タイトル: | 公開特許公報(A)_エーテルキレート型及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体 |
出願番号: | 2014250368 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | H01F 1/00,H01F 1/34,C07D 307/06 |
樫原 宏 JP 2015111676 公開特許公報(A) 20150618 2014250368 20141123 エーテルキレート型及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体 樫原 宏 596170402 樫原 宏 H01F 1/00 20060101AFI20150522BHJP H01F 1/34 20060101ALI20150522BHJP C07D 307/06 20060101ALN20150522BHJP JPH01F1/00 ZH01F1/34 SC07D307/06 3 2011071034 20110309 書面 13 本発明は新規な強磁性有機磁性流体に関するものである。更に詳細には、本発明は新規な強磁性有機磁性流体、その製造方法および強磁性を確認するための評価試験に関するものである。 イミダゾリウムイオンなどの陽イオンとBF4−などの陰イオンからなる塩は、イオン液体と呼ばれ、比較的低粘性の液体である。このイオン液体は、その特性から有機合成化学の分野では反応溶媒としての利用、また導電性が高く不揮発性、不燃性であるため二次電池や色素増感型太陽電池の電解質などとしての利用が検討されている。一方、浜口らは近年、新しいイオン液体として1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラートについて報告している(非特許文献1)。このイオン液体は磁性を有しており、磁石に引き寄せられる。従来から知られている磁性流体はマグネタイトなどの強磁性体の超微粒子を液体に分散させた流体で、一般に、媒体となる液体・強磁性体の超微粒子・強磁性体の超微粒子を安定に分散させるための界面活性剤から構成される複合材料である。磁性流体は液体でありながら磁石に引き寄せられるという特異な性質を有しており、この性質の特徴が多方面で活用されている。例えば、回転軸のシール、振動系のダンパー、傾斜センサー、角度センサーなどが挙げられ、その利用分野は拡大している。しかし、磁石に引き寄せられるのは、磁性流体に分散している強磁性体の超微粒子であり、そのため磁場の基で偏析することが知られている。また、溶媒の蒸発などの問題を有している。浜口らが開発した1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラートは、これらの問題を克服した新しい磁性流体として多方面での応用が期待されている。 特開平2007−131608号公報 S.Hayashi,H.Hamaguchi,Chem.Lett.,33,1590(2004) 従来の磁性流体および浜口らが開発した1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラート(暗褐色)は、光を通過させることができないため、可視光の透過性に優れた透明の磁性流体が求められている。また、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラートおよび、有機オニウムカチオンとテトラハロゲノジスプロサートからなる可視光の透過性に優れた無色透明のジスプロシウム誘導体(特許文献1)は、磁石に引き寄せられる程度の磁性は有するものの、重力に逆らってまで磁石に着く磁性は有しておらず、その磁性は、未だ小さいままである。実用性を考慮する時、その磁性そのものを強くすることが求められている。 本発明者はかかる目的を達成するために鋭意研究の結果、次に示す本発明を完成させた。 かかる目的を達成するために、本発明は構造式[I]及び[II]で表されるエーテルキレート型強磁性有機磁性流体及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体を簡便な操作で高収率で提供することができる。 また、この発明は上記目的を達成するために、下記構造式[X]で表される磁性金属塩を、下記構造式[Ia]で表されるエーテル類に反応させて、構造式[I]で表されるエーテルキレート型強磁性有機磁性流体を簡単に、効率的に、大量に、かつ、安価に製造することができるという利点がある。