生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_イズロン酸−2−スルファターゼの活性測定法
出願番号:2014216681
年次:2015
IPC分類:C12Q 1/44


特許情報キャッシュ

深津 智樹 JP 2015096063 公開特許公報(A) 20150521 2014216681 20141006 イズロン酸−2−スルファターゼの活性測定法 JCRファーマ株式会社 000228545 山本 佳希 100128897 深津 智樹 JP 2013224742 20131009 C12Q 1/44 20060101AFI20150424BHJP JPC12Q1/44 5 書面 11 4B063 4B063QA01 4B063QA18 4B063QQ02 4B063QQ32 4B063QQ67 4B063QR43 4B063QR72 4B063QS02 4B063QS17 4B063QS28 4B063QS36 4B063QS39 4B063QX01 本発明は,イズロン酸−2−スルファターゼの天然基質であるヘパラン硫酸,デルマタン硫酸等の繰り返し構造を形成する二糖若しくはその類似体を基質として用いて,試料中に含まれるイズロン酸−2−スルファターゼの酵素活性を測定する方法に関し,より詳しくは,当該二糖を,試料中に含まれるイズロン酸−2−スルファターゼと反応させて,イズロン酸−2−スルファターゼによる当該二糖の加水分解によって生じる脱硫酸化物の生成速度を測定することにより,Km値及び最大反応速度を測定する方法に関する。 イズロン酸−2−スルファターゼ(I2S)は,ヘパラン硫酸やデルマタン硫酸のようなグリコサミノグリカン(GAG)分子内に存在する硫酸エステル結合を加水分解する活性を有するライソゾーム酵素の1つである。ハンター症候群の患者では,イズロン酸−2−スルファターゼ活性が遺伝的に欠損している。この酵素活性の欠損は,ヘパラン硫酸及びデルマタン硫酸の代謝異常を引き起こし,それは次いで肝臓や腎臓のような組織中にそれらの分子の断片の蓄積や,更には尿中へのヘパラン硫酸及びデルマタン硫酸の排泄をも引き起こす。その結果,これらの異常により,骨格の変形及び重症の精神遅滞を含む,ハンター症候群の患者における種々の症状が引き起こされる。 ハンター症候群の患者がI2S活性を僅かしか示さないという事実は,1970年代に既に知られており,I2S遺伝子の異常がこの疾病の原因であると予想されていた。1999年には,I2Sをコードするヒト遺伝子が単離され,この疾患に対する原因遺伝子であることが確認された(非特許文献1)。 現在では,ハンター症候群の患者の体内で不足しているI2S活性を補充するために,遺伝子組換え技術で製造した組換えヒトI2S(rhI2S)を有効成分として含有する製剤を静注して投与する,酵素補充療法が行われている。 I2Sの酵素活性の測定法として,合成基質である4−メチルウンベリフェリル硫酸を基質として用いる方法が知られている(特許文献1,2)。しかしながら,遺伝子組換え技術を用いて製造したヒトI2S(rhI2S)は,糖鎖構造等においてヒト生体内に存在するI2Sと異なるので,かかる合成基質で測定した活性測定値は,I2S本来の酵素活性を反映しないおそれがある。 国際公開第2012/101998号米国公開第2004−0229250号 Wilson PJ.et al.,Proc Natl Acad Sci USA.87:8531−5,1990. 上記背景の下で,本発明の目的は,I2Sの酵素活性の測定法として,生体内における本来のI2Sの基質に構造が同一若しくは類似の,2位に硫酸基を有するウロン酸と,アミノ糖とが,1,4−グリコシド結合又は1,3−グリコシド結合により結合したものである二糖を基質として用いる測定法を提供することである。 