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タイトル:公開特許公報(A)_多能性幹細胞から血液細胞または心筋細胞を製造する方法
出願番号:2014087113
年次:2014
IPC分類:C12N 5/078,C12N 5/077


特許情報キャッシュ

川端 健二 田代 克久 水口 裕之 JP 2014236725 公開特許公報(A) 20141218 2014087113 20140421 多能性幹細胞から血液細胞または心筋細胞を製造する方法 独立行政法人医薬基盤研究所 505314022 庄司 隆 100088904 資延 由利子 100124453 大杉 卓也 100135208 曽我 亜紀 100152319 川端 健二 田代 克久 水口 裕之 JP 2013099923 20130510 C12N 5/078 20100101AFI20141121BHJP C12N 5/077 20100101ALI20141121BHJP JPC12N5/00 202JC12N5/00 202G 8 7 OL 23 特許法第30条第2項適用申請有り 4B065 4B065AA90X 4B065AC20 4B065BD39 4B065CA44 本発明は、多能性幹細胞を用いて血液細胞または心筋細胞を製造する方法に関し、より具体的には多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団から、細胞表面におけるCAR(coxsackievirus and adenovirus receptor)の発現を指標として、血液細胞または心筋細胞への分化能を有する細胞を単離することを含む、多能性幹細胞から血液細胞または心筋細胞を製造する方法に関する。 現在、多分化能と自己複製能を有する多能性幹細胞(例えば、胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞))を用いて、再生医療・創薬研究を目指した研究が国内外で行われている。特に、造血幹細胞を含む血液細胞や、成人では増殖しない心筋細胞を多能性幹細胞から作製する技術が開発されれば、その医学的価値は極めて高い。多能性幹細胞から血液細胞を分化誘導する方法についていくつか報告がなされている(非特許文献1〜3、特許文献1および2)。また多能性幹細胞から心筋細胞を分化誘導する方法についても報告がなされている(特許文献3)。 しかし、一般的に、多能性幹細胞から目的の細胞への分化誘導効率は十分ではないことが多い。そこで、様々な細胞が混在した分化細胞の中から目的の細胞のみを単離する技術開発が重要な研究課題となっている。 CARはウイルス受容体として同定された膜蛋白質である(Science. 1997 Feb 28;275(5304):1320-1323、J Virol. 1998 Jan;72(1):415-419)。近年の研究から、CARはタイトジャンクション分子として機能していることが報告されている(Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 Dec 18;98(26):15191-15196、Adv Drug Deliv Rev. 2005 Apr 25;57(6):869-882)。またCARは、生体から単離された造血幹細胞を含む血液細胞では、発現レベルが低いことが報告されており(非特許文献4,5)、CAR欠損マウスでは心臓の発生異常により胎生致死を呈することが報告されている(非特許文献6,7)。 多能性幹細胞から目的の細胞を分化誘導する際に、目的の細胞への分化能を有する細胞を単離するためのマーカー分子としてCARに着目したという報告は未だなされていない。国際公開第WO2012/050357号パンフレット国際公開第WO2012/070731号パンフレット国際公開第WO2005/033298号パンフレットBlood. 2005 Jan 15;105(2):617-26Cell Res. 2012 Jan;22(1):194-207Blood. 2013 Jan 17;121(3):447-58Proc Natl Acad Sci U S A. 1997 Apr 1;94(7):3352-3356J Virol. 2000 Mar;74(6):2567-2583Genesis. 2005 Jun;42(2):77-85J Cell Sci. 2005 Aug 1;118(Pt 15):3509-3521 本発明は、効率よく多能性幹細胞から血液細胞または心筋細胞を製造する方法を提供することを課題とする。 本発明者らは、多能性幹細胞から分化誘導した中胚葉細胞を含む細胞集団についてCARの発現を指標にすることにより、血液細胞または心筋細胞を効率よく分化誘導し得ることに着目し、本発明を完成した。 すなわち本発明は、以下よりなる。1.多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団から、細胞表面におけるCAR(coxsackievirus and adenovirus receptor)の発現を指標として、血液細胞への分化能を有する細胞または心筋細胞への分化能を有する細胞を単離することを含む、多能性幹細胞から血液細胞または心筋細胞を製造する方法。2.以下の工程を含む、前項1に記載の製造方法:1)多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団から、CARlow/-細胞またはCARhigh細胞を単離する工程; 2)工程1)により単離されたCARlow/-細胞またはCARhigh細胞を培養する工程。3.工程1)が、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団から、CARlow/-またはCARhighであり、かつ、中胚葉マーカーを発現する細胞を単離する工程である、前項2に記載の製造方法。4.中胚葉マーカーがFlk1またはKDRであり、中胚葉マーカーを発現する細胞がFlk1+細胞またはKDR+細胞である、前項3に記載の製造方法。5.前項1〜4のいずれか1に記載の製造方法により得られた、血液細胞または心筋細胞を含む細胞集団。6.多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団について、細胞表面におけるCARの発現を指標として細胞集団を単離する方法であって、CARlow/-細胞を血液細胞への分化能を有する細胞として選別する、または、CARhigh細胞を心筋細胞への分化能を有する細胞として選別する、細胞集団を単離する方法。7.前項6の単離方法により得られた、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団から選別された、CARlow/-である血液細胞分化誘導用細胞集団。8.前項6の単離方法により得られた、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団から選別された、CARhighである心筋細胞分化誘導用細胞集団。 従来より、多能性幹細胞から血液細胞または心筋細胞を分化誘導する技術については報告されていたが、従来の分化誘導法では、中胚葉細胞由来の血液細胞や心筋細胞、さらにその他の細胞が混合した細胞集団としてしか分化誘導を行うことができず、血液細胞または心筋細胞だけを取得するにはさらに単離精製する必要があった。しかしながら本発明の製造方法によれば、多能性幹細胞から効率よく高純度で血液細胞または心筋細胞を分化誘導させて製造することが可能である。多能性幹細胞(マウスiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団について、CAR発現をフローサイトメーターにより解析した結果を示す図である。