また、下記構造式[X]で表される磁性金属塩を、下記構造式[IIa]で表されるポリエーテル類に反応させて、構造式[II]で表されるポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体を簡単に、効率的に、大量に、かつ、安価に製造することができるという利点がある。 さらに本発明において、構造式[X]で表される磁性金属塩中の金属が、2価Fe、2価Mn、3価Dyを用いた場合は、構造式[I]及び[II]で表される強磁性有機磁性流体は、すべて可視光の透過率に優れた透明の磁性流体であり、かつ、重力に逆らってまで磁石に着く強磁性の磁性流体である。また、磁性金属塩中の金属が、3価Fe、2価Coを用いた場合は、構造式[I]及び[II]で表される強磁性有機磁性流体は、着色しているものの、その磁性は極めて強く、容易に重力に逆らって磁石に着く、強磁性の磁性流体である。さらに、磁性金属塩中の金属が3価Nd、3価Smを用いた場合は、上記金属を用いた場合より磁性は小さいが、構造式[I]及び[II]で表される有機磁性流体は、すべて可視光の透過率に優れた透明の磁性流体である。 本発明は磁性を有する金属塩に、各種の反磁性有機化合物を配位結合で結合させることで、元の磁性を有する金属塩よりも著しく強い磁性を発現させることが可能である。 従来のイオン性磁性流体に比べて格段に強い磁性を提供することができる。つまり、従来のイオン性磁性流体は、磁石に引き寄せられるが、重力に逆らってまで磁石に自ら着くほどの強い磁性は有していない。本発明の強磁性有機磁性流体は、重力に逆らってまで磁石に自ら着くという実験結果でその磁性の強さが証明される。また、本発明の強磁性有機磁性流体[I]及び[II]の中で、磁性金属塩にFeCl2、MnCl2、DyCl3、NdCl3およびSmCl3を用いたものは、近年より必要性が高い可視光の透過性に優れた透明の強磁性流体である。本発明の強磁性有機磁性流体[I]及び[II]は、これまでよりも磁性を有する金属塩の種類が豊富であることから、目的に応じて有用な強磁性有機磁性流体をつくり分けることができる。また、ろ紙などの基材に染み込ませても、容易に磁石に着くことから、基材との融合という応用が可能である。 本発明のエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[I]及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[II]は、電子材料や医療(特に、ドラッグデリバリーシステム)・医薬、有機合成などに広く利用することができる。 本発明のエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[I]及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[II]の磁性の評価試験(1) 本発明のエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[I]及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[II]の磁性の評価試験(2) 本発明のエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[I]及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[II]の磁性の評価試験(3) 本発明のエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[I]及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[II]の磁性の評価試験(4) この発明に係るエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[I]及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[II]について説明する。 エーテルキレート型強磁性有機磁性流体[I]は、構造式[I]:(式中、Rc、Rdは炭素原子数が1ないし6のアルキル基を意味し、RcとRdが一体となって環状エーテル構造を有しても良い。Mは、3価Fe、2価Fe、2価Co、2価Mn、3価Dy、3価Nd、3価Smを意味し、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子を意味し、nは、2又は3の整数を意味し、n´は、3又は4の整数を意味する。)で表される。 