タイトル: | 公開特許公報(A)_インフルエンザワクチン乾燥製剤、及び、インフルエンザワクチン乾燥製剤の製造方法 |
出願番号: | 2014204021 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 39/00,A61K 39/145,A61K 47/26,A61K 9/14,A61K 9/19 |
清遠 英司 堀 光彦 浅利 大介 岡崎 有道 深坂 昌弘 JP 2015091791 公開特許公報(A) 20150514 2014204021 20141002 インフルエンザワクチン乾燥製剤、及び、インフルエンザワクチン乾燥製剤の製造方法 日東電工株式会社 000003964 特許業務法人 安富国際特許事務所 110000914 清遠 英司 堀 光彦 浅利 大介 岡崎 有道 深坂 昌弘 JP 2013208661 20131003 A61K 39/00 20060101AFI20150417BHJP A61K 39/145 20060101ALI20150417BHJP A61K 47/26 20060101ALI20150417BHJP A61K 9/14 20060101ALI20150417BHJP A61K 9/19 20060101ALI20150417BHJP JPA61K39/00 GA61K39/145A61K47/26A61K9/14A61K9/19 8 OL 14 4C076 4C085 4C076AA30 4C076CC06 4C076DD23D 4C076DD26Z 4C076DD67Q 4C076FF36 4C076FF63 4C076GG05 4C076GG06 4C085AA03 4C085BA55 4C085DD14 4C085DD84 4C085EE07 4C085FF14本発明は、インフルエンザワクチン抗原を含有する乾燥製剤に関する。より詳細には、本発明は、厳密に低温管理することなく保存してもインフルエンザワクチン抗原の活性を安定に維持することができ、安定に供給されうるインフルエンザワクチン乾燥製剤に関する。また、本発明は、該インフルエンザワクチン乾燥製剤の製造方法に関する。インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる急性感染症の一種である。インフルエンザウイルスが感染し、インフルエンザを発症するまでの潜伏期間は、通常1〜2日間である。発症した場合には、38度以上の発熱が現れ、全身倦怠感、頭痛、関節痛、筋肉痛等の全身症状に加え、喉の痛み、咳、鼻汁等の症状が現れる。一般に、1週間以内に回復する。インフルエンザは、高齢者、乳幼児、妊婦、呼吸器系や循環器系に慢性疾患を有する患者、糖尿病患者、慢性腎不全患者等が発症した場合、肺炎や気管支炎等の合併症を引き起すことがあり、重篤化して死に至ることもある。また、インフルエンザは短期間に集中して流行するため、社会的な影響を及ぼし、経済的な損失を生じさせることがある。インフルエンザの重篤化を防ぐには、インフルエンザワクチンの投与が最も有効な方法である。インフルエンザワクチン製剤は、注射剤や点鼻剤として使用される液剤が一般的である。しかしながら、インフルエンザワクチン液剤を流通させる場合、インフルエンザワクチン抗原の失活を防ぐため、流通及び保存の全工程で低温管理(いわゆるコールドチェーン)が必要となる。インフルエンザは地域により時期は異なるが、世界中で流行しており、低温管理が難しい国や地域に、インフルエンザワクチン抗原の活性を維持したまま、流通させることは困難である。また、現在利用可能なインフルエンザワクチン抗原は、生きた弱毒化インフルエンザワクチン抗原と不活化させたインフルエンザワクチン抗原とに大別される。更に、不活化インフルエンザワクチン抗原は、(1)ホルマリン等で不活化された全粒子ウイルス、(2)有機溶媒や界面活性剤を用いてウイルス粒子を粉砕し、脂質エンベローブを可溶化させたスプリットワクチン抗原、(3)ヘマグルチニン抗原(HA抗原)及びノイラミダーゼ抗原(NA抗原)を精製したサブユニットワクチン抗原の3種類に分類される。いずれのワクチン抗原も、通常、有機溶媒や界面活性剤を用いてウイルス粒子を粉砕し、種類に応じてウイルスタンパク質を分離又は精製して調製される。