生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_アクアポリン産生改善剤
出願番号:2014082167
年次:2015
IPC分類:A61K 31/122,A61P 43/00,A61K 8/67,A61Q 19/00


特許情報キャッシュ

五十嵐 信智 落合 和 杉山 清 高橋 二郎 JP 2015203008 公開特許公報(A) 20151116 2014082167 20140411 アクアポリン産生改善剤 富士化学工業株式会社 390011877 恩田 誠 100105957 恩田 博宣 100068755 五十嵐 信智 落合 和 杉山 清 高橋 二郎 A61K 31/122 20060101AFI20151020BHJP A61P 43/00 20060101ALI20151020BHJP A61K 8/67 20060101ALI20151020BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20151020BHJP JPA61K31/122A61P43/00 111A61K8/67A61Q19/00 4 1 OL 12 4C083 4C206 4C083AD621 4C083BB51 4C083CC02 4C083EE12 4C206AA01 4C206AA02 4C206CB25 4C206MA01 4C206MA04 4C206MA83 4C206NA14 4C206ZA89 4C206ZC41 本発明は、優れたアクアポリンの産生を改善する作用を発揮するアクアポリン産生改善剤に関する。 従来より、細胞膜に存在する細孔を持ったタンパク質としてアクアポリン(Aquaporin、AQP)が知られている。アクアポリンは、水を選択的に透過させ、イオンや他の物質は透過させないことから水チャンネルと呼ばれている。アクアポリンによる水の移動は浸透圧によりコントロールされ、アクアポリンを介した水の移動は、アクアポリンのタンパク質の発現量によりコントロールされている。現在、13種類のアクアポリン(AQP0〜12)が知られている。例えば、水のみを選択的に透過するアクアポリン(AQP0〜2,4〜6,8)、水とグルセリンを透過するアクアグリセロポリン(AQP3,7,9,10)等に分類される。 従来より、特許文献1,2に開示されるアクアポリン産生改善剤が知られている。特許文献1は、ラベンダー等の天然物由来の抽出物を含有するアクアポリンの産生を増強するために使用する製剤について開示する。特許文献2は、ザクロ等の天然物由来の抽出物を含有するアクアポリンの産生を増大させる化粧料等について開示する。特開2010−241777号公報特表2012−527404号公報 本発明の目的とするところは、優れたアクアポリンの産生を改善する作用を発揮するアクアポリン産生改善剤を提供することにある。 本発明は、アスタキサンチンがアクアポリン産生を改善する作用を高めることができることを見出したことによりなされたものである。 上記の目的を達成するために、本発明のアクアポリン産生改善剤では、アスタキサンチンを有効成分とすることを特徴とする。前記アクアポリン産生改善剤は、皮膚に適用されることが好ましい。前記アクアポリン産生改善剤は、医薬品として適用されることが好ましい。前記アクアポリン産生改善剤は、前記アクアポリンがアクアポリン3であることが好ましい。 本発明によれば、優れたアクアポリンの産生を改善する作用を発揮することができる。実施例1におけるアスタキサンチンの皮膚アクアポリン3に対する効果を示すグラフ。(各数値は平均±標準偏差を示す。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001 vs コントロール群)。実施例2におけるアスタキサンチンの肝臓アクアポリン9に対する効果を示すグラフ。(各数値は平均±標準偏差を示す。*P<0.05 vs コントロール群)。実施例3におけるアスタキサンチンの大腸アクアポリン3に対する効果を示すグラフ。(各数値は平均±標準偏差を示す。*P<0.05、**P<0.01 vs コントロール群)。 以下、本発明のアクアポリン産生改善剤を具体化した一実施形態を説明する。 アクアポリン産生改善剤の有効成分であるアスタキサンチンは、β−カロテンやリコピンと同じくカロテノイドの一種でキサントフィル類に分類される。アスタキサンチンは、天然物由来のもの又は合成により得られるものいずれも使用することができる。