生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_ヒト多能性幹細胞を採取および継代するための配合物および方法
出願番号:2014511531
年次:2014
IPC分類:C12N 5/10


特許情報キャッシュ

ニー イン ローリー ジョナサン アレン フェルナー トーマス ウォルシュ パトリック JP 2014513556 公表特許公報(A) 20140605 2014511531 20120517 ヒト多能性幹細胞を採取および継代するための配合物および方法 ロンザ ウォカーズビル インコーポレーティッド 504006021 清水 初志 100102978 春名 雅夫 100102118 山口 裕孝 100160923 刑部 俊 100119507 井上 隆一 100142929 佐藤 利光 100148699 新見 浩一 100128048 小林 智彦 100129506 渡邉 伸一 100130845 大関 雅人 100114340 五十嵐 義弘 100114889 川本 和弥 100121072 ニー イン ローリー ジョナサン アレン フェルナー トーマス ウォルシュ パトリック US 61/487,087 20110517 C12N 5/10 20060101AFI20140509BHJP JPC12N5/00 102 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA US2012038321 20120517 WO2012158899 20121122 31 20140108 4B065 4B065AA93X 4B065BA30 4B065BD14 4B065BD29発明者 Ying Nie;Jon Rowley;Patrick Walsh;Thomas Fellner関連出願の相互参照 本出願は、2011年5月17日に出願された米国仮出願第61/487,087号の恩典を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。発明の分野 本発明は、多能性幹細胞を採取/継代するための配合物および方法に関する。具体的には、本発明は、1)クエン酸ナトリウムを含む配合物およびその使用方法;2)Ca2+キレート剤濃度とオスモル濃度(osmolarity)に基づいて配合物を同定する方法;および3)そのような配合物の使用に関する。発明の背景 ヒト胚性幹細胞(hESC)および人工多能性幹細胞(iPSC)を含めて、ヒト多能性幹細胞(hPSC)は、多くのタイプの体細胞に分化する能力を維持しながら、培養下で無限に増殖することができる。これらの細胞は、細胞療法および再生医療において無限の細胞供給源を提供するものとして高く評価されている。臨床試験の最近のFDA承認によって示されるように、ヒト胚性幹細胞(hESC)ベースの細胞療法は実験から臨床へと進展しつつある。しかし、現在利用可能なプレートおよびTフラスコベースの培養プラットフォームは、hPSC生産の商業的に関連するロットサイズへのスケーラビリティを厳しく制限している。細胞療法および再生医療におけるhPSCの潜在力を引き出すためには、スケーラブルなhPSC製造プロセスが開発されねばならない。既存のフラスコベースのプロセスをスケールアップすることは、現在のhPSC研究を臨床応用へと移す上で決定的に重要な足掛かりとなる。最大の課題の一つは、高収率、表現型の多能性、および核型の安定性を維持する大規模な多層容器のためのスケーラブルな継代方法を確立することである。 従来より、hPSCは、酵素(コラゲナーゼまたはDispase(登録商標)など)による前処理を行ってまたは行わずに、機械的に掻き取ることによってコロニー断片として採取されて、継代される。このプロセスは重労働であり、多層細胞培養容器(商業規模の接着細胞を生産する際に広く使用されるプラットフォーム)でのhPSCの培養には応用することができない。多層細胞培養容器内で増殖している細胞には、掻き取りのために近づくことができない。さらに、機械的掻き取りは細胞に損傷を与える。掻き取りを行わないと、細胞の生存率を90%にまで増加させることができる。単一の細胞の継代および採取に関連する既知の方法は、例えば、hPSCの低いクローニング効率と関係した、継代および凍結保存後の低い回収率および異常な核型に関する懸念のために、望ましくない。Rho関連キナーゼ阻害剤(ROCK阻害剤)はhPSCのクローニング効率を改善できることが報告されているが、その作用機序は完全には理解されておらず、hPSC培養物に対するROCK阻害剤の効果もまだ評価されていない。したがって、単一の細胞としてのhPSCをROCK阻害剤の存在下で継代することは、広く受け入れられていない。 最近、非酵素的細胞剥離液、主としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)溶液を用いてhESCを継代することが、いくつかのhESC研究室で採用されており、大学の研究室から産業界に広がりつつある。細胞解離用の市販のEDTA含有溶液の一つはVersene(登録商標)EDTAであり、これは0.55mMのEDTAを含有し、hPSCの採取および継代のために使用されている。hESCをVersene(登録商標)EDTAで継代するための典型的な手順は、培養物をCa2+/Mg2+不含の緩衝液(例えば、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水;DPBS)で洗浄することから開始し、続いてその培養物をVersene(登録商標)EDTA中で4〜9分間インキュベートする。その後、Versene(登録商標)EDTAを除去し、培養液をピペッティングにより手動で細胞にかけることによって、細胞をクラスターとして表面から物理的に剥ぎ取る。従来の酵素処理に続く掻き取り法と比較して(表1参照)、この方法の利点は、(1)非酵素溶液を使用する - したがって、酵素を除去するための剥離後の洗浄または遠心分離の必要がない;および(2)掻き取りを必要としない - Versene(登録商標)EDTAで処理された細胞は表面から洗い落とすことができることである。表1に記載され、図1に示されるように、酵素で処理して培養表面から掻き取ったhESCと比較して、Versene(登録商標)EDTAで処理して掻き取りなしに剥離させたhESCは、より高い剥離後生存率を有し、かつ継代時にはるかに速く(分対時間)新しい培養表面に再付着する。 (表1)hESCを採取/継代する方法 しかしながら、多層容器内でのhESCの増殖に応用した場合、Versene(登録商標)EDTA継代/採取方法は理想的とはいえない。Versene(登録商標)EDTAは、それが細胞-表面結合を破壊するよりも早く細胞-細胞結合を壊すようである。hESC培養物がVersene(登録商標)EDTAで過度に処理される場合(>9分)、より大きな割合の細胞がクラスターまたは塊ではなく単一の細胞として表面から脱落する。多すぎる単一細胞の取得を回避するために、処理時間は通常7分から9分の間で制御される。Versene(登録商標)EDTAの除去後、6ウェルプレートまたはTフラスコ培養フォーマットでは、表面から細胞を剥がすために、手動ピペッティングにより培養液をかけることによって発生した流体せん断力が必要である。ところが、多層容器の内部にはピペットを導入することができないので、多層容器内のhESC培養物を培養液で手動により剥ぎ取ることはできない。その代わりに、この培養フォーマットでは、Versene(登録商標)EDTAを培養液で置き換えた後、細胞を剥ぎ取るために激しいタッピングが行われる。機械的な力(タッピング)は、Versene(登録商標)EDTAを培養液で置換した後すぐに加える必要がある。なぜならば、Versene(登録商標)EDTAで処理されたhESCは、ひとたびそれらが培養液に触れると、すばやく表面に再付着するからである。実際、現在の最新技術では、(これらの非常に高価な細胞の収率に劇的に影響を与える)多層セルファクトリー内の全培養物の40〜70%を採取することが可能であるにすぎない。収率を高めるための一つの可能な解決策は、Versene(登録商標)EDTAを培養液で置き換えないで、代わりにVersene(登録商標)EDTA中で細胞を剥ぎ取ることである。しかし、この場合、Versene(登録商標)EDTAへの細胞の暴露時間が増加するが、このことは、多すぎる単一細胞を取得しかつ不安定な核型のコロニーを得るリスクを高める。さらに、最終的な採取物からVersene(登録商標)EDTAを除去または中和するために、余分な剥離後処理の工程を行う必要があり、このことは、労働強度を増加させるだけでなく、小さいhESCクラスターの分散をもさらに増加させるだろう。 したがって、当技術分野で公知の方法の欠点を解消または低減する、hPSCのスケーラブルで高収率の継代・採取用の配合物および方法が必要とされている。 本発明は、多能性幹細胞を、高い収率および高い剥離後細胞生存率でクラスターとして採取し、その後継代するための、非酵素的試薬配合物および方法を提供する。 本発明の目的は、当技術分野で公知の方法の欠点を解消または低減する、hPSCのスケーラブルで高収率の継代・採取用の配合物および方法を提供することである。 本発明のさらなる目的は、クエン酸ナトリウムを含む配合物を提供することである。 本発明のさらなる目的は、高い生存率、高い収率、大きい剥離後クラスターサイズ、連続継代能力(serial passageability)、および表現型多能性の維持(例えば、OCT4、Sox2、Nanog、SSEA4、TRA-1-60およびTRA-1-81などの、一般的に幹細胞と関連するマーカーの発現)ならびに核型の安定性といったhPSCパラメーターに関して、hPSCを採取して継代するために最適化された配合物および方法を提供することである。 