タイトル: | 公開特許公報(A)_心筋炎の予防または治療剤 |
出願番号: | 2014120057 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 36/00,A61P 9/00,A61P 31/12,A61K 36/18,A61K 36/28,A61K 36/07 |
西尾亮介 JP 2015231976 公開特許公報(A) 20151224 2014120057 20140611 心筋炎の予防または治療剤 西尾 亮介 505013686 西尾亮介 A61K 36/00 20060101AFI20151201BHJP A61P 9/00 20060101ALI20151201BHJP A61P 31/12 20060101ALI20151201BHJP A61K 36/18 20060101ALI20151201BHJP A61K 36/28 20060101ALI20151201BHJP A61K 36/07 20060101ALI20151201BHJP JPA61K35/78 WA61P9/00A61P31/12A61K35/78 CA61K35/78 TA61K35/84 A 1 1 OL 6 4C088 4C088AA04 4C088AB12 4C088AB26 4C088AB33 4C088AC06 4C088AC13 4C088AC17 4C088MA07 4C088MA52 4C088ZA36 4C088ZB33 本発明は、医薬の発明に関するものであり,より具体的には,心筋炎の予防および治療に有用な医薬の発明に関する。 心筋炎は心筋を主座とする炎症性疾患である.比較的軽症なものから劇症型の予後の悪い場合まで様々であるが,一部は慢性化し,心筋症様の形態的変化を来す.心筋症の中の一分類である拡張型心筋症は5年生存率が約5割と予後が悪く,難病の一つであり,心臓移植患者の約半数を占めている.心筋炎は心筋症の原因の一つと考えられており,急性期の治療と慢性化の予防は極めて重要と考えられる. 心筋炎の原因として,細菌,リケッチア,クラミジア,真菌,寄生虫などが知られているが,その多くはウイルス感染によるものと考えられている.ウイルス感染が臨床的に証明されたものはウイルス性心筋炎と診断されるが,原因不明なものは特発性心筋炎と診断される場合がある.急性期には劇症化し,死亡する症例も少なくない.また,慢性期には,ウイルスの持続感染や反復感染,さらには自己免疫機序を介して,難治性の心筋症を発症する症例もある.従って,心筋炎の急性期には炎症治療とともに心筋症発症の予防治療が必要となる(心筋炎および心筋症については日本循環器学会ガイドライン「急性および慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン」および「拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン」を参照). 一方,五苓散は漢方製剤で,タクシャ,ソウジュツ,チョレイ,ブクリョウ,ケイヒといった生薬を含む混合物である. 口渇,尿量減少するもののうち,浮腫,ネフローゼ,二日酔,急性胃腸カタル,下痢,悪心,嘔吐,めまい,胃内停水,頭痛,尿毒症,暑気あたり,糖尿病に対して,効能または効果があるとされる.医療用抽出顆粒として広く用いられ,安全性は確認されており,心筋炎の治療または改善用の医薬品として使用できるとともに,心筋炎の予防用組成物としても使用し易い. 心筋炎の治療については臨床および基礎研究の両面から様々な検討がなされているが,現在のところ十分な成果は得られておらず,心不全に対する一般的な対症療法にとどまっているのが現状である.例えば,ステロイド剤はウイルス感染を悪化させる可能性があり,また,ワクチン等による予防効果も予想されているが,臨床的に原因となるウイルスを特定することが困難であるため,治療としては一般化されていない.他方,抗ウイルス剤も検討されているが,実用化されているものは無い. この改善策として、炎症に対する対症療法の効果を高め,心筋炎の難治化や慢性化を予防できる医薬の開発が切望されている.漢方も候補として有用性が検討されてきているが,心疾患の領域では未だその報告は数少ない. 特開平10−251148号公報王 衛中ら著 Life Sci. 1998;62(13):1139-46. 本発明は、ウイルスの種類に関わらず,ウイルス感染が関与する心筋炎の予防または治療に有用な医薬を提供することが本発明の課題であり,心筋炎の治療を可能にするとともに,心筋炎の難治化および慢性化を予防できる医薬を提供することが本発明の課題である. 本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果,意外にも五苓散が心筋炎,特にウイルス性心筋炎の予防,治療および改善に特に有効であることを見いだし,本発明を完成した. 本発明の五苓散を投与することにより,心筋炎,特にウイルス性心筋炎を効果的に予防,治療または改善することができる.本発明の五苓散は心筋傷害を抑制することにより,心筋炎を予防,治療または改善することができる.また心筋炎に伴う細胞傷害,心筋症あるいは心不全や不整脈を予防,治療または改善することも出来る. また本発明によれば,五苓散およびその類縁混合物の医薬用途として,ウイルス性疾患,特にウイルス性心筋炎および各種ウイルス性疾患の予防または治療剤,およびウイルス性細胞傷害の予防または治療剤といった医薬用途を提供するものである.