タイトル: | 公開特許公報(A)_微細ダイヤモンドの官能基定量方法 |
出願番号: | 2014103166 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 33/00,C01B 31/06,G01N 31/00 |
山川 章 JP 2015219125 公開特許公報(A) 20151207 2014103166 20140519 微細ダイヤモンドの官能基定量方法 株式会社ダイセル 000002901 鍬田 充生 100090686 阪中 浩 100142594 山川 章 G01N 33/00 20060101AFI20151110BHJP C01B 31/06 20060101ALI20151110BHJP G01N 31/00 20060101ALI20151110BHJP JPG01N33/00 DC01B31/06 ZG01N31/00 YG01N31/00 A 3 1 OL 10 2G042 4G146 2G042AA01 2G042BA20 2G042BB17 2G042CA10 2G042CB06 2G042DA10 2G042EA02 2G042FA20 4G146AA04 4G146AB04 4G146AC27B 4G146AD14 4G146AD28 4G146AD29 4G146AD30 4G146AD37 4G146AD40 4G146CB10 4G146CB12 4G146CB22 4G146CB35 4G146CB36 本発明は、ナノダイヤモンドなどの微細ダイヤモンドの表面官能基を定量するのに有用な方法、この方法を利用して修飾された修飾ダイヤモンド及びその製造方法に関する。 高い硬度及び熱伝導性などを有していることを利用して、ダイヤモンドは広い分野で利用されており、例えば、研磨剤(研磨砥粒)、切削剤などとしてナノダイヤモンドなどの微細なダイヤモンドが使用されている。このような微細なダイヤモンドは、高温高圧法、化学気相蒸着法(CVD法)、爆轟法(デトネーション法、爆発合成法)、超音波キャビテーション法などの種々の方法で合成されている。前記爆轟法では、チャンバー内で炭素元素を含む爆薬を爆発させて高温高圧を発生させるデトネーションにより、炭素をダイヤモンドに変換し、ナノメーターサイズのダイヤモンド(ナノダイヤモンド)を調製している。 WO 2007/001031 A1(特許文献1)には、アダマンタン類、フラーレン類又はカーボンナノチューブなどの炭素原料を含む爆薬組成物を爆発させ、爆発合成により微細ダイヤモンド(粒径0.01〜100μmなどの微細ダイヤモンドなど)を製造することが記載されている。特開2007−269576号公報(特許文献2)には、圧力容器内の空間部略中央に、起爆手段を有する有機系爆薬を冷却剤を介して袋体に収容した状態で配置し、かつ前記袋体の外側空間部を有機系爆薬中の炭素原子に対して不活性なガスで満たした条件下で、前記起爆手段により有機系爆薬を爆発させ、クラスターダイヤモンド(多結晶ダイヤモンド)を合成することが記載されている。特開2006−102656号公報(特許文献3)には、有機化合物を含む液体中で、爆薬を爆発させ、ダイヤモンドを合成する方法が記載されている。 このようにして生成した微細ダイヤモンドは、爆薬成分、雰囲気ガスや後処理などにより種々の官能基を有している。このような官能基は、分散性、反応性などに影響を及ぼすため、官能基を定量することは、微細ダイヤモンドを利用する上で有用である。 J Nanopart Res (2008) 10:69-75(非特許文献1)には、「DNA検出のための超分散ダイヤモンドの機能化」に関し、超分散ダイヤモンドの表面をカルボキシル化又はアミノ化し、DNAを固定化したことが記載され、カルボキシル化又はアミノ化した超分散ダイヤモンドを拡散反射フーリエ変換赤外分光光度法(Diffuse Reflectance Infrared Fourier Transform (DRIFT) spectroscopy)で分析したことが記載されている。 J.AM.CHEM.SOC. 2006, 128, 11635-11642(非特許文献2)には、「空気中での選択的な酸化によるナノダイヤモンド粉末のsp2/sp3炭素比及び表面化学のコントロール」に関し、ラマン分光法でsp2炭素及びsp3炭素を分析し、sp2炭素種が酸化しにくいこと、フーリエ変換赤外分光光度法(FT-IR)を用いて、カルボニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基などを分析したことが報告されている。 しかし、これらのFT-IRを用いても微細ダイヤモンドの官能基は定性的にしか評価できない。