上記目的に向けた研究において,本発明者らは,鋭意検討を重ねた結果,組換え技術を用いて製造したrhI2Sの酵素活性が,イズロン酸2硫酸とアセチルグルコサミン6硫酸とが,α1,4−グリコシド結合により結合した二糖の類縁体を基質として用いて,rhI2Sと当該基質を反応させたときに生じる脱硫酸化物の生成速度を測定することにより測定できることを見出し,本発明を完成した。すなわち,本発明は以下を提供する。(1)イズロン酸−2−スルファターゼの酵素活性を測定する方法であって,次のステップすなわち, (a)イズロン酸−2−スルファターゼを,2位に硫酸基を有するウロン酸と,アミノ糖とが,1,4−グリコシド結合又は1,3−グリコシド結合により結合したものである二糖若しくはその塩を基質として,該基質と反応させるステップ, (b)上記ステップ(a)の反応により,該2位の硫酸基が脱硫酸化されることにより生じた生成物を,カラムクロマトグラフィーに付して,該基質から分離させるステップと, (c)上記ステップ(b)のカラムクロマトグラフィーにより該基質から分離された該生成物を検出するステップとからなる,方法。(2)該二糖が,下記の一般式(I)〜(IV):[式(I)〜(IV)中,R1は−NH2,−NHCOCH3又は−NHSO3H;R1はOSO3H;R3はCOOH;R4はCH2OH又はCH2OSO3H;R5はOH又はOSO3Hを,それぞれ独立して示す。], で示される群から選択される二糖若しくはその塩である,上記(1)に記載の方法。(3)該二糖が,下記の化学式(V):で示される二糖若しくはその塩である,上記(1)に記載の方法。(4)該カラムクロマトグラフィーが,疎水性カラムクロマトグラフィー用カラムと順相/親水性相互作用カラムクロマトグラフィー用カラムとを,この順で接続したものが用いられるものである,上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。(5)該イズロン酸−2−スルファターゼが,組換えヒトイズロン酸−2−スルファターゼである,上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の方法。 I2Sの酵素活性の測定法として,合成基質である4−メチルウンベリフェリル硫酸を基質として用いる方法が知られている。しかしながら,例えば遺伝子組換え技術を用いて製造したヒトI2S(rhI2S)は,糖鎖構造等においてヒト生体内に存在するI2Sと異なるので,かかる合成基質で測定した活性測定値は,I2S本来の酵素活性を反映しないおそれがある。仮に,rhI2Sが,合成基質を分解するものの,ヘパラン硫酸及びデルマタン硫酸を効率良く分解できないものであった場合,これを酵素補充療法において患者に投与しても,十分な治療効果が得られない結果となる。本発明によれば,ヒト生体内におけるI2S本来の基質と構造が同一又は類似の物質を,基質として使用して酵素活性を測定するので,組換え技術を用いて製造したヒトI2Sが,酵素補充療法に適したものであるか否かをより的確に評価できる。 実施例の酵素反応1において,反応時間を60分としたときの,酵素反応終了後の反応溶液をカラムに通過させたときに得られたチャート。横軸は反応溶液をカラムに付してからの経過時間(分),縦軸は232nmの吸光度をそれぞれ示す。ピークAはHD−I−Aに由来するピーク,ピークBはHD−II−Aに由来するピークをそれぞれ示す。実施例の酵素反応2において得られたLineweaver−Burkプロットを示す。横軸は基質初濃度[S]0の逆数(/mM),縦軸は反応速度の逆数(分/mM)をそれぞれ示す。 本発明において,「イズロン酸−2−スルファターゼ(又はI2S)」というときは,特にヒトイズロン酸−2−スルファターゼ(hI2S)であるが,これに限らず,牛,馬等の家畜,イヌ,ネコ等の愛玩動物,マウス,ラット等の実験動物を含む哺乳動物のイズロン酸−2−スルファターゼをも含む。また,「イズロン酸−2−スルファターゼ」には,イズロン酸−2−スルファターゼを構成する1つ又は複数のアミノ酸残基を,置換,欠失,付加又は挿入させたヒトイズロン酸−2−スルファターゼの類似物も含む。 