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タイトル:公開特許公報(A)_加熱溶融押出担体用ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、加熱溶融押出用組成物及び加熱溶融押出成型物の製造方法
出願番号:2014162437
年次:2015
IPC分類:A61K 47/38,A61K 45/00,A61K 31/4422,C08B 13/00


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丸山 直亮 藁品 彰吾 草木 史枝 尾原 栄 菊池 一輝 JP 2015057380 公開特許公報(A) 20150326 2014162437 20140808 加熱溶融押出担体用ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、加熱溶融押出用組成物及び加熱溶融押出成型物の製造方法 信越化学工業株式会社 000002060 奥山 尚一 100099623 有原 幸一 100096769 松島 鉄男 100107319 河村 英文 100114591 中村 綾子 100125380 森本 聡二 100142996 角田 恭子 100154298 田中 祐 100166268 徳本 浩一 100170379 渡辺 篤司 100161001 丸山 直亮 藁品 彰吾 草木 史枝 尾原 栄 菊池 一輝 JP 2013167572 20130812 A61K 47/38 20060101AFI20150227BHJP A61K 45/00 20060101ALI20150227BHJP A61K 31/4422 20060101ALI20150227BHJP C08B 13/00 20060101ALN20150227BHJP JPA61K47/38A61K45/00A61K31/4422C08B13/00 6 OL 13 4C076 4C084 4C086 4C090 4C076AA29 4C076EE32 4C076FF02 4C084AA17 4C084NA20 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC23 4C086NA20 4C090AA08 4C090BA31 4C090BB12 4C090BB33 4C090BB36 4C090BB52 4C090BD36 4C090CA38 4C090DA22 本発明は、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル及びこれを含む加熱溶融押出用組成物並びに加熱溶融押出成型物の製造方法に関する。 薬物と高分子の混合物を加熱下で溶融押出する製剤手法が、最近注目されている。 例えば、水難溶性薬物と高分子を加熱溶融押出法(ホットメルトエクストルージョン)により固化させた固体分散体は、薬物が非晶質(アモルファス)の状態で高分子担体中に分子分散し、薬物の溶解性が見かけ上顕著に上昇して生物学的利用能が改善される。また、加熱溶融押出法は溶媒の使用を回避することができるため、水に不安定な薬物に対して適用でき、溶剤回収不要なことによる安全性及び環境への配慮の軽減や溶剤回収工程にかかるエネルギーの節約、作業員への安全面での改善といった利点が挙げられる。更に、従来のバッチ生産システムとは異なり、連続的な製造が可能で、時間あたりの生産性、消費エネルギーの面からも着目されている。 これら加熱溶融押出法に使用される高分子の一例として、セルロース骨格にメトキシ基(−OCH3)とヒドロキシプロポキシ基(−OC3H6OH)の2つの置換基を導入してエーテル構造とするほか、アセチル基(−COCH3)とスクシニル基(−COC2H4COOH)の2つの置換基を導入してエステル構造として、計4種類の置換基を導入した高分子であるヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(以下、「HPMCAS」ともいう。)がある。 ここで、HPMCASを含む加熱溶融押出法による固体分散体としては、例えば、HPMCAS(市販品のAS−LF、モル置換度0.16〜0.35、平均粒子径5μm)を含む加熱溶融押出法による固体分散体において、水を添加することによりHPMCAS又は水難溶性薬物のガラス転移温度や軟化温度を下げる方法が提案されている(特許文献1)。 また、水難溶性薬物のポサコナゾールと粒径0.2〜1μmのヒドロキシプロピルメチル−セルロース誘導体ポリマーを加熱溶融押出により製剤化するに当たって、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース誘導体ポリマーとしてHPMCAS(市販品のAS−MF及びAS−MG、モル置換度0.15〜0.34、平均粒子径AS−MF:5μm、AS−MG:1mm)を用いる方法が提案されている(特許文献2)。 