本発明のさらなる目的は、低減した労働強度および処理時間でhPSC培養物を増殖させるためのルーチンの実験プラクティスとして、任意のhPSC研究室で使用することができる、配合物および方法を提供することである。 本発明のさらなる目的は、培養容器の表面から細胞を取り除くために機械的掻き取りを必要としない、配合物および関連する方法を提供することである。 本発明のさらなる目的は、培養容器の表面から細胞を剥離させるのに使用した薬剤を除去するために、採取した細胞を洗浄して遠心分離する必要がない、配合物および関連する方法を提供することである。 本発明のさらなる目的は、多層細胞培養容器内で増殖させたhPSCの90%超が90%超の生存率で採取され得る、配合物および方法を提供することである。 本発明のさらなる目的は、多層細胞培養容器内でhPSCを培養すること、そして細胞採取物を自動後処理技術で洗浄し、濃縮し、バイアル化して、凍結保存することによる、閉鎖されたスケーラブルなhPSC製造プロセスを提供することである。 本発明のさらなる目的は、Tフラスコ由来のhPSCを、新規な非酵素的採取・継代方法により多層セルファクトリー内で増殖させて継代し、続いて連続向流遠心分離技術(例えば、kSep(登録商標)技術)による後処理を行うプロセスを提供することである。 本発明のさらなる目的は、剥離されたクラスターのサイズ分布および所与の処理時間で剥離される培養物の割合がオスモル濃度とCa2+キレート剤濃度により制御され得る、hPSCのための細胞剥離液を開発する方法を提供することである。 本発明のさらなる目的は、凝集体として懸濁液中で、またはマイクロキャリア上で増殖させたhPSCを採取し、その後継代するための方法であって、hPSC凝集体またはマイクロキャリア上のhPSCを、細胞培養容器内の本明細書に開示した配合物または本明細書に開示した方法により同定された配合物中で2〜20分間インキュベートし、約85〜100%の細胞生存率で、hPSC凝集体を分散させるか、またはhPSCをマイクロキャリアから剥離させることを含む方法を提供することである。 本発明のさらなる目的は、hPSCの採取およびその後の継代のための方法であって、hPSCが高い分割比(1:10から最大1:60まで;または播種時の細胞密度が約30E3/cm2から5E3/cm2まで低く)で継代され、かつ培養物が分割後7日以内にコンフルエンスに達する方法を提供することである。 本発明のさらなる目的は、hPSCの採取およびその後の継代のための方法であって、hPSCが50回の継代を超えても多能性と正常なGバンディング核型を維持している方法を提供することである。 本発明のさらなる目的は、未分化hPSCの選択的剥離および継代をもたらす、配合物およびその使用方法を提供することである。 本発明のさらなる目的は、hPSCを採取し、その後高い解凍後回収率および再プレーティング効率でhPSCを凍結保存するための手段を提供することである。 本発明のさらなる目的は、採取されたhPSCクラスターを、連続向流遠心分離、製剤化、自動バイアル化、およびコントロールレートフリーザー(Controlled Rate Freezer)による凍結保存を含む閉鎖系で後処理する方法を提供することである。 したがって、一態様では、掻き取りなしかつ生存率の実質的な低下なしでのヒト多能性幹細胞の採取およびその後の継代のための配合物が提供される。この態様の一側面では、前記配合物は、例えば、クエン酸ナトリウム、塩、およびリン酸緩衝生理食塩水溶液を、約250〜1050ミリオスモル(mOsmol)/リットルのオスモル濃度で含む。別の側面では、オスモル濃度は311〜1014ミリオスモル/リットルである。この態様の別の側面では、前記配合物は胚性幹細胞および人工多能性幹細胞を採取して継代するために用いられる。クエン酸ナトリウムの濃度は、例えば、約0.15〜150ミリモル/リットルである。前記塩は、例えば、NaCl、KCl、Na2HP03、NaH2P03、K2HP03、またはKH2P03である。塩がKClである場合、その濃度は例えば約1.00〜1400ミリモル/リットルである。あるいは、塩がKClである場合、その濃度は約1.35〜1350ミリモル/リットルである。この態様の一側面では、前記配合物のオスモル濃度は例えば約400〜700ミリオスモル/リットルである。この態様の別の側面では、前記配合物のオスモル濃度は例えば約418〜570ミリオスモル/リットルである。この態様の別の側面では、前記配合物は、例えば、重炭酸塩、リン酸塩、エタノールアミン、トリエタノールアミン、またはトロメタモールでpH緩衝されている。前記配合物のpHは例えば約7〜8である。別の態様では、pHは約7.2〜7.8である。一側面では、リン酸緩衝生理食塩水溶液は、例えば、Ca2+/Mg2+不含のダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)である。この態様のいくつかの側面では、前記配合物による細胞の処理は、培養容器の表面からの、例えば少なくとも90%の細胞採取率、および例えば少なくとも90%の細胞生存率をもたらす。 別の態様では、掻き取りなしかつ生存率の実質的な低下なしでのヒト多能性幹細胞の採取およびその後の継代のための配合物の製造方法が提供される。 別の態様では、hPSCの採取およびその後の継代のための方法であって、細胞培養容器内の、前記段落に記載したいずれかの配合物中で、ある期間にわたってhPSCをインキュベートし、高収率かつ高い剥離後細胞生存率(例えば約85〜100%)で、細胞培養容器からhPSCをクラスターとして剥離することを含む方法が提供される。この態様の一側面では、細胞培養プレートまたは容器は、例えば、ペトリ皿、マルチウェル細胞培養プレート、積層細胞培養装置、多層細胞培養ファクトリー、および当技術分野で知られた、hPSCの培養物を支持することが可能な同様の容器である。この態様のいくつかの側面では、細胞は前記配合物で約2〜20分間処理される。一態様では、hPSCをmTeSR1(登録商標)中で培養した場合の処理時間は5〜15分である。別の態様では、hPSCをStemPro(登録商標)中で培養した場合の処理時間は8〜20分である。(StemPro(登録商標)およびmTeSR1(登録商標)は、hPSC培養用の市販の規定培地の例である。)この態様のいくつかの側面では、細胞は、例えば約10〜1000μmの範囲のサイズのクラスターとして採取される。さらに特定すると、クラスターのサイズは例えば約40〜500μmである。この態様のいくつかの側面では、前記方法は、培養容器の表面からの、例えば少なくとも90%の細胞採取率、および少なくとも90%の細胞生存率をもたらす。 別の態様では、EDTAおよびEGTA、クエン酸ナトリウム以外の他のCa2+キレート剤、または各種Ca2+キレート剤の組み合わせを含有する配合物を含めて、さらなる採取・継代用配合物が提供される。細胞剥離に関連して、2つの要因、すなわちCa2+キレート剤濃度およびオスモル濃度が同定される。 別の態様では、剥離されるクラスターのサイズ分布および所与の処理時間で剥離される培養物の割合がオスモル濃度とCa2+キレート剤濃度によって制御され得る、hPSCのための細胞剥離液を開発する方法が提供される。 これらおよび他の目的が本発明において達成される。 したがって、以下の本発明の詳細な説明がより良く理解され得るように、また、当技術分野への本貢献がより良く認識され得るように、本発明のより重要な特徴は、かなり広く概説されている。当然のことながら、本発明のさらなる特徴が存在しており、それらについては以下でさらに説明することにする。 この点に関して、本発明の少なくとも1つの態様を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の詳細な説明に記載されたかまたは図面に示された構成の細部および構成要素の配置に限定されないことを理解すべきである。本発明は、他の態様が可能であり、さまざまな方法で実践および実施することが可能である。さらに、本明細書中で用いられる表現および専門用語は、説明のためであって、限定と見なされるべきではないことを理解すべきである。 かくして、当業者には認識されるように、本開示のベースとなる概念は、本発明のいくつかの目的を実施するための他の構造、方法およびシステムを設計する際の基礎として容易に利用することができる。したがって、均等な構成は、それらが本発明の精神および範囲を逸脱しない限り、本発明に包含されることが重要である。 本発明、その操作上の利点、およびその使用によって達成される特定の目的をより良く理解するために、本発明の好ましい態様を示す添付の図面および説明事項を参照すべきである。図1は、酵素的処理および掻き取りの後と、それに対して非酵素的処理および掻き取りなしの後に、培養表面から剥離されたhESCの生存率パーセントを示す。図2は、EDTA/EGTAによる剥離と、それらに対してクエン酸ナトリウムによる剥離を示す。図3は、典型的なhESCコロニーの形態および増殖を示す、クエン酸ナトリウムで連続して継代されたhESCを示す。図4は、クエン酸ナトリウムで採取した後に5回継代されたhESCの正常な核型を示す。図5a〜eは、多層(2層)セルスタックでのhESC培養物の採取を示す(クエン酸ナトリウム対EDTA)。図6は、hESC剥離のためのクエン酸ナトリウム配合物の最適化を示す。図7は、kSep処理(容積減少)後の生存hESCの密度増加、および連続向流遠心分離技術(kSep(登録商標))適用前後での生存率の変化を示す。図8は、凍結保存後の細胞の回収率を示す。図9は、連続向流遠心分離技術(kSep(登録商標))後および凍結保存後のhESCの再プレーティングを示す。