記載のキット。 少なくとも2つのMMR欠損核抽出物を含む、請求項19に記載のキット。 前記MMR欠損核抽出物は、それぞれMLH1およびMSH2/MSH6についてのMMR欠損を有する細胞株に由来する、請求項20に記載のキット。 前記MMR欠損核抽出物は、それぞれHCT116およびLoVo細胞に由来する、請求項18〜21の何れか1項に記載のキット。 前記MMRアッセイを実施するために必要な追加の試薬をさらに含む、請求項18〜22の何れか1項に記載のキット。 200mMのトリス−HCL、pH7.6、400mMのKCl、50mMのMgCl2、10mMのグルタチオン、BSA 500μg/ml、1mMの各dNTPおよび15mMのATPを含む10×MMR緩衝液;ならびに42mMのEDTA、1.2%のSDS、50.4μg/mlのプロテイナーゼKを含むMMRアッセイ用停止液をさらに含む、請求項23に記載のキット。 前記サンプルを清澄にするための試薬、たとえば、TE緩衝液、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールおよびクロロホルム;前記サンプルを沈殿させるための試薬、たとえば、NaClおよびエタノール;ならびに修復を検出するための試薬、たとえば、RNase Aならびに緩衝液とともに制限酵素BglIIおよびEco31Iならびにローディングダイを含む、請求項23〜24の何れか1項に記載のキット。 本発明は、ヒト対象がDNAミスマッチ修復機能障害を有しているかどうかを判別するための定量的方法に関する;前記ヒトから採取された診断用サンプルを準備し、前記サンプルから核抽出物を生成すること;陽性および陰性対照としてそれぞれ、MMR能力のあるおよびMMR欠損のある核抽出物を準備すること;各核抽出物を少なくとも1つのミスマッチ含有基質のDNA分子と組み合わせること;ミスマッチ修復アッセイを実施すること;および前記サンプル核抽出物が前記基質DNA分子を修復できるかどうかを判別すること;ここで、前記サンプルは、正常で、非悪性の構成細胞、たとえば、線維芽細胞を含む。本発明はさらに、前記方法に使用するために必要な試薬を提供するキットに関する。 配列表20140314A16333全文3 ヒト対象がDNAミスマッチ修復機能障害を有しているかどうかを判別するための定量的方法であって、a)前記ヒト対象から得られたサンプルから核タンパク質抽出物を生成すること、b)陽性および陰性対照としてそれぞれ、MMR能力のあるおよびMMR欠損のある核タンパク質抽出物を準備すること、c)個別のバイアル中で各核抽出物を少なくとも1つのミスマッチ含有ヘテロ二重鎖DNA基質と組み合わせること、d)前記サンプルおよび対照核タンパク質抽出物ならびに前記基質に対してミスマッチ修復アッセイを実施すること、ならびにe)前記サンプル核抽出物が前記基質DNA分子を修復できるかどうかを判別することを含む、方法。 機能欠損を有するミスマッチ修復遺伝子を特定するための定量的方法であって、a)ヒト対象から得られたサンプルから核タンパク質抽出物を生成すること、b)陽性および陰性対照としてそれぞれ、MMR能力のあるおよびMMR欠損のある核タンパク質抽出物を準備すること、c)少なくとも1つのMMR欠損核タンパク質抽出物を前記サンプル抽出物と混合すること、d)個別のバイアル中でステップa〜cにおいて準備された各核抽出物を少なくとも1つのミスマッチ含有ヘテロ二重鎖DNA基質と組み合わせること、e)前記核抽出物および前記基質に対してミスマッチ修復アッセイを実施すること、ならびにf)前記サンプル核抽出物が前記基質を修復でき、前記MMR欠損核抽出物を補完できるかどうかを判別することによって前記欠損遺伝子を特定することを含む、方法。 前記サンプルは、構成組織から得られた正常な細胞を含む、請求項1または2に記載の方法。 前記正常な細胞は、線維芽細胞である、請求項3に記載の方法。 前記正常な細胞は、血液由来細胞である、請求項3に記載の方法。 前記基質は、配列番号1を有するプラスミドに由来する、請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。 前記基質は、配列番号2および配列番号3からなる群から選択される核酸配列をさらに含む、請求項6に記載の方法。 請求項2〜7の何れか1項に記載の方法を使用して欠損DNAミスマッチ修復遺伝子を特定することにより、ヒトのリンチ症候群を診断するための方法であって、前記サンプルは、ヒト対象の構成組織から得られた臨床サンプルである、方法。 