生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_急性リンパ芽球性白血病の治療
出願番号:2014226022
年次:2015
IPC分類:A61K 39/395,A61P 35/02,A61P 37/04,C07K 16/28,C07K 16/46


特許情報キャッシュ

ツグマイヤー,ゲルハルト デーゲンハルト,エーフェリン JP 2015057417 公開特許公報(A) 20150326 2014226022 20141106 急性リンパ芽球性白血病の治療 アムゲン リサーチ (ミュンヘン) ゲーエムベーハー 512069865 細田 芳徳 100095832 ツグマイヤー,ゲルハルト デーゲンハルト,エーフェリン US 61/112,323 20081107 US 61/183,291 20090602 A61K 39/395 20060101AFI20150227BHJP A61P 35/02 20060101ALI20150227BHJP A61P 37/04 20060101ALI20150227BHJP C07K 16/28 20060101ALN20150227BHJP C07K 16/46 20060101ALN20150227BHJP JPA61K39/395 DA61K39/395 NA61P35/02A61P37/04C07K16/28C07K16/46 6 2011533633 20091106 OL 28 本発明は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療、改善または排除を必要とする成人ALL患者へのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物を含む医薬組成物の投与を含む、急性リンパ芽球性白血病の治療、改善または排除のための方法に関する。 白血病は、異常な分化または停止された分化を特徴とする、未成熟造血細胞のクローン新生物増殖である。白血病細胞は骨髄に蓄積し、最終的には大部分の正常造血細胞と入れ替わる。これにより、骨髄機能不全、その結果貧血、出血および感染が引き起こされる。白血病細胞は、体中の血液および他の組織に循環する(非特許文献1)。リンパ性または骨髄芽球性のいずれかに広く分類され得る急性白血病は、表現型的および遺伝的に同定することができ、素早い治療を必要とする迅速な臨床経過を特徴とする。急性白血病は、初期の造血祖先細胞に由来する。対照的に、慢性白血病は、より成熟した細胞の表現型および生物学的特徴を有する(DeVita et al.上記引用)。リンパ腫は、より成熟したリンパ球に似ており、典型的に骨髄への拡散前には典型的にリンパ節、脾臓または他の髄外部位に存在しているので、急性リンパ芽球性白血病(ALL)とリンパ腫は区別される。リンパ性リンパ腫やバーキットリンパ腫などの特定のリンパ腫は、白血病とリンパ腫の両方の特徴を残しているが、リンパ腫は、未成熟祖先細胞に由来し、急性リンパ芽球性白血病ALL)に使用されるものと同様の治療を必要とする。しかしながら、他のリンパ腫は、血液および骨髄に広く拡散することがあり、この段階では、白血性リンパ腫と記載できるが、本当の白血病ではない(De Vita et al.上記引用)。急性リンパ芽球性白血病は、比較的稀な悪性腫瘍である。急性リンパ芽球性白血病(ALL)の全発生率は、年間1.1/100,000である。この発生率は、幼少期にピークを有し、年齢の増加に伴って連続的に低下する。発生率は、35歳から再度上昇し、80歳から第二のピークが観察される(年間2.3/100,000)(非特許文献2)。急性リンパ芽球性白血病(ALL)の病因は不明であるが、これは最も注意深く研究されるものの1つであり、最も良く特徴付けられた新生物である。急性リンパ芽球性白血病(ALL)サブグループは、主に免疫表現型決定、細胞遺伝学および分子遺伝学により規定されている。症例の74%のB細胞系統急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、ALLの大部分を含む。全ALLの70%は、B前駆細胞ALLで、4%が成熟B細胞ALLである。T系統ALLは、全ALLの26%を占める(非特許文献2)。 1980年代の初期、成人急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、全体の生存が10%未満の稀に治療可能な疾患であった。小児集団に施与されるように適合された計画の使用後は、結果は30〜40%に向上した。停滞の期間の後、別のサブグループにおいてのみ向上があった。しかし、最近5年で、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の分子診断において進歩が達成された。幹細胞移植(SCT)は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の結果を向上させ、治療をより実行可能なものにした。種々の新規の標的薬物が評価されているが、急性リンパ芽球性白血病(ALL)に効果的な標的治療は、依然として得られていない。急性リンパ芽球性白血病(ALL)の迅速な診断および分類は、標的治療の焦点である予後サブセットおよび分子遺伝学的サブセットの同定に非常に重要である(非特許文献3)。第9染色体のablプロト癌遺伝子と第22染色体上の切断点クラスター領域配列を融合した相互転座の結果であるフィラデルフィア染色体(Ph)は、同定された最初の新生物特異的転座であった。転座(9;22)は、成人急性リンパ芽球性白血病(ALL)において最も頻度の高い遺伝的異常である。これは患者の20〜30%に見つかっている。発生率は年齢に伴って増加し、50歳より高齢の患者では50%に達する。過去の臨床試験では、治療が無駄な試みと思われたために、高齢の患者は充分に示されていなかったが、有望な新規の治療選択肢の利用可能性によりこのパターンは変化してきている。注目すべきことに、CD10+前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病(c-ALLおよびプレ-B ALL)においてこれはほぼ独占的に見られ、T系統ALLにおける転座の存在の稀な報告は、真性Ph+ ALLよりもむしろ、リンパ芽球の分利において慢性骨髄性白血病(CML)を示し得る。臨床的に、患者は、様々な白血球(WBC)数、CD19、CD10およびCD34抗原の表面発現を示し、骨髄マーカー、例えばCD13およびCD33の高頻度共発現は、髄膜白血病の発症のリスクの増加を有する。化学療法のみで治療されたPh+ ALLを有する成人患者の予後は乏しく、長期生存の可能性は10%未満である。 化学療法による惨たんたる結果のために、現在では、同種造血幹細胞移植(HSCT)が、成人Ph+ ALLにおける最良の治療であると考えられている。最初の完全寛解(CR)でSCTを受けた患者に対して、12%〜65%の長期生存率が報告されており、この手順は潜在的に疾患に効果的であると示されている。しかしながら、これらの患者のおよそ30%が再発を経験している(非特許文献4)。細胞学的検出限界未満の白血病細胞(5%白血病細胞)の存在は、微小残存病変(MRD)と定義される。RMDが検出されない場合(<10-4、つまり104骨髄細胞当たり1未満の白血病細胞)、完全な分子的寛解が達成される。近年、一連の遡及的な試験により、成人急性リンパ芽球性白血病におけるMRDは、幼少期白血病についてすでに示されている予後因子とは独立していることが示された。MRDの診断ツールはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および/またはフローサイトメトリーである。PCR解析により、bcr/ablなどの融合転写産物、ならびに免疫グロブリン(IgH)および/またはT細胞受容体遺伝子(TCR)の個々のクローン再配列を検出することができる。再配列により規定された微小残存病変(MRD)を有する患者の約25%は、3年以内に94%の再発率を有するハイリスク集団を含む。一般的に、MRDの減少は、成人では子供よりもゆっくりと生じる。そのため、同種末梢血幹細胞移植(PBSCT)による治療強度についての決定は、誘導治療後では早すぎる。しかし、地固めの開始後、任意の時点での微小残存病変(MRD)は、ハイリスクの再発を伴う(非特許文献5;非特許文献6)。 急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する成人患者の治療は、特定のリスク適合疾患実体に対して治療を最適に調整しようとする目的を反映して、異なるサブタイプの疾患に多様な治療プロトコルが導入されているため、徐々に複雑になってきている。最近の向上は、Ph陽性(Ph+)ALLにおけるチロシンキナーゼインヒビターイマニチブの早期添加(非特許文献7)またはB系統ALLのCD20+症例における抗CD-20抗体リツキシマブの使用(例えば、非特許文献8参照)などの新規の治療原理の導入により達成されている。診断の向上は、子供(例えば、非特許文献9参照)および成人(例えば、非特許文献5参照)における多くの試験で転帰の予測となることが示されている微小残存病変(MRD)のレベルを、分子遺伝的方法またはフローサイトメトリーのいずれかにより評価することにより達成された。成人急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者について、現代治療プロトコルによる生存率は、より攻撃的な化学療法計画の潜在的利益が合併症による超過死亡率で相殺されるように、平衡に達しているので、治療を個別に取り扱うように努めることがより重要になっている。従来のリスク因子を有さずに、化学療法のみで50%より高い長期生存の可能性を有する標準リスク患者(非特許文献10)は、集中的で長期的な治療により不必要なリスクを被る可能性があるが、再発急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する患者の結果は、第二の寛解を達成したとしても極端に低い。最近の研究では、集中的な化学療法の最初の年の微小残存病変(MRD)モニタリングは、MRDに基づいたリスク層化をもたらした(Brueggemann et al. (2006),上記引用)。この分類により、3年での再発の可能性が最小である約10%の患者からなるMRD低リスク集団、再発のリスクがほぼ100%である約25%の患者のMRD高リスク集団およびMRD中位リスク集団の同定が可能になった。後者の集団では、MRD陰性になったとしても、または治療1年目終了時点のMRDレベルが10-4未満になったとしても、患者の約30%は、結局は再発する。 これらのデータにより、急性リンパ芽球性白血病はほとんどの患者にとって劇的(fulminate)で不治の疾患であることが示される。この事を考慮すると、ALL治療の向上のための緊急の必要性がある。DeVita, Hellmann, Rosenberg. Cancer: principles and practice of oncology. Eight edition. Library of Congress Cataloging-in-Publication Data, ISBN 0-781-72387-6Hoelzer and Goekbuget; Der Onkologe 12 (2006); 983-1002Hoelzer and Goekbuget; Hematology (2006); 133-141Ottmann and Wassmann; Hematology (2005), 118-122Brueggemann et al., Blood 107 (2006), 1116-1123Raff et al., Blood 109 (2007), 910-915Lee et al., Blood 102 (2003), 3068-3070Griffin et al., Pediatr Blood Cancer 2008Cave et al., N. Engl. J. Med. 339 (1998), 591-598Hoelzer et al., Hematology Am. Soc. Hematol. Educ. Program 1 (2002), 162-192 本発明の課題は、急性リンパ芽球性白血病の治療を提供することである。 本発明は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療、改善または排除を必要とする成人患者へのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物を含む医薬組成物の投与を含む、急性リンパ芽球性白血病の治療、改善または排除のための方法を提供する。本発明の薬学的方法および手段の好ましい態様において、前記急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、B系統急性リンパ芽球性白血病、好ましくはB前駆細胞急性リンパ芽球性白血病である。