天然物由来のものとしては、例えば、エビ、オキアミ、カニなどの甲殻類の甲殻、卵及び臓器、種々の魚介類の皮及び卵、ヘマトコッカス藻などの藻類、ファフィア酵母などの酵母類、パラコッカス細菌などの海洋性細菌、福寿草及び金鳳花などの種子植物から得られるものを挙げることができる。これらの天然物のうち、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。天然からの抽出物及び化学合成品は市販されており、入手は容易である。 アスタキサンチンは、例えば、ファフィア酵母、ヘマトコッカス藻、パラコッカス細菌などを、公知の方法に準拠して、適宜な培地で培養することにより得ることもできる。培養や抽出のしやすさ、アスタキサンチンを最も高濃度で含有することや生産性の高さからヘマトコッカス藻が最も好適である。 ヘマトコッカス藻は、ボルボックス目クラミドモナス科に属する緑藻類であり、通常は緑藻であるためクロロフィル含量が高く緑色であり、2本の鞭毛によって水中を遊泳しているが、栄養源欠乏や温度変化等の飢餓条件では休眠胞子を形成し、アスタキサンチン含量が高くなり赤い球形となる。本実施形態においては、いずれの状態でのヘマトコッカス藻を用いることができるが、アスタキサンチンを多く含有した休眠胞子となったヘマトコッカス藻を用いるのが好ましい。また、ヘマトコッカス属に属する緑藻類では、例えば、ヘマトコッカス・プルビイアリス(Haematococcus pluvialis)が好ましい。 ヘマトコッカス藻のアスタキサンチン含量の高いものを得る培養方法としては、異種微生物の混入・繁殖がなく、その他の夾雑物の混入が少ない密閉型の培養方法が好ましい。例えば、密閉型のドーム形状、円錐形状又は円筒形状の培養装置と装置内で移動自在のガス吐出装置を有する培養基を用いて培養する方法(例えば、国際公開第99/50384号パンフレット参照)や、密閉型の培養装置に光源を入れ内部から光を照射して培養する方法、平板状の培養槽で培養する方法が適している。 前記培養物、又は前記甲殻類等の天然物からアスタキサンチンを抽出及び精製する方法については公知の方法、例えば溶媒抽出法及びクロマトグラフィー法を用いて、精製することができる。例えば、ジエステル型アスタキサンチンの場合、油溶性物質であることから、アスタキサンチンを含有する天然物からアセトン、アルコール、酢酸エチル、ベンゼン、クロロホルムなどの油溶性有機溶媒でアスタキサンチン含有成分を抽出することができる。また、二酸化炭素、プロパン及び水などを用い超臨界抽出を行うこともできる。抽出後、常法に従って溶媒を除去してモノエステル型のアスタキサンチンとジエステル型のアスタキサンチンの混合濃縮物を得ることができる。得られた濃縮物は、所望によりさらに精製してもよい。これらのアスタキサンチンの抽出及び精製方法のうち、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。 アスタキサンチンの使用形態としては、前記方法で得たアスタキサンチンの抽出物及びそれらを含有した粉末や水溶液、又はファフィア酵母、ヘマトコッカス藻、パラコッカス細菌などの乾燥品及びそれらの破砕品を用いることができる。 アスタキサンチンは、3,3′−ジヒドロキシ−β,β−カロテン−4,4′−ジオンであり、立体異性体を有する。具体的には、(3R,3′R)−アスタキサンチン、(3R,3′S)−アスタキサンチン及び(3S,3′S)−アスタキサンチンの3種の立体異性体が知られているが、本発明には、そのいずれも用いることができる。本発明の記載で、特に記載がない限り、アスタキサンチンはアスタキサンチン及び/又はそのエステルを含む。さらに、アスタキサンチンのエステルにはモノエステル体及び/又はジエステル体を含む。アスタキサンチンは突然変異原性が観察されず、安全性が高い化合物であることが知られている。 本実施形態のアスタキサンチンを有効成分とするアクアポリン産生改善剤には、アスタキサンチンの遊離体、モノエステル体、ジエステル体の少なくとも一種を用いることができる。ジエステル体は2つの水酸基がエステル結合により保護されているため物理的に遊離体やモノエステル体よりも安定性が高くアクアポリン産生改善剤中で酸化分解されにくい。しかし、生体中に取り込まれると生体内酵素により速やかにアスタキサンチンに加水分解され、効果を示すものと考えられている。 アスタキサンチンのモノエステルとしては、低級又は高級飽和脂肪酸、あるいは低級又は高級不飽和脂肪酸によりエステル化されたエステル類、及び脂肪酸の各種置換基を備えたものを挙げることができる。