図1は試験例1におけるマウス生存率の結果を示すグラフである.細線は対照群(五苓散非投与),灰色線は五苓散低用量群,中太線は中用量群,太線は高用量群を示す. 以下において,本発明を詳細に説明する.五苓散はタクシャ,ソウジュツ,チョレイ,ブクリョウ,ケイヒの5種類の生薬を含み,その混合比は,通常8:6:6:6:3や5:3:3:3:2等のものが使用される.ソウジュツの代わりにビャクジュツとする場合もあるが特に限定されない.本明細書における五苓散は,例えば,その7.5g中に,タクシャ 4.0g,ソウジュツ 3.0g,チョレイ 3.0g,ブクリョウ 3.0g,ケイヒ 1.5gの割合の混合生薬乾燥エキス2.0gを含有している.以下に,試験例によって本発明の効果を明らかにするが,これらは単なる例示であり,本発明はこれらにより何ら限定されるものではない.試験例1(心筋炎モデルにおける生存率に対する効果) エンセファロミオカルヂチス(Encephalomyocarditis: EMC)ウイルスを接種した心筋炎モデルマウスにおいて,生存率に対する五苓散の効果を比較検討した. 方法 F-2飼料にそれぞれ0.23%(低用量群, n=10),0.7%(中用量群, n=10),2.1%(高用量群, n=11)の五苓散を添加した混餌を,また,対照群(n=10)として五苓散を添加していないF−2飼料を,3週齢のDBA/2マウスに継続的に与えた.給餌開始より7日目にEMCウイルスを接種しウイルス性心筋炎を誘導した(第0日).第14日までの生存率をKaplan-Meier法によって各群比較検討した. 結果 上記により得られた結果から,Kaplan-Meier法により解析することにより得られたデータを 図1のグラフに示す. 上記図1に示すように,第14日までの生存率は用量依存性に改善され,高用量群では対照群と比較し,有意な改善が認められた(高用量群:81.8% (9/11);対照群:40% (4/10), p<0.05). 試験例2(心筋炎モデルにおける心筋の病理組織的変化に対する効果) エンセファロミオカルヂチス(Encephalomyocarditis: EMC)ウイルスを接種した心筋炎モデルマウスにおいて,心筋の病理組織的変化に対する五苓散の効果を比較検討した. 試験例1と同様に,F-2飼料にそれぞれ0.23%(低用量群, n=10),0.7%(中用量群, n=10),2.1%(高用量群, n=11)の五苓散を添加した混餌を,また,対照群(n=10)として五苓散を添加していないF−2飼料を,3週齢のDBA/2マウスに継続的に与えた.給餌開始より7日目にEMCウイルスを接種しウイルス性心筋炎を誘導した(第0日). 第7日に生存マウスより心臓を採取し,ホルマリン固定後ヘマトキシリンーエオジン染色により心臓壊死,細胞浸潤の2項目につき,以下のようにスコア化した(このようなホルマリン固定,ヘマトキシリンーエオジン染色,スコア化の詳細に関しては,例えば Circulation. 1999 Sep 7; 100(10): 1102-8. を参照することができる). 心筋細胞壊死および細胞浸潤のスコアは, 2人の観察者に よって独立して評価し,平均し,各群比較検討した..統計学的分析は one way analysis of variance (ANOVA), Fisher’s protected least significant difference testにより行った.<スコア化>0: 病変なし1+: 心臓の25%以下の病変,2+: 25%より多く,50%以下の心臓の病変,3+: 50%より多く,75%以下の心臓の病変,4+: 75%より多く,100%以下の心臓の病変 結果 上記により測定した,心筋細胞壊死,および炎症細胞浸潤のデータを下記表1に示した(なお,この表1には,上記した生存率データも併記した).この表1に示したように,五苓散混餌により心筋壊死および炎症細胞浸潤が改善され,高用量群では対照群と比較し,有意な改善が認められた(p<0.05).心臓の病理組織学的所見(組織像)においても,五苓散投与により用量依存的に炎症性細胞・壊死の軽減の傾向が認められた. 上記試験例1および2の結果から,五苓散はウイルス性心筋炎動物モデルにおいて,心臓傷害と生存率を改善した.五苓散はウイルス性心筋炎を改善し,ウイルス感染に有効であることが明らかとなった. なお,上記ウイルス性心筋炎動物モデルについては,Circulation. 1982 Jun;65(6):1230-5. または Circulation. 1982 Aug;66(2):355-60. に記載されている. 本発明の薬剤は,ウイルス性心筋炎またはウイルス性心筋炎に関連するウイルス性疾患の治療効果があり,また該疾患の予防にも有用である. 五苓散よりなるウイルス性心筋炎またはウイルス性心筋炎に関連するウイルス性疾患の治療または予防薬. 【課題】本発明は、ウイルスの種類に関わらず,ウイルス感染が関与する心筋炎の予防または治療に有用な医薬を提供することが本発明の課題であり,心筋炎の治療を可能にするとともに,心筋炎の難治化および慢性化を予防できる医薬を提供することが本発明の課題である.【解決手段】本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果,意外にも五苓散が心筋炎,特にウイルス性心筋炎の予防,治療および改善に特に有効であることを見いだし,本発明を完成した.【選択図】図1