B系統急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、症例の74%であり、ALLの大部分を含む。全ALLの70%はB前駆細胞ALLであり、4%が成熟B細胞ALLである。本明細書に記載されるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体はB細胞関連マーカーCD19に指向されているので、前記抗体は、B系統急性リンパ芽球性白血病、好ましくはプロB ALL、プレB ALLおよび共通ALL(cALL)にさらに細分化され得るB前駆細胞ALLに対する治療剤として、特に適している。 以下により詳細に説明されるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体(ブリナツモマブまたはTM103とも称する)の投与によって初めて、急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する患者における微小残存病変の治療を可能にする治療アプローチが提供される。以下の実施例に示され、図1によって図示されるように、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体(配列番号2および1のそれぞれに示される核酸発列およびアミノ酸配列)は、CD19発現標的細胞と共にT細胞に連結して、非限定的細胞傷害性T細胞応答およびT細胞活性化を引き起こすように設計されている。近年、フェーズI試験により、再発B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)におけるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の有意な臨床活性が示された(Bargou et al., Science 321 (2008):974-7)。これらの結果に基づいて、German Multicenter Study Group on Adult Acute Lymphoblastic Leukemia(GMALL)との共同研究により、血液学的完全寛解を達成したが依然として微小残存病変(MRD)を有する急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者におけるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の有効性、安全性および許容性を調べるためのフェーズII試験を設計した。MRDは、初期薬物耐性を反映し、地固め開始後の高い再発リスクに関連する独立予後因子である。免疫グロブリンの個々の再配列もしくはT細胞受容体(TCR)再配列の定量的検出、t(4;11)転座またはbcr/abl融合転写産物のいずれかによる標準的な方法でMRDを測定した(例えば、Van der Velden et al., Leukemia 18 (2004), 1971-80参照)。試験集団は、検出限界を超えるbcr/ablシグナルもしくはt(4;11)シグナル、および/または≧10-4の感度を有する再配列による少なくとも1つのマーカーを示す、急性B前駆細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する成人患者を含む。進行中のフェーズII試験の主要エンドポイントは、検出限界未満のbcr/ablもしくはt(4;11)シグナルおよび/または10-4未満の免疫グロブリンもしくはT細胞受容体(TCR)遺伝子の個々の再配列の検出で規定される微小残存病変(MRD)陰性状態への変換率である。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の一治療サイクルは、4週間の連続静脈注入であり、第一のサイクル後同種造血幹細胞移植を行い得るか、または2週間の治療なし間隔後にサイクルを繰り返し得る。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与量は、15μg/m2/24時間であり、患者内用量は30μg/m2/24時間まで上げることが可能である。微小残存病変(MRD)状態は、各治療サイクル後に調整される。MRD陰性を達成した患者にさらなる治療サイクルを与えてもよい。 今日までに、17人の成人ALL患者を治療したか、または依然CD19xCD3二重特性的単鎖抗体で治療中である。14人の患者に15μg/m2/24時間の用量レベルのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体を与え、3人の患者では、第1またはさらなる治療サイクル後、用量を15から30μg/m2/24時間まで上げた。これらのALL患者は全て、微小残存病変を有した:そのうち11人は免疫グロブリンまたはTCR再配列によるMRDを有し、2人の患者はt(4;11)転座を有し、4人の患者はbcr/abl融合転写産物を有した。 結果として、17人の患者のうち16人でMRD応答は評価可能であった。16人の患者のうち13人がMRD陰性になり、これは驚くべきことに81%の完全分子応答率に相当する。より具体的には、免疫グロブリンまたはTCR再配列を有する11人の患者のうち9人、t(4;11)転座を有する2人の患者のうち1人、およびbcr/abl転写産物を有する4人の患者のうち3人でMRD陰性が達成できた。抗体治療後に移植を受けなかった患者において、これまでに観察された最長のMRD陰性期間は41週間である。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体で治療され、2008年6月23日から2008年10月27日までMRD陰性であり、その後成功裡の同種幹細胞移植を受けた別の患者は、今日まで再発していない。 注目すべきことに、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体で成功裡に治療できたbcr/abl患者は、以前のALL治療計画ではチロシンキナーゼインヒビターイマチニブおよび/またはダサチニブに対して抗療性または不寛容であった。例えば、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療に対するbcr/abl応答者の1人は、チロシンキナーゼインヒビターによる治療に抗療性のT315I突然変異を有した。従って、ここで、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与によって初めて、bcr/abl転写産物を有する、イマチニブ-および/またはダサチニブ-抗療性ALL患者の治療が提供される。全部で17人の患者のうち3人だけは、MRD陰性にならなかった。しかしながら、このうちの2人において安定疾患が達成された。MRD陰性の19週後、わずか1人の患者が精巣再発を有し、その後血液再発を有した。1人の患者は、試験2日目に重篤有害事象(SAE)を示したために評価できなかった。 要約すると、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療に際に、B前駆細胞ALLを有する成人患者において、極めて格別な81%の完全分子応答率を達成することができた。上述の抗体の活性は、チロシンキナーゼインヒビター抗療性(T315I)bcr/abl患者およびt(4;11)転座を有する患者を含む全ての治療されたALL患者サブセットにおいて観察できた。通常、これらのALL患者サブセットは、同種HSCTの選択肢以外の従来のALL標準的治療では治療できないと考えられている。また、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療により、化学療法などの従来のALL治療とは対照的に、好ましい毒性プロフィールが示される。この事を考慮すると、本明細書に記載されるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与により、成人急性リンパ芽球性白血病(ALL)、特にALLが化学療法および/または同種HSCTなどの従来のALL治療に対して抗療性である場合に新規で有利な治療選択肢が提供される。また、ここで、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与によって初めて、MRD陽性ALLに対する治療が提供される。 即ち、本発明の要旨は、〔1〕CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物を含む、成人患者における微小残存病変(MRD)陽性急性リンパ芽球性白血病(ALL)を治療するための医薬組成物であって、該医薬組成物は、該患者においてMRD陽性状態をMRD陰性状態に変換するためのものであり、該CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物は、患者の体表面積1平方メートルあたり15μg、30μg、60μgまたは90μgの1日用量で投与される、医薬組成物、〔2〕CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が、最初の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり5μgの1日用量で投与され、全4週間のうちの残りの投与について患者の体表面積1平方メートルあたり15μgの投与が続く、〔1〕記載の医薬組成物、〔3〕CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が、最初の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり5μgの1日用量で投与され、その次の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり15μgの投与が続き、全4週間のうちの残りの投与について患者の体表面積1平方メートルあたり30μgの投与が続く、〔1〕または〔2〕記載の医薬組成物、〔4〕CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が、最初の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり5μgの1日用量で投与され、その次の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり15μgの投与が続き、全4週間のうちの残りの投与について患者の体表面積1平方メートルあたり45μgの投与が続く、〔1〕〜〔3〕いずれか記載の医薬組成物、〔5〕CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が、最初の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり5μgの1日用量で投与され、その次の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり15μgの投与が続き、全4週間のうちの残りの投与について患者の体表面積1平方メートルあたり60μgの投与が続く、〔1〕〜〔4〕いずれか記載の医薬組成物、〔6〕CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が、最初の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり5μgの1日用量で投与され、その次の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり15μgの投与が続き、全4週間のうちの残りの投与について患者の体表面積1平方メートルあたり90μgの投与が続く、〔1〕〜〔5〕いずれか記載の医薬組成物に関する。 本発明により、急性リンパ芽球性白血病の治療が提供される。図1は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の作用様式を示す。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体(ブリナツモマブまたはMT103)は、CD3陽性細胞傷害性T細胞に、CD19抗原を有するヒト急性リンパ芽球性白血病細胞を排除するよう再指令する。図2は、微小残存病変(MRD)過程の例を示す。common型急性リンパ芽球性白血病(cALL)患者109-002におけるTCR再配列(MRD)のPCR系測定は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療の前はMRD陽性およびCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の第1回目のサイクル後に開始したMRD陰性の継続を示す。図3は、治療サイクル1中の患者109-002のCD4およびCD8 T細胞のT細胞速度論を示す。T細胞の急速な再分布および主に細胞傷害性CD8 T細胞の増加を示す薬力学の代表例。図4は、治療サイクル1中の患者109-002のT細胞サブセットのT細胞速度論を示す。