生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_凍結乾燥製剤
出願番号:2014110023
年次:2015
IPC分類:A61K 38/04,A61K 9/19,A61K 47/34,A61K 47/26,A61K 47/10,A61K 47/02,C07K 14/60,A61K 38/00


特許情報キャッシュ

斎藤 晃世 JP 2015224219 公開特許公報(A) 20151214 2014110023 20140528 凍結乾燥製剤 大日本住友製薬株式会社 000002912 松尾 まゆみ 100124637 堀川 環 100136272 伊藤 幸紀 100152467 斎藤 晃世 A61K 38/04 20060101AFI20151117BHJP A61K 9/19 20060101ALI20151117BHJP A61K 47/34 20060101ALI20151117BHJP A61K 47/26 20060101ALI20151117BHJP A61K 47/10 20060101ALI20151117BHJP A61K 47/02 20060101ALI20151117BHJP C07K 14/60 20060101ALI20151117BHJP A61K 38/00 20060101ALI20151117BHJP JPA61K37/43A61K9/19A61K47/34A61K47/26A61K47/10A61K47/02C07K14/60A61K37/02 19 OL 15 4C076 4C084 4H045 4C076AA29 4C076BB11 4C076CC30 4C076DD22Z 4C076DD23 4C076DD26 4C076DD30Z 4C076DD38 4C076DD43 4C076DD67 4C076EE23 4C076FF63 4C076FF65 4C076GG06 4C084AA02 4C084AA03 4C084BA01 4C084BA08 4C084BA19 4C084DB14 4C084MA05 4C084MA44 4C084MA66 4C084NA03 4C084ZC03 4H045AA10 4H045AA30 4H045BA19 4H045CA40 4H045DA46 4H045EA20本発明は、GRF(Growth hormone releasing factor:成長ホルモン放出因子)を含有する安定な凍結乾燥製剤に関する。 GRFは、視床下部から分泌されるペプチドであり、その受容体に作用して下垂体前葉からのGH(Growth hormone:成長ホルモン)の分泌を促進することができる。GRFは水溶液中で化学的分解を受け易く、その原因としてGRFを構成するアミノ酸の27位メチオニンが酸化されやすいことが知られている。 GRFをはじめとするタンパク質やペプチドを患者に提供するためには、製剤として適切な期間、活性を保持する必要がある。しかし、これらの製剤は特に水溶液での安定性を保つことが困難である場合が多いため、しばしば、水溶液よりも良好に活性を保持する凍結乾燥製剤として提供される。そして、使用する場合は、例えば注射用水や生理食塩水等に凍結乾燥製剤を溶解して、水溶液状態に戻して使用する。 GRF製剤は、ヒト血清アルブミンまたはグリシンを添加することにより、GRFの構成アミノ酸であるメチオニンの酸化を防ぎ、安定な凍結乾燥製剤が得られる(特許文献1参照)。また、ヒト血清アルブミンは、GRF製剤において保存容器又は投与に用いられる装置へのGRFの吸着を減少させるためにも用いられる。 ヒト血清アルブミンは、GRF製剤のみならず、血液製剤、抗体、ホルモン、その放出刺激因子、ワクチン等を主たる成分(主薬)とする医療上重要な医薬品に適用(処方)されている添加剤である。ヒト血清アルブミンを添加剤として使用する目的には、例えば血液製剤においては各血液成分の安定化、タンパク質あるいはペプチド類を主薬とするバイオ製剤においてはその主薬成分の安定化、類縁物質生成の抑制、凍結乾燥医薬品における賦形剤、主薬の容器表面への吸着防止等が挙げられる。その効果は、特にタンパク質あるいはペプチド製剤において著しい効果が認められている。 しかしながら、ヒト血清アルブミンは、医療上有効であるものの、その利用に当たっては多くの改良すべき点を持っているのが実情である。まず、ヒト血清アルブミンは、主に献血によって取得されるヒト由来原材料であるためにヒト血液由来の感染症伝播リスクを完全に排除することができず、患者に有害な副作用を引き起こす可能性がある。また、副作用を引き起こし得る夾雑物を最小限にするためには、高度に精製されたヒト血清アルブミンを使用することが必要であり、ヒト血清アルブミンの品質に対して多大な注意を払わなければならない。 さらに、ヒト血清アルブミンを用いた医薬品を含む生物由来製品の製造には、その製造記録の数十年に亘る保管が義務付けられており、製造メーカーには多大な管理負担がある(非特許文献1参照)。