タイトル: | 公表特許公報(A)_トリスルフィド結合を防止および除去する方法 |
出願番号: | 2014510512 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C12P 21/08,C12N 5/10,C12N 15/09 |
シアサガール, ラッシュミ ロヒット ギルバート, アラン JP 2014513543 公表特許公報(A) 20140605 2014510512 20120511 トリスルフィド結合を防止および除去する方法 バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド 592221528 山本 秀策 100078282 森下 夏樹 100113413 シアサガール, ラッシュミ ロヒット ギルバート, アラン US 61/485,973 20110513 US 61/617,529 20120329 C12P 21/08 20060101AFI20140509BHJP C12N 5/10 20060101ALI20140509BHJP C12N 15/09 20060101ALI20140509BHJP JPC12P21/08C12N5/00 102C12N15/00 A AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA US2012037610 20120511 WO2012158551 20121122 59 20131202 4B024 4B064 4B065 4B024AA20 4B024BA53 4B024CA04 4B024DA02 4B024HA03 4B024HA11 4B064AG27 4B064CA10 4B064CA19 4B064CD04 4B064CD07 4B064DA20 4B065AA90X 4B065AB01 4B065BA01 4B065BB04 4B065BB08 4B065BB19 4B065CA25 4B065CA60 発明の背景 本発明は、タンパク質生成中のタンパク質中のトリスルフィド結合の形成を防止および排除する方法に関する。 組み換えタンパク質、特にモノクローナル抗体(mAb)は、広範囲の疾患の処置に使用される治療化合物の重要な類となった。バイオテクノロジーの分野における近年の成功は、そのようなタンパク質を大量に生成する能力を改善した。しかしながら、生成物の広範囲の特性決定は、タンパク質が著しい不均一性に曝されることを実証している。例えば、分子不均一性は、酸化、アミド分解、および糖化等の化学的に誘導された修飾、ならびにタンパク質分解成熟、タンパク質折り畳み、グリコシル化、リン酸化、およびジスルフィド結合形成等の翻訳後の修飾から生じ得る。分子不均一性は、治療生成物が数々の高度な分析技術により広範囲に特性決定され、生成物の品質および一貫性を確実とする許容可能な標準に適合しなければならないため、望ましくない。 抗体(または免疫グロブリン)は、大型の複数鎖分子であることから、特にそのような構造的不均一性に曝される。例えば、IgG抗体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち2つの軽鎖ポリペプチド(L)および2つの重鎖ポリペプチド(H)で構成される。4つの鎖は、典型的には、重鎖および軽鎖中に存在するシステイン残基間に形成するジスルフィド結合により、「Y」配置で連結される。これらのジスルフィド結合は、天然H2L2四量体の全体構造を支配する。全体的に、IgG1抗体は、H鎖と結合する2つのヒンジ領域ジスルフィド、および各重鎖HとL鎖との間の1つのジスルフィド結合を含む、4つの鎖間ジスルフィド結合を含有する。さらに、12個の鎖内ジスルフィド結合が、分子内に存在するそれぞれの残りのシステイン残渣を伴い得る。不完全ジスルフィド結合形成、または、酸化もしくはベータ脱離を介した結合の切断に続くジスルフィドスクランブリングはすべて、抗体不均一性の潜在的な源である。さらに、さらなる種類の修飾、すなわち、ヒトIgG2抗体の鎖間ヒンジ領域結合内のトリスルフィド(−CH2−S−S−S−CH2−)結合形成が、近年報告された。Pristatsky et al.,Anal.Chem.81:6148(2009)を参照されたい。 トリスルフィド結合は、以前に、スーパーオキシドジスムターゼ(Okado−Matsumoto et al.,Free Radical Bio.Med.41:1837(2006))、インターロイキン−6の切断形態(Breton et al.,J.Chromatog.709:135(1995))、および細菌で発現されたヒト成長ホルモン(hGH)(Canova−Davis et al.,Anal.Chem.68:4044(1996))において検出されている。hGHの場合、トリスルフィド形成は、発酵プロセスの間に放出されるH2Sにより促進されると推測された。特許文献1(国際公開第96/02570号)を参照されたい。この仮説と一致して、hGHのトリスルフィド含量は、溶液中のH2Sへの暴露により増加した。特許文献2(米国特許第7,232,894号)を参照されたい。さらに、生物反応器材料または細菌溶解物を不活性ガスに暴露すると、明らかに系からH2Sを除去することにより、トリスルフィド形成が阻害された。特許文献3(国際公開第2006/069940号)を参照されたい。 細菌からの精製中に生成されたhGH中のトリスルフィドのレベルに影響する条件は、以前に報告されている。例えば、アルカリ金属塩の存在は、下流のタンパク質処理中のトリスルフィド結合の増加を阻害することが報告されている。特許文献4(米国特許第7,232,894号)を参照されたい。さらに、溶液中のL−システインを含む還元−酸化(REDOX)化合物によるhGHの処理は、トリスルフィド結合をジスルフィド結合に変換することが見出された。国際公開第94/24157号を参照されたい。例えば、溶液中の20倍モル比のL−システインによる精製IgG2の処理は、分析試験のための試料調製中に、ヒンジ領域トリスルフィド結合をジスルフィドに変換することが見出された。Pristatsky et al.,Anal.Chem.81:6148(2009)を参照されたい。 残念ながら、溶液中のシステインへの暴露によるトリスルフィドの除去は、特に大量処理において、いくつかの欠点を有する。例えば、大量のシステインが必要である。また、この方法は、トリスルフィド結合が除去された後に、試料からシステインを除去する別個のステップを必要とする。さらに、溶液中のシステインへの暴露によるトリスルフィド結合の除去は、望ましくないジスルフィド結合の形成による凝集を促進し得る。したがって、トリスルフィド結合を低減するためのこれまでの方法の制限に対応するために、本明細書に記載の方法は、タンパク質における(例えば、抗体等における)、そのようなタンパク質の製造において使用される生成および精製手順の間のトリスルフィド結合の形成を防止および排除するための、効率的な改善された手段を提供する。国際公開第96/02570号米国特許第7,232,894号明細書国際公開第2006/069940号米国特許第7,232,894号明細書本発明は、抗体等のタンパク質中のトリスルフィド結合を防止および排除する方法に関する。一実施形態において、タンパク質中のトリスルフィド結合は、クロマトグラフィー精製手順の一部としてジスルフィド結合に変換される。別の実施形態において、タンパク質中のトリスルフィド結合の形成は、そのようなタンパク質の細胞培養生成中に、本明細書に記載の方法を実行することにより阻害される。熱誘導フラグメント化によるIgG1 mAbトリスルフィド含量の間接的評価。試料は、非還元キャピラリー電気泳動法(CE−SDSアッセイ)により加熱および分析された。各電気泳動図において、主要ピークは無傷H2L2四量体(上の概略図および矢印により示される)に対応し、単一の最も豊富な不純物を表す隣接ピークは、1つの軽鎖が欠落した種(HHL種、下の概略図および矢印により示される)に一致する移動パターンを有する。全ピーク面積のパーセントは、無傷H2L2四量体およびHHL種のそれぞれに対して示されている。(A)13.1%H−Lトリスルフィドを含有するIgG1 mAb−A(ペプチドマッピング分析により決定されたトリスルフィドパーセント)。(B)IgG1 mAb−A−LT−ペプチドマッピングによりトリスルフィドが検出不可能であったmAb−Aの代替の調製物。トリスルフィドレベルに対する硫化水素(mM)の効果を示す棒グラフ。試料は、様々な時間にわたり様々な濃度の硫化水素(mM)に暴露された培養物から採取された。試料は、タンパク質Aを使用して精製され、トリスルフィド結合のパーセンテージを決定するためにペプチドマッピング分析に供された。棒の高さは、重鎖と軽鎖との間に少なくとも1つのトリスルフィド結合を有する抗体の平均パーセンテージを表す。トリスルフィドレベルに対するシステイン濃度の効果を示す棒グラフ。試料は、追加的なシステインを供給した、または供給しない細胞培養物から採取された(すなわち、完全供給+全アミノ酸追加+追加的Cys、完全供給+追加的CysおよびMet、完全供給+追加的Metのみ)。試料は、タンパク質Aを使用して精製され、存在するトリスルフィド結合のパーセンテージを決定するためにペプチドマッピング分析に供された。棒の高さは、重鎖と軽鎖との間に少なくとも1つのトリスルフィド結合を含有する抗体の平均パーセンテージを表す。ヒトIgG抗体におけるジスルフィド結合性の概略図。(A)IgG1、(B)IgG2、(C)IgG3、および(D)IgG4。Cys残基は、配列中のその位置に基づいて付番されており、「1」は、N−末端に最も近いCys残基である。mAb1の軽鎖および重鎖の5番目のCys残基を接続するジスルフィドおよびトリスルフィド結合Lys−Cペプチドクラスタを示す、抽出イオンクロマトグラム(EIC)およびUVトレース。(A−I)トリスルフィド結合PepLL12/PepHL13のEIC、(A−II)ジスルフィド結合PepLL12/PepHL13のEIC、(A−III)214nmでのUVプロファイル。各パネルに示される数字は、積分されたピーク面積である。(B)LC5−HC5結合において7.8%トリスルフィドを含有する様々な量のmAb2−Dを注入した、mAb2試料中のLC5−HC5結合におけるトリスルフィドの検出量のプロット。(C)集中的Lys−Cペプチドマッピング法の再現性を示すプロット。トリスルフィドは、ラット血清中、インビトロでは安定であるが、インビボでは急速にジスルフィドに変換される。注入された抗体調製物におけるトリスルフィド形成の比較。1.8%トリスルフィド含量を含有する精製抗体を、細胞の存在下、または非存在下で培養物中に注入した。細胞を含有しない培養物において、トリスルフィド形成が最も高かった(約11%)。培養物に細胞を添加すると、トリスルフィド形成が減少した。硫化水素の放出に対する異なる培地添加物の効果。ピルビン酸塩、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、DL−グリセルアルデヒド、およびグリオキシル酸は、硫化水素を減少させる。システインおよびグルコースまたはシステインおよびアミノ酸を含む溶液中での、硫化水素に対するピルビン酸塩の効果。aa#1、aa#2、およびaa#3は、供給液中に存在するアミノ酸のサブグループを表す。様々な培地中での硫化水素に対するピルビン酸塩の効果。すべてのシステイン濃度は、供給液中のシステイン濃度に正規化された。イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)およびダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)は、一般的な細胞培養基である。I.定義 「1つの(aまたはan)」の実体という用語は、その実体の1つ以上を指し、例えば、「1つの抗体」または「1つのタンパク質」は、それぞれ、1つ以上の抗体またはタンパク質分子を表すと理解されることに留意されたい。したがって、「1つの(a)(またはan)」、「1つ以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書において、同義的に使用され得る。本明細書で使用する際、「ポリペプチド」という用語は、単数の「ポリペプチド」だけでなく複数の「ポリペプチド」も包含することを意図し、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)により直線的に結合した単量体(アミノ酸)で構成された分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖(複数を含む)を指し、具体的な長さの生成物を示さない。同様に、「タンパク質」という用語は、2つ以上のポリペプチドの任意の鎖(複数を含む)を指す。したがって、抗体は、複数のポリペプチドで構成されているとしても、「1つのタンパク質」と呼ぶことができる(例えば、IgG抗体は、2つの重鎖ポリペプチドおよび2つの軽鎖ポリペプチドを含む)。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「アミノ酸鎖」、または2つ以上のアミノ酸の鎖(複数を含む)を指すように使用される他の任意の用語が「タンパク質」または「ポリペプチド」の定義に含まれ、「タンパク質」または「ポリペプチド」という用語は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはそれと同義的に使用され得る。したがって、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、複数のポリペプチドを包含するため、これらの用語は、抗体等のポリペプチド多量体を包含する。 「ポリペプチド」という用語はまた、グリコシル化(例えば、N−アセチルグルコサミン、ガラクトース、またはシアル酸部分による修飾)、ペグ化(すなわち、ポリエチレングリコールの共有結合)アセチル化、リン酸化、アミド化、糖化(例えば、デキストラン修飾)、既知の保護基/封鎖基による誘導体化、タンパク質分解による切断、または非自然発生アミノ酸による修飾を制限なく含む、ポリペプチドの発現後の修飾生成物を指すように意図される。ポリペプチドは、天然の生物源から得ることができ、または、組み換え技術により生成することができるが、必ずしも特定の核酸配列から翻訳されるとは限らない。それは、化学合成を含む任意の様式で生成され得る。 ポリペプチドは、定義された三次元構造を有することができるが、それらは必ずしもそのような構造を有するとは限らない。定義された三次元構造を有するポリペプチドは、折り畳まれていると呼ばれ、定義された三次元構造を有さないが多数の異なる立体構造をとることができるポリペプチドは、折り畳まれていないと呼ばれる。本明細書で使用する際、糖タンパク質という用語は、アミノ酸残基、例えば、セリン残基またはアスパラギン残基の酸素含有または窒素含有側鎖を介してタンパク質に結合する少なくとも1つの炭水化物部分に結合したタンパク質を指す。 「単離された」ポリペプチドまたはそのフラグメント、変異体もしくは誘導体とは、その自然環境にないポリペプチドを意図する。具体的な精製レベルは必要ない。例えば、単離されたポリペプチドは、その天然または自然環境から除去することができる。宿主細胞内に発現した組み換えにより生成されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の好適な技術により分離された、分画化された、または部分的にもしくは実質的に精製された天然または組み替えポリペプチドと同様に、本発明の目的において単離されたとみなされる。 また、本発明のポリペプチドには、上述のポリペプチドのフラグメント、誘導体、類似体、または変異体、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。「フラグメント」、「変異体」、「誘導体」および「類似体」という用語は、本発明の抗体または抗体ポリペプチドに関する場合、対応する天然抗体またはポリペプチドの抗原結合特性の少なくともいくつかを保持する任意のポリペプチドを含む。本発明のポリペプチドのフラグメントは、本明細書の別の箇所で議論される特定の抗体フラグメントに加えて、タンパク質分解フラグメントおよび欠損フラグメントを含む。本発明の抗体および抗体ポリペプチドの変異体は、上述のようなフラグメントを含み、また、アミノ酸置換、欠損、または挿入による改変アミノ酸配列を有するポリペプチドも含む。変異体は、自然発生であっても、または非自然発生であってもよい。非自然発生の変異体は、当該技術分野において既知の突然変異誘発法を使用して生成することができる。変異体ポリペプチドは、保存的または非保存的アミノ酸置換、欠損、または追加を含み得る。本発明の抗体および抗体ポリペプチドの誘導体は、天然のポリペプチドでは認められない追加機能を呈するように改変されたポリペプチドである。その例には、融合タンパク質が含まれる。変異体ポリペプチドはまた、本明細書において、「ポリペプチド類似体」とも呼ばれ得る。本明細書で使用する際、抗体または抗体ポリペプチドの「誘導体」は、官能性側鎖の反応により化学的に誘導体化された1つ以上の残基を有する対象ポリペプチドを指す。また、「誘導体」には、20個の標準アミノ酸の1つ以上の自然発生アミノ酸誘導体を含有するそれらのペプチドが含まれる。例えば、プロリンの代わりに4−ヒドロキシプロリンが置換されてもよく、リシンの代わりに5−ヒドロキシリシンが置換されてもよく、ヒスチジンの代わりに3−メチルヒスチジンが置換されてもよく、セリンの代わりにホモセリンが置換されてもよく、またリシンの代わりにオルニチンが置換されてもよい。 哺乳動物細胞により分泌されるタンパク質は、粗面小胞体にわたる成長タンパク質鎖の輸送が開始されると、成熟タンパク質から切断されるシグナルペプチドまたは分泌リーダー配列を有し得る。脊椎動物細胞により分泌されたポリペプチドは、完全または「全長」ポリペプチドから切断されてポリペプチドの分泌または「成熟」形態を生成する、ポリペプチドのN−末端に融合したシグナルペプチドを有することができる。ある特定の実施形態において、天然シグナルペプチド、例えば、免疫グロブリン重鎖または軽鎖シグナルペプチド、または、動作可能に関連付けられるポリペプチドの分泌を方向付ける能力を保持するその配列の官能性誘導体が使用される。代替として、異種哺乳動物シグナルペプチド、またはその官能性誘導体が使用され得る。例えば、野生型リーダー配列は、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)またはマウスβ−グルクロニダーゼのリーダー配列と置換され得る。 本発明の方法は、抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体の使用を含む。自然発生抗体等のフルサイズの抗体に具体的に言及しない限り、「抗体」という用語は、フルサイズの抗体、およびそのような抗体の抗原結合フラグメント、変異体、類似体、または誘導体、例えば、自然発生抗体または免疫グロブリン分子または操作された抗体分子または抗体分子と同じような様式で抗原に結合するフラグメントを包含する。 「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、本明細書において同義的に使用される。抗体または免疫グロブリンは、少なくとも重鎖の可変ドメインを含み、通常少なくとも重鎖および軽鎖の可変ドメインを含む。脊椎動物系の基本的免疫グロブリン構造は、比較的よく理解されている。例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)を参照されたい。 「免疫グロブリン」という用語は、生化学的に区別することができる様々な広範なクラスのポリペプチドを含む。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類され、その中にいくつかのサブクラスを有する(例えば、γ1〜γ4)。抗体の「クラス」をそれぞれIgG、IgM、IgA、IgG、またはIgEとして決定するのがこの鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラス(イソ型)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1等は、よく特徴付けられており、機能分化を付与することが既知である。