図10は、クエン酸ナトリウム配合物の各種希釈物による処理時間の増加とともに、MEF-CM中での剥離が増加する傾向を示す。図11は、クエン酸ナトリウム配合物の各種希釈物による処理時間の増加とともに、mTeSR1(登録商標)中での剥離が増加する傾向を示す。図12は、hESCの剥離を促進するクエン酸ナトリウムの能力に及ぼす、オスモル濃度およびカリウム濃度の影響を示す。図13は、図14A〜Cに記載した実験で用いられる各種配合溶液のオスモル濃度ならびにクエン酸ナトリウムおよびKClの最終濃度を示す。図14A〜Cは、hESCの剥離を促進しかつ大きなクラスターサイズを維持するクエン酸ナトリウム配合物の能力に及ぼすオスモル濃度の影響を示す。図15A〜Cは、hESCの剥離および剥離されたクラスターのサイズに及ぼすクエン酸ナトリウム濃度の影響を示す。図16A〜Bは、hESCの剥離に対するEDTA、EGTAおよびクエン酸ナトリウムの効果を示す。図17は、時間経過試験において使用される配合物を示す。図18Aは、各種配合溶液による処理時間がhESCの剥離に及ぼす影響を示す。図18Bは、各種クエン酸ナトリウム配合物の処理により剥離されたhESCクラスターのサイズ分布、ならびにクラスターサイズ分布に及ぼす処理時間の影響を示す。図19は、Versene(登録商標)EDTAと各種クエン酸ナトリウム配合物を用いて生成されたhESCクラスターのプレーティング効率、およびプレーティング効率に対する処理時間の影響を示す。図20AおよびBは、細胞剥離液を用いて最適な採取およびクラスターサイズを達成するための作用ウィンドウ(すなわち、処理の時間枠)の決定を示す。図21AおよびBは、クエン酸ナトリウム配合溶液を用いて剥離されたhESCクラスターの作用ウィンドウおよびプレーティング効率と、高濃度のEDTAおよびEGTAを用いて剥離されたクラスターのそれとの比較を示す。図22は、EDTAまたはクエン酸ナトリウムがインキュベーションの間除去されている場合(「ドライ継代」の方法論)の、Versene(登録商標)EDTAまたはクエン酸ナトリウム配合溶液のいずれかを用いて6ウェルプレートからhESCを採取するための実験手順を示す。図23は、3種のクエン酸ナトリウム配合溶液の化学組成、性能特性および適用可能性を示す。図24は、「リーブイン継代」の方法論を示す。図25は、クエン酸ナトリウム配合溶液を用いる「リーブイン継代」後の採取されたhESCの生存細胞の数および剥離後生存率を示す。図26は、クエン酸ナトリウム配合溶液を用いる「リーブイン継代」後の再プレーティングされたhESCコロニーのクラスターサイズ分布、プレーティング効率および形態を示す。図27は、間葉系幹細胞(MSC)の継代に対するVersene(登録商標)EDTAと種々のクエン酸ナトリウム配合溶液の効果を示す。図28A〜Cは、長時間処理後の高いプレーティング効率に向けてのクエン酸ナトリウム配合物の最適化を示す。図29は、クエン酸ナトリウム配合物による長期継代後のhESCの自己複製の評価としての、hESCマーカーの免疫細胞化学を示す。図30は、クエン酸ナトリウム配合物を用いて長期継代したhESCの分化能の評価としての、hESCの胚様体分化の免疫細胞化学を示す。図31は、長期hESC培養物の分化能のさらなる確認としての、クエン酸ナトリウム配合物を用いて長期継代したhESCを注入された免疫不全マウスに発生した奇形腫の組織像を示す。発明の詳細な説明実施例1種々の非酵素的細胞剥離配合溶液および方法の予備スクリーニングおよび特性評価 本明細書には、多能性幹細胞をクラスターとして高い収率および高い剥離後細胞生存率(>90%)で採取/継代するための非酵素的試薬配合物および方法が開示される。これらの細胞はその後、最終的な採取物として処理するか、さらなる増殖のために新たな培養容器に播種することができる。一態様では、開示される配合物はクエン酸ナトリウムを含み、クエン酸ナトリウムは、細胞-表面および細胞-細胞の結合に必要な2価カチオンであるCa2+をキレート化/封鎖することによって、細胞-表面および細胞-細胞の結合を破壊する。このクエン酸ナトリウムベースの配合物および方法は、ルーチンのまたはスケールアップされたhPSCの培養および製造プロセスにおける特有の課題に対処するために特別に設計され、かつ開発される。hPSCは通常、多細胞クラスター/凝集体として継代され、hPSCを単一の細胞として継代することは、hPSCの低いクローニング効率と核型異常の高いリスクのために、回避されるべきである。この配合物および方法はさらに、hPSCの重要な品質パラメーター(例えば、生存率、収率、剥離後クラスターサイズ、継代能力、および表現型多能性の維持)に関して、hPSCの採取および継代のために最適化される。この配合物および方法は、低減した労働強度および処理時間でhPSC培養物を増殖させるためのルーチンの実験プラクティスとして、どのようなhPSC研究室でも使用することができる。例えば、この配合物および方法は、表面から細胞を得るための機械的掻き取りを必要とせず、また、細胞採取物は、培養物の剥離に用いた薬剤を除去するための洗浄および遠心分離の必要がない。この配合物および方法は、掻き取りを適用できない多層式細胞培養容器内で細胞が増殖している場合の大規模hPSC生産に特に利益をもたらす。この配合物および方法を用いて、多層式細胞培養容器内で増殖させたhPSCの90%超を、90%超の生存率で採取することが可能である。 さまざまな濃度の各種の非酵素的細胞剥離液をスクリーニングしたが、その際の一つの目的は、Versene(登録商標)EDTA採取/継代方法の単純さを維持しながら、多層培養容器から採取されるhESCの収率を向上させることであった。このスクリーニングには、例えば、0.1、0.55、1、3、および10mMのVersene(登録商標)EDTA溶液;0.1、0.55、1、3、および10mMのVersene(登録商標)ベースのエチレングリコール四酢酸(EGTA)溶液;ならびに1×クエン酸ナトリウム溶液(10×溶液:0.15Mクエン酸ナトリウム、1.35M塩化カリウム(KCl)をCa2+/Mg2+不含DPBSで1×に希釈したもの)が含まれていた。 これらの試薬(EDTA、EGTA、およびクエン酸ナトリウム)はすべてCa2+キレート剤であり、培養中の接着細胞を剥離するために歴史的に使用されてきた。前述したように、Versene(登録商標)EDTAはいくつかの研究室でhESCを採取/継代するためにルーチンに使用されている;(トリプシンと組み合わせた)EDTAとEGTAの両方は、2008年にスコットランドのRoslin研究所のThomsonらによって発表された研究においてhESCを継代するために使用された(Thomson et al. (2008), "Human Embryonic Stem Cells Passaged Using Enzymatic Methods Retain a Normal Karyotype and Express CD30", Cloning and Stem Cells, 10(1), 1-17)。 マウス胚線維芽細胞馴化培地(MEF-CM)で培養したhESCは、上記のものを含む溶液で次のように処理した:(1)培養液を除去する;(2) Ca2+/Mg2+不含緩衝液(例えば、DPBS)で1回洗浄する;(3)溶液中で室温にてインキュベートする;(4)溶液を除去する;および(5)表面に再付着する機会をコロニーにもたせるために、コロニーをMEF-CM中に0.5〜1分間浸漬する。その後、コロニーが表面から剥離され得るかどうかを確かめるために、コロニーに培養液をかけた。上記のインキュベーションステップ#3に関連して、4〜9分がVersene(登録商標)EDTAのための基準であることに留意されたい。それは一般に、血清または血清代替物を含有する未規定の培地(例えば、MEF-CM)中で増殖させた培養物の場合にはより長くなり、そしてmTeSR1(登録商標)などの血清不含規定培地中で増殖させた培養物の場合にはより短くなる。したがって、2〜12分のインキュベーションウィンドウが企図される。9分を超える処理は、多すぎる単一細胞の生成をもたらすことがある。2分未満の処理では時間枠が短すぎて、部分的な剥離になることがある。クエン酸ナトリウム溶液(1×)は、mTeSR1(登録商標)で増殖させた細胞を2〜3分で剥離し、そしてMEF-CMで増殖させた細胞を3〜4分で剥離することができる。 ステップ#5に関連して、このステップは、細胞が培養液中で表面に再付着するかどうかを確かめるために、最初の剥離液スクリーニング試験を実施した。6ウェルプレートなどの開放プラットフォームで増殖させた細胞を採取するためには、細胞剥離液を除去した直後に細胞に培養液をかけて表面から剥がした。しかし、多層式細胞培養容器では、剥離液を排出した後、まず培養液を容器に注いで、その培養液をすべての層で同じレベルにし、その後容器をタッピングして培養液中に細胞を剥ぎ取る。一態様では、培養液を注いで同じレベルにするには、10層容器で0.5〜1分ほどかかる。cGMPの設定では、さらに時間を要するかもしれない。培養物の一部はこれらのステップの間必然的に培養液中に浸漬されており、表面に再付着する可能性がある。先に述べたように、これはVersene(登録商標)EDTAの使用に伴う障害となっており、結果的に多層式細胞培養容器内の培養物の不完全な剥離/採取につながる。それゆえに、表面への細胞の再付着を評価するために、コロニーを培養液中に0.5〜1分間浸漬することが行われた。 図2に示されるように、この手順の後、Versene(登録商標)(0.55mM EDTA)で処理した培養物の85%は表面上に残存した(図2a)一方で、1×クエン酸ナトリウム(クエン酸ナトリウム配合物)で処理した培養物では、ほぼすべての細胞が表面から剥がれ落ちた(図2b)。