タイトル: | 公開特許公報(A)_窒化ガリウム自立基板、窒化ガリウム結晶及び窒化ガリウム自立基板の生産方法 |
出願番号: | 2014113193 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C30B 29/38,C30B 7/10,C30B 33/00,G01N 23/20,C23C 16/34 |
望月 多恵 藤澤 英夫 三川 豊 鎌田 和典 JP 2015178438 公開特許公報(A) 20151008 2014113193 20140530 窒化ガリウム自立基板、窒化ガリウム結晶及び窒化ガリウム自立基板の生産方法 三菱化学株式会社 000005968 望月 多恵 藤澤 英夫 三川 豊 鎌田 和典 JP 2014038722 20140228 C30B 29/38 20060101AFI20150911BHJP C30B 7/10 20060101ALI20150911BHJP C30B 33/00 20060101ALI20150911BHJP G01N 23/20 20060101ALI20150911BHJP C23C 16/34 20060101ALN20150911BHJP JPC30B29/38 DC30B7/10C30B33/00G01N23/20C23C16/34 12 9 OL 24 2G001 4G077 4K030 2G001AA01 2G001BA11 2G001BA15 2G001BA18 2G001CA01 2G001DA02 2G001DA09 2G001EA01 2G001GA06 2G001GA13 2G001HA13 2G001KA03 2G001LA11 2G001MA05 4G077AA02 4G077AB10 4G077BE15 4G077CB04 4G077ED06 4G077FJ03 4G077GA06 4G077HA12 4G077KA05 4G077KA15 4K030AA03 4K030BA08 4K030BA38 4K030BB14 4K030CA04 4K030HA03 4K030LA14 本発明は、窒化ガリウム自立基板、窒化ガリウム結晶及び窒化ガリウム基板の生産方法に関する。 従来、物質の完全性(結晶性)がシリコン単結晶のように高くなると、X線トポグラフ装置において、特定の回折指数に対して異常透過現象(以下、単に異常透過と呼ぶ。)が観察されることが広く知られている。 このような異常透過現象の発生を利用した角度分析板として、例えば、特許文献1には、厚さtと吸収係数μとを乗じた値μtが5以上、原子面が(220)面又は(440)面のシリコン単結晶が記載されている。特開2012-251834号公報 しかしながら、窒化ガリウム(GaN)自立基板の場合には、未だに異常透過が発生するほど物質の完全性が高いGaN自立基板を製造することは難しく、GaN自立基板において異常透過は発生していない。そして、異常透過が発生するほど物質の完全性が高いGaN自立基板を製造することができれば、当該GaN自立基板の主表面に窒化物半導体を良好にエピタキシャル成長させて、結晶性の良い高品質な窒化物半導体を形成することができるものと考えられる。 本発明は以上の点を考慮してなされたものであり、結晶性の良い高品質な各種の半導体デバイス構造を形成させ得る窒化ガリウム自立基板、窒化ガリウム結晶及び窒化ガリウム自立基板の生産方法を提供することを目的とする。 本発明の窒化ガリウム自立基板は、X線トポグラフ装置において異常透過による回折トポグラフ像が測定される。また、本発明の窒化ガリウム結晶は、窒化ガリウム結晶を加工することによって上述の窒化ガリウム自立基板を作製し得る。 従って、本発明の窒化ガリウム自立基板及び窒化ガリウム結晶では、物質の完全性が高いため、窒化ガリウム自立基板の主表面に窒化物半導体を良好にエピタキシャル成長させて、結晶性の良い高品質な窒化物半導体を形成することができる。 本発明の窒化ガリウム自立基板の生産方法は、異常透過を利用した透過X線トポグラフィを試験項目に含む検査工程を備え、検査工程で許容できない欠陥が見出された製品を不合格品とする。 従って、本発明の窒化ガリウム自立基板の生産方法では、結晶性の良い高品質な各種の半導体デバイス構造を形成することができる窒化ガリウム自立基板のみを出荷することができる。 本発明によれば、結晶性の良い高品質な各種の半導体デバイス構造を形成させ得る窒化ガリウム自立基板、窒化ガリウム結晶及び窒化ガリウム自立基板の生産方法を提供することができる。GaN自立基板が通常有する形状を説明する概念図である。透過配置のX線トポグラフ装置の概念図である。a軸方向、c軸方向およびm軸方向の寸法が、それぞれ、25mm、15mmおよび6mmであるGaN結晶を示す概念図である。アモノサーマル法で使用される結晶成長装置の概念図である。窒素極性面上にストライプパターンの成長マスクが形成されたc面GaN基板上における、GaN結晶の成長の様子を示す斜視図である。窒素極性面上にストライプパターンの成長マスクが形成されたc面GaN基板上に、アモノサーマル的に成長する二次GaN結晶が形成する構造を示す斜視図である。成長方向に対して傾斜した安定面が表面に出現することにより、GaN結晶の成長レートが鈍化することを説明する図面である。評価に使用した実施例1の三次基板の写真である。X線トポグラフ装置により測定した、入射角が7.4°、回折角が14.8°のときの実施例1の三次基板の異常透過による(002)回折トポグラフ像である。X線トポグラフ装置により測定した、入射角が12.9°、回折角が25.8°のときの実施例1の三次基板の異常透過による(110)回折トポグラフ像である。X線トポグラフ装置により測定した、入射角が6.9°、回折角が91.1°のときの実施例1の三次基板の反射による回折トポグラフ像である。X線トポグラフ装置により測定した、入射角が6.9°、回折角が91.1°のときの実施例1の三次基板の反射による回折トポグラフ像である。評価に使用した比較例1のGaN自立基板の写真である。X線トポグラフ装置により測定した、入射角が6.9°、回折角が91.1°のときの比較例1のGaN自立基板の反射による回折トポグラフ像である。評価に使用した比較例2のGaN自立基板の写真である。X線トポグラフ装置により測定した、入射角が6.9°、回折角が91.1°のときの比較例2のGaN自立基板の反射による回折トポグラフ像である。(窒化ガリウム(GaN)自立基板の定義) 図1は、GaN自立基板が通常有する形状を説明する概略図である。図1(a)は、円板の斜視図である。図1(b)は、矩形の主表面を有する板の斜視図である。 図1(a)において、GaN自立基板1の形状は、円板、すなわち円形の主表面を有する板である。図1(b)において、GaN自立基板1は、矩形の主表面を有する板である。図1(a)及び図1(b)において、GaN自立基板1は、第1主表面2及び当該第1主表面2と反対側の第2主表面と、端面3とを有している。 本明細書において、GaN自立基板とは、単独で取り扱い得る厚さを有するGaN基板をいう。GaN自立基板として取り扱い得るために必要な最低の厚さは、主表面のサイズによって変わり得るが、150μmが好ましい。本発明のGaN自立基板の厚さは、250μm以上がより好ましく、300μm以上がさらに好ましい。 本明細書において、m面GaN基板とは、m面である主表面を有するGaN自立基板を意味する。m面GaN基板には、主表面の法線がGaN結晶の<10−10>方向と平行である基板が含まれる他、主表面の法線がGaN結晶の<10−10>方向となす角度が20度以下であるオフ角付き基板が含まれる。 本明細書において、c面GaN基板とは、c面である主表面を有するGaN自立基板を意味する。c面GaN基板には、主表面の法線がGaN結晶の[0001]方向と平行である基板が含まれる他、主表面の法線がGaN結晶の[0001]方向となす角度が10°以下であるオフ角付き基板が含まれる。c面GaN基板は、GaN結晶が持つ本来的な性質のために、一方の主表面が+c面(Ga極性面)となり、他方の主表面が−c面(N極性面)となる。(本実施形態のGaN自立基板及びGaN結晶) 図2は、透過配置のX線トポグラフ装置の概念図である。この場合、GaN自立基板1の厚さはtである。X線源4は、GaN自立基板1の一方の主表面である第1主表面側に配置されている。X線検出器5は、GaN自立基板1の他方の主表面である第2主表面側に配置されている。X線源4及びX線検出器5は、回折面6においてX線がGaN自立基板1において回折し異常透過したときに回折トポグラフ像が測定されるように配置されている(ラング法による配置)。 この場合、X線源4は、GaN自立基板1の第1主表面にX線を入射する。X線は、所定の入射角でGaN自立基板1に入射し、GaN自立基板1の回折面6において回折及び又は透過が起きる。X線検出器5は、GaN自立基板1の回折面6において回折及び又は透過したX線を検出し、その結果、異常透過による回折トポグラフ像を結像する。 なお、X線トポグラフ装置は、基板1のような板状結晶のみならず、加工前の例えばアズグロウン結晶であっても異常透過による回折トポグラフ像を測定することができる。 本実施形態のGaN自立基板は、X線トポグラフ装置において異常透過による回折トポグラフ像が測定される。また、本実施形態のGaN自立基板は、X線の吸収係数μにX線の入射面である主表面に対して垂直方向の厚さtを乗じたμtが1より大きい場合に、異常透過による回折トポグラフ像が測定される。さらに、本実施形態のGaN自立基板は、μtが10より大きい場合に、X線トポグラフ装置において異常透過による回折トポグラフ像が測定される。 異常透過(Campbell-Bormann effect)とは、完全結晶に近くなると、X線の吸収係数による減衰を示さないで、X線が結晶を通過する現象である。原理的には、X線がブラッグ反射(回折)を起こし、当該X線が結晶内で吸収されないで繰り返し反射(回折)を続けたのち結晶外に出る。詳しくは動力学的回折理論によって説明される。 ここで、X線の吸収係数μに前記厚さtを乗じたμtが1より大きい場合について説明する。不完全な結晶の場合には、X線は結晶内で減衰して結晶を透過せず結像が起こらない。これに対して、完全な結晶若しくは完全な結晶に近い結晶の場合には、X線は減衰をせず結晶を透過し結像が起こる。これを異常透過による回折トポグラフ像という。 吸収係数μは、例えば、X線源がモリブデンKアルファ(MoKα)の場合には、290.40(cm-1)である。従って、μtが1となるには厚さtは34.4μm必要であり、μtが3となるには厚さtは103.3μm必要であり、μtが3となるには厚さtは206.6μm必要であり、μtが10となるには厚さtは344μm必要である。本実施形態のGaN自立基板の厚さは、150μmが好ましく、250μm以上がより好ましく、300μm以上がさらに好ましい。本実施形態のμtは、1より大きいことが好ましく、3より大きいことがより好ましく、6より大きいことがさらに好ましく、10より大きいことがさらに好ましい。 また、本実施形態のGaN自立基板は、主表面の法線とm軸との間の角度が0度以上20度以下である。本実施形態のGaN自立基板における主表面の法線とm軸との間の角度は、例えば、5度である。 さらに、本実施形態のGaN自立基板は、図2で示す第1主表面2において少なくとも70%の範囲で異常透過による回折トポグラフ像が測定される。本実施形態のGaN自立基板及びGaN結晶において測定される異常透過による回折トポグラフ像は、80%以上、さらには90%以上であることがより好ましい。例えば、GaN自立基板外周のダメージ層が存在する場合や、部分的に異常透過が起こらない領域があっても、おおよそ70%以上の領域で異常透過が起こる基板であれば、本願発明の課題を解決することができる。 また、本実施形態のGaN自立基板は、図2で示す第1主表面2において少なくとも5mm角の範囲で異常透過による回折トポグラフ像が測定される。本実施形態のGaN自立基板において測定される異常透過による回折トポグラフ像は、7mm角以上、さらには10mm角以上であることがより好ましい。 