(実施例1)多能性幹細胞(ヒトiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団について、CAR発現をフローサイトメーターにより解析した結果を示す図である。(実施例1)多能性幹細胞(マウスES細胞またはマウスiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団から単離したCARlow/-細胞についてコロニーアッセイを行い、血液細胞コロニー数を計測した結果を示す図である。(実施例1)多能性幹細胞(マウスiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団から単離したCARlow/-細胞についてコロニーアッセイを行い、種類ごとにコロニー数を計測した結果を示す図である。(実施例1)多能性幹細胞(マウスiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団から単離したCARlow/-細胞について造血系転写因子の発現解析を行った結果を示す図である。(実施例1)多能性幹細胞(ヒトiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団から単離したCARlow/-細胞について、コロニーアッセイと造血系転写因子の発現解析を行った結果を示す図である。(実施例1)多能性幹細胞(マウスES細胞またはマウスiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団から単離したCARlow/-細胞を、OP9ストロマ細胞へ播種し、分化・増殖した血液細胞数を計測した結果を示す図である。(実施例2)多能性幹細胞(ヒトiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団から単離したCARlow/-細胞を、OP9ストロマ細胞へ播種し、分化・増殖した血液細胞をフローサイトメーターにて解析した結果を示す図である。(実施例2)多能性幹細胞(マウスiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団について、CARとFlk1の発現をRT-PCRにより解析した結果を示す図である。(実施例3)多能性幹細胞(マウスiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団について、CARとFlk1の発現をフローサイトメーターにて解析した結果を示す図である(実施例3)多能性幹細胞(マウスiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団から単離したFlk1+CARlow/-細胞について、コロニーアッセイを行い、種類ごとにコロニー数を計測した結果を示す図である。(実施例4)多能性幹細胞(マウスiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団から単離したFlk1+CARlow/-細胞について、造血系転写因子の発現を解析した結果を示す図である。(実施例4)多能性幹細胞(マウスES細胞またはマウスiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団から単離したFlk1+CARlow/-細胞を、OP9ストロマ細胞へ播種し、分化・増殖した血液細胞数を計測した結果を示す図である。(実施例5)多能性幹細胞(マウスiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団から単離したFlk1+CARhigh細胞について心筋細胞関連遺伝子の発現解析を行った結果を示す図である。(実施例6)多能性幹細胞(マウスES細胞またはマウスiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団から単離したFlk1+CARhigh細胞を、OP9ストロマ細胞へ播種し、分化・増殖させた後、抗cTnT抗体により免疫染色した結果を示す写真である。(実施例7)多能性幹細胞(マウスiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団から単離したFlk1+CARhigh細胞を、OP9ストロマ細胞へ播種し、分化・増殖させた後、心筋細胞関連遺伝子の発現を解析した結果を示す図である。(実施例7)多能性幹細胞(ヒトES細胞)を培養して得た中胚葉細胞(KDR+細胞)を含む細胞集団について、CAR発現をフローサイトメーターにより解析した結果を示す図である。(実施例8)多能性幹細胞(ヒトES細胞またはヒトiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団から単離したKDR+CARhigh細胞およびKDR+CARlow/-細胞を、OP9ストロマ細胞へ播種し、分化・増殖させた後、CD45発現をフローサイトメーターにより解析した結果を示す図である。(実施例9)多能性幹細胞(ヒトES細胞またはヒトiPS細胞)を培養して得た中胚葉細胞を含む細胞集団から単離したKDR+CARhigh細胞およびKDR+CARlow/-細胞を、ゼラチンコートした培養皿へ播種し、分化・増殖させた後、抗cTnT抗体により免疫染色した結果を示す写真である。(実施例10) 本発明は、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団から、細胞表面におけるCARの発現を指標として、血液細胞または心筋細胞への分化能を有する細胞を単離(分離)することを含む、多能性幹細胞から血液細胞または心筋細胞を製造する方法に関する。 本発明において、「多能性幹細胞」とは身体を構成する全ての種類の細胞に分化出来る幹細胞であり、ES細胞またはiPS細胞等が例示される。本発明における多能性幹細胞は特に好適には、マウスES細胞またはマウスiPS細胞や、ヒトES細胞またはヒトiPS細胞をいう。「多能性幹細胞」は、本明細書中で用いられる場合、自分自身を複製する自己複製能と多分化能を共に有する細胞を意味する。「多能性(pluripotency)」とは、「多分化能」と互換可能に使用され、細胞の有する性質をいい、様々な組織や器官に属する細胞に分化し得る能力をいう。このように用語「多能性」は、複数の種類の細胞に分化し得る能力をいい、全ての種類の細胞に分化し得る能力を意味する用語「全能性(totipotency)」の概念を包含するが、明確に区別する場合は、全能性と多能性は区別することができる。 ES細胞とは、一般的には胚盤胞期胚の内部にある内部細胞塊(inner cell mass)と呼ばれる細胞集塊をin vitro培養に移し、未分化幹細胞集団として単離した多能性幹細胞である。ES細胞は、M.J.Evans & M.H.Kaufman (Nature, 292, 154, 1981)に続いて、G.R.Martin (Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 78, 7634, 1981)によりマウスで多分化能を有する細胞株として樹立された。ヒト由来ES細胞についても、既に多くの株が樹立されており、ES Cell International社、Wisconsin Alumni Research Foundation、National Stem Cell Bank (NSCB)等から入手することが可能である。ES細胞は、一般に初期胚を培養することにより樹立されるが、体細胞の核を核移植した初期胚からもES細胞を作製することが可能である。また、異種動物の卵細胞、または脱核した卵細胞を複数に分割した細胞小胞(cytoplasts, ooplastoids)に、所望の動物の細胞核を移植して胚盤胞期胚様の細胞構造体を作製し、それを基にES細胞を作製する方法もある。