タイトル: | 公開特許公報(A)_鉄錯体部位を含有する自励振動ゲル |
出願番号: | 2014076192 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | B01J 31/22,C08F 26/06,C07F 15/02,C07D 213/22 |
原 雄介 藤本 賢二 JP 2014210260 公開特許公報(A) 20141113 2014076192 20140402 鉄錯体部位を含有する自励振動ゲル 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 原 雄介 藤本 賢二 JP 2013079538 20130405 B01J 31/22 20060101AFI20141017BHJP C08F 26/06 20060101ALI20141017BHJP C07F 15/02 20060101ALN20141017BHJP C07D 213/22 20060101ALN20141017BHJP JPB01J31/22 ZC08F26/06C07F15/02C07D213/22 3 OL 12 特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物名 The Journal of Physical Chemistry B,2014,118(2) 発行日 平成25年12月21日 4C055 4G169 4H050 4J100 4C055AA01 4C055BA02 4C055BA25 4C055CA01 4C055DA05 4C055DA06 4G169AA04 4G169BA22A 4G169BA22B 4G169BA27A 4G169BA27B 4G169BC66A 4G169BC66B 4G169BE38A 4G169BE38B 4G169CB59 4G169CB68 4G169FA02 4G169FB06 4G169FB77 4H050AA03 4H050AB46 4H050AB80 4H050AB90 4H050WB14 4H050WB23 4J100AM17Q 4J100AM17R 4J100AM24Q 4J100AM24R 4J100AQ11P 4J100BD04P 4J100CA05 4J100CA23 4J100DA55 4J100FA03 4J100FA19 4J100JA43 本発明は、鉄錯体部位を含有する自励振動ゲルに関する。 生命体は外部制御装置および外部電源に頼ることなく、生体内部で化学反応を直接的に力学的なエネルギーに変換して駆動する自律的な分子システムである。生命体のように自律的に駆動する分子システムをテイラーメイドで構築することができれば、外部電源・外部制御装置に頼ることなく駆動するシステムを人工的に構築することができる(非特許文献1、2)。このような分子システムを構築するために、リズム反応であるBelousov-Zhabotinsky(ベロウソフ・ジャボチンスキ)反応(BZ反応)(非特許文献3、4)を化学反応源とする自励振動ゲルが開発されている。自励振動ゲルは、心筋細胞のように自励的に駆動するソフトマテリアルである。BZ反応中では、金属触媒の酸化還元状態が周期的なリズムを持って振動する。自励振動ゲルはBZ反応の金属触媒を主鎖に内包しているため、金属触媒の酸化還元状態の周期的な変化にシンクロナイズしてその膨潤率(含水率)が変化する。 BZ反応を駆動源とする高分子システムの研究は、1982年に石渡(信州大)らがリニアポリマーに金属触媒を共有結合することで(非特許文献5)、また1996年に吉田(東大)らが高分子鎖に化学結合を導入することでゲル化することに成功している(非特許文献6)。これら自励振動する高分子システムは、BZ反応触媒であるルテニウム−ビピリジン錯体(以下、「Ru(bpy)3」とする。)を高分子鎖に共有結合させることで達成している。ポリマー鎖内に共有結合によって導入されたRu(bpy)3部位は、酸化状態(Ru(III))と還元状態(Ru(II))でその水和構造が異なる。そのため、Ru(bpy)3部位を有する自励振動ゲルは、酸化状態で水との親和性がより高くなるため膨潤し、また還元状態では水との親和性が低くなるため収縮する。このような自励的な膨潤収縮運動をアクチュエータとして利用することも可能で、外部制御装置・外部電源を必要としないメリットを活かすこともできる(非特許文献7、8)。 自励振動ゲルを用いた配列体及びその製造方法、並びに自律応答体及びその製造方法(特許文献1)、さらに自励振動ゲルを用いた配列体、自律応答体、自律応答装置、自律応答方法、及び自律応答性ゲルの配列体の製造方法(特許文献2)が公知化されている。前田真吾、原雄介、吉田亮、橋本周司(2008)化学ロボットの実現を目指した自励振動ゲルアクチュエーターの創製, 高分子論文集, 10(65), pp.634-640.