タイトル: | 公開特許公報(A)_偏光OCTの偏光データを処理する方法および装置 |
出願番号: | 2014093169 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G01N 21/17,A61B 3/10 |
佐藤 眞 杉田 充朗 ステファン・ツォッター ミハエル・ピルヒャー クリストフ・ヒッツェンベルガー JP 2014232103 公開特許公報(A) 20141211 2014093169 20140428 偏光OCTの偏光データを処理する方法および装置 キヤノン株式会社 000001007 大塚 康徳 100076428 高柳 司郎 100112508 大塚 康弘 100115071 木村 秀二 100116894 下山 治 100130409 永川 行光 100134175 佐藤 眞 杉田 充朗 ステファン・ツォッター ミハエル・ピルヒャー クリストフ・ヒッツェンベルガー JP 2013096531 20130501 G01N 21/17 20060101AFI20141114BHJP A61B 3/10 20060101ALI20141114BHJP JPG01N21/17 630A61B3/10 R 13 8 OL 25 2G059 2G059AA06 2G059BB12 2G059EE02 2G059EE09 2G059FF02 2G059GG01 2G059GG02 2G059HH01 2G059HH06 2G059JJ05 2G059JJ13 2G059JJ15 2G059JJ17 2G059JJ19 2G059JJ20 2G059JJ22 2G059KK04 2G059MM01 2G059MM03 2G059MM10 本発明は、偏光感受型光コヒーレンストモグラフィ(polarization sensitive optical coherence tomography、以下、偏光OCT)の偏光データを処理するための方法及び装置に関する。 多波長光波干渉を利用した光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:以下、OCT)は、サンプル(特に眼底)の断層画像を高分解能に得ることができる。近年、眼科用OCT装置において眼底組織の形状をイメージングする通常のOCT画像に加えて、眼底組織の光学特性の一つである偏光パラメータをイメージングする偏光OCT画像の取得が研究されている。 偏光OCT(polarization sensitive OCT)装置は、偏光パラメータを利用して偏光OCT画像を構成し、眼底組織の特性計測やセグメンテーションを行うことができる。偏光OCTは、サンプルを観察する測定光に円偏光に変調した光を用い、干渉光を2つの直交する直線偏光として分割して検出し、偏光OCT画像を生成する(非特許文献1参照)。また偏光パラメータの一つとして、2つの偏光成分間の位相差であるリターデーション(retardation)を画像化することが可能である。このリターデーションは、緑内障診断において視神経繊維層の変化を検出する上で有効である。 さらに同文献においては複数の偏光OCT画像を用い、OCTで用いられるコヒーレント光特有のスペックルノイズを低減する方法が開示されている。この方法によれば、偏光OCTで得られるリターデーションを平均化することでスペックルノイズが低減されるため、結果として得られるリターデーション画像の粒状性は大きく改善される。 リターデーションは光が媒体を通過する際に観察される進相軸と遅相軸の間の位相差として定義される。そのため、進相軸および遅相軸のOCT装置の光軸に対する角度(以下、軸オリエンテーション)を考慮した平均化が有用である。しかし、前述の非特許文献1に開示された方法によれば、リターデーションは軸オリエンテーションを参照することなく、2つの偏光成分の比の逆正接(arctangent)から計算される(リターデーション=arctan(I1/I2))。そのため、リターデーションの値は必然的に0から90°の範囲の値を取る。この方法は、2つの偏光成分の強度のみを用いており、ノイズはある強度レベル(強度レベルはゼロ又は正の値をとる)を有する。この理由から、ノイズの平均化はゼロに収束せず、残余あるいはオフセットをもたらす。このオフセットは、低いリターデーション値の場合に、画像上の好ましくないアーチファクトの原因となる。こうして、リターデーションがほぼ0となるような小さい信号が観察される場合においてさえ、ノイズはリターデーションが非ゼロの値(リターデーションオフセットともいう)を有する原因となる。換言すれば、偏光成分の強度を用いてリターデーションを計測することにより(一般的な方法がそうしているように)、それらの強度におけるノイズは、リターデーション値におけるアーチファクトの原因となる。