なお、第1主表面2の異常透過による回折トポグラフ像が測定される範囲は、画像処理ソフトなどにより測定することができる。 さらに、本実施形態のGaN自立基板は、その主表面のサイズが10mm角以上である。さらに、本実施形態のGaN自立基板は、その主表面をm面に垂直投影したときの、投影像のc軸方向の寸法が15mm以上、a軸方向の寸法が25mm以上で有り得る。一例として、図3に、a軸方向、c軸方向およびm軸方向の寸法が、それぞれ、25mm、15mmおよび6mmであるGaN結晶を示す。このGaN結晶からは、m面に対する主表面の傾斜がa軸方向0度、c軸方向±21度以内であり、主表面をm面に垂直投影したときの投影像の寸法がc軸方向15mm、a軸方向25mmである基板を、切り出すことができる。主表面のm面からの傾斜角が小さな基板である程、切り出し得る枚数は多くなる。 さらに、本実施形態のGaN結晶は、当該GaN結晶を加工することによって本実施形態のGaN自立基板を作製し得る。(本実施形態のGaN自立基板の生産方法) 本実施形態のGaN自立基板の生産方法は、異常透過を利用したX線トポグラフィを試験項目に含む検査工程(透過配置のX線トポグラフ装置を用いた検査工程)を設け、そこで許容できない欠陥が見出された製品を不合格品とすることが好ましい。これにより、結晶性の良い高品質な各種の半導体デバイス構造を形成することができる窒化ガリウム自立基板のみを出荷することができる。(本実施形態のGaN自立基板の製造方法) 本実施形態のGaN自立基板(三次基板)は、限定されるものではないが、次の手順により製造することができる。(i)c面GaNテンプレートをシードに用いて、HVPE法により一次GaN結晶を成長させ、一次GaN結晶を加工して、一次基板(c面GaN基板)を作製する。(ii)一次基板をシードに用いて、アモノサーマル法により二次GaN結晶を成長させ、二次GaN結晶を加工して、二次基板(m面GaN基板)を作製する。(iii)二次基板をシードに用いて、アモノサーマル法により三次GaN結晶を成長させる。また、三次GaN結晶を加工して、三次基板を作製する。 各ステップの詳細を以下に説明する。(一次基板の作製) 一次GaN結晶は、予めGaN層の表面に選択成長用のマスクパターンを形成したc面GaNテンプレートをシードに用いて、HVPE法により成長させる。 c面GaNテンプレートとは、GaNとは異なる化学組成を有する単結晶基板を基材とし、その一方の主表面上にc軸成長した単結晶GaN層を有する、複合基板である。単結晶GaN層の表面は、GaNの+c面(Ga極性面)である。 c面GaNテンプレートの基材は、サファイア基板、GaAs基板、SiC基板、Si基板、Ga2O3基板、AlN基板などである。単結晶GaN層はMOCVD法により形成され、その厚さは、例えば0.5〜100μmである。 単結晶GaN層の表面には、選択成長用のマスクパターンを設けてもよい。マスクパターンは、窒化ケイ素(SiNx)や酸化ケイ素(SiO2)のような、GaNの気相成長を阻害する材料からなる薄膜で形成する。マスクパターンの好適例はストライプパターン(ライン&スペースパターン)である。ストライプの方向は、単結晶GaN層のm軸に平行とする。 HVPE法で成長させたバルクの一次GaN結晶の外形を適宜な形状に加工した後、スライス加工、表面エッチングによるダメージ層除去、主表面の平坦化等、必要な加工を行い、その後、エピタキシャル成長に利用する−c面(N極性面)をCMP(Chemical Mechanical Polishing)仕上げして、一次基板を作製する。(二次基板の作製) 二次GaN結晶は、一次基板をシードに用いて、アモノサーマル法により成長させる。 アモノサーマル法による成長工程に先立ち、一次基板の−c面(N極性面)には選択成長用のマスクパターンを形成する。マスクパターンには、GaNのa軸に平行な、幅100μm程度のライン形の開口部を設ける。マスクは、アモノサーマル法によるGaN結晶の成長中に溶解または分解しない金属、例えば、Al、W、Mo、Ti、Pt、Ir、Ag、Au、Ta、Ru、Nb、Pd、やそれらの合金で形成する。 シード上に成長させるGaNの原料は、好ましくは多結晶GaNであるが、これに限定されるものではない。多結晶GaNに不純物として含まれる酸素の濃度は、通常、5×1020cm-3以下、好ましくは1×1020cm-3以下、より好ましくは5×1019cm-3以下である。 溶媒に用いるアンモニアが含有する水、酸素等の不純物の量は、好ましくは10ppm以下、より好ましくは1.0ppm以下である。鉱化剤には、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化ガリウム、ハロゲン化水素のような、ハロゲン元素を含む酸性鉱化剤を好ましく用いることができる。鉱化剤の純度は、好ましくは99%以上、より好ましくは99.99%以上である。 図4は、アモノサーマル法で使用される結晶成長装置10の概念図である。アモノサーマル法によるGaN結晶の成長は、結晶成長装置10を用いて行うことができる。図4に示す結晶成長装置10において、結晶成長は筒形のオートクレーブ11中に装填される筒形の成長容器12中で行われる。成長容器12は、バッフル13で相互に区画された結晶成長領域14および原料溶解領域15を内部に有する。結晶成長領域14には、ワイヤー16で吊された種結晶17が設置されている。原料溶解領域15には原料18が装填されている。 真空ポンプ21、アンモニアボンベ22および窒素ボンベ23が接続されたガスラインがバルブ24を介してオートクレーブ11と接続されている。成長容器12にアンモニアを充填する際には、マスフローメーター25を用いてアンモニアボンベ22から供給されるアンモニアの量を確認することができる。 結晶成長の際には、種結晶、原料、鉱化剤および溶媒を封入した成長容器12をオートクレーブ11内に装填し、オートクレーブ11を密閉する。