構造式[I]において、Rc及びRdで表される炭素原子数が1ないし6のアルキル基は、炭素原子数が1ないし6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基であって、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、3−メチル−2−ブチル、2−メチル−2−ブチル、2−メチル−1−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル基、n−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、2−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、2−メチル−3−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、3−メチル−3−ペンチル、2−エチル−1−ブチル、2,3−ジエチル−1−ブチル、2,3−ジメチル−2−ブチル基、2,2−ジメチル−1−ブチル基、3,3−ジメチル−2−ブチル基、3,3−ジメチル−1−ブチル基などが挙げられる。また、Rc及びRdで表されるアルキル基は、一体となって環状エーテル構造を有してもよく、例えば、エチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、ピランなどが挙げられる。 ポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[II]は、構造式[II]:(式中、Ri、Rj、RkおよびRlは水素原子あるいは炭素原子数が1ないし2のアルキル基を意味し、RiとRkは一体となって環状構造を有しても良いことを意味するポリエーテルであり、Mは3価Fe、2価Fe、2価Co、2価Mn、3価Dy、3価Nd、3価Smを意味し、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子を意味する。nは、2又は3の整数を意味し、mは、4〜20の整数を意味する。)で表される。 構造式[II]において、Ri、Rj、RkおよびRlで表される炭素原子数が1ないし2のアルキル基は、メチルまたはエチルを意味し、かかるRiとRkが一体となって環状構造としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンが挙げられる。 尚、本明細書中において、nはノルマル、secは第2級、tertは第3級、Meはメチル、Etはエチル、Prはプロピル、Buはブチル、Phはフェニル基を表す。 次にエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[I]及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[II]の製造方法についてそれぞれ説明する。 まず、エーテルキレート型強磁性有機磁性流体[I]は、下記化学反応式でに従って、構造式[Ia]で表されるエーテル類と、磁性金属塩[X]との反応によって得ることができる。 (式中、Rc、Rd、M、X、nおよびn´は前記と同じ意味を有する)。 構造式[I]で表されるエーテルキレート型強磁性有機磁性流体は、構造式[Ia]で表されるエーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジn−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジn−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジn−ヘキシルエーテル、ジイソヘキシルエーテル、エチルメチルエーテル、メチルn−プロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、n−ブチルメチルエーテル、イソブチルメチルエーテル、メチルn−ペンチルエーテル、メチルイソペンチルエーテル、n−ヘキシルメチルエーテル、イソヘキシルメチルエーテル、エチルn−プロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、n−ブチルエチルエーテル、イソブチルエチルエーテル、エチルn−ペンチルエーテル、エチルイソペンチルエーテル、エチルn−ヘキシルエーテル、エチルイソヘキシルエーテル、n−ブチルn−プロピルエーテル、n−ブチルイソプロピルエーテル、n−ブチルイソブチルエーテル、n−ブチルn−ペンチルエーテル、n−ブチルイソペンチルエーテル、n−ブチルn−ヘキシルエーテル、n−ブチルイソヘキシルエーテル、ジイソブチルエーテル、イソブチルn−ペンチルエーテル、イソブチルイソペンチルエーテル、イソブチルn−ヘキシルエーテル、イソブチルイソヘキシルエーテル、n−ペンチルイソペンチルエーテル、n−ペンチルn−ヘキシルエーテル、n−ペンチルイソヘキシルエーテル、ジイソペンチルエーテル、イソペンチルn−ヘキシルエーテル、イソペンチルイソヘキシルエーテル、n−ヘキシルイソヘキシルエーテル、ジイソヘキシルエーテル、エチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、ピラン)と構造式[X]で表される磁性金属塩(例えば、塩化鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化コバルト(II)、塩化マンガン(II)、塩化ジスプロシウム(III)、塩化ネオジウム(III)、塩化サマリウム(III)又は、フッ化鉄(III)、フッ化鉄(II)、フッ化コバルト(II)、フッ化マンガン(II)、フッ化ジスプロシウム(III)、フッ化ネオジウム(III)、フッ化サマリウム(III)又は、臭化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化コバルト(II)、臭化マンガン(II)、臭化ジスプロシウム(III)、臭化ネオジウム(III)、臭化サマリウム(III)又は、ヨウ化鉄(III)、ヨウ化鉄(II)、ヨウ化コバルト(II)、ヨウ化マンガン(II)、ヨウ化ジスプロシウム(III)、ヨウ化ネオジウム(III)、ヨウ化サマリウム(III))の反応により製造することができる。 この反応は、通常、反応溶媒中で行わわ、使用される溶媒としては、水、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン等の極性溶媒を用いることができ、好ましくは、水、メタノール、アセトンを用いるのがよく、さらに好ましくは、水を用いるのがよい。また、この反応の反応温度は、−30℃〜80℃までの範囲で行うことができ、好ましくは、−10℃〜40℃までの範囲で行うのがよく、さらに好ましくは、0℃〜30℃の範囲で行うのがよい。 次に、ポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[II]は、下記化学反応式でに従って、構造式[IIa]で表されるポリエーテル類と、磁性金属塩[X]との反応によって得ることができる。 (式中、Ri、Rj、Rk、Rl、M、X、nおよびmは前記と同じ意味を有する)。 構造式[II]で表されるポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体は、構造式[IIa]で表されるポリエーテル類(例えば、ポリエチレングリコール、ポリ1−メチルエチレングリコール、ポリ2−メチルエチレングリコール、ポリ1,1−ジメチルエチレングリコール、ポリ1,2−ジメチルエチレングリコール、ポリ2,2−ジメチルエチレングリコール、ポリ1−エチルエチレングリコール、ポリ2−エチルエチレングリコール、ポリ1,1−ジエチルエチレングリコール、ポリ1,2−ジエチルエチレングリコール、ポリ2,2−ジエチルエチレングリコール、ポリ1,1,2,2−テトラメチルエチレングリコール、ポリ1,1,2,2−テトラエチルエチレングリコール、ポリシクロプロポキシレート、ポリシクロブトキシレート、ポリシクロペントキシレート、ポリシクロヘキトキシレート)と一般式[X]で表される磁性金属塩(例えば、塩化鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化コバルト(II)、塩化マンガン(II)、塩化ジスプロシウム(III)、塩化ネオジウム(III)、塩化サマリウム(III)又は、フッ化鉄(III)、フッ化鉄(II)、フッ化コバルト(II)、フッ化マンガン(II)、フッ化ジスプロシウム(III)、フッ化ネオジウム(III)、フッ化サマリウム(III)又は、臭化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化コバルト(II)、臭化マンガン(II)、臭化ジスプロシウム(III)、臭化ネオジウム(III)、臭化サマリウム(III)又は、ヨウ化鉄(III)、ヨウ化鉄(II)、ヨウ化コバルト(II)、ヨウ化マンガン(II)、ヨウ化ジスプロシウム(III)、ヨウ化ネオジウム(III)、ヨウ化サマリウム(III))の反応により製造することができる。 この反応は、通常、反応溶媒中で行われ、使用される溶媒としては、水、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン等の極性溶媒を用いることができ、好ましくは、水、メタノール、アセトンを用いるのがよく、さらに好ましくは、水を用いるのがよい。