E. Goetzingeretal,“Speckle noise reduction in high speed polarization sensitive spectral domain optical coherence tomography”,OpticsExpress.19(15),14568-14584(2011)E. Goetzingeretal,“Polarization maintaining fiber based ultra-high resolution spectral domain polarization sensitive optical coherence tomography”, Optics Express. 17(25),22704-22717(2009) 本発明の一実施形態によれば、複数の偏光OCT像を用いて、リターデーション値におけるアーチファクトの発生を低減するデータ処理方法および装置が提供される。 本発明の一態様によれば、偏光データを処理する方法が提供される。該方法は、 偏光干渉断層計による偏光データの処理方法であって、 計測対象のサンプル(Eb)から反射した光から複数の偏光データのセットを取得する取得工程と、 前記偏光データを振幅および位相を含んだ表現に変換する変換工程と、 前記表現で表された前記偏光データを平均化して平均化されたデータのセットを生成する平均化工程と、を有する。 本発明の更なる特徴は、以下に添付の図面を参照して例示される実施形態の記載から明らかとなろう。本発明の実施形態によるデータ処理方法のフローチャート。本発明の実施形態による偏光OCT撮影装置の構成説明図。断層像を示す説明図。断層像およびデータ取得位置の説明図。断層像およびデータ取得位置の説明図。SLO像の説明図。データ処理部分のフローチャート。データを用いて処理された例示的な画像を示す図。本発明の実施形態によるデータ処理を説明する図。本発明の実施形態による複素平面上で表現された処理の説明図。本発明の実施形態による複素平面上で表現された処理の説明図。本発明の実施形態による複素平面上で表現された処理の説明図。本発明の実施形態による複素平面上で表現された処理の説明図。第1の実施形態による平均処理の結果例を示す図。第1の実施形態による平均処理の結果例を示す図。データ取得の他の例を説明する図。データ取得の他の例を説明する図。データ取得の他の例を説明する図。第4の実施形態による、位置合わせを含むデータ処理方法のフローチャート。Bスキャンの位置合わせの説明図。Bスキャンの位置合わせの説明図。実施形態によるデータ変換ステップのフローチャート。平均されたストロークベクトルを計算する処理のフローチャート。 本発明に係るデータ処理方法は、対象を人の眼を含む臓器や組織に限定することなく他のサンプルに適用することが可能で、係る撮影装置としては、例えば、眼科装置や内視鏡等であり、またこれらに限られるものではない。以下、本発明の適用形態の一例としての眼科装置について、図面を用いて詳細に説明する。 (第1の実施形態) 図1は実施形態に係る偏光データ処理方法のフローチャート、図2は実施形態に係るデータ処理装置213を含む、偏光感受型の光干渉断層計である偏光OCT(polarization sensitive OCT)撮影装置200の概略図である。まず図2を参照して偏光OCT撮影装置200の構成を説明し、次に本実施形態に係るデータ処理装置213の動作について図1のフローチャートを用いて説明する。 本実施形態の偏光OCT撮影装置200は、偏光OCTシステムとデータ処理装置を含み、偏光OCTシステムから得られる偏光データを処理することにより、偏光断層像を構成する。図2において光源201から射出された測定光は偏光子202により直線偏光に変換され、ファイバカプラ203に入力される。光源201は、低コヒーレント光源であるSLD光源(Super Luminescent Diode)であり、例えば、中心波長850nm、バンド幅50nmの光を出射する。光源201としてSLDを用いたが、ASE光源(Amplified Spontaneous Emission)等、低コヒーレント光が出射できる光源であれば何れでも良い。 ファイバカプラ203は例えば90:10の分岐比(coupling ratio)を有するもので、測定光を当該比率で分岐し、コリメータ204、λ/4波長板205、参照ミラー206を含む参照光路(分岐比率90)およびコリメータ207、λ/4波長板208、スキャナミラー209を含むサンプル光路(分岐比率10)に導光する。 参照光路に導光された測定光は22.5°回転した状態で設置されたλ/4波長板205を通過し、参照ミラー206で反射して再びλ/4波長板205を通過して直線偏光となり、再びファイバカプラ203に導光される。一方サンプル光路に導光された測定光は、45°回転した状態で設置されたλ/4波長板208を介して円偏光となる。