特に、表面積が大きなナノメーターサイズのナノダイヤモンドの官能基を定量的に分析できない。一方、微細ダイヤモンドの官能基をより詳細に定量できれば、微細ダイヤモンドの官能基との反応や親和性を利用して修飾できるとともに、修飾の程度も評価でき、ダイヤモンドのさらなる用途拡大が期待される。WO 2007/001031 A1(特許請求の範囲)特開2007−269576号公報(特許請求の範囲)特開2006−102656号公報(特許請求の範囲)J Nanopart Res (2008) 10:69-75J.AM.CHEM.SOC. 2006, 128, 11635-11642 従って、本発明の目的は、微細ダイヤモンドの官能基の濃度を定量できる方法を提供することにある。 本発明の他の目的は、ナノダイヤモンドなどの微細ダイヤモンドであっても、官能基濃度をより精度よく定量できる方法を提供することにある。 本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ナノダイヤモンドとシランカップリング剤とを反応させると、ナノダイヤモンドの官能基の濃度に応じてケイ素原子を導入でき、このケイ素原子の濃度を測定して、ナノダイヤモンドの官能基の濃度に換算すると、前記官能基濃度を精度よく測定できることを見いだし、本発明を完成した。 すなわち、微細ダイヤモンドの官能基を定量する本発明の方法では、微細ダイヤモンドと、アルコキシシリル基、シラノール基及びハロシリル基から選択された少なくとも一種の加水分解縮合性基を有するシランカップリング剤とを反応させ、反応混合物から反応生成物を分離し、分離した反応生成物(分離精製した反応生成物)のケイ素濃度を測定し、このケイ素濃度に基づいて微細ダイヤモンドの官能基濃度を算出する。例えば、ナノダイヤモンドの表面官能基とシランカップリング剤とを反応させ、ナノダイヤモンドに結合したシランカップリング剤の量を測定することにより、ナノダイヤモンドの表面官能基量を間接的に定量できる。 なお、シランカップリング剤は、加水分解縮合性基と、アミノ基、ウレイド基、エポキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基およびエチレン性不飽和結合基から選択された少なくとも一種の反応性基とを含んでいてもよい。より具体的には、微細ダイヤモンドとしてのナノダイヤモンドの比表面積とシランカップリング剤の最小被覆面積とに基づいて、ナノダイヤモンドに対するシランカップリング剤の添加量を算出し、算出された量的割合でシランカップリング剤とナノダイヤモンドとを不活性溶媒中で反応させ、反応混合物から反応生成物を分離し、分離した反応生成物のケイ素濃度を定量分析し、この分析結果に基づいてナノダイヤモンドの官能基濃度を算出してもよい。 なお、本明細書において、「微細ダイヤモンド」とは、多結晶ダイヤモンドを含め、平均粒子径が100μm以下のダイヤモンド粒子又は粉体を意味する。 本発明では、シランカップリング剤との反応を利用するため、微細ダイヤモンドの官能基の濃度を定量できる。特に、ナノダイヤモンドなどの微細ダイヤモンドであっても、官能基濃度をより精度よく定量できる。図1は実施例でナノダイヤモンドAを用いて調製した修飾ナノダイヤモンドのFT−IRチャートである。図2は実施例でナノダイヤモンドBを用いて調製した修飾ナノダイヤモンドのFT−IRチャートである。図3は実施例でナノダイヤモンドCを用いて調製した修飾ナノダイヤモンドのFT−IRチャートである。図4は実施例でナノダイヤモンドDを用いて調製した修飾ナノダイヤモンドのFT−IRチャートである。図5は実施例でナノダイヤモンドEを用いて調製した修飾ナノダイヤモンドのFT−IRチャートである。 微細ダイヤモンドの種類は、特に制限されず、種々のダイヤモンド、例えば、単結晶ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、針状結晶ダイヤモンド、双晶ダイヤモンド(双晶多結晶ダイヤモンド)などであってもよい。また、微細ダイヤモンドは、鋭角な角を有していてもよく、多面体状又は球状であってもよく、針状結晶(例えば、長さ/直径の比が10〜1000程度の針状結晶)などであってもよい。微細ダイヤモンドの一次粒子の平均粒子径は、1〜200nm(例えば、1〜100nm)、好ましくは2〜50nm(例えば、2〜20nm)、さらに好ましくは3〜10nm程度であってもよい。また、多結晶ダイヤモンドなどの一次粒子の集合体又は凝集体では、平均粒子径は、例えば、2nm〜100μm(例えば、3nm〜50μm)、好ましくは5nm〜1μm(例えば、10〜100nm)程度であってもよい。