タイトル: | 公開特許公報(A)_温度、pH応答性を有する共重合体、およびリポソーム複合体 |
出願番号: | 2014091883 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C08F 220/28,A61K 47/32,A61K 9/127,A61K 45/00,A61K 8/14,A61K 8/81,A61K 8/55,A61K 8/63,A61K 47/28,A61K 47/24 |
山▲崎▼ 奈穂子 粂井 貴行 河野 健司 小宮 博之 JP 2015209494 公開特許公報(A) 20151124 2014091883 20140425 温度、pH応答性を有する共重合体、およびリポソーム複合体 株式会社ファンケル 593106918 公立大学法人大阪府立大学 505127721 日油株式会社 000004341 長谷部 善太郎 100122954 山田 泰之 100162396 中村 理弘 100194803 山▲崎▼ 奈穂子 粂井 貴行 河野 健司 小宮 博之 C08F 220/28 20060101AFI20151027BHJP A61K 47/32 20060101ALI20151027BHJP A61K 9/127 20060101ALI20151027BHJP A61K 45/00 20060101ALI20151027BHJP A61K 8/14 20060101ALI20151027BHJP A61K 8/81 20060101ALI20151027BHJP A61K 8/55 20060101ALI20151027BHJP A61K 8/63 20060101ALI20151027BHJP A61K 47/28 20060101ALI20151027BHJP A61K 47/24 20060101ALI20151027BHJP JPC08F220/28A61K47/32A61K9/127A61K45/00A61K8/14A61K8/81A61K8/55A61K8/63A61K47/28A61K47/24 10 OL 33 4C076 4C083 4C084 4J100 4C076AA19 4C076EE12A 4C076FF70 4C083AD091 4C083AD491 4C083AD571 4C083CC01 4C084AA17 4C084NA13 4J100AJ02Q 4J100AL08P 4J100AL08R 4J100BA08P 4J100BA08R 4J100CA05 4J100DA01 4J100JA53 本発明は、温度、pH応答性を有する共重合体、およびこの共重合体とリポソームとを複合化したリポソーム複合体に関する。 リポソームとはリン脂質からなる脂質二重膜の単層、または複数層からなるカプセル構造のことをいう。リン脂質の分子は松葉のような形をしていて、リン酸部分が親水性、脂肪酸エステル部分が疎水性という2つの性質を併せ持っているので、水に放たれると、疎水性の部分が内側に集まり、親水性の部分が外側に向くことで、球形のリポソームを形成する。リポソームは、水溶性の薬効成分をその親水性の部分に、油溶性の薬効成分をその疎水性の部分に閉じこめることができる。リポソームの脂質二重膜中には水相が閉じこめられており、この水相に薬剤を含ませ、目的病巣部位で薬剤を放出させる、ドラッグ・デリバリー・システムへの応用が主に医学の分野で注目されている。また、化粧品分野において、皮膚に塗布した時の環境の変化に応じて、有効成分を放出し、効果的に皮膚内に浸透させることができると期待されている。一般的に、環境応答性をコントロールする技術開発において、光、UV、湿度、圧力等が制御因子として知られているが、定量性に乏しいことに加え、これらの因子は安全性の面で化粧品への応用が困難であった。 特許文献1では、感熱応答性部分および疎水性部分を有する高分子化合物と、ポリエチレングリコールとがリポソーム膜に担持され、40〜45度程度に加熱すると内包物を放出する温度感受性リポソームが提案されている。特許文献2では、カチオン性両親媒性分子と、アニオン性両親媒性分子及び両イオン性両親媒性分子の少なくとも1種と、を含む、酸性pH環境下で内包物を保持し、塩基性pH環境下で内包物を放出するpH応答性リポソームが提案されている。特開2006−306794号公報特開2010−209012号公報 本発明は、特定の温度、pHで親−疎水変化を起こす共重合体、および、この共重合体と複合化することで、特定の温度、pHで内包物を放出することのできるリポソーム複合体を提供することを課題とする。 上記課題を解決するための手段は以下のとおりである。1.下記一般式(1)で表される単量体に由来する繰り返し単位(a)、カルボキシル基含有単量体に由来する繰り返し単位(b)、下記一般式(2)で表される単量体に由来する繰り返し単位(c)を有する共重合体。(式(1)中、R1は水素、またはメチル基を表し、R2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜4の自然数を表す。)(式(2)中、R3は水素、またはメチル基を表し、R4は炭素数8〜20のアルキル基、または炭素数8〜20のアルケニル基を表し、mは1〜6の自然数を表す。)2.繰り返し単位(a)〜(c)の合計100モル%に対して、繰り返し単位(a)が40〜89モル%、繰り返し単位(b)が10〜50モル%、繰り返し単位(c)が1〜10モル%であることを特徴とする1.に記載の共重合体。3.前記カルボキシル基含有単量体が、メタクリル酸であることを特徴とする1.または2.に記載の共重合体。4.重量平均分子量が1,000〜1,000,000であることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の共重合体。5.1.〜4.のいずれかに記載の共重合体が、リポソームの脂質二重膜に担持されていることを特徴とするリポソーム複合体。6.前記脂質二重膜と前記共重合体との重量比が、50:50〜99:1であることを特徴とする5.に記載のリポソーム複合体。7.前記脂質二重膜が水素添加リン脂質を含むことを特徴とする5.または6.に記載のリポソーム複合体。8.前記脂質二重膜がステロールを含むことを特徴とする5.〜7.のいずれかに記載のリポソーム複合体。9.内部に薬効成分を包含することを特徴とする5.〜8.のいずれかに記載のリポソーム複合体。10.1.〜4.のいずれかに記載の共重合体とリポソームを含む皮膚外用剤、化粧料、食品、医薬品、または生化学用試薬。 本発明の共重合体の水溶液は、特定の温度、pHで親水性から疎水性へと相転移して、透明な液体が懸濁液に変化するため、環境応答性因子として利用することができる。特に、共重合体を脂質二重膜に担持させたリポソーム複合体は、特定の温度、pHで共重合体が疎水性に変化することにより、リポソームの脂質二重膜が破壊されて内包物を放出することができる。リポソーム複合体は、特定の温度、pHで内包物を放出できるため、化粧料、皮膚外用剤、薬剤、生化学用試薬等に用いることができる。共重合体水溶液の透過率を示す図。共重合体水溶液の透過率を示す図。共重合体の吸熱ピークを示す図。リポソーム複合体のpH応答性を示す図。リポソーム複合体のpH応答性を示す図。