円偏光は、スキャナミラー209で反射し、計測対象としての被検体である被検眼Ebに入射される。 さらに測定光は網膜Erで反射し、再びスキャナミラー209、λ/4波長板208を介してファイバカプラ203に導光され、参照光路を経て到来する測定光と干渉する。スキャナミラー209は測定光を不図示の制御装置によりXおよびY方向に対して走査するよう制御されるもので、測定の結果は網膜を2次元的に走査した画像として得ることができる。なお、以降の説明では、図3に示すように計測光の方向に沿ったラインから取得されたデータをAスキャン、複数のAスキャンをX軸若しくはY軸方向に並べて構成したデータをBスキャンと呼ぶ。 ファイバカプラ203において生じた干渉光は、偏光ビームスプリッタを有するファイバカプラ210において水平偏光成分および垂直偏光成分に分離され、各々は分光器211および212に導光される。分光器211および212は回折格子、ラインカメラ等を有しており、導光されたそれぞれの干渉光は回折格子によりスペクトル成分へ分離され、スペクトル成分はさらにラインカメラにより電気信号に変換されて水平偏光のスペクトルデータおよび垂直偏光のスペクトルデータとしてデータ処理装置213に出力される。 データ処理装置213は、本実施形態による偏光データ処理装置として機能するものであり、PC(Personal Computer)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のデジタル回路を用いて実現することが出来る。また214および215は、それぞれ、データ処理結果を表示するための、たとえば液晶モニタ等の表示装置、キーボードあるいはマウス等のユーザの指示を入力する入力装置である。 以上により、本実施形態における偏光OCT撮影装置200はSD(Spectral Domain)方式のOCTを構成するが、本発明はSD方式に限定されるものではない。すなわち、少なくとも、SS(Swept Source)方式或いはTD(Time Domain)方式による撮影装置に対しても、本発明の主旨を変更することなく適用することができる。 本実施形態においてデータ処理装置213は、不図示のPCに搭載されるCPU(Central Processing Unit)が、当該PCに接続されたメモリに格納されたデータ処理プログラムを実行することにより実現される。また、偏光OCT撮影装置200全体の動作制御もCPUが装置制御プログラムを実行することにより行われるものとし、以降の説明においては撮影制御装置と呼ぶこととする。 一方、半導体レーザ216からは、その中心波長が光源201と異なる第2の測定光が射出され、穴あきミラー217、当該第2の測定光が眼底においてX方向およびY方向の2軸に走査可能なスキャナミラー218、ダイクロイックミラー219を介して被検眼Ebに入射される。 この第2の測定光も網膜Erで反射し、再びダイクロイックミラー219、スキャナミラー218を経て穴あきミラー217で反射され、検出器220に入射される。第2の測定光は、眼底の平面像を測定光の2次元走査により得るためのものであり、撮影制御装置に入力されて当該平面像が生成される。図5はこの平面像を例示したものであり、以降の説明ではSLO(scanning laser ophthalmoscopy)像と呼ぶこととする。 撮影制御装置は偏光OCTのデータを取得する際、並行してSLO像を取得する。またSLO像から血管等の構造を抽出して眼底の動きを検出し、偏光OCTの測定光が常に網膜上の同じ位置を走査するよう、スキャナミラー209を制御する。 次に、図1および図4A、図4Bを参照してデータ処理装置213の動作を説明する。 図4A、4Bは本実施形態において撮影制御装置の制御により取得されるデータから、後述する処理によって生成されるサンプルの構造を表すデータを模式的に図示したものである。図4Aに示すように、本実施形態においてはW本のAスキャン(深さH)から構成されるBスキャンがN回繰り返して取得される。しかしながら、Y方向の走査は行われないため、図4Bに示すように、Y軸上は同じ位置の異なる時刻のBスキャンがN枚取得されることとなる。但し、図4A、図4Bにおいて1枚のBスキャンは水平偏光および垂直偏光のデータを含むものとする。 まずステップS101においてデータ処理装置213は内部カウンタnを1に初期化する。後述するように、内部カウンタnは1回のBスキャンの処理毎に1ずつ増加し、Nになるまで処理を繰り返すためのものである。 次にステップS102においてn番目のBスキャンが1枚入力される。この時のBスキャンは撮影制御装置が予めN枚分のBスキャンを取得してメモリに保存しておいてもよいし、Bスキャン毎に繰り返してデータを取得するようにしてもよい。ここでn枚目のBスキャンは、水平偏光のスペクトルデータSn0と垂直偏光のスペクトルデータSn1から構成される。 