T細胞の急速な再分布およびTエフェクター記憶細胞(TEM)の拡大を示す薬力学の代表例。ナイーブT細胞は拡大されない。図5は、フェーズII試験に登録された最初の4名の患者を示す。すべての患者は、以前に、少なくとも1回の地固め治療を含むGMALLプロトコルに従ってALLの標準的な化学療法計画を受けた。図6は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での最初の治療サイクル後の、表示したALL患者(すなわち、フェーズII試験に登録された最初の4名の患者)における微小残存病変(MRD)応答を示す。図7は、微小残存病変(MRD)応答に関する更新を示す。免疫グロブリンまたはTCR再配列を有する11名の患者のうち9名、t(4;11)転座を有する2名の患者のうち1名、およびbcr/abl転写物を有する4名の患者のうち3名において、MRD陰性が達成され得た。要するに、評価可能な16名の患者のうち13名(81%)がMRD陰性となった。図8は、微小残存病変(MRD)陰性(2009年5月25日時点での状態)の持続期間を示す。これまでに、抗体治療後、移植を受けなかった患者108-001で観察されたMRD陰性の最長持続期間は41週間である。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体治療後、2008年6月23日から2008年10月27日までMRD陰性であり、その後、成功裡の同種異系造血幹細胞移植を受けた患者111-001は、これまで無再発である。矢印先端は、応答がなお継続中であることを意味する(2009年5月25日の状態)。患者109-002(*)は、19週間のMRD陰性後、精巣再発、続いて血液学的再発を有した。 本発明の方法により、以下の主要な利点が提供される:1. 化学療法または同種HSCTなどの従来の急性リンパ芽球性白血病(ALL)治療よりも有害な効果が少ない。従来のALL治療は、患者にかなりの健康的リスクを伴う;例えば、Schmoll, Hoeffken, Possinger: Kompendium Internistische Onkologie, S. 2660 ff.; 4. Auflage, Springer Medizin Verlag Heidelberg参照)。2. 現在、同種HSCTは、成人Ph+ ALLに最適な治療であると考えられているが、移植を受けた患者のおよそ3分の1が再発する。Ph+ ALL患者は、ALLサブタイプ中の全患者のうちで最も高い再発のリスクを有する。以下の実施例に示すように、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与は、微小残存病変(MRD)を有する成人ALL患者に特に適している。これは、フィラデルフィア染色体転座によって規定される微小残存病変(MRD)ならびに免疫グロブリンもしくはTCR再配列またはt(4;11)によって規定されるMRDを占める。骨髄移植に適格でなく、t(4;11)を有する成人ALL患者または抗療性Ph+ ALL患者は、今まで不治であると考えられてきた。そのため、本発明の薬学的方法および手段によって、成人ALLにおけるMRDの治療、改善または排除のための治療アプローチが提供され、それにより、患者に対する再発のリスクが低減さらには根絶される。MRD陽性ALL患者の治療的処置は、これまで利用可能でなかったことは注目すべきことである。3. 特に、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体は、化学療法、チロシンキナーゼインヒビターの投与、および/またはHSCTなどの従来のALL治療に抗療性のMRD陽性急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療に使用できる。4. CD19xCD3二重特異性単鎖抗体は、同種HSCTに適格でない患者において、従来の急性リンパ芽球性白血病(ALL)治療に取って代わることができるだけでなく、MRD陰性患者はMRD陽性患者よりも移植後の再発のリスクが低いので、前記移植に適格なALL患者を、MRD陰性状態に変換するためにも使用することができる。5. CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の高い細胞傷害活性により、骨髄における白血病細胞の排除が可能になる。 B前駆細胞急性リンパ芽球性白血病および他の種類のB(細胞)系統ALLなどの急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ならびにその治療は、例えば、Pui and Evans, N. Engl. J. Med. 354 (2006), 166-178; Hoelzer and Goekbuget; Hematology (2006); 133-141;またはApostolidou et al., Drugs 67 (2007), 2153-2171に概説される。ALLに関する情報は、例えばhttp://www.cancer.gov、http://www.wikipedia.orgまたはhttp://www.leukemia-lymphoma.orgでも見ることができる。 本発明による用語「二重特異性単鎖抗体」もしくは「単鎖二重特異性抗体」または関連用語は、完全長免疫グロブリンから定常部分および/またはFc部分(1つまたは複数)を除き、一本のポリペプチド鎖中で少なくとも2つの抗体可変領域を連結することにより得られる抗体構築物を意味する。本明細書で使用する「リンカー」は同じ特異性のVドメインを接続し、本明細書で使用する「スペーサー」は異なる特異性のVドメインを接続する。例えば、二重特異性単鎖抗体は、全部で2つの抗体可変領域、例えば2つのVH領域を有し、各領域が特異的に別々の抗原に結合でき、間にスペーサーが挿入された該2つの抗体可変領域が一本の連続ポリペプチド鎖として存在するように短い(通常10アミノ酸未満)合成ポリペプチドスペーサーを介して互いに接続される構築物であり得る。二重特異性単鎖抗体の別の例は、3つの抗体可変領域を有する一本ポリペプチド鎖であり得る。ここで、例えば1つがVHで1つがVLである2つの抗体可変領域はscFvを形成し得、該2つの抗体可変領域は、合成ポリペプチドリンカーを介して互いに接続され、VLは、しばしばタンパク質分解に対しては最大限に抵抗性でありながらも免疫原性が最小限になるように遺伝的に改変される。このscFvは、特定の抗原に特異的に結合でき、scFvが結合するものとは異なる抗原に結合できるさらなる抗体可変領域、例えばVH領域に接続される。二重特異性単鎖抗体のさらに別の例は、4つの抗体可変領域を有する単鎖ポリペプチドであり得る。ここで、第一の2つの抗体可変領域、例えばVH領域およびVL領域は、ある抗原に結合し得る1つのscFvを形成し得、第二のVH領域およびVL領域は、別の抗原に結合し得る第二のscFvを形成し得る。一本の連続ポリペプチド鎖中で、1つの特異性を有する個々の抗体可変領域は、上述の合成ポリペプチドリンカーにより有利に分離され得るが、それぞれのscFvsは、上述の短いポリペプチドスペーサーにより有利に分離され得る。二重特異性単鎖抗体およびそれらの製造方法の非限定的な例は、WO 99/54440、WO 2004/106381、WO 2007/068354、Mack, J. Immunol. (1997), 158, 3965-70; Mack, PNAS, (1995), 92, 7021-5; Kufer, Cancer Immunol. Immunother., (1997), 45, 193-7; Loeffler, Blood, (2000), 95, 6, 2098-103; Bruehl, J. Immunol., (2001), 166, 2420-2426に示される。 本明細書で使用される場合、「CD3」は、T細胞、好ましくはヒトT細胞上に多分子T細胞受容体複合体の一部として発現される抗原のことをいい、CD3は、5つの異なる鎖CD3-ε、CD3-γ、CD3-δ、CD3-ηおよびCD3ζからなる。例えば、抗CD3抗体によるT細胞上のCD3のクラスタリングにより、抗原の結合と同様であるが、T細胞サブセットのクローン特異性に非依存的なT細胞活性化がもたらされる。従って、用語「CD19xCD3二重特異性単鎖抗体」は、本明細書で使用する場合、ヒトT細胞上に発現するヒトCD3複合体に結合でき、標的細胞の排除/溶解を誘導できるCD3特異的構築物に関するが、ここでかかる標的細胞は、二重特異性単鎖抗体の他の非CD3結合部分に結合される抗原を有する/示す。CD3特異的結合体(例えば、本発明の薬学的手段および方法により投与される二重特異性単鎖抗体)によるCD3複合体の結合により、当該技術分野で公知のようなT細胞の活性化がもたらされる;例えばWO 99/54440またはWO 2007/068354参照。従って、本発明の薬学的手段および方法に適した構築物は、インビボおよび/またはインビトロで標的細胞を有利に排除/溶解し得る。対応する標的細胞は、CD19などの上記構築物の第二の特異性(つまり、二重特異性単鎖抗体の非CD3結合部分)により認識される腫瘍抗原を発現する細胞を含む。好ましくは、前記第二の特異性は、すでにWO 99/54440、WO 2004/106381またはWO 2007/068354に記載されているヒトCD19に対するものである。この態様によると、二重特異性単鎖抗体のそれぞれの抗原特異的部分は、抗体VH領域および抗体VL領域を含む。この二重特異性単鎖抗体の有利なバリアントは、N末端からC末端に:VL(CD19)-VH(CD19)-VH(CD3)-VL(CD3)(配列番号:1)である。 本発明の意味において、用語「特異的に結合」または「特異性」などの関連用語は、主に2つのパラメータ:定性的パラメータ(結合エピトープまたは抗体が結合する場所)および定量的パラメータ(結合親和性または抗体が結合する場所にどのくらいの強度で結合するか)によって特徴付けられるものと解される。抗体がどのエピトープに結合するかは、例えば、FACS法、ELISA、ペプチドスポットエピトープマッピング、または質量分析によって有利に決定され得る。抗体が特定のエピトープに結合する強度は、例えば公知のBiacoreおよび/またはELISA法により有利に決定され得る。かかる技術の組合せにより、信号対雑音比を結合特異性の典型的な測定値として計算することが可能になる。かかる信号対雑音比において、信号は、目的のエピトープへの抗体結合の強度を示し、雑音は、目的のエピトープとは異なる他の関連のないエピトープへの抗体結合の強度を示す。例えばBiacore、ELISAまたはFACSにより測定される目的のそれぞれのエピトープについて、例えば少なくとも50、好ましくは約80の信号対雑音比は、評価される抗体が、特異的様式で目的のエピトープに結合する、つまり「特異的結合体」であることの指標として採用され得る。用語「と結合/相互作用する」は、ヒト標的分子またはその一部の2つ以上の領域からなる立体的エピトープ、構造的エピトープまたは非連続エピトープにも関し得る。立体的エピトープは、ポリペプチドが天然のタンパク質に折りたたまれた場合に分子表面上で一体となる、一次配列中で分離された2つ以上の別々のアミノ酸配列によって規定される(Sela, (1969) Science 166, 1365 and Laver, (1990) Cell 61, 553-6)。用語「非連続エピトープ」は、ポリペプチド鎖の離れた部分の残基から集合した非線形エピトープを意味する。これらの残基は、ポリペプチド鎖が三次元構造に折りたたまれて立体的/構造的エピトープを構成する場合、分子表面上で一体となる。 本明細書で使用される場合、用語「治療」は、病気を和らげることを意図する、最も広い意味での医学的手順または用途を意味する。本発明の場合において、本明細書に記載されるような(成人ALL患者への投与用に調製された)CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与は、成人患者におけるALL疾患の治療、改善または排除用である。 本明細書で使用する場合、用語「患者」は、ヒト成人患者のことをいう。本明細書において言及される用語「成人ALL」または「成人ALL患者」または「成人患者」は、18歳より高齢の成人、すなわち19歳、20歳、21歳、22歳、23歳、24歳、25歳、30歳、35歳、40歳、または50歳以上の患者を示す。さらに、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、100歳以上の患者が、本発明の方法および手段により治療され得る。表示される年齢は、ALL疾患の診断時の年齢と理解されたい。 本明細書で使用される場合、用語「改善」は、向上と同義である。成人ALL患者の状態が改善を見せる場合、患者は明確に良好になり、該患者の状態にある程度の向上がある。例えば、ALL疾患の安定化が達成され得る場合(安定疾患とも称される)、つまり、ALL疾患がもはや進行性でない場合、ALL患者の状態に向上があり得る。