タイトル: | 特許公報(B1)_脂肪分解促進作用を有するリパーゼ阻害剤及びその製造方法 |
出願番号: | 2014227462 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 36/75,A61K 36/00,A61P 3/06,A61P 43/00 |
鹿島 泰孝 JP 5709236 特許公報(B1) 20150313 2014227462 20141107 脂肪分解促進作用を有するリパーゼ阻害剤及びその製造方法 株式会社ミオナ 300083790 加藤 達彦 100161229 鹿島 泰孝 20150430 A61K 36/75 20060101AFI20150409BHJP A61K 36/00 20060101ALI20150409BHJP A61P 3/06 20060101ALI20150409BHJP A61P 43/00 20060101ALI20150409BHJP JPA61K35/78 KA61K35/78 YA61P3/06A61P43/00 111 A61K 36/00 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開昭63−188355(JP,A) 特開2005−040107(JP,A) 特開2008−184461(JP,A) 特開2007−077139(JP,A) 特開2013−173718(JP,A) 特開2012−085591(JP,A) 特開平11−049690(JP,A) 特開2004−305054(JP,A) 2 8 20141114 渡邊 倫子 本発明は、酢橘の果皮及びじょうのう膜の抽出物を原料とする脂肪分解促進作用を有するリパーゼ阻害剤及びその製造方法に関するものである。 この種のリパーゼ阻害剤、脂肪分解促進剤として、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1には、柑橘類の果皮及びじょうのう膜の抽出物にリパーゼ阻害作用及び脂肪分解促進作用があることが示されている。 また、この種の脂肪分解促進剤として、特許文献2に記載のものが知られている。特許文献2には、柑橘類果皮の抽出物に脂肪分解促進作用があることが示されている。 しかし、この種の物質はダイエット食品に用いられることが多く、より作用の強い脂肪分解促進作用を有するリパーゼ阻害剤が求められていた。特開2005−40107号公報特開平11−49690号公報 本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、従来の酢橘抽出物と比較して、より作用が強い脂肪分解促進作用を有するリパーゼ阻害剤を提供することを目的としている。 上記課題を解決するために、発明者は、鋭意実験を重ねた結果、酢橘抽出物を膨化することによってリパーゼ阻害作用及び脂肪分解促進作用をより強くすることができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。ダイエット食品等では、少ないカロリーで満腹感を得る目的で膨化処理を行うことがあるが、本発明ではそのような目的は一切ない。 すなわち、本発明の脂肪分解促進作用を有するリパーゼ阻害剤は、酢橘の果皮及びじょうのう膜から抽出物を得る抽出工程と、抽出工程で得られた抽出物をエクストルーダーで膨化する膨化工程と、膨化工程で得られた膨化物を粉状に粉砕する粉砕工程とを順次経て製造されたことを特徴としている。 また、本発明の脂肪分解促進作用を有するリパーゼ阻害剤の製造方法は、酢橘の果皮及びじょうのう膜から抽出物を得る抽出工程と、抽出工程で得られた抽出物をエクストルーダーで膨化する膨化工程と、膨化工程で得られた膨化物を粉状に粉砕する粉砕工程とを備えたことを特徴としている。 本発明によれば、従来の酢橘抽出物と比較して、より強いリパーゼ阻害作用、脂肪分解促進作用を得ることができる。希釈倍率とリパーゼ阻害活性の変化を示したグラフである。3T3−L1細胞中の大きさ別の脂肪滴数を示したグラフである。 以下の説明において、百分率の表示は、特に断りのない限り、質量による値である。本発明の脂肪分解促進作用を有するリパーゼ阻害剤における実施形態は、酢橘抽出物をエクストルーダーで膨化し、粉砕することによって得られる。 まず、酢橘抽出物ついて説明する。この酢橘抽出物は、一例として、(1)酢橘から種子を除去し、乾燥させて粉砕する工程と、(2)低沸点有機溶剤を加え、所定時間攪拌して抽出する工程と、(3)遠心分離、フィルター濾過などの手段により、固形分を除去する工程と、(4)ろ液を濃縮し、凍結乾燥によって粉末状にする工程と、を経て製造される。 上記方法はあくまで一例であって、抽出法は、周知の技術を用いればよい。例えば、有機溶剤の代わりに水を加え加熱して抽出してもよく、亜臨界抽出等の方法を用いてもよい。 つぎに、エクストルーダーによる膨化について説明する。エクストルーダーは、1軸型であっても2軸型であっても良いが、2軸型のほうが好ましい。