原雄介(2009)生体環境下で駆動する新規自励振動型高分子の創製と自励粘性振動の解析, 66(8), pp.289-297.Zaikin,A.N.; Zhabotinsky,A.M. (1970). Concentration Wave propagation in two-dimensional liquid-phase self-oscillating system,Nature,225,pp.535-537.Field,R.J.; Burger,M. (1985). Oscillations and Traveling Waves in Chemical Systems; John Wiley & Sons: New York,NY,USA.Ishiwatari,T.; Kawaguchi,M.; Mitsuishi,M. (1984). Oscillatry reactions in polymer systems,Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry,22,pp. 2699-2704Yoshida,R.; Takahashi,T.; Yamaguchi,T.; Ichijo,H. (1996). Self-oscillating gel,Journal of the American Chemical Society,118,pp.5134-5135.R. Yoshida,T. Sakai,Y. Hara,S. Maeda,S. Hashimoto,D. Suzuki,Y. Murase: “Self-oscillating gel as novel biomimetic materials” Journal of Controlled Release,140(3),pp.186-193 (2009).S. Maeda,Y. Hara,S. Nakamaru,S. Hashimoto: “Design of autonomous gel actuators” Polymers,3(1),pp.299-313 (2011).特開2010−222465号公報特開2010−58185号公報 外部電源・外部制御装置を用いることなくBelousov-Zhabotinsky(ベロウソフ・ジャボチンスキ)反応(BZ反応)を直接的に力学的なエネルギーに変換して自ら駆動する新規自励振動ゲルにおいて、BZ反応部位は、これまでRu系錯体のみで達成されてきた。 例えば、前記特許文献1、2には、ルテニウム錯体、セリウム錯体、マンガン錯体、又は鉄−フェナントロリン錯体が例示されてはいるものの、具体的なゲルとして記載されているものは、以下の構造を有するゲルだけであって、ルテニウム錯体以外については、具体的な記載はされていない。 このように、従来はBZ反応部位として、レアメタルであるRu系錯体を用いることが必須の要件であったため、コストが高く、実用化するためには大きな障害となっていた。 またレアメタルであるためRu系錯体の価格は国際的な状況にも大きな影響を受け、また入手量の確保も今後安定しないといった問題を抱えていた。そのため、自励振動ゲルを実用化するにあたり、コストおよび入手量の安定化を図ることが可能な新規自励振動ゲルの開発が望まれていた。 本発明は、こうした現状を鑑みてなされたものであって、外部電源・外部制御装置を用いることなくBelousov-Zhabotinsky(ベロウソフ・ジャボチンスキ)反応(BZ反応)を直接的に力学的なエネルギーに変換して自ら駆動する自励振動ゲルにおいて、BZ反応部位として、レアメタルであるルテニウム系錯体を用いない安価な自励振動ゲルを提供することを目的とするものである。 本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、鉄-ビピリジン錯体(Fe(bpy)3)を含有するモノマーと高分子鎖の主鎖を形成するモノマーとを共重合することで、外部電源・外部制御装置を用いることなくBZ反応を直接的に力学的なエネルギーに変換して自ら駆動する安価な新規自励振動ゲルを達成できるという知見を得た。 本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。[1]Belousov-Zhabotinsky(ベロウソフ・ジャボチンスキ)反応を直接的に力学的なエネルギーに変換して自ら駆動することが可能な自励振動ゲルであって、 ゲルを構成する高分子主鎖に、該反応の触媒である下記の式で表される鉄-ビピリジウム錯体を含有する部位と、架橋部位を有していることを特徴とする自励振動ゲル。[2]ゲルを構成する高分子主鎖が、下記の式で表される構成単位を有していることを特徴とする[1]に記載の自励振動ゲル。