処理後に表面に残存する培養物の割合の視覚的評価は、図2cにプロットされている。この実験を通して、クエン酸ナトリウム溶液は、驚くべきことに、Versene(登録商標)EDTAと比較して、hESC培養物を採取するための優れた試薬として同定されている。クエン酸ナトリウム配合物は、Versene(登録商標)EDTAよりも大きく細胞-表面結合を破壊し、クエン酸ナトリウム配合物で処理したhESCは、Versene(登録商標)EDTAまたはEGTA配合物で処理したhESCほど迅速かつ容易に培養液中で表面に再付着することがない。 多層式細胞培養容器からhPSCを採取するための潜在的な溶液として、2種の市販溶液を試験した。一方はMillipore社製の"PBS Based Enzyme-Free Cell Dissociation Solution"(PBSベースの酵素不含細胞分散溶液)であり、他方は"Hank's Based Enzyme-Free Cell Dissociation Solution"(Hank'sベースの酵素不含細胞分散溶液)であった。これらの溶液は両方ともEDTA、グリセロールおよびクエン酸ナトリウムを含有する。MEF-CMで培養したH9 hESCに対して使用した場合、両溶液とも細胞を効率よく剥離することができなかった。 クエン酸ナトリウム配合物がhESC培養物を継代するために使用できるかどうか(すなわち、クエン酸ナトリウム配合物で剥離されたhESCは新しい培養を開始するために新たな表面上にプレーティングすることができるかどうか)を確かめるために、さらなる実験を行った。一つの例示的な実験では、クエン酸ナトリウム配合物で処理したhESCは、MEF-CM中で6回、そしてmTeSR1(登録商標)中で3回、連続して継代された。図3は、MEF-CM中で6回にわたってクエン酸ナトリウム配合物により継代されたhESCが典型的なhESCの形態を保持することを示している。図4に示されるように、この培養物の核型は、クエン酸ナトリウム配合物による5継代の後において正常であると評価された。さらなる試験では、MEF-CM中での10継代、mTeSR1(登録商標)中での29継代、そしてStemPro(登録商標)中での25継代の後において正常な核型が確認されている。正常な核型は50継代を超えても存在するであろうと想定される。 2層セルスタックでのhESCの採取について、クエン酸ナトリウム配合物を試験した。このクエン酸ナトリウム採取物を、Versene(登録商標)EDTAを用いた採取物と比較した。図5は、採取後に表面に残存している細胞の画像を提供する。図5aおよび5bの培養物は両方ともVersene(登録商標)EDTAを用いて採取したものであるが、異なる作業者によって操作された(細胞を剥がすためにスタックのタッピングに加えられる強さが作業者によって異なるため)。タッピングがより強い作業者は全培養物の約70%を採取した一方で、タッピングが弱い作業者は培養物の約45%を採取しただけであった。しかし、採取のためにクエン酸ナトリウム配合物を用いた場合には、両方の作業者とも表面から全培養物の90%超を採取した(図5c)。各2層スタックから剥離された培養物の割合は、図5dにプロットされている。各容器から採取された細胞の数をカウントして、採取物の生存率を算出した(図5e)。Versene(登録商標)EDTAと比較して、1×クエン酸ナトリウム溶液を用いて採取した細胞のカウント数は、はるかに密な分布を有し(Versene(登録商標)EDTAでの2.64E8±5.1E7に対してクエン酸ナトリウムでの3.46E8±1.81E7)(図5e参照)、このことは、よりロバストで一貫性のある製造プロセスに寄与する。クエン酸ナトリウム配合物で採取されたhESC培養物の収量は、Versene(登録商標)EDTAで採取された培養物の収量よりも31%高かった。クエン酸ナトリウム配合物を用いた場合には、作業者による違いがより少なかった。その理由は、クエン酸ナトリウム配合物がVersene(登録商標)EDTAよりも多く細胞-表面結合を破壊し、かつ細胞を剥ぎ取るために要するタッピングの労力がはるかに少なかったためであり得る。 前記配合物および方法をさらに最適化するためのさらなる試験を実施した。一態様では、hESCを剥離するためのクエン酸ナトリウムの濃度の最適範囲は、0.1×〜3×(クエン酸ナトリウムとKClの濃度については表2参照)、またはそれより高かった。予想外に、より高いクエン酸ナトリウム濃度のクエン酸ナトリウム配合物は、より低い濃度よりも必ずしも迅速に細胞を剥離したり、またはより多くのコロニーを単一の細胞まで分散させることはなかった(図6b)。実際、MEF-CM中で増殖させたhESCで試験しているとき、より高濃度の(1×〜3×およびそれより高い)クエン酸ナトリウムは、hESCコロニーをシート全体として持ち上げる傾向があった。剥離されたhESC凝集塊のサイズは、処理時間(1〜11分を試験)よりもクエン酸ナトリウム配合物の希釈に左右された。このことは、長時間の処理(>9分)でhESCコロニーを望ましくない単一細胞に分散させるVersene(登録商標)EDTAに対して、クエン酸ナトリウム配合物の利点に追加される。mTeSR1(登録商標)で増殖させて剥離させたhESCの塊の大きさは、MEF-CMで増殖させたものよりも全体的に小さかった。剥離されたhESCのクラスター(凝集塊)のサイズに及ぼす細胞剥離配合物の影響がさらに検討された。以下に記載するように、配合物のオスモル濃度はクラスターのサイズに影響を与える。特定の態様では、10〜1000μmの凝集塊のサイズが好適である。別の態様では、40〜500μmの凝集塊サイズが好適である。クエン酸ナトリウム配合物によるhESCの処理についての作用時間ウィンドウは、Versene(登録商標)EDTAによるhESCの処理よりも広く、このことは、製品品質の一貫性が規制されかつ偏差が最小化されるべきである場合のcGMP準拠の製造に特に有益である。作用時間ウィンドウについては以下でさらに説明する。 本明細書に示される例示的な実験では、前記溶液は、Ca2+/Mg2+不含DPBS中に希釈されたクエン酸ナトリウムとKClを含んでいた。しかし、当然想定されるように、最適なオスモル濃度を有する配合物中の最適化された濃度の代替カルシウムキレート剤は魅力的な結果をもたらすだろう。同様に、KCl以外の塩を含有するクエン酸塩配合物も想定される。そうした塩として、例えば、NaCl、Na2HPO3、NaH2PO3、K2HPO3、KH2PO3などが挙げられる。 一態様において、クエン酸ナトリウムの濃度は0.15〜150mMの好ましい使用範囲を有する。MEF-CM(マウス胚線維芽細胞馴化培地)などの培養液で増殖させた細胞を採取するための一態様では、クエン酸ナトリウム濃度は1.0〜50mMの使用範囲を有する。別の態様では、図6に示すように、クエン酸ナトリウム濃度は1.5〜45mMの使用範囲を有する。一態様では、MEF-CMで増殖させた細胞を継代するためのクエン酸ナトリウム濃度は1.5〜15mMの使用範囲である。一態様では、mTeSR1(登録商標)などの培養液で増殖させた細胞を採取するためのクエン酸ナトリウム濃度は1.5〜30mMの使用範囲である。配合物中の賦形剤としては、限定するものではないが、Ca2+/Mg2+不含DPBSおよびKCl(1.35〜1350mM)が挙げられる。この配合物の使用オスモル濃度は31.1〜2050mOsmol/Lである。一態様では、その使用範囲は290〜1015mOsmol/Lである。別の態様では、その使用範囲は299〜781mOsmol/Lである。さらに別の態様では、その範囲は548〜781mOsmol/Lである。表2では、10×のクエン酸ナトリウム溶液は、水中に1350mMのKClおよび150mMのクエン酸ナトリウムを含有する。DPBS(Ca2+またはMg2+不含)中に10×溶液を希釈することによって希釈系列を作製した。 (表2)クエン酸ナトリウム溶液の配合物 スクリーニングされた細胞剥離液のオスモル濃度を測定した(表3)。クエン酸ナトリウム溶液は全般的に、すべてのVersene(登録商標)ベースのEDTAおよびEGTA溶液(図2でスクリーニングされた溶液)よりも高いオスモル濃度を有する。それは該溶液中の高濃度のKClおよび他の賦形剤に起因する可能性がある。クエン酸ナトリウム配合物の高いオスモル濃度は、本明細書では、該溶液の特有の細胞剥離挙動に寄与する一つの属性として確認され、これは以下でさらに説明される。表3は、各種溶液のオスモル濃度を示す。 (表3)非酵素的剥離液のオスモル濃度 hESC採取物を濃縮および洗浄するために、連続向流遠心分離技術を用いることができる。図7に示すように、hESC(MEF-CM中で増殖)採取物は、kSep(登録商標)で処理した後に生存率が10%低下するものの、5倍に濃縮される。kSep(登録商標)で処理されたhESCは、クラスターとして残存し、かつkSep(登録商標)前の新鮮な採取物と比較するとプレーティング効率が10%低下するものの、良好にプレーティングされる(図9)。製剤化されてM-1充填機でバイアル化されたhESCは、CryoStor10中にて効率的に凍結保存されて、90%超の生存細胞回収率および50%の解凍後プレーティング効率を有する(図8〜9)。 実施例11でさらに説明するように、一態様では、mTeSR1(登録商標)中で増殖させたhESCをTフラスコから多層式セルファクトリーへ拡大して継代するプロセスは、新規な非酵素的継代法とその後の連続向流遠心分離技術による後処理とを用いて最適化される。 別の態様では、MEF-CM中のhESC培養物は、Versene(登録商標)EDTAで継代して、6ウェルプレートからTフラスコへ、さらには多層式細胞培養容器へと拡大される。