また、生物由来製品を扱う医療機関、販売業者、賃貸業者等に対しても、同様に製-品に関する記録及び保存が義務付けられているため多大な管理負担がある(非特許文献2参照)。 加えて、ヒト血清アルブミンの供給量はその時々の献血量に依存することとなるため、ヒト血清アルブミンの供給が、ヒト血清アルブミンを添加剤として使用している医薬品の供給に影響する可能性がある。 近年、ヒト血清アルブミンによる感染性排除並びにヒト血清アルブミンの安定供給を目的として、遺伝子組換えヒト血清アルブミンの開発も顕著である(非特許文献3および非特許文献4参照)。しかし、その生産に利用するピキア酵母に対するアレルギー発現が懸念されるため、遺伝子組換えヒト血清アルブミンの使用においても安全性への配慮が不可欠と考えられる。特開昭62−149623薬事法施行規則(昭和36年厚生省令第1号)第七章 生物由来製品の特例薬事法第68条遺伝子組換え人血清アルブミン(rHSA)製剤(メドウェイ注)の開発(大谷渡、Medical Postgraduates Vol. 46 No.2 2008、94―99)日経バイオ年鑑2012(日経バイオテク編、日経BP社、2011、402−410)本発明の目的は、GRF製剤としてヒト血清アルブミンを用いない代替処方による安定供給を行うこと、すなわちヒト血清アルブミンを用いずに、長期保存が可能なGRFの凍結乾燥製剤を提供することにある。本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、医薬品添加剤として実績が認められている賦形剤(二糖類、アルコール類(マンニトールおよびポリエチレングリコール(PEG))または塩化ナトリウム)と、同様に医薬品添加剤使用実績のある界面活性剤であるポリソルベート80を同時に添加する方法を見出した。 この方法により、ヒト血清アルブミン使用時と同様に長期保存が可能なGRF製剤を製するに至った。具体的に長期保存が可能とは、40℃で4週間保存した後のGRF製剤が、白色の塊状をした粉末(白色塊状粉末)の性状を示し、GRF含量(凍結乾燥製剤調製時のGRFの含量に対する割合:%)が80%以上であることを指す。更には再溶解時のpHがpH3.0以上6.5以下かつ薬液調製時pHの±0.7の範囲であることが望ましい。また、GRFの類縁物質であるメチオニン酸化体A及びBの生成量が少ない(各々のピーク面積%が0.3%以下)ことが望ましい。なお、本製剤の性状「白色の塊状をした粉末(白色塊状粉末)」とは具体的に、白色の凍結乾燥ケーキを形成する医薬品の組成物を示す。 本発明の方法はGRF製剤のみならず、ヒト血清アルブミンを用いて製造されている血液製剤、抗体、ホルモン、その放出刺激因子、ワクチン等の製剤の代替方法として使用できる可能性がある。 すなわち、本発明は、以下のものに関する。[項1] ヒト血清アルブミンを含まないGrowth hormone releasing factor含有凍結乾燥製剤。[項2] Growth hormone releasing factor、ポリソルベート80ならびに二糖類、マンニトール、ポリエチレングリコールおよび塩化ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの賦形剤を含有する項1に記載の凍結乾燥製剤。[項3] ポリソルベート80の含量がGrowth hormone releasing factorの含量に対して0.075〜0.625(W/W)である項2に記載の凍結乾燥製剤。[項4] ポリソルベート80の含量がGrowth hormone releasing factorの含量に対して0.125〜0.5(W/W)である項3に記載の凍結乾燥製剤。[項5] 賦形剤として二糖類を含む項2〜4のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。[項6] 二糖類の含量がGrowth hormone releasing factorの含量に対して25〜300(W/W)である項5に記載の凍結乾燥製剤。[項7] 二糖類の含量がGrowth hormone releasing factorの含量に対して50〜250(W/W)である項6に記載の凍結乾燥製剤。[項8] 二糖類がトレハロース、スクロース、マルトースまたは乳糖である項5〜7のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。[項9] 二糖類がトレハロース、スクロースまたは乳糖である項8に記載の凍結乾燥製剤。[項10] 賦形剤としてマンニトールまたはポリエチレングリコールを含む項2〜4のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。[項11] マンニトールまたはポリエチレングリコールの含量がGrowth hormone releasing factorの含量に対して200〜300(W/W)である項10に記載の凍結乾燥製剤。[項12] マンニトールまたはポリエチレングリコールの含量がGrowth hormone releasing factorの含量に対して250(W/W)である項11に記載の凍結乾燥製剤。