また、この反応の反応温度は、−30℃〜80℃までの範囲で行うことができ、好ましくは、−10℃〜60℃までの範囲で行うのがよく、さらに好ましくは、0℃〜40℃の範囲で行うのがよい。 この発明を実施例により更に詳細に説明する。 塩化鉄(III)テトラヒドロフラン錯体[Iα]、塩化鉄(II)テトラヒドロフラン錯体[Iβ]、塩化コバルト(II)テトラヒドロフラン錯体[Iγ]、塩化マンガン(II)テトラヒドロフラン錯体[Iδ]、塩化ジスプロシウム(III)テトラヒドロフラン錯体[Iε]、塩化ネオジウム(III)テトラヒドロフラン錯体[Iζ]および塩化サマリウム(III)テトラヒドロフラン錯体[Iη]の合成 テトラヒドロフラン559mg(2.59mmol×3)を、それぞれ塩化鉄(III)水溶液1ml(水1ml中に塩化鉄(III)を2.59mmol含む)又は、塩化ジスプロシウム(III)水溶液1ml(水1ml中にジスプロシウム(III)を2.59mmol含む)又は、塩化ネオジウム(III)水溶液1ml(水1ml中に塩化ネオジウム(III)を2.59mmol含む)又は、塩化サマリウム(III)水溶液1ml(水1ml中に塩化サマリウム(III)を2.59mmol含む)に、それぞれ溶解し、5分間撹拌し静置した。 一方、テトラヒドロフラン746mg(2.59mmol×4)を、それぞれ塩化鉄(II)水溶液1ml(水1ml中に塩化鉄(II)を2.59mmol含む)又は、塩化コバルト(II)(水1ml中に塩化コバルト(II)を2.59mmol含む)又は、塩化マンガン(II)(水1ml中に塩化マンガン(II)を2.59mmol含む)に、それぞれ溶解し、5分間撹拌し静置した。 次に、それぞれの溶液について、ネオジウム磁石を用いて磁化の確認を行った(ネオジウム磁石は、円柱形[直径10mm,長さ20mm、表面磁束密度:5600ガウス、吸着力(kg)参考値:4.4を用いた)。その結果、それぞれの溶液がネオジウム磁石に強く引き寄せられることを確認した。 ここで、2層中、磁化した層を分取した。次に、それぞれの溶液に、アセトン10mlを加えて希釈し、無水硫酸マグネシウムを加えて、30分間乾燥した(水分除去は、凍結乾燥でも可能)。無水硫酸マグネシウムをろ去した後、ろ液を減圧留去すると、ほぼ定量的に、塩化鉄(III)テトラヒドロフラン錯体[Iα]、塩化鉄(II)テトラヒドロフラン錯体[Iβ]、塩化コバルト(II)テトラヒドロフラン錯体[Iγ]、塩化マンガン(II)テトラヒドロフラン錯体[Iδ]、塩化ジスプロシウム(III)テトラヒドロフラン錯体[Iε]、塩化ネオジウム(III)テトラヒドロフラン錯体[Iζ]および塩化サマリウム(III)テトラヒドロフラン錯体[Iη]を得ることができた。これらの磁性流体の性状について、以下に示す。塩化鉄(III)テトラヒドロフラン錯体[Iα]:褐色、粘性極めて小さい/塩化鉄(II)テトラヒドロフラン錯体[Iβ]:黄色透明、粘性小/塩化コバルト(II)テトラヒドロフラン錯体[Iγ]:暗青色、粘性小/塩化マンガン(II)テトラヒドロフラン錯体[Iδ]:淡桃色透明、粘性小/塩化ジスプロシウム(III)テトラヒドロフラン錯体[Iε]:無色透明、粘性小/塩化ネオジウム(III)テトラヒドロフラン錯体[Iζ]:淡緑青色透明、粘性小/塩化サマリウム(III)テトラヒドロフラン錯体[Iη]:淡黄色透明、粘性小 塩化鉄(III)ポリエチレングリコール錯体[IIα]、塩化鉄(II)ポリエチレングリコール錯体[IIβ]、塩化コバルト(II)ポリエチレングリコール錯体[IIγ]、塩化マンガン(II)ポリエチレングリコール錯体[IIδ]、塩化ジスプロシウム(III)ポリエチレングリコール錯体[IIε]、塩化ネオジウム(III)ポリエチレングリコール錯体[IIζ]および塩化サマリウム(III)ポリエチレングリコール錯体[IIη]の合成 ポリエチレングリコール1399mg(−CH2CH2O−エチレンオキシ基に換算して2.59mmolの12.28倍)を、それぞれ塩化鉄(III)水溶液1ml(水1ml中に塩化鉄(III)を2.59mmol含む)又は、塩化鉄(II)水溶液1ml(水1ml中に塩化鉄(II)を2.59mmol含む)又は、塩化コバルト(II)(水1ml中に塩化コバルト(II)を2.59mmol含む)又は、塩化マンガン(II)(水1ml中に塩化マンガン(II)を2.59mmol含む)又は、塩化ジスプロシウム(III)水溶液1ml(水1ml中にジスプロシウム(III)を2.59mmol含む)又は、塩化ネオジウム(III)水溶液1ml(水1ml中に塩化ネオジウム(III)を2.59mmol含む)又は、塩化サマリウム(III)水溶液1ml(水1ml中に塩化サマリウム(III)を2.59mmol含む)に、それぞれ溶解し、5分間撹拌し静置した。 