これらのクラスおよびイソ型のそれぞれの修飾された形は、本開示を考慮すれば当業者には容易に識別可能であり、したがって、本発明の範囲内である。すべての免疫グロブリンクラスが、明らかに本明細書に記載の範囲内であるが、以下の説明は概してIgGクラスの免疫グロブリン分子を対象とする。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量約23,000ダルトンの2つの同一の軽鎖ポリペプチドと、分子量53,000〜70,000の2つの同一の重鎖ポリペプチドとを含む。4つの鎖は、典型的にはジスルフィド結合により「Y」配置で連結され、軽鎖は、「Y」の口から開始して可変領域にわたって続き、重鎖を囲む。 軽鎖は、カッパまたはラムダ(κ、λ)のいずれかとして分類される。各重鎖クラスは、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖のいずれかと結合することができる。概して、軽鎖および重鎖は互いに共有結合し、免疫グロブリンが雑種細胞、B細胞、または遺伝子操作された宿主細胞のいずれかによって生成される場合、2つの重鎖の「尾」部分は、共有ジスフィルド結合または非共有結合により互いに結合する。重鎖では、アミノ酸配列は、Y配置の又状端のN末端から各鎖の下部のC末端へ及ぶ。 軽鎖および重鎖の両方が、構造的相同性と機能的相同性の領域に分割される。「定常」および「可変」という用語は、機能的に使用される。この点に関して、軽(VL)および重(VH)鎖部分の両方の可変ドメインが、抗原認識および特異性を決定することが理解される。逆に、軽鎖(CL)および重鎖(CH1、CH2、またはCH3)の定常ドメインは、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合、補体結合等の重要な生物学的特性を付与する。慣例により、定常領域ドメインの番号付けは、抗体の抗原結合部位またはアミノ末端から遠位になるにつれて増す。N末端部分は可変領域であり、C末端部分は定常領域であり、CH3およびCLドメインは、実際にそれぞれ重鎖および軽鎖のカルボキシ末端を含む。 前述の通り、可変領域によって、抗体が抗原のエピトープを選択的に認識し特異的に結合することが可能になる。すなわち、抗体のVLドメインおよびVHドメイン、または相補性決定領域(CDR)のサブセットが組み合わさって、三次元の抗原結合部位を定義する可変領域を形成する。この抗体の四次構造が、Yのそれぞれの腕の端に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位は、VHおよびVL鎖のそれぞれの3つのCDRによって定義される。一部の事例において、例えば、ラクダ科の種に由来する、またはラクダ科の免疫グロブリンに基づいて操作されたある免疫グロブリン分子では、完全な免疫グロブリン分子が重鎖のみから成り、軽鎖を有しない場合がある。例えば、Hamers−Casterman et al.,Nature 363:446−448(1993)を参照されたい。 自然発生する抗体では、各抗原結合ドメインに存在する6つの「相補性決定領域」または「CDR」は、抗体が水性の環境でその三次元配置につくと、抗原結合ドメインを形成するように特異的に位置する、アミノ酸の短い非連続配列である。抗原結合ドメインのアミノ酸の残りは、「フレームワーク」領域と称され、分子間の可変性をあまり示さない。フレームワーク領域は主としてβシート配座を取り入れ、CDRは、βシート構造を接続し、一部の場合ではβシート構造の一部を形成するループを形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間の非共有結合性相互作用によってCDRの正しい配向の位置付けを提供する、足場を形成する役目を果たす。位置付けられたCDRによって形成される抗原結合ドメインは、免疫反応性抗原のエピトープに対して相補的な表面を定義する。この相補的な表面が、抗体のその同族エピトープへの非共有結合を促進する。CDRおよびフレームワーク領域をそれぞれ含むアミノ酸は、正確に定義されているため、当業者は任意の所与の重鎖または軽鎖可変領域を容易に確認することができる(“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”Kabat,E.,et al.,U.S.Department of Health and Human Services,(1983)、およびChothia and Lesk,J.Mol.Biol.,196:901−917(1987)を参照されたく、これらは、参照することによってそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。 抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体は、ポリクローナル、モノクローナル、多特異的、ヒト、ヒト化、霊長類化、もしくはキメラ抗体、単鎖抗体、エピトープ結合フラグメント、例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、Fvs、一本鎖Fvs(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、VLまたはVHドメインのいずれかを含むフラグメント、Fab発現ライブラリーによって生成されるフラグメント、ならびに抗イディオタイプ(抗Id)抗体を含むが、これらに限定されない。ScFv分子は当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第5,892,019号に記載されている。免疫グロブリンまたは抗体分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)、またはサブクラスの免疫グロブリン分子であり得る。 一本鎖抗体を含む抗体フラグメントは、単独、またはヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインの全体または一部と組み合わせた可変領域(複数を含む)を含み得る。また、ヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインとの任意の組み合わせの可変領域(複数を含む)を含む、抗原結合フラグメントが含まれる。抗体またはその免疫特異的フラグメントは、鳥類および哺乳類を含む任意の動物起源からのものであり得る。抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ、またはニワトリの抗体であり得る。別の実施形態においては、可変領域は、(例えばサメからの)コンドリクトイド(condricthoid)起源であり得る。本明細書で使用する際、「ヒト」抗体には、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体が含まれ、以下、および例えばKucherlapatiらによる米国特許第5,939,598号に記載されるような、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、または1つ以上のヒト免疫グロブリンに対して遺伝子導入した、内因性免疫グロブリンを発現しない動物から単離された抗体が含まれる。ヒト抗体は、抗体にアミノ酸置換が行われている場合であっても、まだ「ヒト」である。 本明細書で使用する際、「重鎖部分」という用語は、免疫グロブリンの重鎖に由来するアミノ酸配列を含む。重鎖部分を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば上方、中央、および/もしくは下方ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはその変異体もしくはフラグメントのうちの少なくとも1つを含む。例えば、本発明において使用される結合ポリペプチドは、CH1ドメインを含むポリペプチド鎖、CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも1部分、およびCH2ドメインを含むポリペプチド鎖、CH1ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖、CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも1部分、およびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖、またはCH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも1部分、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含み得る。別の実施形態においては、本発明のポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。さらに、本発明において使用される結合ポリペプチドは、CH2ドメインの少なくとも一部分(例えばCH2ドメインのすべてまたは一部)を欠失し得る。上述の通り、これらのドメイン(例えば重鎖部分)は、自然発生する免疫グロブリン分子からのアミノ酸配列とは異なるように修飾され得ることが、当業者には理解される。 ある特定の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体において、多量体の1つのポリペプチド鎖の重鎖部分は、該多量体の第2のポリペプチド鎖のものと同一である。代替として、本発明の重鎖部分含有単量体は、同一ではない。例えば、各単量体が異なる標的結合部位を含んで、例えば二重特異性抗体を形成し得る。 本明細書で開示する診断および治療方法において使用される結合ポリペプチドの重鎖部分は、異なる免疫グロブリン分子由来であり得る。例えば、ポリペプチドの重鎖部分は、IgG1分子由来のCH1ドメイン、およびIgG3分子由来のヒンジ領域を含み得る。別の例においては、重鎖部分は、部分的にIgG1分子に由来し、部分的にIgG3分子に由来する、ヒンジ領域を含み得る。別の例においては、重鎖部分は、部分的にIgG1分子に由来し、部分的にIgG4分子に由来する、キメラヒンジを含み得る。 本明細書で使用する際、「軽鎖部分」という用語は、免疫グロブリンの軽鎖に由来するアミノ酸配列を含む。軽鎖部分はVLまたはCLドメインのうちの少なくとも1つを含み得る。 本明細書で開示する抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体は、エピトープ(複数を含む)または抗原の一部(複数を含む)、例えば、それらが認識または特異的に結合する標的ポリペプチドの面から説明または特定することができる。抗体の抗原結合ドメインと特異的に相互作用する標的ポリペプチドの部分が、「エピトープ」または「抗原決定基」である。標的ポリペプチドは、抗原のサイズ、立体構造およびタイプに依存して、単一のエピトープ、少なくとも2つのエピトープ、または任意の数のエピトープを含み得る。さらに、標的ポリペプチド上の「エピトープ」は、非ポリペプチド要素である、またはそれを含んでもよく、例えば、エピトープは、炭水化物側鎖を含んでもよい。 抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体もしくは誘導体は、「多特異的」、例えば、二重特異的、三重特異的またはより多特異的であってもよく、これは、同時に1つ以上の異なる抗原(例えばタンパク質)上に存在する2つ以上の異なるエピトープを認識し、それらに結合することを意味する。したがって、抗体が「単一特異的」または「多特異的」、例えば、「二重特異的」であるかどうかは、結合ポリペプチドが反応する異なるエピトープの数を指す。多特異的抗体は、本明細書に記載の標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であってもよく、または、標的ポリペプチドならびに異種エピトープ、例えば異種ポリペプチドまたは固体支持材料等に特異的であってもよい。 本明細書で使用する際、「価数」という用語は、抗体中に存在する潜在的結合ドメイン、例えば、抗原結合ドメインの数を指す。各結合ドメインは、1つのエピトープに特異的に結合する。抗体が2つ以上の結合ドメインを含む場合、各結合ドメインは、2つの結合ドメインを有する抗体の同じエピトープに特異的に結合し得、「二価単一特異的」と呼ばれ、または、2つの結合ドメインを有する抗体の異なるエピトープに結合し得、「二価二重特異的」と呼ばれる。抗体はまた、二重特異的であり、各特異性に関して二価であってもよい(「二重特異的四価抗体」と呼ばれる)。別の実施形態において、四価ミニボディまたはドメイン欠損抗体を作製することができる。 二重特異的二価抗体、およびそれらを作製する方法は、例えば、米国特許第5,731,168号、同第5,807,706号、同第5,821,333号、ならびに米国特許出願公開第2003/020734号および同第2002/0155537号に記載されており、それらのすべての開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる。二重特異的四価抗体、およびそれらを作製する方法は、例えば、国際公開第02/096948号および同第00/44788号に記載されており、それらの両方の開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる。一般には、PCT公開国際公開第93/17715号、同第92/08802号、同第91/00360号、同第92/05793号、Tutt et al.,J.Immunol.147:60−69(1991)、米国特許第4,474,893号、同第4,714,681号、同第4,925,648号、同第5,573,920号、同第5,601,819号、Kostelny et al.,J.Immunol.148:1547−1553(1992)を参照されたい。 本明細書で使用する際、「ジスルフィド結合」は、2つの硫黄原子間に形成された共有結合を含む。アミノ酸システインは、第2のチオール基とジスルフィド結合または架橋を形成し得るチオール基を含む。ほとんどの自然発生IgG分子において、CH1およびCL領域は、ジスルフィド結合により結合し、2つの重鎖は、Kabat付番システムを使用した239および242に対応する位置(EU付番システムでは226または229の位置)での2つのジスルフィド結合により結合する。 「トリスルフィド結合」という用語は、以下でさらに説明される。 本明細書で使用する際、「キメラ抗体」という用語は、免疫反応領域または部位が第1の種から得られるか、またはそれに由来し、定常領域(損なわれ得ず、部分的であり得、または本発明に従って修飾され得る)が第2の種から得られる、任意の抗体を意味すると考えられる。いくつかの実施形態においては、標的結合領域または部位は非ヒト源(例えばマウスまたは霊長類)からのものであり、定常領域はヒトである。 本明細書で使用する際、「操作された抗体」という用語は、重鎖および軽鎖のいずれかまたはその両方の可変ドメインが、既知の特異性の抗体からの1つ以上のCDRの少なくとも部分的な置換によって、そして必要な場合は部分的なフレームワーク領域の置換および配列変更によって改変される、抗体を指す。CDRは、フレームワーク領域が由来する抗体と同一クラスまたはさらにサブクラスの抗体に由来することができるが、CDRが異なるクラスの抗体、および好ましくは異なる種からの抗体に由来することも想定される。既知の特異性の非ヒト抗体からの1つ以上の「ドナー」CDRがヒト重鎖または軽鎖フレームワーク領域に植え付けられる、操作された抗体は、本明細書において「ヒト化抗体」と称される。1つの可変ドメインの抗原結合能を別の可変ドメインへ移行するために、すべてのCDRをドナー可変領域からの完全なCDRと置換する必要があるとは限らない。むしろ、標的結合部位の活性を維持するために必要であるこれらの残基のみを移行することが必要であり得る。例えば米国特許第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号、および同第6,180,370号に記載される説明を考慮すると、ルーチン実験の実行、または試行錯誤による試験のいずれかによって、機能的な操作された抗体またはヒト化抗体を得ることは、十分に当業者の能力内である。 本明細書で使用する際、「適切に折り畳まれたポリペプチド」という用語は、ポリペプチドを含む官能性ドメインのすべてが明確に活性であるポリペプチド(例えば、抗体)を含む。本明細書で使用する際、「不適切に折り畳まれたポリペプチド」という用語は、ポリペプチドの官能性ドメインの少なくとも1つが活性ではないポリペプチドを含む。一実施形態において、適切に折り畳まれたポリペプチドは、少なくとも1つのジスルフィド結合により結合したポリペプチド鎖を含み、逆に、不適切に折り畳まれたポリペプチドは、少なくとも1つのジスルフィド結合により結合していないポリペプチド鎖を含む。 本明細書で使用する「操作された」という用語は、合成手段による(例えば、組み換え技術、インビトロペプチド合成、ペプチドの酵素的もしくは化学的カップリング、またはこれらの技術のいくつかの組み合わせによる)ポリペプチド分子の操作を含む。 本明細書で使用する「結合した」、「融合した」、または「融合」という用語は、同義的に使用される。これらの用語は、化学共役または組み替え手段を含む何らかの手段によって、2つ以上の元素または成分を互いに連結することを指す。例えば、融合タンパク質は、ヒト血清アルブミン等の血清アルブミンポリペプチド、および第2のポリペプチドを含み得る。融合タンパク質はまた、第2のポリペプチドに融合した抗体Fc領域を含み得る。 ポリペプチドの文脈において、「直鎖状配列」または「配列」は、ポリペプチドにおけるアミノ酸の、アミノからカルボキシル末端への方向での順序であり、配列内で互いに隣接する残基は、ポリペプチドの一次構造において隣接する。 本明細書で使用する「発現」という用語は、遺伝子が生化学物質、例えばRNAまたはポリペプチドを産生する過程を指す。該過程は、細胞内での遺伝子のいかなる機能的存在の発現をも含み、遺伝子ノックダウンならびに一時的発現および安定発現の両方を含むが、これらに限定されない。これには、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、または任意の他のRNA産物への遺伝子の転写、およびポリペプチド(複数を含む)へのかかるmRNAの翻訳が含まれるが、これらに限定されない。最終的に所望される産物が生化学物質である場合、発現は、該生化学物質および任意の前駆体の形成を含む。遺伝子の発現は、「遺伝子産物」を生成する。本明細書で使用する際、遺伝子産物は、核酸、例えば遺伝子の転写により生成されるメッセンジャーRNA、または転写産物から翻訳されるポリペプチドであり得る。本明細書に記載される遺伝子産物は、転写後の修飾、例えばポリアデニル化を受けた核酸、または翻訳後の修飾、例えばメチル化、グリコシル化、脂質添加、他のタンパク質サブユニットとの会合、タンパク分解による切断等を受けたポリペプチドをさらに含む。 本明細書で使用する際、システイン分解の阻害因子は、システインの破壊を最小限化または防止する分子である。システイン分解の阻害因子の例は、酸化防止剤、有機酸、有機アルデヒド、および不飽和脂質、具体的には、グルタチオン、ピルビン酸塩もしくはピルビン酸塩含有分子(例えば、ピルビン酸メチルもしくはピルビン酸エチル)、グリセルアルデヒド、グリオキシル酸、またはクエン酸塩等の化合物を含むが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、酸化防止剤は、1つ以上の遊離チオール基を有する。例示的な酸化防止剤は、グルタチオン、ペニシラミン、N−アセチル−システイン、アスコルビン酸、リポ酸、カロテン、アルファ−トコフェロール、およびユビキノールを含むが、これらに限定されない。最も一般的な有機酸は、カルボン酸であるが、スルホン酸もまた使用され得る。