タイトル: | 特許公報(B1)_粒子凝集測定用ラテックス粒子 |
出願番号: | 2014512197 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G01N 33/543,G01N 33/545 |
北原 慎一郎 高橋 由紀 JP 5566557 特許公報(B1) 20140627 2014512197 20130927 粒子凝集測定用ラテックス粒子 積水メディカル株式会社 390037327 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 北原 慎一郎 高橋 由紀 JP 2012213647 20120927 20140806 G01N 33/543 20060101AFI20140717BHJP G01N 33/545 20060101ALI20140717BHJP JPG01N33/543 581UG01N33/545 B G01N 33/48−33/98 特開昭58−076762(JP,A) 国際公開第2003/005031(WO,A1) 国際公開第2002/018953(WO,A1) 特開2002−318233(JP,A) 特開2003−231648(JP,A) 特公昭58−034486(JP,B1) 特公平03−044085(JP,B2) 特公平08−010224(JP,B2) 特公平06−082128(JP,B2) 特開平06−265552(JP,A) 6 JP2013076389 20130927 13 20140312 草川 貴史 本発明は、非特異的反応を高度に抑制しながら、高感度測定が可能な粒子凝集測定用ラテックス粒子および該粒子を用いた粒子凝集測定試薬に関する。 臨床検査の分野において検体中の微量物質を定量する方法として、抗原抗体反応を利用した免疫測定法が広く行われている。中でも抗体等を担持させたラテックス粒子(以下、感作ラテックス粒子ということがある)を用いたラテックス免疫比濁法は簡便かつ測定時間が短いことから、広く検査室等で用いられている。ラテックス免疫比濁法による検体中の抗原または抗体の定量は、免疫複合体形成に伴う感作ラテックス粒子の凝集による吸光度変化を光学的に検出することにより行われる。この吸光度の変化は、感作ラテックス粒子の凝集による見かけの粒径変化に基づくものである。 従来、ラテックス免疫比濁法には、特許文献1に見られるように、検出対象物質と特異的に反応する抗原または抗体の固定化(感作)が容易であり、比較的安価で、かつ重合反応も制御しやすいことから、ポリスチレンを主成分とするポリスチレン系ラテックス粒子が用いられてきた。しかし、ポリスチレン系ラテックス粒子では、抗原や抗体を物理的に吸着(感作)できるメリットがある一方、検体中の非検出対象タンパク質等をも吸着するため、抗原抗体反応による特異的反応に基づかない感作ラテックス粒子の凝集反応、いわゆる非特異的反応を引き起こすことがあり、この非特異的反応を抑制することが従来からの課題であった。 特許文献1では、非特異的反応を抑制するために、抗原や抗体を感作したラテックス粒子をウシ血清アルブミン(BSA)などでブロッキングする試みがなされているが、十分に効果を得られないことも多く、高いバックグラウンド値を与えることから、高感度測定が可能な試薬を作製する上での大きな課題であった。 特許文献2では、スチレンと下記一般式で表される化合物とスチレンスルホン酸の塩と水溶性ラジカル重合開始剤を用いて水中で共重合させてポリマー粒子となし、診断薬用担体粒子を作製している。これにより、非特異的反応が抑制されるとしているが、非特異的反応の抑制を担う下記一般式の化合物を高濃度で含むように作製されたポリマー粒子は、抗原や抗体を粒子表面に物理吸着させにくく、診断薬用担体としての目的を果たすことができないものであった。また、担体粒子作製の際、スチレンと下記一般式で表される化合物とスチレンスルホン酸の塩と水溶性ラジカル重合開始剤以外の化合物を用いることは示されていなかった。 CH2=CR3−COO(CH2CH2O)X(CH(CH3)CH2O)y(CH2CH2O)ZR4(式中、R3はHまたはCH3、R4はHまたはCH3を示し、x、yおよびzはそれぞれ0または100以下の整数であって、x、y、zは1≦x+y+z≦100を満たす) 特許文献3及び特許文献4では、下記一般式で表される化合物を主成分モノマーとして構成されているポリマー類を凝集促進剤として用いる免疫学的測定用試薬が示されている。この際、ポリマーはコポリマーであってもかまわないが、下記一般式の構成単位をポリマー中に20%以上を有していることが好ましく、またコポリマーにおける下記一般式以外の構成単位として、スチレン誘導体を用いても良い旨が記載されている。しかし、コポリマーは鎖状ポリマーとして反応液中に遊離状態で存在し、ラテックス粒子の形態として用いることは何ら示されていない。