[3]前記高分子ゲルの構造が、インターペネトレーションネットワーク(IPN)もしくはセミインターペネトレーションネットワーク(Semi-IPN)構造を有することを特徴とする[1]又は[2]に記載の自励振動ゲル。 本発明であるFe(bpy)3を触媒とする新規自励振動ゲルは、Belousov-Zhabotinsky(ベロウソフ・ジャボチンスキ)反応(BZ反応)を駆動源として外部電源および外部制御装置不要で駆動させることが可能である。本発明により、従来型のレアメタルであるRu系触媒を用いた自励振動ゲルよりも廉価な自励振動ゲルを合成可能にする。またRu系触媒は光の影響を受けてBZ反応が止まってしまうなどの影響があることが広く知られているが、Fe(bpy)3触媒を用いれば光の影響をほとんど受けずに安定的に自励振動を起こすことが可能となる画期的な技術である。実施例3で得られたゲルの時空間プロットを示す図 以下、本発明の新規自励振動ゲルについて詳しく記載する。 本発明において化学反応を直接的に力学的なエネルギーに変換して駆動する自励振動ゲルは、Belousov-Zhabotinsky(ベロウソフ・ジャボチンスキ)反応(BZ反応)の触媒として機能する鉄−ビピリジウム錯体を含有する部位を、化学結合でゲルを構成する高分子鎖に有していることを特徴とする。 具体的には、本発明の新規自励振動ゲルは、鉄−ビピリジウム錯体を含有するモノマーを用いて合成される。本発明における鉄−ビピリジウム錯体を含有するモノマーは新規な化合物であって、例えば、下記の構造を有する、Fe(4-vinyl-4’-methyl-2,2-bipyridine)bis(2,2’-bipyridine)bis((tetrafluoroborate)(以下、「Fe(bpy)3モノマー」という。)があげられる。 例示したモノマーでは、Fe(bpy)3とビニル基が直接結合しているが、本発明においては、高分子鎖に、Fe(bpy)3を含有する部位が化学結合していればよく、Fe(bpy)3以外の部位、例えば、エチレンオキサイド基などが、Fe(bpy)3とビニル基の間に結合していても、あるいは、分岐構造でぶら下がっていたりしてもよいことはいうまでもない。 本発明の自励振動ゲルの主鎖は、該Fe(bpy)3を含有するモノマーの他、温度応答性モノマー、親水性モノマーからなり、弾性率をコントロールするために疎水性モノマーやマクロモノマーを含有していてもよい。 また、本発明で合成するゲルは、ネットワークがシングルのいわゆる通常のゲルに加え、ゲルの内部にゲルネットワークが存在するIPN構造(ダブルネットワーク構造)(J.P.Gong,Y.Katsuyama,T.Kurokawa,Y.Osada“Double Network Hydrogels with Extremely High Mechanical Strength”Advanced Materials,15(14),1155-1158(2003).参照)、又は、ゲルの内部にリニアポリマーが存在するSemi-IPN構造でもよい。この場合、Semi-IPN構造やIPN構造を持ったゲルは、アクリルアミドゲルもしくはアクリルアミドポリマーもしくはそれらを主鎖とする共重合体である方がゲルの弾性率は高く、ゲルが強靭となりやすいため、アクチュエータや人工筋肉等、使用する場面が大きく広がる。 本発明において、ゲルの主鎖に化学結合によって導入されるBZ反応の金属触媒である、鉄−ビピリジン(Fe(bpy)3)錯体の含有率は0.5〜10モル%、好ましくは0.5〜5モル%、さらに好ましくは1〜3モル%である。 本発明で化学反応を直接的に力学的なエネルギーに変換できる自励振動ゲルの高分子鎖を構成可能な主鎖として例えば、N-イソプロピルアクリルアミド、N-エトキシエチルメタクリルアミド、N-アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体のうち、N-n-プロピルアクリルアミド、N-n-プロピルメタクリルアミド、N-テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド、N-エトキシエチルアクリルアミド、N-テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、ビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド、メチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩、ヒドロキシエチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルなどがあげられる。また水溶性をコントロールする部位としてビニルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、4-ビニルベンゼンスルホン酸、メタクリルスルホン酸などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 本発明で化学反応を直接的に力学的なエネルギーに変換できる自励振動ゲルの製造としては、上記各モノマーを共重合したゲルを構成する高分子鎖であり、またBZ反応の触媒であるFe(bpy)3を化学的にゲルの主鎖に内包可能であれば特に限定されるものではない。重合方法としては熱や光に限定されるものではなく、ゲルが合成できれば手段を選ぶものではない。また上記のモノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 ゲルの重合に使用する溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン等の芳香族・脂肪族又は複素環式化合物、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどの各種有機溶剤が使用できる。 本発明において重合時のモノマー濃度は10〜50重量%、好ましくは15〜30重量%、さらに好ましくは18〜25重量%である。モノマー濃度が低すぎるとゲルが形成されず、また高すぎるとゲルが脆くなる。 重合開始剤としては、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。 重合開始剤濃度は、通常、使用するモノマーに対して0.1〜10モル%が好ましい。更に、分子量を規制するためにアルキルメルカプタンのような連鎖移動剤、ルイス酸化合物などの重合促進剤、リン酸、酒石酸、乳酸、クエン酸などのpH調整剤を使用してもよい。重合温度は、用いられる溶媒、重合開始剤により適宜定められるが、通常、室温〜200℃がよい。 以下、本発明について実施例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 [実施例1:Fe(bpy)3含有モノマーの製造] (4-メチル-4’-(2-メトキシエチル)-2,2’-ビピリジンの合成) 窒素雰囲気下、5Lの3口フラスコにジイソプロピルアミン43.25g(427mmol)とTHF 200mlを仕込み、−25℃で1.6Mn-ブチルリチウムのヘキサン溶液267ml(427mmol)を滴下した。続いて、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン75.00g(407mmol)のTHF 1.5L溶液を0℃以下で滴下した。同温度で1時間撹拌した後、クロロメトキシメタン36.05g(448mmol)を5℃以下で滴下し室温まで自然昇温させた。THF水溶液を滴下することで反応を停止させ、酢酸エチル1Lで抽出し、粗生成物を得た。精製はシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いた展開溶媒ジクロロメタン:メタノールの30:1〜10:1で精製し、4-メチル-4’-(2-メトキシエチル)-2,2’-ビピリジンを得た。 得られた化合物の分析結果を以下に示す。NMR(CDCl3):8.60ppm(2H,d),8.40ppm(2H,s),7.02ppm(2H,d),3.70ppm(sH,t),3.24ppm(3H,s),2.72ppm(2H,t),2.37ppm(3H,s) (4-メチル-4’-ビニル-2,2’-ビピリジン(vbpy)の合成) 素雰囲気下、3Lの3口フラスコに上記の4-メチル-4’-(2-メトキシエチル)-2,2’-ビピリジン39.05g(173mmol)のTHF 500ml溶液を仕込み、−78℃まで冷却した。カリウムt-ブトキサイド38.83g(346mmol)のTHF 300ml溶液を40分掛けて滴下し、同温度で2時間撹拌した。−40℃まで昇温してTHF水溶液を滴下して反応を停止させた。酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄して粗生成物を得た。精製はシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いた展開溶媒ジクロロメタン:メタノール:トリエチルアミンの30:1:0.05〜10:1:0.05で精製し収率39%で4-メチル-4’-ビニル-2,2’-ビピリジンを得た。 得られた化合物の分析結果を以下に示す。NMR(CDCl3):8.70〜8.40ppm(4H,1m),7.25〜7.00ppm(2H,m),6.70〜6.50ppm(1H,m),5.91ppm(1H,d),5.42ppm(1H,d),2.37ppm(3H,s) ([Fe(vbpy)(MeCN)4](BF4)2の合成) 窒素雰囲気下、3口フラスコにFe(BF4)2・6H2O3.37g(10mmol)のアセトニトリル50ml、メタノール50ml溶液を仕込み、室温で上記の4-メチル-4’-ビニル-2,2’-ビピリジン1.96g(10mmol)のジクロロメタン10ml溶液を加えた。