また、単為発生胚を胚盤胞期と同等の段階まで発生させ、そこからES細胞を作製する試みや、ES細胞と体細胞を融合させることにより、体細胞核の遺伝情報を有したES細胞を作る方法も報告されている。本発明で使用されるES細胞は、上記のような自体公知の方法により作製されたES細胞、または今後開発される新たな方法により作製されるES細胞であってもよい。 また、iPS細胞とは、体細胞へ数種類の遺伝子を導入することにより、卵子、胚やES細胞を利用せずに分化細胞の初期化を誘導し、ES細胞と同様な多能性や増殖能を有する誘導多能性幹細胞をいい、2006年にマウスの線維芽細胞から世界で初めて作られた。さらに、マウスiPS細胞の樹立に用いた4遺伝子のヒト相同遺伝子であるOCT3/4、SOX2、KLF4、C-MYCを、ヒト由来線維芽細胞に導入してヒトiPS細胞の樹立に成功したことが報告されている(Cell 131: 861-872, 2007)。本発明で使用されるiPS細胞は、上記のような自体公知の方法により作製されたiPS細胞、または今後開発される新たな方法により作製されるiPS細胞であってもよい。 ES細胞またはiPS細胞等の多能性幹細胞の培養方法は特に限定されず、自体公知の方法によることができる。ES細胞の未分化性および多能性を維持可能な培地や分化誘導に適した培地として、自体公知の培地、または今後開発される新たな培地を用いることができる。具体的には、DMEMおよび/またはDMEM/F12などの市販のほ乳類細胞用基礎培地に、血清またはknock-out serum replacement (KSR)、並びにLIF(白血病阻止因子)やbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)などを加えたもの、市販の霊長類ES細胞用培地、霊長類ES細胞増殖用基礎培地hESF-GRO、霊長類ES細胞分化誘導用基礎培地hESF-DIF、霊長類ES細胞増殖用培地CSTI-7等を用いることができる。また、培地には、ES細胞またはiPS細胞等の多能性幹細胞の培養に適する自体公知の添加物、例えば、N2サプリメント、B27サプリメント、インシュリン、bFGF、アクチビンA、ヘパリン、ROCKインヒビターやGSK-3インヒビターなどの各種インヒビター等から選択される1種または複数種の添加物を適当な濃度で添加することができる。培地およびその添加物は、使用する細胞、分化状態等により適宜選択し、使用することができる。例えば、Tiss. Cult. Res. Commun., 27: 139-147 (2008) に記載の方法によることができる。 本発明における「中胚葉細胞を含む細胞集団」は、中胚葉細胞を含むものであればいかなる細胞集団であってもよい。中胚葉細胞とは、将来的に、心筋細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、血液細胞等への分化能を有する細胞を意味する。中胚葉細胞から血液細胞へは、造血幹細胞、血液前駆細胞(造血前駆細胞)を経て、各種血液細胞へと分化すると考えられており、中胚葉細胞から心筋細胞へは、心筋前駆細胞を経て、心筋細胞へと分化すると考えられている。造血幹細胞は、血液細胞への分化が方向づけられた細胞であり、心筋前駆細胞は心筋細胞への分化が方向づけられた細胞である。本発明においてCARの発現を指標とすることにより、血液細胞や心筋細胞への分化が方向づけられていないと考えられている中胚葉細胞について、目的の細胞への分化能を有する細胞を単離することが可能となる。 本発明の中胚葉細胞を含む細胞集団は、多能性幹細胞を培養することにより得ることができる。中胚葉細胞を含む細胞集団は例えば、多能性幹細胞を胚様体形成法により培養することにより形成した胚様体(EB:Embryoid Body)であってもよい。また、中胚葉細胞を含む細胞集団は、胚様体よりもさらに分化を進行させた状態の細胞集団であってもよい。さらに、中胚葉細胞を含む細胞集団は、細胞以外に、培地や、培地に添加した種々の因子などを含む培養物であってもよい。 胚様体形成法とは、多能性幹細胞の未分化性を維持するのに必要なサイトカイン、増殖因子および支持細胞を取り除いて適当な培地で培養することにより、嚢胞性の構造を有し、その内部に外胚葉、内胚葉、および中胚葉のいずれの細胞系譜も包含する胚様体と呼ばれる細胞塊を形成させる方法である(Stem Cell Res. 2012 Mar;8(2):300-311、Blood. 2013 Jan 17;121(3):447-458、Itskovitz-Eldor, J. et al., Mol Med, Vol.6, No.2, p.88-95, 2000)。形成された胚様体に含まれる中胚葉細胞は、心筋細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、血液細胞などに分化する。しかしながら多能性幹細胞から分化誘導された中胚葉細胞からの各細胞系列へのコミットメントの仕組みは、明らかにはなっていない。 中胚葉細胞を含む細胞集団は、多能性幹細胞を、血清を含む培地中で培養することにより誘導することが可能である。より効率的に中胚葉細胞を得るには、多能性幹細胞を中胚葉誘導因子や造血因子等の液性因子を含む培地で培養することにより、多能性幹細胞から分化誘導することができる。本発明において液性因子としては、造血幹細胞や血液細胞前駆細胞等の血液細胞の自己複製、増幅および分化の少なくとも1つを調節するサイトカインや増殖因子などのいわゆる造血因子、あるいは中胚葉組織を誘導する作用を有するタンパク質である中胚葉誘導因子であれば特に限定されずいずれも使用できる。液性因子としては、骨形成タンパク質4(bone morphogenetic protein4;BMP4)、アクチンビンA、および塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor;bFGF(FGF2とも称する))などの中胚葉誘導因子、血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)、トロンボポイエチン(thrombopoietin;TPO)などの血小板増殖因子、幹細胞因子(stem cell factor;SCF)、 FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FMS-like tyrosinekinase 3 Ligand;Flt3L)、インターロイキン−6/可溶性インターロイキン−6受容体複合体(IL-6/sIL-6R)、ノッチリガンド(Notchリガンド)などの造血因子、Wnt蛋白質やその阻害タンパク質であるDickkopf1 (DKK1)などの分化制御因子などを例示できる。液性因子は、単独で使用してもよいし、複数を同時に使用してもよい。本発明において中胚葉細胞を含む細胞集団は、BMP4およびアクチビンAを用いて多能性幹細胞を培養して得ることが好ましい。さらに、TGF-β阻害剤(例えば、SB431542と称されるTGF-β受容体阻害剤である低分子化合物4-[4-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-5-(2-ピリジル)-1H-イミダゾール-2-イル]ベンズアミド)、SCF、TPO、Rhoキナーゼ阻害剤(例えば、Y-27632と称される低分子化合物〔(R)-(+)-trans-N-(4-ピリジル)-4-(1-アミノエチル)-シクロヘキサンカルボキシアミド・2HCl・H2O〕)を用いることが好ましい。 中胚葉細胞を含む細胞集団を分化誘導するための液性因子の適当な濃度は、多能性幹細胞の種類および使用量によるが、例えばアクチビンAは1 ng/ml〜20 ng/ml、BMP4は1 ng/ml〜10 ng/ml、VEGFは1 ng/ml〜100 ng/ml、TPOは2ng/ml〜200ng/ml、SCFは2ng/ml〜200ng/ml、bFGFは1〜50 ng/mL、DKK1は50〜300 ng/mLであり得る。