さらに良好に、MRD陽性急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、MRD陰性状態に変換される。 本明細書で使用する場合、用語「排除」は、成人ALL患者の体内からの白血病細胞の除去を意味する。以下の実施例に示すように、種々のALLサブタイプにおいて、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与により、MRD陽性急性リンパ芽球性白血病(ALL)をMRD陰性状態に変換することができる。 本明細書で使用される場合、用語「投与」は、治療有効量の前述のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の個体、つまりヒト患者への投与を意味する。好ましくは、ALL患者は、本明細書において定義した成人患者である。 「治療有効量」は、投与されると効果、好ましくは微小残存病変(MRD)陽性急性リンパ芽球性白血病(ALL)状態のMRD陰性ALL状態への変換を生じる用量を意味する。厳密な用量は治療目的に依存し、公知技術を使用して当業者により確かめられる。当該技術分野において公知なように、および上述されるように、局所送達に対する全身送達、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与期間、薬物相互作用および状態の重症度に対する調整が必要であり得、常套的な実験を用いて当業者により確認される。 かかりつけの医師および臨床要因により投与量計画が決定される。医学分野で周知なように、任意の患者への投与量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の期間および経路、一般的健康状態ならびに同時に投与されている他の薬物などの多くの要因に依存する。 医学分野で周知なように、任意の患者への投与量は、成人患者の大きさ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の期間および経路、一般的健康状態ならびに同時に投与されている他の薬物などの多くの要因に依存する。典型的な用量は、例えば本発明の態様および添付の実施例に記載される範囲内にあり得るが、特に前述の要因を考慮して、この例示的範囲未満またはこれを超える用量が想定される。 用語「連続注入」は、長期間にわたり永久的に、つまり中断されることなく、進行させる注入のことをいう。「連続注入」は、永久的に投与される注入のことをいう。従って、本発明の文脈において、用語「永久的」と「連続的」は同義的に使用される。本発明の意味において、例えば用語「4週間連続注入」は、本発明による薬学的手段および方法に使用されるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体を4週間にわたり持続的に、一定の様式で、本発明の薬学的手段および方法に必要な全期間中、成人患者の身体に連続的に投与する状況を示す。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の連続投与スキームは、WO 2007/068354に、より詳細に記載される。CD19xCD3二重特性単鎖抗体の導入の中断は回避される。すなわち、投与されるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の供給の補充または医学的介入が必要となること等以外の理由のために本発明の薬学的手段および方法に必要な投与の期間の全体において、この抗体が患者の体内に投与される状態からこの抗体が患者の体内にもはや投与されなくなる状態への移行が起こらないかまたは有意に起こらない。投与される抗体の導入の一時的な中断がかかる必要な補充により生じる限りにおいては、かかる投与は依然として本発明の薬学的手段および方法の意味における「中断されていない」かまたは「恒久的」であると解される。ほとんどの場合において、かかる補充は、一般的に、抗体が患者の体内に導入されていない時間は非常に短いため、本発明の薬学的手段および方法による全投与計画に関して計画された時間と比較して無視できるくらいわずかである。本発明によると、一回の治療サイクルは、成人ALL患者へのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の4週間の連続注入、その後2週間の治療なしの間隔であると解されたい。4週間の連続投与または一回の治療サイクル後の治療される患者のMRD段階付けの際に、二重特異性単鎖抗体治療に対する最小または部分応答が診断され得ることもある。この場合、より良好な治療結果、例えば安定疾患さらには完全応答を達成するために、連続投与はさらに1、2、3、4、5または10治療サイクルまで延長されてもよい。好ましくは、前記完全応答は、MRD陰性である。代替的な態様において、成人ALL患者へのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の4週間の連続注入後に、同種HSCTが行われ得る。上述のように1、2、3、4回以上の治療サイクルで治療された患者が、その後に同種HSCT移植を受け得ることも想定される。 以下の実施例に示されるように、16人の成人ALL患者のうちの13人は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体による治療の際にMRD陰性になったが、これは驚くべき81%の完全分子応答率に相当する。より具体的に、免疫グロブリンまたはTCR再配列を有する11人の患者のうち9人、t(4;11)転座を有する二人の患者のうち一人、およびbcr/abl転写産物を有する4人の患者のうち3人において、MRD陰性を達成することができた。好ましくは、成人ALL患者へのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与単独または同種HSCTとの併用のいずれかの主要な治療目標は、本明細書に規定されるように、MRD陽性状態のMRD陰性状態への変換である。 本発明による薬学的手段および方法の様式における二重特異性単鎖抗体の中断されない長期間の投与の継続により、実施例に記載される有利なT細胞活性化が、体内から全ての疾患細胞を有利に除去するのに充分に長い時間その効果を発揮することが可能になる。中断されずに投与される二重特異性単鎖抗体の速度は低く保たれるので、治療剤の適用は、患者に有害な副作用のリスクをもたらすことなく長期間継続され得る。 本明細書において使用されるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体は、有利には、急性リンパ芽球性白血病(ALL)と診断されたヒト患者への投与のために医薬組成物の形態である。好ましくは、ヒト患者は、本明細書において以下に規定されるように、成人である。本明細書において使用される二重特異性単鎖抗体は単独で投与されてもよいが、薬学的に許容され得る担体中での投与が好ましい。適切な医薬用担体の例は当該技術分野において周知であり、その例としては、リン酸緩衝食塩水、水、リポソーム、種々の湿潤剤、滅菌溶液等が挙げられる。かかる担体を含む組成物は、周知の従来の方法により製剤化することができる。これらの医薬組成物は、適切な用量で被験体に投与することができる。投与計画は、かかりつけの医師および臨床要因により決定される。医学分野で周知のように、任意の患者についての投与量は、患者の体格、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の期間および経路、一般的な健康状態、ならびに同時に投与されている他の薬物などの多くの要因による。非経口投与用調製物としては、滅菌水溶液もしくは滅菌非水溶液、または懸濁物が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびオレイン酸エチルなどの注射可能有機エステルである。水性担体としては、水、水溶液、または食塩水および緩衝化媒体などの懸濁物が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、または乳酸加リンガー液が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、液体および栄養補充液、電解質補充液(たとえば、リンガーデキストロースを基にしたもの)等が挙げられる。例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガス等の保存剤および他の添加剤を存在させてもよい。また、該組成物は、例えば血清アルブミンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質性の担体、好ましくはヒト起源のものを含み得る。該組成物は、タンパク質性二重特異性単鎖抗体の他に、医薬組成物の使用目的に応じて、さらに生物学的に活性な薬剤を含み得ることが構想される。かかる薬剤は、細胞増殖抑制剤(cytostatica)として作用する薬剤、高尿酸血症(hyperurikemia)を予防する薬剤、免疫反応を抑制する薬剤(例えばコルチコステロイド、FK506)、循環系に作用する薬物および/またはT細胞共刺激分子などの薬剤または当該技術分野で公知のサイトカインであり得る。 好ましくは、本明細書で規定されるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体は、バッファ、安定化剤および界面活性剤中に製剤化される。バッファは、リン酸、クエン酸、コハク酸または酢酸バッファであり得る。安定化剤は、1つまたは複数のアミノ酸および/または糖であり得る。界面活性剤は、洗剤、PEG等であり得る。より好ましくは、本明細書に規定されるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体は、クエン酸、リジン、トレハロースおよびTween 80中に調製される。本発明の医薬組成物のための希釈剤としては等張食塩水およびTween 80が好ましい。 好ましくは、本発明の使用または方法において、該医薬組成物は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)と診断されたヒト成人患者に投与される。 それぞれの疾患実体に関して、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体治療の成功は、確立された標準的な方法によりモニタリングされ得る:B細胞ALL治療について、蛍光細胞分析分離装置(FACS)、骨髄穿刺および種々の白血病特異的臨床化学パラメータならびに他の確立された標準的な方法を使用してもよい。微小残存病変(MRD)状態の決定のための方法および手段は、先に記載してある。 細胞傷害性は、当該技術分野で公知の方法および例えばWO 99/54440、WO 2004/106381、WO 2007/068354に示される方法によって検出することができる。 好ましい態様において、成人患者(1人または複数)の急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、化学療法に抗療性、好ましくは、MRDに関して化学療法に抗療性である(すなわち、これらのALL患者におけるMRD は化学療法に抵抗性である)。さらにより好ましくは、急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、同種異系HSCTに不適格な患者において化学療法に抗療性である。 用語「化学療法」は、本明細書で使用される場合、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療に使用される化学療法を表す。化学療法は小児ALLの初期治療選択肢である。ほとんどのALL患者は、結局、異なる治療の組合せを受けることになる。ALLの治療では、悪性細胞の分布は全身性であるため、手術オプションはない。一般に、ALLに対する細胞傷害性化学療法は、多種類の抗白血病性薬物を種々の組合せで併用する。ALLに対する化学療法は、3つの相:寛解誘導、強化、および維持療法からなる。化学療法はまた、中枢神経系を白血病から保護するために指示される。寛解誘導の目的は、腫瘍細胞の大部分を迅速に死滅させ、患者を寛解にすることである。これは、骨髄(光学顕微鏡検査によって測定時)、正常血液細胞中5%未満の白血病性芽細胞の存在、ならびに血液中に腫瘍細胞の非存在、ならびに疾患の他の徴候および症状の非存在と定義する。例えば、プレドニゾロンまたはデキサメタゾンの組合せ(小児)、ビンクリスチン、アスパラギナーゼ、およびダウノルビシンの組合せ(成人ALLに使用)が寛解の誘導に使用される。強化には、腫瘍負荷をさらに低減させるため、高用量の静脈内多剤化学療法剤が使用される。典型的な強化プロトコルでは、ビンクリスチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、エトポシド、チオグアニンまたはメルカプトプリンが使用され、ブロックとして異なる組合せで投与される。