有機酸の例は、乳酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、および尿酸を含むが、これらに限定されない。有機アルデヒドの例は、メタナール(ホルムアルデヒド)、エタナール(アセトアルデヒド)、プロパナール(プロピオンアルデヒド)、およびブタナール(ブチルアルデヒド)を含むが、これらに限定されない。不飽和脂質は、脂質鎖内に1つ以上の炭素−炭素二重結合を含有する脂質または脂肪酸である。システイン分解を阻害するために使用され得る有用な不飽和脂質は、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、パルミチン酸、ドコサヘキサエン酸、オレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、エライジン酸、エルカ酸およびバクセン酸を含むが、これらに限定されない。 システイン分解の阻害因子がトリスルフィド形成を低減することができる濃度は、選択される阻害因子に依存して変動し得る。一般に、阻害因子は、約50μM〜約500mMの濃度で培養基に含まれる。ある特定の実施形態において、阻害因子は、約100μM〜約100mMの濃度、または約1mM〜100mMの濃度、または約5mM〜約50mMの濃度、または約5mM〜約30mMの濃度、または約10mM〜約20mMの濃度、または約15mM〜約20mMの濃度で添加される。いくつかの実施形態において、(例えば細胞培養基中に)存在するシステインの濃度に対する阻害因子の濃度の比は、約100:1〜約1:10、約20:1〜1:10、または約10:1〜1:10であってもよい。いくつかの実施形態において、システインの濃度に対する阻害因子の濃度の比は、約5:1〜約1:10であってもよい。いくつかの実施形態において、システインの濃度に対する阻害因子の濃度の比は、約5:1〜約1:5、5:1〜1:4、5:1〜1:3、または5:1〜1:2であってもよい。本明細書で使用する際、「処置する」または「処置」という用語は、治療的処置および予防または防止対策の両方を指し、目的は、望ましくない生理学的変化または疾患、例えば癌の増殖または転移を防止または減速(低下)させることである。有益または望ましい臨床結果は、検出可能か検出不可能かを問わず、症状の軽減、疾患の範囲の縮小、疾患の安定化された(すなわち悪化しない)状態、疾患の進行の遅延または減速、病状の改善または緩和、および沈静(部分的か全体的かを問わない)を含むが、これらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けない場合の推定される生存と比較した、生存の延長を意味し得る。処置を必要とする者には、すでに状態もしくは疾患を有する者だけでなく、状態もしくは疾患を有する傾向がある者、または状態もしくは疾患が予防される者が含まれる。「対象」または「個人」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」とは、診断、予後診断または治療が望まれる任意の対象、特に哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象は、人間、家畜、農業動物、および動物園、スポーツ、またはペット用動物、例えば犬、猫、モルモット、ウサギ、ラット、ネズミ、馬、牛、乳牛等を含む。 本明細書で使用する際、「結合分子の投与の恩恵を受ける対象」および「処置を必要とする動物」等の語句は、例えば、結合分子により認識される抗原の検出のため(例えば、診断手順のため)に使用される結合分子の投与の恩恵、および/または、所与の標的タンパク質に特異的に結合する結合分子による処置、すなわち、癌などの疾患の緩和または予防の恩恵を受ける、哺乳動物対象等の対象を含む。本明細書においてより詳細に説明されるように、結合分子は、非共役形態で使用されてもよく、または、例えば薬物、プロドラッグ、または同位体に共役していてもよい。II.トリスルフィド結合 「トリスルフィド結合」は、ジスルフィド結合への追加の硫黄原子の挿入により生成され、それにより3つの連続した硫黄原子の共有結合がもたらされる。トリスルフィド結合ならびにトリスルフィド結合を防止および除去する方法は、国際公開第2011/041721号ならびに米国仮特許出願第61/485,973号(2011年5月13日出願)および同第61/617,529号(2012年3月29日出願)において議論されており、これらはそれぞれ参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる。トリスルフィド結合は、タンパク質中のシステイン残基間に形成することができ、分子内(すなわち、同じタンパク質中の2つのシステイン間)または分子間(すなわち、別個のタンパク質中の2つのシステイン間)に形成することができる。IgG1抗体等の抗体の場合、2つの分子間ジスルフィド結合が重鎖同士を結合し、分子間ジスルフィド結合はまた、重鎖および軽鎖のそれぞれを結合する。同様に、IgG2分子は、重鎖を結合する3つの分子間ジスルフィド結合を含有し、IgG3分子は、重鎖を結合する6〜16個の分子間ジスルフィド結合を含有する。これらのジスルフィド結合のいずれかにトリスルフィド修飾が生じ得るが、重鎖−重鎖(HH)結合部よりも重鎖−軽鎖(HL)結合部においてより頻繁に生じる。 いくつかの実施形態において、トリスルフィド結合は、保存安定性を低下させる。他の実施形態において、トリスルフィド結合は、タンパク質凝集を増加させる。さらに他の実施形態において、トリスルフィド結合は、タンパク質酸化を増加させ、例えば、メチオニン酸化を増加させて、抗体ポリペプチド鎖(例えば、H−Lおよび/またはH−H鎖)の解離をもたらす可能性がある。 トリスルフィド結合の存在は、本明細書に記載の方法、および現在または将来において当業者に知られ利用可能である方法を含む、いくつかの方法のいずれかを使用して検出することができる。例えば、トリスルフィド結合は、ペプチドマッピングを使用して検出することができ、また、追加的な硫黄原子(32Da)による無傷タンパク質の質量の増加に基づいて検出することができる。トリスルフィド結合は、質量スペクトルを使用して、または高圧液体クロマトグラフィーおよび質量分析(LC−MSシステムを使用したペプチドマッピング)により検出することができる。情報を提供する定量的な分析は、ペプチドマッピングにより達成することができ、スルフィド結合を含有するものを含む無傷分子から得られた選択されたペプチドが、LC−MSにより分析される。さらに、トリスルフィド結合はまた、間接的に、例えば分子折り畳みまたは熱安定性を評価することにより検出することができる。 本明細書においてより詳細に説明されるように、抗体中のトリスルフィド結合の存在は、例えば、非還元電気泳動用の試料調製後のフラグメント化のレベルの増加により示されるように、熱処理に対する感受性の増加の結果検出または特定され得る。 いくつかの実施形態において、熱処理は、少なくとも約40℃、少なくとも約50℃、少なくとも約60℃、少なくとも約70℃、少なくとも約80℃、少なくとも約90℃、少なくとも約95℃、または少なくとも約100℃の温度であってもよい。いくつかの実施形態において、熱処理は、約40℃、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、または約100℃の温度であってもよい。いくつかの実施形態において、熱処理は、約120℃未満の温度であってもよい。いくつかの実施形態において、熱処理は、約60℃〜約100℃の温度であってもよい。 本明細書に記載の方法によれば、熱処理は、n−エチルマレイミド(NEM)またはヨードアセトアミド等のアルキル化剤の存在下で行うことができる。NEMまたはヨードアセトアミド等のアルキル化剤の濃度は、約0.5mM、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、または約15mMであってもよい。NEMまたはヨードアセトアミド等のアルキル化剤の濃度はまた、約0.5mM〜約15mM、約1.0mM〜約15mM、約0.5mM〜約10mM、または約1.0mM〜約10mMであってもよい。 本明細書に記載の方法によれば、熱処理は、可変の期間継続し得る。例えば、タンパク質は、約30秒間、約1分間、約2分間、約3分間、約4分間、約5分間、約6分間、約7分間、約8分間、約9分間、約10分間、約15分間、約20分間、または約30分間加熱され得る。いくつかの実施形態において、タンパク質は、約30秒〜約10分加熱される。 本明細書に記載の1つの具体的な実施形態において、タンパク質は、約5mMのNEMの存在下で、約100℃の温度で約5分間加熱される。 本明細書に記載の方法によれば、非還元電気泳動は、例えば、キャピラリー電気泳動、マイクロ流体チップ電気泳動(例えばLC−90アッセイ)、またはポリアクリルアミドゲル電気泳動であってもよい。 トリスルフィド結合の量は、いくつかの異なる様式で報告することができる。例えば、試料中に存在する「トリスルフィド結合のパーセンテージ」は、存在するすべてのスルフィド結合(すなわち、ジスルフィドおよびトリスルフィド結合)の総数のうちのトリスルフィド結合の数を表し得る。しかしながら、別段に指定されない限り、トリスルフィド結合は、本明細書において、少なくとも1つのトリスルフィド結合を含有する、試料中のタンパク質のパーセンテージとして報告される。したがって、100個のタンパク質の試料中の1つのタンパク質のみが単一のトリスルフィド結合を含有する場合、本明細書において定義されるように、試料中のタンパク質の1%がトリスルフィド結合を含有する。同様に、100個のタンパク質の試料中の2つのタンパク質のみが、それぞれ1つ以上のトリスルフィド結合を含有する場合、本明細書において定義されるように、試料中のタンパク質の2%がトリスルフィド結合を含有する。さらに、100個のタンパク質の試料中の1つのタンパク質のみが5つのトリスルフィド結合を含有する場合、本明細書において定義されるように、試料中のタンパク質の1%がトリスルフィド結合を含有する(すなわち、100個のタンパク質の試料中に1つのトリスルフィド結合含有タンパク質)。 本明細書に記載の方法によれば、試料中のタンパク質の少なくとも1パーセント、少なくとも5パーセント、少なくとも6パーセント、少なくとも7パーセント、少なくとも8パーセント、少なくとも9パーセント、少なくとも10パーセント、少なくとも15パーセント、少なくとも20パーセント、少なくとも30パーセント、少なくとも40パーセント、少なくとも50パーセント、少なくとも60パーセント、または少なくとも70パーセントが、トリスルフィド結合を含有し得る。別の実施形態において、試料中のタンパク質の約5パーセント〜約50パーセント、約5パーセント〜約30パーセント、約5パーセント〜約20パーセント、または約5パーセント〜約15パーセントが、トリスルフィド結合を含有し得る。別の実施形態において、タンパク質試料中のタンパク質の約10パーセント〜約50パーセント、約10パーセント〜約30パーセント、約10パーセント〜約20パーセント、または約10パーセント〜約15パーセントが、トリスルフィド結合を含有し得る。 さらに、トリスルフィド結合のジスルフィド結合への変換の有効性を決定するために、タンパク質の試料を遊離システインに暴露した後に、試料中のトリスルフィド結合を含有するタンパク質のパーセンテージを決定することが有用となり得る。したがって、例えば、いくつかの実施形態において、遊離システインへの暴露後に、試料中のタンパク質の約10パーセント未満、約5パーセント未満、約3パーセント未満、約2パーセント未満、または約1パーセント未満がトリスルフィド結合を含有する。 試料中のトリスルフィド結合の数は、本明細書に記載の方法により減少され得る。この減少は、トリスルフィド結合のジスルフィド結合への変換、および/またはトリスルフィドおよびジスルフィド結合の両方の排除の結果であり得る。したがって、いくつかの実施形態において、試料中のトリスルフィド結合を含有するタンパク質のパーセンテージは、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%減少される。さらに、本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、ジスルフィド結合に変換されたトリスルフィド結合を含有するタンパク質のパーセンテージは、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%である。 いくつかの実施形態において、還元剤を含む溶液にタンパク質を暴露した後、タンパク質の約10%未満、約5%未満、または約1%未満がトリスルフィド結合を含有する。 いくつかの実施形態において、本明細書における方法は、抗体またはその断片の組成物を提供し、組成物中の抗体またはその断片の約Y%〜約Z%が、1つ以上のトリスルフィド結合を含み、Y%およびZ%は、以下の表において「Y/Z」で示されるように表される値の群から選択される値の任意の範囲であり、より低い「Y」値は、対応する行から選択され、上の「Z」値は、対応する列から選択される。 いくつかの実施形態において、本明細書における方法は、抗体またはその断片の組成物を提供し、当該組成物中の抗体またはその断片の約Y%〜約Z%が、ジスルフィド結合のみを含み、Y%およびZ%は、以下の表において「Y/Z」で示されるように表される値の群から選択される値の任意の範囲であり、より低い「Y」値は、対応する行から選択され、上の「Z」値は、対応する列から選択される。III.還元剤処理 本明細書に記載の方法によれば、トリスルフィド結合は、(a)トリスルフィド結合を含有するタンパク質試料を、クロマトグラフ媒体に適用すること、および(b)還元剤を含む溶液を、クロマトグラフ媒体と会合したタンパク質と接触させることにより低減され得る。 タンパク質試料は、クロマトグラフ媒体に適用しやすいトリスルフィド結合を有するタンパク質を含有する任意の試料であってもよい。例えば、タンパク質試料は、生物学的試料であってもよい。したがって、試料は、患者、対象、またはモデル有機体から単離され得る。試料はまた、細胞培養物から単離され得、例えば、細胞溶解物から得られた試料、または細胞上澄みから得られた試料であってもよい。さらに、試料は、市販のタンパク質調製物(例えば、市販の抗体調製物等)であってもよい。 試料中のタンパク質は、組み換えタンパク質、合成タンパク質、または自然発生タンパク質であってもよい。 クロマトグラフ媒体は、現在または将来当該技術分野において知られる任意のクロマトグラフ媒体であり得る。クロマトグラフ媒体は、タンパク質試料中のタンパク質が結合しているもの、すなわちフロースルーモードで動作しないクロマトグラフ媒体であってもよい。タンパク質の結合は、例えば、タンパク質の動きを制限し、それにより望ましくないジスルフィド結合の形成を防止することにより、ある特定の利点を提供し得る。例えば、クロマトグラフ媒体は、イオン交換クロマトグラフ媒体、混合モードクロマトグラフ媒体、親和性クロマトグラフ媒体、偽親和性クロマトグラフ媒体であってもよい。親和性クロマトグラフ媒体は、例えば、レクチンクロマトグラフ媒体、金属結合クロマトグラフ媒体、例えばニッケルクロマトグラフ媒体、GSTクロマトグラフ媒体、タンパク質Gクロマトグラフ媒体、タンパク質Aクロマトグラフ媒体、または免疫親和性クロマトグラフ媒体であってもよい。クロマトグラフ媒体は、カラムの形式、クロマトグラフィー樹脂、別の形式の同様の結合マトリックス、例えば96ウェル形式であってもよい。さらに、タンパク質試料は、好適に修飾された膜に結合し得る。具体的な実施形態において、クロマトグラフ媒体は、タンパク質A親和性クロマトグラフ媒体である。別の具体的な実施形態において、クロマトグラフ媒体は、抗体Fc領域結合クロマトグラフ媒体である。 還元剤を含む溶液は、クロマトグラフ媒体および所望のタンパク質機能/生物活性に適合する任意の溶液(例えば、カラムの完全性を乱さない、または標的タンパク質を不可逆的に変性もしくは不活性化しない溶液)であってもよい。同様に、還元剤は、クロマトグラフ媒体および所望のタンパク質機能/生物学的活性に適合する任意の還元剤であってもよい。例えば、完全剤は、システイン(例えば、L−システインおよびN−アセチルシステインを含む)、塩酸システイン、システアミン、二酸化硫黄、硫化水素、グルタチオン(GSH)(例えば、L−グルタチオン(L−GSH)、チオグリコール酸、亜硫酸水素塩、アスコルビン酸、ソルビン酸、TCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)ならびに/またはフマル酸であってもよい。 いくつかの実施形態において、還元剤を含む溶液は、トリスルフィド結合レベルを減少させる追加成分をさらに含む。いくつかの実施形態において、還元剤を含む溶液は、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、またはセシウム等のアルカリ金属をさらに含む。いくつかの実施形態において、アルカリ金属は、リン酸ナトリウムである。例えば、溶液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液であってもよい。いくつかの実施形態において、システインを含む溶液のpHは、中性pH(すなわち約7)である。いくつかの実施形態において、システインを含む溶液のpHは、約3〜約9、約4〜約8、約5〜約7、約6〜約7、約5〜約9、約5〜約〜約8、および約6〜約8の範囲内である。 本明細書に記載の方法によれば、還元剤は、遊離システインであってもよい。溶液中の遊離システインの濃度は、例えば、約0.1mM以上および約10mM未満であってもよい。いくつかの実施形態において、システインの濃度は、例えば、約0.5mM〜約9mM、約0.5mM〜約8mM、約0.5mM〜約7mM、約0.5mM〜約6mM、約0.5mM〜約5mM、0.5mM〜約4mM、約0.5mM〜約1.0mM、約0.5mM〜約2.0mM、約0.5mM〜約3mM、約0.5mM〜約4mM、約0.5mM〜約5mMであってもよい。いくつかの実施形態において、システインの濃度は、約1.0mM〜約9mM、約1.0mM〜約8mM、約1.0mM〜約7mM、約1.0mM〜約6mM、約1.0mM〜約5mM、約1.0mM〜約4mM、または約1.0mM〜約3mMである。いくつかの具体的な実施形態において、濃度は、約1.0mMシステインまたは約3.0mMシステインである。いくつかの実施形態において、システインは、L−システインである。いくつかの実施形態において、システインは、N−アセチルシステインである。 本明細書に記載の方法によれば、還元剤は、グルタチオンであってもよい。溶液中のグルタチオンの濃度は、例えば、約0.1mM以上および約10mM未満であってもよい。いくつかの実施形態において、グルタチオンの濃度は、例えば、約0.5mM〜約9mM、約0.5mM〜約8mM、約0.5mM〜約7mM、約0.5mM〜約6mM、約0.5mM〜約5mM、0.5mM〜約4mM、約0.5mM〜約1.0mM、約0.5mM〜約2.0mM、約0.5mM〜約3mM、約0.5mM〜約4mM、約0.5mM〜約5mMであってもよい。いくつかの実施形態において、グルタチオンの濃度は、約1.0mM〜約9mM、約1.0mM〜約8mM、約1.0mM〜約7mM、約1.0mM〜約6mM、約1.0mM〜約5mM、約1.0mM〜約4mM、または約1.0mM〜約3mMである。いくつかの特定の実施形態において、濃度は、約1.0mMグルタチオンである。いくつかの実施形態において、グルタチオンは、L−グルタチオンである。 還元剤を含む溶液は、単一ステップまたは複数ステップで適用され得る。還元剤を含む溶液は、一定の濃度で、または連続的もしくは段階的に増加もしくは減少する濃度勾配で適用され得る。いくつかの実施形態において、還元剤とタンパク質試料との接触時間は、適切なカラム流量を選択することにより制御され得る。例えば、より高い流量およびより短い接触時間は、より高い濃度の還元剤と共に使用することができる。 いくつかの実施形態において、接触時間は、少なくとも約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約90分、約2時間、約3時間、約4時間、または約5時間である。いくつかの実施形態において、接触時間は、約24時間未満、約20時間未満、約12時間未満、または約6時間未満である。