更に、硬化ヒマシ油等の溶融性物質をバインダーとし、医薬化合物を含有する芯物質の周囲に平均粒子径1〜500μmの腸溶性物質の被膜を被覆した腸溶性製剤が提案されている(特許文献3)。国際公開2003/077827号公報特表2011−516612号公報特開平4−290817号公報 しかし、特許文献1及び2に記載の平均粒子径が10μm以下の市販品のHPMCASは、粒子径が小さく凝集性が高いため、粉体の流動性が低い。そのため、加熱溶融押出機により加熱溶融押出成型物を製造する場合、薬物と上述のHPMCASの混合粉体がフィーダーのホッパー内でブリッジを形成し易く、定量供給及び連続運転ができなかった。その結果、薬物含量均一性の低下や薬物に対するHPMCAS質量比が低下をもたらした。従来、このように平均粒径が小さいHPMCASを用いざるを得なかったのは、HPMCASの主な用途が腸溶性コーティング剤であり、水分散性腸溶性コーティング剤によって均一な被膜を得るためには、より微粉状のものが望まれていたからである。なお、溶剤コーティング用の平均粒子径が0.5〜1.0mmの市販品のHPMCASは粉体の流動性に優れるが、加熱溶融押出機により固体分散体を製造する場合、薬物との混合性が悪く、得られた固体分散体中の薬物含量の均一性が低くなる問題があった。従来、溶剤コーティング用に平均粒径が大きいHPMCASを用いざるを得なかったのは、溶液調製時に粉立ちが少なく、取り扱いし易い粉体が望まれていたからである。 また、特許文献3は医薬化合物を含有する芯物質の周囲に外から被覆する目的で使用されるHPMCASを含む乾式コーティングに関するものであり、薬物が非晶質の状態で腸溶性物質中に分子分散しているわけではない。 本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、所定範囲の平均粒子径を有するHPMCASを含む加熱溶融押出用組成物を用いることにより、薬物との混合均一性に優れた加熱溶融押出成型物及び加熱溶融押出における粉体供給をスムーズに行うことができる加熱溶融押出成型物の製造方法を提供する。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、HPMCASの平均粒子径を特定範囲にすることにより、ホッパーからのHPMCASの供給をスムーズに行うことができ、薬物との混合均一性に優れた加熱溶融押出成型物を製造することができることを見出し、本発明を完成させた。 従って、本発明の一つの形態において、乾式レーザー回折法による体積平均粒子径(D50)が70〜300μmであり、かつゆるめ嵩密度が0.25〜0.40g/cm3である加熱溶融押出担体用ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルが提供される。本発明の他の形態において、このヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルと薬物を少なくとも含む加熱溶融押出用組成物が提供される。また、本発明の別の形態において、乾式レーザー回折法による体積平均粒子径(D50)が70〜300μmであり、かつゆるめ嵩密度が0.25〜0.40g/cm3であるヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルと薬物を少なくとも含む加熱溶融押出組成物を、前記ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルの溶融温度以上、又は前記ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル及び前記薬物を共に溶融することになる温度以上の加熱溶融温度で加熱溶融し、押出しする工程を少なくとも含む加熱溶融押出成型物の製造方法が提供される。 本発明によれば、従来よりも加熱溶融押出における粉体供給をスムーズに行うことができ、更に薬物との混合性が向上するため、薬物含量が均一な加熱溶融押出成型物を連続で生産可能となる。 以下、本発明につき更に詳しく説明する。 HPMCASは、乾式レーザー回折法による体積平均粒子径(D50)が70〜300μm、好ましくは100〜280μm、更に好ましくは100〜200μmである。HPMCASの体積平均粒子径が70μm未満だと粉体の流動性が低く、フィーダーのホッパー内でブリッジを形成し、連続運転ができない。また、薬物との混合性が低下し、薬物含量均一性が低下し、固形製剤中に必要量の薬物を確保できなかったり、薬物に対するHPMCAS質量比が低下することにより、薬物が非晶化せず、薬物の溶解性改善効果が低下する。