10分間撹拌後、溶媒を留去して粗生成物を得た。アセトニトリルに溶解し不溶物をろ過後、水に滴下して結晶化させる操作を2回繰り返した。ろ過洗浄乾燥を経て、下記の[Fe(vbpy)(MeCN)4](BF4)2を得た。 ([Fe(vbpy)(bpy)2](BF4)2の合成) 窒素雰囲気下、3口フラスコに上記[Fe(vbpy)(MeCN)4](BF4)24.5g(7.6mmol)のアセトニトリル50ml溶液を仕込み、室温で2,2’-ビピリジン2.38g(15.3mmol)のジクロロメタン50ml溶液を1時間以上かけて加えた。30分間撹拌後、溶媒を留去して粗生成物を得た。アセトンに溶解し水に滴下して結晶化させた。ろ過洗浄乾燥を経て、下記の[Fe(vbpy)(bpy)2](BF4)2 (以下、「Fe(bpy)3)モノマー」とする。)を得た。 元素分析、計算値(%):C,53.70;H,3.82;N,11.39 [実施例2:(NIPAAm-co-Fe(bpy)3)gelの合成および定性分析] N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)、実施例1で得られたFe(bpy)3モノマー、メチレンビスアクリルアミド(BIS)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をエタノールと水の混合溶媒に溶解させて、60℃で20時間加熱を行うことで、(NIPAAm-co-Fe(bpy)3)gelを行った。その後、(NIPAAm-co-Fe(bpy)3)gelはエタノールおよび水を用いて精製した。NIPAAmゲルは合成方法によって無色透明もしくは白色であることが広く知られている。(NIPAAm-co-Fe(bpy)3)gelはFe(bpy)3に由来する赤色に着色したゲルとなった。Fe(bpy)3モノマーと(NIPAAm-co-Fe(bpy)3)gelについてUV測定を行った。 UV測定を行った結果、(NIPAAm-co-Fe(bpy)3)gelにはFe(bpy)3に由来する特性吸収波長が見られた。この特性吸収波長はNIPAAmn鎖単体では見られないピークであることから、鉄錯体由来であることは明らかである。このことにより、(NIPAAm-co-Fe(bpy)3)gel中にFe(bpy)3が共重合されていることが明らかとなった。 [実施例3:Fe(bpy)3を含有するゲルの製造] 実施例1で得られたFe(bpy)3モノマー、アクリロイルモルホリン(ACMO)、及びN,N’-メチレンビスアクリルアミドをエタノールと水の混合溶媒に溶解させ、60℃でゲルを重合した。その後、エタノールおよび水を用いてゲルを精製した。 得られた上記のゲルを、マロン酸、臭素酸ナトリウム、及び硝酸を水に溶解したBZ反応液中に浸した。ゲル中でBZ反応が起こる様子をマイクロスコープで撮影した。またソフトウェアを用いて動画を解析し、時空間プロットを書いた。結果を、図1に示す。図1に示した時空間プロットにより、Fe(bpy)3を含有する新規自励振動ゲル内部でBZ反応が起きることを証明することができた。 Belousov-Zhabotinsky(ベロウソフ・ジャボチンスキ)反応を直接的に力学的なエネルギーに変換して自ら駆動することが可能な自励振動ゲルであって、 ゲルを構成する高分子主鎖に、該反応の触媒である下記の式で表される鉄-ビピリジウム錯体を含有する部位と、架橋部位を有していることを特徴とする自励振動ゲル。 前記ゲルを構成する高分子主鎖が、下記の式で表される構成単位を有していることを特徴とする請求項1に記載の自励振動ゲル。 前記高分子ゲルの構造が、インターペネトレーションネットワーク(IPN)もしくはセミインターペネトレーションネットワーク(Semi-IPN)構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の自励振動ゲル。 【課題】外部電源・外部制御装置を用いることなくBelousov-Zhabotinsky(ベロウソフ・ジャボチンスキ)反応(BZ反応)を直接的に力学的なエネルギーに変換して自ら駆動する自励振動ゲルにおいて、レアメタルであるルテニウム系錯体を用いない安価な自励振動ゲルを提供する。【解決手段】鉄-ビピリジウム(Fe(bpy)3錯体を有するモノマーを用いて、Fe(bpy)3錯体をゲルの主鎖に化学結合によって導入することにより、レアメタルからベースメタルへと触媒の種類を改良し、大幅なコストダウンとともに、大量生産時に問題となる入手量や価格を安定させることを可能とする。【選択図】 なし