リポソーム複合体の温度応答性を示す図。リポソーム複合体のpH応答性を示す図。本発明のリポソーム複合体で処置したHeLa細胞の共焦点レーザー顕微鏡画像。比較例のリポソーム複合体で処置したHeLa細胞の共焦点レーザー顕微鏡画像。リポソーム複合体の温度応答性を示す図。リポソーム複合体のpH応答性を示す図。リポソーム複合体の温度応答性を示す図。リポソーム複合体のpH応答性を示す図。水素添加リン脂質含有リポソーム複合体の温度応答性を示す図。フィトステロール含有リポソーム複合体の温度応答性を示す図。「共重合体」 本発明は、下記一般式(1)で表される単量体に由来する繰り返し単位(a)、カルボキシル基含有単量体に由来する繰り返し単位(b)、下記一般式(2)で表される単量体に由来する繰り返し単位(c)を有する共重合体に関する。(式(1)中、R1は水素、またはメチル基を表し、R2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜4の自然数を表す。)(式(2)中、R3は水素、またはメチル基を表し、R4は炭素数8〜20のアルキル基、または炭素数8〜20のアルケニル基を表し、mは1〜6の自然数を表す。) 本発明の共重合体の構造は特に制限されず、ブロック共重合体であってもランダム共重合体であってもよいが、ランダム共重合体のほうが好ましい。 また、本発明の共重合体の分子量は、特に制限されないが、通常、重量平均分子量で1,000〜1,000,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が1,000未満であると、凝集時の塊が小さくリポソームの脂質二重膜を効率的に破壊できない。重量平均分子量が1,000,000より大きいと粘度が高くなりすぎて取り扱い性に劣る。また、水への溶解性が低下する。重量平均分子量は、より好ましくは5,000〜300,000、さらに好ましくは10,000〜100,000、最も好ましくは50,000〜80,000である。 繰り返し単位(a)は、共重合体に温度応答性を付与する。これは、繰り返し単位(a)中のエチレングリコール構造に由来する。エチレングリコール構造は、低温では周囲の水分子と水和して安定であるが、高温では水和していた水分子が失われて疎水的となるため、共重合体が凝集する。繰り返し単位(a)のR2は炭素数1〜4のアルキル基を示すが、水への溶解度が高いことから炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。 繰り返し単位(b)は、カルボキシル基を有し、共重合体にpH応答性を付与する。カルボキシル基は、中性水溶液、及びアルカリ性水溶液中では脱プロトン化して−COO−となっているため、親水性が高い。また、静電反発して凝集しにくいため、共重合体は水に溶解する。これに対し、弱酸性水溶液中ではプロトン化して−COOHとなり親水性が低下し、また、静電反発もなくなるため、共重合体が凝集する。 さらに、本発明の共重合体において、繰り返し単位(b)は、温度応答性にも影響を与える。脱プロトン化しているカルボキシル基(−COO−)は、繰り返し単位(a)、(c)のエチレングリコール構造中の酸素原子に存在する非共有電子対と反発しあうため、水への溶解性を向上させる。酸性条件下でカルボキシル基がプロトン化すると、カルボキシル基の−OHと、繰り返し単位(a)、(c)のエチレングリコール構造中の酸素原子に存在する非共有電子対とが、分子内、または分子間で水素結合を形成するため、共重合体が凝集しやすくなる。繰り返し単位(b)が多くなると、カルボキシル基をプロトン化するのに必要なpHが低くなるため、応答点がより高温、より酸性となる。 カルボキシル基含有単量体としては、特に制限することなく使用することができる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、イタコン酸、2−ヘキセン酸、3−ヘキセン酸、5−ヘキセン酸、ビニル酢酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル等が挙げられる。これらの中で、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、3−アリルオキシプロピオン酸が好ましい。これらのカルボキシル基含有単量体は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 繰り返し単位(c)は、繰り返し単位(a)と類似の骨格を有しているため、繰り返し単位(a)と同様に、共重合体に温度応答性を付与する。さらに、繰り返し単位(c)は、繰り返し単位(a)の炭素数1〜4のアルキル基(R2)と比べて親油性である、炭素数8〜20のアルキル基、または炭素数8〜20のアルケニル基(R4)を有する。R4で表される炭素数8〜20のアルキル基、またはアルケニル基は、直鎖でもよく、分岐鎖でもよい。具体的には炭素数8のオクチル基、2−エチルヘキシル基、炭素数12のラウリル基、炭素数18のステアリル基、イソステアリル基、オレイル基が挙げられ、リポソームの脂質二重膜中の親油性部分への入り込みやすさから炭素数12〜18のアルキル基が好ましい。 また、本発明の共重合体は、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、繰り返し単位(a)〜(c)以外の、共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体に由来する繰り返し単位を含んでもよい。このようなエチレン性不飽和単量体としては、例えば、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類;アクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;メタクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパンなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸のエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン化合物;酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。 本発明の共重合体の重合方法は特に限定されず、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などを用いることができる。均一系で重合反応を進行させられることから、溶液重合が好ましい。溶液重合は、常法で行われ、原料モノマー、重合開始剤、溶剤を所定量仕込み、例えば、溶液濃度が30〜70質量%程度で、重合温度50〜120℃のラジカル重合で行うことができる。重合開始剤としてはラジカル重合において通常使用される重合開始剤が用いられ、原料モノマーの仕込み合計量に対し、0.1〜20質量%の割合で重合開始剤が用いられる。