好ましくは、アクチビンAは2〜6 ng/ml、BMP4は2 ng/ml、VEGFは5〜10 ng/mL、TPOは20ng/ml、SCFは20ng/ml、bFGFは 5ng/mL、DKK1は100〜150ng/mLであることが適当である。またTGF-β阻害剤の適当な濃度は、多能性幹細胞の種類および使用量によるが、1 〜10 μMであり、好ましくは5 μMである。Rhoキナーゼ阻害剤の適当な濃度は、多能性幹細胞の種類および使用量によるが、1〜20 μMであり、好ましくは10 μMである。また培地に添加する液性因子、TGF-β阻害剤、Rhoキナーゼ阻害剤の濃度は、血液細胞を製造する場合、心筋細胞を製造する場合、血液細胞と心筋細胞の両方を製造する場合などの目的に応じて、調整することもできる。 本発明において、多能性幹細胞から中胚葉細胞を含む細胞集団を取得するまでの多能性幹細胞の培養期間は特に限定されないが、好ましくは3日間から10日間である。培養期間中、培養液は1日〜2日に1回新たな培養液と交換することが好ましい。 本発明の血液細胞を製造する方法において分化誘導された血液細胞は、造血幹細胞、血液前駆細胞、各種血液細胞への分化が進んだ赤芽球、骨髄芽球、単芽球、巨核球、さらにこれらの細胞が成熟した赤血球、白血球、血小板を含む。本発明にて得られる血液細胞はこれらの細胞の1種以上を含む培養物の状態であってもよい。成熟の進んだ血液細胞は、細胞内顆粒などの特徴によって形態的に識別することも可能であるが、造血幹細胞や血液前駆細胞は形態的な特徴では識別できない。造血幹細胞や血液前駆細胞を含む本発明の血液細胞は、細胞マーカーを利用して検出することができる。細胞マーカーとしては種々の造血系転写因子を使用することができる。具体的には実施例に記載の造血系転写因子を使用することができる。例えば、Scl、Runx1、Gata-1、Gata-2、Fli-1が例示される。さらに、血液細胞を検出する細胞マーカーとしてCD45、CD41等が例示される。 本発明の心筋細胞を製造する方法において分化誘導された心筋細胞は、胎児型心筋細胞、成体型心筋細胞等の細胞を含み、さらには将来的に心筋細胞に分化し得る能力を有した心筋前駆細胞を含む。本発明にて得られる心筋細胞はこれらの細胞の1種以上を含む培養物の状態であってもよい。本発明の心筋細胞は、細胞マーカーを利用して検出することができる。細胞マーカーとしては種々の心筋細胞関連遺伝子を使用することができる。具体的には実施例に記載の心筋細胞関連遺伝子を使用することができる。例えば、Myl4、Myl7、aMHC、cTnTが例示される。 CAR(coxsackievirus and adenovirus receptor)は、ウイルス受容体として同定された膜タンパク質である(Science. 1997 Feb 28;275(5304):1320-1323、J Virol. 1998 Jan;72(1):415-419)。近年の研究から、CARはタイトジャンクション分子として機能していることが報告されている(Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 Dec 18;98(26):15191-15196、Adv Drug Deliv Rev. 2005 Apr 25;57(6):869-882)。CARは細胞表面に存在することから、抗体により染色してCAR発現細胞を特定することが可能である。本発明においては、中胚葉細胞を含む細胞集団から、CARをマーカー分子として使用し、CARの発現を指標として、血液細胞または心筋細胞への分化能を有する細胞を単離し、単離した細胞集団を適切な環境で培養することにより、血液細胞または心筋細胞を製造することがきる。 本明細書において、細胞の表現型をマーカー分子発現の有無や強弱で表す場合、特に断りのない限り、当該マーカー分子に対する抗体による特異的結合の有無や強弱で細胞の表現型が表記される。マーカー分子の発現の有無や強弱による細胞の表現型の決定は、例えばフローサイトメーター(FACS)等により行うことができる。マーカー分子の発現が「+(陽性)」とは、当該マーカー分子が細胞表面上(あるいは細胞内)に発現しており、当該マーカー分子に対する抗体による特異的結合が確認できることをいう。マーカー分子の発現が「high(強陽性)」とは、対照である他の細胞(又は細胞集団)と比べて、マーカー分子の発現量が相対的に高い、マーカー分子の発現量の高い細胞集団が相対的に多い、マーカー分子を発現している細胞集団の割合が相対的に多いこと等をいう。一方、「low(弱陽性)」とは、マーカー分子の発現がhighの細胞に比較して、マーカー分子の発現量が相対的に低い、マーカー分子の発現量の低い細胞集団が相対的に多い、マーカー分子を発現している細胞集団の割合が相対的に少ないこと等をいう。また、「-(陰性)」とは、マーカー分子が発現していないことを意味する。 本発明においては、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団についてCARの発現を確認する。CARlow/-を示す細胞集団(以下単に「CARlow/-を示す細胞集団」もしくは「CARlow/-細胞」と称することもある。)は、血液細胞分化誘導用細胞集団として用いることができ、CARhighを示す細胞集団(以下単に「CARhighを示す細胞集団」もしくは「CARhigh細胞」と称することもある。)は、心筋細胞分化誘導用細胞集団として用いることができる。CARlow/-とはCAR弱陽性もしくはCAR陰性であることを意味する。また、CARhighとはCAR強陽性のものを意味する。CAR発現の解析は、CARを認識する一次抗体を作用させたあと、一次抗体を認識する蛍光標識した二次抗体を作用させて染色し、その後フローサイトメーターにて蛍光強度を測定することにより解析することが可能である。この際、一次抗体を作用させずに、二次抗体のみを作用させた細胞をネガティブコントロールとして使用し、当該ネガティブコントロール細胞の蛍光強度をバックグラウンドとすることができる。CARlow/-細胞とはネガティブコントロール細胞と同程度の蛍光強度(1〜10倍程度の蛍光強度)を示すものである。また、CARhigh細胞は、CARlow/-細胞より発現が高い細胞である。 本発明の血液細胞または心筋細胞の製造方法は、以下の工程を含むものである。1)多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団から、CARlow/-細胞またはCARhigh細胞を単離する工程。 2)工程1)により単離されたCARlow/-細胞またはCARhigh細胞を培養する工程。 工程1)におけるCARlow/-細胞またはCARhigh細胞の単離は、CARの発現解析の結果に基づいて自体公知の手法により行うことができるが、フローサイトメトリー法(FACS)などの自体公知の方法によっても濃縮または単離することができる。 工程1)により単離されたCARlow/-細胞は、自体公知のコロニーフォーミングアッセイ(本明細書では単に「コロニーアッセイ」とも称する。)を行った場合に、CARhigh細胞に比較して、血液コロニーをより多く形成し得るものであり、より具体的には、赤芽球バースト形成単位(BFU-E)、顆粒球コロニー形成単位(CFU-G)、マクロファージコロニー形成単位(CFU-M)、顆粒球−マクロファージコロニー形成単位(CFU-GM)、骨髄系前駆細胞コロニー形成単位(CFU-GEMM)、混合コロニー形成単位(CFU-Mix)をより多く形成し得るものである。 工程2)においては、CARlow/-細胞を造血因子などの特定の因子の存在下で培養することにより血液細胞を分化誘導して取得することができる。