そして、オートクレーブ11ごとヒーター(図示せず)で加熱して、成長容器12内を超臨界状態または亜臨界状態とする。 結晶成長中における成長容器12内の圧力は、通常20MPa、好ましくは50MPa以上、より好ましくは80MPa以上であり、また、通常700MPa以下、好ましくは500MPa以下、より好ましくは300MPa以下である。 結晶成長中における成長容器12内の温度は、通常500℃以上、好ましくは515℃以上、より好ましくは530℃以上であり、また、通常700℃以下、好ましくは650℃以下、より好ましくは630℃以下である。 原料溶解領域15は、結晶成長領域14よりも高温とする。原料溶解領域と結晶成長領域の温度差は、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、また、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下である。 図5は、窒素極性面上にストライプパターンの成長マスクが形成されたc面GaN基板上における、GaN結晶の成長の様子を示す斜視図である。一次基板31の窒素極性面31aは矩形とされ、その上には、a軸に平行なストライプパターン(ライン&スペースパターン)のマスクパターン32が配置されている。マスクパターン32は、幅Wが50〜100μm程度の線状開口部33を有する。ストライプ周期PSは1mmより大きくすることが好ましく、かつ、10mm以下とすることが好ましい。 一次基板31のa軸方向の端部31bおよびm軸方向の端部31cは、マスクパターン32で覆わないようにする必要がある。一例においては、更に、窒素極性面の外周部を、基板端面から数mm以内の範囲で露出させてもよい。 一次基板31の窒素極性面31Aでは、図5に示すように、マスクパターン32の線状開口部33から、m軸方向を厚さ方向とする板状の二次GaN結晶34が成長する。そして、二次GaN結晶34を一次基板から切り離し、GaN結晶34を得る。後述する三次基板の作製には、このGaN結晶34をそのままシードとして使用することもできる。 図5において、二次GaN結晶34は、マスクパターン32の各線状開口部33上にひとつずつ、壁状に成長している。壁の高さ方向は[000−1]方向(−c方向)であり、壁の厚さ方向はm軸方向である。壁の各々は厚さ方向にも成長するが、隣接する壁同士の融合は起こり難い。 二次GaN結晶34と一次基板31との界面は、マスクパターン32に設けられた細長い開口部内に限られるので、該界面で生じる応力が二次GaN結晶34の成長に与える影響を抑えることができる。 図5では省略しているが、GaN結晶は一次基板31の端面からも成長するので、全体としては、図6に模式的に示す構造が形成される。一次基板31のa軸方向の端部31bから成長するGaN結晶は、−c方向に延びて、傾斜した外面を有する壁35を形成する。二次GaN結晶34のa軸方向の端部31bは、この壁35の内面とつながる。一次基板31のm軸方向の端部31cから成長するGaN結晶も、−c方向に延びて、傾斜した外面を有する壁36を形成する。壁35と壁36はつながって、二次GaN結晶34を取り囲む周壁構造を形成する。 図6に示す構造が形成されることにより、少なくとも次の3つの効果が得られる。第一の効果は、二次GaN結晶34を一次基板31上に保持する効果である。第二の効果は、二次GaN結晶34の[000−1]方向の成長レートの鈍化を防止する効果である。第三の効果は、二次GaN結晶34のa軸方向のサイズ縮小を防止する効果である。 上記第一の効果によって、二次GaN結晶34の成長工程における再成長が可能となる。再成長とは、ある程度結晶を成長させたところでシードを成長容器から取出し、新しい成長容器に移して、再びその上に結晶を成長させるという操作である。成長容器内の原料消費とともに成長レートが低下するので、大サイズの二次GaN結晶34を得るには再成長が欠かせないところ、それを可能とするのが、図6に示す構造の形成なのである。 もし、この構造が形成されなければ、二次GaN結晶34を一次基板31から脱落させることなく、使用済の成長容器から新しい成長容器に移し替えることは困難である。なぜなら、前述のように、二次GaN結晶34と一次基板31とは、マスクパターン32に設けられた細長い線状開口部33の内側でつながっているだけだからである。 図6に示す構造が形成されると、二次GaN結晶34が前記の周壁構造を介して一次基板31に繋ぎ止められるので、再成長操作が可能となる他、成長容器内において、溶媒の対流の作用などによって、一次基板31から二次GaN結晶34が脱落する確率もずっと低くなる。更に、図6に示す構造の形成には、二次GaN結晶34をハンドリング中の損傷から保護する効果もある。 上記第二の効果を詳しく説明すると、次の通りである。例えば、図7(a)に示すGaN結晶シード41を用いて、GaN結晶を成長させた場合を考える。このシードの主表面41aは窒素極性面であり、その形状はa軸方向に細長く伸びた長方形である。成長開始直後は、シードの窒素極性面上に高いレートでGaN結晶が成長するが、早い段階で、図7(b)に示すように、GaN結晶42の表面に安定面42bおよび42cが現れる。安定面42bおよび42cは、いずれもGaN結晶42の成長方向(−c方向)に対して傾斜しているため、結晶成長が進むにつれて、GaN結晶の窒素極性面42aは狭くなっていく。やがて、図7(c)に示すように、GaN結晶の表面全体が安定面42bおよび42cで占められ、窒素極性面42aが消失すると、GaN結晶の[000−1]方向の成長レートは非実用的なレベルにまで低下する。 それに対し、図6に示す構造が形成される場合には、二次GaN結晶34の表面に安定面が出現し難くなるので、窒素極性面の消失を理由とする[000−1]方向の成長レートの鈍化が起こらない。従って、再成長を行うことによって、[000−1]方向の成長レートを実用的なレベル(例えば、100μm/day超)に維持したまま、二次GaN結晶34を、該方向に15mm以上、更には20mm以上、更には25mm以上成長させることができる。