重合開始剤としては、重合温度に適した半減期温度を有するものが好ましく、例えばジプロピルパーオキシジカーボネート(T10(10時間半減期温度)=40℃)、ベンゾイルパーオキサイド(T10=74℃)、ラウロイルパーオキサイド(T10=62℃)、t−ブチルパーオキシヘキサノエート(T10=72℃)などの有機過酸化物、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(T10=51℃)、2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)(T10=65℃)などのアゾ化合物を使うことができる。 溶液重合で用いられる溶媒としては、モノマーおよびポリマーの双方を溶解するものが好ましく用いられ、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコール系溶剤、脂肪族系炭化水素や芳香族系炭化水素などの炭化水素、などが挙げられる。中でも、アセトンやエタノール、イソプロパノールは、溶剤を容易に除去できることから好ましい。なお、2種類以上の溶媒を混合して用いてもよい。 本発明の共重合体は、特定の温度、pHで、親水性から疎水性へと変化する。この変化が起こる応答点は、繰り返し単位(a)〜(c)のモル%により制御することができる。本発明の共重合体の水溶液は、特定の温度、pHで、共重合体が親水性から疎水性へと相転移することで、透明の液体から懸濁液へと変化するため、環境応答性因子として応用可能である。 本発明の共重合体において、繰り返し単位(a)〜(c)のモル%はとくに制限されないが、下記で詳述するように、リポソームと複合化するならば、繰り返し単位(a)〜(c)の合計100モル%に対して、繰り返し単位(a)が40〜89モル%、繰り返し単位(b)が10〜50モル%、繰り返し単位(c)が1〜10モル%であることが好ましい。繰り返し単位(b)が10モル%より少ないと疎水性が弱いため、リポソームと複合化した時に脂質二重膜を壊す力が十分でない。繰り返し単位(b)が50モル%より多いと親水性が高くなり、共重合体が凝集するのに必要なpHが低くなりすぎる。さらに、このモル比率であると、恒温動物の細胞内環境で親−疎水変化を起こすのに適している。「リポソーム複合体」 本発明の共重合体とリポソームとから、リポソーム複合体を形成することができる。これは、共重合体の繰り返し単位(c)の炭素数8〜20のアルキル基、または炭素数8〜20のアルケニル基(R4)が、リポソームの脂質二重膜中の親油性部分に入り込み、共重合体をリポソームに繋ぎ止めて担持させるアンカーとして機能するためである。 ここで、本発明のリポソーム複合体とは、共重合体の一部がリポソームの脂質二重膜中に担持されているものを意味し、単なる混合物ではない。共重合体がリポソームに担持されているか否かは、ゲルろ過法、超遠心法、透析法等によりリポソームと共重合体とを分離することができるか否かで判別することができる。 共重合体をリポソームと複合化させてリポソーム複合体を形成するならば、繰り返し単位(c)を、繰り返し単位(a)〜(c)の合計100モル%に対して1〜10モル%有することが好ましく、1〜7モル%有することが特に好ましい。繰り返し単位(c)が1モル%より少ないとリポソームと共重合体とが十分に複合体を形成することができず、10モル%より多いと水溶性が低下して共重合体が水に溶解しにくくなる。水溶性の点では、7モル%以下が特に溶解性に優れる。繰り返し単位(a)、(b)のモル%は、応答性を示す条件に応じて適宜調節すればよいが、上記したように、繰り返し単位(a)〜(c)の合計100モル%に対して、繰り返し単位(b)を10〜50モル%有することが好ましい。 本発明のリポソーム複合体において、共重合体が親水性から疎水性に相転移すると、脂質二重膜が破壊されてリポソームの内包物が放出される。そのため、本発明のリポソーム複合体は、皮膚外用剤、化粧料、食品、医薬品、生化学用試薬等への応用が可能である。 リポソームの脂質二重膜が破壊される原理は以下のとおりである。 リポソーム複合体の水分散液において、共重合体が親水性を維持できる条件下では、共重合体はリポソームに担持された状態で水中に安定して存在する。この水分散液の温度、および/またはpHを変化させて共重合体が疎水性となると、水中で共重合体は凝集する。リポソーム複合体において、共重合体はリポソームに担持されているため、共重合体の構造変化は、リポソームの脂質二重膜の表面近傍で起こる。疎水性である共重合体の凝集物は脂質二重膜の親油性部分に入り込み、脂質二重膜が破壊される。 本発明のリポソーム複合体において、共重合体はリポソームの脂質二重膜を効率よく破壊することができる。それに対し、リポソームに担持されていない共重合体は、疎水性となった共重合体同士が凝集してしまい、脂質二重膜を攻撃しないまま水中に分散し続けるものが存在するため、リポソームの脂質二重膜を破壊する能力に劣る。 本発明において、リポソームの脂質二重膜を構成するリン脂質と共重合体との重量比は、特に制限されないが、通常、50:50〜99:1の範囲である。共重合体の重量比が50より多くなっても、リポソームを破壊する能力は飽和してしまいそれ以上向上しない。共重合体の重合比が1より少ないと、リポソームを十分に破壊することができない。リン脂質と共重合体との配合比は、60:40〜95:5であることがより好ましく、70:30〜90:10であることがさらに好ましい。 本発明のリポソームを構成するリン脂質は、リポソームの膜脂質として通常用いられる両親媒性のリン脂質を用いることができる。このようなリン脂質としては、例えばホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、大豆ホスファチジルコリン、卵黄ホスファチジルコリンなどのリン脂質が挙げられる。これらのリン脂質の構成脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。特に、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンが好ましい。 ここで、リン脂質の性状は、アシル基を構成する脂肪酸により異なる。ホスファチジルコリンの場合、卵黄ホスファチジルコリンや大豆ホスファチジルコリンなどの不飽和脂肪酸を多く含むホスファチジルコリンはペースト状である。多価不飽和脂肪酸残基を有する非水添リン脂質は、空気に触れさせたり、光を当てたりすると、褐色を帯び、においが変化することがある。これは不飽和脂肪酸が空気中の酸素により過酸化をうけるためである。リン脂質の酸化による変性を防ぐ目的で、リン脂質の精製段階で水素を添加し、不飽和脂肪酸残基を飽和脂肪酸残基へ変化させたものが水添リン脂質であり、水添リン脂質は、固形状である。 本発明のリポソームを形成するリン脂質は、非水添リン脂質でもよく、水添リン脂質でもよく、これらを併用してもよい。水添リン脂質は、脂肪酸が二重結合を有さず柔軟であるため、非水添リン脂質より密に充填することでき、緻密な脂質二重膜を形成することができる。非水添リン脂質と水添リン脂質とは、その割合を特に制限することなく併用することができるが、通常、非水添リン脂質と水添リン脂質とのモル比が99:1〜1:99である。ここで、天然物由来であるリン脂質は、種々の化合物の混合物であるため、モル比は、主たる化合物の分子量を使用して算出した。 本発明のリポソームには、ステロールを有していてもよい。