いくつかの実施形態において、接触時間は、約1時間である。 いくつかの実施形態において、線流速は、少なくとも約10cm/時間、少なくとも約20cm/時間、少なくとも約30cm/時間、少なくとも約40cm/時間、少なくとも約50cm/時間、少なくとも約60cm/時間、少なくとも約70cm/時間、少なくとも約80cm/時間、少なくとも約90cm/時間、少なくとも約100cm/時間、少なくとも約150cm/時間、少なくとも約200cm/時間、少なくとも約250cm/時間、少なくとも約300cm/時間、少なくとも約350cm/時間、少なくとも約400cm/時間、少なくとも約450cm/時間、少なくとも約500cm/時間、少なくとも約550cm/時間である。いくつかの実施形態において、線流速は、約1000cm/時間未満、または約750cm/時間未満である。いくつかの実施形態において、線流速は、抗体の大量カラム精製に適合する速度である。いくつかの実施形態において、線流速は、約100cm/時間である。 クロマトグラフ媒体に会合したタンパク質試料への還元剤を含む溶液の適用は、追加の洗浄ステップの後に、それと組み合わせて、またはその前に行われてもよい。例えば、PBS洗浄は、還元剤を含む溶液がクロマトグラフ媒体に適用される前に適用されてもよい。洗浄は、例えば不純物を除去するために使用され得る。高塩濃度緩衝溶液での洗浄もまた、例えば還元剤を含む溶液がクロマトグラフ媒体に適用された後に、不純物の除去を促進するために使用され得る。高塩濃度洗浄はまた、還元剤洗浄と組み合わされてもよく、それにより、必要な洗浄の総数が低減される。追加的に、および/または代替として、還元剤洗浄の後に還元剤を含まない洗浄を適用して、タンパク質をまだカラムに残しつつタンパク質から還元剤を取り除くことができる。追加的に、および/または代替として、低塩濃度洗浄を適用して、その後の溶出ステップ中の効率的な溶出を促進することができる。 還元剤を含む溶液のクロマトグラフ媒体への適用、および任意選択の追加の洗浄ステップの後、タンパク質は、クロマトグラフ媒体から溶出され得る。溶出は、当該技術分野において知られた任意の技術を使用して行うことができ、例えば、タンパク質Aを使用する場合、クロマトグラフ媒体溶出は、低pH溶液(例えば、約3.5のpH)を適用することにより行うことができる。溶出試料のpHは、次いで、塩基性溶液を使用してより中性のpH(例えば、約5〜9のpH、約6〜8のpH、または約7のpH)に調節することができる。IV.システイン分解の阻害因子による処理 本明細書に記載の方法によれば、トリスルフィド結合は、システイン分解の阻害因子を使用して低減され得る。例えば、システイン分解の阻害因子の存在下でタンパク質を発現する細胞の培養は、トリスルフィド結合を低減し得る。 いくつかの実施形態において、システイン分解の阻害因子を含む溶液は、さらに、細胞培養基である。いくつかの実施形態において、細胞培養基は、一般的な細胞培養基、例えば、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)またはダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)である。いくつかの実施形態において、細胞培養基は、グルコースをさらに含む。いくつかの実施形態において、細胞培養基は、システインを含む。いくつかの実施形態において、培地は、グルコースおよびシステインを含有し得る。いくつかの実施形態において、培地は、アミノ酸およびシステインの溶液を含有し得る。 いくつかの実施形態において、細胞培養基中に存在するシステインの濃度に対する阻害因子の濃度の比は、例えば、約100:1〜約1:10、約20:1〜1:10、または約10:1〜1:10であってもよい。いくつかの実施形態において、システインの濃度に対する阻害因子の濃度の比は、約5:1〜約1:10であってもよい。いくつかの実施形態において、比は、約1:1である。いくつかの実施形態において、システインの濃度に対する阻害因子の濃度の比は、約5:1〜約1:5、5:1〜1:4、5:1〜1:3、または5:1〜1:2であってもよい。 本明細書に記載の方法によれば、システイン分解の阻害因子は、ピルビン酸塩またはピルビン酸塩含有分子であってもよい。ピルビン酸塩またはピルビン酸塩含有分子の濃度は、例えば、約50μM〜約500mMであってもよい。いくつかの実施形態において、ピルビン酸塩またはピルビン酸塩含有分子の濃度は、例えば、約1mM〜約250mM、約1mM〜約100mM、約1mM〜約50mM、約1mM〜約30mM、約1mM〜約25mM、または約1mM〜約20mMであってもよい。いくつかの実施形態において、ピルビン酸塩またはピルビン酸塩含有分子の濃度は、例えば、約5mM〜約250mM、約5mM〜約100mM、約5mM〜約50mM、約5mM〜約30mM、約5mM〜約25mM、または約5mM〜約20mMであってもよい。いくつかの実施形態において、ピルビン酸塩またはピルビン酸塩含有分子の濃度は、例えば、約10mM〜約250mM、約10mM〜約100mM、約10mM〜約50mM、約10mM〜約30mM、約10mM〜約25mM、または約10mM〜約20mMであってもよい。いくつかの実施形態において、ピルビン酸塩またはピルビン酸塩含有分子の濃度は、例えば、約15mM〜約250mM、約15mM〜約100mM、約15mM〜約50mM、約15mM〜約30mM、約15mM〜約25mM、または約15mM〜約20mMであってもよい。いくつかの実施形態において、ピルビン酸塩含有分子は、例えば、ピルビン酸メチルまたはピルビン酸エチルであってもよい。いくつかの実施形態において、システイン分解の阻害剤は、ピルビン酸塩である。 本明細書に記載の方法によれば、システイン分解の阻害因子は、グリセルアルデヒドであってもよい。グリセルアルデヒドの濃度は、例えば、約50μM〜約500mMであってもよい。いくつかの実施形態において、グリセルアルデヒドの濃度は、例えば、約1mM〜約250mM、約1mM〜約100mM、約1mM〜約50mM、約1mM〜約30mM、約1mM〜約25mM、または約1mM〜約20mMであってもよい。いくつかの実施形態において、グリセルアルデヒドの濃度は、例えば、約5mM〜約250mM、約5mM〜約100mM、約5mM〜約50mM、約5mM〜約30mM、約5mM〜約25mM、または約5mM〜約20mMであってもよい。いくつかの実施形態において、グリセルアルデヒドの濃度は、例えば、約10mM〜約250mM、約10mM〜約100mM、約10mM〜約50mM、約10mM〜約30mM、約10mM〜約25mM、または約10mM〜約20mMであってもよい。いくつかの実施形態において、グリセルアルデヒドの濃度は、例えば、約15mM〜約250mM、約15mM〜約100mM、約15mM〜約50mM、約15mM〜約30mM、約15mM〜約25mM、または約15mM〜約20mMであってもよい。 本明細書に記載の方法によれば、システイン分解の阻害因子は、グリオキシル酸であってもよい。グリオキシル酸の濃度は、例えば、約50μM〜約500mMであってもよい。いくつかの実施形態において、グリオキシル酸の濃度は、例えば、約1mM〜約250mM、約1mM〜約100mM、約1mM〜約50mM、約1mM〜約30mM、約1mM〜約25mM、または約1mM〜約20mMであってもよい。いくつかの実施形態において、グリオキシル酸の濃度は、例えば、約5mM〜約250mM、約5mM〜約100mM、約5mM〜約50mM、約5mM〜約30mM、約5mM〜約25mM、または約5mM〜約20mMであってもよい。いくつかの実施形態において、グリオキシル酸の濃度は、例えば、約10mM〜約250mM、約10mM〜約100mM、約10mM〜約50mM、約10mM〜約30mM、約10mM〜約25mM、または約10mM〜約20mMであってもよい。いくつかの実施形態において、グリオキシル酸の濃度は、例えば、約15mM〜約250mM、約15mM〜約100mM、約15mM〜約50mM、約15mM〜約30mM、約15mM〜約25mM、または約15mM〜約20mMであってもよい。 いくつかの実施形態において、タンパク質トリスルフィド結合形成は、細胞培養基中に存在するシステインおよび/またはシスチンの濃度を監視および/または閾値レベル以下に操作することにより、防止、阻害または抑制される。例えば、低システインおよび/またはシスチンレベルを減少させる、または維持するために、栄養供給物中のシステインおよび/またはシスチンをメチオニンで置き換えることができる。いくつかの実施形態において、システインおよび/またはシスチンレベルを減少させるために、供給物の総量を低下させることができる。閾値レベルは、例えば、約150μM、約125μM、約100μM、約90μM、約80μM、約70μM、約60μM、約50μM、約40μM、約30μM、または約20μMであってもよい。閾値レベルは、例えば、約10mM、約9mM、約8mM、約7mM、約6mM、約5mM、約4mM、約3mM、約2mM、約1mM、約0.9mM、約0.8mM、約0.7mM、約0.6mM、約0.5mM、約0.4mM、約0.3mM、約0.2mM、または約0.1mMであってもよい。 いくつかの実施形態において、タンパク質トリスルフィド結合形成は、硫化水素(H2S)の濃度を監視および/または閾値レベル以下に操作することにより、防止、阻害または抑制される。閾値レベルは、例えば、約10パーツパーミリオン(ppm)、約5ppm、約4ppm、約3ppm、約2ppm、約1ppm、約0.9ppm、約0.8ppm、約0.7ppm、約0.6ppm、約0.5ppm、約0.4ppm、約0.3ppm、約0.2ppm、または約0.1ppmであってもよい。いくつかの実施形態において、閾値レベルは、約500パーツパービリオン(ppb)、約250ppb、約200ppb、約100ppb、または約50ppbである。いくつかの実施形態において、システイン分解の阻害因子の使用は、H2S濃度を、約10ppm、約5ppm、約4ppm、約3ppm、約2ppm、約1ppm、約0.9ppm、約0.8ppm、約0.7ppm、約0.6ppm、約0.5ppm、約0.4ppm、約0.3ppm、約0.2ppm、または約0.1ppm未満のレベルに維持する。いくつかの実施形態において、システイン分解の阻害因子の使用は、H2S濃度を、約500ppb、約250ppb、約200ppb、約100ppb、または約50ppb未満のレベルに維持する。 いくつかの実施形態において、システイン分解の阻害因子の添加は、硫化水素の放出を、阻害因子の非存在下と比較して、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、または80%低減する。V.細胞培養 本明細書に記載の方法によれば、トリスルフィド結合含有タンパク質は、細胞培養物中で生成されるタンパク質であってもよい。細胞培養により生成されたタンパク質は、組み換えタンパク質、または培養物中で増殖した細胞により自然に発現されたタンパク質であってもよい。タンパク質は、細胞内タンパク質、膜貫通タンパク質、または分泌タンパク質であってもよい。 いくつかの具体的な実施形態において、タンパク質は、抗体である。例えば、抗体は、LINGO−1に結合する抗体であってもよい。抗体はまた、ヒトLINGO−1に結合する抗体であってもよい。いくつかの実施形態において、抗LINGO−1抗体は、Li13、Li33、Li62、Li81、およびLi113、ならびにそれらのキメラもしくはヒト化型からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗LINGO−1抗体は、Li13、Li33、Li62、Li81、またはLi113の変異体である。例えば、いくつかの実施形態において、抗LINGO−1抗体は、Li81 M96LまたはLi81 M96Fであり、そのそれぞれは、Li81抗体の軽鎖のメチオニン96においてアミノ酸置換を含有する。以下の実施例において言及される「Mab1」および「mAb−A」は、抗LINGO−1抗体Li81である。 Li13およびLi33は、すべて参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、Hoet et al.,Nat.Biotech.23:344−348(2005)、Rauchenberger,et al.,J.Biol.Chem.278:194−205(2003)、およびKnappik,et al.,J.Mol.Biol.296:57−86(2000)に記載のように、ファージディスプレイライブラリから特定および単離されたモノクローナル抗体Fabフラグメントである。これらの実験において、ヒト化合成抗体可変領域を含むMorphoSys Fab−ファージディスプレイライブラリHuCAL(登録商標)GOLDが、標準的ELISAおよびIHCスクリーニング法により、組み換えヒト可溶性LINGO−1−Fcタンパク質に対してスクリーニングされた。LINGO−1に特異的に結合したFab−ファージが、精製および特性決定された。Li13およびLi33は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2007/008547号において、より詳細に説明されている。 抗体Li81は、Li13およびLi33から得られる。これは、Li13軽鎖および親和性成熟重鎖を含む。Li81は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2008/086006号において、より詳細に説明されている。Li81 M96LおよびLi81 M96Fは、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2010/005570号において説明されている。 Li62は、Li33から得られる。これは、Li33重鎖およびライブラリスクリーンにおいて特定された軽鎖を含む。Li113は、単離された標的ファージディスプレイにより特定された。これは、Li62軽鎖ならびにLi62 VH CDR1およびCDR2配列を含むが、VH CDR3配列に改変を有する。Li62およびLi113は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、国際出願PCT/US2009/003999号(国際公開第2010/005570号として公開)において説明されている。 Li13、Li33、Li62、Li81、およびLi113のVH配列を、以下の表1に示す。 Li13、Li33、Li62、Li81、Li113、Li81 M96L、およびLi81 M96FのVL配列を、以下の表2に示す。 別の例において、抗体は、Fn14に結合する抗体であってもよい。TWEAK受容体であるFn14は、細胞外基質への細胞接着を低下させ、血清刺激成長および移動を低減する成長因子制御前初期反応遺伝子である。Meighan−Mantha et al.,J.Biol.Chem.274:33166−33176(1999)。いくつかの実施形態において、抗Fn14抗体は、P4A8、P3G5、およびP2D3、ならびにそれらのキメラもしくはヒト化型からなる群から選択される。抗Fn14抗体P4A8、P3G5、およびP2D3を、ヒト表面Fn14を発現するCHO細胞の投与によりFn14欠損マウスにおいて成長させ、Fn14−myc−Hisタンパク質で強化した。これらの抗体は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、2009年5月8日出願の国際出願PCT/US2009/043382号において、より詳細に説明されている。 P4A8、P3G5、およびP2D3抗体のVH配列を、以下の表3に示す。 P4A8、P3G5、およびP2D3抗体のVL配列を、以下の表4に示す。 ヒト化P4A8抗体の重鎖および軽鎖配列を、以下の表5に示す。 細胞培養物は、例えば、細菌性細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞を含み得る。本発明の方法に従い使用され得る細胞型は、培養物中で成長することができる任意の哺乳動物細胞、例えば、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)(CHO−K1、CHO DG44、およびCHO DUXB11を含む)、VERO、HeLa(ヒト子宮頸癌)、CV1(サル腎臓系)(COSおよびCOS−7を含む)、BHK(新生ハムスター腎臓)、MDCK、C127、PC12、HEK−293(HEK−293TおよびHEK−293Eを含む)、PER C6、NS0、WI38、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓系)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3x63−Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA−1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)ならびに293(ヒト腎臓)細胞を含む。いくつかの具体的な実施形態において、細胞は、CHO細胞またはその誘導体である。 いくつかの実施形態において、タンパク質トリスルフィド結合形成は、生物反応器培養工程中に細胞培養物に提供される栄養供給物、アミノ酸、または他の栄養素補給の量および/または速度を監視および操作することにより、防止、阻害または抑制される。 最適な細胞培養基組成物は、繁殖されている細胞培養物の型により様々である。いくつかの実施形態において、栄養培地は市販の培地である。いくつかの実施形態において、栄養培地は、例えば、無機塩、炭水化物(例えばグルコース、ガラクトース、マルトースまたはフラクトース等の糖類)、アミノ酸、ビタミン(例えばビタミンB群(例えばB12)、ビタミンA、ビタミンE、リボフラビン、チアミンおよびビオチン)、脂肪酸および脂質(例えばコレステロールおよびステロイド)、タンパク質およびペプチド(例えばアルブミン、トランスフェリン、フィブロネクチンおよびフェチュイン)、血清(例えばアルブミン、成長因子および成長阻害因子を含む組成物、例えばウシ胎仔血清、新生仔ウシ血清およびウマ血清)、微量元素(例えば亜鉛、銅、セレンおよびトリカルボン酸中間体)、加水分解物(植物または動物源から得られる加水分解タンパク質)、ならびにそれらの組み合わせを含有する。栄養培地の例は、基本培地(例えばMEM、DMEM、GMEM)、複合培地(RPMI1640、イスコフDMEM、Leibovitz L−15、Leibovitz L−15、TC100)、無血清培地(例えばCHO、Ham F10および誘導体、Ham F12、DMEM/F12)を含むが、これらに限定されない。栄養培地に見られる一般的な緩衝剤は、PBS、Hanks BSS、Earles塩、DPBS、HBSS、およびEBSSを含む。哺乳動物細胞の培養のための培地は、当該技術分野において周知であり、例えば、Sigma−Aldrich社(St.Louis、MO)、HyClone社(Logan、UT)、Invitrogen社(Carlsbad、CA)、Cambrex社(E.Rutherford、NJ)、JRH Biosciences社(Lenexa、KS)、Irvine Scientific社(Santa Ana、CA)、およびその他から入手可能である。栄養培地中に見られる他の成分は、アスコルビン酸塩、クエン酸塩、システイン/シスチン、グルタミン、葉酸、グルタチオン、リノール酸、リノレン酸、リポ酸、オレイン酸、パルミチン酸、ピリドキサール/ピリドキシン、リボフラビン、セレン、チアミン、およびトランスフェリンを含み得る。いくつかの実施形態において、栄養培地は、無血清培地、無タンパク質培地、または既知組成培地である。本発明の範囲内に含まれる栄養培地への変更が存在することが、当業者には認識される。 いくつかの実施形態において、タンパク質トリスルフィド結合形成は、細胞培養基中に存在するシステインおよび/またはシスチンの濃度を監視および/または閾値レベル以下に操作することにより、防止、阻害または抑制される。