次にステップS103において、入力したスペクトルデータに対して平均化のための変換操作が行われる。以下に図6を参照してステップS103における処理を説明する。 ステップS601においてデータ処理装置213は上記スペクトルデータの各々を、以下の数1に示すような振幅および位相を含む断層信号に変換する。 ここで、An0、An1はn番目のBスキャンにおける水平および垂直偏光による断層信号の振幅を、Φn0、Φn1は位相を表す。 ここでW、H、Nはそれぞれ、図4A、図4Bに示すように、各々、BスキャンあたりのAスキャン数、Aスキャンの長さおよびBスキャンの数である。上記変換はSD方式のOCTにおいてスペクトルデータを断層信号に変換する際の処理を、水平偏光のスペクトルデータSn0と垂直偏光のスペクトルデータSn1に対して適用することで達成される。より詳細には、例えば非特許文献2に開示されている方法によることが出来るため、説明は省略する。 次にステップS602において、データ処理装置213は(数1)に示す2つの偏光に係る断層信号同士を除算することにより、n番目のBスキャンにおける、リターデーションおよび軸オリエンテーションを含む複素数データCnを次式により計算する。 一方、リターデーションδnおよび軸オリエンテーションθnは次式で定義される。 したがって、Cnは次式で示すようにリターデーションδnと軸オリエンテーションθnを含むデータとなる。 以上のように、Cnは、(数3)に示されるように少なくとも2つの異なる偏光方向に係る偏光データ同士を除算することにより得られる。Cnからは、(数4)(数5)に示されるように、以下の2つのパラメータが抽出される。1.「位相リターデーション」は、電界ベクトルの方向が遅相軸に沿ったビームと進相軸に沿ったビームとの間の位相の相違である。このパラメータは、(数3)のCn値に、arctan関数の形式で含まれ、(数6)ではδで示されている。2.直接に測定される2つの複素信号は位相値Φ0とΦ1を含む。それらの位相差ΔΦ=Φ1−Φ0は、光の軸オリエンテーションθをエンコードする。したがって、実際に、除算の結果に含まれる2つのパラメータは、リターデーションδnと軸オリエンテーションθnである。 そして、Cnは、サンプルのリターデーションおよび軸オリエンテーションを実質的に含む複素数データとなる。すなわち、複素数データはリターデーションおよび軸オリエンテーションに関連する情報を含む。このように計算されたCnはデータ処理装置213内の不図示のメモリに一次記憶される。 次に再び図1のフローチャートに戻り、ステップS104において、現在のBスキャンの番号が1増加され、ステップS105において更新されたnが総Bスキャン数Nより大きいかどうかが判断される。 nが総Bスキャン数を超えない場合、処理は再びステップS102に戻り前述した処理が行われ、nが総Bスキャン数を超えた場合、処理はステップ106に移る。 ステップ106において、データ処理装置213は全てのBスキャンから計算したCn(n=1、…、N)を平均したC−を計算する。 次にデータ処理装置213は次式により平均化されたリターデーションδ−および軸オリエンテーションθ−を計算する。 ここで、平均化されたリターデーションδ−および軸オリエンテーションθ−は、であり、通常の断層像と同様にX軸およびZ軸から成る平面にリターデーション像および軸オリエンテーション像として表示することができる。すなわち、リターデーション像では位置(x、z)における画素の値をδ−(x、z)、軸オリエンテーション像ではθ−(x、z)とすればよい。 データ処理装置213は(数9)により計算したリターデーションδ−および軸オリエンテーションθ−から各々の像を生成して表示装置214に出力する。 図7は表示装置214の本実施形態における表示形態を例示したものである。表示装置214は表示領域701に702〜705のサブ領域を有している。サブ領域702にはSLO像にカーソル706が重畳表示されている。カーソル706はN組のBスキャンを取得した位置を示すものであり、この位置における平均された軸オリエンテーションθ−およびリターデーションδ−がサブ領域705および704に表示されている。 また、当該位置における輝度断層像がサブ領域703に表示される。この輝度断層像は、たとえば、(数2)に示す断層信号の振幅An0、An1から、√(A0(x、z、n)2+A1(x、z、n)2)を用いて各画素の値を計算することにより得られる。 図8は、以上説明したデータ処理装置213の構成とデータの流れを表したものである。図8において断層信号生成装置801は水平偏光のスペクトルデータSn0と垂直偏光のスペクトルデータSn1を、それぞれ断層信号An0exp(iΦn0)およびAn1exp(iΦn1)に変換して出力する(ステップS601)。これらの断層信号は除算器802により除算され、(数3)に示す複素数データCnが平均演算器803に出力される(ステップS602)。