再成長は2回以上繰り返すことが可能である。 上記第三の効果についても、当業者であれば図7に示す例との比較によって、容易に理解することができるであろう。図7の例では、GaN結晶42が[000−1]方向に成長するにつれて、そのa軸方向の幅が縮小していく。なぜなら、a軸方向の端部31bに現われる安定面42bが、c軸に対し傾斜しているからである。 それに対し、図6に示す構造が形成されるようにした場合には、二次GaN結晶34のa軸方向の端部31bは壁35と結合する。従って、傾斜した安定面が現れることによる、二次GaN結晶34のa軸方向のサイズ縮小が起こらない。 従って、二次GaN結晶34のa軸方向のサイズは、概ね、一次基板31のa軸方向のサイズに応じて決まる。一次基板31のa軸方向のサイズは、一次GaN結晶31の成長時にシードとして用いるc面GaNテンプレートのサイズに依存する。従って、例えば直径3インチのc面GaNテンプレートを用いて成長させた一次GaN結晶から作製した一次基板31を用いれば、二次GaN結晶34のa軸方向のサイズは2インチ(50mm)あるいはそれ以上とすることが可能である。 二次GaN結晶34のm軸方向のサイズ(厚さ)は、約1mmあるいはそれ以上となる。二次GaN結晶34は、外周部を切断して形を整えるとともに、ラッピングとCMPにより両方の主表面を平坦化することにより、二次基板とすることができる。 c軸方向のサイズが10mm以上の二次基板を作製するには、素材である二次GaN結晶34を[000−1]方向に15mm以上成長させることが望ましい。本発明者等は、上述の方法で二次GaN結晶34を成長させることによって、52mm×52mmの矩形の主表面を有する二次基板を作製し得ることを確認している。ただし、二次基板は、二次GaN結晶を素材としていることから耐熱性が低く、MOCVD法、HVPE法等の気相法で窒化物半導体をエピタキシャル成長させるための基板には適さない。(三次基板の作製) 三次GaN結晶は、二次GaN結晶もしくは二次基板をシードに用いて、アモノサーマル法により成長させる。 三次GaN結晶は、二次GaN結晶を成長させる場合と同様の条件で成長させる。すなわち、好ましく使用し得る原料、溶媒および鉱化剤は、二次GaN結晶を成長させる場合と同様である。また、使用し得る結晶成長装置や、結晶成長時の好ましい条件も、二次GaN結晶を成長させる場合と同様である。 また、三次GaN結晶から、三次基板を切り出す。この際に、m面が主面となるように切り出すことで、主面の面積が大きい三次基板が得られる。 なお、三次基板にアニール処理を行うこともできる。三次基板のアニール処理の条件は、特に限定はされないが、例えば、アンモニア(NH3)および窒素(N2)の混合雰囲気下、1000℃、50時間である。 また、三次基板の第1主表面及び第2主表面の両面の主表面を、ラッピングと、それに続くCMPによって加工変質層を除去して平坦化するのが好ましい。(本実施形態のGaN自立基板の用途) 本実施形態のGaN自立基板の一方の主表面上には、エピタキシャル成長によって、結晶性の良い高品質な窒化物半導体結晶を形成することができる。 また、本実施形態のGaN自立基板の主表面上に、窒化物半導体をエピタキシャル成長させて、結晶性の良い高品質な各種の半導体デバイス構造を形成することができる。半導体デバイスの具体例としては、発光ダイオード、レーザダイオードなどの発光デバイス、整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、HEMT(High Electron Mobility Transistor)などの電子デバイス、温度センサ、圧力センサ、放射線センサ、可視−紫外光検出器などの半導体センサ、SAW(Surface Acoustic Wave)デバイス、振動子、共振子、発振器、MEMS(Micro Electro Mechanical System)部品、電圧アクチュエータなどがある。 さらに、本実施形態のGaN自立基板の主表面上に、バルクGaN結晶をエピタキシャル成長させることもできる。すなわち、本実施形態のGaN自立基板は、バルクGaN結晶を成長させるためのシードとして用いることができる。 さらに、本実施形態のGaN自立基板は、GaN結晶応用製品に利用することもできる。例えば、異常透過効果を利用したX線光学素子である。 以下に、本発明者等が行った実験の結果を記す。ただし、これらの実験で用いられた方法やサンプルの構造によって、本発明は何らの限定を受けるものではない。(実施例1)(1)一次基板の作製 Ga極性面にマスクパターンを形成したc面GaNテンプレート上に、HVPE法で一次GaN結晶を成長させた。その後、一次GaN結晶から切り出してCMP仕上げ等を行い、一次基板を作製した。一次基板は、CMP仕上げされた−c面(N極性面)を有する。(2)二次基板の作製 上記(1)で作製した一次基板の窒素極性面上に、幅100μmのライン形開口部を1100μm周期で有するストライプパターンの成長マスクをTiW合金で形成した。開口部の長手方向、すなわちストライプ方向は、a軸に平行とした。 成長マスクの形成後、一次基板をシードに用いて、アモノサーマル法でGaN結晶(二次GaN結晶)を成長させた。原料には、NH3とGaClを気相反応させる方法で製造した多結晶GaNを用い、鉱化剤にはフッ化アンモニウム(NH4F)およびヨウ化水素(HI)を用いた。 NH4FおよびHIの仕込み量は、NH3に対するフッ素原子のモル比が0.5〜1.5%、NH3に対するヨウ素原子のモル比が1.5〜3.5%となるように、かつ、ヨウ素原子に対するフッ素原子のモル比が0.2〜0.5となるように決定した。 成長条件は、成長容器内の平均温度(結晶成長ゾーンと原料溶解ゾーンの温度の平均値)を590〜615℃、結晶成長ゾーンと原料溶解ゾーンの温度差を10〜25℃、成長容器内の圧力を200〜220MPaとした。成長期間は、再成長のための成長容器交換等に要した時間を除いて、トータルで58日以上とした。 