例えば、低システインおよび/またはシスチンレベルを減少させる、または維持するために、栄養供給物中のシステインおよび/またはシスチンをメチオニンで置き換えることができる。いくつかの実施形態において、システインおよび/またはシスチンレベルを減少させるために、供給物の総量を低下させることができる。閾値レベルは、例えば、約150μM、約125μM、約100μM、約90μM、約80μM、約70μM、約60μM、約50μM、約40μM、約30μM、または約20μMであってもよい。 他の実施形態において、タンパク質トリスルフィド結合形成は、硫化水素(H2S)、硫化ナトリウム、および/または硫化水素ナトリウムの濃度を監視および/または閾値レベル以下に操作することにより、防止、阻害または抑制される。いくつかの実施形態において、反応物質、捕捉分子、または「スポンジ」が、細胞培養基中に導入され得る。本明細書で使用する「スポンジ」は、トリスルフィド結合を形成する硫黄または硫黄含有化合物の能力を低減、排除、または阻害することができる分子、化合物、または材料である。例えば、亜硫酸ナトリウムが、H2Sと反応しそれを排除するために導入され得る。閾値レベルは、例えば、約10mM、約9mM、約8mM、約7mM、約6mM、約5mM、約4mM、約3mM、約2mM、約1mM、約0.9mM、約0.8mM、約0.7mM、約0.6mM、約0.5mM、約0.4mM、約0.3mM、約0.2mM、または約0.1mMであってもよい。 いくつかの実施形態において、タンパク質トリスルフィド結合形成は、細胞成長の特定段階中に、細胞培養物から調整された細胞培養基を収穫することにより、防止、阻害、または抑制される。典型的な細胞培養成長曲線は、栄養培地への開始細胞の播種に続き、誘導期成長を含む。誘導期の後に培養物の対数期成長が続き、最終的に分裂停止期となる。本明細書で使用する際、「生物反応器工程」という用語は、細胞培養サイクル中の誘導期、対数期、または分裂停止期の成長期間の1つ以上を含み得る。したがって、いくつかの実施形態において、タンパク質試料は、トリスルフィド結合の形成または蓄積を最小限化するために、最大成長期中の細胞培養物から得られる。いくつかの実施形態において、細胞培養物は、細胞培養物がほぼ最大の細胞密度にある時に収穫される。別の実施形態において、タンパク質試料は、タンパク質生成、例えば組み換えタンパク質生成が最大である時点で細胞培養物から得られる。例えば、いくつかの実施形態において、収穫は、生物反応器工程の13日目に行われる。いくつかの実施形態において、細胞培養物は、トリスルフィド結合形成のピーク誘導前に収穫される。 いくつかの実施形態において、タンパク質トリスルフィド結合形成は、好ましい温度で細胞培養物を一時的または常に成長させることにより防止、阻害または抑制される。いくつかの実施形態において、温度は、35℃を超える温度に維持される。換言すれば、温度は、培養を通して一定の温度に維持されてもよく、または、温度は、シフトされてもよい。例えば、細胞培養物は、培養プロセスにわたり、約35℃に維持されてもよい。さらに、細胞培養物は、35℃で成長させてもよいが、より低い温度、例えば、約32℃の温度にシフトされてもよい。温度シフトは、例えば、培養物の収穫の1、2、3、4、または5日前に行われてもよい。例えば、生物反応器プロセスの13日目に収穫が行われる場合、温度シフトは、例えば、生物反応器プロセスの9日目に行われてもよい。より低温でのより遅い成長、および関連した過剰供給を相殺するために、温度の低下は、供給の低減と組み合わせて実行されてもよい。 タンパク質試料は、当業者に既知の方法を使用して、細胞培養物から得ることができる。例えば、凍結−融解サイクル、超音波照射、機械的破砕、または細胞溶解剤の使用等の方法を使用して、細胞を破砕し、タンパク質試料を得ることができる。細胞培養物中で細胞によりタンパク質が分泌される場合、タンパク質試料は、上澄みから容易に回収され得る。タンパク質試料はまた、例えば、スフェロプラスト調製および溶解、ガラスビーズを使用した細胞破砕、ならびに液体窒素を使用した細胞破砕等の方法を使用して得ることができる。 また、タンパク質試料は、システインカラム洗浄の前にさらに処理または精製されてもよい。例えば、試料は、システインカラム洗浄の前または後のいずれかに、硫酸アンモニウムもしくはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンもしくは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィー、タンパク質リフォールディングステップならびに/または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供することができる。VI.低減されたトリスルフィドを有するタンパク質を含む組成物およびその使用 トリスルフィド結合を防止および/または排除するために本明細書に記載の方法に従い処理されたタンパク質は、診断分析、免疫測定および/または医薬組成物における後の使用のために調製され得る。 いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法で処理されたタンパク質、例えば抗体は、未処理対照と比較して増加した保存安定性を有する。別の実施形態において、本明細書に記載の方法で処理されたタンパク質、例えば抗体は、未処理対照と比較して減少した凝集傾向を有する。さらに他の実施形態において、本明細書に記載の方法によるタンパク質、例えば抗体の処理は、未処理対照と比較して減少した酸化、例えばメチオニン酸化をもたらす。 したがって、一実施形態は、タンパク質の組成物中のトリスルフィドのレベルを低減することを含む、タンパク質、例えば抗体の組成物中のタンパク質酸化、例えばメチオニン酸化を低減するための方法を提供する。別の実施形態は、タンパク質の組成物中のトリスルフィドのレベルを低減することを含む、タンパク質、例えば抗体の組成物中のタンパク質凝集を低減するための方法を提供する。別の実施形態は、タンパク質の組成物中のトリスルフィドのレベルを低減することを含む、タンパク質、例えば抗体の組成物中のタンパク質安定性を増加させる方法を提供する。 いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、長期タンパク質および抗体保存安定性を増加または向上させるために使用することができる。したがって、一実施形態は、抗体中のトリスルフィド結合をジスルフィド結合に変換することにより、長期抗体保存安定性を改善するための方法を提供し、この方法は、(a)少なくとも1つのトリスルフィド結合を有する少なくとも1つの抗体を含む溶液中の抗体を、固体支持体と接触させて会合させることと、(b)還元剤を含む溶液に当該抗体を暴露することと、(c)還元剤を含む溶液を、還元剤を含まない溶液で置き換えることと、(d)長期保存用の組成物中の当該抗体を調製することとを含み、ステップ(a)および(b)は、同時に、または任意の順番で行われ、その後ステップ(c)、次いでステップ(d)が続く。一実施形態において、長期抗体保存安定性を改善することは、無傷抗体分子からの抗体軽鎖の共有結合の切断または欠失を低減する。別の実施形態において、長期抗体保存安定性を改善することは、抗体凝集の形成を低減する。 いくつかの実施形態において、長期抗体保存安定性を改善する方法は、(a)少なくとも約5%の改善、(b)5%以上の改善、(c)少なくとも約10%の改善、(d)10%以上の改善、(e)少なくとも約15%の改善、(f)15%以上の改善、(g)少なくとも約20%の改善(h)20%以上の改善、(i)少なくとも約25%の改善、(j)25%以上の改善、(k)少なくとも約30%の改善、(l)30%以上の改善、(m)少なくとも約40%の改善、(n)40%以上の改善、(o)少なくとも約50%の改善、(p)50%以上の改善、(q)少なくとも約60%の改善、(r)60%以上の改善、(s)少なくとも約80%の改善、および(t)80%以上の改善からなる群から選択される量での長期保存安定性の改善をもたらす。改善の量は、説明される方法に従い調製されていない抗体組成物に対する、説明される方法に従い調製された抗体組成物中の抗体特異的結合活性、無傷抗体分子のパーセンテージ、または抗体凝集物のパーセンテージを比較することにより決定され得る。改善は、長期保存中または後の任意の時点で決定され得る。 いくつかの実施形態において、長期保存は、(a)1ヶ月以上、(b)2ヶ月以上、(c)3ヶ月以上、(d)4ヶ月以上、(a)5ヶ月以上、(e)6ヶ月以上、(f)8ヶ月以上、(g)10ヶ月以上、(h)12ヶ月以上、(i)18ヶ月以上、(j)24ヶ月以上、(k)30ヶ月以上、(l)36ヶ月以上、(m)48ヶ月以上、および(n)72ヶ月以上からなる群から選択される期間の保存を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、実質的に水和した、または実質的に水和していない形態で保存される。 いくつかの実施形態において、長期保存は、(a)−70℃以下、(b)約−70℃、(c)−70℃以上、(d)−20℃以下、(e)約−20℃、(f)−20℃以上、(g)0℃以下、(h)約0℃、(i)0℃以上、(j)4℃以下、(k)約4℃、(l)4℃以上、および(m)20℃以下からなる群から選択される温度で1ヶ月以上の期間の保存を含む。 いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法で処理されたタンパク質は、「薬学的に許容される」形態に製剤化される。「薬学的に許容される」とは、健全な医学的判断の範囲内において、正当な利益/リスク比に相応する過度の毒性またはその他の合併症のない、人間および動物の組織との接触に好適な生物学的製剤を指す。 本明細書に記載の方法に従い処理される抗体は、ヒトを含む哺乳動物への投与用の薬学的組成物に製剤化され得る。本発明の方法において使用される医薬組成物は、例えば、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミン等の血清タンパク質、リン酸等の緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の一部グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン等の塩、または電解質、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂等を含む、薬学的に許容される担体を含む。 本発明の方法で使用される組成物は、任意の好適な方法で、例えば、非経口的、脳室内、経口的、吸入スプレーにより、局所的に、経直腸的に、経鼻腔的に、頬側に、経膣的に、または埋め込まれた容器を介して投与され得る。本明細書で使用する「非経口的」という用語は、皮下、経静脈、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、病変内、および頭蓋内注射または注入法を含む。 任意の特定患者に対する特定の投与量および治療レジメンは、使用される特定の抗体、患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、および食事、投与時間、排出率、薬物の組み合わせ、および治療対象の特定の疾病の重度を含む、様々な要因に依存する。医療従事者によるかかる要因の判断は、当該技術分野における通常技術の範囲内である。また、量は、治療対象の個別の患者、投与経路、製剤の種類、使用される化合物の特徴、疾病の重度、および所望の効果にも依存する。使用される量は、当該技術分野において公知の薬理および薬物動態の原理によって決定することができる。本発明の実行は、別段の指定がない限り、当該技術分野の範囲内である、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子組み換え生物学、細菌学、組み換えDNA、および免疫学の従来の技術を使用する。そのような技術は、文献中に十分説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,Sambrook et al.,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press:(1989)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook et al.,ed.,Cold Springs Harbor Laboratory,New York(1992)、DNA Cloning,D.N.Glover ed.,Volumes I and II(1985)、Oligonucleotide Synthesis,M.J.Gait ed.,(1984)、Mullis et al.米国特許第4,683,195号、Nucleic Acid Hybridization,B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1984)、Transcription And Translation,B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1984)、Culture Of Animal Cells,R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,(1987)、Immobilized Cells And Enzymes,IRL Press,(1986)、B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984)、論文、Methods In Enzymology,Academic Press,Inc.,N.Y.、、Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells,J.H.Miller and M.P.Calos eds.,Cold Spring Harbor Laboratory(1987)、Methods In Enzymology,Vols.154 and 155(Wu et al.eds.)、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology,Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London(1987)、Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I−IV,D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,(1986)、Manipulating the Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1986)、およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989)を参照されたい。 抗体操作の一般原理は、Antibody Engineering,2nd edition,C.A.K.Borrebaeck,Ed.,Oxford Univ.Press(1995)に記載されている。タンパク質操作の一般原理は、Protein Engineering,A Practical Approach,Rickwood,D.,et al.,Eds.,IRL Press at Oxford Univ.Press,Oxford,Eng.(1995)に記載されている。抗体および抗体−ハプテン結合の一般原理は、Nisonoff,A.,Molecular Immunology,2nd ed.,Sinauer Associates,Sunderland,MA(1984)、およびSteward,M.W.,Antibodies,Their Structure and Function,Chapman and Hall,New York,NY(1984)に記載されている。さらに、当該技術分野において知られているが具体的には説明されていない標準的方法は、概して、Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,New York、Stites et al.(eds),Basic and Clinical−Immunology(8th ed.),Appleton & Lange,Norwalk,CT(1994)およびMishell and Shiigi(eds),Selected Methods in Cellular Immunology,W.H.Freeman and Co.,New York(1980)に従う。 免疫学の一般原理を記載した標準的参考文献は、Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,New York、Klein,J.,Immunology:The Science of Self−Nonself Discrimination,John Wiley & Sons,New York(1982)、Kennett,R.,et al.,eds.,Monoclonal Antibodies,Hybridoma:A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,New York(1980)、Campbell,A.,”Monoclonal Antibody Technology” in Burden,R.,et al.,eds.,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Vol.13,Elsevere,Amsterdam(1984)、Kuby Immunology 4th ed.Ed.Richard A.Goldsby,Thomas J.Kindt and Barbara A.Osborne,H.Freemand & Co.(2000)、Roitt,I.,Brostoff,J.and Male D.,Immunology 6th ed.London:Mosby(2001)、Abbas A.,Abul,A.and Lichtman,A.,Cellular and Molecular Immunology Ed.5,Elsevier Health Sciences Division(2005)、Kontermann and Dubel,Antibody Engineering,Springer Verlan(2001)、Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Press(2001)、Lewin,Genes VIII,Prentice Hall(2003)、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1988)、Dieffenbach and Dveksler,PCR Primer Cold Spring Harbor Press(2003)を含む。 上に列挙したすべての参考文献、および本明細書に挙げたすべての参考文献は、参照することによってそれらの全体が本明細書に組み入れられる。 実施例組み換え抗体はトリスルフィド結合を含有する チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞清澄化馴化培地(CCM)において発現されたIgG1モノクローナル抗体(IgG1 mAb−A)は、複数の分析技術によりトリスルフィド修飾を含有することが判明した。質量スペクトル分析は、無傷非還元mAbに対するピーク幅の広がりを示した。平均質量は増加し、質量増加およびピークの広がりの効果の両方が、還元条件により排除された。 これらの実験において、IgG1 mAbの調製物を、まず、定組成条件下でのサイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)により、モノマー性の高および低分子量種に対して分析した。分析は、TSKgelガードカラム(#08543)付きTosoh Biosciences G3000SWXL分析カラム、Waters 600SコントローラならびにEmpowerソフトウェアにより制御される717plusオートサンプラーを使用して行った。