本発明は一次粒子径が小さなナノダイヤモンド(例えば、一次粒子径が1〜10nm、好ましくは2〜5nm程度のナノダイヤモンド)に好適に適用される。 なお、微細ダイヤモンドは、高温高圧法、化学気相蒸着法(CVD法)、衝撃圧縮法、爆轟法(デトネーションdetonation法、爆発合成法)、超音波キャビテーション法などで調製されたダイヤモンドであってもよい。本発明は、上記いずれの方法で製造された微細ダイヤモンドにも適用できるが、官能基が生成しやすいCVD法又は爆発合成法で調製された微細ダイヤモンド、特にナノダイヤモンドに好適に適用される。なお、爆発合成法では、公知の方法、例えば、チャンバー内で、炭素原子又は炭素成分を含む爆薬を、負の酸素バランスで爆発させることにより、微細ダイヤモンド(特にナノダイヤモンド)を合成できる。炭素成分としては、炭化水素環を有する化合物、例えば、アレーン化合物、縮合アレーン化合物、橋架け環式炭化水素化合物、芳香族炭化水素単位を有する高分子などが例示でき、爆薬の成分としては、例えば、トリニトロトルエン、テトラニトロメチルアニリン、テトラメチレンテトラニトロアミン、ペンタエリスリトールテトラナイトレートなどが例示できる。 ナノダイヤモンドなどの微細ダイヤモンドの表面には、種々の官能基、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基などが存在する。本発明は、これらの官能基、特にカルボキシル基及び/又はヒドロキシル基をシランカップリング剤で化学修飾して、前記官能基量を定量化するのに有効である。 シランカップリング剤は、微細ダイヤモンドの表面官能基と反応可能であればよく、このようなシランカップリング剤は、アルコキシシリル基、シラノール基、ハロシリル基などの加水分解縮合性基を有している。アルコキシシリル基としては、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシリル基、イソプロポキシシリル基、ブトキシシリル基などのC1−4アルコキシシリル基が例示できる。ハロシリル基のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子が例示できる。好ましい加水分解縮合性基は、C1−4アルコキシシリル基(メトキシシリル基、エトキシシリル基)、シラノール基である。なお、シラノール基は、アルコキシシリル基やハロシリル基の加水分解による反応過程で生成してもよい。 さらに、前記加水分解縮合性基とともに、種々の反応性基、例えば、アミノ基、ウレイド基、エポキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基、エチレン性不飽和結合基などの反応性基を有するシランカップリング剤が使用できる。なお、シランカップリング剤は、1分子中に1又は2つの非反応性基(例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基など)を有していてもよい。 加水分解縮合性基を有するシランカップリング剤としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのテトラC1−4アルコキシシラン;メチルトリメトキシシランなどのアルキルC1−4アルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどのアリールC1−4アルコキシシラン;アルキルヒドロキシシランやアルキルハロシラン、例えば、メチルトリシラノール、ジメチルジシラノールなどのジ又はトリC1−4シラノール、メチルトリクロロシランなどのC1−4アルキルトリクロロシラン、アリールヒドロキシシランやアリールハロシランなどであってもよい。 反応性基を有するシランカップリング剤のうち、アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、2−アミノエチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノC2−4アルキル−C1−4アルキル−ジC1−4アルコキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシランなどのアミノC2−4アルキルアミノC2−4アルキル−トリC1−4アルコキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルメチルジメトキシシランなどのアミノC2−4アルキルアミノC2−4アルキル−C1−4アルキル−ジC1−4アルコキシシランなどが挙げられる。 