[項13] 賦形剤がマンニトールである項10〜12のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。[項14] 賦形剤として塩化ナトリウムを含む項2〜4のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。[項15] 塩化ナトリウムの含量がGrowth hormone releasing factorの含量に対して25〜100(W/W)である項14に記載の凍結乾燥製剤。[項16] 塩化ナトリウムの含量がGrowth hormone releasing factorの含量に対して50(W/W)である項15に記載の凍結乾燥製剤。[項17] 40℃で4週間保存した後の性状が白色の塊状粉末であり、かつGrowth hormone releasing factorの含量が保存当初の80%以上である項1〜16のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。[項18] Growth hormone releasing factorがGrowth hormone放出活性を示すペプチドである項1〜17のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。[項19] Growth hormone releasing factorが配列番号1:Tyr - Ala - Asp - Ala - Ile - Phe - Thr - Asn - Ser - Tyr - Arg - Lys - Val - Leu - Gly - Glu - Leu - Ser - Ala - Arg - Lys - Leu - Leu - Gln - Asp - Ile - Met - Ser - Arg - Glu - Gln - Gly - Glu - Ser - Asn - Gln - Glu - Arg - Gly - Ala - Arg - Ala - Arg - LeuNH2で表されるペプチドの酢酸塩である項1〜17のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。本発明により、ヒト血清アルブミンを用いることなく長期間安定なGRFの凍結乾燥製剤が得られる。 以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。 本発明における「GRF」とはGH放出活性を示すペプチドを表す。通常、アミノ酸が44個、40個、37個等からなる数種類のペプチド(いずれもN末端側に全く同一構造が組み込まれたもの)が知られている(Regulatory Peptides, 6(1983)343−353参照)。好ましくは配列番号1で表されるアミノ酸44個からなるペプチドの酢酸塩である。配列番号1:Tyr - Ala - Asp - Ala - Ile - Phe - Thr - Asn - Ser - Tyr - Arg - Lys - Val - Leu - Gly - Glu - Leu - Ser - Ala - Arg - Lys - Leu - Leu - Gln - Asp - Ile - Met - Ser - Arg - Glu - Gln - Gly - Glu - Ser - Asn - Gln - Glu - Arg - Gly - Ala - Arg - Ala - Arg - LeuNH2 本発明における「ポリソルベート80」とは、非イオン性界面活性剤の一つであり、モノオレイン酸ソルビタン1モルに約20モルの酸化エチレン基がエーテル結合したものである。モノオレイン酸ソルビタンとは無水ソルビトールの水酸基の一部をオレイン酸でエステル化したものを表す。ポリソルベート80のIUPAC名は「ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート」である。通常、医薬品添加剤として用いることができ、水溶性で安全性の高い乳化剤として軟膏剤(クリーム)に用いられるほか、油溶性ビタミンの可溶化剤として注射剤やドリンク剤にも用いられている。本発明におけるポリソルベート80の好ましい含量はGRFの含量に対して0.075〜0.625(W/W)であり、より好ましくは0.125〜0.5(W/W)である。 本発明における好ましい「賦形剤」は、アルコール類、二糖類または塩化ナトリウムであり、より好ましくはマンニトール、ポリエチレングリコール(PEG)、乳糖、マルトース、スクロース、トレハロースまたは塩化ナトリウムであり、さらにより好ましくはマンニトール、乳糖、スクロース、トレハロースまたは塩化ナトリウムである。 本発明における「アルコール類」とは、炭化水素の水素原子を水酸基で置換した化合物を指し、一般式R−OHで表される。但し、水酸基がベンゼンに直接結合したものはフェノール類であってアルコール類ではない。具体的にはマンニトール、ポリエチレングリコール(PEG)等が挙げられ、好ましくはマンニトールである。