一方、HPMCASの体積平均粒子径が300μmを超えると、平均粒子径が通常1〜50μmである薬物との平均粒子径の差が大きすぎるため、ホッパーでの偏析が発生し、薬物含有量がばらつき、その結果、薬物含量均一性が低下し、固形製剤中に必要量の薬物を確保できなくなる。更に、加熱溶融時にHPMCASの粒子径が大きすぎると、HPMCASの溶融が不十分となり、薬物の溶解性改善効果が低下する。 「乾式レーザー回折法」は、例えば、英国マルバーン社製のマスターサイザーやドイツSympatec社のHELOS装置を用いた方法のように、圧縮空気で粉体サンプルを噴出させたものにレーザー光を照射し、その回折強度により体積平均粒子径を測定する方法をいう。体積平均粒子径は、例えば「改訂増補粉体物性図説」粉体工学会・日本粉体工業技術協会編、日経技術図書、1985年、第88頁に記載されているように、式{Σ(nD3)/Σn}1/3を用いて計算される。式中、Dは粒子の直径、nはその直径の粒子数、Σnは全粒子数を表す。D50は粒度分布の累積50%の粒子径を意味する。 HPMCASのゆるめ嵩密度は、0.25〜0.40g/ml、好ましくは0.30〜0.40g/ml、更に好ましくは0.33〜0.38g/mlである。ゆるめ嵩密度が0.25g/ml未満だと、HPMCASが軽すぎてフィーダーのホッパー内でブリッジを形成し、連続運転ができない。また、薬物との混合性が低下し、薬物含量均一性が低下し、固形製剤中に必要量の薬物を確保できなかったり、薬物に対するHPMCAS質量比が低下することにより、薬物が非晶化せず、薬物の溶解性改善効果が低下する。ゆるめ嵩密度が0.40g/mlを超えると、重質過ぎて、ホッパーでの偏析が発生し、薬物含有量がばらつく。また、加熱溶融時にHPMCASのゆるめ嵩密度が高すぎるため、HPMCASの溶融に時間がかかる結果、HPMCASの溶融が不十分となり、薬物の溶解性改善効果が低下する。 「ゆるめ嵩密度」は、疎充填の状態の嵩密度をいい、直径5.03cm、高さ5.03cm(容積100ml)の円筒容器(材質:ステンレス)へ試料をJISの22メッシュ(目開き710μm)の篩を通して、上方(23cm)から均一に供給し、上面をすり切って秤量することによって測定される。 HPMCASの圧縮度は、流動性の観点から好ましくは15〜40%、より好ましくは20〜35%である。 「圧縮度」とは、嵩減りの度合いを示す値であり、以下の式で求められる。 圧縮度(%)={(固め嵩密度―ゆるめ嵩密度)/固め嵩密度}×100 ここで、「固め嵩密度」とは、これにタッピングを加えて密充填にした場合の嵩密度である。タッピングとは、試料を充填した容器を一定の高さから繰り返し落下させて底部に軽い衝撃を与え、試料を密充填にする操作である。実際には、「ゆるめ嵩密度」を測定する際上面をすり切って秤量した後、さらにこの容器の上にキャップをはめ、この上縁まで粉体を加えてタップ高さ1.8cmのタッピングを180回行う。終了後、キャップを外して容器の上面で粉体をすり切って秤量し、この状態の嵩密度を固め嵩密度とする。これらの操作は、ホソカワミクロン社製パウダーテスター(PT−S)を使用することにより測定できる。 HPMCASの安息角は、流動性の観点から好ましくは30〜45°、より好ましくは30〜40°である。パウダーテスターPT−S型(ホソカワミクロン社製)を用いて直径80mmの金属製円盤状の台の上に75mmの高さより一定の角度になるまで試料を流下させ、堆積している粉体と台との角度を測定することにより算出できる。この角度が小さいほど流動性に優れる粉体と言える。 HPMCASにおける置換基であるメトキシ基のモル置換度は、特に限定されないが、好ましくは0.70〜2.90、より好ましくは1.00〜2.40、更に好ましくは1.4〜1.9である。 HPMCASにおける置換基であるヒドロキシプロポキシ基のモル置換度は、特に限定されないが、好ましくは0.20〜1.50より好ましくは0.2〜1.0、更に好ましくは0.40〜0.90である。 HPMCASにおけるアセチル基のモル置換度は、特に限定されないが、好ましくは0.10〜2.50、より好ましくは0.10〜1.00、更に好ましくは0.40〜0.95である。 HPMCASにおけるスクシニル基のモル置換度は、特に限定されないが、好ましくは0.10〜2.50、より好ましくは0.10〜1.00、更に好ましくは0.10〜0.60である。 ヒドロキシプロポキシ基をはじめとするHPMCASの置換基含量は、第16改正日本薬局方第一追補の医薬品各条「ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル」に記載されている方法により測定できる。 