平均演算器803は(数7)、(数8)に基づいて平均化されたリターデーションδ−およびオリエンテーションθ−を計算し、出力する(ステップS106)。 以上説明した実施形態によれば、次のような利点を得ることが出来る。 (数1)で示す2つの断層信号は次のように表現される。 ここでInは被写体の反射率、ΦnCは参照光との干渉による両偏光成分に共通の位相項である。ここで(数3)に示すように2つの断層信号同士を除算することによって共通項である被写体の反射率と位相がキャンセルされ、(数6)で示すようにリターデーションと軸オリエンテーションのみを含む信号となる。 図9Aは(数6)で表されるCnを複素平面上で表したものであり、本実施形態において計算される平均値C−は図9B〜図9Dに示す黒点で表される。図9Bはノイズが小さい状態を表している。一方、図9Cは図9Bよりもノイズが大きい状態、図9Dは殆どノイズのみの状態を表しており、この状態では平均化の結果としてリターデーションの値はほぼ0となる。 しかし、非特許文献1に開示される従来技術によれば、次式に示すようにリターデーションの値は2つの偏光成分の振幅から計算される。そのため、図9Dのような条件においてもリターデーションは非ゼロの一定の値を持ち、これがアーチファクトとなって微小なリターデーションを有するヘンレ繊維層などの構造の描出が困難となる。 一方、本実施形態によれば平均化を、2つの偏光成分の振幅および位相を含む複素数の形式に変換した後に行うため、微小なリターデーションの値を精度よく計算することが可能となる。 また、図10A、図10Bは平均化の回数Nと平均化されたリターデーションの値δの関係を表した例である。同図によれば、従来技術によると平均化フレームの数が増えるにしたがってリターデーションの平均値が徐々に低下するのに対し、本実施形態の方法によればN=10以降はほぼ一定の値を示し、適切な平均化が行われていることが分かる。 なお、複素数データCnは(数3)に限定されるものではなく、次式により求めてもよい。 この場合、C−、平均化されたリターデーションδ−および軸オリエンテーションθ−は、以下のようになる。 (第2の実施形態) 前述した第1の実施形態では2つの断層信号を除算して平均値を算出しているが、各々を平均化することも可能である。 すなわち、(数1)で表される各々の断層信号の各々を平均してリターデーションおよび軸オリエンテーションを計算する。この場合、データ処理装置213は平均化された断層信号を、により計算する。 なお、(数14)により平均を計算し、Nが大きい場合、位相Φn0とΦn1が測定毎の位相変動によって独立に変化する可能性があるため、信号成分が相殺されてSNRが低下する可能性がある。したがって、データ取得に要する時間がある値を超える場合は第1の実施形態で説明した方法による平均化が望ましい。 一方、第1の実施形態では除算を各データ毎に行う必要があったが、本実施形態では平均計算前に除算を用いないため、比較的計算負荷が小さくて済むメリットがある。したがって、Nの値によっては本実施形態の方法を選択することでより高速に平均計算を行うことが可能となる。 また、(数14)を変形して断層信号を平均化することも可能である。この場合、一つの断層信号の位相が無視され、他方の位相が保持される。例えば、(数14)における位相項exp(iΦn0)は1に等しいとし、他方の位相項exp(iΦn1)をexp(i(Φn1-Φn0))と置く。この変更により、信号成分が相殺されてSNRが低下することを回避することが出来る。これは、被検体又はサンプルが動く場合や、計測時に振動が存在する場合に有効である。 (第3の実施形態) 前述した第1の実施形態では、図4Bに示すように網膜上の同じ位置を走査してN回データが取得され、空間的に同位置にあるN個のデータに対して平均化が行われている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。以下に説明するように、異なる空間的位置で取得された偏光データのセットを用いるようにしてもよい。 図11Aはその一例を示したものである。図11AにおいてBスキャンは111で示すように、視神経乳頭112を中心として放射状に配置され、合計4つの方向の各々に対してN枚のBスキャンが取得されている。この例においては各方向において第1の実施形態で説明した方法により平均化が行われる。 また図11Bおよび図11Cに平均化を空間的な領域を対象にして行う例を示す。本実施形態において偏光OCT撮影装置200は、図11Bに示すように、複数のBスキャンをY方向にずらしながら取得し、データ処理装置213は視神経乳頭を含む測定領域113に対して以下に説明する方法でデータ処理を行う。 図11Cは測定領域113の詳細を示す図である。同図において視神経乳頭112を中心とする直径D1およびD2の2つの同心円114および115を所定の角度Aで区切った領域Rを平均化の対象領域とする。