本発明におけるマンニトールまたはポリエチレングリコール(PEG)の好ましい含量はGRFの含量に対して200〜300(W/W)であり、より好ましくは250(W/W)である。 本発明における「マンニトール」とは、マンノース(グルコースのエピマー)の糖アルコールである。医薬品添加物規格では「D−マンニトール」と表す。市販品としては「マンニット」(三菱商事フードテック)などがある。 本発明における「ポリエチレングリコール(PEG)」とは、一般式‐[‐CH2CH2O-]n‐で示される線状ポリエーテルである。重合条件によって分子量200〜10000以上のものが知られており、液体からロウ状の堅い固体に至るまで種々の異なる性質を持つ。PEGの市販品としては、医薬品添加物辞典2007(日本医薬品添加剤協会編、薬事日報社発行)に多くのものが記載されている。 本発明における「二糖類」とは、単糖二つがグリコシド結合で繋がったものを表し、具体的にはトレハロース、スクロース、乳糖、ラクツロース、マルトース、セロビオース等が挙げられ、好ましくはトレハロース、スクロースまたは乳糖が挙げられる。本発明における二糖類の好ましい含量はGRFの含量に対して25〜300(W/W)であり、より好ましくは50〜250(W/W)である。 本発明における「トレハロース」とは、2つのグルコースが1,1−グリコシド結合により結合した二糖類である。医薬品添加物規格では「トレハロース」と表す。市販品としては「トレハロースG」「トレハロースSG」(共に林原生物化学研究所)、「トレハロース」(旭化成ケミカルズ)がある。 本発明における「スクロース」とはショ糖とも呼ばれ、グルコースとフルクトースがC1の還元性OH基で結合した、還元性を有さない二糖類である。医薬品添加物規格では「白糖」「精製白糖」と表される場合がある。市販品としては「スクロース」(ナカライテスク)、「精製白糖(製造専用)」(和光純薬)などがある。 本発明における「乳糖」とは、乳から得られる天然の二糖類を表し、1個のグルコース単位と1個のガラクトース単位からなる、α―及びβ―乳糖一水和物の混合物である。医薬品添加物規格として「乳糖水和物」と表される場合がある。市販品としては「乳糖一水和物(200M)」(DFE Pharma)、「FAST−FLO」(鍋林)などがある。 本発明における「マルトース」とは、2つのα-グルコースがα-1,4‐グリコシド結合により結合した還元性を有する二糖類である。麦芽糖とも呼ばれる。医薬品添加物規格では「マルトース水和物」と表す。市販品としては「日食結晶マルトース」(日本食品化工)などがある。 本発明における「塩化ナトリウム」とは、NaClの固体である。市販品としては「塩化ナトリウム」(大塚化学)などがある。本発明における塩化ナトリウムの好ましい含量はGRFの含量に対して25〜100(W/W)であり、より好ましくは50(W/W)である。 本発明の凍結乾燥製剤において、凍結乾燥前のGRF溶液のpHは、pH3.0〜6.5であり、好ましくはpH3.2〜4.2である。弱酸性条件の安定性を増加させるための緩衝剤としては、クエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、およびこれらの組み合わせが挙げられ、特にクエン酸塩、リン酸塩等が有効である。pH調整剤としては、一般に医薬品に用いられるpH調整剤から適宜選択し使用することができる。具体的には、塩酸、水酸化ナトリウム等が挙げられる。 本発明の凍結乾燥製剤には、上記添加剤のほか、本発明の効果に影響を与えない範囲で適宜、等張化剤、可溶化剤、溶解補助剤等、医薬品に一般に用いられる添加剤を使用可能である。 本発明の凍結乾燥製剤は、医薬品製造等で一般的に用いられる方法で製造することが可能である。例えば、5〜25℃の一定温度に維持された環境下、適当な容器に注射用水を加え穏やかに撹拌しながら、予め秤量した添加剤、GRFを加え、最終的に所望のpHに調整する。その後、フィルターろ過等により滅菌し、ガラス等のバイアルの容器に充填し、ゴム栓等で半打栓して、凍結乾燥を実施し、必要に応じて窒素封入をすることにより凍結乾燥製剤を得る。 本発明の凍結乾燥製剤を用いて調製されるGRF製剤は、臨床現場において診断または治療の目的で一時的または長期的な投与が期待される。以下に、実施例、比較例等を挙げて本発明の詳細を説明するが、本発明はこれに限定されない。 なお、GRF(Somatorelin Acetate)としては、すべての実施例、比較例において、純度99%に精製された配列番号1で表されるペプチドの酢酸塩を用いた。また、リン酸水素ナトリウム水和物として「リン酸水素二ナトリウム・12水」(ナカライテスク社製)を用い、クエン酸水和物として「クエン酸一水和物(特級)」(ナカライテスク社製)を用い、塩酸として「1mol/L塩酸」(ナカライテスク社製)を用い、水酸化ナトリウムとして「1mol/L水酸化ナトリウム溶液」(ナカライテスク社製)を用い、ポリソルベート80として「ポリソルベート80(HX2)」(日油社製)を用い、トレハロースとして「トレハ」(林原社製)を用い、スクロースとして「スクロース」(ナカライテスク社製)を用い、乳糖として「乳糖一水和物(200M)」(DFE Pharma社製)を用いた。 