請求項1〜8の何れか1項に記載の方法に使用するためのキットであって、少なくとも1つのミスマッチ含有ヘテロ二重鎖DNA基質、少なくとも1つのMMR欠損核抽出物および陽性対照としてMMR能力のある核抽出物を含む、キット。 前記MMR欠損核抽出物は、MLH1、MSH2またはMSH6のいずれかについてのMMR欠損を有する細胞株から得た、請求項9に記載のキット。 少なくとも2つのMMR欠損核抽出物を含む、請求項10に記載のキット。 前記MMR欠損核抽出物は、それぞれMLH1およびMSH2/MSH6についてのMMR欠損を有する細胞株に由来する、請求項11に記載のキット。 前記MMRアッセイを実施するために必要な追加の試薬をさらに含む、請求項9〜12の何れか1項に記載のキット。 200mMのトリス−HCL、pH7.6、400mMのKCl、50mMのMgCl2、10mMのグルタチオン、BSA 500μg/ml、1mMの各dNTPおよび15mMのATPを含む10×MMR緩衝液;ならびに42mMのEDTA、1.2%のSDS、50.4μg/mlのプロテイナーゼKを含むMMRアッセイ用停止液をさらに含む、請求項13に記載のキット。 前記サンプルを清澄にするための試薬、たとえば、TE緩衝液、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールおよびクロロホルム;前記サンプルを沈殿させるための試薬、たとえば、NaClおよびエタノール;ならびに修復を検出するための試薬、たとえば、RNase Aならびに緩衝液とともに制限酵素BglIIおよびEco31Iならびにローディングダイを含む、請求項13〜14の何れか1項に記載のキット。A1633000183 本発明を導く研究は、贈与契約No.232635に基づき、欧州連合第7フレームワーク計画(European Union Seventh Framework Program)(FP7/2007−2013)からの助成金を得て行われた。 本発明の目的は、対象のLS病歴または癌の予備知識なしでMMR効率の低下を検出するための正確で単純で安価な臨床的に適した試験を実現するための新規の方法および手段を提供することであり、それにより、診断法の現在の方法の課題を解決する。本発明は、ヒト対象がDNAミスマッチ修復機能障害を有しているかどうかを判別するための定量的方法であって、a)前記ヒト対象から得られたサンプルから核抽出物を生成すること、b)それぞれ陽性および陰性対照として、MMR能力のあるおよびMMR欠損のある核タンパク質抽出物を準備すること、c)個別のバイアル中で各核抽出物を少なくとも1つのミスマッチ含有ヘテロ二重鎖DNA基質と組み合わせること、d)前記サンプルおよび対照核タンパク質抽出物ならびに前記基質に対してミスマッチ修復アッセイを実施すること、ならびにe)前記サンプル核抽出物が前記基質DNA分子を修復できるかどうかを判別することを含む、方法に関する。好ましくは、前記サンプルは、構成組織から得られた正常な細胞、より好ましくは、線維芽細胞または血液由来細胞を含む。A1633001233 本発明によるキットは、いかなる特定のバイアルの形態または種類にも制限されない。例6に記載されるような取り扱いおよびインキュベーションに適した任意の種類のバイアル、たとえば、eppendorf(登録商標)チューブが適している。 以下に、出願当初の請求項を実施態様として付記する。 (1) ヒト対象がDNAミスマッチ修復機能障害を有しているかどうかを判別するための定量的方法であって、a)前記ヒト対象から得られたサンプルから核タンパク質抽出物を生成すること、b)陽性および陰性対照としてそれぞれ、MMR能力のあるおよびMMR欠損のある核タンパク質抽出物を準備すること、c)個別のバイアル中で各核抽出物を少なくとも1つのミスマッチ含有ヘテロ二重鎖DNA基質と組み合わせること、d)前記サンプルおよび対照核タンパク質抽出物ならびに前記基質に対してミスマッチ修復アッセイを実施すること、ならびにe)前記サンプル核抽出物が前記基質DNA分子を修復できるかどうかを判別することを含む、方法。 (2) 前記サンプルは、構成組織から得られた正常な細胞を含む、(1)に記載の方法。 (3) 前記正常な細胞は、線維芽細胞である、(2)に記載の方法。 (4) 前記正常な細胞は、血液由来細胞である、(2)に記載の方法。 (5) 前記基質は、配列番号1を有するプラスミドに由来する、(1)〜(4)の何れか1項に記載の方法。 (6) 前記基質は、配列番号2および配列番号3からなる群から選択される核酸配列をさらに含む、(5)に記載の方法。 (7) 前記MMR欠損核抽出物は、HCT116およびLoVo細胞からなる群から選択される細胞株に由来する、(1)〜(6)の何れか1項に記載の方法。 (8) バイアル当たりの核抽出物の総量は、50〜500μg、好ましくは50〜200μg、より好ましくは75〜100μgの範囲である、(7)に記載の方法。 (9) 機能欠損を有するミスマッチ修復遺伝子を特定するための定量的方法であって、a)ヒト対象から得られたサンプルから核タンパク質抽出物を生成すること、b)陽性および陰性対照としてそれぞれ、MMR能力のあるおよびMMR欠損のある核タンパク質抽出物を準備すること、c)少なくとも1つのMMR欠損核タンパク質抽出物を前記サンプル抽出物と混合すること、d)個別のバイアル中でステップa〜cにおいて準備された各核抽出物を少なくとも1つのミスマッチ含有ヘテロ二重鎖DNA基質と組み合わせること、e)前記核抽出物および前記基質に対してミスマッチ修復アッセイを実施すること、ならびにf)前記サンプル核抽出物が前記基質を修復でき、前記MMR欠損核抽出物を補完できるかどうかを判別することによって前記欠損遺伝子を特定することを含む、方法。 (10) 前記サンプルは、構成組織から得られた正常な細胞を含む、(9)に記載の方法。 (11) 前記正常な細胞は、線維芽細胞である、(10)に記載の方法。 (12) 前記正常な細胞は、血液由来細胞である、(10)に記載の方法。 (13) 前記基質は、配列番号1を有するプラスミドに由来する、(9)〜(12)の何れか1項に記載の方法。 (14) 前記基質は、配列番号2および配列番号3からなる群から選択される核酸配列をさらに含む、(13)に記載の方法。 (15) 前記MMR欠損核抽出物は、HCT116およびLoVo細胞からなる群から選択される細胞株に由来する、(9)〜(14)の何れか1項に記載の方法。 (16) バイアル当たりの核抽出物の総量は、50〜500μg、好ましくは50〜200μg、より好ましくは75〜100μgの範囲である、(15)に記載の方法。 (17) (9)〜(16)の何れか1項に記載の方法を使用して欠損DNAミスマッチ修復遺伝子を特定することにより、ヒトのリンチ症候群を診断するための方法であって、前記サンプルは、ヒト対象の構成組織から得られた臨床サンプルである、方法。 (18) (1)〜(17)の何れか1項に記載の方法に使用するためのキットであって、少なくとも1つのミスマッチ含有ヘテロ二重鎖DNA基質、少なくとも1つのMMR欠損核抽出物および陽性対照としてMMR能力のある核抽出物を含む、キット。 (19) 前記MMR欠損核抽出物は、MLH1、MSH2またはMSH6のいずれかについてのMMR欠損を有する細胞株から得た、(18)に記載のキット。 (20) 少なくとも2つのMMR欠損核抽出物を含む、(19)に記載のキット。 (21) 前記MMR欠損核抽出物は、それぞれMLH1およびMSH2/MSH6についてのMMR欠損を有する細胞株に由来する、(20)に記載のキット。 (22) 前記MMR欠損核抽出物は、それぞれHCT116およびLoVo細胞に由来する、(18ょ〜(21)の何れか1項に記載のキット。 (23) 前記MMRアッセイを実施するために必要な追加の試薬をさらに含む、(18)〜(22)の何れか1項に記載のキット。 (24) 200mMのトリス−HCL、pH7.6、400mMのKCl、50mMのMgCl2、10mMのグルタチオン、BSA 500μg/ml、1mMの各dNTPおよび15mMのATPを含む10×MMR緩衝液;ならびに42mMのEDTA、1.2%のSDS、50.4μg/mlのプロテイナーゼKを含むMMRアッセイ用停止液をさらに含む、(23)に記載のキット。 (25) 前記サンプルを清澄にするための試薬、たとえば、TE緩衝液、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールおよびクロロホルム;前記サンプルを沈殿させるための試薬、たとえば、NaClおよびエタノール;ならびに修復を検出するための試薬、たとえば、RNase Aならびに緩衝液とともに制限酵素BglIIおよびEco31Iならびにローディングダイを含む、(23)〜(24)の何れか1項に記載のキット。


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