20℃における、HPMCASを2質量%含む希(0.1mol/L)水酸化ナトリウム水溶液の粘度は、好ましくは1.1〜20mPa・s、より好ましくは1.5〜3.6mPa・sである。粘度が1.1mPa・s未満の場合、加熱溶融押出時に溶融粘度が低すぎてせん断力がかからず、ピストン又はスクリューの空転や吐出口からの押出しが困難になる場合がある。一方、粘度が20mPa・sを超える場合は、加熱溶融押出用組成物の粘度が高くなり過ぎ、ピストン又はスクリューにかかるトルクが過大となり、ピストン又はスクリューが回らない又は機械が安全上停止する場合がある。粘度の測定方法は、第16改正日本薬局方のHPMCASの一般試験法に記載の方法により測定することができる。 HPMCASは、例えば、特開昭54−61282号公報に記載の方法を用いて製造できる。原料となるヒプロメロース、別名ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、「HPMC」ともいう。)を氷酢酸に溶解し、エステル化剤として無水酢酸と無水コハク酸、反応触媒として酢酸ナトリウムを添加して加熱反応させる。反応終了後、反応液に多量の水を添加してHPMCASを析出させる。その析出物を水洗後、乾燥することにより、体積平均粒子径が0.5〜2.0mm程度の顆粒状の乾燥物が得られる。 この乾燥物を粉砕機にて粉砕し、HPMCASを得ることができる。HPMCASは軟化温度が低いため、該粉砕には機器の構造上、品温が高くなりにくいジェットミル、ナイフミル、ピンミル等の衝撃粉砕機が好ましい。 薬物は、経口投与可能な薬物であれば特に限定されるものではない。かかる薬物としては、例えば、中枢神経系薬物、循環器系薬物、呼吸器系薬物、消化器系薬物、抗生物質、鎮咳・去たん剤、抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛消炎剤、利尿剤、自律神経作用薬、抗マラリア剤、止潟剤、向精神剤、ビタミン類及びその誘導体等が挙げられる。 中枢神経系薬物としては、例えば、ジアゼパム、イデベノン、アスピリン、イブプロフェン、パラセタモール、ナプロキセン、ピロキシカム、ジクロフェナック、インドメタシン、スリンダック、ロラゼパム、ニトラゼパム、フェニトイン、アセトアミノフェン、エテンザミド、ケトプロフェン及びクロルジアゼポキシド等が挙げられる。 循環器系薬物としては、例えば、モルシドミン、ビンポセチン、プロプラノロール、メチルドパ、ジピリダモール、フロセミド、トリアムテレン、ニフェジビン、アテノロール、スピロノラクトン、メトプロロール、ビンドロール、カプトプリル、硝酸イゾソルビト、塩酸デラプリル、塩酸メクロフェノキサート、塩酸ジルチアゼム、塩酸エチレフリン、ジギトキシン、塩酸プロプラノロール及び塩酸アルプレノロール等が挙げられる。 呼吸器系薬物としては、例えば、アムレキサノクス、デキストロメトルファン、テオフィリン、プソイドエフェドリン、サルブタモール及びグアイフェネシン等が挙げられる。 消化器系薬物としては、例えば、2−[〔3−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−ピリジル〕メチルスルフィニル]ベンゾイミダゾール及び5−メトキシ−2−〔(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジル)メチルスルフィニル〕ベンゾイミダゾール等の抗潰瘍作用を有するベンゾイミダゾール系薬物、シメチジン、ラニチジン、塩酸ピレンゼピン、パンクレアチン、ビサコジル並びに5−アミノサリチル酸等が挙げられる。 抗生物質としては、例えば、塩酸タランピシリン、塩酸バカンピシリン、セファクロル及びエリスロマイシン等が挙げられる。 鎮咳・去たん剤としては、例えば、塩酸ノスカピン、クエン酸カルベタペンタン、臭化水素酸デキストロメトルファン、クエン酸イソアミニル及びリン酸ジメモルファン等が挙げられる。 抗ヒスタミン剤としては、例えば、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン及び塩酸プロメタジン等が挙げられる。 解熱鎮痛消炎剤としては、例えば、イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、スルピリン、アスピリン及びケトプロフェン等が挙げられる。 利尿剤としては、例えば、カフェイン等が挙げられる。 自律神経作用薬としては、例えば、リン酸ジヒドロコデイン及びdl−塩酸メチルエフェドリン、硫酸アトロピン、塩化アセチルコリン、ネオスチグミン等が挙げられる。 抗マラリア剤としては、例えば、塩酸キニーネ等が挙げられる。 止潟剤としては、例えば、塩酸ロペラミド等が挙げられる。 