ALL細胞は中枢神経系(CNS)に浸透することもあるので、ほとんどのプロトコルは、CNS液中への化学療法剤の送達を含む(髄腔内化学療法と称される)。一部の中心には、オマヤレザバー(頭皮下に外科的に配置され、種々の試験のために、CNS液に薬物を送達するため、およびCNS液を抜き取るために使用されるデバイス)によって薬物が送達される。他の中心には、試験および治療剤の送達に必要なだけ多数回の腰椎穿刺が行なわれる。この目的には、通常、髄腔内メトトレキサートまたはシタラビンが使用される。維持療法の目的は、寛解誘導および強化計画によって死滅しなかった任意の残留細胞を死滅させることである。かかる細胞はごくわずかであるが、根絶されなければ、再発を引きこす。この目的のため、毎日の経口メルカプトプリン、週1回の経口メトトレキサート、月1回の5日間コースの静脈内ビンクリスチンおよび経口コルチコステロイドが通常使用される。維持療法の長さは、男児で3年間、女児および成人で2年間である。中枢神経系の再発は、ヒドロコルチゾン、メトトレキサート、およびシタラビンの髄腔内投与で治療される(Hoffbrand et al.,Essential Hematology、Blackwell、第5版、2006)。化学療法計画は集中的で長期的(しばしば、GMALL UKALL、HyperCVADまたはCALGB プロトコルの場合は約2年間;COGプロトコルにおいて男性で約3年間)となり得るため、多くの患者は、大静脈内に挿入された静脈内カテーテル(中心静脈カテーテルもしくはヒックマンラインと称される)、またはPortacath(皮下、通常、鎖骨付近に外科的に埋め込まれるシリコーン製突出部を有する円錐形ポート)を有する。 ALLの化学療法は、例えば、Schmoll、Hoeffken、Possinger(上記引用)に記載されている。 上記のことに鑑み、用語「化学療法に抗療性」は、本明細書で使用される場合、化学療法に対する急性リンパ芽球性白血病細胞の抵抗性を表す。 患者は、初期治療後、ALLの再発を経験し得る、および/または治療後、化学療法に抗療性となり得る。化学療法に抗療性のALL患者は顕著に不良な予後を有する。特に、化学療法のみで治療されたPh+ ALLを有する成人患者の予後は不良であり、長期生存の確率は10%未満である。本発明の薬学的方法および手段は、成人ALL患者をMRD陰性にし得るため、化学療法に抗療性のALL患者の治療に特に有用である。 用語「同種異系造血幹細胞移植」は、本明細書で使用されるように、造血幹細胞(HSC)の移植を伴う血液学および腫瘍学の分野の医療処置である同種異系造血幹細胞移植(HSCT)または骨髄移植(BMT)を意味する。これは、たいてい、ALLなどのリンパ節、血液もしくは骨髄の疾患を有する患者に対して行なわれる。同種異系HSCTは、ヒトが遺伝的に類似しているが同一でないドナーから血液形成性幹細胞(あらゆる血液細胞が発生する細胞)を受ける処置である。これは、しばしば、母親、父親、姉妹または兄弟などの近親者であるが、血縁関係のないドナーであってもよい。HSCTのほとんどのレシピエントは、高用量の化学療法または全身照射での治療の恩恵を被り得る白血病(例えば、ALL)患者である。しかしながら、同種異系HSCTは、なお危険で毒性の治療である。 用語「HSCTに不適格」は、本明細書で使用されるように、例えば、医学的理由のため、同種異系HSCTがALLの治療選択肢でない成人患者を意味する。例えば、これは、適切なドナーが得られ得ない場合、または患者が年齢の上限を超えている場合であり得る。以下の実施例に示すように、試験に含める前、すべての患者は化学療法に抗療性であったか、またはPh+ ALLの場合は、チロシンキナーゼにも抗療性または不耐性であった。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体で治療した例えば、患者111-003、108-002、109-006または109-007などの8名の患者は同種異系HSCTに不適格であった。 これまで、ALLは、化学療法に抗療性で同種異系HSCTに不適格な患者にとっては死の宣告を意味していた。本発明の薬学的方法および手段は、排除されなければ再発が引き起こされ得、前記患者は死亡し得る微小残存病変(MRD)が排除されるため、初めて、この患者集団に対する治療を提供する。 本発明の薬学的方法および手段の代替的態様では、同種異系HSCTに適格な成人患者において、前記方法の後に同種異系造血幹細胞移植を行なうか、または同種異系造血幹細胞移植の代わりに前記方法を行なう。 用語「同種異系HSCTに適格」は、本明細書で使用されるように、同種異系HSCTが成人ALL患者の治療に必要とされることを意味する。ALL患者が同種異系HSCTに適格である場合、以下の2つの状況が構想され得る。第1に、本発明の薬学的方法および手段の一態様において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与(単独または好ましくは、医薬組成物として)は、移植に適格な成人ALL患者の従来の治療として使用されている同種異系HSCTの代わりに使用され得る。そのため、本発明の薬学的方法および手段により、同種異系造血幹細胞移植に関連するALL患者の健康リスクが回避され得る。また、移植を受けたALL患者の30%は、通常、移植後に再発する。そのため、本発明の薬学的方法および手段は、これらの患者を治療するために使用され得る。代替的な態様において、成人ALL患者へのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の連続注入の後、同種異系造血幹細胞移植が行なわれ得る。この態様では、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物を含む医薬組成物の投与は、移植に適格なALL患者を、移植を受ける前にMRD陰性状態に変換するために使用され得る。そのため、本発明の薬学的方法および手段は、MRDを排除するために使用され得、MRD陽性患者の移植治療よりも低い再発リスクがもたらされる。以下の実施例に、まず、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療でMRD陰性状態に変換した後、同種異系移植を行なった患者を示す。これまで、この患者はなおMRD陰性であり、これまでのMRD陰性持続期間は47週間である。 同種異系HSCTを受け、その後再発した成人ALL患者にCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物を投与することは、本発明の薬学的方法および手段の範囲内である。 別の好ましい態様において、本発明の薬学的方法および手段は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する成人患者における微小残存病変(MRD)の治療、改善または除去のためのものである。 用語「微小残存病変(MRD)」は、本明細書において定義される場合、例えば、化学療法での治療後、光学顕微鏡による方法によって骨髄中にもはや白血病性細胞が見られ得ない場合の疾患状態を表す。ALL患者の骨髄中に白血病細胞の残留の証拠を見出すためには、フローサイトメトリー(FACS系の方法)またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などのより感度のよい試験が使用されなければならない。より詳しくは、細胞学的検出限界(5%白血病性細胞)未満の白血病細胞の存在を微小残存病変(MRD)と定義する。MRDが検出可能でない場合(<10-4、すなわち、検出可能な104個の骨髄細胞あたり白血病細胞1つ未満)、分子的完全寛解に達する。「MRD陽性状態」は、本明細書において定義するように、検出限界より上のbcr/ablシグナルもしくはt(4;11)シグナルおよび/または10-4より上の免疫グロブリンもしくはT細胞受容体(TCR)遺伝子の個々の再配列を意味する。「MRD陰性状態」は、本明細書において定義するように、検出限界未満のbcr/ablシグナルもしくはt(4;11)転座シグナルまたは10-4未満の免疫グロブリンもしくはT細胞受容体(TCR)遺伝子の個々の再配列を意味する。MRD状態は、個々の免疫グロブリン遺伝子の再配列もしくはT細胞受容体(TCR)再配列、またはbcr/abl融合転写物、またはt(4;11)が定量的に検出されるため、PCRまたはFACS解析によって測定され得る。例えば、PCR解析により、bcr/ablなどの融合転写物またはt(4;11)転座ならびに免疫グロブリン(IgH)および/または T細胞受容体遺伝子(TCR)の個々のクローン再配列が検出され得る。 急性リンパ芽球性白血病を有する患者の悪性細胞における再発性の染色体異常は該疾患の顕著な特徴である(HarrisonおよびForoni、Rev. Clin. Exp. Hematol. 6(2002)、91-113)。一貫して存在する分子的病変を高頻度に示す具体的な異常により診断が補助され、さらに確立され、最適治療が決定され得る。小児ALLにおいて、患者を具体的な治療に階層化するために定例的に使用される数多くの良好なハイリスク細胞遺伝学的亜群が確認された(PuiおよびEvans、N. Engl. J. Med. 354(2006)、166-178)。しかしながら、成人ALLにおいて、患者の管理における細胞遺伝学の役割は、通常、t(9;22)(q34;q11.2)から生じ、BCR-ABL(bcr/abl)融合をもたらすフィラデルフィア(Ph)染色体の存在に大きく集中している(Faderl et al.,Blood 91(1998)、3995-4019)。成人におけるPh+ ALLの全体的な発生率はほぼ25%であるが、これは年齢と相関しており、年齢が55歳より高い患者では50%より多くで発生する(Appelbaum、American Society of Clinical Oncology 2005 education book. Alexandria:ASCO、2005:528-532)。急性リンパ芽球性白血病(ALL)の特定の分子遺伝学的異常と関連している他の細胞遺伝学的転座を表1に示す。 細胞遺伝学は、ALLの転帰の重要な予測因子であると次第に認識されてきている(Moormann et al.,Blood 109(2007)、3189-97)。 一部の細胞遺伝学的サブタイプは他のものよりも不良な予後を有する。これらとしては、例えば、 (i)第9染色体と第22染色体間での転座、フィラデルフィア染色体(Ph+)は成人ALL症例の約20%および小児ALL症例の5%で起こること、 (ii)第4染色体と第11染色体間の転座は症例の約4%で起こり、12ヶ月未満の乳児で最も一般的であることが挙げられる。 免疫グロブリン遺伝子の再配列またはT細胞受容体(TCR)再配列およびそのALLにおける役割は当該技術分野において記載されている(例えば、Szczepanski et al.,Leukemia 12(1998)、1081-1088参照)。 本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、前記成人患者が血液学的完全寛解においてMRD陽性である。 用語「寛解」または「血液学的寛解」は、本明細書で使用される場合、治療後、例えば、化学療法および/または移植後、疾患の徴候を有しないことであると理解されたい。これは、光学顕微鏡検査によって測定したとき、骨髄に含まれる芽細胞が5%より少なく、血球数が正常範囲内であり、ALL疾患の徴候または症状がないことを意味する。分子的完全寛解は、PCRなどの非常に感度のよい試験を用いた場合でも、骨髄の生検材料中に白血病細胞の徴候がないことを意味する。言い換えると:MRDが検出可能でない場合(<10-4、すなわち、1つ未満の白血病細胞/104骨髄細胞)、分子的完全寛解が達成される。 化学療法または同種異系造血幹細胞移植によるヒト成人ALL患者における白血病病変(1つまたは複数)の完全寛解後、すべての白血病細胞が身体から排除され得ないことが起こり得る。しかしながら、これらの残存腫瘍細胞により再発性の白血病が引き起こされ得る。本発明の薬学的手段および方法は、白血病の再発(一次治療後に体内に残存する潜伏白血病細胞から起こる)を予防するために、これらの残存腫瘍細胞を死滅させるために使用され得る。このようにして、該薬学的手段および方法により、成人ALL患者の疾患再発の予防が補助される。 本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、前記医薬組成物の投与により、MRD陽性急性リンパ芽球性白血病(ALL)がMRD陰性状態に変換される。 本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、MRDは、PCRまたはFACS解析を使用し、個々の免疫グロブリン遺伝子の再配列もしくはT細胞受容体(TCR)再配列、またはbcr/abl融合転写物、もしくはt(4;11)の定量的検出によって測定される。 