また特許文献4では、ポリエチレングリコール等の凝集促進剤を反応液に添加した場合、塩析により非特異的な濁りが生じてブランク値が上昇するが、下記一般式で表される化合物を主成分モノマーとして構成されているポリマー類を凝集促進剤として用いた場合には、塩析による非特異的な濁りが生じ難くなることが記載されている。しかし、これらのポリマー類が、非特異的に凝集反応を起こす乖離検体等の過剰凝集を抑制できることまでは何ら示されていない。 CH2=CR6−CO−X−R5−O(PO2)OR4−N−(R1)(R2)(R3)(式中、R1からR3はそれぞれ独立して水素原子または水酸基を有していてもよいアルキル基、R4はアルキレン基、R5は置換基を有していてもよく、かつ鎖中に酸素原子を有していても良いアルキレン基、R6は水素原子またはメチル基、Xは酸素原子または−NH−基を示す)特許第3708942号公報特公昭58−34486号公報特開2005−106609号公報特開2002−365296号公報 本発明は、上記のような従来のラテックス免疫比濁法における問題を解決するためになされたものであり、非特異的反応を高度に抑制しながら、高感度測定が可能で、かつ簡便に診断薬を作製できる粒子凝集測定用ラテックス粒子および該粒子を用いた粒子凝集測定試薬を提供することを目的としている。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ラテックス粒子重合の際、その組成を特定のものとすることにより、本発明の粒子凝集測定用ラテックス粒子を作製することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものである。 [1]フェニル基を有する重合性単量体、フェニル基とスルホン酸塩を有する重合性単量体、及び式(1)を有する重合性単量体を成分として含み、式(1)を有する重合性単量体の粒子表面に占める密度(官能基密度)が0.003〜0.05μmol/m2であることを特徴とする粒子凝集測定用ラテックス粒子。 CH2=CR1−COOCH2CH2O(PO2)OCH2CH2−N(CH3)3・・・(1)(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す) [2]上記フェニル基を有する重合性単量体が、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、4−ビニル安息香酸からなる群から選ばれる少なくとも1つである上記[1]に記載の粒子凝集測定用ラテックス粒子。 [3]上記フェニル基とスルホン酸塩を有する重合性単量体が、スチレンスルホン酸塩、ジビニルベンゼンスルホン酸塩、o−メチルスチレンスルホン酸塩、p−メチルスチレンスルホン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1つである上記[1]または[2]に記載の粒子凝集測定用ラテックス粒子。 [4]上記フェニル基を有する重合性単量体がスチレン、フェニル基とスルホン酸塩を有する重合性単量体がスチレンスルホン酸ナトリウムであることを特徴とする上記[1]に記載の粒子凝集測定用ラテックス粒子。 [5]抗原または抗体を物理吸着により担持することを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の粒子凝集測定用ラテックス粒子。 [6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の粒子凝集測定用ラテックス粒子を用いる粒子凝集測定試薬。 本発明の粒子凝集測定用ラテックス粒子および粒子凝集測定試薬を用いることにより、タンパク質のような生体由来物質や検査試薬中の特定の構成成分が免疫反応に関与し、目的とする特異的反応(例えば抗原抗体反応)以外の測定目的に適わない反応(例えば乖離検体で起こる過剰凝集反応)を抑制することができるので、目的とする特異的な凝集反応のみを、従来よりも高感度に測定できる診断薬を製造することが可能である。また、本発明のラテックス粒子は一段階の重合反応で作製されており、さらにラテックス粒子への抗原や抗体の感作は物理吸着で行うよう設計されている。このように、高感度な粒子凝集測定用ラテックス粒子を非常に簡便な工程で得ることが可能である。図1は、抗Dダイマー抗体を感作した実施例および比較例の粒子凝集測定用ラテックス粒子を用いて、Dダイマー標準抗原を測定した検量線である。図2は、抗Dダイマー抗体を感作した実施例および比較例の粒子凝集測定用ラテックス粒子を用いて、Dダイマー乖離検体1及びDダイマー乖離検体2を測定し、図1の検量線に基づき濃度換算したグラフである。 