ウレイド基含有シランカップリング剤としては、例えば、3−ウレイドイソプロピルトリメトキシシシラン、3−ウレイドイソプロピルトリエトキシシランなどのウレイドC2−4アルキルC1−4アルコキシシランなどが挙げられる。 エポキシ基含有シランカップリング剤としては、例えば、2−グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシジルオキシC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン、3−(2−グリシジルオキシエトキシ)プロピルトリメトキシシランなどの(グリシジルオキシC1−4アルコキシ)C2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシランの(グリシジルオキシC1−4アルコキシ)−C2−4アルキル−ジC1−4アルコキシシランなどが挙げられる。 カルボキシル基含有シランカップリング剤としては、例えば、2−カルボキシエチルトリメトキシシラン、3−カルボキシプロピルトリメトキシシランなどのカルボキシC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシランなどが挙げられる。 メルカプト基含有シランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプトC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシランなどが挙げられる。 イソシアネート基含有シランカップリング剤としては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシランなどが挙げられる。 エチレン性不飽和結合基含有シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基を有する化合物、例えば、ビニルトリメトキシシランなどのビニルトリC1−4アルコキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシC2−4アルキルC1−4アルコキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどの(メタ)アクリロキシC2−4アルキル−C1−4アルキルC1−4アルコキシシランなどが挙げられる。 シランカップリング剤は、加水分解縮合性基を有していればよく、この加水分解縮合性基を利用して微細ダイヤモンドの官能基(例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基など)と反応させることができる。なお、シランカップリング剤の反応性基を微細ダイヤモンドの官能基(例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基など)と反応させてもよいが、加水分解縮合性基と微細ダイヤモンドの官能基との反応を利用すると、微細ダイヤモンドの官能基に対する反応性が高く、微量の官能基であっても有効に定量分析できる。特に、本発明は、微細ダイヤモンドのカルボキシル基及び/又はヒドロキシル基の定量に有効である。 微細ダイヤモンドに対するシランカップリング剤の使用量(添加量)は、微細ダイヤモンドの官能基よりも過剰量であればよく、例えば、微細ダイヤモンド100重量部に対して、1〜50モル(例えば、2.5〜25モル)、好ましくは3〜10モル(例えば、3.5〜7モル)程度であってもよく、3.8〜5モル程度であってもよい。前記シランカップリング剤の使用量(モル数)は加水分解縮合性基のモル数であってもよい。 また、シランカップリング剤の使用量(添加量)は、微細ダイヤモンドの比表面積などと関連づけることができ、例えば、微細ダイヤモンドの比表面積とシランカップリング剤の最小被覆面積とに基づいて算出できる。例えば、微細ダイヤモンドの重量(g)をWND、微細ダイヤモンドの比表面積(m2/g)をSS、シランカップリング剤の最小被覆面積(m2/g)をMS、シランカップリング剤の分子量をMWとしたとき、シランカップリング剤の添加量(g)ASは下記式(1)(2)に従って算出できる。 AS=[WND×SS]/MS (1) MS=6.02×1023×13×10−20/MW (2) なお、前記比表面積SS(m2/g)はBET法などで測定できる。 このような式で算出されたシランカップリング剤の使用量は、微細ダイヤモンドの表面にシランカップリング剤が単分子層を形成する量に対応させることができる。 微細ダイヤモンドとシランカップリング剤とは、溶媒の非存在下で反応させてもよいが、通常、反応に不活性な溶媒中で反応させる。