イズロン酸−2−スルファターゼは,遺伝子組換え技術を用いて,遺伝子組換えイズロン酸−2−スルファターゼ(rI2S)として生産することができる。rI2Sは,イズロン酸−2−スルファターゼを組込んだ発現ベクターを導入した,CHO細胞等の哺乳動物細胞,昆虫細胞,酵母等を用いて生産することができる。例えば,ヒトイズロン酸−2−スルファターゼ遺伝子を発現ベクターに組込み,これを用いて哺乳細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣由来のCHO細胞)を形質転換し,形質転換細胞を培養することにより,生物学的に活性な組換えヒトイズロン酸−2−スルファターゼ(rhI2S)を製造する方法は,当業者に周知である(WO2012/101998)。組換えヒトイズロン酸−2−スルファターゼ(rhI2S)は,好ましくは525個のアミノ酸残基からなり単一の糖鎖ポリペプチドを含んでなるヒト野生型I2Sである組換えタンパク質であるが,野生型ヒトI2Sと比較して1個又は2個以上のアミノ酸の置換,欠失,付加又は挿入を有するものであるヒト変異型のI2Sである組換えタンパク質を排除するものではない。 本発明において,酵素活性の測定対象となるべきrI2Sは,例えば,ハンター症候群の患者の治療剤として製造されたrI2Sである。かかるrI2Sは,ハンター症候群の患者体内において,ヘパラン硫酸やデルマタン硫酸のようなグリコサミノグリカン(GAG)分子内に存在する硫酸エステル結合を加水分解して薬効を示すので,これら天然基質を加水分解する活性を有するか否かを,製造工程において予め評価する必要がある。なお,本発明において「天然基質」というときは,生体内においてrI2Sの酵素活性によって脱硫化される物質と同一若しくは類似の構造を有する物質又はその塩のことをいう。 本発明において,イズロン酸−2−スルファターゼの基質として用いられるものは,2位に硫酸基を有するウロン酸と,アミノ糖とが,1,4−グリコシド結合又は1,3−グリコシド結合により,特に,α1,4−グリコシド結合又はα1,3−グリコシド結合により結合したものである二糖であり,好ましくは,下記の一般式(I)〜(IV)で示されるものである。なお,式(I)〜(IV)中,R1は−NH2,−NHCOCH3又は−NHSO3H;R2はOSO3H;R3はCOOH;R4はCH2OH又はCH2OSO3H;R5はOH又はOSO3Hを,それぞれ独立して示す。ここで,1,4−グリコシド結合というときは,ウロン酸の1位の炭素に結合した水酸基とアミノ糖の4位の炭素に結合した水酸基とが脱水縮合した化学式で示されるものをいい,1,3−グリコシド結合とは,ウロン酸の1位の炭素に結合した水酸基とアミノ糖の3位の炭素に結合した水酸基とが,脱水縮合した化学式で示されるものをいう。 上記式(I)〜(IV)で示される二糖は塩であってもよく,その場合,例えば,R2がOSO3Na,R3がCOONa,R4がCH2OSO3Naであるナトリウム塩が好適に使用できる。 下記の一般式(V)で示される二糖は,本発明において,基質として好適に用いることができる。当該二糖は塩であってもよく,その場合,例えば,R2がOSO3Na,R3がCOONa,R4がCH2OSO3Naであるナトリウム塩が好適に使用できる。また,当該二糖は,Heparin disaccharide−A又はHeparin unsaturated disaccharide I−Aの名称で,そのナトリウム塩が市販されている。 上記一般式(I)〜(V)で示される糖は,I2Sによってウロン酸の2位の硫酸基が脱硫化される。上記一般式(V)で示される二糖は,I2Sによって脱硫化されることにより,下記の一般式(VI)で示される生成物を生じる。この物質は,Heparin disaccharide II−Aの名称で,そのナトリウム塩が市販されている。 本発明において,I2Sの反応速度は,上記一般式(I)〜(V)で示される糖が脱硫化されて生じる脱硫化物の,単位時間当たりの生成量又は反応溶液中における濃度の増加量として測定される。 