本発明は、フェニル基を有する重合性単量体、フェニル基とスルホン酸塩を有する重合性単量体、及び式(1)に示す単量体(以下、「MPC単量体」という)を単量体成分として含み、MPC単量体の粒子表面に占める密度(官能基密度)が0.003〜0.05μmol/m2である粒子凝集測定用ラテックス粒子を提供するものである。 以下、本発明をさらに詳説する。本発明に用いられるフェニル基を有する重合性単量体としては、特に限定されず、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、4−ビニル安息香酸などが挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上が混合されていても良い。なかでもスチレンが好ましく用いられる。 フェニル基とスルホン酸塩を有する重合性単量体としては、重合後の粒子表面にスルホン酸基を含有させることができる単量体であれば特に限定されず、例えば、スチレンスルホン酸塩、ジビニルベンゼンスルホン酸塩、o−メチルスチレンスルホン酸塩、p−メチルスチレンスルホン酸塩などが挙げられる。また、この場合の塩としても、特に限定されず、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、スチレンスルホン酸塩が好ましく、スチレンスルホン酸ナトリウムが更に好ましく用いられる。 MPC単量体は、下記一般式(1)により示される単量体である。 CH2=CR1−COOCH2CH2O(PO2)OCH2CH2−N(CH3)3・・・(1)(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す) 具体的には、R1が水素原子である2−(アクリロイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニウム)エチルホスフェート、R1がメチル基である2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニウム)エチルホスフェート(東京化成製)が挙げられる。 本発明のMPC単量体の極性基部分は、細胞膜を構成するリン脂質の極性基構造と同一であり、該MPC単量体を主成分として重合したポリマーは、一般に生体の細胞膜成分と同様の性質を有する。該ポリマーを人工的に水に溶解させると2分子膜ベシクルを形成してW/O/Wエマルションとして安定的に水中に存在することができる。この性質を利用し、薬物送達システムなどへの研究が盛んに行われている。また、このポリマーは、生体適合性が高いうえ、プラスチック機材等にコーティングすると血液中のタンパク質をほとんど吸着せず、非特異吸着を抑制する性質を示すことが知られており、医療器材などへの適用が検討されている。診断薬への適用としては、特許文献3及び特許文献4に示されているように、凝集促進剤としての役割が知られている。しかし、本発明のように、タンパク質のような生体由来物質や検査試薬中の特定の構成成分が免疫反応に関与し、目的とする特異的反応(例えば抗原抗体反応)以外の測定目的に適わない反応が惹起された非特異的反応を抑制する目的での適用例はない。 本発明のラテックス粒子は、上記フェニル基を有する重合性単量体とフェニル基とスルホン酸塩を有する重合性単量体とMPC単量体を含む水性媒体中でソープフリー乳化重合することにより得られる。上記重合の方法としては、従来公知のソープフリー乳化重合法を用いることができる。例えば、媒体として、水を満たした反応容器内に、上記フェニル基を有する重合性単量体、フェニル基とスルホン酸塩を有する重合性単量体、MPC単量体、重合開始剤を添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら加熱する方法等が挙げられる。 重合温度は、50〜100℃が好ましく、より好ましくは60〜85℃である。また、重合時間は、重合性単量体の組成、濃度、及び、重合開始剤等の条件にもよるが、通常5〜50時間である。 上記水性媒体としては、水(脱イオン水)単独、もしくは水および水溶性溶媒の混合溶媒を使用することが好ましく、例えば水とエタノールなどのアルコールとの混合溶媒である。中でも水単独を用いることが好ましい。 上記重合開始剤としては、公知のラジカル開始剤を用いることができる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を挙げることができる。なかでも過硫酸塩が好ましく、より好ましくは、過硫酸カリウムが用いられる。上記重合開始剤の使用量としては特に限定されないが、好ましくは重合性単量体量に対して0.01〜5重量%の範囲で用いる。 また、本発明の粒子凝集測定用ラテックス粒子の用途によっては、上記重合の際に、更に上記単量体と共重合可能な重合性不飽和単量体を添加してもよい。