その後のペプチドマッピング分析は、高圧液体クロマトグラフィーおよび質量分析(LC−MS)により行った。モノクローナル抗体(約100μg)を、約6Mグアニジン塩酸塩の存在下で、30分間周囲温度で4−ビニルピリジンで処理した。次いで、タンパク質をエタノール沈殿により回収した。約20μgの4−ビニルピリジン処理mAbを、2M尿素の存在下、周囲温度で16時間endo−Lys−C(Wako、#125−02543)で消化した。一定量(約4μg)を5M尿素に調節し、UPLC−LCT Premierシステム(Waters)を使用して、アセトニトリルおよびトリクロロ酢酸の勾配でT3 HSSカラム上で分離した。液体クロマトグラフィー/質量分析(LC−MS)の分析により生成されたデータは、MassLynx 4.1ソフトウェアを使用して処理された。トリスルフィド結合H−Lペプチドのパーセンテージは、既知のペプチドを内標準物質として用い、3つすべての荷電状態、すなわち1+〜3+のUVトレース上または抽出イオンクロマトグラム上のピーク面積から計算された。パーセントH−Lトリスルフィドは、(トリスルフィドのピーク面積)/(ジスルフィドのピーク面積+トリスルフィドのピーク面積)として計算された。分析の検出限界は、0.1%未満であった。定量化限界は、1%未満である。これらの実験では、トリスルフィド結合の存在が確認され、修飾の主要部位が重鎖と軽鎖との間の結合(H−L結合)であることが明らかとなった。ヒンジ領域ジスルフィドの修飾は、より低い頻度で生じた。対照的に、鎖内ジスルフィド結合のトリスルフィド修飾は検出されなかった。 さらに、H−Lトリスルフィドを含有するIgG1 mAb−A調製物は、「mAb−A−LT」と呼ばれる、トリスルフィドが検出不可能な同様の調製物と比較して、高温処理に対する増加した感受性を示した。これらの実験において、IgG1 mAbの分析は、IgG Purity/Heterogeneity Assay Kit(#A10663)およびProteomeLab PA−800機器(Beckman Coulter)を使用して、ドデシル硫酸ナトリウムの存在下での変性非還元キャピラリー電気泳動により行われた。基本的に製造者の指示(Protocol A10424−AC)に従い、ヨードアセトアミド、1mMのSDSおよび10kDaの標準物質の存在下で70℃に3分間加熱することにより、試料(200μg)を調製し、むき出しの溶融石英キャピラリー中で、220nmでの検出と共に35分間分離した。図1Aおよび1Bに示される結果は、非還元電気泳動のための試料調製後のフラグメント化のレベルの増加を示している。単一の最も豊富なフラグメントの電気泳動パターンは、無傷mAbからの1つの軽鎖(L)の欠失と一致し、同時に、2つの重鎖および1つの軽鎖からなる種(HHLフラグメント)が生成した。この現象は、次いで、IgG1 mAb中のトリスルフィド含量に影響する条件の迅速なスクリーニングに使用された。このスクリーニングにおいて、トリスルフィド結合の検出のための迅速な分析法として非還元電気泳動が使用された。発酵条件はトリスルフィドの生成に影響する 発酵条件がトリスルフィドレベルに影響するかどうかを決定するために、生物反応器内で一連の試験を行った。抗LINGO−1抗体Li81を使用した200リットルの生物反応器内での発酵時間の影響を試験するために実験を行った。経時変化は、鐘型形状の曲線を示した。早期の時点において、トリスルフィドレベルは高かった。トリスルフィドレベルは、培養物が最大細胞密度および最大抗体生成を達成した時に降下し、後の時点でレベルは再び増加した。これらの試験に基づき、13日目が生成に理想的であるとして選択された。 様々なサイズの生物反応器、すなわち小型生物反応器(例えば3〜6リットル)、200リットル生物反応器、および2000リットル生物反応器において、同様の試験を行った。データは、例えば、大型生物反応器内で培養されるような大量細胞培養物中のタンパク質の生成を介して、より低いトリスルフィド結合レベルを達成することが可能であることを示唆している。硫化水素による処理はトリスルフィド結合を増加させる 細胞培養物中の硫化水素濃度がトリスルフィド結合レベルに影響し得るかどうかを決定するために、2%トリスルフィドを含有するmAb−Aを、増加する期間、増加濃度の硫化水素に暴露した。これらの実験において、50mM Tris pH7.8中のMab(7.5mg/mL)を、125mM H2S水溶液(Ricca Chemical Company)から希釈した2.5、0.5または0.125mMのH2Sで処理した。試料を室温で3時間、室温で24時間、または37℃で90分間インキュベートし、10mMクエン酸ナトリウムpH6.5、50mM NaCl中で平衡化されたP6DGスピンカラムで速やかに脱塩し、過剰のH2Sを除去した。ペプチドマッピングにより試料を分析した。図2に示される結果は、硫化水素の濃度または硫化水素への暴露時間における両方の増加が、トリスルフィド結合の増加に相関したことを実証している。システイン濃度はトリスルフィド結合に影響する システインの濃度がトリスルフィド結合形成に影響するかどうかを決定するために、追加のシステインを供給した細胞培養物中のトリスルフィド結合レベルを評価した。14日目に、培養物に、完全供給+追加的アミノ酸+追加的Cys、完全供給+追加的Met+Cys、または完全供給+追加的Metのみを供給した。図3に示される結果は、タンパク質試料中の増加したトリスルフィド結合レベルは、少なくとも細胞培養工程の後期(例えば14日目以降)に追加が行われた場合、細胞培養物中のシステインの増加した濃度と相関することを実証している。抗体中のトリスルフィド修飾の特性決定 モノクローナル抗体(mAb)は、疾患処置用の生物医薬品の重要な類である(Nieri et al.,Curr.Med.Chem.16(2009)753−779およびWalsh,Nat.Biotechnol.24(2006)769−776)。すべて、同様の構造的特徴、高い特異性、および長い半減期を共有している。生物医薬品の開発の成功は、生成物の不均一性を評価するために使用される方法の継続的な改善に依存している。不均一性の一般的な源は、グリコシル化、酸化、アミド分解、ジスルフィド結合スクランブリング、タンパク質分解による切断、誤った折り畳み等からもたらされる、翻訳後の修飾である(Liu et al.,J.Pharm.Sci.97(2008)2426−2447)。酸化、アミド分解、および糖化等のいくつかの修飾は、タンパク質生成、処理、および保存中に生じ、有害となり得る(Jenkins et al.,Mol.Biotechnol.39(2008)113−118)が、他(グリコシル化、リン酸化、ジスルフィド結合形成)は、正しいタンパク質構造および機能に必要である(Walsh,Posttranslational Modification of Proteins:Expanding Nature’s Inventory,Roberts and Co.Publishers,2005)。したがって、翻訳後の修飾は、生成物品質の一貫性を保証するために綿密に監視される(Jenkins et al.,Mol.Biotechnol.39(2008)113−118、Barnes and Lim,Mass Spectr.Rev.26(2007)370−388、およびZhang et al.,Mass Spectr.Rev.28(2009)147−176)。 抗体は、複数の鎖間および鎖内ジスルフィド結合を有する、軽鎖の2つの複製および重鎖の2つの複製で構成される複数ドメインタンパク質である。ジスルフィド結合の誤った対形成は、抗原認識、結合親和性、構造、および安定性等のタンパク質機能の変化をもたらし得る折り畳みに影響し得る(Glockshuber et al.,Biochemistry 31(1992)1270−1279)。ジスルフィド構造において一般的に見られる修飾は、ジスルフィド結合スクランブリング(Glocker et al.,J.Am.Soc.Mass Spectr.6(1995)638−643)、グルタチオン化(Gallogly and Mieyal,Curr.Opin.Pharmacol.7(2007)381−391)、システイン化(Banks et al.,J.Pharm.Sci.97(2008)775−790)、および酸化を含む。ジスルフィド結合への硫黄原子の挿入により生じるタンパク質中のトリスルフィド結合は、ほとんど文書化されていない。タンパク質中のトリスルフィドの存在は、大腸菌誘導組み換えヒト成長ホルモン(hGH)の小さいジスルフィドループに関して最初に報告され(Jespersen et al.,Eur.J.Biochem.219(1994)365−373、およびAndersson et al.,Int.J.Pept.Protein Res.47(1996)311−321)、後に、メチオニルhGHにおける大きいジスルフィドループにおいても確認された(Canova−Davis et al.,Anal.Chem.68(1996)4044−4051)。トリスルフィドはまた、大腸菌において発現された組み換え切断インターロイキン−6(Breton et al.,J.Chromatogr.A 709(1995)135−146.)、およびヒト赤血球から単離されたCu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ(Okado−Matsumoto et al.,Free Radic.Biol.Med.41(2006)1837−1846)においても検出されている。hGHにおけるトリスルフィド修飾は、化合物のインビトロでの機能または薬物動態に影響しなかった(Thomsen et al.,Pharmacol.Toxicol.74(1994)351−358)が、タンパク質の疎水性には影響した。hGHがトリスルフィドレベルを低減する、またはトリスルフィドを再びジスルフィドに変換するように、緩衝液交換、pH制御、および穏やかな還元を含む方法が開発されている(米国特許第7,232,894号)。最近、ヒトIgG2 mAbの重鎖間のCys結合内のトリスルフィドが、報告された(Pristatsky et al.,Anal.Chem.81(2009)6148−6155)。我々はここで、組み換えおよび天然IgG1、2、3、および4イソ型の調製物中の軽鎖と重鎖との間のトリスルフィド結合の発見を報告する。mAb中のトリスルフィドの量は変動し、主に、軽鎖と重鎖との間の結合に生じる。その決定および定量化のための質量分析法、トリスルフィド形成に対する発酵条件の影響、ならびに抗体活性および安定性に対するトリスルフィド修飾の効果について議論する。材料および方法 Biogen Idec(Cambridge、MA)社において、モノクローナル抗体[mAb1(アグリコシル型)、mAb2(野生型およびアグリコシル型)、mAb3、mAb4、mAb5、mAb6、およびmAb7]をCHO細胞内で生成し、タンパク質A親和性クロマトグラフィーにより精製した。天然ヒト骨髄腫IgGを、Sigma−Aldrich社(St.Louis、MO)から入手した。製品番号は、IgG1がI 5154、IgG2がI 5404、IgG3がI 5654、およびIgG4がI 4639であった。市販のmAb製剤(薬物1、薬物2、および薬物3と呼ばれる)を、適切な代理店から入手した。 無傷質量分析。天然タンパク質約22.5μgを、LCTエレクトロスプレー飛行時間質量分析計(Waters社、Milford、MA)で分析した。分析前に、Acquity UPLCシステム(Waters社、Milford、MA)に接続された小口径Vydac C4カートリッジ(5μm粒径、2.1mm内径)を使用して、タンパク質を脱塩した。移動相Aは、水中0.03%トリフルオロ酢酸であり、移動相Bは、アセトニトリル中0.024%トリフルオロ酢酸であった。100%のAを5分間使用してタンパク質を脱塩し、次いで80%のBを1分間、0.1mL/分の流量で使用して溶出した。分子量は、MaxEnt 1プログラムを使用して、デコンボリューションにより得た。半値全幅(FWHM)を測定することにより、未処理質量スペクトルにおける平均ピーク幅を、荷電状態49〜51より決定した。 タンパク質のアルキル化。1:10希釈4−ビニルピリジン(8Mグアニジン塩酸塩中)約1.0μLを、タンパク質約90μgを含有する溶液12.5μLに添加し、8Mグアニジン塩酸塩を混合物に添加し、50μLの最終体積とした。溶液を、暗所で30分間20℃に維持した。40体積の冷エタノールによる沈殿によって、アルキル化タンパク質を回収した。混合物を−20℃で1時間保存し、次いで4℃において14000gで12分間遠心分離した。上澄みを廃棄し、沈殿物(約22.5μg/バイアル)を冷エタノールで1回洗浄した。 非還元トリプシンおよびエンドプロテアーゼLys−Cペプチドマッピング。トリプシン消化に関しては、4−ビニルピリジン処理タンパク質約22.5μgを、50μLの2M尿素、0.2M Tris・HCl、2mM CaCl2、pH6.5中5%(w/w)のendo−Lys−C(Wako Chemical社、Richmond、VA)で、室温で5時間消化し、その後10%(w/w)のトリプシン(Promega社、Madison、WI)を添加し、溶液をさらに15時間室温で保持した。LC−MSによる消化物の分析前に、8M尿素50μLを各消化物に添加し、消化物を2つのバイアルに均等に分割し、一方のバイアル内の試料は、150mM Tris、pH6.0、1mM EDTA中の30mM TCEPで、37℃で1時間還元し、他方のタンパク質は、還元なしで直接分析した。還元および非還元消化物の両方を、Waters UPLC−LCT Premier XEシステム(Waters社、Milford、MA)で分析した。移動相Aは、水中0.03%トリフルオロ酢酸であり、移動相Bは、アセトニトリル中0.024%トリフルオロ酢酸であった。50pモルの消化物の一定量を、2.1×150mm T3 HSSカラムで、0%〜40%のBの勾配で60分かけて分離した。流量は、70μL/分であった。 集中的Lys−Cペプチドマッピングに関しては、4−ビニルピリジン処理タンパク質約22.5μgを、50μLの2M尿素、2mM CaCl2、0.2M Tris−HCl(pH6.5)中で、10%(w/w)のLys−C(Wako社)で室温で16時間消化した。LC−MSによる消化物の分析前に、8M尿素50μLを各消化物に添加した。25pモル天然タンパク質(3.8μg)の消化物の一定量を、同じLC−MSシステムで分析したが、ただし、勾配は、10分で10%〜19.5%のBであった。トリスルフィド結合ペプチドのパーセンテージは、UVトレースまたは抽出イオンクロマトグラム(EIC)上のピーク面積から計算した。 注入実験。mAb2−agly C(LC5−HC5結合において7.8%トリスルフィドを含有する)およびmAb2−agly D(検出可能なトリスルフィドを有さない)の両方の試料を、PBSで1.0mg/mLに希釈した。タンパク質の濃度は、計算吸光係数[A280(1mg/mL)=1.44mL/mg cm]を使用して、280nmにおけるUV吸光度から計算した。LC5−HC5結合におけるトリスルフィドの検出限界を決定するために、低容積マイクロシリンジを使用して、異なる量(0.56%〜50%)のmAb2−agly CをmAb2−agly Dに注入した。25pモル(3.8μg)の消化物を含有する一定量を、Lys−Cペプチドマッピング分析のために注入し、まず最低濃度のトリスルフィド注入を行い、続いて徐々により高い量の注入を行った。それぞれの場合において、試料を2回分析した。試料分析間で、水を注入し勾配をかけることによりカラムを清浄化した。トリスルフィドの量は、ジスルフィド結合およびLC5−HC5結合を含有する対応するトリスルフィド結合ペプチドクラスタに対する抽出イオンクロマトグラム(EIC)におけるピーク面積から推定した。 H2Sによるインキュベーション。50mM Tris緩衝液(pH7.8)中のタンパク質(mAb1、7.5mg/mL)を、125mM H2S水溶液(Ricca Chemical社、Arlington、TX)から希釈した0.5、2.0または2.5mM H2Sで処理した。試料を室温で3時間もしくは24時間、または37℃で90分間インキュベートした。インキュベーション後、過剰のH2Sを除去するために、10mMクエン酸ナトリウム、50mM NaCl、pH6.5中で平衡化されたBio−gel P6DGスピンカラム(Bio−Rad社、Carlsbad、CA)で試料を速やかに脱塩した。ペプチドマッピングにより試料を分析した。 直接結合ELISAによるmAb1およびmAb2機能の分析。Costar 96ウェル容易洗浄プレートを、4℃の50mM炭酸ナトリウム(pH9.5)中で、mAb1に結合する5μg/mLヒト抗原で一晩被覆した(50μL/ウェル)。プレート洗浄機を使用してプレートを350μLのPBSで3回洗浄し、25mM HEPES(pH7.0)を含有するハンク平衡塩緩衝液中の1%BSA、0.1%オボアルブミン、および0.1%無脂肪乾燥乳で、室温で1時間ブロックした。次いで、プレートを再び洗浄し、10μg/mLで開始する各試験化合物用に設定した3倍希釈シリーズで、すべて25mM HEPES(pH7.0)を含有するハンク平衡塩緩衝液中の0.1%BSA、0.1%オボアルブミン、および0.1%無脂肪乾燥乳中で1時間インキュベートし(50μL/ウェル、8希釈)、再び洗浄した。結合したmAb1は、AP抗ヒトFabを使用して検出された。プレートを室温で1時間インキュベートし、洗浄し、100mMグリシン、pH10.5、1mM MgCl2、1mM ZnCl2中の10mg/mL 4−ニトロフェニルホスフェートアルカリ性リン酸塩基質で処理した。プレートは、Molecular Devicesプレートリーダ上で405nmで読み取られた。結合のEC50値は、プリズムソフトウェアを使用して滴定曲線から計算された。mAb2の機能をmAb1に関して評価したが、ただし、mAb2に結合するヒト抗原1μg/mL(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.6中)で、4℃で一晩96ウェルマイクロプレートを被覆した。2%BSAを含有するPBSで、室温で1時間プレートをブロックした。抗体を示された濃度に希釈し、室温で2時間インキュベートした。ホースラディッシュペルオキシダーゼ共役ヤギ抗ヒトポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch社、West Grove、PA)を使用し、続いて基質テトラメチルベンジジンを使用したホースラディッシュペルオキシダーゼ活性の測定により、結合を決定した。 インビトロおよびインビボでのラット血清におけるトリスルフィドの安定性の評価。インビトロ試験においては、mAb1−B(軽鎖−重鎖結合において20%のトリスルフィド)500μgを、PBS中または正常ラット血清1mL中、37℃で16時間または96時間インキュベートし、その後、タンパク質をIgSelect親和性樹脂(GE Healthcare社、Piscataway、NJ)で精製した。試料を、樹脂100μLで、穏やかに撹拌しながら室温で2時間インキュベートした。次いで、樹脂を0.5mLのPBSで6回、および0.5mLの25mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH5.5で6回洗浄し、その後、結合した抗体を、25mMリン酸ナトリウム、pH2.8、100mM NaClで溶出した。溶出液を、1/20体積の0.5Mリン酸ナトリウム、pH8.6の添加により中和した。インビボ試験においては、3匹の200g Sprague Dawleyラットに100mg/kg mAB1−Bを腹腔内注射した。24時間および72時間後に血液を採取し、凝血させて血清を形成させた。血清の一部(24時間の時点に対しては750μL、72時間の時点に対しては1050μL)を、150μLのIgSelect(プロトコルは上で説明されている)を使用したIgSelect精製に供した。精製されたmAb1を、非還元SDS−PAGEおよびLys−Cペプチドマッピングにより分析し、トリスルフィドレベルを決定した。インビトロおよびインビボ試験からの再単離されたmAb1試料は無傷であり、SDS−PAGEによると95%を超える純度であった。