多層式セルファクトリーからの最終的な採取物をフローサイトメトリーで特性解析したところ、これらの細胞の90%超は、OCT4、SSEA4、Tra-1-60、およびTra-1-81を含む多能性マーカーを発現していた。最終的な細胞採取物は自動後処理の後で14倍超に濃縮されたが、細胞生存率はほんの2%低下したにすぎなかった。 処理時間および処理時間とクエン酸塩配合物の希釈との相関関係に関するさらなる試験を実施し、それを以下の表4でさらに規定する。図10および11は、処理時間の増加に伴う培養採取物の増加傾向に対するクエン酸ナトリウム配合物の希釈の効果を実証している。図10に示した試験は、MEF-CM中で増殖させたhESC培養物に対して実施したものであり、図11に示した試験は、mTeSR1(登録商標)中で増殖させたhESC培養物に対して実施したものである。 (表4) クエン酸ナトリウム配合物を用いて、さまざまな表面から細胞を採取することができると考えられ、こうした表面として、限定するものではないが、マトリゲル被覆表面、ゼラチンコーティング・MEFプレーティング表面、および/または既知組成の表面が含まれる。例を挙げると、例えば、合成プラスチックまたはペプチド結合表面(Corning SynthemaxおよびNunclon (Nunc) Vita表面)、特定の組換えまたは天然タンパク質(例:ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニンおよびコラーゲン)でコーティングされた表面などがある。hPSC用に広く利用されている表面が2つ存在する:MEF播種表面(ゼラチンでプレコーティングされた表面にマウス胚線維芽細胞が播種されている)、およびマトリゲル被覆表面(マトリゲルはマウス腫瘍由来の細胞外マトリックスである)。SynthemaxとNunc Vitaの両方は、市場で入手可能な規定表面であり、hPSCの培養のために使用できる表面として市販されている。クエン酸ナトリウム配合物は、例えば、限定するものではないが、MEF播種表面上でhPSCを培養するために用いられる標準培地、MEF-CM、mTeSR1(登録商標)およびStemPro(登録商標)を含めて、さまざまなタイプの培地中で増殖させたhPSCを採取するために使用することができる。実施例2(実施例2のすべての試験はmTeSR1(登録商標)中のhESC培養物に対して実施された)最適なクエン酸ナトリウム配合物の確定 細胞剥離を促進するクエン酸ナトリウムの能力に対するオスモル濃度、カリウムおよびナトリウムの比較効果 上記の1×クエン酸ナトリウム配合物は、DPBS中の15mMクエン酸ナトリウム、135mM KCl、pH7.31、および499mOsmol/Lである。細胞剥離を促進するクエン酸ナトリウム配合物の能力に対するオスモル濃度、KClの効果を調べるために、さらなる試験を行った。図12は、各種クエン酸ナトリウム溶液で処理された培養物におけるhESCの剥離パーセントを示す。これらの結果は、溶液のオスモル濃度とクエン酸ナトリウムの濃度が最適な細胞剥離を達成するための重要な要因であることを示している。さらに、ほぼ標準的なオスモル濃度では、クエン酸ナトリウム配合物へのカリウム(KCl)の添加がナトリウム(NaCl)の添加よりも高い剥離パーセントをもたらし(溶液#4を溶液#5と比較)、KClがNaClよりもこの配合物中の塩のより良い選択肢であり得ることを示唆している。理論によって限定されることはないが、この知見について考えられる1つの説明は、追加のナトリウム(Na+)がクエン酸ナトリウムの電気分解を阻害し、その結果としてCa2+をキレート化するクエン酸イオンの利用可能性を低下させることである。 細胞剥離を促進しかつ生存率を維持するクエン酸ナトリウムの能力に対するオスモル濃度の効果 hESC剥離を促進するクエン酸ナトリウムの能力に対するオスモル濃度の効果を調べるために試験を行った。クエン酸ナトリウムの濃度を一定に維持しつつKClの濃度を調整することによって、さまざまなオスモル濃度のクエン酸ナトリウム溶液/配合物を調製した(図13参照)。図14Aに示すように、すべての溶液で高い(およびほぼ同じ)生存率が観察されたが、最大の細胞採取は、299〜781mOsmol/Lのオスモル濃度を有するクエン酸ナトリウム溶液(15mMクエン酸塩)で細胞を5分間処理した後に達成された。大幅に低減した採取は、169mOsmol/Lのオスモル濃度と1016mOsmol/Lのオスモル濃度をもつクエン酸ナトリウム溶液を用いた場合に観察され、高い割合の培養物を採取することができる閾値が約299〜781mOsmol/Lにあることを示唆している。実際に、顕微鏡画像(図14B)は、クエン酸ナトリウムの169〜548mOsmol/L溶液に比して、781〜1016mOsmol/L溶液で処理した培養物から採取された細胞の実質的により大きなクラスターを明らかにした。剥離されたクラスターの画像を解析して、クラスターのサイズを定量化した。クラスターサイズの分布を図14Cに示す。画像およびサイズ分布プロットに示されるように、大きい細胞クラスターとして採取された培養物の割合は、オスモル濃度の増加とともに増加していた。169〜548mOsmol/L溶液に比して、781〜1016mOsmol/L溶液で処理した培養物から得られた剥離クラスターの測定サイズの大幅な増加が認められた(それぞれ、主として40〜150同径(equidiameter)サイズのクラスターに対して主として250〜900同径サイズのクラスター)。 細胞剥離および生存率に対するクエン酸ナトリウム濃度の効果 hESCの剥離と生存率に対するクエン酸塩濃度の効果を調べるために試験を行った。さまざまな濃度のクエン酸ナトリウム溶液を約265mOsmol/LおよびpH約7.2で調製した。図15Aに示すように、すべての溶液で高い(およびほぼ同じ)生存率が観察されたが、採取された細胞の割合は、約30〜45mMクエン酸ナトリウムまで増加する濃度とともに増加した。わずかに改善された採取が75mMクエン酸ナトリウムを用いて達成された。しかし、「シーティング採取物」(sheeting harvest)(細胞の大きいクラスターまたはシートとして剥離されたhESCコロニー)が発生する閾値は約30〜75mMクエン酸ナトリウムにあるように見えた。実際に、顕微鏡画像は、30〜75mMクエン酸ナトリウム溶液で処理した培養物から採取された細胞の実質的により大きなクラスターを明らかにした(図15B)。1.5〜15mMクエン酸ナトリウム溶液に比して、30〜75mMクエン酸ナトリウム溶液で処理した培養物から得られたクラスターの測定サイズにおいて、対応する増加が認められた(それぞれ、主として40〜150同径サイズのクラスターに対して、主として250〜900同径サイズのクラスター)(図15C)。 細胞剥離に対するEDTA、EGTAおよびクエン酸ナトリウムの比較効果 hESC剥離に対するキレート剤の比較効果を決定するために試験を行った。クエン酸塩、EDTAおよびEGTAのCa2+キレート化能力は、化学量論に基づいて、それぞれ1:1.5、1:1および1:1である。EDTAはMg2+および他の金属とも結合するのに対して、EGTAはCa2+の結合により特異的である。クエン酸ナトリウムの溶液(15mMクエン酸ナトリウム、400mOsmol/L(KClの添加により達成)、pH7.8)により達成された細胞剥離を、400mOsmol/LでpH7.8のEDTAとEGTAの22.5mMおよび45mM溶液により達成されたものと比較した。図16Aに示すように、22.5mMより高い濃度のEDTAとEGTAは、クエン酸ナトリウムと同じくらい効果的にhESCコロニーを剥離した。各種溶液で処理した培養物から得られた再分布クラスターの測定サイズは同様であった(主に40〜200同径サイズのクラスター)(図16B)。実施例3時間経過試験 Versene(登録商標)EDTA対クエン酸ナトリウム 良好な剥離パーセントおよびクラスターサイズ分布を提供する作用時間ウィンドウを決定するために試験を行った。上記試験での剥離は、細胞剥離配合物による5分間の処理後に評価した。本試験では、処理時間を20分まで延長し、剥離およびクラスターサイズをさまざまな時点(2、5、8、10、15および20分)で検査する。先に行った試験から適度なオスモル濃度およびpHの配合物を選択し、望ましい剥離パーセントおよび剥離後クラスターサイズ分布をもたらすと予想される配合物でhESC培養物を処理するための時間スパン(作用ウィンドウ)を決定する。図17の溶液で細胞培養物を2、5、8、10、15および20分間処理し、次いで細胞を剥ぎ取るために2回タッピングした。最適な作用ウィンドウを決定するために、各処理時点について、細胞剥離パーセントおよびクラスターサイズについて培養物を評価した。剥離された細胞の細胞生存率およびプレーティング効率は、5、10および20分の時点で評価した。図18Aは、各処理時点でのhESC剥離パーセントに対するVersene EDTAと各種クエン酸ナトリウム溶液の効果を示す。図18Bは、各処理時点でのクラスターサイズ分布に対するVersene(登録商標)EDTAと各種クエン酸ナトリウム溶液の効果を示す。図19は、5、10および20分の各処理時点で剥離された細胞のプレーティング効率に対するVersene(登録商標)EDTAと各種クエン酸ナトリウム溶液の効果を示す。 理論によって限定されるものではないが、この試験から得られた結果に基づいて、図20Aに示したものと同様の作用ウィンドウを確立することができ、かつ所望の細胞剥離パーセントおよびクラスターサイズ(同径)を達成するために適切なパラメーターを選択することができる。