D1、D2は、本実施形態では例えば2mm、3mmであり、Aは1°とするが、これらの値は視神経線維層の計測を行うために必要な精度に応じて決定すればよい。 この場合、平均化は領域Rに属するAスキャンを対象にして行われ、対象となる断層信号は次のようになる。 本実施形態において平均化される複素数データCrは、となり、データ処理装置213は領域Rに対する平均化されたリターデーションδ−および軸オリエンテーションθ−を、領域Rに含まれるAスキャンの数をMとして、により計算する。 次にデータ処理装置213は(数8)と同様に次式により平均化されたリターデーションδ−および軸オリエンテーションθ−を計算する。 ここで、平均化されたリターデーションδ−と軸オリエンテーションθ−の式は以下のように表される。 以上の処理をRの位置を同心円114、115に囲まれる領域に沿って動かし、各位置において平均値を求めることにより、視神経乳頭の周囲のリターデーションおよびオリエンテーションの分布を計測することができる。 (第4の実施形態) 本発明は、偏光OCTのデータの補間に対しても適用することが可能である。以下、本実施形態では、第1の実施形態で説明したように複数のBスキャンを平均化する際に用いられる、データ位置合わせに対して適用する例を説明する。 図12は本実施形態における撮影制御装置によるデータ処理のフローチャートである。図1に示したフローチャートに対してステップS121、S122およびS123が追加されているものであり、重複する説明は省略する。また、図13A、図13Bは、それぞれ最初のBスキャンとn番目のBスキャンのテンプレートマッチングのためのテンプレート領域Tを説明する図である。 ステップS121において、データ処理装置213は直前のBスキャン(n番目のBスキャン)が2番目以降のものかどうかを判断し、1番目のBスキャンの場合はステップS103に、2番目以降のBスキャンの場合はステップS122に処理を進める。 次にステップS122において、データ処理装置213は直前に入力したBスキャン(n番目のBスキャン)と1番目(最初)のBスキャンとの間の相対的な位置ずれ量を計測する。まず、図13A、図13Bに示されるように、1番目のBスキャンを用いてテンプレート領域Tが設定される。テンプレートマッチング用のテンプレート領域Tを、図13A、図13Bに示される中心窩Mのような幾何的特徴をBスキャン内に有するように決定することが好ましい。 本実施形態においては、テンプレートマッチングは、断層信号の2つの偏光成分A0(x、z、n)およびA1(x、z、n)から次式によって計算される輝度断層画像Inを用いて行われる。 次にデータ処理装置213はテンプレートマッチングを適用して、n番目のBスキャンInにおいてテンプレート領域Tに最も相関の高い領域Rを検出し、領域Tと領域Rの相対的なずれ量ΔXおよびΔYを2つのBスキャン間の位置ずれとして検出する。 ステップS123において、データ処理装置213はn番目のBスキャンInに対し、2つのBスキャンにおいて同一の被写体が同じ座標上に位置するように、ΔXおよびΔYの値に基づいて位置合わせを行う。この時、一般的にΔXおよびΔYは整数値ではないため、n番目のBスキャンのデータに対しては補間処理を行う必要がある。 以下に、補間方法としてバイリニア法を用いる場合について説明するが、例えば、補間に用いるデータの範囲や重みを変更することによってバイキュービック法のような、他の補間方法にも本発明を適用することが出来る。 データ処理装置213は、ΔXおよびΔYを用いた位置合わせ後、Bスキャンデータの各座標値x、zを計算し、次に、複素数データCn^を計算する。複素数データCn^は、次式に示される座標変換の後の修正された複素数データCnである。 ただし、w1〜w4はバイリニア補間の重み係数で、次式で計算される。 C^(x2、z2、n)は、位置補正後(位置合わせ後)の座標におけるn番目のBスキャンの位置(x2、z2)における複素数データに対応する。このように計算された複素数データは、(数23)により平均化され、第1の実施形態と同様に(式8)に従って平均化されたリターデーションδ−および軸オリエンテーションθ−が計算される。 本実施形態において(数21)の複素数データは第1の実施形態に基づいて計算されている。しかしながら、第2の実施形態に記載した方法など、複素数データを生成する別の計算を適用してもよい。 (第5の実施形態) 上述した実施形態では、偏光データを表すのにJonesベクトルを利用した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、たとえば、Stokesベクトル表現を適用することもできる。 基本的な処理の流れは他の実施形態に適用された図1と同様であるので、以下、異なるステップについて説明する。 