しかしながら、インフルエンザウイルス粒子はステロール含有量が高く、一般的に安定であるが、ウイルス粒子を粉砕し、ウイルス粒子の脂質物資を除去して、ウイルスタンパク質を分離又は精製した場合、保存期間中に経時的に力価が低下する等の問題が生じる。このようにスプリットワクチン抗原及びサブユニットワクチン抗原は必ずしも安定とはいえないことから、インフルエンザワクチン抗原の活性を維持するため、流通及び保存の全工程で低温管理が必要となっている。このようなインフルエンザワクチン液剤の欠点を克服するための方法として、乾燥製剤の形態にする試みがなされている。例えば、従来から、生のインフルエンザウイルスを保存する目的で糖が配合されており、特許文献1には、生きたインフルエンザウイルスにトレハロースを配合し、凍結乾燥させ、保存する方法が記載されている。非特許文献1には、インフルエンザウイルスの不活化全粒子ワクチン抗原の凍結乾燥に際して、ラクトース又はトレハロースを配合して、製剤化する方法が記載されている。非特許文献2には、鳥インフルエンザの不活化ウイルスにトレハロースを配合し、凍結乾燥させ、保存する方法が記載されている。しかしながら、現在のところ安定性に優れたインフルエンザワクチン乾燥製剤は上市されておらず、より一層の安定性の改善が求められている。また、トレハロースは、1994年に株式会社林原によって安価な製造方法が確立されて以来、同社によってほぼ独占的に供給されている。トレハロースは、世界中で様々な用途に使用されており、一社による独占は安定供給に不安がある。実際、2011年に株式会社林原は会社更生法を申請したため、トレハロースの供給が危ぶまれる事態となった。特表平2−503266号公報Robert J.Garmise et al.,AAPS PharmSciTech 2006;7(1)Article 19,E1−E7M.S.Pizzuto et al.,Biologicals Vol.39(2011),149−151上記の状況を鑑みて、本発明は、厳密に低温管理することなく保存してもインフルエンザワクチン抗原の活性を安定に維持することができ、安定に供給されうるインフルエンザワクチン乾燥製剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該インフルエンザワクチン乾燥製剤の製造方法を提供することを目的とする。上記の課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明者らは、種々の添加剤のなかでも特にスクロース、マルトース、パラチノース、メリビオース、イソマルト、セロビオース、アロラクトース、イソマルトース、ソホロース、ラクトビオン酸、ラミナリビオース、キシロビオース、ツラノース、ゲンチオビオース、ルチノース、コージビオース、ニゲロース、ロビノース、ネオヘスペリドース、スクラロース及びマルチトールからなる群から選ばれる1種以上によりインフルエンザワクチン抗原を安定化した乾燥製剤とすることにより、従来の液剤のように厳密に低温管理することなく保存しても、インフルエンザワクチン抗原の活性を安定に維持できることを見出した。また、このようなインフルエンザワクチン乾燥製剤は、安価で安定に供給されうる二糖によりインフルエンザワクチン抗原が安定化されているため、このようなインフルエンザワクチン乾燥製剤もまた、安定に供給されうるものである。すなわち、本発明は、インフルエンザワクチン抗原と、二糖とを含有するインフルエンザワクチン乾燥製剤であって、上記二糖は、スクロース、マルトース、パラチノース、メリビオース、イソマルト、セロビオース、アロラクトース、イソマルトース、ソホロース、ラクトビオン酸、ラミナリビオース、キシロビオース、ツラノース、ゲンチオビオース、ルチノース、コージビオース、ニゲロース、ロビノース、ネオヘスペリドース、スクラロース及びマルチトールからなる群から選ばれる1種以上であるインフルエンザワクチン乾燥製剤である。上記二糖の含有量は、インフルエンザワクチン抗原中のHA抗原1重量部に対して40〜600重量部であることが好ましい。上記インフルエンザワクチン抗原は、スプリットワクチン抗原又はサブユニットワクチン抗原であることが好ましく、スプリットワクチン抗原であることがより好ましい。上記二糖は、スクロース、マルトース、パラチノース及びメリビオースからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。また、本発明は、インフルエンザワクチン抗原と、二糖とを含有するインフルエンザワクチン抗原含有水溶液を、非加熱下に乾燥するインフルエンザワクチン乾燥製剤の製造方法であって、上記二糖は、スクロース、マルトース、パラチノース、メリビオース、イソマルト、セロビオース、アロラクトース、イソマルトース、ソホロース、ラクトビオン酸、ラミナリビオース、キシロビオース、ツラノース、ゲンチオビオース、ルチノース、コージビオース、ニゲロース、ロビノース、ネオヘスペリドース、スクラロース及びマルチトールからなる群から選ばれる1種以上であるインフルエンザワクチン乾燥製剤の製造方法である。上記インフルエンザワクチン抗原含有水溶液における上記二糖の含有量は、2〜30w/v%であることが好ましい。上記非加熱下に乾燥する方法は、減圧乾燥法又は凍結乾燥法であることが好ましい。以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のインフルエンザワクチン乾燥製剤は、インフルエンザワクチン抗原を含有する。ここにいう「乾燥製剤」とは、含水率が20重量%以下である製剤を意味する。上記インフルエンザワクチン抗原に使用されるインフルエンザウイルスは特に限定されず、例えば、A型インフルエンザウイルス株、B型インフルエンザウイルス株等が挙げられる。上記インフルエンザワクチン抗原は特に限定されないが、発育鶏卵でウイルス粒子を増殖させた後、有機溶媒や界面活性剤を用いてウイルス粒子を粉砕し、種類に応じてウイルスタンパク質を分離又は精製して調製されたスプリットワクチン抗原又はサブユニットワクチン抗原であることが好ましく、スプリットワクチン抗原であることがより好ましい。上記スプリットワクチン抗原の種類は特に限定されず、例えば、ヘマグルチニン(HA)抗原、ノイラミダーゼ(NA)抗原、マトリックス(M1)抗原、マトリックス(M2)抗原、核タンパク(NP)抗原等が挙げられる。なかでも、インフルエンザワクチン乾燥製剤の投与により効果的に免疫を獲得させる観点から、ヘマグルチニン(HA)抗原が好ましい。上記インフルエンザワクチン抗原は単一のウイルス抗原を含有してもよく、2種類以上のウイルス抗原を含有してもよい。上記インフルエンザワクチン抗原を製造する方法は特に限定されず、従来公知の方法を使用することができる。例えば、インフルエンザ患者又はインフルエンザ感染動物から単離されたウイルス株を定法によって鶏卵や細胞等に感染させて培養し、精製したウイルス原液からインフルエンザワクチン抗原を製造してもよい。また、遺伝子工学的に組換えウイルスや特定の抗原を種々の細胞で産生させたものを材料として、インフルエンザワクチン抗原を製造してもよい。本発明のインフルエンザワクチン乾燥製剤は、二糖を含有する。上記二糖は、スクロース、マルトース、パラチノース、メリビオース、イソマルト、セロビオース、アロラクトース、イソマルトース、ソホロース、ラクトビオン酸、ラミナリビオース、キシロビオース、ツラノース、ゲンチオビオース、ルチノース、コージビオース、ニゲロース、ロビノース、ネオヘスペリドース、スクラロース及びマルチトールからなる群から選ばれる1種以上である。これらの二糖は、上記インフルエンザワクチン抗原を安定化するものであり、また、水によく溶解するため、インフルエンザワクチン乾燥製剤を製造するためのインフルエンザワクチン抗原含有水溶液に容易に添加される。上記二糖は、スクロース、マルトース、パラチノース及びメリビオースからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。上記二糖の含有量は、上記インフルエンザワクチン抗原中のHA抗原1重量部に対して、700重量部未満であることが好ましく、40〜600重量部であることがより好ましい。上記含有量が40重量部未満であると、上記二糖による安定化の効果が充分に得られないことがある。