重合性不飽和単量体としては通常のラジカル重合に使用可能なものであれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン誘導体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アミド、ハロゲン化ビニル、ビニルエステル、(メタ)アクロレイン、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体等が挙げられる。なお、本発明において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。また、上記スチレン誘導体は、本発明に用いられるフェニル基を有する重合性単量体、フェニル基とスルホン酸塩を有する重合性単量体以外のスチレン誘導体である。 重合に用いる本発明のMPC単量体の量としては、MPC単量体の粒子表面に占める密度(官能基密度)が0.003〜0.05μmol/m2となるように用いれば特に限定はない。粒子表面に占める官能基密度が高くなると、非特異的反応を抑制する効果は高いが、感度の低下も著しくなり、好ましくない。また、粒子表面に占める官能基密度が低くなりすぎると、MPC単量体が有する非特異的反応抑制の効果が減少し、MPC単量体を用いない粒子と何ら変わりがなくなってしまうため、好ましくない。感度を低下させずに非特異的反応を抑制するには、MPC単量体の官能基密度を0.003〜0.05μmol/m2、好ましくは0.004〜0.02μmol/m2とすることが重要である。 尚、MPC単量体の官能基密度は、以下の計算式により算出する。 官能基密度(μmol/m2)=(ラテックス粒子製造に用いたMPC単量体のモル数)/(生成したラテックスの全表面積) 官能基密度は、詳しくは下記の方法で計算できる。 r:生成したラテックス粒子の平均粒径(nm) Y:ラテックス粒子の製造に用いたMPC単量体のモル数(μmol) すなわち、 Y=(製造に用いたMPC単量体の重量(g))/(製造に用いたMPC単量体の平均分子量) V:ラテックス粒子の総体積(cm3) S:ラテックス粒子の総表面積(cm2) x:ラテックスの総数(個) Z:官能基密度(μmol/m2) K:重合反応に用いられる、フェニル基を有する重合性単量体、フェニル基及びスルホン酸塩を有する重合性単量体、重合開始剤、MPC単量体の重量の総和(g)としたとき、 V=4/3π(r/2×10-7)3×x S=4π(r/2×10-7)2×x より、S=6V/(r×10-7) よって、 Z=Y/(S×10-4) =Y×r×10-3/6V ここで、重合したポリスチレンの比重が1.06g/cm3より、 V=K/1.06 Z=1.766×10-4×Y×r/K 本発明の粒子凝集測定用ラテックス粒子の平均粒子径は、0.05〜1.0μmであることが望ましい。0.05μm未満であると、凝集による光学的変化量が小さすぎて測定に必要な感度が得られず、また、試薬調製時の遠心分離の際に多くの時間がかかり試薬コストが高くなる。1.0μmを超えると、検出対象物質が高濃度であるときに粒子の凝集による光学的変化量が測定可能領域を越えてしまい、検出対象物質の量に応じた光学的変化量が得られない。粒子凝集測定用ラテックス粒子を使用する測定方法、測定機器によって異なるが、好ましくは0.05〜0.7μm、より好ましくは0.05〜0.4μmである。 上記粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、20%以下であることが好ましい。20%を超えると、試薬調製時のロット再現性が悪く、測定試薬の再現性が低下することがある。より好ましくは15%以下である。尚、上記粒子径の変動係数は、次の式により算出される。 粒子径の変動係数(CV値)=粒子径の標準偏差/平均粒子径 本発明の粒子凝集測定用ラテックス粒子の表面におけるMPC単量体の占める密度である官能基密度は、ラテックス粒子の製造に用いるMPC単量体のモル量によって制御することができる。すなわち、単位面積当たりのラテックス粒子表面の官能基の量を、ラテックス粒子の製造に用いるMPC単量体の重量ではなく、モル量によって規定することにより、分子量の異なるMPC単量体であっても、下記一般式(1)を満足するものであれば、いかなるものでも簡便な操作で官能基密度を決定でき、本発明の効果を得ることができる。 CH2=CR1−COOCH2CH2O(PO2)OCH2CH2−N(CH3)3・・・(1)(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す) 本発明の粒子凝集測定用ラテックス粒子は、水又は水系溶媒に懸濁した状態で得られる。粒子濃度としては特に限定されないが、通常は1〜20重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、試薬調製時に濃縮する必要があり、20重量%を超えると、凝集してしまうことがある。 