I2Sの反応速度は,上記の一般式(V)で示される二糖若しくはその塩を基質として用いた場合,反応終了後の反応溶液を,疎水性カラムクロマトグラフィーと順相/親水性相互作用カラムクロマトグラフィーとに,この順で連続して通過させることにより,上記の一般式(V)で示される二糖が脱硫化されて生じる上記の一般式(VI)で示される脱硫化物を,上記の一般式(V)で示される二糖から分離して定量することにより,単位時間当たりに生成した当該脱硫化物の量として求めることができる。このとき用いられる疎水性カラムクロマトグラフィー用カラムは,好ましくは充填剤としてブチル化シリカゲルを充填したものであり,順相/親水性相互作用クロマトグラフィー用カラムは,好ましくは充填剤としてアミノ基を結合させたシリカゲルを充填したものである。また,このときのカラムクロマトグラフィーの移動相は,好ましくはリン酸二水素ナトリウム水溶液又はリン酸緩衝液である。リン酸二水素ナトリウム水溶液を移動相として用いる場合,その濃度は,好ましくは0.3〜0.5Mであり,より好ましくは0.4Mである。 また,I2Sの反応速度は,上記の一般式(V)で示される二糖若しくはその塩を基質として用いた場合,反応溶液中に含まれるI2Sの濃度を,好ましくは0.0001〜0.025mg/mL,より好ましくは0.0005〜0.02mg/mL,更に好ましくは0.001〜0.01mg/mLに調整して測定される。また,このとき反応溶液中に含まれる基質の初濃度は,好ましくは0.02〜3.0mMの範囲であり,より好ましくは0.02〜1.5mMの範囲であり,更に好ましくは0.10〜1.2mMの範囲である。また,このときの反応時間は,好ましくは30秒から10分間であり,より好ましくは1分から5分間である。 I2Sの反応速度は,基質の初濃度(S0)の逆数に対して,単位時間当たりに生成した脱硫化物の量を反応速度(V)としてその逆数(1/V)をプロット(Lineweaver−Burkプロット)して回帰分析し,得られた直線のy軸との切片を1/Vmax(Vmaxは酵素反応の最大速度),x軸との切片を−1/Km(Kmはミカエリス定数)とし,VmaxとKmとして求めることができる。 以下,実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが,本発明が実施例に限定されることは意図しない。 〔試薬の調製〕 250mgのウシ血清アルブミン(BSA)及び0.5gのTriton−X100を,全量が500mLとなるように5mM酢酸緩衝液(pH4.5)に溶解し,試液除粒子用フィルター(Bottle Top Vacuum Filter,0.22μm CA Membrane,コーニング製)でフィルター濾過したものを,希釈用緩衝液とした。リン酸二水素ナトリウム二水和物62.4gに水を加えて全量を1000mLにした後,孔径0.22μmのメンブレンフィルターを用いてろ過したものを,移動相とした。5mgのHeparin disaccharide I −A(HD−I−A,Dextra Laboratories製)に,1mLの希釈用緩衝液を添加して混和したものを基質原液(HD−I−Aの濃度:16.52mM)とした。5mgのHeparin disaccharide II −A(HD−II−A,Dextra Laboratories製)に,500μLの希釈用緩衝液を添加して混和したものを,希釈用緩衝液で2倍希釈したものを標準原液(HD−II−Aの濃度:10mM)とした。50μLの標準原液に,25μLの希釈用緩衝液と125μLの移動相とを加えて混和し,これを標準溶液とした(HD−II−Aの濃度:25mM)。 〔rhI2S溶液の調製〕 組換え体ヒトイズロン酸−2−スルファターゼ(rhI2S)の精製品を,公知の手法(米国特許公報5798239,国際公開公報WO2012/101998)に準じて調製した。