前記低級又は高級飽和脂肪酸、あるいは低級又は高級不飽和脂肪酸の具体例としては、酢酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、へプタデカン酸、エライジン酸、リシノール酸、ベトロセリン酸、バクセン酸、エレオステアリン酸、プニシン酸、リカン酸、パリナリン酸、ガドール酸、5−エイコセン酸、5−ドコセン酸、セトール酸、エルシン酸、5,13−ドコサジエン酸、セラコール酸、デセン酸、ステリング酸、ドデセン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、コハク酸等を挙げることができる。 さらに、アスタキサンチンのモノエステルとしては、例えばグリシン、アラニンなどのアミノ酸;酢酸、クエン酸などの一価又は多価カルボン酸;リン酸、硫酸などの無機酸;グルコシドなどの糖;グリセロ糖脂肪酸、スフィンゴ糖脂肪酸などの糖脂肪酸;グリセロ脂肪酸などの脂肪酸;グリセロリン酸などによりエステル化されたモノエステル類を挙げることができる。尚、考えられ得る場合は前記モノエステル類の塩も含む。脂肪酸の誘導体としては、例えば上記脂肪酸のリン脂質型、アルコール型、エーテル型、ショ糖エステル型、ポリグリセリンエステル型が挙げられる。 アスタキサンチンのジエステルとしては、例えば前記低級飽和脂肪酸、中鎖飽和脂肪酸、高級飽和脂肪酸、低級不飽和脂肪酸、中鎖不飽和脂肪酸、高級不飽和脂肪酸、アミノ酸、一価又は多価カルボン酸、無機酸、糖、糖脂肪酸、脂肪酸及びグリセロリン酸からなる群から選択される同一又は異種の酸によりエステル化されたジエステル類を挙げることができる。尚、考えられ得る場合は前記ジエステル類の塩も含む。脂肪酸としては、例えば上記アスタキサンチンのモノエステル欄において例示した脂肪酸を挙げることができる。グリセロリン酸のジエステルとしては、例えばグリセロリン酸の飽和脂肪酸エステル類、又は高級不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸又は飽和脂肪酸から選択される脂肪酸類を含有するグリセロリン酸エステル類などを挙げることができる。 これらのアスタキサンチンのエステル体としては、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。 本実施形態のアクアポリン産生改善剤にビタミンE類(トコフェロール類)を配合することができる。ビタミンE類は、ビタミンE、トコトリエノール及びそれらの誘導体を包含する。ビタミンE類としてはそれらのうちの1種以上が含まれているオイルが用いられてもよい。ビタミンE類の具体例としては、dl−α−トコフェロール、d−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、酢酸d−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、コハク酸d−α−トコフェロール、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸d−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、d−β−トコフェロール、酢酸dl−β−トコフェロール、酢酸d−β−トコフェロール、コハク酸dl−β−トコフェロール、コハク酸d−β−トコフェロール、ニコチン酸dl−β−トコフェロール、ニコチン酸d−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、d−γ−トコフェロール、酢酸dl−γ−トコフェロール、酢酸d−γ−トコフェロール、コハク酸dl−γ−トコフェロール、コハク酸d−γ−トコフェロール、ニコチン酸dl−γ−トコフェロール、ニコチン酸d−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、d−δ−トコフェロール、酢酸dl−δ−トコフェロール、酢酸d−δ−トコフェロール、コハク酸dl−δ−トコフェロール、コハク酸d−δ−トコフェロール、ニコチン酸dl−δ−トコフェロール、ニコチン酸d−δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が挙げられる。特に、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノールが好ましい。これらのビタミンE類としては、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。 アクアポリン産生改善剤には、そのアクアポリン産生改善作用を損なわない範囲で上記以外の成分を含有させてもよい。