エクストルーダーによる膨化処理は、一例として、エクストルーダーに酢橘抽出物を入れ、撹拌しながら、加湿・加熱・加圧する工程と、加熱・加圧等の処理をしたものをダイと呼ばれる部分の穴から押し出す工程と、ダイから押し出されたものをカッターで粒状にし、乾燥させる工程とからなる。 膨化処理では、加湿は必須である。これは、適当な量の水分が存在することで、ダイから押し出される際に水蒸気により十分に膨化することができるからである。水分量は十分に膨化されれば特に限定されないが、1〜50%が好ましく、8〜12%がより好ましい。なお、押し出し後の乾燥は必須ではない。湿った状態であっても、微細化することはできるからである。乾燥させる場合には、通常、温風乾燥法が用いられる。 膨化処理の条件は十分に膨化されれば特に限定されないが、スクリュー回転数50〜300rpm、バレル温度50〜200℃、加圧力0.5〜30MPaが好ましい。 つぎに、粉砕工程について説明する。粉砕は、通常、粉砕機を用いて行う。粉砕物は、微細化されればよく、粒度は特に限定されないが、汎用性向上、特に飲料等の用途を考慮すると、200メッシュパス(目開き75μm)95%以上であることが好ましい。 本発明の脂肪分解促進作用を有するリパーゼ阻害剤をダイエット食品に用いる場合は、そのままかあるいは必要に応じて、通常食品に用いられる種々の添加剤を加えても良い。このような添加剤としては、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物などが挙げられる。例えば、栄養補助剤として、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、レシチンなどを加え、さらに糖液や調味料を加えて、味を整えても良い。これらは、必要に応じて、ハードカプセル、ソフトカプセルのようなカプセル剤、錠剤、もしくは丸剤の形状に成形され、または粉末状、顆粒状、飴状、ゲル状、液状などの形態にすることができる。また、各種食品に適宜配合して使用しても良く、例えばビスケット等に配合しても良い。 本発明をダイエット食品に用いた場合の1日の摂取量は、特に限定されないが、750〜2250mgが好ましい。これを数回に分けて摂取しても良い。また、摂取時間は、食前30分〜食後30分が好ましく、食前30分がより好ましい。 以下、本発明を実施例及び比較例をあげて更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は、もちろんこれだけに限定されるものではない。<実施例> 次のとおり脂肪分解促進作用を有するリパーゼ阻害剤を製造した。(1)抽出工程 酢橘から種子を除去し、乾燥させて粉砕したもの10キログラムにエタノール20リットルを加え、2週間、常温暗所で浸漬した。フィルター濾過によって固形分を除去し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮液を凍結乾燥し、粉末状の酢橘抽出物を得た。(2)膨化処理工程 膨化処理は、二軸型エクストルーダー(スエヒロEPM社製)により行った。酢橘抽出物のフィード量を10kg/時、添加水量を1kg/時、スクリュー回転数を100rpm、加圧力を1.3MPaとし、加圧・加熱処理を行った。このときの中間バレル温度は80℃、先端バレル温度は100℃、ダイプレート温度は100℃であった。ダイから押し出すことで膨化させた後、乾燥させた。 (3)粉砕工程 粉砕機を用い、200メッシュパス95%以上に粉砕し、脂肪分解促進作用を有するリパーゼ阻害剤を得た。<比較例> 実施例と同様の方法で得た酢橘抽出物(未膨化品)を比較例とした。<評価例1> 実施例及び比較例について下記の条件でリパーゼ阻害試験を行った。(1)試薬 酵素:リパーゼ 豚膵臓由来(Sigma 社製) 基質:4−メチルウンベリフェロンのオレイン酸エステル(Sigma 社製) 標品:4−メチルウンベリフェロン(Sigma 社製) 緩衝液:5%DMSO加McIlvaine緩衝液(pH8.0)(2)測定原理 リパーゼの合成基質であるオレイン酸4−メチルウンベリフェリルが加水分解されて生じる蛍光物質、4−メチルウンベリフェロンの産生量を測定することによる。(3)測定方法(a)各サンプルを10倍、50倍、250倍、1250倍に希釈したものを用意した。(b)1反応当たり、緩衝液60μL、基質液(100μM)30μL、リパーゼ(100μg/mL)30μLを加え、37℃で60分間反応させた後、基質の分解により生じた蛍光物質(4−メチルウンベリフェロン)の量を測定した。(c)各サンプルの希釈倍率ごとにそれぞれ作成した検量線をもとに、基質の分解量を算出した。(d)以下の計算式により、コントロールに対するサンプルのリパーゼ阻害活性を求めた。 リパーゼ阻害活性(%)=(1−B/A)×100 A:コントロール(サンプルの代わりに緩衝液を用いた)の分解量 B:サンプルの分解量<評価結果1> 図1は、各サンプルの希釈倍率とリパーゼ阻害活性の変化を示したグラフである。30%阻害効果を示す希釈濃度(小数点以下四捨五入)を求めると、比較例10倍、実施例1935倍であった(実施例については補助線を引き外挿した値を求めた)。 リパーゼ阻害活性は、いずれの希釈倍率においても実施例が比較例と比較して高い値を示した。