以下の実施例に示すように、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与は、微小残存病変(MRD)を有する成人患者に特に適切である。これは、フィラデルフィア染色体の転座またはt(4;11)によって規定される微小残存病変(MRD)、ならびに免疫グロブリンまたはTCR再配列によって規定されるMRDの説明となる。したがって、本発明の薬学的方法および手段は、MRDの治療、改善または除去により、成人患者の再発リスクを低減、さらに排除するための治療アプローチを提供する。注目すべきことに、ALL患者におけるMRDの治癒性の治療法は、これまでまだ得られていない。 本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、前記患者は、検出限界より上のbcr/ablシグナルまたはt(4;11)シグナルおよび/または≧10-4の感度で再配列による少なくとも1つのマーカーを示す。 用語「検出限界より上のbcr/ablシグナルまたはt(4;11)転座シグナル」は、本明細書で使用されるように、PCRまたはFACS解析により、検出可能なbcr/ablシグナルまたはt(4;11)シグナルがもたらされることを意味する。 本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、分子再発(上記のアッセイにより検出可能)までの期間は4ヶ月より長い。 用語「分子再発」は、本明細書で使用されるように、前記患者が、検出限界より上のbcr/ablもしくはt(4;11)転座シグナルおよび/または≧10-4の感度で再配列による少なくとも1つのマーカーを示すことを意味する。 用語「≧10-4の感度で」は、本明細書で使用するように、10.000個の細胞、特に骨髄細胞において1つまたは1つより多くの白血病細胞が検出され得ることを意味する。 本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、前記CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物内の対応する可変重鎖領域(VH)および対応する可変軽鎖領域(VL)領域は、N末端からC末端に、VL(CD19)-VH(CD19)-VH(CD3)-VL(CD3)の順に配列される。 CD19xCD3二重特異性単鎖抗体のCD3およびCD19結合ドメインの対応する可変重鎖領域(VH)および対応する可変軽鎖領域(VL)領域を、それぞれ、配列番号3〜10に示す。記載のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体のそれぞれのVHおよびVL領域の対応するCDR領域を配列番号11〜22に示す。 本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、前記CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物は、配列番号1に示すアミノ酸配列、または配列番号1と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。 本発明は、配列番号1に示すアミノ酸配列、ならびに配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%または好ましくは95%同一、最も好ましくは少なくとも96、97、98もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む二重特異性単鎖抗体分子を記載する。また、本発明は、配列番号2に示す対応する核酸配列ならびに配列番号2に示す核酸配列と少なくとも90%、好ましくは、95%同一、最も好ましくは少なくとも96、97、98または99%同一である核酸配列を記載する。配列同一性は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列全体において測定されることを理解されたい。さらに、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%または好ましくは95%同一、最も好ましくは少なくとも96、97、98もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む二重特異性単鎖抗体分子は、配列番号11〜22に示すCDR配列をすべて含むことを理解されたい。配列の整列のためには、例えば、GCGソフトウェアパッケージ(Genetics Computer Group、575 Science Drive、Madison、Wisconsin、USA 53711(1991)に含まれたプログラムGapまたはBestFitが使用され得る(NeedlemanおよびWunsch J. Mol. Biol. 48(1970)、443-453;SmithおよびWaterman、Adv. Appl. Math 2(1981)、482-489)。本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性単(single single)鎖抗体のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と例えば、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するヌクレオチドまたはアミノ酸配列を調べ、同定することは、当業者にとって定型の方法である。例えば、CrickのWobble仮説によれば、アンチコドン上の5’塩基は、その他の2つの塩基ほど空間的に拘束されず、したがって、標準的でない塩基対形成を有し得る。言い換えると:コドントリプレット内の第3の位置は、この第3の位置と異なるトリプレット内の2つが同じアミノ酸残基をコードし得るように異なり得る。前記仮説は当業者に周知である(例えば、http://en.wikipedia.org/wiki/Wobble_Hypothesis;Crick、J Mol Biol 19(1966):548-55参照)。 本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、1回の治療サイクルは、少なくとも4週間の連続注入、続いて2週間の無治療期間の後、サイクルの反復、または同種異系造血幹細胞移植である。 本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、治療サイクルは、MRD陰性状態の決定後、少なくとも3回、好ましくは、4、5、6、7回またはさらに10回まで繰り返される(地固め)。 本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、二重特異性単鎖抗体構築物は、患者の体表面積1平方メートルあたり10μg〜100μgの日用量で投与される。 本明細書で使用するように、「X to Y(X〜Y)」で規定する用量範囲は、「between X and Y(X〜Y)」で規定する用量範囲と同じである。該範囲は、上限、また下限も含む。これは、例えば、患者の体表面積1平方メートルあたり10μg〜100μgの日用量は、「10μg」および「100μg」を含むことを意味する。 本発明の薬学的方法および手段のさらにより好ましい態様において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物は、患者の体表面積1平方メートルあたり15μg、30μg、60μgまたは90μgの日用量で投与される。さらにより好ましくは、前記抗体は、患者の体表面積1平方メートルあたり15〜30μgの日用量で、最も好ましくは患者の体表面積1平方メートルあたり15または30μgの日用量で投与される。 ここで、成人患者の平均体表面積は、本発明による薬学的方法または使用の状況において、1.7〜2.2m2の範囲であると計算する。 好都合には、本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体を含む医薬組成物は、さらに、任意に(a)反応バッファー(1種類もしくは複数種)、保存溶液および/または記載の方法もしくは使用に必要とされる残りの試薬もしくは物質を含む。さらに、前記成分は、バイアルもしくはボトル内に個々に、または容器もしくは多容器ユニット内に組合せでパッケージされ得る。 本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の安全性および許容性を評価するためには、該化合物は、長期連続注入によって投与される。 本発明の薬学的手段および方法の有益で予想外の効果は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を、体表面積1平方メートルあたり10マイクログラム〜100マイクログラムの日用量で投与することにより得られ得ることがわかった。日用量は、投与期間にわたって一定に維持され得る。しかしながら、注入期間の最初の日(1日または複数)では、本明細書に記載の薬学的方法の前に低用量の二重特異性単鎖抗体を投与する(「初期用量」)が、残りの注入期間では高用量(「維持用量」)を適用することもこの態様の範囲に含まれる。例えば、体表面積1平方メートルあたり5マイクログラムの二重特異性単鎖抗体が注入期間の最初の日(1日または複数)に投与され得、その後、身体表面1平方メートルあたり15マイクログラムが日用量として残りの治療期間に投与され得る。または、体表面積1平方メートルあたり15マイクログラムの二重特異性単鎖抗体が注入期間の最初の日(1日または複数)に投与され得、その後、身体表面1平方メートルあたり30または45マイクログラムが日用量として残りの治療期間で投与され得る。初期用量 は、1、2日間もしくはそれ以上の日数、さらに1週間(7日間)投与され得る。また、体表面積1平方メートルあたり5マイクログラムの二重特異性単鎖抗体が、注入期間の最初の日(1日または複数)に投与され得、続いて、体表面積1平方メートルあたり15マイクログラムの二重特異性単鎖抗体が、注入期間のその後の日(1日または複数)に投与され、続いて、身体表面1平方メートルあたり45マイクログラムが日(維持)用量として残りの治療期間で投与されることが構想される。成人患者の平均体表面積は、本発明による薬学的方法または使用の状況において、1.7〜2.2m2の範囲であると計算する。 本発明の方法および使用の別の態様において、最初またはさらなる治療サイクル後に、例えば、15〜30もしくは60またはさらに90マイクログラム/m2/24時間に用量を上昇させる。 CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の非断続投与は、静脈内、非経口、皮下、経皮、腹腔内、筋肉内または肺内であり得る。静脈内投与様式は、ほとんどの場合、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を非断続投与するため、場合によっては、同時治療計画の一部としての医薬剤の共投与のために選択される様式である。そのため、静脈内投与は特に好ましい。この場合、Baxter製の多治療剤注入ポンプモデル6060などの適当な定量デバイスが有利に選択され得る。どのような定量デバイスが選択されようと、それは、カートリッジの交換および/または電源セルの交換もしくは充電事象の際に、治療薬剤の投与の中断が最小限になる、よりよくは防止されるような設計および構成であるべきである。これは、例えば、交換するカートリッジとは別の、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体溶液の二次レザーバを有するデバイスを選択し、この二次レザーバから患者への連続注入が、空またはほとんど空のカートリッジを取り出して新しいものと交換している間であっても継続され得るようにすることによりなされ得る。 静脈内投与、場合によっては同時治療計画の一部としての共投与の様式は、かかる投与の定量のために、患者体内へのポンプの埋め込みを伴う。当業者には、かかる定量ポンプ、例えば上記のBaxter製のモデル6060が認識されよう。 非限定的な例として、非断続、すなわち連続投与が、患者の体内への治療薬剤の流入の定量のための患者が着用した、または埋め込まれた小型ポンプシステムによって実現されることがあり得る。かかるポンプシステムは、当該技術分野で一般に知られており、一般的に、注入する治療薬剤を含むカートリッジの定期的な交換に依存する。かかるポンプシステムのカートリッジを交換する場合、交換しなければ非断続的な患者の体内への治療薬剤の流れの一時的な中断が起こり得る。かかる場合において、カートリッジ交換前の投与期間およびカートリッジ交換後の投与期間は、なお本発明の薬学的手段および方法の意味に含まれるとみなされ得、一緒になってかかる治療薬剤の1回の「非断続投与」を構成する。同じことが、カートリッジが1回より多くの交換を必要とし得るか、またはポンプを駆動する電源セルが交換を必要とし得、患者の体内への治療溶液の流れの一時的なオフセットがもたらされる非常に長期間の投与に当てはまり得る。 