上記以外の成分としては、例えば賦形剤、基剤、乳化剤、安定剤、香料、溶媒等が挙げられる。アクアポリン産生改善剤は、液状であってもよいし、固体状であってもよい。剤形としては、特に限定されないが、例えば散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、液剤等が挙げられる。 アクアポリン産生改善剤は、主にアクアポリン産生改善作用を効果・効能とする医薬品、医薬部外品等の有効成分として有効量配合されることにより摂取される。アクアポリン産生の改善を目的とした摂取により、主に体内におけるアクアポリンの産生改善に対して有用である。また、アクアポリン産生改善剤は、皮膚外用剤において、アクアポリン産生の改善を目的として有効量配合することにより皮膚に適用される。また、アクアポリン産生改善剤は、化粧品において、アクアポリン産生の改善を目的として有効量添加することにより皮膚に適用してもよい。このような皮膚外用剤又は化粧品によるアクアポリン産生の改善を目的とした皮膚表面への塗布は、主に皮膚に存在するアクアポリン3に対する産生の改善に対して有用である。このアクアポリン産生改善剤の有効量は、適用目的、適用方法、適用者の年齢、性別、及びその他の条件等を考慮し、適宜決定される。 本実施形態のアクアポリン産生改善剤を医薬品に有効量配合する場合は、服用(経口摂取)により投与する場合の他、血管内投与、経皮投与等のあらゆる投与方法を採用することが可能である。医薬品の剤形としては、特に限定されないが、例えば、散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、液剤、注射剤等が挙げられる。また、添加剤として賦形剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤等を配合してもよい。 本実施形態のアクアポリン産生改善剤を皮膚外用剤に有効量配合する場合、皮膚外用剤の皮膚への塗布により生体へ適用される。皮膚外用剤の剤形としては、アクアポリン産生改善剤の目的等に応じ公知の剤形を適宜採用することができる。例えば、軟膏、液剤、スプレー剤、シート剤、散剤、粉剤等の剤形が挙げられる。また、添加剤として、例えば賦形剤、基剤、安定剤等を配合してもよい。 本実施形態のアクアポリン産生改善剤が化粧品に有効量添加される場合、種々の化粧品素材にアスタキサンチンを添加することにより使用される。化粧品としては、例えば化粧水、乳液、ファンデーション、フェイスパウダー、頬紅、口紅、マスカラ、アイライナー、アイシャドー、クレンジング、マニキュア、毛髪化粧料等が挙げられる。 次に、上記のように構成されたアクアポリン産生改善剤の作用を説明する。 本実施形態のアクアポリン産生改善剤は、有効成分であるアスタキサンチンにより高いアクアポリンの産生改善作用を発揮する。より具体的には、アスタキサンチンは、生体内のアクアポリンの発現量を増加させ、アクアポリンを介した細胞膜間の物質の移動を増加させる。アクアポリンは、現在13種類(AQP0〜12)知られているが、そのいずれにも適用することができる。また、現在アクアポリンが発現していることが知られている臓器・器官として、眼(AQP0,5)、脳(AQP4)、気管(AQP3,4)、唾液腺(AQP5)、肝臓(AQP9)、肺(AQP1,5)、心臓(AQP1)、膵臓(AQP12)、皮膚(AQP3)、腎臓(AQP1〜4,6,7,11)、腸(AQP1〜4,7〜10)、筋肉(AQP4)が知られているが、そのいずれにも適用することができる。特に、皮膚及び大腸に存在するアクアポリン3、肝臓のアクアポリン9の産生改善作用の発揮に好ましく適用される。 本実施形態のアクアポリン産生改善剤によれば、以下のような効果を得ることができる。 (1)本実施形態のアクアポリン産生改善剤は、有効成分としてアスタキサンチンを含有する。したがって、優れたアクアポリンの産生改善作用を発揮することができる。 (2)本実施形態のアクアポリン産生改善剤は、好ましくは皮膚に適用される。したがって、皮膚に存在するアクアポリン3の発現量を増加させることができる。 (3)本実施形態のアクアポリン産生改善剤は、好ましくは医薬品として適用される。したがって、皮膚外用剤や皮下注射の形態で、特に皮膚に適用することができる。また、経口投与や経腸投与により、大腸の他、各器官中に存在するアクアポリンの発現量を増加させることができる。 (4)本実施形態のアクアポリン産生改善剤は、好ましくはアクアポリンがアクアポリン3である。