ステロールは、脂質二重膜中に入り込み、脂質二重膜をゲルでも液晶でもない中間状態にする作用を有していることが知られている(参考文献:「リポソーム」南江堂)。ステロールは非水添リン脂質からなる脂質二重膜に対しては、膜透過性や膜流動性を低下させ、水添リン脂質からなる脂質二重膜に対しては、その相転移を消失させ、膜流動性を高める作用を有する。 本発明のリポソームを調製するときの、非水添リン脂質とステロールとのモル比は、99:1〜50:50が好ましく、99:1〜70:30が特に好ましい。ステロールのモル比が1未満あるいは50を超えるとリポソームの安定性が低下する。ここで、上記と同様に、天然物由来であるステロールは、種々の化合物の混合物であるため、モル比は、主たる化合物の分子量を使用して算出した。 本発明に用いるステロールとしては動物ステロール、植物ステロール(フィトステロール)、菌類ステロール等が挙げられる。動物ステロールとしては例えばコレステロール、コレスタノール、7−デヒドロコレステロールが挙げられる。また、植物ステロール(フィトステロール)としてはシトステロール、スチグマステロール、フコステロール、スピナステロール、ブラシカステロール等が挙げられる。また、植物ステロールの水素添加物であるフィトスタノールが挙げられる。菌類ステロールとしては例えばエルゴステロールが挙げられる。 本発明に用いるステロールとして、市販品を用いることができる。例えば、タマ生化学株式会社製 フィトステロールS(フィトステロール)、日本精化株式会社製 コレステロールJSCI(コレステロール)、コグニスジャパン株式会社製 GENEROL 122N(フィトステロール)、日本水産株式会社製マリンコレステロール(コレステロール)等が挙げられる。 水添リン脂質、及び/または、フィトステロールを配合することで脂質二重膜をより安定にすることができる。すなわち、これらを配合した脂質二重膜は、内包物の意図せぬ漏出が抑えられ、環境応答性をより鋭敏にすることができる。 本発明のリポソームは、公知のリポソームの製造方法により製造することができる。公知のリポソームの製造方法としては、エクストルーダー法、超音波法、フレンチプレス法高圧乳化法などが挙げられる。高圧乳化機としてはプライミクス株式会社製 T.Kフィルミックス(薄膜旋回型高速ホモミキサー)、マイクロフルイディックス社製 マイクロフルイダイザー(超高圧ホモジナイザー)、吉田機械工業株式会社製 ナノヴェイタ(ナノマイザー)等を用いることができる。 一例として、エクストルーダー法により本発明のリポソームを製造する方法について説明する。リポソームの脂質二重膜を構成するリン脂質と共重合体とをクロロホルムなどの適当な有機溶媒に溶解させ、その溶液を容器内に入れる。次いで、エバポレーターを用いて有機溶媒を除去し、容器内壁面にリン脂質と共重合体とからなる混合薄膜を形成する。この混合薄膜は、さらに3〜12時間程度真空乾燥して、有機溶媒を完全に除去することが好ましい。次いで、この容器内に緩衝液などの適当な溶液を投入し、超音波処理またはボルテックスミキサーなどを用いて強く攪拌して、混合薄膜を容器内壁面から剥離することによりリポソームを形成することができる。この緩衝液等の溶液に、薬効成分を含ませることで、リポソーム内に薬効成分を包含することができる。 リポソームの粒径は、得られた分散液をエクストルーダーに通し、そのフィルター孔径を適宜設定することにより調節することができる。本発明のリポソームの粒径は特に制限されないが、通常、0.05〜100μmである。リポソームの粒径は、使用目的に応じて適宜調整すればよい。 本発明のリポソームは、上記の粒径の範囲内であれば、一層の脂質二重膜からなる単層リポソーム、または複数の脂質二重膜からなる多重層リポソームのいずれであってもよい。親油性の薬効成分は、脂質二重膜の膜中に包含されるため、親油性の薬効成分を多く包含させるには、多重層リポソームとすることが好ましい。 上記のようにして得られたリポソーム分散液から、リポソームの脂質二重膜に担持されなかった共重合体や、リポソーム内に包含されなかった薬効成分等は、ゲルろ過法、超遠心法、透析法などにより除去することができる。除去したい物質が電荷を有する場合には、イオン交換クロマトグラフィーを用いることもできる。 上記のような方法により製造されるリポソームにおいて、共重合体は、リポソームの外側表面に担持されるものであってもよいし、リポソーム膜の外側表面および内側表面の両方に担持されるものであってもよい。上記の製造方法のように、リン脂質と共重合体とからなる混合薄膜を形成する場合は、共重合体は、リポソームの外側表面および内側表面の両方に担持される。上記の製造方法において、リン脂質のみからなる薄膜を形成し、予めリポソームを形成した後に共重合体を添加することで、脂質二重膜の外側表面のみに共重合体を担持させることができる。 リポソーム内に含ませる薬効成分としては、本発明のリポソームの製造を阻害しないものであれば特に限定されず、抗癌剤、プラスミド、タンパク質、酵素、保湿剤、抗炎症剤、ビタミン類、抗酸化剤、紫外線吸収剤、血行促進剤、創傷治癒剤、抗菌性物質、皮膚賦活剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、美白剤等を用いることができる。これら薬効成分としては、親水性、親油性のいずれでもよく、どちらも包含することができる。親水性の薬効成分はリポソームの親水性部分に、親油性の薬効成分はリポソームの親油性部分に閉じ込められる。 本発明のリポソーム複合体は、特定の条件下で内包物を放出することができるため、いわゆるドラッグ・デリバリー・システムに用いることができ、皮膚外用剤、化粧料、食品、医薬品、生化学用試薬等に用いることができる。<試験例1>「共重合体の合成1」「実施例」 攪拌器、温度センサ、コンデンサおよび窒素導入管を備えた1Lの反応槽にイソプロパノール400gを仕込み、窒素ガスを通じ、反応槽内部を窒素置換した後、内温60℃まで昇温した。そこに下記表1に示すモル%で混合したモノマー混合液150gとジプロピルパーオキシジカーボネート1.5gを2時間かけて滴下したのち、60℃で2時間、80℃で1時間重合反応を行った。その後80℃、減圧下で溶剤を除去し、実施例1〜5、比較例1〜3の各共重合体を得た。共重合体の構造式を下記化5に示す。 なお、共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)の結果から算出した。GPCは、高速液体クロマトグラフ(GPCカラム Shodex LF−804、溶離液:テトラヒドロフラン)を用いて行い、そのクロマトグラフィーの結果から、ポリスチレンを標準物質として算出することにより、ポリスチレン換算のMwとして求めた。「共重合体の温度、pH応答性評価」1.透過率測定 実施例1〜5、比較例1〜3の各共重合体を10mg/mLとなるように、10mMリン酸緩衝水溶液(140mM NaCl)に溶解させた。氷冷下で撹拌しながらHClおよびNaClを用いて共重合体溶液を種々pHに調製した。共重合体溶液をスクリューセルに2mLとり、10℃で10分間撹拌・保持した後、昇温速度2℃/minで加熱しながら透過率を測定した。 