また、かかる長期創傷は特に感染が起こり易いため、患者の体内への穿刺投与部位での感染の危険を最小限にするように適切な測定が行なわれるべきである。上記のことは、同様の送達系による筋肉内投与にも当てはまる。 連続投与は、皮膚上に着用され、間を空けて交換される貼付剤による経皮的であり得る。当業者は、この目的に適した薬物送達のための貼付剤系を認識している。消耗された第1の貼付剤のすぐ近くに、消耗された第1の貼付剤を除去する直前に、消耗された第1の貼付剤の交換が、例えば皮膚の表面上への新しい第2の貼付剤の配置と同時に有利になされ得るため、経皮投与は非断続投与に特に適していることに注意されたい。流れの中断または電源セルの故障の問題は生じない。 さらに好ましい態様において、連続投与は、例えば、鼻の鼻孔の一方または両方に着用され、内容物を正確に定量する加圧タンクに接続されるチューブによって肺内経路によって行なわれる。 さらに、本発明は、成人急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療、改善または除去のためのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物に関する。さらに、本発明は、成人急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療、改善または除去のための医薬組成物の調製のためのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物の使用に関する。好ましくは、前記急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、B細胞系急性リンパ芽球性白血病、より好ましくは、B前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病である。 記載の医学的使用の好ましい態様において、前記急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、同種異系HSCTに不適格な患者において化学療法に抗療性である。 記載の医学的使用の代替的態様において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物の投与の後に同種異系HSCTが行なわれるか、または前記使用が、同種異系HSCTに適格な患者における同種異系HSCTの代わりに使用される。 記載の医学的使用の別の好ましい態様において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する患者における微小残存病変(MRD)の治療、改善または除去のためのものである。好ましくは、前記患者は血液学的完全寛解においてMRD陽性である。 記載の医学的使用のさらに好ましい態様において、前記CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与により、安定な疾患がもたらされるか、MRD陽性急性リンパ芽球性白血病(ALL)がMRD陰性状態に変換される。 好ましくは、MRDが、PCRまたはFACS解析を使用し、個々の免疫グロブリン遺伝子の再配列もしくはT細胞受容体(TCR)再配列の定量的検出、またはbcr/abl融合転写物もしくはt(4;11)により測定される。 さらにより好ましくは、ALL患者は、検出限界より上のbcr/ablもしくはt(4;11)シグナルおよび/または≧10-4の感度で再配列による少なくとも1つのマーカーを示す。 記載の医学的使用の別の好ましい態様において、記載した検出方法によって検出可能な分子再発までの期間は4ヶ月より長い。 記載の医学的使用の別の好ましい態様において、前記CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物内の対応する可変重鎖領域(VH)および対応する可変軽鎖領域(VL)領域は、N末端からC末端に、VL(CD19)-VH(CD19)-VH(CD3)-VL(CD3)の順に配列される。 好ましくは、前記CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物は、配列番号1に示すアミノ酸配列、または配列番号1と少なくとも90%、好ましくは95%同一のアミノ酸配列を含む。 記載の医学的使用のさらに好ましい態様において、1回の治療サイクルは、4週間の連続注入、続いて、2週間の無治療期間の後、サイクルの反復である。 好ましくは、治療サイクルは、MRD陰性状態の決定後、少なくとも3回繰り返される(地固め)。 記載の医学的使用の別の好ましい態様において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物は、患者の体表面積1平方メートルあたり10μg〜100μgの日用量で投与される。 好ましくは、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物は、患者の体表面積1平方メートルあたり15μg〜30μgの日用量で投与される。 本発明の薬学的方法および手段に関して示した定義および説明は、必要な変更を加えて、本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物の医学的使用に適用される。 本発明を以下の実施例によって、さらに説明する。実施例:1. CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の作製、発現および細胞傷害活性はWO99/54440に記載されている。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の対応するアミノ酸および核酸配列を、それぞれ、配列番号1および2に示す。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体のCD3結合ドメインのVHおよびVL領域を、それぞれ、配列番号7〜10に示し、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体のCD19結合ドメインのVHおよびVL領域を配列番号3〜6に示す。 対応するCDR領域を配列番号11〜22に示す。 2. 再発B-NHL患者での継続中のフェーズ1治験は、60μg/m2/日のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体で高い応答率を示す。応答は、12ヶ月より長期までの持続期間を有する(継続中の数名の患者)。骨髄浸潤B-NHL細胞の除去は15μg/m2/日で開始された(Bargou et al.,Science 2008)。 3. これらの結果に基づき、German Multicenter Study Group on Adult Acute Lymphoblastic Leukemia(GMALL)とのコラボレーションで、血液学的完全寛解が達成されたが、微小残存病変(MRD)が陽性のままである成人(非移植)急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者におけるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の有効性、安全性および許容性を調べるためのフェーズII用量上昇試験を設計した。MRDは、主な薬物抵抗性を反映する独立した予後因子であり、地固め開始後の高い再発リスクと関連している。これは、Ph+/BCR-ABL陽性および陰性ALLにあてはまる。MRDを、標準化された方法により、免疫グロブリンもしくはT細胞受容体(TCR)再配列の個々の再配列の定量的検出、またはbcr/abl融合転写物もしくはt(4;11)転座のいずれかによって測定した。試験集団は、検出限界より上のbcr/ablもしくはt(4;11)転座シグナルおよび/または≧10-4の感度で再配列による少なくとも1つのマーカーを示す急性B前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する成人患者を含む。より詳しくは、主な包含基準は、 -標準的なプロトコルにおける最先端治療の地固め1後、任意の時点で始まった分子機能不全または分子再発を有する血液学的完全寛解のB-前駆細胞ALL患者 -患者は、任意の検出レベルでのbcr/ablもしくはt(4;11)転座または少なくとも1つのマーカーについて最低10-4および10-4までの定量的範囲の感度でアッセイによって測定された免疫グロブリンもしくはTCR-遺伝子の個々の再配列のいずれかである微小残存病変の評価のための分子マーカーを有していなければならない、を含んだ。 (継続中の)フェーズII試験の一次エンドポイントは、検出限界未満のbcr/ablもしくはt(4;11)転座シグナルおよび/または10-4未満での免疫グロブリンもしくはT細胞受容体(TCR)遺伝子の個々の再配列の検出によって規定される微小残存病変(MRD)陰性状態への変換率である。二次エンドポイントは、血液学的再発までの期間、MRD進行までの期間、分子再発までの期間である。 CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の1回の治療サイクルは、4週間の連続静脈内注入であり、続いて、第1回目のサイクルまたはさらなるサイクル後に同種異系造血幹細胞移植、または2週間の無治療期間後にサイクルの反復が行なわれ得る。微小残存病変(MRD)状態は、各治療サイクル後、制御される。出発用量レベルは15マイクログラム/m2/24時間であり、これは、臨床活性および安全性データに基づいて、30マイクログラム/m2/24時間およびそれ以上の用量レベル(60マイクログラム/m2/24時間または90マイクログラム/m2/24時間)まで上げてもよい。統計学的設計には、SimonのMinMax2段階設計(14〜21名の患者)が使用されている。 以下、試験に登録された最初の4名の患者のデータを、より詳細に例示的に示す。年齢が31、57、62および65歳のこれらの4名の患者に、15マイクログラム/m2/24時間の初期用量レベルを与えた。図5に示されるように、患者番号111001、109002および110002は、c-ALLと診断され、患者番号108001はプレB-ALL患者である。4名の患者は、以前に、少なくとも1回の地固め治療を含むGMALLプロトコルに従い、ALLの標準的な化学療法計画を受けた。患者はすべて、微小残存病変(MRD)に関して化学療法に抗療性であった。より詳しくは、すべての患者は血液学的完全寛解においてMRD陽性であった。患者番号110002、108001および109002は同種異系造血幹細胞移植に不適格であったが、患者番号111001は前記移植に適格であった。 図6に示されるように、試験に登録された最初の4名の患者のうち3名が10-4(患者番号111001)、10-3(患者番号108001)および10-1(患者番号109002)のレベルで免疫グロブリンまたはTCR再配列による微小残存病変(MRD)を有し、1名の患者(患者番号110002)は、10-4のレベルでbcr/abl融合転写物によるMRDを有した。3名の患者のうち3名、すなわち、免疫グロブリンまたはTCR再配列を有する患者番号111001、108001および109002は、最初の治療サイクル後、ベースライン時のMRD陽性レベルとは無関係にMRD陰性に変わった。4名の患者のうち唯一、同種異系造血幹細胞移植に適格であった患者番号111001には、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体治療でMRD陰性に変換された後、移植を行なった。 図2は、患者109002における微小残存病変(MRD)過程の一例を示す。common型急性リンパ芽球性白血病(cALL)患者109002におけるTCR再配列(MRD)のPCR系測定は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体(ブリナツモマブ)での治療前はMRD陽性、および第1回目のサイクルCD19xCD3二重特異性単鎖抗体後に始まったMRD陰性および第19週までの持続を示す。その後、患者は精巣再発を有した後、血液学的再発を有した。 番号110002を有するその他の患者は、初期治療サイクル後、血液学的再発の徴候なく、安定なbcr/ablレベルを有した;図6参照。 CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での患者の治療は充分耐性であった:治療の最初の3日間の発熱を除き、臨床的に有意な毒性は記録されなかった。 一方、17名の成人患者は治療したか、または今日までまだCD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療中である。すべての患者は、抗体治療前は、化学療法などの従来のALL治療に抗療性であった。いすれの患者も、抗体治療前、同種異系造血幹細胞移植を受けなかった。患者のメジアン年齢は48歳であり、20歳〜77歳の範囲であった。