したがって、例えば皮膚や大腸に存在するアクアポリン3の発現量を増加させることができる。 (5)本実施形態のアクアポリン産生改善剤は、便秘の副作用を生じさせることなく大腸に存在するアクアポリン3の発現量を増加させることができる。つまり、便秘の副作用を生じさせることなく、他のアクアポリンの産生を改善することもできる。 (6)本実施形態のアクアポリン産生改善剤は、有効成分としてアスタキサンチンを含有する。したがって、副作用を生ずるおそれがなく、安全に各種用途に適用することができる。また、アスタキサンチンとして、天然由来の原料が用いられた場合、生体に対する安全性をより向上させることができる。 なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。 ・上記実施形態のアクアポリン産生改善剤は、ヒトに適用される医薬品等に使用することができるのみならず、家畜等の飼養動物に対する薬剤等に適用してもよい。 ・上記実施形態のアクアポリン産生改善剤は、公知のアクアポリン活性剤、例えばピオグリタゾン、シグリダゾン、オランダガラジ抽出物、ビタミンA等を配合してもよい。 次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。 <実施例1:アスタキサンチンの皮膚アクアポリン3に対する効果> アスタキサンチンを使用して皮膚由来細胞(NHEK)に対するアクアポリン3発現促進作用について評価した。 皮膚由来細胞として、正常ヒト表皮角化細胞(NHEK、倉敷紡績社製)を5.0×103細胞/ウェルとなるように24ウェルプレートに播種後、37℃で、毎日培地(MCDB153培地:Sigma社製)交換を行いながら9日間培養した。その後、先ほどの培地から血清を除いたものに、アスタキサンチン(シグマ社製)を、培地添加後の濃度が、それぞれ0μM(コントロール:0.1質量%DMSO)、2.5μM、5μM、10μMとなるようにDMSOに溶解させた試料を添加し、細胞に培地を交換することで作用させた。対照群としては、すでに皮膚におけるアクアポリン3の活性化作用が報告されているピオグリタゾン(武田薬品工業社製)を、培地添加後の濃度が、それぞれ0μM(コントロール:0.1質量%DMSO)、10μM、20μMとなるようにDMSOに溶解させた試料を添加し、同様の培養実験を行った。培地交換後6時間培養を行い、時間経過後培地をプレートから除去し、PBSで洗浄後、ISOGENを各ウェル500μLずつ添加し、懸濁することで細胞中のRNAを溶解させた。その後、RNAを抽出し、逆転写酵素(タカラバイオ社製)でcDNAを作成した。作成したcDNAを用いてリアルタイムPCR(アプライドシステムズジャパン社製)を使用してアクアポリン3の遺伝子量の定量を行った。結果を表1及び図1に示す。尚、結果は、コントロール(アスタキサンチン添加量0μM)を100%として、各アスタキサンチン濃度の効果の割合を算出した。 表1及び図1に示されるように、表皮角化細胞におけるアクアポリン3の発現量がアスタキサンチンの濃度依存的に増加することが確認された。アスタキサンチンは、陽性コントロールであるピオグリタゾンよりも優れたアクアポリン3発現量の増加作用を有することが確認された。 <実施例2:アスタキサンチンの肝臓アクアポリン9に対する効果> アスタキサンチンを使用して肝細胞(Hepa1−6細胞)に対するアクアポリン9発現促進作用について評価した。 肝細胞としてマウス肝癌由来細胞(Hepa1−6細胞)を2.5×103細胞/ウェルとなるように24ウェルプレートに播種後、37℃で5%CO2インキュベーターで培養を行い、3日に一度培地交換を行いながら80%コンフレントになるまで培養を継続した。その後、先ほどの培地から血清を除いたものに、アスタキサンチンを、培地添加後の濃度が、それぞれ0μM(コントロール:0.1質量%DMSO)、2.5μM、5μM、10μMとなるようにDMSOに溶解させた試料を添加し、細胞に培地を交換することで作用させた。対照群としては、すでに肝細胞におけるアクアポリン9の活性化作用が報告されているピオグリタゾンを、培地添加後の濃度が、それぞれ0μM(コントロール:0.1質量%DMSO)、10μM、100μMとなるようにDMSOに溶解させた試料を添加し、同様の培養実験を行った。培地交換後6時間培養を行い、時間経過後培地をプレートから除去し、PBSで洗浄後、ISOGENを各ウェル500μLずつ添加し、懸濁することで細胞中のRNAを溶解させた。その後、RNAを抽出し、逆転写酵素でcDNAを作成した。作成したcDNAを用いてリアルタイムPCRを使用してアクアポリン9の遺伝子量の定量を行った。