例えば、図20Bに示すように、作用ウィンドウを決定するために採用した基準は、(1)剥離される培養物の割合が70%を超えること、および(2)40〜500umクラスターとして剥離される培養物の割合が90%を超えることである。実験データが示すように、全般的に、剥離パーセントは処理時間の増加とともに増加し、クラスターサイズは処理時間の増加とともに減少する。これらのプロットに基づくと、hESC培養物をクエン酸塩配合物Dis2#3で3.5〜7分間(作用ウィンドウ)処理すると、>70%の培養物が主に(>90%)40〜500umクラスターとして剥離されるという結果になろう。他のクエン酸塩配合物およびVersene(登録商標)EDTAについて同一基準で決定された作用ウィンドウはより狭くなる。実際に、これらのプロットに基づいて、Versene(登録商標)EDTAで同じ基準を満たすためには、培養物を正確に10分間(0持続時間)処理する必要がある。製品特性の一貫性に影響を及ぼすことなく作用上の柔軟性を与える、より広い作用ウィンドウは、特にcGMP生産において、より望ましい。図19に基づくと、プレーティング効率は処理時間の増加とともに降下し、そのため10分より長い処理時間は望ましくない。したがって、クエン酸塩配合物Dis2#3を用いてhESCを剥離するための(高い剥離パーセント、望ましいクラスターサイズ範囲、および高いプレーティング効率に基づいた)最良の実施は5〜7分間の処理となり、Versene(登録商標)EDTAを用いる場合は10分間の処理となる。それらのそれぞれの最適な処理時間で、Versene(登録商標)EDTAはクエン酸ナトリウムよりも20%以上少ない細胞を採取した。 高濃度のEDTAおよびEGTA 各種クエン酸ナトリウム配合物およびVersene(登録商標)EDTAの作用ウィンドウを決定するために上で使用したのと同じ基本的アプローチに従って実験を行い、実施例2に記載した22.5mM Versene(登録商標)EDTA配合物および22.5mM EGTA配合物の作用ウィンドウとプレーティング効率を、Versene(登録商標)EDTAおよびクエン酸ナトリウム(配合物Dis2#3)と比較して決定した。作用ウィンドウは、「培養物の>70%が採取されかつ採取された細胞の>90%が40〜500μmクラスターの構成である」という基準に基づいて決定した。図21Aに示すように、22.5mMのEGTAおよびVersene(登録商標)EDTA配合物の作用ウィンドウの持続時間は、クエン酸塩配合物Dis2#3のそれに類似しており、Versene(登録商標)EDTAのそれよりもはるかに広い。22.5mMのEGTA配合物およびEDTA配合物の作用ウィンドウの開始時点は同じであり、かつクエン酸塩配合物Dis2#3のそれよりも早い。しかし、図21Bに示すように、22.5mMのEGTA配合物およびEDTA配合物で剥離されたhESCはうまく再プレーティングされず(5、15および20分間の処理の時点で調べた)、クエン酸ナトリウム(溶液Dis2#3)は採取後の細胞プレーティング効率の点で高濃度(22.5mM)のEGTAおよびEDTA配合物よりも実質的に優れていた(クエン酸塩配合物Dis2#3により正規化された、5分間の処理時点でのプレーティング効率をプロットしている)。 本明細書では、クエン酸ナトリウム配合物はhPSCを継代する上でEDTA含有およびEGTA含有配合物より優れていることが実証される。さらに、EDTAおよびEGTAに比してクエン酸ナトリウムの別の利点は、残りのクエン酸ナトリウムがEDTAまたはEGTAよりも細胞培養物にあまり有害な影響を与えない、ということである。(往々にしてクエン酸ナトリウムは種々の細胞型のさまざまな培地の通常の成分として使用される。)例えば、実施例6に見られるように、クエン酸ナトリウム配合溶液は細胞を処理した後に必ずしも除去する必要がない。 しかしながら、本明細書では、EDTAおよびEGTA、クエン酸ナトリウム以外の他のCa2+キレート剤、または種々のCa2+キレート剤の組み合わせを含有する配合物を含めて、さらなる継代/採取用配合物が企図される。細胞剥離に関連して、2つの要因(Ca2+キレート剤濃度およびオスモル濃度)が同定される。濃度が低すぎると、細胞とマトリックスの間の結合が効果的に破壊されず、その配合物は細胞を効率よく剥離することができない。濃度が高すぎる場合は、細胞間の結合が過度に破壊されて、剥離されるクラスターのサイズが小さくなり、かつ剥離されたクラスターは脆く、さらに処理したときに分散しやすい。 理論によって制限されるものではないが、高いオスモル濃度で引き起こされる細胞またはコロニーの収縮によって、特にコロニーの縁で細胞の剥離が生じるようになる。しかし、オスモル濃度が高すぎる場合には、細胞は損傷を受ける可能性がある。本明細書で示すように、オスモル濃度が高すぎると、細胞は表面から効果的に剥離されない。実施例4は、さらなる最適化に向けての試験を提供する。本明細書に開示した実験計画を用いることによって、種々のCa2+キレート剤を含有する他の細胞剥離/継代用配合物を開発することができ、そうした配合物も本発明の範囲内であると考えられる。実施例4長時間処理後の高いプレーティング効率に向けてのクエン酸ナトリウム配合物の最適化 クエン酸ナトリウム溶液での長時間処理後に剥離されたhESCクラスターの高いプレーティング効率を達成するために使用される最適なクエン酸ナトリウム配合物を決定するために、試験を行った。hESC培養物は、各種クエン酸ナトリウム濃度(1、5および10mM)およびオスモル濃度(400、500、600、700および800mOsmol/L;KClの濃度を調整することによって達成した)の溶液を用いて5、10、15および20分間処理した。示した処理の時点で、採取パーセント、クラスターサイズ、および再プレーティング効率を各クエン酸ナトリウム溶液について比較した。再プレーティング効率を定量化するために、表面から剥離された2×105個の生存細胞を、マトリゲルで被覆された6ウェルプレートの1つのウェルに再プレーティングし、付着した細胞を翌日採取してカウントした。再付着した細胞が1日以内でその集団を倍増すべく増殖したと仮定して、再プレーティング効率は、翌日採取された細胞の数を4×105で割ったものとして計算した。図28Aに示すように、1)クラスターサイズは処理時間の増加とともに小さくなる;2)クラスターサイズはクエン酸ナトリウム濃度の増加とともに小さくなる;および3)クラスターサイズはオスモル濃度の増加とともに大きくなる。これらの結果から、試験したすべての溶液と比較して、高いオスモル濃度(600〜700mOsmol/L)を有する低いクエン酸ナトリウム濃度(1mM)の溶液は、長時間処理後でさえも、良好な細胞剥離、大きなクラスターおよび高いプレーティング効率をもたらすことが示された(図28A〜C)。しかし、高いオスモル濃度(>700mOsmol/L)は、剥離時にhESCクラスターのロールアップを起こすように見え、こうしたことは再プレーティングされたコロニーの望ましくない形態とこれらのコロニーの中心部での細胞死または分化をもたらすことがある。実施例5ドライ継代(dry passaging)におけるクエン酸ナトリウムの使用 細胞剥離液による処理の間に細胞の損失が起こり得る。それは、培養物が処理時に該溶液中に浸漬され、そして培養物を培養液で剥離する前に該溶液が除去されるためである。この損失をなくすために、該溶液を添加して、処理の開始時にすぐに除去することができるかどうか、および培養物を培養物表面上の該溶液の残存物のみで剥離することができるかどうか(「ドライ継代」)を調べるために、試験を行った。提案する新しい手順を図22に示す。図22にも示したように、2つの処理時点(5分、10分)、2つのインキュベーション条件(室温、37℃のインキュベーター)を比較し、Versene(登録商標)EDTAとクエン酸塩配合物Dis2#3の両方を、このドライ継代法について試験した。クラスターサイズ分布および再プレーティングされた細胞の画像に基づいて、「ドライ継代」法はVersene(登録商標)EDTAとクエン酸塩配合物の両方に有効であり、この実験に基づいた最良の条件は室温での5分間のインキュベーションであることが判明した。「ドライ継代」は剥離液中の採取物の損失を回避するために採用することができる。高い剥離、望ましいクラスターサイズ分布および再プレーティング効率を得るために「ドライ継代」において適用するためのクエン酸塩配合物のさらなる最適化は当業者によって決定され得るが、1つの例示的な配合物はDis2#3である。実施例6リーブイン継代(leave-in passaging)におけるクエン酸ナトリウムの使用 剥離および継代の手順を簡素化し、かつ細胞剥離液の除去時の細胞の損失を避けるための別の代替アプローチとして、「リーブイン継代」法を評価した。図24は、「リーブイン継代」において用いられる方法論を示す。基本的には、培養物を細胞剥離液に一定の処理時間浸漬した後、その溶液を培養物から除去しない;その代わりに、該溶液を培養物中に残して、培養液で中和する。次に、細胞を渦運動によって表面から剥ぎ取り、その後新しい表面に播種する。細胞剥離液は最終的な細胞採取物中に残存し、後でその細胞採取物が新しい表面に播種されるときに、培養物の次の継代に移される。クエン酸塩は往々にしていくつかの細胞培養液の通常の成分として用いられることを考慮すると、残存するクエン酸塩が細胞培養物に有害な影響を及ぼすことはないはずである。このようなプロトコルは細胞剥離のためのクエン酸ナトリウム配合物の使いやすさとスケーラビリティの向上を提供する。例えば、該溶液を培養容器から取り出す必要がなく、また、細胞を剥ぎ取るために容器のタッピングを行うことがない。このプロトコルは小規模卓上培養プレートの培養フォーマットに適用することができる;それはまた、例えば、ロボット(例:自動セルファクトリーマニピュレーター)で処理する必要がある、10層または40層もの細胞培養容器で増殖させた細胞を採取する際にも適用することができる。 