かかる造血因子は造血幹細胞や血液細胞前駆細胞等の血液細胞の自己複製、増幅および分化の少なくとも1つを調節するサイトカインや増殖因子などのいわゆる造血因子であれば特に限定されずいずれも使用できる。具体的には、骨形成タンパク質4(bone morphogenetic protein4;BMP4)および塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor;bFGF)などの中胚葉誘導因子、血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)、トロンボポイエチン(thrombopoietin;TPO)などの血小板増殖因子、幹細胞因子(stem cell factor;SCF)、 FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FMS-like tyrosinekinase 3 Ligand;Flt3L)、インターロイキン−6(IL-6)、インターロイキン−3(IL-3)、およびノッチリガンドなどを例示できる。造血因子は、単独で使用してもよいし、複数を同時に使用してもよい。 工程2)において血液細胞を分化誘導するための造血因子の適当な濃度は、多能性幹細胞の種類および使用量によるが、例えばSCFは2ng/ml〜200ng/ml、Flt3Lは10ng/ml〜200ng/ml、TPOは2ng/ml〜200ng/ml、IL-3は1ng/ml〜20ng/ml、IL-6は1ng/ml〜20ng/mlであり得る。好ましくは、SCFは50ng/ml、Flt3Lは10ng/ml、TPOは10ng/ml、IL-3は5ng/ml、IL-6は5ng/mlであることが適当である。 また工程2)においては、CARhigh細胞を培養することにより心筋細胞を分化誘導して取得することができる。 マウスES細胞またはマウスiPS細胞を使用する場合、心筋細胞は、誘導した中胚葉細胞(CARhigh細胞)とOP9ストロマ細胞等の支持細胞(フィーダー細胞)との共培養法により製造可能である(FASEB J. 2005 Sep;19(11):1534-1536)。具体的には、血清を含む培地(MEMα(Sigma社製))にCARhigh細胞(好ましくはFlk1+CARhigh細胞)を懸濁し、OP9ストロマ細胞と共培養することにより製造可能である。 ヒトES細胞またはヒトiPS細胞を使用する場合、誘導した中胚葉細胞をゼラチンコートしたプレートへ播種し、CARhigh細胞(好ましくはKDR+CARhigh細胞)を、VEGFおよびbFGF等の液性因子を含む培地(Stempro34培地(Life Technologies社製)で培養することにより製造可能である(Nature. 2008 May 22;453(7194):524-528)。培地中の液性因子の適当な濃度は、多能性幹細胞の種類および使用量によるが、VEGFは1ng/ml〜50ng/ml、bFGFは1ng/ml〜50ng/mlであり得、好ましくは、VEGFは10 ng/ml、bFGFは10 ng/mlであることが適当である。 本発明の工程2)における適当な培養期間は血液細胞または心筋細胞を分化誘導し得る期間であれば特に限定されないが、好ましくは3日間〜20日間である。 本発明において、培養されるCARlow/-細胞またはCARhigh細胞の濃度は、血液細胞または心筋細胞への分化誘導が可能である限り特に限定されないが、約1×104個〜1×106個/mlが例示される。培養温度は約30〜40℃、好ましくは37℃である。培養時の二酸化炭素濃度は約1〜10%、好ましくは約5%が適当である。 本発明に使用する培養培地は、通常の細胞培養用、特にほ乳動物細胞培養用の培地であれば特に限定されない。培養培地は、血清由来のウイルスやプリオンの混入を防ぐなどの目的で、無血清培地を使用してもよいし、血清含有培地を使用してもよい。中胚葉細胞の培養に適した培養培地を用いることが適当である。具体的には、無血清完全合成培地であるmTeSR(Stemcell Technologies社製)やStempro34(Life Technologies社製)、あるいは血清を含む培地であるMEMα(Sigma社製)を例示できる。またOP9ストロマ細胞などの支持細胞(フィーダー細胞)を使用することが好ましい。 本発明では、上記工程1)はより好ましくは、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団から、CARlow/-もしくはCARhighであり、かつ、中胚葉マーカーを発現する細胞を単離する工程である。中胚葉マーカーとは中胚葉細胞の細胞マーカーであり、中胚葉細胞に特異的に発現する細胞表面マーカーである。中胚葉マーカーは細胞が由来する動物の種類によっても異なるが、例えばマウスではFlk1であり、ヒトではKDRが例示される。 中胚葉マーカーとしてFlk1を例示して説明する。工程1)では多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団について、Flk1の発現を確認する。Flk1+である細胞を中胚葉マーカーを発現する細胞として単離し、Flk1+CARlow/-である細胞を血液細胞分化誘導用細胞集団として用いることができ、Flk1+CARhighである細胞を心筋細胞分化誘導用細胞集団として用いることができる。Flk1+(F+と示すこともある)はFlk1が発現していることを意味し、Flk1-とはFlk1が発現していないことを意味する。Flk1発現の解析は、Flk1を認識する一次抗体を作用させたあと、一次抗体を認識する蛍光標識した二次抗体を作用させて染色し、その後フローサイトメーターにて蛍光強度を測定することにより解析することが可能である。この際、一次抗体を作用させずに、二次抗体のみを作用させた細胞をネガティブコントロールとして使用し、当該ネガティブコントロール細胞の蛍光強度をバックグラウンドとすることができる。Flk1-細胞とはネガティブコントロール細胞と同程度の蛍光強度を示す細胞である。Flk1+細胞はFlk-細胞よりFlk1の蛍光強度が高い細胞である。 本発明は、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団について、細胞表面におけるCARの発現を指標として細胞集団を単離する方法を包含する。より具体的には、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団からCARlow/-細胞を血液細胞への分化能を有する細胞として選別し、CARhigh細胞を心筋細胞への分化能を有する細胞として選別する、各種細胞を単離する方法を包含する。 本発明の理解を深めるために、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではないことは、いうまでもない。(実施例1)多能性幹細胞を培養した細胞についてのCAR発現解析と細胞の単離 マウスES細胞はBRC6(理化学研究所バイオリソースセンター)、およびマウスiPS細胞は38C2(京都大学山中伸弥教授よりご供与;Nature. 2007 Jul 19;448(7151):313-317)を用いた。ヒトiPS細胞は、201B7(京都大学山中伸弥教授よりご供与:Cell. 2007 Nov 30;131(5):861-872.)、Tic(JCRB細胞バンク:JCRB Number JCRB1331)を用いた。(1)胚様体の作製 マウスES細胞またはマウスiPS細胞の維持培養は市販のマウスES細胞培養用調整済み培地(Applied StemCell社製)を培養液として用い、マイトマイシンC処理したマウス胚由来線維芽細胞(MEF、Millipore社製)を支持細胞(フィーダー細胞)として用いて継代することにより実施した。