結果を表2及び図2に示す。尚、結果は、コントロール(アスタキサンチン添加量0μM)を100%として、各アスタキサンチン濃度の効果の割合を算出した。 表2及び図2に示されるように、肝細胞におけるアクアポリン9の発現量がアスタキサンチンの濃度依存的に増加することが確認された。アスタキサンチンは、陽性コントロールであるピオグリタゾンよりも優れたアクアポリン9発現量の増加作用を有することが確認された。 <実施例3:アスタキサンチンの大腸アクアポリン3に対する効果> アスタキサンチンを使用して大腸由来細胞(HT−29細胞)に対するアクアポリン3発現促進作用について評価した。 大腸由来細胞としてヒト結腸癌由来細胞(HT−29細胞)を2.5×103細胞/ウェルとなるように24ウェルプレートに播種後、37℃で5%CO2インキュベーターで培養を行い、3日に一度培地交換を行いながら80%コンフレントになるまで培養を継続した。その後、先ほどの培地から血清を除いたものに、アスタキサンチンを、培地添加後の濃度が、それぞれ0μM(コントロール:0.1質量%DMSO)、2.5μM、5μM、10μMとなるようにDMSOに溶解させた試料を添加し、細胞に培地を交換することで作用させた。対照群としては、すでに大腸におけるアクアポリン3の活性化作用が報告されているピオグリタゾンを、培地添加後の濃度が、それぞれ0μM(コントロール:0.1質量%DMSO)、10μM、100μMとなるようにDMSOに溶解させた試料を添加し、同様の培養実験を行った。培地交換後6時間培養を行い、時間経過後培地をプレートから除去し、PBSで洗浄後、ISOGENを各ウェル500μLずつ添加し、懸濁することで細胞中のRNAを溶解させた。その後、RNAを抽出し、逆転写酵素でcDNAを作成した。作成したcDNAを用いてリアルタイムPCRを使用してアクアポリン3の遺伝子量の定量を行った。結果を表3及び図3に示す。尚、結果は、コントロール(アスタキサンチン添加量0μM)を100%として、各アスタキサンチン濃度の効果の割合を算出した。 表3及び図3に示されるように、結腸細胞におけるアクアポリン3の発現量がアスタキサンチンの濃度依存的に増加することが確認された。アスタキサンチンは、陽性コントロールであるピオグリタゾンとほぼ同等のアクアポリン3発現量の増加作用を有することが確認された。 尚、大腸においてアクアポリン3を増加させる作用を有することが知られている硫酸ナトリウムは、大腸の消化管内における水分量を減少させ、便秘の副作用を引き起こす場合がある。上述したように、ピオグリタゾンも、大腸においてアクアポリン3の産生を増加する作用を示すことが知られている。しかしながら、ピオグリタゾンは、大腸の消化管内における水分量を減少させるが、便秘を誘発する副作用は生じさせないことが知られている。したがって、アスタキサンチンにおいても、大腸においてピオグリタゾンとほぼ同等のアクアポリン3発現量の増加作用を有するため、便秘を誘発する副作用は生じさせないと推測される。 上記試験結果に示されるように、皮膚及び大腸に存在するアクアポリン3、肝臓のアクアポリン9の産生改善作用が確認された。したがって、アスタキサンチンは、臓器によらず、また、アクアポリンの種類によらず、他のアクアポリンについても産生改善作用を発揮する可能性が示唆された。 次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。 (a)前記アクアポリン産生改善剤を含有する化粧品。従って、この(a)に記載の発明によれば、皮膚に存在するアクアポリン3の発現量を増加させることができる。 アスタキサンチンを有効成分として含有することを特徴とするアクアポリン産生改善剤。 皮膚に適用されることを特徴とする請求項1に記載のアクアポリン産生改善剤。 医薬品として適用されることを特徴とする請求項1に記載のアクアポリン産生改善剤。 前記アクアポリンがアクアポリン3であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアクアポリン産生改善剤。 【課題】優れたアクアポリンの産生を改善する作用を発揮するアクアポリン産生改善剤を提供する。【解決手段】本発明は、アスタキサンチンを有効成分として含有することを特徴とするアクアポリン産生改善剤に関する。好ましくは、皮膚に適用される。また、好ましくは、医薬品として適用される。また、好ましくは、前記アクアポリンがアクアポリン3である。【選択図】図1


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