図24で説明した試験を、StemPro(登録商標)培地で増殖させたhESC培養物に対して実施した。この培養物を処理するのに、2種のクエン酸ナトリウム配合物、すなわち実施例4に記載の溶液#3および#13を、0.5mLおよび0.75mLの容量で用いた。図25は、2種のクエン酸ナトリウム配合物を使用するリーブイン継代を用いて達成された、剥離後生存細胞数および生存率パーセントを示す。図26は、2種のクエン酸ナトリウム配合物を使用するリーブイン継代を用いて達成された、剥離後のクラスターサイズ分布およびプレーティング効率を示す。データは、両方のクエン酸ナトリウム配合物がうまく作用し、同等の結果を与えたことを示している;完全な剥離は7〜10分以内に起こり、剥離後の細胞生存率は>95%であり、クラスターは主として大きく(20〜75%の剥離後細胞は>200μm同径のクラスターのフォーマットであった;<8%は<40μmであった)、剥離後のプレーティング効率は約80%と高かった。さらに、データはまた、0.5mLの細胞剥離クエン酸塩溶液が細胞を剥離するのに十分であり、剥離後hESCクラスターのサイズは0.75mLの溶液を使用した場合に比較的小さかったことを示している。実施例7間葉系幹細胞の継代 MSCの剥離および継代に対する、hESCの剥離について最適化されたクエン酸ナトリウム配合物の効果を評価するために試験を行った。4つの配合物を使用して比較した:Versene(登録商標)EDTA、クエン酸塩Dis2#3、クエン酸塩#3およびクエン酸塩#13(図27ではクエン酸塩2-3、3および13として示されている)。図27に示すように、クエン酸ナトリウム溶液#3は最適な結果を与えた。クエン酸塩#13によるMSCの10分間処理と、その後の容器のタッピングは、細胞の80%を剥離させるのに十分であり、かつ90%の剥離後生存率および他の3つの配合物と比較して最良の剥離後再プレーティングをもたらした。実施例8hESCの長期培養における細胞剥離・継代溶液としてのクエン酸ナトリウム配合物の評価 上記のクエン酸塩配合物は、最初に、閉鎖培養容器内で大規模に増殖させたhESCの採取および継代での適用について同定され、最適化された。細胞剥離液で処理した後で細胞を剥ぎ取るために、閉鎖培養容器内での細胞剥離プロセスをシミュレートするための実験において、培養容器をタッピング、旋回または振とうによってかき回した。hPSCの小規模卓上培養では、開放培養プラットフォーム、例えば6ウェルプレートまたはTフラスコがしばしば用いられ、細胞には接近可能であって、表1の「EDTA法」の項に記載したように、細胞は培養液の流れをかけることによって剥離される。小規模の卓上適用例でのクエン酸ナトリウム溶液の使用を評価するために、クエン酸塩溶液#3および#13を試験するための予備試験を6ウェルプレート内のhESC培養物で実施して、それらの性能をVersene(登録商標)EDTAと比較した。培養物をmTeSR1(登録商標)培地で増殖させ、配合物を用いて5〜8分間処理し、その後培養液をかけた(大規模の適用例では、より長い処理、約10分が必要であり得ることに留意されたい)。hESC培養物をいずれかの溶液で5分間処理し、その後ピペットで培養液をかけることはうまく機能し、95%の採取率および約70〜85%の再プレーティング効率を実現する。クエン酸塩溶液#13の再プレーティング効率は、Versene(登録商標)EDTAのそれよりも約15%高かった。 StemPro(登録商標)およびmTeSR1(登録商標)中での長期hESC培養を開始し、クエン酸塩配合物を用いて連続的に継代することによって50継代以上(約8ヶ月間)維持した。クエン酸ナトリウム溶液Dis2#3、#3および#13を評価し、クエン酸塩配合物との比較としてVersene(登録商標)EDTAをこの試験に含めた。図29に示すように、クエン酸塩溶液#13を用いて、StemPro(登録商標)培地で31回、mTeSR1(登録商標)で34回、それぞれ継代されたhESCは、OCT4、Sox2、Nanog、SSEA4、TRA-1-60およびTRA-1-81を含むhESCマーカーについて陽性に染色された。さらに、フローサイトメトリーでマーカーの発現を定量化した。クエン酸塩溶液を用いて、StemPro(登録商標)で36回、mTeSR1(登録商標)で30回、それぞれ継代されたhESCの80〜100%はOCT4、SSEA4、TRA-1-60およびTRA-1-81について陽性に染色され、陽性細胞の割合はhESCバンクから直接解凍された細胞(長期培養のための出発細胞)のそれに匹敵した。免疫細胞化学とフローサイトメトリーの両方からの特性解析結果は、クエン酸ナトリウム配合物を用いた長期継代がhESCの持続可能な培養または自己複製を支持することを示している。 これらのhESCの多能性を、分化能についてさらに評価した。図30に示すように、クエン酸塩溶液を用いて、StemPro(登録商標)で40回、mTeSR1(登録商標)で35回、それぞれ継代されたhESCは、胚様体(EB)を生成し、かつ3つすべての胚葉(内胚葉、中胚葉および外胚葉)に分化することができた。StemPro(登録商標)での長期hESC培養物の分化能を、免疫不全SCIDマウスにおけるこれらの細胞の奇形腫の発生によってさらに確認した(図31)。EBの分化と奇形腫の発生から得られた結果は、クエン酸塩溶液を用いて多数回にわたり長期継代されたhESCが依然として多能性であって、すべての種類の体細胞へと分化する能力を保持していることを証明した。 クエン酸塩溶液を用いて継代された長期hESC培養物のGバンディング核型の異常を調べた。StemPro(登録商標)培地で培養されたhESCの3つのサンプルは、クエン酸塩溶液#13を用いて10および25回にわたり継代された後で正常であると核型分析された;対照的に、hESCの3つのサンプルはVersene(登録商標)EDTAによる10継代後に正常であるのに対し、3つのサンプルのうちの1つはVersene(登録商標)EDTAによる25継代後に異常であり、かつ1つのサンプルは異常が現れつつあった。mTeSR1(登録商標)培地で培養されたhESCもまた、クエン酸塩溶液#13を用いて29回継代された後で正常であると核型分析された。 長期hESC培養物を継代するために用いた分割比は、mTeSR1(登録商標)とStemPro(登録商標)の両方において、1:15から1:40であった(すなわち、例えば、1ウェルから採取された細胞は15〜40の新たなウェルに分割することができる;hPSC培養との関連において、1:40は1:15よりも高い分割比とみなされる)。培養物は通常、分割後4日目または5日目でコンフルエンスに達した。細胞の継代に酵素処理と掻き取りが用いられる従来のhPSC培養では、分割比は一般的に1:2から1:6であり、培養物は通常5日目と7日目の間にコンフルエンスに達する。従来の継代法と比較して、本明細書に開示した継代法は培養物のはるかに速い増殖をもたらす。これは細胞の大規模製造に有利であるばかりでなく、卓上試験での実験間の待ち時間を短縮する。高い分割比と速い増殖に関連する1つの懸念は、異常核型の発生である。しかしながら、上述したように、mTeSR1(登録商標)とStemPro(登録商標)の両方の培養物は、継代溶液としてクエン酸ナトリウム配合物を用いた長期培養後に正常な核型を維持した。実施例9選択したクエン酸ナトリウム配合物の作用ウィンドウの決定 クエン酸塩溶液#13の作用ウィンドウを決定するために、実施例3に記載した時間経過試験を実施した。この試験における対照としてVersene(登録商標)EDTAを使用した。実験方法は実施例3の試験から若干変更した;採取パーセントは視覚的評価の代わりに細胞数に基づいて定量化した。Versene(登録商標)EDTAと比較して、クエン酸ナトリウム溶液#13はより短い処理時間でより多くの細胞を採取した。「クラスターサイズ」プロットに従うと、クエン酸塩溶液を使用した場合に「>200um」カテゴリーに入る細胞のより大きな集団が存在した。その結果、クエン酸塩溶液#13はVersene(登録商標)EDTAよりも広い作用ウィンドウ(8〜11.5分)を有していた。実際、Verseneの「作用ウィンドウ」は、両方の要件(「採取%」>70%、および「40umよりも大きいクラスター」>90%)を満たすための時間枠の重複を提示しなかった。クエン酸塩#13で剥離された細胞は、Versene(登録商標)EDTAで剥離されたものに匹敵するプレーティング効率を有していた(データは示さず)。全体的に、クエン酸ナトリウム溶液#13はVersene(登録商標)EDTAよりも優れている。実施例10クエン酸ナトリウム配合物を用いたヒト人工多能性幹細胞(iPSC)と複数のヒト胚性幹細胞株の剥離および継代 この実施例10では、(H9に加えて)他のhESC株およびヒトiPSCでクエン酸ナトリウム配合物を試験した。mTeSR1(登録商標)で増殖させたH7およびH14 hESCを、クエン酸ナトリウム溶液#13を用いて継代した。他の試験で用いたH9培養物とは異なり、H7およびH14の出発培養物は多くの間質細胞または分化した細胞を含んでいた。クエン酸塩溶液は主に未分化のhESCを選択的に剥離・継代し、そして間質細胞と分化細胞を表面上に残した。該溶液で3回連続して継代した後、H7およびH14培養物の形態は両方とも大いに改善されて、明らかな間質細胞または分化細胞は観察されなかった。したがって、クエン酸ナトリウム配合物はさまざまなhESC株を剥離・継代するために使用できることになる。 クエン酸塩溶液#13は、iPSCを剥離・継代するために使用することができる。