rhI2Sの精製品を含有する溶液(rhI2S溶液)を,純水で3〜5倍希釈した後に,遠心式ろ過ユニット(アミコンウルトラ−4,ミリポア製)を用いて濃縮した。得られた濃縮液を純水で3〜5倍希釈した後に,再度遠心式ろ過ユニットを用いて濃縮した。この希釈−濃縮操作を,元の溶液の純水での総希釈倍率が1万倍に達するまで繰り返して行い,rhI2S溶液を脱塩した。脱塩したrhI2S溶液に含まれる蛋白質の濃度を測定し,蛋白質濃度が0.5mg/mLとなるように純水でrhI2S溶液を希釈し,さらに,この希釈溶液を蛋白質濃度が0.01mg/mLとなるように希釈用緩衝液で希釈し,次いで,37℃に加温した。 〔酵素反応1〕 基質原液を,HD−I−Aの濃度が2.48mMとなるように,希釈用緩衝液で希釈して基質溶液とした。基質溶液を50μLずつ試験管にとり37℃に加温し,これに上記の37℃に加温したrhI2S溶液を25μL添加して混和し反応溶液とした。従って,このときの反応溶液中のHD−I−Aの初濃度は,1.65mMであった。次いで,反応溶液を37℃で反応開始から3分,5分,10分,30分及び60間静置して,rhI2SによるHD−I−Aの脱硫化反応をさせた。次いで,反応溶液を100℃で5分間加熱して酵素を失活させて反応を停止させた。 〔酵素反応2〕 基質原液を,HD−I−Aの濃度が0.15,0.30,0.45,0.60,0.75及び1.5mMとなるように,希釈用緩衝液で希釈して基質溶液とした。各濃度の基質溶液を50μLずつ試験管にとり37℃に加温し,これに上記の37℃に加温したrhI2S溶液を25μLずつ添加して混和して反応溶液とした。従って,このときの反応溶液中のHD−I−Aの初濃度は,各々,0.10,0.20,0.30,0.40,0.50及び1.0mMであった。次いで,反応溶液を37℃で5分間静置して,rhI2SによるHD−I−Aの脱硫化反応をさせた。次いで,反応溶液を100℃で5分間加熱して酵素を失活させて反応を停止させた。 〔酵素反応速度の測定〕(1)装置 島津HPLCシステムLC−20A(島津製作所)に,疎水性カラムクロマトグラフィー用カラム(CHEMCOSORBTM 300−7C4,4.6mm I.D.×50mm,充填剤:ブチル化シリカゲル,ケムコ製)と,その下流に順相/親水性相互作用クロマトグラフィー用カラム(TSKgel NH2−100,4.6mm I.D.×150mm,充填剤:アミノ基を結合させたシリカゲル,東ソー製)とをセットした。カラムオーブンでカラムを50℃に加熱するとともに,順相/親水性相互作用クロマトグラフィー用カラムの出口からの流路に吸光光度計を設置し,カラム通過後の溶液の,波長232nmにおける吸光度を連続的に測定できるようにした。 (2)操作手順 移動相を,0.5mL/分の流速で上記カラムに流し,カラムを平衡化させた。次いで,同流速で,10μLの酵素反応終了後の反応溶液及び標準溶液を各々カラムに負荷し,更に,同流速で,移動相を50分間流した。このとき,カラム通過後の溶液の波長232nmにおける吸光度を連続的に測定してチャート上に検出するようにし,HD−I−AがrhI2Sにより脱硫化されて生じたHD−II−Aに由来するピークの,チャート上の面積を求めた。標準溶液を分析したときのHD−II−Aに由来するピーク面積との比較から,酵素反応により生じた各反応溶液中のHD−II−Aの濃度(単位:mM)を算出した。 (3)Vmax及びKmの決定 上記酵素反応2において,酵素反応時間が5分間であることから,酵素反応後の各反応溶液中のHD−II−Aの濃度(単位:mM)を5で除した1分間当たりの当該濃度の変化値を,各反応溶液における反応速度V(単位:mM/分)として求めた。次いで,各反応溶液の基質の初濃度(反応開始前の基質濃度)をS0(単位:mM)とし,反応速度Vの逆数(1/V)を縦軸に,S0の逆数(1/S0)を横軸にプロット(Lineweaver−Burkプロット)し,回帰分析を行った。こうして得られた直線のy軸との切片を1/Vmax(Vmaxは酵素反応の最大速度),x軸との切片を−1/Km(Kmはミカエリス定数)として,VmaxとKmとを求めた。 