向精神剤としては、例えば、クロルプロマジン等が挙げられる。 ビタミン類及びその誘導体としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、フルスルチアミン、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、パントテン酸カルシウム及びトラネキサム酸等が挙げられる。 特に、本発明のHPMCASを水難溶性の薬物の固体分散体の担体として用いることにより、水難溶性薬物の溶解性を改善することができる。ここで、水難溶性薬物は、水に、第16改正日本薬局方に記載された「溶けにくい」、「極めて溶けにくい」、「ほとんど溶けない」とされる薬物をいう。「溶けにくい」とは、固形の医薬品1g又は1mLをビーカーにとり、水を投入し20±5℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜるとき、100mL以上1000mL未満で30分以内に溶ける度合いをいう。「極めて溶けにくい」とは、同様に1000mL以上10000mL未満で30分以内に溶ける度合いをいう。「ほとんど溶けない」とは、同様に30分以内に10000mL以上要するものをいう。 また、上記の医薬品試験において、水難溶性薬物が解けるということは、薬物が水に溶ける又は混和することを示し、繊維等を認めないか又は認めても極めてわずかであることをいう。 水難溶性薬物の具体例としては、イトラコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、メトコナゾール等のアゾール系化合物、ニフェジピン、ニトレンジピン、アムロジピン、ニカルジピン、ニルバジピン、フェロジピン、エフォニジピン等のジヒドロピリジン系化合物、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン等のプロピオン酸系化合物、インドメタシン、アセメタシン等のインドール酢酸系化合物のほかに、グリセオフルビン、フェニトイン、カルバマゼピン、ジピリダモール等が挙げられる。 HPMCASと薬物の質量比率は、特に限定されないが、非晶化状態の保存安定性の観点から、好ましくは1:0.01から1:100、より好ましくは1:0.1から1:10、更に好ましくは1:0.2から1:5である。 更に、本発明の組成物は、加熱溶融押出の際の成形性の改善等のために、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を含有してもよい。 可塑剤としては、例えば、アセトン、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の好ましくは炭素数10〜20の高級アルコール、マンニトール、ソルビトール、グリセリン等の好ましくは2〜6価の多価アルコール、ビーズワックス、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール又はプロピレングリコール等のアルキレングリコール、トリアセチン、ジブチルセバセート、グリセリンモノステアレート、モノグリセリンアセテート等の可塑剤が挙げられる。 界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤、ジグリセリド、ポロクサマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ツイン20、60、80)、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤、レシチン、タウロコール酸ナトリウム等の天然界面活性剤等が挙げられる。 配合量は、保存安定性の観点から、可塑剤はHPMCASに対して30質量%以下、界面活性剤は10質量%以下が好ましい。 加熱溶融押出成型物は、必要に応じて賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑択剤、凝集防止剤等、通常この分野で常用され得る種々の添加剤を配合して、錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、フィルム製剤等の経口固形製剤として用いることができる。 賦形剤としては、例えば、白糖、乳糖、マンニトール、グルコース等の糖類、でんぷん、結晶セルロース等が挙げられる。配合量は、固形製剤に対して5〜80質量%である。 結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール類、アラビアゴム、ゼラチン、でんぷん等が挙げられる。配合量は、固形製剤に対して0.5〜5質量%である。 崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース又はその塩、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、結晶セルロース及び結晶セルロース・カルメロースナトリウム等が挙げられる。配合量は、固形製剤に対して1〜10質量%である。 滑択剤、凝集防止剤としては、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コロイダルシリカ、ステアリン酸、ワックス類、硬化油、ポリエチレングリコール類、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。配合量は、それぞれ固形製剤に対して0.1〜5質量%である。 得られた経口固形製剤は、メチルセルロース、ヒプロメロース等の水溶性コーティング剤によりフィルムコーティングや、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルやヒプロメロースフタル酸エステル、メタクリル酸アクリル酸エステルコポリマー等の腸溶性コーティング剤によりコーティングされてもよい。 次に、加熱溶融押出成型物の製造方法について説明する。 まず、体積平均粒子径(D50)が70〜300μmであって、かつゆるめ嵩密度が0.25〜0.40g/cm3であるHPMCASと薬物に、必要に応じてその他の成分を加えて混合して、加熱溶融押出用組成物を調製する。調製された加熱溶融押出用組成物を加熱溶融押出機のホッパーから投入し、円形や四角形等の形状の他、柱状やフィルム状の形状等、所望の形状に押出して、成型体を得ることができる。 加熱溶融押出機は、HPMCASと薬物等を系内で加熱をしながら、ピストン又はスクリューで剪断力を加えて溶融して練合後、ダイから押し出す構造の押出機であれば特に制限はないが、より均一な押出成型物を得るためには、二軸型の押出機の方が好ましい。具体的には、東洋精機社製のキャピログラフ(一軸ピストン型押出装置)やライストリッツ(Leistritz)社製のNano−16(二軸スクリュー型押出装置)、サーモフィッシャーサイエンティフィック(ThermofisherScientific)社製のMiniLab(二軸スクリュー型押出装置)及びPharmaLab(二軸スクリュー型押出装置)が挙げられる。 加熱溶融温度は、特に限定されないが、好ましくは、加熱溶融押出用組成物が溶融して押出が無理なくでき、熱により薬物や高分子の分解をできるだけ避けることができる温度である。即ち、固体分散体を製造しない場合にはHPMCASの溶融温度以上の温度が、固体分散体を製造する場合にはHPMCAS及び薬物の両者が溶融することになる温度以上の温度が好ましい。なお、薬物の添加によりHPMCASの融点が低下する場合にも、同様に共に溶融することになる温度以上の温度が好ましい。具体的な加熱溶融温度は、好ましくは50〜250℃、より好ましくは60〜200℃、更に好ましくは90〜190℃である。50℃よりも低いと溶融が不完全となり押出が困難となる場合があり、250℃を超えるとHPMCASや薬物の分解により分子量の低下及び置換基の加水分解による失活の可能性がある。 加熱溶融押出条件は、加熱溶融押出時における粘度が好ましくは1〜100000Pa・sである加熱溶融押出用組成物を押し出すことができれば特に制限されないが、一軸ピストン型押出装置の場合は、押出速度が好ましくは1〜1000mm/分、より好ましくは10〜500mm/分であり、二軸スクリュー型押出装置の場合は、スクリュー回転数が好ましくは1〜1000rpm、より好ましくは1〜500rpmである。押出速度が1mm/分未満の場合又はスクリュー回転数が1rpm未満の場合、系内での滞留時間が長くなり、熱分解する場合がある一方、押出速度が1000mm/分を超える場合又はスクリュー回転数が1000rpmを超える場合、混練り部分での加熱溶融過程が不十分となり、加熱溶融押出成型物中の薬物とポリマーの溶融状態が不均一となる場合がある。 押出後の加熱溶融押出成型物は、ダイ吐出口以降から室温(1〜30℃)による自然冷却又は冷送風により冷却されるが、薬物の熱分解を最少にするため及び非晶化薬物の場合は再結晶化を抑制するために、好ましくは50℃以下、より好ましくは室温以下(30℃以下)に冷却することが望ましい。 冷却後の加熱溶融押出成型物は、必要に応じて切断機によって0.1〜5mmのペレット化するか、更に粉砕して粒状及び粉状になるまで粒度調整を行ってもよい。粉砕には機器の構造上、品温が高くなりにくいジェットミル、ナイフミル、ピンミル等の衝撃粉砕機が好ましい。なお、切断機および粉砕機内が高温化してしまう場合は、HPMCASが熱により軟化し粒同士が固着してしまうため、冷送風下で粉砕することが好ましい。 