特に希釈倍率250のときの差が顕著であった。 上記の結果から、実施例の脂肪分解促進作用を有するリパーゼ阻害剤は、比較例(未膨化の酢橘抽出物)と比較して、高いリパーゼ阻害作用を有することが確認できた。<評価例2>実施例及び比較例について下記の条件で脂肪分解促進試験を行った。(1)細胞 マウス3T3−L1細胞(JCRB細胞バンク、JCRB9014)。脂肪細胞に分化させて試験に供試した。(2)試薬 ・DMEM低グルコース、Sigma、 D6046-500ML ・DMEM高グルコース、Wako、044-29765 ・AdipoInducer Reagent、TaKaRa、MK429(脂肪細胞分化誘導試薬及び維持試薬) ・24well培養プレート、TPP、92024 ・パラホルムアルデヒド、Wako、160-16061 ・Oil Red O、Sigma、O0625-25) ・イソプロピルアルコール、Wako、166-04836 ・PBS(−)、Wako、166-23555 (3)使用培地 ・10%FBS加DMEM低グルコース ・10%FBS加DMEM高グルコース ・脂肪細胞分化誘導培地(10%FBS加DMEM低グルコースにAdipoInducer Reagent中の脂肪細胞分化誘導試薬を加えたもの) ・脂肪細胞維持培地(10%FBS加DMEM高グルコースにAdipoInducer Reagent中の維持試薬を加えたもの)(4)測定に使用した装置及び器具 ・プレートリーダー BIO RAD model 680 ・コンピュータ IBM Think centre ・データ解析ソフトウェア BIO-RAD Microplate manager ver.5.2.1 ・ボルテックスミキサー Scientific Industries Vortex-genie2 ・プレートミキサー ASONE NS-4P ・マイクロピペット Eppendorf ・8連マルチチャンネルピペット HTL ・冷却マイクロ遠心機 KUBOTA 5220 ・顕微鏡 ECLIPSE Ti、Nicon ・カメラ及び撮影ソフト DS-U2、NIS-Elements、Nicon ・画像解析ソフト ImageJ NIH (5)測定原理 脂肪滴の大きさが小さい(半径が短い)ほど、脂肪の分解が進み、脂肪分解促進作用があると判断される。(6)測定方法(a)3T3−L1細胞を24Wellプレートに6×104/lmL/Wellとなるように播種した(10%FBS加DMEM低グルコース)。(b)100%コンフルエントになるまで1日おきに培地を交換しながら培養した(10%FBS加DMEM低グルコース)。(c)100%コンフルエントに達した2日後、脂肪細胞分化誘導培地に交換した(10 mL/well)。(d)脂肪細胞分化誘導培地に交換してから3日後、脂肪細胞維持培地に交換した(1mL/well)。(f)脂肪細胞維持培地に交換してから4日後、3.7μg/mL、11.1μg/mL、33.3μg/mL及び100μg/mLに調整し、実施例、比較例を添加した脂肪細胞維持培地に交換した。2日後、以下の方法で解析を行った。(g)培地を取り除いた。PBSを1mL加え、取り除いた(2回繰り返した)。(h)4%PFA−PBSを250μL加え、10分間室温で細胞を固定した。(i)超純水1mL加え、取り除いた。(j)60%イソプロピルアルコールを300μL加え、取り除いた。(k)Oil Red O染色液250μL加え、15分間室温で脂肪滴を染色した。(l)超純水1mL加え、取り除いた(3回繰り返す)。(m)風乾後、染色像を顕微鏡とカメラを用いて撮影した。(n)ImageJを用いて、250μm×250μm内の脂肪滴数の数をカウントした。 <評価結果2> 表1は、3T3−L1細胞中の大きさ別の脂肪滴数を示したものである。また、図2は、それをグラフ化したものである。 実施例は、比較例と比較して脂肪滴数が減少していた。また、小さい脂肪滴の割合が高くなっていた。 上記の結果から、実施例の脂肪分解促進作用を有するリパーゼ阻害剤は、比較例(未膨化の酢橘抽出物)と比較して、高い脂肪分解促進作用を有することが確認できた。 酢橘の果皮及びじょうのう膜から抽出物を得る抽出工程と、 前記抽出工程で得られた抽出物をエクストルーダーで膨化する膨化工程と、 前記膨化工程で得られた膨化物を粉状に粉砕する粉砕工程とを順次経て製造された脂肪分解促進作用を有するリパーゼ阻害剤。 酢橘の果皮及びじょうのう膜から抽出物を得る抽出工程と、 前記抽出工程で得られた抽出物をエクストルーダーで膨化する膨化工程と、 前記膨化工程で得られた膨化物を粉状に粉砕する粉砕工程とを備えた脂肪分解促進作用を有するリパーゼ阻害剤の製造方法。【課題】従来の酢橘抽出物と比較して、より作用が強い脂肪分解作用を有するリパーゼ阻害剤を提供する。【解決手段】酢橘の果皮及びじょうのう膜から抽出物を得る抽出工程と、抽出工程で得られた抽出物をエクストルーダーで膨化する膨化工程と、膨化工程で得られた膨化物を粉状に粉砕する粉砕工程とを順次経て製造する。これによって製造された脂肪分解作用を有するリパーゼ阻害剤は、従来の酢橘抽出物と比較して、より作用の強い物となる。【選択図】図1