〔解析結果〕 上記酵素反応1において,反応時間を60分としたときの反応溶液を,カラムに通過させたときのチャートを図1に示した。図1において,ピークAが基質のHD−I−Aに由来し,ピークBがrhI2SによりHD−I−Aが脱硫化されて生じたHD−II−Aに由来するものであった。反応時間(分)に対してピークBの面積をプロットした結果,酵素反応1の反応条件において,反応開始から5〜10分までの反応速度が,当該反応の初速度に近似することがわかった。 そこで,上記酵素反応2において,反応時間を5分間に設定して,各反応溶液における反応の初速度を測定した。測定結果をLineweaver−Burkプロットしたものを図2に示した。回帰直線の相関係数は0.9983であり,最大速度(Vmax)は34μM/分,ミカエリス定数(Km)は117μMであった。これらの結果は,基質として合成基質である4−メチルウンベリフェリル硫酸を使用することなく,rhI2Sの天然基質と同一若しくは類似の構造を有する二糖を用いて,rhI2Sの活性を測定できることを示す。 本発明によれば,I2Sの酵素活性を,生体内に存在するI2S本来の基質と構造が類似するか,若しくは構造が同一の基質を用いて測定することができるので,医薬品として製造したrhI2Sの品質をより適切に評価できる。 イズロン酸−2−スルファターゼの酵素活性を測定する方法であって,次のステップすなわち, (a)イズロン酸−2−スルファターゼを,2位に硫酸基を有するウロン酸と,アミノ糖とが,1,4−グリコシド結合又は1,3−グリコシド結合により結合したものである二糖若しくはその塩を基質として,該基質と反応させるステップ, (b)上記ステップ(a)の反応により,該2位の硫酸基が脱硫酸化されることにより生じた生成物を,カラムクロマトグラフィーに付して,該基質から分離させるステップと, (c)上記ステップ(b)のカラムクロマトグラフィーにより該基質から分離された該生成物を検出するステップとからなる,方法。 該二糖が,下記の一般式(I)〜(IV):[式(I)〜(IV)中,R1は−NH2,−NHCOCH3又は−NHSO3H;R1はOSO3H;R3はCOOH;R4はCH2OH又はCH2OSO3H;R5はOH又はOSO3Hを,それぞれ独立して示す。], で示される群から選択される二糖若しくはその塩である,請求項1に記載の方法。 該二糖が,下記の化学式(V): で示される二糖若しくはその塩である,請求項1に記載の方法。 該カラムクロマトグラフィーが,疎水性カラムクロマトグラフィー用カラムと順相/親水性相互作用カラムクロマトグラフィー用カラムとを,この順で接続したものが用いられるものである,請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。 該イズロン酸−2−スルファターゼが,組換えヒトイズロン酸−2−スルファターゼである,請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。 【課題】基質として天然基質と構造が同一又は類似する二糖を用いたイズロン酸−2−スルファターゼの活性測定法を提供すること。【解決手段】イズロン酸−2−スルファターゼの酵素を測定する方法であって,次のステップすなわち,(a)試料に含まれるイズロン酸−2−スルファターゼを,2位に硫酸基を有するウロン酸と,アミノ糖とが,1,4結合により結合したものである二糖若しくはその塩を基質として,該基質と反応させるステップ,(b)上記ステップ(a)の反応により,該2位の硫酸基が脱硫酸化されることにより生じた生成物を,カラムクロマトグラフィーに付して,該基質から分離させるステップと,(c)上記ステップ(b)のカラムクロマトグラフィーにより該基質から分離された該生成物を検出するステップとからなる,方法。【選択図】なし


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