また、ヒトiPS細胞の維持培養は市販の霊長類ES細胞用培地(ReproCell社製)にbFGFを混合したものを培養液として用い、マイトマイシンC処理したMEFをフィーダー細胞として用いて、継代することにより維持培養を実施した。 継代維持したES細胞またはiPS細胞からの分化誘導は、胚様体(EB)を形成させる方法により実施した。 マウスES細胞、マウスiPS細胞については、Stem Cell Res. 2012 Mar;8(2):300-311に記載の方法に準じた。具体的には、まず細胞を0.25%トリプシン−EDTA溶液(Life Technologies社製)により単一細胞懸濁液を調製し、その後、3×103個のマウスES細胞、あるいは1×103個のマウスiPS細胞の単一細胞をLipidureコートした96ウェルプレート(Nunc社製)の1ウェルへ播種し、7日間培養することでEBを形成させた。培養液は血清、2-メルカプトエタノール(Nacalai Tesque社製)を含むDMEMを用いた。 ヒトiPS細胞についてはBlood. 2013 Jan 17;121(3):447-458の手法を多少改変した手法により分化誘導を行った。より詳しくは、まず細胞をAccutase(MILLIPORE社製)を用いて単一細胞懸濁液とした。6cmディッシュあたり1×106個の単一細胞を培養してEBを形成させ、分化誘導を行った。培養液は培養日数に応じて組成を変化させた。培養開始0日目〜2日目まではStempro34培地(Life Technologies社製)に、10μM Y27632(Wako社製)、2ng/ml ヒトBMP4(R&D Systems社製)、2ng/mlヒトアクチビンA(R&D Systems社製)を添加したものを用いた。培養開始2日目に、胚様体の培地を2ng/ml ヒトBMP4(R&D Systems社製)、5ng/ml ヒトVEGF(Peprotech社製)を添加したStempro34培地で置換した。培養4日目に2ng/ml ヒトBMP4、5ng/ml ヒトVEGF、5μM SB431542(Wako社製)を添加したStempro34培地に置換して、さらに培養を行った。培養開始6日目以後に添加したサイトカインは、Blood. 2013 Jan 17;121(3):447-458のFigure 1Bに従い、2ng/mlヒトBMP4(R&D Systems社製)、5ng/mlヒトVEGF(Peprotech社製)、50ng/mlマウスSCF(Peprotech社製)、10ng/mLマウスTPO(Peprotech社製)を添加した。なお、培養6日目以降も基礎培地はStempro34培地を用いた(図2参照)。培養8日目のものをヒトiPS細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞として用いた。(2)CARを指標とした細胞の単離 分化誘導後の細胞をPBSで洗浄後、 マウスES細胞、マウスiPS細胞から作製したEB(培養7日目)については0.25% トリプシン-EDTA溶液で、ヒトiPS細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞(培養8日目)については、Cell dissociation buffer(Life Technologies社製)で37℃、二酸化炭素濃度5%で処理し、単一細胞懸濁液とした。単一細胞に解離しきれなかった細胞塊をメッシュで取り除いた後、CAR発現を指標とした細胞単離を行った。 具体的には、上記調製した単一細胞懸濁液を、抗マウスCAR抗体(株式会社 カン研究所今井俊夫先生よりご供与)を作用させたあとに、抗マウスCAR抗体を認識する2次抗体(蛍光標識済み)(BioLegend社製)で抗体染色した。 ヒトiPS細胞の場合は、抗ヒトCAR抗体(Millipore社製)を作用させたあとに、ヒトCAR抗体を認識する2次抗体(蛍光標識済み)(BioLegend社製)で抗体染色を行った。 その後フローサイトメーター(FACS Aria、BD Bioscience社製)にて蛍光強度を測定して、CARlow/-細胞とCARhigh細胞を検出し、それぞれの細胞を単離した。フローサイトメーターによる解析結果を図1および図2に示す。なお、ネガティブコントロールとしては、抗CAR抗体を作用させずに、2次抗体のみを作用させた細胞を用いた。この細胞はCARでは染色されないので、この細胞の蛍光強度をバックグラウンドとした。抗CAR抗体と2次抗体を作用させた細胞の解析においては、ネガティブコントロールの細胞と同程度の蛍光強度を示す細胞集団をCARlow/-細胞として単離し、それより発現が高い細胞集団をCARhigh細胞として単離した。(3)CARlow/-細胞とCARhigh細胞の性状解析 マウスES細胞、マウスiPS細胞については、培養開始7日目の単離前の全EB細胞、ならびに培養開始7日目に、上記(2)の方法により単離したCARhigh細胞とCARlow/-細胞の単一細胞懸濁液をメチルセルロース培地を用いて10〜14日間培養し、形成された血液細胞コロニーの数と種類を調べることによりコロニーフォーミングアッセイ(コロニーアッセイ)を実施した。 ヒトiPS細胞については、培養開始8日目に、上記(2)の方法により単離したCARhigh細胞とCARlow/-細胞の単一細胞懸濁液をメチルセルロース培地を用いて10〜14日間培養し、形成された血液細胞コロニーの数と種類を調べることによりコロニーフォーミングアッセイ(コロニーアッセイ)を実施した。 コロニーアッセイの結果を図3、図4、および図6左図に示す。CARlow/-細胞で形成された血液細胞のコロニーの総数は、CARhigh細胞で得られたコロニー総数よりも有意に多くなっていることが明らかとなった(図3、図6)。また、コロニーの種類(BFU-E、CFU-M、CFU-GFM、CFU-Mix)に分類して計測した結果、CARlow/-細胞ではCARhigh細胞と比較し、全ての種類のコロニー数が多くなっていることが明らかとなった(図4、図6)。したがって、ある特定の種類の血液細胞のみが濃縮されているのではなく、未熟な血液細胞全般がCARlow/-細胞に含まれていることが明らかとなった。 次に、単離前の全EB細胞、ならびに単離したCARhigh細胞と単離したCARlow/-細胞について、RT-PCR法により造血系転写因子(マウスES細胞もしくはiPS細胞由来:Scl、Runx1、Gata-1、ヒトiPS細胞:Runx1、Scl、cMyb、Gata-2)の発現の解析を行った。GAPDHは内部標準として併せて解析した。 単離したCARhigh細胞ならびにCARlow/-細胞における造血系転写因子の発現をRT-PCR法により解析した結果、CARlow/-細胞ではCARhigh細胞に比較して、造血系転写因子が高発現していることが明らかとなった(図5および図6右図)。したがって、CARlow/-細胞中には未熟な血液細胞が濃縮されていることが示された。(実施例2)CARlow/-細胞の血液細胞への分化誘導 実施例1にて単離したマウスES細胞、マウスiPS細胞由来のCARhigh細胞とCARlow/-細胞を、20%血清および50ng/mlマウスSCF(Peprotech社製)、50ng/ml ヒトFlt3L(Peprotech社製)、10ng/mL ヒトTPO(Peprotech社製)、5ng/ml マウスIL-3(R&D Systems社製)、5ng/ml ヒトIL-6(Peprotech社製)、50μM 2-メルカプトエタノール(Nacalai Tesque社製)を含むMEMα培地(Sigma社製)に再懸濁し、それぞれの細胞を1×104個ずつ、セミコンフルエントなOP9ストロマ細胞を支持細胞上で培養した。CARhigh細胞とCARlow/-細胞については、OP9ストロマ細胞と培養を開始した7日後に増殖した血液細胞数を計測した。 