以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。<HPMCAS−7の調製> 50Lニーダーに氷酢酸12kg秤込み、メトキシ基のモル置換度1.91、ヒドロキシプロポキシ基のモル置換度0.24のヒプロメロース(HPMC)6kgを加えて溶解した。更に、無水酢酸3.5kg及び無水コハク酸1.2kg、酢酸ナトリウム2.9kgを加えて、85℃で5時間反応を行った。これに精製水6.7kgを加えて撹拌した後、この溶液に精製水を添加してHPMCASを粒状に沈殿させ、濾過により粗HPMCASを採取した。この粗HPMCASを精製水にて洗浄し、乾燥後、10メッシュ(目開き:1700μm)の篩にて篩過し、最終水分1.2質量%のHPMCAS−7を得た。 得られたHPMCAS−7の各置換基含有量を第16改正日本薬局方第一追補記載の方法により測定したところ、メトキシ基22.9質量%(モル置換度:1.87)、ヒドロキシプロポキシ基7.0質量%(モル置換度:0.24)、アセチル基7.9質量%(モル置換度:0.47)、スクシニル基12.7質量%(モル置換度:0.32)であった。 また、得られたHPMCAS−7の体積平均粒子径は500μm、ゆるめ嵩密度0.420であった。<HPMCAS―1の調製> HPMCAS−7をホソカワミクロン社製のピンミル100UPZを用いて、供給速度:20kg/hr、ディスク回転数:1500rpmで粉砕を行い、表1に示す粉体物性を有するHPMCAS−1を得た。<HPMCAS―2の調製> HPMCAS−7を日本ニューマチック工業社のジェットミルCPY−2を用いて、供給速度:20kg/hr、粉砕圧力:0.4MPaで粉砕を行い、表1に示す粉体物性を有するHPMCAS−2を得た。<HPMCAS―3の調製> HPMCAS−7をホソカワミクロン社製のピンミル100UPZを用いて、供給速度:20kg/hr、ディスク回転数:1000rpmで粉砕を行い、表1に示す粉体物性を有するHPMCAS−3を得た。<HPMCAS―4の調製> HPMCAS−7をホソカワミクロン社製のピンミル100UPZを用いて、供給速度:20kg/hr、ディスク回転数:500rpmで粉砕を行い、表1に示す粉体物性を有するHPMCAS−4を得た。<HPMCAS―6の調製> HPMCAS−7を日本ニューマチック社のジェットミルCPY−2を用いて、供給速度:10kg/hr、粉砕圧力:0.5MPaで粉砕を行い、表1に示す粉体物性を有するHPMCAS−6を得た。<HPMCAS―5> HPMCAS−5として、市販の微粉品であるAS−MF信越化学工業製HPMCAS信越AQOAT AS−MF(信越化学工業社製)体積平均粒子径約5μmを用いた。<HPMCAS−1〜7の流動性評価> 得られた各HPMCASについて、ホソカワミクロン社製パウダーテスターPT−S型を用いて、ゆるめ嵩密度、固め嵩密度、圧縮度及び安息角を測定した結果を表1に示す。流動性の指標となる圧縮度、安息角において、HPMCAS−1〜4は、HPMCAS−5〜6と比べて低い値を示し、流動性が優れていた。<HPMCAS−1〜7の供給速度の評価> HPMCAS−1〜7の各HPMCAS300gを一軸スクリュー型粉体供給装置(スクリュー直径:55mm、スクリュー回転数:10rpm)の粉体供給フィード口に投入し、排出口からの粉体供給速度(g/分)を20秒毎に6回測定した。この操作を3回行い、合計18回の平均供給速度と標準偏差から供給速度のばらつきの指標となる変動係数Cv(Cv=(標準偏差/平均)×100)を求めた。その結果を表2に示す。 HPMCAS−1〜4は、HPMCAS−5〜7と比較してCv値が低く、流動性に優れるものであり、加熱溶融押出時の粉体の定量供給性に優れるものであった。<HPMCAS−1〜7の混合均一性の評価> モデル薬物としてビタミンC粉末(平均粒子径25μm)30gとHPMCAS−1〜7の各HPMCAS90gをポリエチレン袋に投入し、10回手振りで振とう後、粉体供給フィーダー(久万エンジニアリング社アキュレート)に入れて、スクリュー回転数80rpmで排出を行い、排出されるHPMCASを継時的に約4gずつ9回にわたりサンプリングした。各フラクション毎に0.4gを精秤し、精製水を用いてビタミンCを抽出し、メンブランフィルターでろ過後、希釈してUV分光光度計(波長=257nm、光路長10mm)の吸光度測定により定量した。各フラクションのビタミンC含量から、変動係数Cv(Cv=標準偏差/平均×100)を求めた。結果を表3に示す。変動係数は、HPMCAS−1〜4がHPMCAS−5〜7よりも低く、加熱溶融押出時の混合性に優れていることが分る。