上記含有量が600重量部を超えると、インフルエンザワクチン乾燥製剤の吸湿性が高くなり、厳密に低温管理することなく保存するとインフルエンザワクチン抗原の活性が低下することがある。上記含有量の更に好ましい下限は80重量部、更に好ましい上限は560重量部であり、特に好ましい下限は400重量部、特に好ましい上限は500重量部である。本発明のインフルエンザワクチン乾燥製剤の含水率は、20重量%以下であれば特に限定されないが、10重量%以下であることが好ましい。上記含水率が20重量%を超えると、厳密に低温管理することなく保存するとインフルエンザワクチン抗原の活性が低下することがある。なお、ここにいう「含水率」は、第十六改正日本薬局方、一般試験法、乾燥減量法、第一法に従い求める。すなわち、本発明のインフルエンザワクチン乾燥製剤の試験片を105℃3時間の条件で加熱したときの、重量の減少割合により求める。本発明のインフルエンザワクチン乾燥製剤は、厳密に低温管理することなく保存してもインフルエンザワクチン抗原の活性を安定に維持することができるため、従来の液剤に比べて、流通及び保存を容易にできる。本発明のインフルエンザワクチン乾燥製剤は、例えば、0〜50℃の保存温度で保存してもインフルエンザワクチン抗原の活性を安定に維持することができる。上記保存温度のより好ましい下限は2℃、より好ましい上限は40℃である。本発明のインフルエンザワクチン乾燥製剤を製造する方法としては、上記インフルエンザワクチン抗原と、上記二糖とを含有するインフルエンザワクチン抗原含有水溶液を、非加熱下に乾燥する方法が好ましい。これは、上記インフルエンザワクチン抗原は熱に不安定であるため、非加熱下に乾燥することが好ましいためである。すなわち、本発明は、インフルエンザワクチン抗原と、二糖とを含有するインフルエンザワクチン抗原含有水溶液を、非加熱下に乾燥するインフルエンザワクチン乾燥製剤の製造方法であって、上記二糖は、スクロース、マルトース、パラチノース、メリビオース、イソマルト、セロビオース、アロラクトース、イソマルトース、ソホロース、ラクトビオン酸、ラミナリビオース、キシロビオース、ツラノース、ゲンチオビオース、ルチノース、コージビオース、ニゲロース、ロビノース、ネオヘスペリドース、スクラロース及びマルチトールからなる群から選ばれる1種以上であるインフルエンザワクチン乾燥製剤の製造方法である。上記インフルエンザワクチン抗原含有水溶液における上記インフルエンザワクチン抗原の含有量は、100μgHA/mL以上であることが好ましい。上記含有量が100μgHA/mL未満であると、インフルエンザワクチン乾燥製剤の安定性が悪化することがある。上記含有量のより好ましい下限は200μgHA/mLである。上記インフルエンザワクチン抗原含有水溶液における上記インフルエンザワクチン抗原の含有量の上限は特に限定されず、1000μgHA/mLを超えるものであってもよい。上記インフルエンザワクチン抗原含有水溶液における上記二糖の含有量は、35w/v%未満であることが好ましく、2〜30w/v%であることがより好ましい。上記含有量が2w/v%未満であると、上記二糖による安定化の効果が充分に得られないことがある。上記含有量が30w/v%を超えると、インフルエンザワクチン乾燥製剤の吸湿性が高くなり、厳密に低温管理することなく保存するとインフルエンザワクチン抗原の活性が低下することがある。また、上記二糖の結晶化が促進され、インフルエンザワクチン抗原の活性を低下させる恐れもある。上記含有量の更に好ましい下限は4w/v%、更に好ましい上限は28w/v%であり、特に好ましい下限は20w/v%、特に好ましい上限は25w/v%である。上記非加熱下に乾燥する方法は特に限定されないが、減圧乾燥法又は凍結乾燥法が好ましく、凍結乾燥法が特に好ましい。上記凍結乾燥法は特に限定されず、従来公知の凍結乾燥装置を用いた方法を使用することができる。本発明のインフルエンザワクチン乾燥製剤は、厳密に低温管理することなく保存してもインフルエンザワクチン抗原の活性を安定に維持することができるため、従来の液剤に比べて、流通及び保存を容易にできる。