一次基板上にアモノサーマル的に成長したGaN結晶によって、図6に示す構造が形成された。成長したGaN結晶のうち、成長マスクの各開口部上に壁状に成長した部分(二次GaN結晶)から、長辺がa軸に平行で短辺がc軸に平行な長方形の主表面を有する、長さ50〜54mm、幅8〜11mm、厚さ280〜320μmのM面GaN基板(二次基板)を作製した。二次基板の両方の主表面にはCMP仕上げを施した。(3)三次基板の作製 上記手順にて作製した二次基板をシードとして、アモノサーマル法により三次GaN結晶を成長させて三次基板を作製した。 三次GaN結晶は、シードが異なること、NH3に対するフッ素原子とヨウ素原子のモル比がそれぞれ0.5%および1.5%となるように鉱化剤の仕込み量を変えたことと、成長容器内の平均温度が605℃、結晶成長領域と原料溶解領域の温度差が10℃となるようにヒーターを制御したこと、結晶成長時間を16日間としたことを除いて、二次GaN結晶を成長させたときと同様の手順で成長させた。 16日間の成長により得られた三次GaN結晶のサイズは、26mm(a軸方向)×18mm(c軸方向)×4mm(m軸方向)であった。 この三次GaN結晶から、長辺がa軸に平行で短辺がc軸に平行な長方形の主表面を有する、26mm(長さ)×17mm(幅)×470μm(厚さ)の三次基板を切り出した。 上記の通り得られた、三次基板をアニール炉の中に入れた。その後、アニール炉内の雰囲気を空気から窒素に切り替えた。その後、アニール炉内の雰囲気を窒素90体積%、アンモニア10体積%とし、ヒーターの電源を入れて温度調節系のプロクラムを起動して1000℃まで昇温し、1000℃に到達後に50時間保持し、その後、炉内温度が室温になったところで、アニール炉を開けて三次基板を取りだした。 続いて、三次基板の両方の主表面にラッピングおよびCMP処理を行い、長辺がa軸に平行で短辺がc軸に平行な長方形の主表面を有する、26mm(長さ)×16mm(幅)×350μm(厚さ)の三次基板を作製した。(評価) 図8は、評価に使用した三次基板の写真である。評価にあたっては、上記の三次基板をカットしてサイズを12mm(長さ)×12mm(幅)×350μm(厚さ)としたものを使用した。上記手順により製造した図8に示す三次基板を、X線トポグラフ装置を用いて測定した。 X線トポグラフ装置は、リガク社のX−RAYトポグラフィカメラシステム(XRTmicron)を用いた。入射光学系(X線源)は、回転対陰極型管球(MoKα)、多層膜ミラーを用いた。ディテクタ(X線検出器)は、5.4μm画素X線用CCDカメラを用いた。測定は、下記の2種類の光学系の配置を用いて、異常透過による回折トポグラフ像と反射による回折トポグラフ像を測定した。異常透過による回折トポグラフ像は、図2に示すラング法による配置(以下、透過配置とする)により測定した。反射による回折トポグラフ像は、X線源とX線検出器が、GaN自立基板の同一主面側に配置されているベルクバレット法による配置(以下、反射配置とする)により測定した。 図9および図10は、透過配置で異常透過による回折トポグラフ像を測定した。図9は、X線トポグラフ装置で測定した、入射角が7.4°、回折角が14.8°のときの三次基板の異常透過による(002)回折トポグラフ像である。図10は、X線トポグラフ装置で測定した、入射角が12.9°、回折角が25.8°のときの三次基板の異常透過による(110)回折トポグラフ像である。三次基板は、図9及び図10に示すように、12mm×12mm角の基板サイズのうち、異常透過による回折トポグラフ像が主表面のすべての領域で均質(一様)に測定された(ほぼ100%の領域で測定された)。この場合のμtは10.2である。 図11は、反射配置で反射による回折トポグラフ像を測定した。図11は、X線トポグラフ装置で測定した、入射角が6.9°、回折角が91.1°のときの三次基板の反射による(203)回折トポグラフ像である。三次基板は、図11に示すように、12mm×12mm角の基板サイズのうち、反射による回折トポグラフ像が主表面のすべての領域で均質に測定された(ほぼ100%の領域で測定された)。 図12は、X線源が異なるX線トポグラフ装置により、反射配置による反射による回折トポグラフ像を測定した。測定装置には、パナリティカル社のX線回折装置(X'Pert PRO MRD)を用いた。入射光学系は、封入管球(CuKα)、多層膜ミラーを用いた。ディテクタは、55μm画素X線用CCDカメラ(PIXcel3D)を用いた。図12は、入射角が6.9°、回折角が91.1°のときの三次基板の反射による(203)回折トポグラフ像である。三次基板は、図12に示すように、12mm×12mm角の基板サイズのうち、反射による回折トポグラフ像が主表面のすべての領域で均質に測定された(ほぼ100%の領域で測定された)。 三次基板では、12mm×12mm角の基板サイズのうち、基板サイズのすべての領域で異常透過による回折トポグラフ像及び反射による回折トポグラフ像を測定することができた。このように、基板サイズの主表面すべての領域で異常透過による回折トポグラフ像を測定することができる場合には、基板サイズの主表面すべての領域で反射による回折トポグラフ像を測定することができる。(比較例1)(1)下地基板の準備 サファイア基板上に有機金属化学堆積(MOCVD)法により窒化ガリウムを成長させた。ノンドープで主面をc面とするGaNテンプレートを準備し、テンプレート上にSi3N4のマスクを形成し、マスクの開口部を通じるエピタキシャル横方向過度成長でc面−GaN層を成長させて、種基板を準備した。 次いで、HVPE装置を用い、種基板のc面−GaN層が上面に露出するようにサセプター上に配置した。このときのガス導入管の先端と下地基板の距離は、9cmとした。その後、反応室の温度を1010℃まで上げ、GaN単結晶を成長させた。この成長工程においては成長圧力を1.01×105Paとし、GaClガスの分圧を6.55×102Paとし、NH3ガスの分圧を7.58×103Paとした。成長時間は64時間とした。 