次に、それぞれの溶液について、ネオジウム磁石を用いて磁化の確認を行った(ネオジウム磁石は、円柱形[直径10mm,長さ20mm、表面磁束密度:5600ガウス、吸着力(kg)参考値:4.4を用いた)。その結果、それぞれの溶液がネオジウム磁石に強く引き寄せられることを確認した。 ここで、2層中、磁化した層を分取した。次に、それぞれの溶液に、アセトン10mlを加えて希釈し、無水硫酸マグネシウムを加えて、30分間乾燥した(水分除去は、凍結乾燥でも可能)。無水硫酸マグネシウムをろ去した後、ろ液を減圧留去すると、ほぼ定量的に、塩化鉄(III)ポリエチレングリコール錯体[IIα]、塩化鉄(II)ポリエチレングリコール錯体[IIβ]、塩化コバルト(II)ポリエチレングリコール錯体[IIγ]、塩化マンガン(II)ポリエチレングリコール錯体[IIδ]、塩化ジスプロシウム(III)ポリエチレングリコール錯体[IIε]、塩化ネオジウム(III)ポリエチレングリコール錯体[IIζ]および塩化サマリウム(III)ポリエチレングリコール錯体[IIη]を得ることができた。これらの磁性流体の性状について、以下に示す。塩化鉄(III)ポリエチレングリコール錯体[IIα]:褐色、粘性大/塩化鉄(II)ポリエチレングリコール錯体[IIβ]:薄緑色、粘性大/塩化コバルト(II)ポリエチレングリコール錯体[IIγ]:赤紫色、粘性大/塩化マンガン(II)ポリエチレングリコール錯体[IIδ]:淡桃色、粘性大/塩化ジスプロシウム(III)ポリエチレングリコール錯体[IIε]:無色透明、粘性大/塩化ネオジウム(III)ポリエチレングリコール錯体[IIζ]:淡緑青色透明、粘性大/塩化サマリウム(III)ポリエチレングリコール錯体[IIη]:淡黄色透明、粘性大 本発明のエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[I]及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[II]の磁性の評価試験(1) エーテルキレート型強磁性有機磁性流体[I]及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[II]について、次の様な磁性の強さの評価試験を行った。 ガラス製サンプル管(10ml)に検体(磁性流体)1mlを入れ、ネオジウム磁石(ネオジウム磁石は、円柱形[直径10mm,長さ20mm、表面磁束密度:5600ガウス、吸着力(kg)参考値:4.4)をサンプル管の側面から当て、磁石に引き寄せられた状態を比較した。標品に塩化鉄(III)水溶液(塩化鉄(III)2.59mmolの1ml水溶液)、塩化鉄(II)水溶液(塩化鉄(II)2.59mmolの1ml水溶液)、塩化コバルト(II)水溶液(塩化コバルト(II)2.59mmolの1ml水溶液)、塩化マンガン(II)水溶液(塩化マンガン(II)2.59mmolの1ml水溶液)、塩化ジスプロシウム(III)水溶液(塩化ジスプロシウム(III)2.59mmolの1ml水溶液)、塩化ネオジウム(III)水溶液(塩化ネオジウム(III)2.59mmolの1ml水溶液)、塩化サマリウム(III)(塩化サマリウム(III)2.59mmolの1ml水溶液)を用いて、検体との比較を行った。 エーテルキレート型強磁性有機磁性流体[I]及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[II]は、ともに標品と比較して、格段に強く磁石に引き寄せられた これらの中で、塩化鉄(III)錯体、塩化鉄(II)錯体、塩化コバルト(II)錯体、塩化マンガン(II)錯体、塩化ジスプロシウム(III)錯体は、極めて強く磁石に引き寄せられる傾向が見られた。また、塩化ネオジウム(III)錯体は、これらと比較して、磁石に引き寄せられる割合が小さかった。更に、塩化サマリウム(III)錯体は、塩化ネオジウム(III)錯体よりも、磁石に引き寄せられる割合が小さかった。これらの結果を[図1]に示す。 尚、すでに報告されている1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラート(2.59mmol)及び1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロジスプロサート(2.59mmol)は、標品の塩化鉄(III)水溶液(塩化鉄(III)2.59mmolの1ml水溶液)及び塩化ジスプロシウム(III)水溶液(塩化ジスプロシウム(III)2.59mmolの1ml水溶液)に比べて、磁石に引き寄せられる割合が小さかった。 