また、マンニトールとして「マンニット」(三菱商事フードテック社製)を用い、塩化ナトリウムとして「塩化ナトリウム」(ナカライテスク社製)を用い、イノシトールとして「イノシトール」(和光純薬社製)を用い、ソルビトールとして「ソルビトールSP(100M)」(日研化成社製)を用いた。〈比較例1〉 GRF200μg、トレハロース 10mg、リン酸水素ナトリウム水和物 14.8mg、クエン酸水和物 10mgをはかりとり、注射用水を適量添加後溶解し、溶液とした。塩酸または水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH3.2〜4.2に調整し、注射用水を用いて全量を1mLとし、除菌フィルターにてろ過を行った。ガラスバイアルへ充填し、凍結乾燥を行った。窒素封入の後ゴム栓で密封し、キャップシールすることにより凍結乾燥製剤を得た。〈実施例1〜4〉 比較例1と同様に表1で表される処方に従い製造し、実施例1〜4の凍結乾燥製剤を得た。〔試験例1〕 ポリソルベート80によるGRFの安定性評価 比較例1、実施例1〜4の製剤を40℃/75%RHに1週間、2週間及び3週間保存した。凍結乾燥製剤調製時に加えたGRF量(200μg/mL)に対する保存開始時を含め3週間までの保存品に含まれるGRF含量(%)をそれぞれ液体クロマトグラフィーを用いて測定した。結果を表2に示す。ポリソルベート80を添加することでGRF含量の低下が明らかに抑えられた。また、ポリソルベート80を添加した場合と、添加しない場合の類縁物質(GRFのメチオニン酸化体と推測される化合物:メチオニン酸化体A及びメチオニン酸化体B(互いに構造異性体))の生成について、保存開始時の液体クロマトグラフィーを用いて測定した。その測定結果を表3に示す。ポルソルベート80を添加しない場合は、類縁物質の生成量が各々0.3%以上であったが、ポリソルベート80を添加するとそれらの生成量が各々0.3%以下に抑えられた。 以上より、ポリソルベート80を添加した場合には、長期保存が可能な安定性を持つGRFの凍結乾燥製剤が得られたが、添加しなかった場合には好ましい長期保存が可能な安定性を持つGRFの凍結乾燥製剤は得られなかった。〈実施例5〜10〉および〈比較例2〜6〉 比較例1と同様に表4〜6で表される処方に従い製剤を製造し、実施例5〜14および比較例2〜7の凍結乾燥製剤を得た。〔試験例2〕 添加剤によるGRFの安定性評価 実施例5〜14および比較例2〜7の製剤を40℃/75%RHに1週間、3週間および4週間保存した。保存後のサンプルの性状を目視にて確認し、その結果を表7に示す。長期保存が可能なGRF製剤(凍結乾燥製剤)を形成した場合の性状は「白色塊状粉末」である。凍結乾燥製剤調製時に加えたGRF量に対する保存開始時を含め4週間までの保存品のGRF含量(%)を試験例1と同様にそれぞれ測定し、その結果を表8に示す。また、保存後のサンプルを注射用水1mLにより復水し、pHを測定し、その結果を表9に示す。 二糖類であるトレハロース、スクロースおよび乳糖を添加した場合、いずれの濃度であっても、白色塊状粉末の性状を示し、GRFの含量(%)が80%以上であり、復水後も薬液調製時のpHから大きな変動が認められないことから、長期保存が可能なGRF製剤を示す結果が得られた。また、GRF200μgに対して塩化ナトリウムを10mgまたはマンニトールを50mg添加した場合にも、GRFの含量、性状およびpHのいずれも安定であり、長期保存が可能なGRF製剤を示す結果が得られた。しかしながら、その他の添加剤及び塩化ナトリウムとマンニトールの添加量では開始時または保存後のサンプルで性状が変化し、安定で長期保存が可能なGRF製剤(凍結乾燥製剤)を得ることはできなかった。※「−」は、前回保存後測定時または開始時の評価で白色塊状粉末でなかったため未実施。※「*」は開始時の含量試験においてソマトレリン酢酸塩のピークが認められなかったため未実施。※「−」は、性状の試験においてケーキの収縮が認められたため未実施。※「−」は、前回保存後測定時または開始時の評価で白色塊状粉末でなかったため未実施。※「*」は開始時の含量試験においてソマトレリン酢酸塩のピークが認められなかったため未実施。 本発明により、ヒト血清アルブミンを用いなくても長期間安定なGRFの凍結乾燥製剤が得られた。これによりヒト血液由来の感染症伝播リスクを完全に排除することができる。また、医薬品製造における製造記録保管等に関する製造メーカーの負担を排除することができ、さらに、医療機関等での生物由来製品に関する記録及び保管の負担も排除することができる。配列番号1:GRF(Growth hormone releasing factor:成長ホルモン放出因子)ヒト血清アルブミンを含まないGrowth hormone releasing factor含有凍結乾燥製剤。