カラム回収に基づき、24時間および72時間後の血清中のmAb1のレベルは、それぞれ、850μg/mLおよび700μg/mLのmAb1であったが、これは、トリスルフィドを含まないmAb1試料のラット薬物動態試験から生成された理論的予測と一致した。結果 無傷質量分析。いくつかの非還元試料において最大20Daの増加が観察されたが、還元試料においては観察されなかった無傷質量測定から、モノクローナル抗体1(mAb1)におけるトリスルフィドの存在が予測された。質量の増加は、未処理質量スペクトルにおける予測よりも広いピーク幅を伴い、生成物の不均一性を示していた。質量の増加およびピークの広がりの程度は、トリスルフィドのレベルと直接相関していたが、これは、ペプチドマッピングにより確認された。+50の荷電において、LC5−HC5結合に20%のトリスルフィドを有するmAb1−B(アグリコシルIgG1抗体)の質量スペクトルを、LC5−HC5結合に0.5%トリスルフィドを有するmAb1−Aの質量スペクトル上に重ねた。ピークの広がりは、タンパク質の観察質量における144,440Daから144,459Daへのシフトをもたらした。 非還元タンパク質のペプチドマッピングおよびタンデム質量分析。トリスルフィド修飾の特定および定量化のために、完全に特性決定されたmAb1のペプチドマップを作成した。還元mAb1のトリプシンペプチドマッピング(還元マップ)では、アミノ酸配列が確認されたが、天然mAb1−Bの無傷質量測定により観察される質量増加を説明し得るいかなる修飾も明らかとはならなかった。タンパク質のジスルフィド構造を形成するペプチド結合を検討するために、非還元タンパク質のペプチドマップを使用した。図4Aに概略的に示されるように、IgG1抗体は、12個の鎖内および4個の鎖間ジスルフィドを含有する。非還元mAb1−Bのトリプシンペプチドマッピングは、ペプチドマップの主要成分として、すべての予測されたジスルフィド結合ペプチドクラスタを明らかにした。還元タンパク質のペプチドマップにおいては見られない、非還元タンパク質のトリプシンマップにおける16分、19分、および54分で溶出する3つの余分なピークもまた検出された。これらのピークにおける成分の分子量は、それぞれ、788.217、1292.457、および5486.767Daである。ペプチドの抽出イオンクロマトグラム(EIC)は、それぞれ、16分および19分における溶出を示した。788.217Daの成分の質量は、ジスルフィド結合ペプチドクラスタPepLT20/PepHT17の計算質量(756.242Da)よりも32Da高い[すなわち、軽鎖のトリプシンペプチド#20(PepLT20)および重鎖のトリプシンペプチド#17(PepHT17)は、Cys残基を介して結合している]。同様に、1292.457Daの成分の質量は、タンパク質の部分的消化により生じるジスルフィド結合ペプチドクラスタPepLT19−20/PepHT17に対して計算された質量(1260.486Da)よりも32Da高い(すなわち、ペプチドPepLT19とPepLT20との間のペプチド結合は切断されていない)。16分および19分で溶出するペプチドクラスタは、両方とも、軽鎖のCys残基5(LC5)および重鎖のCys残基5(HC5)を含有し、これらが、重鎖および軽鎖を結合する鎖間ジスルフィドを形成する(図4)。 これらのペプチドに対してタンデム質量分析を行い、修飾の種類および場所を確認した。ジスルフィド結合および推定トリスルフィド結合PepLT19−20/PepHT17ペプチドクラスタの二重荷電イオンから得られたCID質量スペクトルを分析した。Cys残基が欠落したフラグメントイオンは、両方のスペクトルにおいて同じ質量を示した。しかしながら、Cysを含有するフラグメントイオンはすべて、対応するCIDスペクトルにおいて32Daの差を示した。例えば、y1イオンのm/zは、PepLT19−20/PepHT17ジスルフィドクラスタに対しては571.25であるが、対応するトリスルフィドクラスタに対しては603.08である。さらに、ジスルフィドおよびトリスルフィド結合のいくつかは、CID実験中に切断された。トリスルフィド結合ペプチドクラスタのCIDスペクトルにおいて、PepLT19−20+2S(876.33Da)およびPepHT17+2S(516.17Da)が明確に観察され、一方これらのイオンは、対応するジスルフィド結合ペプチドクラスタのCIDスペクトルにおいては存在しなかった。 非還元タンパク質のペプチドマップにおける54分で溶出するピークを、同じ分析に供した。5486.767Daの成分は、重鎖のジスルフィド結合ヒンジペプチド(PepHT18−PepHT18、5454.783Da)に対して計算された質量よりも32Da高く、一方の重鎖におけるHC6およびHC7は、他方の重鎖における同じ残基に結合している。重鎖のトリスルフィド結合クラスタに対するEIC(データは示さず)において、2つの重複するピークがあるため、両方のCys残基対がトリスルフィド結合に関与しているはずである。しかしながら、これらの種の存在量が低いことから、CID MS/MSにより正確な結合を決定することはできなかった。 修飾および非修飾LC5−HC5およびHC6/7−HC6/7ペプチドクラスタに対するEICデータを使用して、mAb1−B試料中のトリスルフィドレベルを定量した。mAb1−Bにおけるトリスルフィド結合は、LC5−HC5結合の20%、およびHC6/7−HC6/7結合の4%を占めた。 他の抗体中のトリスルフィド。抗体中のトリスルフィド結合の発生頻度をより良く理解するために、すべてのIgGサブクラスを示す天然および組み替え抗体調製物を検査した。表12および13は、IgG抗体のすべてのサブクラスがトリスルフィドを含有することを示している。 表12は、7種の非臨床組み換えモノクローナル抗体で生成された結果を要約している。mAb1調製物でのLC5−HC5結合におけるトリスルフィドレベルは、0.2〜39.3%の範囲であった。mAb2調製物(野生型およびアグリコシルIgG1)のLC5−HC5結合におけるトリスルフィドレベルは、0.1%未満から21%までで変動した。HC6/7−HC6/7結合におけるトリスルフィドレベルは、LC5−HC5結合の場合よりも大幅に低く、LC5−HC5接続がトリスルフィド修飾に対し最も感受性の高い部位であることを実証した。鎖内ジスルフィド結合においては、トリスルフィドは検出されなかった。IgG2、IgG3、およびIgG4 mAbにおいて、重鎖および軽鎖は、IgG1 mAbにおいて見られるLC5−HC5結合の代わりに、LC5−HC3ジスルフィド結合を介して連結している。2つのIgG4 mAb、mAb5およびmAb6のLC5−HC3結合におけるトリスルフィドレベルは、それぞれ、11%および5%であった。HC6/7−HC6/7結合におけるトリスルフィドレベルは、mAb5において4%、およびmAb6において1%未満であり(表12および図4D)、鎖内トリスルフィドは検出されなかった。IgG2 mAb3のLC5−HC3結合におけるトリスルフィドレベルは、0.4%〜6%の範囲であり(表12および図4B)、ヒンジおよび鎖内ジスルフィド結合において検出可能なトリスルフィドは存在しなかった。IgG3 mAb4のLC5−HC3結合におけるトリスルフィドレベルは5%であった(表12および図4C)。モノクローナル抗体7(mAb7)、キメラヒト/マウスIgG2a抗体は、LC5−HC3において19〜28%のトリスルフィド、および重鎖間の3つのCys結合のそれぞれにおいて0〜1%のトリスルフィドを含有していた(表12)。 表13は、3種の市販のIgG1治療mAb、ならびにヒト骨髄腫血漿から単離されたIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4試料の天然調製物を特性決定した追加試験からの、ペプチドマッピング結果を要約している。3種の市販のIgG1治療mAbは、LC5−HC5結合において1〜4%のトリスルフィドを含有していた。ヒト骨髄腫血漿から単離されたIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4試料は、軽鎖と重鎖との間の結合(IgG1ではLC5−HC5、残りはLC5−HC3;表13および図4)において約1%のトリスルフィドを含有し、その他のトリスルフィド結合は検出されなかった。これらの結果は、トリスルフィドが、サブクラス、グリコシル化状態、またはそれが内因性もしくは組み換えタンパク質であるかどうかに関わらず、任意の抗体において生じ得ることを実証している。 IgG1 mAbにおけるトリスルフィド結合を監視するための集中的ペプチドマッピング。試料処理量を増加させるために、LC5−HC5結合を監視する集中的Lys−Cペプチドマッピング法を開発した。IgG1 mAbにおける軽鎖と重鎖との間のトリスルフィド結合のレベルは、2つの重鎖間のレベルよりも一貫して高いため、LC5−HC5結合が標的化された。図5Aは、非還元タンパク質Lys−Cペプチドマップにおける、LC5およびHC5を含有するジスルフィドおよびトリスルフィド結合ペプチドクラスタのEIC(IおよびII)ならびにUVトレース(III)を示す。図5A−IIIに示されるトリスルフィド修飾LC5−HC5のパーセンテージは約20%であり、トリプシンペプチドマップにおいて見られるものと同じである。単純化された消化プロセスおよび70分から15分に短縮された分離時間を利用した集中的ペプチドマッピング法を、IgG1抗体の後のトリスルフィド分析のすべてに適用した。注入実験により評価される、LC5−HC5結合におけるこの方法のトリスルフィド検出限界は、0.1%(図5B;R2=0.9989)であり、単一調製物の20回を超える個々の実験に基づくこの方法の標準偏差は、0.07である(相対標準偏差は3.8%、図5C)。トリスルフィド形成に対する生物反応器内の発酵条件の影響を理解するために設計された試験を支援する集中的ペプチドマッピング法を使用して、IgG1 mAb1およびmAb2の200を超える調製物を分析した(下記を参照されたい)。 トリスルフィド形成に対する細胞培養条件の効果。21の生物反応器実験からのmAb1におけるトリスルフィドレベルの評価により、細胞培養条件がトリスルフィド形成に対し非常に劇的な効果を有することが明らかとなった。4つの200L生物反応器からの経時変化試験をほぼ同一の条件下で行い、4つの生物反応器は、すべて同様のプロファイルを示し、トリスルフィドレベルは12日目または13日目あたりで最小であり、それより前または後(例えば9日目または16日目)では著しく高かった。mAb2(野生型およびアグリコシル形態)での生物反応器試験は、同様の傾向を示した。200Lのスケールで確立した条件を使用した2000L生物反応器からのmAb1試料中のトリスルフィドレベルは、同様の一貫性を示した。mAb1におけるトリスルフィド形成に影響し得る他の可変要素を調査するために、細胞密度および供給戦略等の複数の細胞培養パラメータを、3L〜6Lの生物反応器試験において変動させた。これらの実験からの試料のトリスルフィド分析では、LC5−HC5結合におけるトリスルフィド含量が1%未満から39%に大幅に変動し、200Lおよび200Lのサイズからの測定は5%未満であった。培養条件の評価は、トリスルフィドのレベルと任意の特定可能なパラメータとの間の単純な相関は示さなかったが、これらの試験は、細胞培養条件がmAbにおけるトリスルフィドレベルに著しく影響することを示している。 トリスルフィドレベルに対するH2S濃度の効果。大腸菌において作製された組み換えhGHによる試験は、トリスルフィドレベルが発酵中に生成されるH2Sに相関することを示した(米国特許第7,232,894号)。H2S濃度が抗体中のトリスルフィドのレベルに影響するかどうかを決定する試みにおいて、LC5−HC5結合に0.5%トリスルフィドを有するmAb1の試料(mAb1−A)を、異なる濃度のH2Sでインキュベートした。hGHによる観察(米国特許第7,232,894号)と類似して、mAb1におけるトリスルフィド形成は、緩衝液中のH2Sの濃度に依存する(表14)。0.5mM H2Sによる37℃で90分間のインキュベーションは、トリスルフィドレベルを0.5%から5%に増加させた。H2Sの存在下で得られた最高トリスルフィドレベルは、約15%であった。インキュベーションを延長してもレベルは増加しなかった。これらの試料の詳細トリプシンペプチドマッピング分析は、生物反応器から単離されたmAb1調製物において観察されるように、硫黄の付加が鎖間Cys結合においてのみ生じることを示した。 抗原への抗体結合に対するトリスルフィドの効果。ELISAに基づく結合分析を使用して、LC5−HC5結合に39%のトリスルフィドを含有するmAb1試料(mAb1−C)の結合親和性を、LC5−HC5結合に約0.5%のトリスルフィドを含有するmAb1−Aの結合親和性と比較した。試料は両方とも、同じS字型結合曲線を生成し、計算EC50値は20pMであった。さらに、インビトロバイオアッセイは、両方のmAb1試料の活性が区別不可能であることを示した。LC5−HC5結合における高い、および低いトリスルフィドレベルを有する野生型およびアグリコシルmAb2の結合親和性もまた比較した。mAb1に関しても見られるように、すべてのmAb2試料は、本質的に同じS字型結合曲線を示し、EC50値は約35pMであった。結合曲線の類似性は、タンパク質中のトリスルフィドの量がmAb1およびmAb2の結合特性に影響しなかったことを示唆している。 トリスルフィドのインビトロおよびインビボ安定性。mAb中のトリスルフィドの安定性を、規定緩衝系中、インビトロのラット血清中、および全身投与後のラットにおいてインビボで評価した。規定緩衝系実験において、mAb1−B(LC5−HC5結合に20%のトリスルフィドを含有する)およびmAb1−D(LC5−HC5結合に3%のトリスルフィドを含有する)を、pH6.5のクエン酸緩衝液中で、5℃および25℃で1ヶ月および3ヶ月の期間インキュベートした。ペプチドマッピング分析では、トリスルフィド結合が安定であり、これらの条件下においてタンパク質品質に変化がなかったことが明らかとなった。インビトロおよびインビボの血清中のトリスルフィドの安定性を評価するために、20%のトリスルフィドを含有するmAb1−Bを、ラット血清中、37℃で16時間および96時間インキュベートし、また同じ材料をラットに注射して、注射から24時間および72時間後に血清から単離した。インビトロのラット血清においてインキュベートされた試料においては、未処理対照と比較して、トリスルフィドのレベルに変化はなかった(表15;図6)。対照的に、腹腔内注射後24時間および72時間ラット内で循環した試料においては、トリスルフィドは検出されなかった。注射された血清からのタンパク質の回収は本質的に定量的であるため(方法の項を参照されたい)、データは、インビボでは最初の24時間の循環中にトリスルフィドからジスルフィドへの完全な変換が生じることを示唆している。さらに、ペプチドマップにおいて観察されるジスルフィドのレベルは、トリスルフィドをほとんど含有しないmAb1のマップにおけるレベルと同様であった。考察 我々は、トリスルフィドが抗体における一般的な翻訳後の修飾であり、そのグリコシル化状態とは無関係にすべてのIgGフレームワークに生じ得ることを実証した。修飾は、組み換えおよび天然抗体、ならびに非臨床調製物および市販の治療薬において生じ得る。試料中のトリスルフィドレベルは、検出限界未満から40%超まで変動したが、高レベルのトリスルフィドの存在は、抗体の機能または安定性に観察され得る効果を有さなかった。タンパク質中のトリスルフィドに関する公開された文献は非常に少ないが、我々の所見は、これが非常に一般的な修飾であることを示唆している。公開されたデータがほとんどないことは、トリスルフィドの検出には、本明細書に記載の方法等の、その分析に直接標的化された方法の使用が必要であることに起因すると思われる。 LC−MSシステムを使用した非還元タンパク質試料のペプチドマッピングは、トリスルフィドの特定および定量化のための高感度なおよび信頼性のある方法である。評価されたすべてのIgG抗体において、トリスルフィドは、4つのサブユニットを接続する重鎖−軽鎖および重鎖−重鎖の鎖間結合に生じたが、鎖内ジスルフィドのいずれにも生じなかった。重鎖−軽鎖結合において最高のレベルが一貫して観察された。処理量を増加させ、ペプチドマッピング分析を単純化するために、ヒトIgG1に対する集中的Lys−Cペプチドマッピング法が開発された。このプロトコルは、分析時間を大幅に短縮した。軽鎖および重鎖の結合におけるトリスルフィドのパーセンテージは、UVトレースまたはEICを使用してクロマトグラムから容易に定量化することができる。トリスルフィドのレベルが3%未満である場合、EICからの定量化が好ましい。EICから推定される方法の検出限界は0.1%であり、20回を超える独立した実験に基づき、RSDは3.8%である。LC5およびHC5を含有するペプチド配列はすべてのヒトIgG1抗体において同じであるため、mAb1用に開発されたLys−Cペプチドマッピング法は、すべてのヒトIgG1抗体に適用可能である。IgG2、IgG3、およびIgG4抗体におけるトリスルフィド結合の定量化においても、同様のペプチドマッピング戦略の開発に成功した。以前に、Pristatskyら(Pristatsky et al.,Anal.Chem.81(2009)6148−6155)は、ヒンジジスルフィド構造の特性決定の一環として、ヒトIgG2 mAbのヒンジのトリスルフィド修飾を特定した。特性決定を容易化するために、mAbは、イオン交換カラムで分画化されていた。分画化なしで我々が特性決定したIgG2 mAbにおいて、修飾の主要部位は、LC5−HC3結合にあり、ヒンジ領域においては検出可能なレベルは観察されなかった。我々の調製物中のLC5−LC3結合における低いトリスルフィドレベルのために、ヒンジにおけるレベルは検出限界未満であった可能性がある。 トリスルフィドレベルに対する細胞培養条件の効果は、驚くべきものであった。精製および特性決定されたほぼ100のmAb1調製物において、LC5−HC5結合におけるトリスルフィドのレベルは、1%未満〜40%の範囲であった。比較的穏やかと思われ、成長および培養生産性に大きくは影響しなかった培養条件の変化は、トリスルフィドレベルに大きな差をもたらした。特に、培養期間および供給戦略が重要な可変要素であり、細胞培養条件を厳密に制御することにより、再現可能なトリスルフィドレベルを有する生成物を得ることができる。 我々は、H2Sを用いた単純な処理により、トリスルフィドを抗体に化学的に組み込むことができることを示し、hGHによる最初の所見(米国特許第7,232,894号)を確認した。システインおよびホモシステインの酵素的分解を介した哺乳動物細胞および組織によるH2Sの生成は十分文書化されており(Chiku et al.,J.Biol.Chem.284(2009)11601−11612、Kamoun,Amino Acids 26(2004)243−254、Singh et al.,J.Biol.Chem.284(2009)22457−22466、Stipanuk and Beck,Biochem.J.206(1982)267−277、およびZhao and Wang,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.283(2002)H474−480)、細胞発酵中のトリスルフィド形成を説明し得る。化学反応の特異性は、鎖間ジスルフィドの溶媒暴露、および抗体の疎水性内部に埋没した鎖内ジスルフィドの暴露の欠如により促進される。ヒト組織におけるH2Sの低いレベル(Goodwin et al.,J.Anal.Toxicol.13(1989)105−109、およびZhao et al.,Embo J.20(2001)6008−6016)は、我々が内因性骨髄腫ヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4抗体において観察したトリスルフィドを説明し得るものであり、また人々がトリスルフィド結合を含有するタンパク質に日常的に暴露され得ることを示唆している。 トリスルフィド結合は、4℃および室温でのおよびインビトロのラット血清における長期保存に対し安定であったが、ラットへの全身投与後24時間以内にジスルフィドに急速に変換された。