反応溶媒は、シランカップリング剤の種類に応じて選択でき、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルカノール類)、炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化アルカンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチルなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのアルカノン類;シクロヘキサノンなどのシクロアルカノン類)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリルなど)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、スルホン類(例えば、スルホランなど)などが例示できる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、溶媒としては、シランカップリング剤の加水分解性縮合基が自己縮合しない溶媒が使用される。 溶媒は、シランカップリング剤の反応形態に応じて選択できる。例えば、シランカップリング剤の加水分解縮合性基と微細ダイヤモンドの官能基との反応において、溶媒としては、水及び/又は水溶性溶媒(アルコール類、環状エーテル類、アセトン、アミド類など)が使用できる。特に、少なくとも水を含む溶媒を用いると、シランカップリング剤の反応性基と微細ダイヤモンドの官能基との反応を抑制しつつ、加水分解縮合性基と前記官能基とを有効に反応できる。 反応は、不活性ガス(窒素、ヘリウムガスなど)の雰囲気中、常温〜120℃(好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは50〜100℃)程度で行うことができる。 このような反応で、シランカップリング剤で修飾された微細ダイヤモンド(修飾ダイヤモンド)が生成する。反応終了後、反応混合物からの反応生成物(修飾ダイヤモンド)の分離は、慣用の方法、例えば、必要により反応混合物を濃縮し、濾過、遠心分離などにより修飾ダイヤモンドを回収し、洗浄、乾燥などにより精製することにより行うことができる。 そして、反応混合物から分離した反応生成物(修飾ダイヤモンド)のケイ素濃度を定量的に測定又は分析する。ケイ素濃度(ケイ素含有量)は、例えば、ICP発光分析(高周波誘導結合プラズマ発光分析)、原子吸光光度法、ICP質量分析法などにより定量分析できる。 このようにして測定されたケイ素濃度(又は定量分析結果)に基づいて、微細ダイヤモンドの官能基濃度を算出できる。すなわち、シランカップリング剤と微細ダイヤモンドの表面官能基とが反応することから、微細ダイヤモンド表面に結合しているシランカップリング剤の量を測定できれば、間接的に表面官能基量を求めることができる。 より具体的には、シランカップリング剤1モルに対してケイ素原子Siが1モル含まれていることを利用して、修飾ナノダイヤモンドのケイ素含有量(重量%)をモル数(モル%)に換算し、微細ダイヤモンドの単位重量(g)当たりのシランカップリング剤のモル数を算出すると、このモル数が微細ダイヤモンドの官能基の濃度に対応する。そのため、前記モル数を微細ダイヤモンドの重量で除することにより、微細ダイヤモンド1g当たりの表面官能基量を求めることができる。詳細な算出式については実施例の式(3)を参照できる。 本発明の方法では、製造方法の異なる微細ダイヤモンド(ナノダイヤモンドなど)の表面官能基量の相違、表面処理による表面官能基量の変化などを客観的に測定できる。そのため、微細ダイヤモンドの用途を拡大する上で有用である。 本発明は、微細ダイヤモンドの官能基とシランカップリング剤とが反応し、修飾された微細ダイヤモンド(例えば、反応性基を有する修飾ダイヤモンド)も包含する。このような修飾ダイヤモンドは、前記と同様の方法で製造できる。 以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 なお、以下の実施例において、ナノダイヤモンドとして爆発合成法により合成された以下のナノダイヤモンドを用いた。 ナノダイヤモンドA:VoxD(Carbodeon社製) ナノダイヤモンドB:ナノアマンド(ナノ炭素研究所社製) ナノダイヤモンドC:(株)ダイセル製 ナノダイヤモンドD:(株)ダイセル製 ナノダイヤモンドE:(株)ダイセル製 なお、ナノダイヤモンドC及びDについては、界面活性剤を使用してナノダイヤモンドを分散させ、乾燥して使用した。 