測定は、紫外・可視分光光度計(日本分光株式会社製、装置名:V−560)を用い、測定波長500nmで行った。温度制御はベルチェ式温度コントローラ(日本分光株式会社製、装置名:ETC−505T)を用いて行った。このとき透過率が下がり、95%となる温度を曇点とした。 測定結果を図1、2に示す。 実施例1〜5は、繰り返し単位(b)の含有量にかかわらず、10〜80℃においてpH7.4の中性では曇点を示さなかった。また、繰り返し単位(b)の含有率が高くなるほど、曇点を示すpHが酸性となった。 カルボキシル基は中性では脱プロトン化して親水的であり、酸性ではプロトン化して疎水的である。カルボキシル基含有率が高くなると、カルボキシル基がプロトン化するのに必要なpHが小さくなるため、カルボキシル基の含有率が増えるにつれて、より酸性で曇点を示すようになったと考えられる。 また、実施例1〜4のpH6.0、実施例2〜5のpH5.5における挙動から、繰り返し単位(b)の増加に伴い、温度変化による透過率の減少の度合いが緩やかになることが分かる。 これは、カルボキシル基が多いほど、カルボキシル基がプロトン化するのに必要なpHがより酸性となるため、脱プロトン化状態のカルボキシル基(−COO−)と、繰り返し単位(a)、(c)のエチレングリコール構造中の酸素原子と反発しあって、分子の凝集を妨げているためであると推測される。 すなわち、カルボキシル基が多いほど、疎水性に構造変化する応答点が、より高温、より酸性となる。 繰り返し単位(a)のみからなる比較例1は、pH5.0〜7.4において曇点が20℃付近と変化しなかった。これは20℃においてエチレングリコール構造が脱水和され、疎水性相互作用により凝集体を形成したと考えられる。また、pH応答性を有する繰り返し単位(b)を有さないため、pHに関わらず曇点は一定であった。 繰り返し単位(a)(95モル%)と繰り返し単位(c)(5モル%)のコポリマーである比較例2は、親水性のカルボキシル基を有する繰り返し単位(b)を有さず、親油性の長鎖アルキル基を有する繰り返し単位(c)を有するため、水に不溶であった。 繰り返し単位(a)(80モル%)と繰り返し単位(b)(20モル%)のコポリマーである比較例3は、pH7.4の中性では曇点を示さず、pH6.0からpH5.0へと酸性になるにしたがって曇点は低温側にシフトした。これは、上記実施例1〜4で考察したように、中性条件下では、カルボキシル基は脱プロトン化して水和しているが、酸性条件下ではプロトン化して電荷を失い、疎水化し、凝集を促進したためだと考えられる。2.DSC測定 上記「1.透過率測定」で調製した実施例2、及び比較例1、3の種々pHの共重合体溶液を3分間脱気した。 各共重合体溶液をそれぞれ630μLずつ用いて、1℃で10分間保持した後、DSC測定を行った。測定は1℃から80℃まで、昇温速度1℃/minで加熱しながら行った。測定にはナノDSC(TA Instruments Japan Inc.製)を用いた。 また、下記試験例2の実施例7において作成した実施例2の共重合体と複合化したリポソーム複合体の分散液を、種々pHに調製し、同様にDSC測定を行った。 温度変化における吸熱ピークの結果を図3に示す。グラフの縦軸は吸熱の熱量を表し、比較例1のグラフのみ、他より4倍大きいスケールとなっている。なお、実施例2のグラフにおいて、EYPCは、共重合体と複合化していない非水添卵黄ホスファチジルコリンのみからなるリポソームの測定結果を示す。 また、透過率測定、DSC測定の結果を表2に示す。 比較例1は、いずれのpHにおいても約20℃付近に大きな吸熱ピークを示した。このピーク温度は、上記「1.透過率測定」で測定した曇点温度とほぼ一致していることから、温度応答時の脱水和による吸熱であることが分かる。また、吸熱の熱量から脱水和に関与していると考えられる繰り返し単位(a)1mol当たりの熱量は7〜8kJであることが算出された。これは繰り返し単位(a)に水和している水分子が全て脱水和されたときの熱量を意味している。 また、実施例2、比較例3に関しても同様に、それぞれのpHにおける吸熱ピークの温度は曇点温度とほぼ一致した。また曇点を示さなかったpHにおいては吸熱ピークを示さなかった。繰り返し単位(a)1mol当たりの熱量は酸性になるにしたがって増加し、完全に脱水和されたときの熱量7〜8kJに近づいていくことがわかる。これは中性では、脱プロトン化しているカルボキシ基が影響して、温度が上昇しても繰り返し単位(a)中のエチレングリコール構造は水和状態にあるが、酸性になるほどプロトン化されたカルボキシ基の割合が多くなり、温度上昇に伴ってエチレングリコール構造に相互作用することで脱水和が促進されたと考えられる。 また、実施例2の共重合体をリポソームと複合体にしても、吸熱ピークの温度は大きく変化しなかった。また、繰り返し単位(a)1mol当たりの熱量はpH6.0では2倍近く増加したがpH5.5では僅かに減少した。これは共重合体がリポソームに固定化されることでより脱水和しやすくなったことを意味している。しかしpH5.5では、プロトン化により疎水化したカルボキシ基がエチレングリコール構造に作用することなくリポソームの脂質膜の疎水性部分に取り込まれたため減少したと考えられる。 共重合体の温度・pH応答性は透過率測定とDSC測定によって評価したところ、共重合体溶液は、温度上昇によってある温度以上で透過率の減少を示し、その温度で吸熱ピークを示した。このことから共重合体が脱水和により疎水化し、凝集体を形成したことが示された。また、共重合体溶液のpHを変化させることによって、異なる温度で親−疎水変化を起こすことができる。 すなわち、本発明の繰り返し単位(a)〜(c)を有する共重合体は、温度とpHの両方に応答性を示し、さらに、繰り返し単位(b)の含有率により、親―疎水性の応答を示す温度、pHを制御できることが確認できた。<試験例2>「リポソーム複合体の作成1」「実施例6」 非水添卵黄ホスファチジルコリン(日油株式会社製、商品名:COATSOME NC−50、以下、EYPCという。)100mgを、クロロホルム10mLに溶解させた。この溶液1mLをなす型フラスコに採り、ロータリーエバポレーターによりクロロホルムを除去し、フラスコ内壁面にEYPCからなる薄膜を形成した。 上記実施例1の共重合体のメタノール溶液(2mg/mL)を、EYPCと共重合体との重量比が80:20となるように加え、ロータリーエバポレーターによりメタノールを除去し、EYPCと共重合体とからなる混合薄膜を形成した。フラスコ内壁面に形成された混合薄膜を、フラスコ内壁面に付着したまま4時間真空乾燥することで溶媒を完全に除去した。 蛍光物質であるピラニン(東京化成工業株式会社製)35mM、消光剤であるパラキシレンビス(N−ピリジニウムブロマイド)(invitrogen社製、以下、DPXという。)50mM、リン酸水素二ナトリウム(キシダ化学製)25mMとなるように水溶液(以下、発色溶液という)を調製した。この発色溶液のpHは7.4であった。 混合薄膜中の脂質量1.25×10−5molあたり、上記発色溶液が1mLとなるように加え、バス型超音波照射装置を用いて超音波を照射して、フラスコ内壁面から混合薄膜を剥離、分散した後、NaOH及びHClを用いてpH7.4に調整した。