本発明のエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[I]及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[II]の磁性の評価試験(2) ガラス製サンプル管(10ml)に検体(磁性流体)1mlを入れ、ネオジウム磁石(ネオジウム磁石は、円柱形[直径10mm,長さ20mm、表面磁束密度:5600ガウス、吸着力(kg)参考値:4.4)をサンプル管の側面から当て、60度傾けた状態に固定した。ここで重力に逆らって磁石に引き寄せられることを確認し、そのときの検体(磁性流体)の状態を[図2]にまとめた。(実験は、[図1]に示した結果を考慮して行った。) 一方、標品の塩化鉄(III)水溶液(塩化鉄(III)2.59mmolの1ml水溶液)、塩化鉄(II)水溶液(塩化鉄(II)2.59mmolの1ml水溶液)、塩化コバルト(II)水溶液(塩化コバルト(II)2.59mmolの1ml水溶液)、塩化マンガン(II)水溶液(塩化マンガン(II)2.59mmolの1ml水溶液)、塩化ジスプロシウム(III)水溶液(塩化ジスプロシウム(III)2.59mmolの1ml水溶液)、塩化ネオジウム(III)水溶液(塩化ネオジウム(III)2.59mmolの1ml水溶液)、塩化サマリウム(III)(塩化サマリウム(III)2.59mmolの1ml水溶液)についても同様の実験を行ったが、これらの標品は、いずれも、重力に逆らって磁石に引き寄せられなかった。 本発明のエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[I]及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[II]の磁性の評価試験(3) 操作概要に示す様に広口プラスチック容器(20ml)に検体(磁性流体)5mlを入れ、ネオジウム磁石(ネオジウム磁石は、円柱形[直径10mm,長さ20mm、表面磁束密度:5600ガウス、吸着力(kg)参考値:4.4)を液面から2mmの位置に固定し、検体(磁性流体)が自ら磁石に引き寄せられ、重力に逆らって、磁石に着くことを確認した。このとき、検体(磁性流体)が磁石に着いた量を測定し、その量を[図3]にまとめた。尚、磁石への単純な付着を防ぐため、初めから液面には直接、接触させないことを徹底した。本試験に用いた検体(磁性流体)は、[図1]の結果を考慮して選択した。 尚、標品の塩化鉄(III)水溶液(塩化鉄(III)2.59mmol/ml水溶液5ml)、塩化鉄(II)水溶液(塩化鉄(II)2.59mmol/ml水溶液5ml)、塩化コバルト(II)水溶液(塩化コバルト(II)2.59mmol/ml水溶液5ml)、塩化マンガン(II)水溶液(塩化マンガン(II)2.59mmol/ml水溶液5ml)、塩化ジスプロシウム(III)水溶液(塩化ジスプロシウム(III)2.59mmol/ml水溶液5ml)、塩化ネオジウム(III)水溶液(塩化ネオジウム(III)2.59mmol/ml水溶液5ml)、塩化サマリウム(III)(塩化サマリウム(III)2.59mmol/ml水溶液5ml)についても同様の実験を行ったが、これらの標品は、いずれも、重力に逆らって磁石に引き寄せられなかった。 本発明のエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[I]及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[II]の磁性の評価試験(4) 各種の磁性流体をろ紙(5mm×20mm)に染み込ませ、余分な磁性流体を除去し24時間、常温で静置して検体を作成した。 この検体(磁性流体を染み込ませたろ紙)について、ネオジウム磁石(円柱形[直径10mm,長さ20mm]、表面磁束密度:5600ガウス、吸着力(kg)参考値:4.4)を用いた磁性の評価試験を行った。 [図4]に示したように、すべての検体が磁石に引き寄せられ、自ら磁石に着いた。この事実は、本発明のエーテルキレート型及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体の新しい用途を示唆している。特に、[Iα]を用いて作成した検体の磁力は強く、4mmの離れた所から磁石に飛び付いた。また、[Iδ]を用いて作成した検体の場合は、検体の場所(位置)を選ばず、中央でも、末端でも同様にしっかりと磁石に着いた。