成長終了後、室温まで降温し、GaN単結晶を得た。種基板上に厚さが8.3mmであって主面がc面であるGaN単結晶(以下、c面−GaN単結晶と称する)が得られた。c面−GaN単結晶の厚みと成長時間から成長速度を算出したところ、130μm/hであった。 得られたc面−GaN単結晶から、主面として、(10−10)面から[0001]方向に−2°、[−12−10]方向に0°のオフ角を有する面となる様に、スライスを行い、小片基板を複数枚得て、下地基板として準備した。(2)下地基板の主表面上にホモ成長させる成長工程 上述したように作製した下地基板の中から長辺20mm×短辺10mmの四角形、および330μmの厚さを有する単結晶GaNを下地基板として用いた。図4に示すような結晶成長装置を用いて下地基板上に窒化物結晶の成長を行った。 比較例1では、下地基板を上述のものとし、成長条件を実施例1の三次基板の作製と同様にして結晶成長を行った。取り出した結晶を観察したところ、m面を主面とする窒化ガリウム結晶が成長しており、そのサイズはc軸11mm×a軸20mm×m軸1.8mm程度であった。 得られた窒化ガリウム結晶からm面を主表面とする板状結晶を複数切り出し、その後、主面であるm面の表裏と4側面をエッチングしてダメージを除去し、更にm面の表裏をミラー研磨して、比較例1のGaN自立基板を得た。(評価) 図13は、比較例1のGaN自立基板の写真である。比較例1のGaN自立基板のサイズは、7mm(長さ)×7mm(幅)×330μm(厚さ)である。 図14は、前述したパナリティカル社のX線回折装置(X'Pert PRO MRD)を用い、図12の測定と同一の測定条件により、反射による回折トポグラフ像を測定した、入射角が6.9°、回折角が91.1°のときの比較例1のGaN自立基板の反射による(203)回折トポグラフ像である。比較例1のGaN自立基板は、図14に示すように、7mm×7mm角の基板サイズのうち、反射による回折トポグラフ像が均質に測定されなかった箇所が存在した。 実施例1において上述したように、基板サイズのすべての領域で異常透過による回折トポグラフ像を測定することができる場合には、基板サイズのすべての領域で反射による回折トポグラフ像を測定することができる。これに対して、比較例1のGaN自立基板は、反射による回折トポグラフ像が均質に測定されなかった箇所が存在した。この場合、比較例1のGaN自立基板は、結晶性が不完全であるため、異常透過による回折トポグラフ像を測定することはできないと言える。なお、上述の考察は、反射による回折トポグラフ像を測定することができれば異常透過による回折トポグラフ像を測定することできるということを示唆するものではない。(比較例2) 比較例1に記載の(1)下地基板の準備と同じ方法で得られた結晶から、主面として、(10−10)面から[0001]方向に0°、[−12−10]方向に0°のオフ角を有する面となる様に、スライスを行い、小片基板を複数枚得た。続いて、主表面であるM面の表裏と4側面をエッチングしてダメージを除去し、更にM面の表裏をミラー研磨して、比較例2のGaN自立基板を得た。比較例2については、比較例1に記載の(2)下地基板の主表面上にホモ成長させる成長工程を設けず、物性等について分析評価を行った。(評価) 図15は、比較例2のGaN自立基板の写真である。比較例2のGaN自立基板のサイズは、7mm(長さ)×16mm(幅)×350μm(厚さ)である。 図16は、比較例1で使用したX線トポグラフ装置を用いて同一条件で測定した、入射角が6.9°、回折角が91.1°のときの比較例2のGaN自立基板の(203)反射による回折トポグラフ像である。比較例2のGaN自立基板は、図16に示すように、7mm×16mm角の基板サイズのうち、反射による回折トポグラフ像が測定されない箇所が筋状に多数存在した。そのため、比較例2のGaN自立基板は、反射による回折トポグラフ像が均質に測定されなかった。 実施例1において上述したように、所定の範囲以上で異常透過による回折トポグラフ像を測定することができる場合には、少なくとも上記所定の範囲で反射による回折トポグラフ像を測定することができる。比較例2のGaN自立基板は、反射による回折トポグラフ像が測定されない箇所が筋状に多数存在した。そのため、比較例2のGaN自立基板は、反射による回折トポグラフ像が均質に測定されなかった。この場合、比較例2のGaN自立基板は、結晶性が不完全であるため、異常透過による回折トポグラフ像を測定することはできないと言える。なお、上述の考察は、反射による回折トポグラフ像を測定することができれば異常透過による回折トポグラフ像を測定することできるということを示唆するものではない。(測定結果) 表1は、X線トポグラフ装置を用いて異常透過による回折トポグラフ像を測定した場合を想定した測定結果、及びX線トポグラフ装置を用いて反射による回折トポグラフ像を測定した測定結果を示している。 実施例1の三次基板のX線トポグラフ装置を用いた異常透過による回折トポグラフ像は基板サイズのすべての領域で均質に測定されたのに対し、比較例1及び2のGaN自立基板のX線トポグラフ装置を用いた反射による回折トポグラフ像の結果から、比較例1及び2のGaN自立基板のX線トポグラフ装置を用いた異常透過による回折トポグラフ像は測定されない。(考察) 実施例1の三次基板並びに比較例1及び2のGaN自立基板の違いを考察すると、実施例1の三次基板は、X線トポグラフ装置を用いた異常透過による回折トポグラフ像を基板サイズのすべての領域で均質に測定することができた。従って、三次基板は、物質の完全性が高いため、主表面に窒化物半導体を良好にエピタキシャル成長させて、結晶性の良い高品質な窒化物半導体を形成することができることは明白である。(本実施形態のGaN自立基板、GaN結晶及びGaN自立基板の生産方法の作用・効果) このようにして、本実施形態のGaN自立基板では、X線トポグラフ装置において異常透過による回折トポグラフ像が測定される。