検出対象物質と特異的に結合する物質が物理的に吸着して担持された粒子凝集測定用ラテックス粒子(粒子凝集測定試薬)も本発明の1つである。上記検出対象物質と特異的に結合する物質としては、免疫血清学的検査試薬(免疫学的凝集反応及び凝集阻止反応において使用されるもの)、生化学測定法として通常使用される生理活性物質であれば特に限定されないが、なかでも、抗原抗体反応に利用できるものが好適である。 上記抗原抗体反応に利用できるものとしては、例えば、タンパク質、核酸、核タンパク質、エストロゲン、脂質等の抗原、又は抗体が挙げられる。抗原としては、例えば、各種抗原、レセプター、酵素等が挙げられ、β2マイクログロブリン、C−反応性蛋白質(CRP)、インスリン、ヒトフィブリノーゲン、フェリチン、リウマチ因子(RA)、α−フェトプロテイン(AFP)、マイコプラズマ抗原、HBs抗原等が挙げられる。また、抗体としては、例えば、各種の毒素や病原菌等に対する抗体が挙げられ、抗ストレプトリジンO抗体、抗エストロゲン抗体、抗β2マイクログロブリン抗体、抗梅毒トレポネーマ抗体、梅毒脂質抗原に対する抗体、抗HBs抗体、抗HBc抗体、抗HBe抗体、抗PSA抗体、抗CRP抗体、抗インスリン抗体、抗Dダイマー抗体等が挙げられる。なお、抗体としては、免疫グロブリン分子自体の他、例えば、F(ab’)2のような断片であってもよい。更に抗体としてはポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらを用いてもかまわない。 上記ラテックス粒子に検出対象物質と特異的に結合する物質を担持(感作)させる方法としては、物理的な吸着方法であれば、特に限定されず、従来公知の方法により担持させればよい。 また、担持後には、必要に応じてウシ血清アルブミン等でブロッキング処理を施し、適当な緩衝液に分散して感作ラテックス分散液を作製することができる。この感作ラテックス分散液に、測定に用いる緩衝液および標準物質等を添付し、粒子凝集測定試薬のキットとして用いることができる。 上記検出対象物質と特異的に反応する物質がラテックス粒子に担持される量としては、用いられる検出対象物質と特異的に反応する物質の種類により異なり、特に限定されない。 抗原や抗体などを担持する上記粒子凝集測定用ラテックス粒子を含む測定試薬を使用するにあたっては、測定感度の向上や抗原抗体反応の促進のために種々の増感剤を含有してもよい。上記増感剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキル化多糖類、プルラン、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。 本発明のラテックス粒子を用いることで、高度に非特異的反応が抑制されるが、更に、検体中に存在する他の物質により引き起こされる非特異的反応を抑制するため、又は、試薬の安定性を高めるために、アルブミン(ウシ血清アルブミン、卵性アルブミン)、カゼイン、ゼラチン等のタンパク質やその分解物、アミノ酸又は界面活性剤等を含有してもよい。 また、検出対象物質は、適当な希釈液で希釈してもよい。上記希釈液としてはpH5.0〜9.0の緩衝液であればどのようなものでも用いることができ、たとえば、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液等が挙げられる。 本発明の抗原や抗体などを担持する上記粒子凝集測定用ラテックス粒子を含む測定試薬を用い、検体中の検出対象物質とラテックス粒子に担持された検出対象物質に特異的に反応する物質との反応により生じるラテックス粒子の凝集の度合いを光学的に測定することにより、検体中の検出対象物質の反応量を測定することができる。上記光学的測定には、散乱光強度、透過光強度、吸光度等を検出できる光学機器、またはこれらの検出方法を複数備えた光学機器などに代表される一般の生化学自動分析機であればいずれも使用することができる。 上記凝集の度合いを光学的に測定する方法としては従来公知の方法が用いられ、例えば、凝集の形成を濁度の増加としてとらえる比濁法、凝集の形成を粒度分布又は平均粒径の変化としてとらえる方法、凝集の形成による前方散乱光の変化を積分球を用いて測定し透過光強度との比を比較する積分球濁度法等が挙げられる。 また、凝集度合いの変化量の測定法としては、例えば、異なる時点で少なくとも2つの測定値を得、これらの時点間における測定値の増加分(増加速度)に基づき凝集の程度を求める速度試験(レートアッセイ)、ある時点(通常は反応の終点と考えられる時点)で1つの測定値を得、この測定値に基づき凝集の程度を求める終点試験(エンドポイントアッセイ)等が挙げられる。なかでも、測定の簡便性、迅速性の点から比濁法による終点試験が好適である。 