他の場合は、中央ではしっかりと磁石に着くが、末端では、一部分のみが磁石に着き、垂れ下がる状態となった。 最後に、本発明の強磁性有機磁性流体の中で代表的な[Iα]および[IIα]について、FT−IRスペクトルの測定を行った。 [Iα]のFT−IRスペクトルデータ2975cm−1(C−H伸縮振動)および1070cm−1(C−O伸縮振動)に強い吸収が観測された。 測定装置:PerkinElmer Spectrum100 FT−IR 試料調整:液膜法(KBr板使用) 測定範囲:400〜4000cm−1 [IIα]のFT−IRスペクトルデータ3300〜3500cm−1(O−H伸縮振動)に弱い吸収が、2980cm−1(C−H伸縮振動)および1080cm−1(C−O伸縮振動)に強い吸収が観測された。 測定装置:PerkinElmer Spectrum100 FT−IR 試料調整:液膜法(KBr板使用) 測定範囲:400〜4000cm−1 工業上の利用可能性 本発明は磁性を有する金属塩に、各種の反磁性有機化合物を配位結合で結合させることで、元の磁性を有する金属塩よりも著しく強い磁性を発現させることが可能である。 従来のイオン性磁性流体に比べて格段に強い磁性を提供することができる。つまり、従来のイオン性磁性流体は、磁石に引き寄せられるが、重力に逆らってまで磁石に自ら着くほどの強い磁性は有しておらず、この磁性を増強させることで、工業上の利用可能性を高めることができる。本発明の強磁性有機磁性流体は、重力に逆らってまで磁石に自ら着くという実験結果でその磁性の強さが証明されている。また、本発明の強磁性有機磁性流体[I]及び[II]の中で磁性金属塩にFeCl2、MnCl2、DyCl3、NdCl3およびSmCl3を用いたものは、近年より必要性が高い可視光の透過性に優れた透明の強磁性流体である。本発明の強磁性有機磁性流体[I]及び[II]は、これまでよりも磁性を有する金属塩の種類が豊富であることから、目的に応じて有用な強磁性有機磁性流体をつくり分けることができる。また、ろ紙などの基材に染み込ませても、容易に磁石に着くことから、種々の磁性基材の製造に利用することができる。 本発明のエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[I]及びポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体[II]は、電子材料や医療(特に、ドラッグデリバリーシステム)・医薬、有機合成、機能性試薬などに広く利用することができる。 構造式[I]:(式中、Rc、Rdは炭素原子数が1ないし6のアルキル基を意味し、RcとRdが一体となって環状エーテル構造を有しても良い。Mは、3価Fe、2価Fe、2価Co、2価Mn、3価Dy、3価Nd、3価Smを意味し、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子を意味し、nは、2又は3の整数を意味し、n´は、3又は4の整数を意味する。)で表されることを特徴とするエーテルキレート型強磁性有機磁性流体。 構造式[II]:(式中、Ri、Rj、RkおよびRlは水素原子あるいは炭素原子数が1ないし2のアルキル基を意味し、RiとRkは一体となって環状構造を有しても良いことを意味するポリエーテルであり、Mは3価Fe、2価Fe、2価Co、2価Mn、3価Dy、3価Nd、3価Smを意味し、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子を意味する。nは、2又は3の整数を意味し、mは、4〜20の整数を意味する。)で表されることを特徴とするポリエーテルキレート型強磁性有機磁性流体。 磁性金属塩MXn(Mは3価Fe、2価Fe、2価Co、2価Mn、3価Dy、3価Nd、3価Smを意味し、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子を意味する。nは、2又は3の整数を意味する。)と各種のエーテル化合物及びポリエーテル化合物を反応させることで請求項1及び2に示した構造式[I]及び[II]で表される強磁性有機磁性流体を製造する方法。 【課題】磁性を有する金属塩に、各種の反磁性有機化合物をイオン結合または配位結合で結合させることで、元の磁性を有する金属塩よりも著しく強い磁性を有する有機磁性流体を提供する。【解決手段】強磁性有機磁性流体は、構造式[I]で表される。【効果】これまでよりも磁性を有する金属塩の種類が豊富であることから、目的に応じて有用な強磁性有機磁性流体をつくり分けることができる。また、ろ紙などの基材に染み込ませても、容易に磁石に着くことから、基材との融合という応用が可能である。【選択図】なし