該細胞をMEFフィーダーからマトリゲル上に移行させた場合でも、剥離された細胞を再プレーティングしたときに付着は良好であった;そしてMEFフィーダーの大半は剥離されなかったので、その後、新しいマトリゲル表面に移されなかった。この実験では、ヒトiPSCもまた、1代目の5日間で規定培地(StemPro(登録商標))に徐々に適合した。したがって、クエン酸塩配合物は、樹立された培養物を継代し維持するためのさまざまなヒトiPSC株に適用することができることになる。該配合物はさらに、hESCおよびヒトiPSCを含むhPSC細胞を、MEFフィーダーから、マトリゲルのようなフィーダーフリーの表面へ、(掻き取りを含む機械的継代法と比較して)残存するMEFをきれいに取り除く時間を短縮しつつ、移すために使用することができる。ヒトiPSC作製の初期段階でのクエン酸塩配合物の適用は、フィーダーフリーおよび/または規定された条件で培養物を樹立するプロセスをスピードアップするのに役立ち得る。実施例11クエン酸ナトリウム溶液を用いたhESCの大規模培養および後処理 クエン酸ナトリウム配合物を用いて2層の細胞培養容器(例えば、Corning社製のセルスタック)からhESCを採取した実施例1に記載の試験は、MEF-CM中で培養した細胞で実施されたものであり;該配合物は、DPBS中の15mMクエン酸ナトリウム、135mM KClから成っていた。本実施例では、mTeSR1(登録商標)中で増殖させたhESCをクエン酸塩溶液#13を用いて採取した試験について説明する。培養を6ウェルプレートから多層セルファクトリーにスケールアップする前に、より大きな培養容器(すなわち、6ウェルプレートに代わるT225フラスコ)からのhESCの剥離についてクエン酸塩溶液#3および#13を評価し、Versene(登録商標)EDTAと比較した。2種のhESC株(H9およびH14)を用いた。これらの培養物をクエン酸塩溶液で10分間処理し、次に培養液中で2分間インキュベートしてから、フラスコをタッピングして細胞を剥ぎ取った。結果は、両方の溶液が大規模な採取に適しており、Versene(登録商標)EDTAよりも高い採取をもたらす(例えば、H9細胞ではVersene(登録商標)EDTAよりも30%高く、H14細胞ではVersene(登録商標)EDTAよりも15〜20%高い)ことを示した;両方の細胞株について両溶液とVersene(登録商標)EDTAの間で同様のクラスターサイズ分布(主に40〜200μm)が見られた(データは示さず)。H14細胞の剥離について、溶液#13は溶液#3よりもわずかに優れているように見えた(#13では5%多い採取およびより大きなクラスター)。したがって、hESC培養を多層式細胞培養容器にスケールアップする試験では、クエン酸塩溶液#13を使用した。 hESCを得るために用いた方法にかかわらず、最終的な採取物中の細胞を濃縮し精製するためには、適合性の後処理技術もまた必要とされる。先に述べたように、開放遠心分離技術を用いる現在の治療用細胞の容積縮小・精製技術は、時間がかかり、高いプロセスリスクを導入し、かつ大容量バッチでは桁違いの費用がかかる。KSepで処理した後、クエン酸ナトリウム溶液#13により採取されたhESCクラスターのサイズ分布は有意に変化せず、このことは、KSep処理がクラスターを有意に破壊しないことを示している。KSep後の細胞の生存率は80%超と高く、プレーティング効率は60%を超え、KSep前のプレーティング効率より13%低いにすぎなかった。1日目の再プレーティングした培養物の画像もまた、クエン酸塩溶液を用いて採取されたhESCクラスターがKSep処理によって単一の細胞またはより小さいクラスターに完全には分散されなかったことを示した。全体的に、クエン酸ナトリウム溶液#13は頑強なクラスターを生成することができ、こうしたクラスターはkSep(登録商標)、自動バイアル化、およびコントロールレートフリーザーによる凍結保存を生き延び、高い生存率とプレーティング効率を保持し、かつスケールアップ後に正常な核型を提示する。 以上、本発明のいくつかの態様を説明してきたが、前述は単なる例示であって限定的なものではなく、例としてのみ提示されたことが、当業者には明らかであろう。多くの変更および他の態様は、当技術分野で通常の技術を有する者の範囲内であって、本発明およびその等価物の範囲内に入るものと考えられる。当然ながら、本発明に対する改変が当業者には容易に明らかであり、本発明はそうした代替物を含むことが意図される。さらに、多数の変更が当業者には容易に想起されるので、例示されかつ説明された正確な構成および操作に本発明を限定することは望ましくなく、したがって、本発明の範囲内に入るあらゆる適切な変更および等価物を行使することができる。 ヒト多能性幹細胞またはヒト間葉系幹細胞の採取およびその後の継代のための配合物であって、約0.15〜150ミリモル/リットルの濃度のクエン酸ナトリウム、塩、および任意でリン酸緩衝生理食塩水溶液を含み、約150〜1500ミリオスモル/リットルのオスモル濃度を有する、配合物。 前記オスモル濃度が約500〜700ミリオスモル/リットルである、請求項1記載の配合物。 前記ヒト多能性幹細胞が、胚性幹細胞および人工多能性幹細胞からなる群より選択される、請求項1記載の配合物。 前記クエン酸ナトリウムが約1〜30ミリモル/リットルの濃度である、請求項1記載の配合物。 前記クエン酸ナトリウムが約1〜15ミリモル/リットルの濃度である、請求項1記載の配合物。 前記塩が、NaCl、KCl、Na2HPO3、NaH2PO3、K2HPO3、KH2PO3、およびNaHCO3からなる群より選択される、請求項1記載の配合物。 前記塩がKClであり、KClが約1.35〜1350ミリモル/リットルの濃度である、請求項6記載の配合物。 KClが約203〜316ミリモル/リットルの濃度である、請求項7記載の配合物。 前記オスモル濃度が約418〜570ミリオスモル/リットルである、請求項1記載の配合物。 重炭酸塩、リン酸塩、エタノールアミン、トリエタノールアミン、またはトロメタモールでpH緩衝されている、請求項1記載の配合物。 約7〜8のpHを有する、請求項1記載の配合物。 前記リン酸緩衝生理食塩水溶液が、Ca2+/Mg2+不含のダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)である、請求項1記載の配合物。 約150〜1500ミリオスモル/リットルのオスモル濃度および約0.15〜150ミリモル/リットルのクエン酸ナトリウム濃度を有するように、クエン酸ナトリウムおよび少なくとも1種の塩を液体と混合する段階を含む、ヒト多能性幹細胞の採取およびその後の継代のための配合物の製造方法。 ヒト多能性幹細胞(hPSC)の採取およびその後の継代のための方法であって、 hPSCを、細胞培養プレートまたは容器内において請求項1記載の配合物中で約2〜20分間インキュベートする段階を含み、 該hPSCが、約85〜100%の細胞生存率を有するクラスターとして該細胞培養プレートまたは容器から剥離され、平均クラスターサイズが約10〜1000μmである、方法。 前記細胞培養プレートまたは容器が、ペトリ皿、マルチウェル細胞培養プレート、積層細胞培養装置、および細胞培養ファクトリーからなる群より選択される、請求項14記載の方法。 前記平均クラスターサイズが約40〜500μmである、請求項14記載の方法。 連続向流遠心分離技術、製剤化、自動バイアル化、および凍結保存からなる群より選択されるクラスターの後処理をさらに含む、請求項14記載の方法。 以下の段階を含む、ヒト多能性幹細胞の採取およびその後の継代のための細胞剥離液を最適化する方法: 複数の細胞剥離液を作製する段階であって、 該細胞剥離液のそれぞれが少なくとも1種のCa2+キレート剤を各種濃度で含み、 該細胞剥離液のそれぞれが各種オスモル濃度を有する、 段階、 所与の処理時間で剥離された培養物の割合および平均クラスターサイズを決定するために該複数の細胞剥離液のそれぞれについて試験を行う段階、ならびに 該複数の細胞剥離液から好ましい細胞剥離液を選択する段階。 請求項18記載の方法によって得られる細胞剥離液。 hPSCの採取およびその後の継代のための方法であって、 hPSCを、請求項18記載の細胞剥離液を用いて1:10から1:60の分割比で継代する段階を含み、 培養物が分割後7日以内にコンフルエンスに達する、方法。 以下の段階を含む、ヒト多能性幹細胞(hPSC)の採取およびその後の継代のための方法: hPSCを培養液中にプレーティングする段階、 使用済み培養液を吸引する段階、 DPBSで洗浄する段階、 請求項1記載の配合物を添加する段階、 請求項1記載の配合物を除去する段階、 インキュベートする段階、 培養液を加える段階、および 剥離されたクラスターを収集する段階。 請求項1記載の配合物が除去されない、請求項14記載の方法。 細胞培養容器から細胞を取り出すための酵素の使用および/または掻き取りなしでのヒト多能性幹細胞の採取およびその後の継代のための配合物および方法が開示される。前記配合物および方法は、多層式細胞培養容器を含む種々の細胞培養容器の表面から大きなクラスターとして細胞を採取することを可能にする。さらに、前記配合物および方法は、その後の継代用に採取された細胞の高い収率および高い採取後細胞生存率を提供する。前記方法に従って前記配合物により継代された多能性幹細胞は、未分化のままであって、典型的な幹細胞マーカーを発現する一方で、同時に、それらは分化能を保持し、多数回の採取および継代の後でさえも、3つすべての胚葉の細胞に分化しかつ奇形腫を形成することができる。こうしたhPSCはまた、前記配合物を用いて長期間継代した後に、正常な核型を維持する。


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