以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。尚、得られた粒子凝集測定用ラテックス粒子の粒径は下記のように測定した。 粒子凝集測定用ラテックス粒子の粒径測定: 粒子凝集測定用ラテックス粒子を常法に従ってコロジオン膜状に載せ、透過型電子顕微鏡により粒子画像を撮影し、画像上の粒子径(100個以上)を計測することにより平均粒径及び標準偏差を求めた。[実施例1] 攪拌機、還流用冷却器、温度検出器、窒素導入管及びジャケットを備えたガラス製反応容器(容量2L)に、超純水1000g、スチレンモノマー135g、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニウム)エチルホスフェート(東京化成製)0.021g、スチレンスルホン酸ナトリウム1.2g、過硫酸カリウム0.7gを添加し、容器内を窒素ガスで置換した後、70℃、210rpmの速度で攪拌しながら24時間重合を実施した。重合終了後、上記溶液をろ紙でろ過処理し、ラテックス粒子を取り出した。その後、透析膜にて48時間透析処理を行い、精製されたラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は0.108μm(CV9.7%)、MPC密度は0.010μmol/m2であった。[実施例2] 2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニウム)エチルホスフェート(東京化成製)0.021gを0.009gに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は0.102μm(CV10.4%)、MPC密度は0.004μmol/m2であった。[実施例3] 2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニウム)エチルホスフェート(東京化成製)0.021gを0.042gに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は0.105μm(CV10.1%)、MPC密度は0.019μmol/m2であった。[比較例1] 2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニウム)エチルホスフェート(東京化成製)0.021gを用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は0.107μm(CV10.3%)であった。尚、MPC単量体を用いていないため、MPC密度は0である。[比較例2] 2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニウム)エチルホスフェート(東京化成製)0.021gを0.005gに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は0.105μm(CV9.8%)、MPC密度は0.002μmol/m2であった。[比較例3] 2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニウム)エチルホスフェート(東京化成製)0.021gを0.120gに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の粒径は0.110μm(CV9.1%)、MPC密度は0.058μmol/m2であった。[適用例] 実施例及び比較例のラテックス粒子を用いてDダイマー用粒子凝集測定試薬の評価を実施した。用いた試薬及び材料は以下の通りである。 <試薬及び材料> ・抗Dダイマー抗体 ・抗体担持ラテックス調製用緩衝液:20mM Tris−HCl(pH8.0)を用いた。 ・ブロッキング用緩衝液:2%(w/v)BSA 、20mM Tris−HCl(pH8.0)を用いた。 ・検体希釈用緩衝液:0.15%(w/v)BSA、30mM Tris−HCl (pH8.5)を用いた。 <Dダイマー用粒子凝集測定試薬の調製> 実施例1〜3、比較例1〜3で得られたラテックス粒子を遠心分離で精製した後、5%(w/v)となるよう抗体担持ラテックス調製用緩衝液にて希釈して、希釈ラテックス液を調製した。 一方、抗Dダイマー抗体を濃度1mg/mLとなるよう抗体担持ラテックス調製用緩衝液にて希釈して、希釈抗体溶液を調製した。 上記希釈ラテックス液1容を攪拌しながら上記希釈抗体溶液1容を添加・混合し、更に攪拌した。その後、ブロッキング用緩衝液2容を追加添加し、攪拌を続けた。その後、これを回収して得られたDダイマー用粒子凝集測定試薬を、緩衝液を用いて0.5%(w/v)に調整して、抗体感作ラテックス分散液とした。この抗体感作ラテックス分散液を用い、Dダイマー抗原標準液にて検量線を作成した。 