患者のうち10名は女性であり、7名は男性患者であった。14名の患者には15マイクログラム/m2/24時間の用量レベルのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体を与えたが、3名の患者では、第1回目またはさらなる治療サイクル後、用量を15から30マイクログラム/m2/24時間に上げた:患者109-004では、2回目の治療サイクル後(合計3回治療サイクルを有する、その後、同種異系造血幹細胞移植)、患者109-003では、3回目の治療サイクル後(合計4回の治療サイクルを有する)、患者110-002では、6回目の治療サイクル後(合計7回治療サイクルを有する)、用量増大を行なった。これらの患者のうち11名は、免疫グロブリンまたはTCR再配列による微小残存病変(MRD)を有し、2名の患者はt(4;11)転座を有し、4名の患者はbcr/abl融合転写物を有した。 その結果、MRD応答は、17名の患者のうち16名において評価可能であった。図7に示されるように、16名の評価可能な患者のうち13名がMRD陰性になり、これは、81%という非常に完全な分子応答率に相当する。より詳しくは、免疫グロブリンまたはTCR再配列を有する11名の患者のうち9名、t(4;11)転座を有する2名の患者のうち1名、bcr/abl転写物を有する4名の患者のうち3名において、MRD陰性が達成され得た。図8に示されるように、抗体治療後に移植を受けなかった患者108-001でこれまでに観察されたMRD陰性の最長持続期間は41週間である。抗体治療後、2008年6月23日から2008年10月27日までMRD陰性であり、成功裡の同種異系造血幹細胞移植を受けた別の患者は、今日まで無再発である;図8の患者111-001参照。注目すべきことに、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体で成功裡に治療されたbcr/abl患者は、先のALL治療計画では、チロシンキナーゼインヒビターイマチニブおよび/またはダサチニブに抗療性または不耐性であった。特に、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療にbcr/abl応答群の1名は、チロシンキナーゼインヒビターによる治療に抗療性のT315I変異を有した。したがって、本明細書において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与により、bcr/abl転写物を有するダサチニブ抗療性ALL患者のための治療が初めて提供される。合計17名の患者のうち3名だけがMRD陰性にならなかった。しかしながら、そのうち2名で、安定な疾患が達成され得た。最初に安定な疾患を有した1名の患者のみが、3回目の治療サイクルで血液学的再発を有した。1名の患者だけ、試験2日目のSAEにより評価可能でなかった。 要約すると、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体で治療すると、81%という絶対的に例外的な完全分子応答率がB前駆細胞性ALLを有する患者において達成され得た。記載の抗体の活性は、チロシンキナーゼインヒビター抗療性の(T315I)bcr/abl患者およびt(4;11)転座を有する患者を含む、治療したすべての患者サブセットで観察され得た。また、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療は、化学療法などの従来のALL治療とは対照的に、有利な毒性プロフィールを示す。これに鑑み、本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与により、急性リンパ芽球性白血病(ALL)のため、特に、ALLが化学療法などの従来のALL治療に抗療性である場合の新規で都合の良い治療オプションが提供される。また、本明細書において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与により、MRD陽性ALLのための治療が初めて提供される。 これらの更新された結果は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者の治療により、微小残存病変(MRD)陽性急性リンパ芽球性白血病(ALL)がMRD陰性状態に変換され得ること(免疫グロブリンまたはTCR再配列、bcr/abl転写物またはt(4;11)転座を有するALL患者によって例示)、およびこの治療が充分耐性であることを示す。これに鑑み、本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与により、特に、成人急性リンパ芽球性白血病(ALL)のための、特に、化学療法および/またはHSCTなどの従来のALL治療に抗療性のALLの代替的な治療オプションが提供される。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療は、MRD陽性ALLの治療に特に都合がよい。 本発明の態様として、以下のものが挙げられる。[1]急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療、改善または排除を必要とする成人患者へのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物を含む医薬組成物の投与を含む、急性リンパ芽球性白血病の治療、改善または排除のための方法。[2]前記急性リンパ芽球性白血病(ALL)が、B系統急性リンパ芽球性白血病、好ましくはB前駆細胞急性リンパ芽球性白血病である、[1]記載の方法。[3]前記急性リンパ芽球性白血病(ALL)が、同種造血幹細胞移植に適格でない患者において、化学療法に抗療性である、[1]または[2]記載の方法。[4]続いて同種造血幹細胞移植が行われるか、または同種造血幹細胞移植に適格な患者において、同種造血幹細胞移植に取って代わる、[1]または[2]記載の方法。[5]急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する患者における微小残存病変(MRD)の治療、改善または排除のための、[1]〜[4]いずれか記載の方法。[6]前記患者が、血液学的完全寛解においてMRD陽性である、[5]記載の方法。[7]前記医薬組成物の投与により、安定疾患がもたらされるか、またはMRD陽性急性リンパ芽球性白血病(ALL)がMRD陰性状態に変換される、[5]または[6]記載の方法。[8]PCRまたはFACS解析を使用して、免疫グロブリン遺伝子の個々の再配列もしくはT細胞受容体(TCR)再配列の定量的検出により、またはbcr/abl融合転写物により、またはt(4;11)転座により、MRDが測定される、[5]〜[7]いずれか記載の方法。[9]ALL患者が、検出限界より高いbcr/ablもしくはt(4;11)転座シグナル、および/または≧10-4の感度を有する再配列による少なくとも1つのマーカーを示す、[8]記載の方法。[10][8]記載の方法により検出可能な分子的再発までの時間が4ヶ月より長い、[1]〜[9]いずれか記載の方法。[11]CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物中で、対応する可変重鎖領域(VH)および対応する可変軽鎖領域(VL)領域が、N末端からC末端へ、VL(CD19)-VH(CD19)-VH(CD3)-VL(CD3)の順序で配列される、[1]〜[10]いずれか記載の方法。[12]前記CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が、配列番号1に記載されるアミノ酸配列または配列番号1と少なくとも90%、好ましくは95%同一なアミノ酸配列を含む、[11]記載の方法。[13]1回の治療サイクルが4週間の連続注入であり、その後2週間の治療なしの間隔の後にサイクルが反復される、[1]〜[12]いずれか記載の方法。[14]MRD陰性状態の決定後、治療サイクルが少なくとも3回反復される(地固め)、[13]記載の方法。[15]CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が、10μg〜100μg/患者体表面積m2の日用量で投与される、[1]〜[14]いずれか記載の方法。[16]CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が、15μg〜30μg/患者体表面積m2の日用量で投与される、[15]記載の方法。[17]成人急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療、改善または排除のためのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物。 CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物を含む、成人患者における微小残存病変(MRD)陽性急性リンパ芽球性白血病(ALL)を治療するための医薬組成物であって、該医薬組成物は、該患者においてMRD陽性状態をMRD陰性状態に変換するためのものであり、該CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物は、患者の体表面積1平方メートルあたり15μg、30μg、60μgまたは90μgの1日用量で投与される、医薬組成物。 CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が、最初の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり5μgの1日用量で投与され、全4週間のうちの残りの投与について患者の体表面積1平方メートルあたり15μgの投与が続く、請求項1記載の医薬組成物。 CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が、最初の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり5μgの1日用量で投与され、その次の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり15μgの投与が続き、全4週間のうちの残りの投与について患者の体表面積1平方メートルあたり30μgの投与が続く、請求項1または2記載の医薬組成物。 CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が、最初の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり5μgの1日用量で投与され、その次の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり15μgの投与が続き、全4週間のうちの残りの投与について患者の体表面積1平方メートルあたり45μgの投与が続く、請求項1〜3いずれか記載の医薬組成物。 CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が、最初の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり5μgの1日用量で投与され、その次の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり15μgの投与が続き、全4週間のうちの残りの投与について患者の体表面積1平方メートルあたり60μgの投与が続く、請求項1〜4いずれか記載の医薬組成物。 CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が、最初の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり5μgの1日用量で投与され、その次の1日または複数の日に患者の体表面積1平方メートルあたり15μgの投与が続き、全4週間のうちの残りの投与について患者の体表面積1平方メートルあたり90μgの投与が続く、請求項1〜5いずれか記載の医薬組成物。 【課題】急性リンパ芽球性白血病の治療のための、医薬組成物の提供。【解決手段】CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物を含む、成人患者における微小残存病変(MRD)陽性急性リンパ芽球性白血病を治療するための医薬組成物であって、該医薬組成物は、該患者においてMRD陽性状態をMRD陰性状態に変換するためのものであり、該CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物は、患者の体表面積1平方メートルあたり15μg、30μg、60μg又は90μgの1日用量で投与される、医薬組成物。【選択図】なし配列表


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