Growth hormone releasing factor、ポリソルベート80ならびに二糖類、マンニトール、ポリエチレングリコールおよび塩化ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの賦形剤を含有する請求項1に記載の凍結乾燥製剤。ポリソルベート80の含量がGrowth hormone releasing factorの含量に対して0.075〜0.625(W/W)である請求項2に記載の凍結乾燥製剤。ポリソルベート80の含量がGrowth hormone releasing factorの含量に対して0.125〜0.5(W/W)である請求項3に記載の凍結乾燥製剤。賦形剤として二糖類を含む請求項2〜4のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。二糖類の含量がGrowth hormone releasing factorの含量に対して25〜300(W/W)である請求項5に記載の凍結乾燥製剤。二糖類の含量がGrowth hormone releasing factorの含量に対して50〜250(W/W)である請求項6に記載の凍結乾燥製剤。二糖類がトレハロース、スクロース、マルトースまたは乳糖である請求項5〜7のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。二糖類がトレハロース、スクロースまたは乳糖である請求項8に記載の凍結乾燥製剤。賦形剤としてマンニトールまたはポリエチレングリコールを含む請求項2〜4のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。マンニトールまたはポリエチレングリコールの含量がGrowth hormone releasing factorの含量に対して200〜300(W/W)である請求項10に記載の凍結乾燥製剤。マンニトールまたはポリエチレングリコールの含量がGrowth hormone releasing factorの含量に対して250(W/W)である請求項11に記載の凍結乾燥製剤。賦形剤がマンニトールである請求項10〜12のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。賦形剤として塩化ナトリウムを含む請求項2〜4のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。塩化ナトリウムの含量がGrowth hormone releasing factorの含量に対して25〜100(W/W)である請求項14に記載の凍結乾燥製剤。塩化ナトリウムの含量がGrowth hormone releasing factorの含量に対して50(W/W)である請求項15に記載の凍結乾燥製剤。40℃で4週間保存した後の性状が白色の塊状粉末であり、かつGrowth hormone releasing factorの含量が保存当初の80%以上である請求項1〜16のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。Growth hormone releasing factorがGrowth hormone放出活性を示すペプチドである請求項1〜17のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。Growth hormone releasing factorが配列番号1:Tyr - Ala - Asp - Ala - Ile - Phe - Thr - Asn - Ser - Tyr - Arg - Lys - Val - Leu - Gly - Glu - Leu - Ser - Ala - Arg - Lys - Leu - Leu - Gln - Asp - Ile - Met - Ser - Arg - Glu - Gln - Gly - Glu - Ser - Asn - Gln - Glu - Arg - Gly - Ala - Arg - Ala - Arg - LeuNH2で表されるペプチドの酢酸塩である請求項1〜17のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。 【課題】ヒト血清アルブミンを用いずに製造することができる、GRF(成長ホルモン放出因子)を含有する安定な凍結乾燥製剤の提供。【解決手段】GRF、ポリソルベート80並びに二糖類、マンニトール、ポリエチレングリコール及び塩化ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの賦形剤を含有する凍結乾燥製剤。ポリソルベート80の含量がGRFの含量に対して0.075〜0.625(W/W)である。二糖類の含量がGRFの含量に対して25〜300(W/W)である。二糖類がトレハロース、スクロース、マルトースまたは乳糖である。【選択図】なし配列表


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