装置:日立 7170型自動分析装置 使用波長:570/800nm、測定温度:37℃ 検出対象物質(0〜58μg/mLのDダイマー標準液):12μL 第1試薬(検体希釈用緩衝液:0.15%(w/v)BSA、30mM Tris−HCl (pH8.5):100μL 第2試薬(抗体感作ラテックス粒子の0.5%(w/v)分散液):100μL 測光ポイント:18−34[測定例1] 抗Dダイマー抗体を感作した実施例1〜3および比較例1〜3の抗体感作ラテックス粒子(0.5%(w/v))を用いて、上記測定方法に従い測定し、検量線を作成した(図1)。実施例1〜3の抗体感作ラテックス粒子を用いた場合は比較的高感度の測定が可能であった。一方、比較例1〜3の抗体感作ラテックス粒子を用いた場合は、実施例に比較して低い感度しか得られなかった。[測定例2] 抗Dダイマー抗体を感作した実施例1〜3および比較例1〜3の抗体感作ラテックス粒子(0.5%(w/v))とDダイマー乖離検体(2種)を用いて、上記測定方法に従い測定し、その値を測定例1によって求めた検量線からそれぞれ濃度換算を行った。ここで、Dダイマー乖離検体とは、従来のDダイマー免疫比濁測定系で非特異的凝集反応が観察された検体をいう。その結果を図2に示す。実施例1〜3の抗体感作ラテックス粒子を用いた場合は、MPC単量体を用いなかった比較例1に対して、乖離検体の非特異凝集反応を高度に抑制することが認められた。また、比較例3の抗体感作ラテックス粒子を用いた場合は、乖離検体の非特異的な凝集反応を実施例1〜3と同様に抑制することが認められたが、測定例1で示されたように感度が大幅に低下した。この理由としては、MPC単量体の密度が高すぎた為に、ラテックス粒子表面に抗体が十分に吸着(感作)しなかったことが考えられる。 本発明の粒子凝集測定用ラテックス粒子および粒子凝集測定用試薬を用いることにより、非特異凝集反応を引き起こす検体中の非検出対象タンパク質を吸着させず、目的とする特異凝集反応のみを惹起させるため、従来よりも高感度な診断薬を得ることが可能である。免疫血清学的検査試薬(免疫学的凝集反応及び凝集阻止反応において使用されるもの)、生化学測定法として通常使用される生理活性物質の検査試薬として有用である。 フェニル基を有する重合性単量体、フェニル基とスルホン酸塩を有する重合性単量体、及び式(1)を有する重合性単量体を成分として含み、式(1)を有する重合性単量体の粒子表面に占める密度(官能基密度)が0.003〜0.05μmol/m2であることを特徴とする粒子凝集測定用ラテックス粒子。 CH2=CR1−COOCH2CH2O(PO2)OCH2CH2−N(CH3)3・・・(1)(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す) 上記フェニル基を有する重合性単量体が、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、4−ビニル安息香酸からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載の粒子凝集測定用ラテックス粒子。 上記フェニル基とスルホン酸塩を有する重合性単量体が、スチレンスルホン酸塩、ジビニルベンゼンスルホン酸塩、o−メチルスチレンスルホン酸塩、p−メチルスチレンスルホン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1または2に記載の粒子凝集測定用ラテックス粒子。 上記フェニル基を有する重合性単量体がスチレン、フェニル基とスルホン酸塩を有する重合性単量体がスチレンスルホン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の粒子凝集測定用ラテックス粒子。 抗原または抗体を物理吸着により担持することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粒子凝集測定用ラテックス粒子。 上記請求項1〜5のいずれかに記載の粒子凝集測定用ラテックス粒子を用いる粒子凝集測定試薬。 非特異的反応を高度に抑制しながら、高感度測定が可能、かつ簡便に診断薬を作製できる粒子凝集測定用ラテックス粒子および該粒子を用いた粒子凝集測定試薬を提供する。フェニル基を有する重合性単量体、フェニル基とスルホン酸塩を有する重合性単量体、及び式(1)を有する重合性単量体を成分として含み、式(1)を有する重合性単量体の粒子表面に占める密度(官能基密度)が0.003〜0.05μmol/m2である粒子凝集測定用ラテックス粒子。 CH2=CR1−COOCH2CH2O(PO2)OCH2CH2−N(CH3)3・・・(1)(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す)