この分散液を−20℃のエタノールバス中で凍結させ、引き続き25℃の水浴中で融解させ、この凍結と融解の操作を5回行った。 なお、上記した混合薄膜中の脂質量の定量は、リン脂質Cテストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて、コリンオキシターゼ・DAOS(Sodium N−Ethyl−N−(2−Hydroxy−3−Sulfopropyl)−3,5−Dimethoxyaniline)法によって行った。具体的には、リポソーム分散液、ブランク溶液、及び、リン脂質Cテストワコーに付属の標準溶液をそれぞれ発色溶液と混合し37℃で5分間インキュベートし、各溶液の波長600nmにおける吸光度を紫外・可視分光光度計(日本分光株式会社製、装置名:V−560)を用いて測定し、得られた吸光度からリポソーム分散液の濃度を決定した。 エクストルーダーに孔径100nmの膜を挟み、凍結、融解操作後の混合薄膜の分散液を25回通すことで、液中に含まれるリポソーム複合体の粒径を100nmにそろえた。その後、セファロース4Bをゲル、リン酸緩衝水溶液を移動相としたゲルろ過法で精製し、リポソーム複合体を得た。この精製により外水相から蛍光物質であるピラニン、および遊離している共重合体を取り除くことができる。「実施例7〜10」 実施例2〜5の共重合体を使用した以外は実施例5と同様にして、リポソーム複合体を得た。「実施例11、12」 EYPCと共重合体との重量比を70:30とした以外は、上記実施例9、10と同様にして、リポソーム複合体を得た。「比較例4〜6」 比較例1〜3の共重合体を使用した以外は実施例5と同様にして、リポソーム複合体を得た。「比較例7」 共重合体を含有しない以外は、上記実施例5と同様にして、リポソームを得た。「リポソーム複合体の温度、pH応答性評価」 実施例6〜10、比較例4〜7のリポソーム複合体の温度、pHに対する応答性を評価した。 リポソームの脂質二重膜が破壊されると、リポソーム内に含まれていたピラニンが外水相に放出される。放出されたピラニンを、下記手法により416nmの光で励起し、発せられる蛍光を512nmで測定することにより、リポソーム複合体の温度・pH応答性の評価を行った。 なお、リポソームの脂質二重膜中では蛍光物質であるピラニン、消光剤であるDPXの濃度がどちらも高く、励起したピラニンとDPXとの衝突頻度が高いため、励起したピラニンはすぐにDPXにより脱励起されるため蛍光が消失する。リポソームの脂質二重膜が破壊されてピラニンとDPXが外水相に放出されると、希釈されて濃度が下がるため、励起したピラニンと消光剤との衝突頻度は低く蛍光が維持される。そのため、本発明の測定方法で観測された蛍光は、全てリポソームから放出された外水相中のピラニンに由来するとみなすことができる。 石英セル内に各pHに調製したリン酸緩衝水溶液を加え、分光蛍光光度計内に設置した。それぞれの測定条件温度で約3分間、温度維持した後、分光蛍光光度計で石英セル内の脂質濃度が0.02mMとなるようにピラニンを内包するリポソーム複合体の分散液を加えた(最終体積2.5mL)。所定の温度で10分間インキュベーションした時のピラニンの放出量を調べた。最後にTriton X−100(キシダ化学製)10%溶液を25μL加えてリポソームの脂質二重膜を破壊した。各温度におけるpHが7.4のときのリポソーム複合体添加直後の蛍光強度(F0,7.4)を0%とし、10%Triton X−100を加えた後の蛍光強度(F100,7.4)を100%の放出量とみなして、リポソーム複合体からの内包物の放出率を以下の計算式により算出した。 またpH=xのときの放出率Ftは、Ft=(測定値)×F100,7.4/F100,xとして、pH7.4に補正した値から算出した。蛍光強度の測定は分光蛍光光度計(日本分光株式会社製、装置名:FP−6200、FP−8500)および温度コントローラ(日本分光株式会社製、装置名:ETC−272T)を用いて行った。 実施例6〜10、比較例5、7の、各温度においてpHを変化させた時の放出率のグラフを図4、5に示す。また、比較例4、6のpH7.4と5.0のときの温度を変化させた時の放出率のグラフを図6に示す。 まず、共重合体と複合化されていないリポソームのみである比較例7は、pHが変化しても内包物を保持したままであった。また温度が上昇しても放出量に変化はなかった。したがってリポソーム自体に温度・pH応答性はなく、脂質二重膜そのものは温度、pHを変化させても破壊されないことが確かめられた。 本発明のリポソーム複合体を用いた実施例6〜10では、繰り返し単位(b)の含有率が増えるにつれて、pH6.0以下で内包物の放出が著しく促進された。これは、繰り返し単位(b)が増えるにつれて共重合体の疎水性が強くなり、脂質二重膜を破壊しやすくなったためである。実施例7〜10は、恒温動物の体温である33〜43℃、細胞内消化器官であるリソソーム内のpH値であるpH5付近で応答性を示しており、恒温動物への処方に特に優れている。なお、実施例6も、より高温、より低pHで応答を示しており、求める応答点に応じて、共重合体のモル比率を調節すればよい。 繰り返し単位(b)の含有率が0モル%、繰り返し単位(c)の含有率が5モル%である比較例5は、比較例4、6、7よりは放出性に優れていたが、実施例と比較すると大きく劣っていた。比較例5は、繰り返し単位(c)を有するため、リポソームと複合体を形成していると推測されるが、繰り返し単位(b)を有さないため、共重合体の親−疎水性の相転移はエチレングリコール構造の水和水のみに由来する。水和水を失ったエチレングリコール構造のみではその疎水性が弱いため、比較例5は、脂質二重膜を十分に破壊することができず、放出率が劣るものと推測される。 図6より、比較例4、6は、pH7.4、pH5.0のいずれにおいても、25〜70℃の範囲で内包物の放出が認められず、比較例7と同等の結果を示した。 比較例4、6で用いた共重合体は、繰り返し単位(c)を有さないため、共重合体がリポソームと複合体を形成しておらず、ゲルろ過法による精製の際に、共重合体が除かれてしまったため、脂質二重膜が破壊されなかったと推測される。 実施例9〜12の各温度におけるpHを変化させた時の放出率のグラフを図7に示す。 実施例9〜12より、リン脂質と共重合体との重量比が70:30、80:20でともに良好なピラニン放出性を有することが確認できた。<試験例3>「細胞内での放出性試験」「実施例13」 EYPC100mgを、クロロホルム10mLに溶解させた。この溶液1mLをなす型フラスコに採り、さらに、蛍光物質であるDiIC18を全リン脂質量に対して0.1モル%となるように加えた。ロータリーエバポレーターによりクロロホルムを除去し、フラスコ内壁面にEYPCとDiIC18からなる薄膜を形成した。 実施例5の共重合体のメタノール溶液(2.0mg/mL)を、EYPCと共重合体との重量比が80:20となるように加え、ロータリーエバポレーターによりメタノールを除去し、混合薄膜を形成した。フラスコ内壁面に形成された混合薄膜を、フラスコ内壁面に付着したまま4時間真空乾燥することで溶媒を完全に除去した。 蛍光物質であるカルセイン(Sigma Aldrich社製)溶液(63mM、pH7.4)を1mL加え、バス型超音波照射装置により超音波を照射して、フラスコ内壁面から混合薄膜を剥離させ、蛍光液に混合薄膜を分散した。