実施例1にて単離したヒトiPS細胞由来のCARhigh細胞とCARlow/-細胞を、実施例2と同様に血液細胞への分化誘導を行い、フローサイトメーター(LSRFortessa、BD Bioscience)を用いて白血球のマーカーであるCD45の発現を解析することで血液細胞への分化効率を評価した。培養には20%血清および50ng/ml マウスSCF、50ng/ml ヒトFlt3L、10ng/ml ヒトTPO、10ng/ml ヒトIL-3、10ng/ml ヒトIL-6、50μM 2-メルカプトエタノールを含むMEMα培地を用いた。 結果を図7および図8に示す。マウスES細胞、マウスiPS細胞、ヒトiPS細胞のいずれの多能性幹細胞に由来する細胞でも、CARlow/-細胞をOP9ストロマ細胞へ播種した際に産生される血液細胞数が有意に多くなることが明らかとなり、CARlow/-細胞は効率良く血液細胞に分化することがわかった。(実施例3)多能性細胞を培養した細胞についてのFlk1発現とCAR発現の解析 実施例1にて単離して単一細胞にしたCARlow/-細胞またはCARhigh細胞(マウスES細胞またはマウスiPS細胞由来)について、FLK1の発現を確認した。発現の確認は実施例1に記載のフローサイトメトリーとRT-PCRにより行った。なお、フローサイトメトリーでは1次抗体としてCARの抗体と同時にFlk1の抗体(e-Bioscience社)を用いた。また、Flk1+CARlow/-細胞、Flk1+CARhigh細胞を単離した。 結果を図9および図10に示す。これまでにマウスES細胞、あるいはマウスiPS細胞から血液細胞を誘導する際にはFlk1+細胞を単離することが一般的であった。そこでFlk1+細胞とCARlow/-細胞が同一の細胞かどうかを解析した。その結果、図9に示すようにFlk1はCARlow/-細胞だけでなく、CARhigh細胞においても発現していることがわかった。逆に、Flk1+細胞中にもCARlow/-細胞とCARhigh細胞の両細胞が含まれていることが明らかとなり、Flk1+細胞とCARlow/-細胞は同一の細胞ではないことが明らかとなった。(実施例4)多能性幹細胞から単離したFlk1+CARlow/-細胞、Flk1+CARhigh細胞についての解析 実施例3において単離したFlk1+CARlow/-細胞、Flk1+CARhigh細胞について、実施例1と同様の手法によりコロニーアッセイと造血系転写因子(Scl、Runx1、Gata-1、Gata-2、Fli-1)の発現解析を行った。 マウスES細胞、マウスiPS細胞から血液細胞を誘導する際にはFlk1+細胞を単離することが一般的であったため、Flk1+細胞に含まれるCARhigh細胞、CARlow/-細胞の解析を行った。コロニーアッセイの結果を図11に、RT-PCRの結果を図12に示す。単離したFlk1+CARhigh細胞、Flk1+CARlow/-細胞を用いてコロニーアッセイを行った結果、Flk1+CARhigh細胞では、ほとんどコロニーが得られなかった。一方、Flk1+CARlow/-細胞においては多数のコロニーが観察された。また、SclやRunx1等の造血系転写因子の発現もFlk1+CARlow/-細胞が高発現していた。したがって、Flk1+細胞中のCARlow/-細胞が血液細胞への高い分化能を保持していることが分かった。(実施例5)Flk1+CARlow/-細胞の血液細胞への分化誘導 実施例2の手法と同様にして、実施例3において単離したFlk1+CARhigh細胞とFlk1+CARlow/-細胞の血液細胞への分化誘導を行い、細胞数を計測した。 結果を図13に示す。培養開始後8日目には、ES細胞、iPS細胞いずれの多能性幹細胞に由来する細胞でも、Flk1+CARlow/-細胞をOP9ストロマ細胞上へ播種した際に、血液細胞の産生量が多いことが明らかになった。したがって、Flk1+細胞中のCARlow/-細胞が効率よく血液細胞に分化することがわかった。(実施例6)Flk1+CARlow/-細胞についての心筋関連遺伝子の発現解析 実施例1における造血系転写因子の発現解析と同様の手法により、実施例3において単離したFlk1+CARlow/-細胞について、心筋細胞関連遺伝子(Tbx5、Mesp1、Gata-4、Myl4、cTnT、aMHC)の発現解析を行った。 Flk1を発現する中胚葉細胞は血液細胞だけでなく、血管内皮細胞や心筋細胞へも分化する。また、非特許文献3,4において、CARを欠損するマウスは心筋の発生異常により胎生致死を呈することが報告されている。そこで、多能性幹細胞由来Flk1+CARhigh細胞、Flk1+CARlow/-細胞を単離し、心筋細胞関連遺伝子の発現を解析した。その結果、Flk1+CARlow/-細胞と比べて、Flk1+CARhigh細胞において心筋細胞関連遺伝子が高発現していることが明らかとなった(図14)。(実施例7)Flk1+CARhigh細胞の心筋細胞への分化誘導 実施例3において単離したFlk1+CARhigh細胞ならびにFlk1+CARlow/-細胞を、20%血清と50μM 2-メルカプトエタノールを添加したMEMα培地中(Sigma社製)に再懸濁し、セミコンフルエントなOP9ストロマ細胞を支持細胞上で培養した。OP9ストロマ細胞と共培養を開始した7日後の細胞について、抗cTnT抗体(Fisher Scientific社製)を用いた免疫染色と心筋細胞関連遺伝子(Myl4、Myl7、aMHC、cTnT)についてRT-PCR法により発現解析を行うことで、心筋細胞への分化効率を評価した。 その結果を図15および図16に示す。ES細胞、iPS細胞いずれの多能性幹細胞に由来する細胞でも、Flk1+CARhigh細胞を分化誘導した場合にcTnTで染色される細胞が多数検出され、Flk1+CARhigh細胞が効率良く心筋細胞へ分化することがわかった。また、OP9ストロマ細胞と共培養を行った後の細胞を回収して心筋細胞関連遺伝子の発現を解析した結果、Flk1+CARhigh細胞を播種した細胞においては心筋細胞関連遺伝子が高発現していることがわかった。したがって、Flk1+CARhigh細胞には心筋細胞への分化能を有する細胞が濃縮されていることが示唆された。(実施例8)ヒト多能性幹細胞を培養した細胞についてのKDRとCARの発現解析と細胞の単離 ヒトES細胞はKhES-3(京都大学中辻憲夫教授よりご供与:Biochem Biophys Res Commun. 2006 Jul 7;345(3):926-932)を用いた。ヒトiPS細胞は、201B7(京都大学山中伸弥教授よりご供与:Cell. 2007 Nov 30;131(5):861-872.)を用いた。(1)胚様体の作製 ヒトES細胞またはヒトiPS細胞の維持培養は市販の霊長類ES細胞用培地(ReproCell社製)にbFGFを混合したものを培養液として用い、マイトマイシンC処理したMEFをフィーダー細胞として用いて、継代することにより維持培養を実施した。 継代維持したES細胞またはiPS細胞について、胚様体(EB)を形成させる方法(Nature. 2008 May 22;453(7194):524-528の手法を多少改変した手法)により分化誘導を行った。より詳しくは、まず細胞をdispase(Roche社製)を用いて回収し、10cmペトリディッシュあたり5×106〜10×106個の細胞を播種して分化誘導を行った。培養液は培養日数に応じて組成を変化させた。培養開始0日目〜1日目まではStempro34培地(Life Technologies社製)に、2ng/ml ヒトBMP4(R&D Systems社製)と10μM Y27632(Wako社製)を添加したものを用いた。培養開始1日目に、胚様体の培地を10ng/ml ヒトBMP4(R&D Systems社製)、6 ng/mlアクチビンA(R&D Systems社製)、5 ng/ml bFGF(片山化学社製)を添加したStempro34培地で置換した。