図14は本実施形態によるデータ変換ステップS103を示すフローチャートである。 ステップS1401において、データ処理装置213は、StokesベクトルSVnを、平均化されるべきn番目の偏光データとして計算する。StokesベクトルSVnは、数24により算出される。 ステップS1402において、データ処理装置213は、正規化StokesベクトルSVn’を、数25にしたがって計算する。 ステップS106において、データ処理装置213は、平均化Stokesベクトルを、図15のフローチャートにしたがって計算する。ステップS1501において、データ処理装置213は、中間平均化StokesベクトルSVintを数26にしたがって計算する。 次に、データ処理装置213は、中間平均化ベクトルSVintに再び正規化を適用し、(数27)にしたがって平均化StokesベクトルSV−を出力する。 平均化されたリターデーションδ−は、(数14)に示される二つの平均化された振幅A0−とA1−を用いて計算される。また、これらの振幅は、(数24)にしたがってStokesパラメータから算出され得る。(数25)および(数27)にしたがう2つの正規化処理により、平均化されたStokesベクトルSV−は、1に等しい偏光データの強度に関して正規化される。 したがって、データ処理装置213は、平均化されたリターデーションδ−を以下の式により算出する。 同様にして、平均化された軸オリエンテーションθ−が、(数24)に基づいて、平均化されたStokesベクトルパラメータを用いて、以下のように算出される。 本実施形態において、平均化はStokesベクトルに対して実行される。Stokesベクトルは、サンプルにより後方散乱された光の偏光状態を表す。(数26)にしたがって平均化が為された直後に、得られたベクトルは、(数24)で与えられた各パラメータ間の関係を必ずしも維持しない。そのことは、(数28)にしたがったリターデーションの計算に望ましくないオフセットを取り込む。しかし、(数27)の正規化により関係が回復され、そのようなオフセットの取り込みは回避される。 (第6の実施形態) 平均化処理の前の正規化は望ましいが、本発明において、他の実施も可能である。本実施形態では、偏光データの強度による重み付け平均を適用する。 本実施形態において、データ処理装置213は、ステップ1402をスキップする。したがって、中間平均化StokesベクトルSVintは(数30)にしたがって計算され、その後は第5の実施形態と同様のステップが実行される。 第5の実施形態とは異なり、各Stokesパラメータは偏光データの強度に関して正規化されていない。換言すると、(数30)におけるStokesパラメータは、偏光データの強度に依存し、したがって、概念的に重みづけされる。 しかしながら、第2の正規化処理であるステップS1502は、上述のようにStokesパラメータ間の関係を回復する。したがって、平均化されたリターデーションと軸オリエンテーションは正しく計算される。 (数24)におけるStokesベクトルの第1の要素は計算の必要が無く、平均化の前には正規化が実行されないので、本実施形態において計算効率が向上する。 (第7の実施形態) 本発明は非特許文献1に開示された方法と組み合わせることによっても効果的に実施することが出来る。すなわち、図9Bに示すようにノイズが少なく複素数データCnのばらつきが小さい場合は、従来の方法によってリターデーションおよび軸オリエンテーションを計算してもその誤差は小さい。したがって、まず(数1)に示す断層像信号に基づいて信号強度を計算して、それが閾値を超える場合は次式に示す非特許文献1に開示された方法によって平均値を計算し、そうでない場合は本発明による方法へ切り替えるようにしてもよい。 ただし、MODE(X)はXのヒストグラムのモード値であり、断層信号の信号強度は、その振幅の二乗平均平方根から計算すればよい。また、閾値は健常者の視神経繊維層の強度分布を予め解析しておき、その平均から設定することが出来る。 (他の実施形態) 本発明の実施形態は、システム又は装置のコンピュータが、上述した本発明の実施形態の1つ以上の機能を実行するために、格納媒体(たとえば、コンピュータ読み取り可能な格納媒体)に記録されているコンピュータ実行可能な命令を読み出し、実行することによっても実現され得るし、あるいは、システム又は装置のコンピュータが上述した本発明の実施形態の1つ以上の機能を実行するために、たとえば格納媒体(たとえば、コンピュータ読み取り可能な格納媒体)に記録されているコンピュータ実行可能な命令を読み出し、実行することにより実行される方法によっても実現され得る。コンピュータは、1つ以上の中央処理ユニット(CPU)、マイクロプロセッサユニット(MPU)、あるいは他の回路を備えてもよいし、分離されたコンピュータまたは分離されたコンピュータプロセッサのネットワークを含んでもよい。