NaOH及びHClを用いてpH7.4に調整した。この分散液を−20℃のエタノールバス中で凍結させ、引き続き25℃の水浴中で融解させ、この凍結と融解の操作を5回行い、混合薄膜からなるリポソーム分散液とした。 エクストルーダーに孔径100nmの膜を挟み、リポソーム分散液を25回通すことで、リポソームの粒径を100nmにそろえた。その後、55,000rpmで120分遠心処理し、上澄みを除去することで精製した。 ヒト子宮頸がん由来細胞であるHeLa細胞を、松並ガラスボトムディッシュ1穴当たり2×105個になるように撒き、DMEMメディウムを培養液として、CO2インキュベーター内で、CO2濃度5%、37℃で一晩培養した。 DMEMメディウムの組成は以下のとおり。 ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、日水製薬株式会社製)9.5mg/mL、ベンジルペニシリンカリウム0.1mg/mL、ストレプトマイシン硫酸塩0.1mg/mL、炭酸水素ナトリウム20mM、L−Glutamine4mM、牛胎児血清(MP biomedical, Inc社製)10%。 その後、リン酸緩衝水溶液で2回、カルシウムおよびマグネシウムを含まないリン酸緩衝水溶液(以下、PBS(−)という。)で1回洗浄した後、DMEMメディウム1.0mLを加えた。 脂質濃度0.75mMとなるようにリポソーム複合体の分散液を、全量が2mLとなるようにPBS(−)を、それぞれ加えた後、37℃で4時間インキュベーションすることで細胞にリポソームを取り込ませた。リン酸緩衝水溶液で3回洗浄してHeLa細胞内に取り込まれていないリポソームを除去した。DMEMを2mL加え、8時間インキュベーター内で静置した<比較例8> 上記比較例7で作成した、共重合体と複合化されていないリポソームを用いた以外は、上記実施例13と同様にして、HeLa細胞に共重合体を有さないリポソームを取り込ませた。「共焦点レーザー顕微鏡による細胞内動態の観察」 DMEM(フェノールレッドフリー)を2mL加えて共焦点レーザー顕微鏡(Carl Zeiss社製、装置名:LSM 5 EXCITER)により、HeLa細胞にリポソーム分散液を加えてから12時間後の細胞内動態を観察した。なお、DiIC18の蛍光は赤色で観察され、脂質二重膜では強く蛍光するが、水相ではその蛍光は弱い。カルセインは、緑色蛍光で観察され、10mMを超える濃度で自己消光するため、リポソーム内では蛍光を発さず、外水相に放出されて初めて蛍光を発する。 実施例13、比較例8の12時間インキュベートした後の共焦点レーザー顕微鏡画像を、それぞれ図8、9に示す。 実施例13のリポソームで処理した細胞は、カルセインの非常に強い緑色蛍光を示した。また、DiIC18の赤色蛍光は弱かった。 実施例13において、リポソームはエンドサイトーシスにより細胞に取り込まれ、エンドソームに移行する。エンドソームに移行したリポソーム複合体は、37℃で高いpH応答性をもつために、エンドソーム内の弱酸性pHに応答して、脂質二重膜が破壊されたため、DiIC18の蛍光が弱い。また、カルセインがリポソーム外に放出されて外水相で希釈されたため、カルセインの蛍光が強く発せられた。 なお、本発明の共重合体は生体適合性の高いエチレングリコール構造を持っており、この共重合体を表面近傍に有するリポソームは安定性が高まり、分解酵素による分解は抑えられているため、細胞内のリソソームによるリポソームの分解はほとんど起きていないと推測される。 比較例8の共重合体と複合化されていないリポソームを取り込んだHeLa細胞も、実施例13には劣るが緑色蛍光を示した。また、緑色と赤色の発色が同一の箇所で起こった黄色の輝点が多く観察された。 比較例8のリポソームは共重合体を有さないため、温度、pHによる応答性を示さないが、カルセインが細胞内に放出されて、緑色蛍光を示している。比較例8のリソソームは、エチレングリコール構造を有する共重合体と複合化されていないため、分解酵素により分解されやすく、リポソームそのものが分解されて内包物が放出されたためであると推測される。これは、比較例8の緑色蛍光が、実施例12と比べると局所的であること、緑色と赤色とが同じ場所から発せられて黄色となっていることからも裏付けられる。<試験例4>「共重合体の合成2」「実施例14」 繰り返し単位(a)を78モル%、繰り返し単位(c)を2モル%とした以外は、上記試験例1の実施例2と同様にして共重合体を得た。<試験例5>「リポソーム複合体の作成2」「実施例15」 非水添卵黄ホスファチジルコリンのクロロホルム溶液を、非水添大豆ホスファチジルコリン(Lipoid社製、商品名:Phospholipon 90G、以下、Soybean PCという。)20mgを、クロロホルムとメタノールとの混合溶媒(体積比2:1)3mLに溶解させた液とし、発色溶液として、63mMのカルセインを溶解した0.01mol/L濃度のPBS(−)(pH7.4)溶液を使用し、非水添大豆ホスファチジルコリンと共重合体との重量比を90:10とし、ゲルろ過による精製に使用するゲルをShepadex G−50(Sigma Ardrich社製)とした以外は、上記試験例2の実施例7と同様にしてリポソーム複合体を得た。「実施例16」 実施例14で得た共重合体を使用した以外は、上記実施例15と同様にしてリポソーム複合体を得た。「比較例9」 比較例3で得た共重合体を使用した以外は、上記実施例15と同様にしてリポソーム複合体を得た。「リポソーム複合体の温度、pH応答性評価」 実施例15、16、比較例9のリポソーム複合体の温度、pHを変化させた。 リポソームの脂質二重膜が破壊されると、リポソーム内に含まれていたカルセインが外水相に放出される。放出されたカルセインを、下記手法により490nmの光で励起し、発せられる蛍光を520nmで測定することにより、リポソーム複合体の温度・pH応答性の評価を行った。 なお、上記試験例3で述べたように、カルセインは10mMを超える濃度で自己消光するため、リポソーム内では蛍光を発さない。・温度応答性評価 試験管にpH7.4に調製したリン酸緩衝水溶液を加えた。試験管内の脂質濃度が0.02mMとなるようにリポソーム溶液を添加した(最終体積4mL)。測定は25〜70℃の範囲とし、常に昇温した。10分間インキュベーションしたのち、1%NaOH水溶液を加え、pH7.4となるようにしたのち、カルセインの放出量を調べた(カルセインは弱酸性条件で消光するため)。最後に10%Triton X−100を80μL加えてリポソームを破壊した。各温度におけるpHが7.4のときのリポソームをバッファーに添加直後の蛍光強度を0%とし(F0,7.4)、10%Triton X−100を加えたときの蛍光強度を100%の放出量とみなして(F100,7.4)リポソームからの内包物の放出率を以下の計算式により算出した。 蛍光強度の測定はSPECTRA MAX GEMINI EM(Morecular Device Japan社製)を用いて行った。・pH応答性評価 試験管に各pHに調製したリン酸緩衝水溶液を加えた。試験管内の脂質濃度が0.02mMとなるようにリポソーム溶液を添加した後、35℃で30分間インキュベートした(最終体積4mL)。