培養4日目に、5ng/ml ヒトVEGF、100ng/ml DKK1(R&D Systems社製)を添加したStempro34培地に置換して、さらに培養を行った(図17A)。(2)CARを指標とした細胞の単離 培養7日目の胚様体(EB)をPBSで洗浄後、 ヒトES細胞またはヒトiPS細胞から作製したEBについて、0.25%トリプシン-EDTA溶液(Life Technologies社製)で37℃、二酸化炭素濃度5%で処理し、単一細胞懸濁液とした。単一細胞に解離しきれなかった細胞塊をメッシュで取り除いた後、KDRとCARの発現を指標とした細胞単離を行った。 具体的には、蛍光標識された抗ヒトKDR抗体(R&D Systems社製)と抗ヒトCAR抗体(Millipore社製)を同時に作用させた。抗ヒトCAR抗体については蛍光標識された2次抗体(Biolegend社製)でさらに標識した。その後、フローサイトメーターにて蛍光強度を測定して、KDR+CARhigh細胞とKDR+CARlow/-細胞(それぞれK+CARhigh細胞、K+CARlow/-細胞と表記する場合もある)を検出し、単離した。 フローサイトメーターによる解析結果(培養7日目における中胚葉細胞(KDR+細胞)におけるCARの発現解析結果)を図17Bに示す。なお、ネガティブコントロールとしては、抗CAR抗体を作用させずに、2次抗体のみを作用させた細胞を用いた。この細胞はCARでは染色されないので、この細胞の蛍光強度をバックグラウンドとした。抗CAR抗体と2次抗体を作用させた細胞の解析においては、ネガティブコントロールの細胞と同程度の蛍光強度を示す細胞集団をCARlow/-細胞として単離し、それより発現が高い細胞集団をCARhigh細胞として単離した。(実施例9)ヒト多能性幹細胞由来のK+CARlow/-細胞の血液細胞への分化誘導 実施例8にて単離したヒトES細胞、ヒトiPS細胞由来のK+CARhigh細胞とK+CARlow/-細胞を、20%血清および50ng/mlマウスSCF(Peprotech社製)、50ng/ml ヒトFlt3L(Peprotech社製)、10ng/mL ヒトTPO(Peprotech社製)、5ng/ml マウスIL-3(R&D Systems社製)、5ng/ml ヒトIL-6(Peprotech社製)、50μM 2-メルカプトエタノール(Nacalai Tesque社製)を含むMEMα培地(Sigma社製)に再懸濁し、それぞれの細胞を1×104個ずつ、セミコンフルエントなOP9ストロマ細胞を支持細胞上で培養して、血液細胞への分化誘導を行った。分化誘導後、フローサイトメーター(LSRFortessa、BD Bioscience)を用いて白血球のマーカーであるCD45の発現を解析することで血液細胞への分化効率を評価した。 結果を図18に示す。ヒトES細胞、ヒトiPS細胞のいずれの多能性幹細胞に由来する細胞でも、K+CARlow/-細胞をOP9ストロマ細胞へ播種した際に産生される血液細胞数が有意に多くなることが明らかとなり、K+CARlow/-細胞は効率良く血液細胞に分化することがわかった。(実施例10)ヒト多能性幹細胞由来のK+CARhigh細胞の心筋細胞への分化誘導 実施例8にて単離したヒトES細胞、ヒトiPS細胞由来のK+CARhigh細胞とK+CARlow/-細胞を、10 ng/mlヒトVEGF(Peprotech社製)と、10 ng/ml FGF2(片山化学社製)を含むStempro34培地に懸濁し、ゼラチンコートした培養皿に播種した。7日後の細胞について、抗cTnT抗体(Fisher Scientific社製)を用いた免疫染色により発現解析を行うことで、心筋細胞への分化効率を評価した。 その結果を図19に示す。ヒトES細胞、ヒトiPS細胞いずれの多能性幹細胞に由来する細胞でも、K+CARhigh細胞を分化誘導した場合にcTnTで染色される細胞が多数検出され、K+CARhigh細胞が効率良く心筋細胞へ分化することがわかった。したがって、K+CARhigh細胞には心筋細胞への分化能を有する細胞が濃縮されていることが示唆された。 本発明によれば、多能性幹細胞から効率よく、高純度で血液細胞または心筋細胞を分化誘導することができる。よって本発明は、造血機能の不全や障害による造血系疾患の治療を目的とした再生医療などの、医薬関連分野への寄与が期待される。また心筋細胞は成人においては増殖しないものであり、本発明により得られる心筋細胞は種々の心臓疾患を治療する再生医療への応用が可能であり、有用である。多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団から、細胞表面におけるCAR(coxsackievirus and adenovirus receptor)の発現を指標として、血液細胞への分化能を有する細胞または心筋細胞への分化能を有する細胞を単離することを含む、多能性幹細胞から血液細胞または心筋細胞を製造する方法。以下の工程を含む、請求項1に記載の製造方法:1)多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団から、CARlow/-細胞またはCARhigh細胞を単離する工程; 2)工程1)により単離されたCARlow/-細胞またはCARhigh細胞を培養する工程。工程1)が、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団から、CARlow/-またはCARhighであり、かつ、中胚葉マーカーを発現する細胞を単離する工程である、請求項2に記載の製造方法。中胚葉マーカーがFlk1またはKDRであり、中胚葉マーカーを発現する細胞がFlk1+細胞またはKDR+細胞である、請求項3に記載の製造方法。請求項1〜4のいずれか1に記載の製造方法により得られた、血液細胞または心筋細胞を含む細胞集団。多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団について、細胞表面におけるCARの発現を指標として細胞集団を単離する方法であって、CARlow/-細胞を血液細胞への分化能を有する細胞として選別する、または、CARhigh細胞を心筋細胞への分化能を有する細胞として選別する、細胞集団を単離する方法。請求項6の単離方法により得られた、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団から選別された、CARlow/-である血液細胞分化誘導用細胞集団。請求項6の単離方法により得られた、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団から選別された、CARhighである心筋細胞分化誘導用細胞集団。 【課題】本発明は、効率よく多能性幹細胞から血液細胞または心筋細胞を製造する方法を提供することを課題とする。【解決手段】多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団から、細胞表面におけるCAR(coxsackievirus and adenovirus receptor)の発現を指標として、血液細胞への分化能を有する細胞または心筋細胞への分化能を有する細胞を単離することを含む、多能性幹細胞から血液細胞または心筋細胞を製造する方法による。より詳細には、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞を含む細胞集団から、CARlow/-細胞またはCARhigh細胞を単離する工程1)、および上記工程1)により単離されたCARlow/-細胞またはCARhigh細胞を培養する工程2)を含む多能性幹細胞から血液細胞または心筋細胞を製造する方法による。【選択図】図7


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