また、本実施形態のGaN自立基板は、X線の吸収係数μにX線の入射面である主表面に対して垂直方向の厚さtを乗じたμtが1より大きい場合に、異常透過による回折トポグラフ像が測定される。さらに、本実施形態のGaN自立基板は、μtが10より大きい場合に、X線トポグラフ装置において異常透過による回折トポグラフ像が測定される。 また、本実施形態のGaN自立基板は、主表面の法線とm軸との間の角度が0度以上20度以下である。 さらに、本実施形態のGaN自立基板では、第1主表面2において少なくとも70%の範囲で異常透過による回折トポグラフ像が測定される。さらに、本実施形態のGaN自立基板では、第1主表面2において少なくとも5mm角の範囲で異常透過による回折トポグラフ像が測定される。 さらに、本実施形態のGaN自立基板では、主表面のサイズが10mm角以上である。さらに、本実施形態のGaN自立基板では、主表面をm面に垂直投影したときの、投影像のc軸方向の寸法が15mm以上である。さらに、本実施形態のGaN自立基板では、主表面をm面に垂直投影したときの、投影像のa軸方向の寸法が25mm以上である。 さらに、本実施形態のGaN自立基板では、厚さが150μm以上である。 さらに、本実施形態のGaN結晶では、当該GaN結晶を加工することによって本実施形態の窒化ガリウム自立基板を作製し得る。 従って、本実施形態のGaN自立基板及びGaN結晶では、物質の完全性が高いため、主表面に窒化物半導体を良好にエピタキシャル成長させて、結晶性の良い高品質な窒化物半導体を形成することができる。 さらに、本実施形態のGaN自立基板の生産方法では、異常透過を利用した透過X線トポグラフィを試験項目に含む検査工程を備え、前記検査工程で許容できない欠陥が見出された製品を不合格品とする。 従って、本実施形態のGaN自立基板の生産方法では、結晶性の良い高品質な各種の半導体デバイス構造を形成することができる窒化ガリウム自立基板のみを出荷することができる。1……GaN自立基板、2……主表面(第1主表面及び第2主表面)、3……端面、4……X線源、5……X線検出器、6……回折面、10……結晶成長装置、11……オートクレーブ、12……成長容器、13……バッフル、14……結晶成長領域、15……原料溶解領域、16……ワイヤー、17……種結晶、18……原料、21……真空ポンプ、22……アンモニアボンベ、23……酸素ボンベ、24……バルブ、25……マスフローメーター、31……一次基板、32……マスクパターン、33……線状開口部、34……二次GaN結晶、35、36……壁、41……GaN結晶シード、42……GaN結晶 X線トポグラフ装置において異常透過による回折トポグラフ像が測定される ことを特徴とする窒化ガリウム自立基板。 X線の吸収係数μにX線の入射面である主表面に対して垂直方向の厚さtを乗じたμtが1より大きい場合に、異常透過による回折トポグラフ像が測定される ことを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム自立基板。 前記μtが10より大きい場合に、X線トポグラフ装置において異常透過による回折トポグラフ像が測定される ことを特徴とする請求項2に記載の窒化ガリウム自立基板。 主表面の法線とm軸との間の角度が0度以上20度以下である ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の窒化ガリウム自立基板。 前記主表面において少なくとも70%の範囲で、異常透過による回折トポグラフ像が測定される ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の窒化ガリウム自立基板。 前記主表面において少なくとも5mm角の範囲で、異常透過による回折トポグラフ像が測定される ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の窒化ガリウム自立基板。 前記主表面のサイズが10mm角以上である ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の窒化ガリウム自立基板。 前記主表面をm面に垂直投影したときの、投影像のc軸方向の寸法が15mm以上である ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の窒化ガリウム自立基板。 前記主表面をm面に垂直投影したときの、投影像のa軸方向の寸法が25mm以上である ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の窒化ガリウム自立基板。 前記厚さtは、150μm以上である ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の窒化ガリウム自立基板。 窒化ガリウム結晶を加工することによって請求項1乃至10のいずれか1項に記載の窒化ガリウム自立基板を作製し得る ことを特徴とする窒化ガリウム結晶。 異常透過を利用した透過X線トポグラフィを試験項目に含む検査工程を備え、 前記検査工程で許容できない欠陥が見出された製品を不合格品とする ことを特徴とする窒化ガリウム自立基板の生産方法。 【課題】結晶性の良い高品質な半導体デバイス構造を形成させ得る窒化ガリウム自立基板を提供する。【解決手段】窒化ガリウム結晶が完全結晶に近くなると、X線の吸収係数による減衰を示さないで、X線が結晶を通過する異常透過現象が現れ、これを利用した透過X線トポグラフィを試験項目とすることにより、検査工程で許容できない欠陥の検出が可能となる。異常透過による回折トポグラフ像が測定される窒化ガリウム自立基板は、例えば、次の手順により製造することができる。(i)c面GaNテンプレートをシードに用いて、HVPE法により一次GaN結晶を成長させて一次基板(c面GaN基板)を作製し、(ii)一次基板をシードに用いて、アモノサーマル法により二次GaN結晶を成長させ、二次基板(m面GaN基板)を作製した後、(iii)二次基板をシードに用いて、アモノサーマル法により三次GaN結晶を成長させ、窒化ガリウム自立基板とする。【選択図】図9