その後、1%NaOH水溶液を加えpH7.4となるようにした。その後、カルセインの放出量を調べた。最後に10%Triton X−100を8μL加えてリポソームを破壊した。その後、上記温度応答性と同様にしてリポソームからの放出率を算出した。 実施例15、16、比較例9の、pH7.4のときの各温度での放出率を図10に、温度35度のときの各pHでの放出率を図11に示す。 実施例15、16は、特定の温度、pHで内包物を良好に放出した。pH7.4である中性ではほぼ同じ挙動を示したが、温度35度では、繰り返し単位(c)を5モル%有する実施例15が、繰り返し単位(c)を2モル%有する実施例16よりも放出率が高かった。これは、繰り返し単位(c)を多く有するほど、共重合体がリポソームと複合体を形成しやすいためであると推測される。なお、実施例15は、同一の共重合体を用いた複合体である試験例2の実施例7と比べると放出率が高くなっているが、これは、リポソームを形成するリン脂質の違い、蛍光物質の違い等に由来すると思われる。 繰り返し単位(C)を有さない共重合体を用いたリポソーム複合体である比較例9は、温度、pHの変化に対する応答を示さなかった。これは、繰り返し単位(C)を有さない共重合体は、リポソームと複合体を形成しにくく、生成の過程で共重合体が取り除かれてしまったためであると推測される。。<試験例6>「リポソーム複合体の作成3」「実施例17〜20」 それぞれ実施例1〜4で得た共重合体を用い、非水添大豆ホスファチジルコリンと共重合体との重量比を90:10とした以外は、上記実施例15と同様にして、リポソーム複合体を得た。「比較例10」 比較例2で得た共重合体を用いた以外は、上記実施例15と同様にしてリポソーム複合体を得た。 上記試験例5と同様に、リポソーム複合体の温度、pH応答性を評価した。 pH5.0のときの各温度での放出率を図12に、温度35度のときの各pHでの放出率を図13に示す。 本発明のリポソーム複合体を用いた実施例17〜20では、いずれも温度、pH変化に対して良好な応答を示した。繰り返し単位(b)が10モル%である共重合体と複合化した実施例17は、繰り返し単位(b)が少なく、カルボキシル基のプロトン化による疎水化が弱いためか、繰り返し単位(b)がそれぞれ20モル%、30モル%である共重合体と複合化した実施例18、19と比較して、放出率が劣る条件が存在することが認められるが、繰り返し単位(b)の含有率が増えるにつれて、応答点が高温、低pHに移動する傾向が認められた。共重合体のモル比率により、応答点を調節できることが示された。 繰り返し単位(b)の含有率が0モル%である共重合体と複合化した比較例10は内包物をほとんど放出しなかった。35℃の強酸下で、多少の漏出が認められたが、比較例10で用いた共重合体はpH応答性を有するカルボキシル基を有さないため、その原因は不明である。<試験例7>「水素添加リン脂質含有リポソーム複合体の作成」「実施例21」 Soybean PCの分子量を、ジオレオイルフォスファチジルコリンの分子量である786.1と仮定し、Soybean PCを、SoyBean PC90モル%と、分子量734.04である水素添加リン脂質(日油株式会社製、商品名:COATSOME MC−6060、以下、DPPCという。)10モル%の混合物とした以外は、実施例20と同様にして、水素添加リン脂質含有リポソーム複合体を得た。 上記試験例5と同様にして、水素添加リン脂質含有リポソーム複合体の温度応答性を評価した。 評価結果を、上記実施例20で得たリポソーム複合体とともに、図14に示す。 実施例20、21ともに、pH7.4では温度応答性を示さず、pH5.0において、良好な温度応答性を示した。水添リン脂質を含有する実施例21の方が、非水添リン脂質のみからなる実施例20と比較して、低温での放出率が低く抑えられた。これは、水添リン脂質を含有することで脂質二重膜がより緻密になり、内包物の漏出が少なくなったためであると推測される。<試験例8>「フィトステロール含有リポソーム複合体」「実施例22」 Soybean PCを、Soybean PCと分子量をβ−シトステロールの分子量である414.7と仮定したフィトステロールS(タマ生化学株式会社製)とのモル比が80:20の混合物とした以外は、実施例20と同様にして、フィトステロール含有リポソーム複合体を得た。 上記試験例5と同様にして、フィトステロール含有リポソーム複合体の温度応答性を評価した。 評価結果を、上記実施例20で得たリポソーム複合体とともに、図15に示す。 実施例22も、実施例20、21と同様に、pH7.4では温度応答性を示さず、pH5.0において良好な温度応答性を示した。また、フィトステロールを含有する実施例22の方が、非水添リン脂質のみからなる実施例20と比較して、低温での放出率が低く抑えられた。これは、フィトステロールを含有することで、非水添リン脂質からなる脂質二重膜の膜流動性、膜透過性が低下したためであると推測される。 下記一般式(1)で表される単量体に由来する繰り返し単位(a)、カルボキシル基含有単量体に由来する繰り返し単位(b)、下記一般式(2)で表される単量体に由来する繰り返し単位(c)を有する共重合体。(式(1)中、R1は水素、またはメチル基を表し、R2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜4の自然数を表す。)(式(2)中、R3は水素、またはメチル基を表し、R4は炭素数8〜20のアルキル基、または炭素数8〜20のアルケニル基を表し、mは1〜6の自然数を表す。) 繰り返し単位(a)〜(c)の合計100モル%に対して、繰り返し単位(a)が40〜89モル%、繰り返し単位(b)が10〜50モル%、繰り返し単位(c)が1〜10モル%であることを特徴とする請求項1に記載の共重合体。 前記カルボキシル基含有単量体が、メタクリル酸であることを特徴とする請求項1、または2に記載の共重合体。 重量平均分子量が1,000〜1,000,000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の共重合体。 請求項1〜4のいずれかに記載の共重合体が、リポソームの脂質二重膜に担持されていることを特徴とするリポソーム複合体。 前記脂質二重膜と前記共重合体との重量比が、50:50〜99:1であることを特徴とする請求項5に記載のリポソーム複合体。 前記脂質二重膜が水素添加リン脂質を含むことを特徴とする請求項5または6に記載のリポソーム複合体。 前記脂質二重膜がステロールを含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のリポソーム複合体。 内部に薬効成分を包含することを特徴とする請求項5〜8のいずれか記載のリポソーム複合体。 請求項1〜4のいずれかに記載の共重合体とリポソームを含む皮膚外用剤、化粧料、食品、医薬品、または生化学用試薬。 【課題】特定の温度、pHで親−疎水変化を起こす共重合体、及び、該共重合体と複合化することで、特定の温度、pHで内包物を放出できるリポソーム複合体を提供する。【解決手段】一般式(1)、カルボキシル基含有単量体及び(2)で表される共重合体、および、該共重合体と複合化したリポソーム複合体。【選択図】なし