前記ナノダイヤモンド0.2gと、精製水17mlと、3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.17gとを、パーソナル有機合成装置(ケミステーション PPS−25W)で常圧、60℃で8時間撹拌した。反応終了後の反応混合液の全てにおいて、ダイヤモンドが沈殿した。なお、3−アミノプロピルトリエトキシシランの使用量は、ナノダイヤモンドのBET比表面積がほぼ300m2/gであったことから、前記式(1)に基づいて算出した。 ナノダイヤモンドA,C及びEについては反応終了後、3000rpmで遠心分離して分離し、ナノダイヤモンドB及びDについては、反応終了後、15000rpmで遠心分離して分離した。遠心分離したナノダイヤモンドを反応液と同量のメタノールで洗浄する操作を3回繰り返し、120℃で終夜に亘り真空乾燥し、修飾ナノダイヤモンドを得た。なお、ナノダイヤモンドCは乾燥後に小石状の塊を形成した。 得られた修飾ナノダイヤモンドをFT−IRで分析したところ、いずれのサンプルでも2920〜2930cm−1にCH由来のピークが検出されたため、3−アミノプロピルトリエトキシシランが結合していたことが分かった。図1〜図5に、修飾ナノダイヤモンドのFT−IRチャートを示す。 得られた修飾ナノダイヤモンドを高周波誘導結合プラズマ発光分析(ICP発光分析)に供し、ケイ素含有量を測定したところ、表1に示す結果を得た。 そして、下記式(3)に基づいて、修飾ナノダイヤモンドのケイ素含有量からナノダイヤモンドの表面官能基濃度を算出した。結果を表1に示す。 CF=[CSi×(WND+WSC)]/[WND×28.055] (3) 式中、CFはナノダイヤモンド1g当たりの表面官能基量(モル)を示し、CSiはケイ素含有量(重量%)、WNDはナノダイヤモンド重量(g)、WSCはシランカップリング剤重量(g)を示す。 上記表に示されるように、ナノダイヤモンドの官能基量に応じてシランカップリング剤が結合した修飾ダイヤモンドを得ることができ、ナノダイヤモンドの官能基を定量的に評価できる。 本発明では、微細ダイヤモンドの官能基の濃度を定量できるため、微細ダイヤモンドの用途を拡大できる。例えば、微細ダイヤモンドは、研磨剤砥粒(研削、ラッピング、ポリッシングなどの砥粒(特に、超精密加工用研磨砥粒)など)、減摩剤、潤滑剤、増強剤、コーティング剤、表面改質剤などとして利用できる。また、半導体デバイス、電子放出デバイス、紫外線発光素子、センサー(バイオセンサーなど)などの電子デバイスにも利用できる。特に、反応性基を有する微細ダイヤモンド(修飾ダイヤモンド)は、反応性基を利用して、各種有機材料(反応性基に対して反応性の反応性官能基を有する有機材料)や前記反応性官能基を有する(又は反応性官能基が導入された)無機材料と反応させ、ダイヤモンドの優れた特性(高硬度、高い熱伝導性など)を有機又は無機材料に導入でき、耐久性の高い精密研磨剤、電子デバイスなどに利用できる。また、加水分解縮合性基を有する微細ダイヤモンド(修飾ダイヤモンド)は、加水分解縮合性基との反応を利用して、各種無機材料又は無機部材(シリコン、アルミナなどの基板など)にダイヤモンドの優れた前記特性を付与し、精密研磨剤、電子デバイスなどとして利用できる。 微細ダイヤモンドの官能基を定量する方法であって、微細ダイヤモンドと、アルコキシシリル基、シラノール基及びハロシリル基から選択された少なくとも一種の加水分解縮合性基を有するシランカップリング剤とを反応させ、反応混合物から反応生成物を分離し、分離した反応生成物のケイ素濃度を測定し、このケイ素濃度に基づいて微細ダイヤモンドの官能基濃度を算出する方法。 シランカップリング剤が、加水分解縮合性基と、アミノ基、ウレイド基、エポキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基およびエチレン性不飽和結合基から選択された少なくとも一種の反応性基とを含む請求項1記載の方法。 微細ダイヤモンドがナノダイヤモンドであり、ナノダイヤモンドの比表面積とシランカップリング剤の最小被覆面積とに基づいて、ナノダイヤモンドに対するシランカップリング剤の添加量を算出し、算出された量的割合でシランカップリング剤とナノダイヤモンドとを不活性溶媒中で反応させ、反応混合物から反応生成物を分離し、分離した反応生成物のケイ素濃度を定量分析し、この分析結果に基づいてナノダイヤモンドの官能基濃度を算出する請求項1又は2記載の方法。 【課題】微細ダイヤモンドの官能基の濃度を定量できる方法を提供する。【解決手段】ナノダイヤモンドなどの微細ダイヤモンドとシランカップリング剤とを反応させ、反応混合物から反応生成物を分離し、分離した反応生成物のケイ素濃度を測定し、このケイ素濃度に基づいて微細ダイヤモンドの官能基濃度を算出する。【選択図】図1