コンピュータ実行可能な命令は、ネットワークまたは格納媒体から提供される。格納媒体としては、たとえば、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、分散コンピューティングシステムのストレージ、光ディスク(たとえば、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルー例ディスク(BD)(登録商標)、フラッシュメモリデバイス、メモリカードなどの一つ以上を含み得る。 本発明について典型的な実施形態を参照して説明したが、本発明はこれら開示された典型的な実施形態に限定されるものではない。以下の請求の範囲は、すべてのそのような変形や等価的な構造および機能を包含するように、最も幅広い解釈を与えられるものである。 偏光感受型の光干渉断層計による偏光データの処理方法であって、 計測対象のサンプル(Eb)から反射した光から複数の偏光データのセットを取得する取得工程と、 前記偏光データを振幅および位相を含んだ表現に変換する変換工程と、 前記表現で表された前記偏光データを平均化して平均化されたデータのセットを生成する平均化工程と、を有することを特徴とする偏光データの処理方法。 前記変換工程は、少なくとも2つの互いに異なる方向に係る偏光データ同士を除算する計算を含み、前記計算は前記2つの偏光データ間の位相差を、前記表現に含まれる位相パラメータへ変換することを特徴とする請求項1に記載の偏光データの処理方法。 前記変換する工程は、少なくとも2つの異なる方向に係る偏光データ同士を除算する計算を含み、前記計算は前記サンプルのリターデーションおよび軸オリエンテーションを含む複素数を生成することを特徴とする請求項1または2に記載の偏光データの処理方法。 前記偏光データのセットは、異なる時刻に取得された偏光データを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の偏光データの処理方法。 前記偏光データのセットは、異なる空間的位置で取得された偏光データを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の偏光データの処理方法。 前記変換工程は、前記偏光データのセットとしてのStokesベクトルのセットの計算を含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光データの処理装置。 前記平均化工程は、平均化された偏光データとして平均化Stokesベクトルを生成することを含み、 更に、偏光データの強度に関してノルム1の平均化されたStokesベクトルを生成する正規化工程を含む、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の偏光データの処理装置。 偏光感受型の光干渉断層計の偏光データの処理装置であって、 計測対象のサンプル(Eb)からの複数の偏光データのセットを取得する取得手段と、 前記偏光データを振幅および位相を含んだ表現に変換する変換手段と、 前記表現で表された前記偏光データを平均化して平均化されたデータのセットを生成する生成手段と、を有することを特徴とする偏光データの処理装置。 前記変換手段は、少なくとも2つの異なる方向に係る偏光データ同士を除算する計算を実行し、前記計算は前記偏光データ間の位相差を、前記表現に含まれる位相パラメータに変換することを特徴とする請求項8に記載の偏光データの処理装置。 前記変換手段は、少なくとも2つの異なる方向に係る偏光データ同士を除算する計算を実行し、前記計算は前記サンプルのリターデーションおよび軸オリエンテーションを含む複素数データを生成することを特徴とする請求項9に記載の偏光データの処理装置。 前記取得手段は、異なる時刻に偏光データを取得することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の偏光データの処理装置。 前記取得手段は、異なる空間的位置で偏光データを取得することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の偏光データの処理装置。 請求項1乃至7のいずれか1項に記載された偏光データの処理方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。 【課題】複数の偏光OCT像を用いて、リターデーション画像におけるアーチファクトの発生を回避し、ノイズを低減する。【解決手段】 偏光感受型の光干渉断層計は、計測対象のサンプル(Eb)から反射した光から複数の偏光データのセットを取得し、取得した偏光データを振幅および位相を含んだ表現に変換し、変換された表現で表された偏光データを平均化して平均化されたデータのセットを生成する。【選択図】図8