実施例1〜4、比較例1〜2<固体分散体の調製> HPMCAS−1(実施例1)、HPMCAS−2(実施例2)、HPMCAS−3(実施例3)、HPMCAS−4(実施例4)、HPMCAS−7(比較例1)の各HPMCASと、水難溶性薬物であるニフェジピンを乳鉢により混合(HPMCAS:ニフェジピン=1:0.5質量比)して、加熱溶融押出用組成物を調製し、加熱溶融押出試験装置(一軸ピストン型溶融押出装置、東洋精機社製キャピログラフ)にてダイの直径1mm、高さ10mm、押出速度50mm/分の条件により、160℃での加熱溶融押出を行った。 得られた加熱溶融押出成型物を粉砕機(大阪ケミカル社製ワンダーブレンダーWB−1型)を用いて20000rpmで粉砕し、30メッシュの篩で篩過して得られた粉末について第16改正日本薬局方に記載の溶出試験を行った。 本粉末270mg(ニフェジピン90mg相当量)の10分後に溶出されるニフェジピンの溶出率(質量%)を第16改正日本薬局方崩壊試験用の第2液(pH6.8)900ml及び日本薬局方溶出試験機(富山産業社製NTR−6100A型)を用いてパドル回転数は100rpmにて測定した。ニフェジピンの定量はUV(325nm、光路長10mm)の吸光度を求め、予め既知の濃度で作成した吸光度換算直線から求めた。その結果を表4に示す。また、比較例2としてニフェジピン原末についても同様の試験を実施した。なお、10分後の溶出率を測定したのは、通常10分後に最大溶出率が観察されるためである。 実施例1〜4は、比較例2のニフェジピン原末と比較してニフェジピンの溶出率が著しく向上した。また、比較例1は実施例1〜4と比較して、溶出改善効果が低かった。これは粒子径が大きく、ゆるめ嵩密度が高いため、加熱溶融押出時の溶解性が不十分で固体分散体の形成が不十分であったものと考えられる。 また、実施例1〜4について粉末X線回折を測定したところ、ニフェジピン特有の結晶ピークが認められず、加熱溶融押出による組成物はニフェジピンが非晶質状態でHPMCAS中に分散している固体分散体を形成していることがわかった。 乾式レーザー回折法による体積平均粒子径(D50)が70〜300μmであり、かつゆるめ嵩密度が0.25〜0.40g/cm3である加熱溶融押出担体用ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル。 前記ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルの圧縮度が、15〜40%である請求項1に記載の加熱溶融押出担体用ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル。 請求項1又は請求項2に記載のヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルと薬物を少なくとも含む加熱溶融押出用組成物。 前記薬物が、水難溶性薬物である請求項3に記載の加熱溶融押出用組成物。 乾式レーザー回折法による体積平均粒子径(D50)が70〜300μmであり、かつゆるめ嵩密度が0.25〜0.40g/cm3であるヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルと薬物を少なくとも含む加熱溶融押出組成物を、前記ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルの溶融温度以上、又は前記ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル及び前記薬物を共に溶融することになる温度以上の加熱溶融温度で加熱溶融し、押出しする工程を少なくとも含む加熱溶融押出成型物の製造方法。 前記加熱溶融温度が、50〜250℃である請求項5に記載の加熱溶融押出成型物の製造方法。 【課題】薬物との混合均一性に優れた加熱溶融押出成型物及び加熱溶融押出における粉体供給をスムーズに行うことができる加熱溶融押出成型物の製造方法を提供する。【解決手段】乾式レーザー回折法による体積平均粒子径(D50)が70〜300μmであり、かつゆるめ嵩密度が0.25〜0.40g/cm3である加熱溶融押出担体用HPMCASが提供され、このHPMCASと薬物を少なくとも含む加熱溶融押出用組成物が提供される。また、乾式レーザー回折法による体積平均粒子径(D50)が70〜300μmであり、かつゆるめ嵩密度が0.25〜0.40g/cm3であるHPMCASと薬物を少なくとも含む加熱溶融押出組成物を、前記HPMCASの溶融温度以上、又は前記HPMCAS及び前記薬物を共に溶融することになる温度以上の加熱溶融温度で加熱溶融し、押出しする工程を少なくとも含む加熱溶融押出成型物の製造方法が提供される。【選択図】なし


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