ラットにおけるトリスルフィドからジスルフィドへの急速な変換は、インビボで生じる他の報告されている還元酸化関連変化、例えば、ヒトIgG2抗体ヒンジジスルフィドの再配列(Liu et al.,J.Biol.Chem.283(2008)29266−29272)およびヒトIgG4のFab−アーム交換(Labrijn et al.,Nat.Biotechnol.27(2009)767−771)と一致している。これらの経路はすべて、鎖間結合が還元され、次いで再形成されることを必要とする。還元剤の非存在下では、トリスルフィド結合は非常に安定であるが、トリスルフィドからジスルフィドへの逆転は、穏やかな還元−酸化プロセスによりインビトロおよびインビボの両方で生じ得る。 要約すると、我々は、鎖間ジスルフィド結合に硫黄原子を挿入してトリスルフィドを形成することは、一般的な翻訳後の修飾であることを見出したが、これは概して、その検出に標的化された方法が必要であることから検出されていなかった。トリスルフィドの特定および定量化のために開発された方法は、任意の抗体に対して適用可能であるはずであり、他の種類のタンパク質の特性決定にも容易に適合され得る。将来、トリスルフィドの特定および定量化は、間違いなく生物医薬品の特性決定における重要な試験となるだろう。完全ペプチドマッピング カラム上でのトリスルフィド変換手順の効果をさらに分析するために、非還元ペプチドマッピング実験を行った。具体的には、(1)未処理mAb−A−LT(1.3%トリスルフィド)、(2)未処理mAb−A(17%トリスルフィド)、または(3)1mMシステインカラム洗浄処理に供したmAb−A(17%トリスルフィド)に対応する、3つのmAb−Aタンパク質A溶出液試料に対して、非還元ペプチドマッピングを行った。3つの試料(約100μg)を、50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.5中の8Mグアニジン、0.1mM NEM 115μL中で、25℃で1時間変性およびアルキル化した。次いで、試料を246μLの50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 6.5と混合することにより希釈してから、10μgのリシルエンドペプチダーゼ(Lys−C、Wako Chemicals社)を添加した。25℃で18時間、消化を行った。ESI質量分析計(LCQ Deca XP、Thermo社)を装備したAgilent 1000 HPLCを使用して、90μLのタンパク質消化物の一定量(25μgのタンパク質に等しい)を、YMC ODS−Aカラム(2×250mm、5μm、120Å )上で、TFAを含む水、TFAを含むACNの勾配で分離した。トリスルフィド修飾、ジスルフィドスクランブル、または遊離システイン含有ペプチドの存在に関して、ペプチドマップデータを調査した。トリスルフィド修飾のパーセンテージは、(トリスルフィドペプチドのピーク面積)/(ジスルフィドペプチドのピーク面積+トリスルフィドペプチドのピーク面積)として計算された。 mAb−AにおけるH−Lトリスルフィドのレベルは、カラム上での1mMシステイン洗浄後に、17%の初期レベルから1.5%の処理後レベルまで大幅に減少したが、これは、未処理mAb−A−LT(1.3%)において検出されたレベルと同様であった。さらに、各試料のジスルフィド結合ペプチドマップは同様であり、ジスルフィドスクランブリングまたは遊離mAbスルフヒドリル基のレベルにおいて検出可能な差はなかった。トリスルフィドの変換はタンパク質構造または折り畳みに影響しない タンパク質構造に対するトリスルフィドからジスルフィドへの変換の影響を評価するために、水素/重水素交換質量分析(H/DX−MS)を行い、IgG1 mAb−Aへの重水素組み込みを測定した。この技術は、IgG1分子の構造変化および構造動力学を調査するために使用されている。Houde et al.Anal.Chem.81:2644(2009)。H/DXは、Houdeらにより説明されるように、10秒、1分、10分、60分および240分の標識化経過時間で行った。200mMリン酸ナトリウム、1M TCEPおよび4MグアニジンHClを含有する等体積のH2O、pH2.3の添加および0℃への冷却により、重水素化試料をpH2.6でクエンチした。nanoACQUITYプラットフォームをベースとするWaters UPLC(Milford、MA)を使用して、クエンチした試料をオンラインで消化、脱塩および分離した(Wales et al.,Anal.Chem 80(2008)6815)。約20pモルの交換/クエンチされたIgG1を、固定化ペプシンカラムに注入した。消化時間は2分、流量は15℃で0.05%ギ酸(FA)中0.1mL/分であった。消化ペプチドをACQUITY UPLC BEH C18 1.7μmペプチドトラップで0℃で捕捉し、水、0.05%FAで脱塩した。捕捉したペプチドを分離用のACQUITY UPLC BEH C18、1.7μm、1×100mmカラム上に40μL/分で溶出し、0.05%FAで線形ACN勾配(5〜50%、8分)で分離した。溶出液を、エレクトロスプレーイオン化およびロック質量補正(Glu−フィブリノゲンペプチドを使用)を備えたWaters Synapt HD MSに誘導した。質量スペクトルは、m/z255から1800までを取得した。ペプシンフラグメントは、Waters IdentityEソフトウェアを利用して、正確な質量およびMS/MSの組み合わせにより同定した。Silva et al.Mol.Cell.Proteomics 5:144(2006)。ペプチド重水素レベルは、HX−Expressプログラムを使用して、説明されているように決定した(Weis et al.J.Am Soc.Mass Spectrom.17:1700(2006))。重水素逆交換に対しては調節を行わず、結果は相対重水素レベルとして報告される。Walsh,Posttranslational modification of proteins:Expanding nature’s inventory,Ed.Roberts and Company Publishers,Greenwood Village,CO.1(2006)。約93%のIgG1アミノ酸配列同一性が、タンデムMSにより確認された。全部で222の消化ペプチドの重水素組み込みが監視された。それぞれの重水素組み込み点に関連した誤差は、±0.2Daであり、0.5Da超の差を有意であるとみなした。 この技術は、ポリペプチド骨格に存在するアミド水素の、溶液中の水素または重水素との交換を監視し、これは、タンパク質構造と共に劇的に変動する特性である、溶媒暴露および水素結合を示す。この技術は、酵素的消化と組み合わされて、タンパク質の小さい領域(例えば、3〜10残基にわたる短ペプチド)に限局された構造的情報を提供し、それにより、溶液中のタンパク質構造に関する詳細な情報を明らかにする。タンパク質構造におけるいかなる改変も、アミド水素交換における差により明確化されるということを根拠に、低レベルまたは高レベルのH−Lトリスルフィドを含有する、またはタンパク質Aへの結合中に1mMシステインで処理されたmAb−Aの調製物を分析に選択した。94%の配列包括度を表す全部で140の異なる消化ペプチドを、各IgG1 mAb−A調製物内で分析したが、重水素交換に差は検出されなかった。特に、これは、H−LおよびH−H鎖間トリスルフィドまたはジスルフィド結合に関与するLおよびH鎖Cys残基を包含する3つの消化ペプチドを含んでいた。これは、高レベルのH−Lトリスルフィド、およびシステインによるトリスルフィドからジスルフィドへのカラム上での変換が、mAb−A構造および折り畳みに検出可能な効果を有さないことを示した。 これと一致して、低レベルまたは高レベルのH−Lトリスルフィドを含有する、または1mMシステインで処理されたmAb−A調製物は、示差走査熱量測定により分析すると同様の折り畳み特性を示した。Origin VPViewer2000 v2.0.64ソフトウェアを備えるMicroCalキャピラリーVP−DSCシステム(Northampton、MA、USA)を使用してDSCを行った。試料濃度は、50mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH6.0中0.5mg/mLであった。サーモグラムは、2℃/分の速度で、25℃〜100℃の走査温度により生成された。データは、Origin 7SR2ソフトウェアを使用して処理されたが、遷移温度プロファイルにおいて差は検出されなかった。システイン分解の阻害によるトリスルフィドの防止 上で示したように、硫化水素は、システイン分解の結果として培地中に存在する。供給培地から形成する硫化水素は、トリスルフィド結合形成を誘導するのに十分であると仮定されている。この仮定を試験するために、フラスコ内で小規模試験を行った。2%の既知のトリスルフィド含量を有する精製抗体を、細胞の存在下および非存在下で基本培地に注入した。追加的な比較として、抗体を外部から追加しないが、抗体保存緩衝液を追加して、細胞を成長させた。インキュベーションの3日目および4日目に、3体積%の追加の供給培地を提供した。5日目に抗体を収穫し、続いて精製、濃縮、およびトリスルフィド含量に関するペプチドマッピングによる分析を行った。 トリスルフィド結合形成の量を、注入実験に使用された精製抗体(1.8%トリスルフィド含量)を後に収穫された材料と比較した図7に示す。細胞により生成された抗体は、約4%のトリスルフィド含量を含有したが、これは、細胞により生成された力価が5日間の培養の最後に全抗体のわずか約5%しか表さないにもかかわらず、抗体が細胞に外部から追加された場合のトリスルフィド含量とほぼ同一である。細胞不含条件は、5日目までに11%を超えるトリスルフィド含量を有する、注入した抗体を含んだが、これは、開始含量から6倍を超える増加である。これらのデータから、細胞を含まない培地中でのインキュベーションが、トリスルフィド含量の増加を誘導するのに十分であり、細胞の存在は、実際に培地中でのインキュベーションの効果を消失させることが明らかである。システイン分解の阻害因子による硫化水素放出の低減 細胞培養基中の硫化水素の放出に対するシステイン分解阻害因子の効果を試験するために、培地中のシステインの濃度に対し1:1の比を表す17.7mMの濃度で様々な阻害因子を添加した。24時間のインキュベーション後に放出硫化水素濃度を測定した。簡潔には、密閉された100ml瓶内で、50mlの培地を一晩インキュベートした。したがって、ヘッドスペースは、容器の液体体積に等しかった。Jerome 631−X硫化水素検出器を、短いシリコンチューブ片に接続し、機器内のホールドアップ体積を最小限化した。チューブの端部を培地含有瓶のヘッドスペースに挿入し、Jerome 631−X検出器は、瓶の開放後速やかにヘッドスペースをサンプリングした。図8は、ピルビン酸塩、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、DL−グリセルアルデヒド、およびグリオキシル酸がすべて硫化水素の放出を機能的に停止したことを示している。硫化水素の放出に対するピルビン酸塩の効果 システイン分解からの硫化水素の放出に対するピルビン酸塩の効果を、さらに試験した。実験は、実施例9において上述したように行われた。ピルビン酸塩の非存在下または存在下で、17.7mMシステイン、および200g/Lグルコースまたはアミノ酸のサブグループを含有する溶液から、インキュベーション後に放出硫化水素の濃度を測定した。図9は、ピルビン酸が溶液中に存在した場合に硫化水素が大幅に減少したことを示している。様々な培地中での硫化水素の放出に対するピルビン酸塩の効果 システイン分解からの硫化水素の放出に対するピルビン酸塩の効果を、供給液、IMDMおよびDMEMを含む様々な細胞培養基中においても試験した。すべてのシステイン濃度は、供給液中のシステイン濃度に正規化された。培地中のピルビン酸塩に対し1:1の比のシステインを表す17.7mMのピルビン酸塩を、培地に添加した。実験は、実施例9に対して上述したように行われた。図10は、すべての試験培地において、ピルビン酸塩がシステイン分解を大幅に低減した(約60%〜80%超の低減)ことを示している。したがって、ピルビン酸塩は、様々な組成物中においてシステイン分解およびH2S放出を低減し、トリスルフィド結合の数を減少させることができる。 本発明は、本発明の個々の態様の単一の例として意図される、説明された特定の実施形態により範囲が限定されず、機能的に等価ないかなる組成物または方法も、本発明の範囲に含まれる。実際に、本明細書に示され記載されたものに加え、上記説明および添付の図面から本発明の様々な修正が当業者に明らかとなる。そのような修正は、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。 本明細書において言及されるすべての文献、論文、出版物、特許および特許出願は、個々の出版物または特許出願がそれぞれ参照することによって組み込まれることが具体的および個々に示されるのと同じ程度に、参照することによって本明細書に組み込まれる。 タンパク質中のトリスルフィド結合の形成を低減するための方法であって、有効量のシステイン分解の阻害因子の存在下で前記タンパク質を発現する細胞を培養することを含み、それにより、システイン分解の阻害因子がない培地中で培養された細胞に比べ、前記タンパク質中のトリスルフィド結合形成が低減される、方法。 大量生成の間、タンパク質中のトリスルフィド結合の形成を低減するための方法であって、有効量のシステイン分解の阻害因子の存在下で前記タンパク質を発現する細胞を培養することを含み、それにより、システイン分解の阻害因子がない培地中で培養された細胞に比べ、前記タンパク質中のトリスルフィド結合形成が低減される、方法。 前記細胞は、哺乳動物細胞である、請求項1または2に記載の方法。 前記哺乳動物細胞は、以下からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法:CHO(チャイニーズハムスター卵巣)(CHO−K1、CHO DG44、およびCHO DUXB11を含む)、VERO、HeLa(ヒト子宮頸癌)、CV1(サル腎臓系)(COSおよびCOS−7を含む)、BHK(新生ハムスター腎臓)、MDCK、C127、PC12、HEK−293(HEK−293TおよびHEK−293Eを含む)、PER C6、NS0、WI38、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓系)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3x63−Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA−1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)ならびに293(ヒト腎臓)細胞。 システイン分解の前記阻害因子は、酸化防止剤、有機酸、有機アルデヒド、および不飽和脂質からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 前記阻害因子は、グルタチオン、ピルビン酸塩、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、グリセルアルデヒド、グリオキシル酸、またはクエン酸塩である、請求項5に記載の方法。 前記阻害因子は、ピルビン酸塩である、請求項6に記載の方法。 システインに対する前記阻害因子の比は、約5:1〜1:10である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。 前記阻害因子は、約50μM〜約500mMの間の濃度で添加される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。 前記阻害因子は、約100μM〜約100mMの間の濃度で添加される、請求項9に記載の方法。 前記阻害因子は、約1mM〜100mMの間の濃度で添加される、請求項10に記載の方法。 前記阻害因子は、約5mM〜約50mMの間の濃度で添加される、請求項11に記載の方法。 前記阻害因子は、培養期間の開始時に添加される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。 前記阻害因子は、半回分培養における供給中に添加される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。 前記細胞は、生物反応器内で培養される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。 前記細胞は、懸濁液中で増殖される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。 前記タンパク質は、抗体またはFc−融合タンパク質である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。 前記細胞は、IMDMまたはDMEM中にある、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。 細胞培地を含む、タンパク質中のトリスルフィド結合の形成を低減するための細胞培養物であって、前記細胞培地は、有効量のシステイン分解の阻害因子を含む細胞培養物。 前記タンパク質を発現する細胞をさらに含む、請求項19に記載の細胞培養物。 前記細胞は、哺乳動物細胞である、請求項20に記載の細胞培養物。 前記哺乳動物細胞は、以下からなる群から選択される、請求項21に記載の細胞培養物:CHO(チャイニーズハムスター卵巣)(CHO−K1、CHO DG44、およびCHO DUXB11を含む)、VERO、HeLa(ヒト子宮頸癌)、CVI(サル腎臓系)(COSおよびCOS−7を含む)、BHK(新生ハムスター腎臓)、MDCK、C127、PC12、HEK−293(HEK−293TおよびHEK−293Eを含む)、PER C6、NS0、WI38、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓系)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3x63−Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA−1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)ならびに293(ヒト腎臓)細胞。 システイン分解の前記阻害因子は、酸化防止剤、有機酸、有機アルデヒド、および不飽和脂質からなる群から選択される、請求項19〜22のいずれか一項に記載の細胞培養物。 前記阻害因子は、グルタチオン、ピルビン酸塩、グリセルアルデヒド、グリオキシル酸、またはクエン酸塩である、請求項23に記載の細胞培養物。 前記阻害因子は、ピルビン酸塩である、請求項24に記載の細胞培養物。 システインに対する前記阻害因子の比は、約5:1〜1:10である、請求項24に記載の細胞培養物。 前記阻害因子は、約50μM〜約500mMの間の濃度で添加される、請求項19〜26のいずれか一項に記載の細胞培養物。 前記阻害因子は、約100μM〜約100mMの間の濃度で添加される、請求項27に記載の細胞培養物。 前記阻害因子は、約1mM〜100mMの間の濃度で添加される、請求項28に記載の細胞培養物。 前記阻害因子は、約5mM〜約50mMの間の濃度で添加される、請求項29に記載の細胞培養物。 前記細胞は、IMDMまたはDMEM中にある、請求項19〜30のいずれか一項に記載の細胞培養物。 本発明は、抗体等のタンパク質中のトリスルフィド結合を防止および排除する方法に関する。一実施形態において、タンパク質中のトリスルフィド結合は、クロマトグラフィー精製手順の一部としてジスルフィド結合に変換される。別の実施形態において、タンパク質中のトリスルフィド結合の形成は、そのようなタンパク質の細胞培養生成中に、本明細書に記載の方法を実行することにより阻害される。別の実施形態において、本明細書に記載の方法により、モノクローナル抗体が生成される。【選択図】図4 配列表