また、本発明のインフルエンザワクチン乾燥製剤は、安価で安定に供給されうる二糖によりインフルエンザワクチン抗原が安定化されているため、本発明のインフルエンザワクチン乾燥製剤もまた、安定に供給されうるものである。更に、本発明のインフルエンザワクチン乾燥製剤は、そのまま、あるいは、用時に生理食塩水や注射水等の生体投与可能な溶媒に溶解又は分散させて使用することもできるため、様々な投与形態に適応しうる。具体的には、鼻粘膜、口腔内粘膜、眼粘膜、耳粘膜、生殖器粘膜、咽頭粘膜、気道粘膜、気管支粘膜、肺粘膜、胃粘膜、腸管粘膜又は直腸粘膜に投与する粘膜投与製剤、あるいは、注射剤として用いることができる。以下に本発明の実施例を示し、更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。(実施例1)(凍結乾燥インフルエンザHAワクチン製剤)インフルエンザHA抗原(A型H1N1:A/California/07/2009、阪大微生物病研究会製)に表1に記すスクロース(和光純薬工業製)を添加した後、下記組成の調製用PBS(リン酸緩衝塩化ナトリウム液)を加え、20w/v%スクロース、500μgHA/mLインフルエンザHA抗原(インフルエンザHA抗原1重量部に対してスクロース400重量部)となるようインフルエンザワクチン抗原含有水溶液を調製した。得られたインフルエンザワクチン抗原含有水溶液10μLを、1.5mLのセイフロックチューブ(eppendorf社製)に分注し、凍結乾燥させた。調製用PBS塩化ナトリウム(和光純薬工業製) 4.25gリン酸水素二ナトリウム12水和物(和光純薬工業製) 1.76gリン酸二水素ナトリウム2水和物(和光純薬工業製) 0.35g蒸留水 500mLにメスアップ(比較例1)(液状インフルエンザHAワクチン製剤)二糖を添加せず、かつ、凍結乾燥を行わずインフルエンザワクチン抗原含有水溶液をそのまま用いたこと以外は実施例1と同様にして、液状インフルエンザHAワクチン製剤を得た。(比較例2)(凍結乾燥インフルエンザHAワクチン製剤)二糖を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、凍結乾燥インフルエンザHAワクチン製剤を得た。<測定例1:インフルエンザHAワクチンの活性測定>(1)1vol%ニワトリ赤血球浮遊液の調製ニワトリ保存血液(日本バイオテスト研究所製)を遠沈管に入れて、900Gで5分間遠心分離を行った後、上清と白血球層とを除去した。次いで、遠沈管中の赤血球に下記組成の希釈用PBS(リン酸緩衝塩化ナトリウム液(pH7.2))を加えて撹拌した後、遠心分離を行って上清を除去した。この操作を3回繰り返した。希釈液が入った容器に、遠沈管の赤血球を取り分けて混和し、1vol%ニワトリ赤血球浮遊液を調製した。希釈用PBS塩化ナトリウム(和光純薬工業製) 8.5gリン酸水素二ナトリウム12水和物(和光純薬工業製) 1.425gリン酸二水素ナトリウム2水和物(和光純薬工業製) 0.135g蒸留水 1000mLにメスアップ(2)活性測定V底マイクロプレートのウェルに、1.2倍希釈系列のインフルエンザHAワクチン製剤を50μL入れ、その後、1vol%ニワトリ赤血球浮遊液を50μL加えた。ピペッティングでよく混和し、室温で1時間静置した後、赤血球を完全凝集させたインフルエンザHAワクチン製剤の最終希釈倍数をHA価とした。二糖を添加せず、かつ、凍結乾燥を行わなかった比較例1の液状インフルエンザHAワクチン製剤を5℃で保存したときのHA価を100%とした場合の相対値(%)を表1に記す。表1の結果から、インフルエンザHA抗原は何も加えずに凍結乾燥すると活性が著しく低下してしまうが、スクロースを20w/v%添加して凍結乾燥するとHA価が安定に維持されることを確認した。(実施例2〜17)(凍結乾燥インフルエンザHAワクチン製剤)二糖の種類又は含有量、或いは、凍結乾燥前液量を表2に記すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、凍結乾燥インフルエンザHAワクチン製剤を得た。(比較例3)(液状インフルエンザHAワクチン製剤)凍結乾燥を行わずインフルエンザワクチン抗原含有水溶液をそのまま用いたこと以外は実施例1と同様にして、液状インフルエンザHAワクチン製剤を得た。(比較例4〜7)(凍結乾燥インフルエンザHAワクチン製剤)二糖を表4に記す単糖又は三糖に変更したこと以外は実施例1と同様にして、凍結乾燥インフルエンザHAワクチン製剤を得た。(実施例18〜21)(凍結乾燥インフルエンザHAワクチン製剤)インフルエンザHA抗原の含有量を表5に記すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、凍結乾燥インフルエンザHAワクチン製剤を得た。(実施例22、23、24)(凍結乾燥インフルエンザHAワクチン製剤)インフルエンザHA抗原の種類及び含有量を表6に記すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、凍結乾燥インフルエンザHAワクチン製剤を得た。(比較例8、9、10)(液状インフルエンザHAワクチン製剤)二糖を添加せず、かつ、凍結乾燥を行わずインフルエンザワクチン抗原含有水溶液をそのまま用いたこと以外は実施例22、23、24と同様にして、液状インフルエンザHAワクチン製剤を得た。<測定例2:保存後のインフルエンザHAワクチンの活性測定>インフルエンザHAワクチン製剤入りのチューブの蓋を閉めた後、乾燥剤入りの密閉容器にチューブを入れ、30℃又は40℃で1ヵ月保存した。実施例1〜9、12〜17、比較例1〜7では、上記組成の調製用PBSを1000μL加えて再溶解したインフルエンザHAワクチン製剤のHA価を、測定例1と同様に測定した。実施例10、11では、蒸留水を50μL加えて再溶解し、上記組成の調製用PBSを加えて1000μLとしたインフルエンザHAワクチン製剤のHA価を、測定例1と同様に測定した。実施例18、19、20、21では、上記組成の調製用PBSをそれぞれ800μL、600μL、400μL、200μL加えて再溶解したインフルエンザHAワクチン製剤のHA価を、測定例1と同様に測定した。実施例22及び比較例8、実施例23及び比較例9、実施例24及び比較例10では、上記組成の調製用PBSをそれぞれ300μL(A型H3N2)、1200μL(B型ビクトリア系統)、20000μL(B型山形系統)加えて再溶解したインフルエンザHAワクチン製剤のHA価を、測定例1と同様に測定した。二糖を添加せず、かつ、凍結乾燥を行わなかった比較例1の液状インフルエンザHAワクチン製剤を5℃で保存したときのHA価を100%とした場合の相対値(%)を表2〜6に記す。表2の結果から、スクロース(和光純薬工業製)、マルトース(和光純薬工業製)、メリビオース(和光純薬工業製)、パラチノース(和光純薬工業製)を添加してインフルエンザHA抗原を凍結乾燥すると、40℃で1ヵ月間保存してもHA価が安定に維持されることを確認した。スクロースを添加する場合には、スクロースを20〜25w/v%(インフルエンザHA抗原1重量部に対してスクロース400〜500重量部)添加してインフルエンザHA抗原を凍結乾燥すると、最も安定的にHA価が維持されることを確認した(実施例1、6)。マルトースを添加する場合には、マルトースを10〜40w/v%(インフルエンザHA抗原1重量部に対してマルトース200〜800重量部)添加してインフルエンザHA抗原を凍結乾燥すると、最も安定的にHA価が維持されることを確認した。また、凍結乾燥前液量を変えてもHA価が安定に維持されることを確認した(実施例10、11)。表3の結果から、インフルエンザHA抗原は何も加えずに凍結乾燥すると活性が著しく低下してしまうことを確認した(比較例2)。また、スクロースを20w/v%添加したインフルエンザHA抗原を液体のまま、40℃で1ヵ月間保存すると、時間の経過と共にHA価が低下することを確認した(比較例3)。表4の結果から、単糖(グルコース(和光純薬工業製)、ガラクトース(和光純薬工業製)又はフルクトース(和光純薬工業製))或いは三糖(ラフィノース(和光純薬工業製))を20w/v%添加してインフルエンザHA抗原を凍結乾燥するとHA価が低下することを確認した。表5の結果から、スクロースを20w/v%添加してインフルエンザHA抗原を凍結乾燥すると、40℃で1ヵ月間保存しても、100〜400μgHA/mLのインフルエンザHA抗原含有量(インフルエンザHA抗原1重量部に対してスクロース500〜2000重量部)のいずれにおいてもHA価が安定に維持されることを確認した。表6の結果から、A型H1N1と同様に、A型H3N2(A/Victoria/361/2011、阪大微生物病研究会製)及びB型(B/Brisbane/60/2008(ビクトリア系統)又はB/Wisconsin/1/2010(山形系統)、阪大微生物病研究会製)でも、スクロースを20w/v%(A型H3N2の1重量部に対してスクロース500重量部、B型(ビクトリア系統)1重量部に対してスクロース667重量部、B型(山形系統)の1重量部に対してスクロース500重量部)添加してインフルエンザHA抗原を凍結乾燥すると、40℃で1ヵ月間保存してもHA価が安定に維持されることを確認した。本発明によれば、厳密に低温管理することなく保存してもインフルエンザワクチン抗原の活性を安定に維持することができ、安定に供給されうるインフルエンザワクチン乾燥製剤を提供することができる。また、本発明によれば、該インフルエンザワクチン乾燥製剤の製造方法を提供することができる。インフルエンザワクチン抗原と、二糖とを含有するインフルエンザワクチン乾燥製剤であって、前記二糖は、スクロース、マルトース、パラチノース、メリビオース、イソマルト、セロビオース、アロラクトース、イソマルトース、ソホロース、ラクトビオン酸、ラミナリビオース、キシロビオース、ツラノース、ゲンチオビオース、ルチノース、コージビオース、ニゲロース、ロビノース、ネオヘスペリドース、スクラロース及びマルチトールからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とするインフルエンザワクチン乾燥製剤。二糖の含有量が、インフルエンザワクチン抗原中のHA抗原1重量部に対して40〜600重量部である請求項1記載のインフルエンザワクチン乾燥製剤。インフルエンザワクチン抗原は、スプリットワクチン抗原又はサブユニットワクチン抗原である請求項1又は2記載のインフルエンザワクチン乾燥製剤。インフルエンザワクチン抗原は、スプリットワクチン抗原である請求項3記載のインフルエンザワクチン乾燥製剤。二糖は、スクロース、マルトース、パラチノース及びメリビオースからなる群から選ばれる1種以上である請求項1、2、3又は4記載のインフルエンザワクチン乾燥製剤。インフルエンザワクチン抗原と、二糖とを含有するインフルエンザワクチン抗原含有水溶液を、非加熱下に乾燥するインフルエンザワクチン乾燥製剤の製造方法であって、前記二糖は、スクロース、マルトース、パラチノース、メリビオース、イソマルト、セロビオース、アロラクトース、イソマルトース、ソホロース、ラクトビオン酸、ラミナリビオース、キシロビオース、ツラノース、ゲンチオビオース、ルチノース、コージビオース、ニゲロース、ロビノース、ネオヘスペリドース、スクラロース及びマルチトールからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とするインフルエンザワクチン乾燥製剤の製造方法。インフルエンザワクチン抗原含有水溶液における二糖の含有量が、2〜30w/v%である請求項6記載のインフルエンザワクチン乾燥製剤の製造方法。非加熱下に乾燥する方法は、減圧乾燥法又は凍結乾燥法である請求項6又は7記載のインフルエンザワクチン乾燥製剤の製造方法。 【課題】厳密に低温管理することなく保存してもインフルエンザワクチン抗原の活性を安定に維持することができ、安定に供給されうるインフルエンザワクチン乾燥製剤を提供する。また、該インフルエンザワクチン乾燥製剤の製造方法を提供する。【解決手段】インフルエンザワクチン抗原と、二糖とを含有するインフルエンザワクチン乾燥製剤であって、前記二糖は、スクロース、マルトース、パラチノース、メリビオース、イソマルト、セロビオース、アロラクトース、イソマルトース、ソホロース、ラクトビオン酸、ラミナリビオース、キシロビオース、ツラノース、ゲンチオビオース、ルチノース、コージビオース、ニゲロース、ロビノース、ネオヘスペリドース、スクラロース及びマルチトールからなる群から選ばれる1種以上であるインフルエンザワクチン乾燥製剤。【選択図】なし