タイトル: | 公開特許公報(A)_毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤 |
出願番号: | 2014071643 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 8/97,A61K 36/18,A61K 36/00,A61K 31/353,A61K 31/352,A61Q 5/00,A61P 43/00 |
田口 暢彦 國貞 隆弘 青木 仁美 百合口 稔 JP 2015193550 公開特許公報(A) 20151105 2014071643 20140331 毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤 ホーユー株式会社 000113274 谷水 浩一 100197022 浅見 保男 100102635 武山 吉孝 100105500 田口 暢彦 國貞 隆弘 青木 仁美 百合口 稔 A61K 8/97 20060101AFI20151009BHJP A61K 36/18 20060101ALI20151009BHJP A61K 36/00 20060101ALI20151009BHJP A61K 31/353 20060101ALI20151009BHJP A61K 31/352 20060101ALI20151009BHJP A61Q 5/00 20060101ALI20151009BHJP A61P 43/00 20060101ALI20151009BHJP JPA61K8/97A61K35/78 CA61K35/78 XA61K31/353A61K31/352A61Q5/00A61P43/00 105 5 2 OL 11 4C083 4C086 4C088 4C083AA111 4C083AA112 4C083AC841 4C083CC05 4C083CC31 4C083EE24 4C086AA01 4C086AA02 4C086BA08 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA92 4C086ZB21 4C088AB12 4C088BA08 4C088BA11 4C088CA03 4C088NA14 4C088ZA92 4C088ZB21 本発明は、毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤、これを含む白毛化抑制組成物、及び、白毛化を抑制する美容方法に関する。更に詳しくは、本発明は、フラボノイドを含む毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤、これを含む白毛化抑制組成物、及び、この白毛化抑制組成物を適用することにより白毛化を抑制する美容方法に関するものである。 体毛は、ケラチノサイトが筒状の構造を形作って構成された毛包に包まれており、体毛の色の形成は、毛包に存在するメラノサイトによってメラニンが産生され、そのメラニンがケラチノサイトに転送されて毛全体に広がることによるとされる。そして、白髪等の白毛化は、老化等によりメラノサイトが分化、死滅することにより起こることが知られている。 特許文献1では、フラボノイド類のステルビン、ヤーバサンタ抽出物、ヨモギ抽出物がメラノサイト幹細胞の維持・増加、メラニン合成の増加を促進することを見出し、これらの物質を含む白毛数抑制剤が記載されている。 特許文献2では、フラボノイド類のルテオリン、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物がメラノサイト幹細胞数の維持・増加、メラニン合成の増加を促進することを見出し、これらの物質を含む白毛の予防・治療剤が記載されている。 特許文献3では、フラボノイド類がヒト皮膚由来のメラノサイト培養細胞及びヒト皮膚三次元モデル細胞においてメラニン産生を促進させることを見出し、フラボノイド類を含む白髪改善用頭髪化粧料が記載されている。 このように、従来の白毛化抑制剤では、メラノサイト幹細胞を維持させること、及び、メラノサイトのメラニン産生を増加させることを目的として開発されている。 一方、放射線(IR)の照射により白髪が引き起こされることが知られている。非特許文献1では、放射線の照射による毛包細胞への影響に関する研究について、放射線照射後の最初のターゲットは色素幹細胞ではなく、ケラチノサイト幹細胞であることが報告された。 よって、放射性照射による白毛化の第一の原因は、ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷であることが認められる。特開2013−147491号公報特開2012−25736号公報特開2004−2264号公報Hitomi. A, et al, Keratinocyte Stem Cells but Not Melanocyte Stem Cells Are the Primary Target for Radiation-Induced Hair Graying, Journal of Investigative Dermatology, 2013, 133(9), p.2143-2151 以上の報告から理解されるように、白毛化を抑制するためには、毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷を抑制することが求められている。本発明では、毛包ケラチノサイト幹細胞を放射線から保護して、DNAの損傷を抑制するためのDNA損傷抑制剤を提供することを目的とする。 また、白毛化を抑制するための白毛化抑制組成物を提供し、さらに、これを適用して白毛化を抑制するための美容方法を提供することを目的とする。 本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、フラボノイドが、毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷を抑制すること、及び、白毛化を抑制することを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は、以下の毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤、これを含む白毛化抑制組成物、及び、これを適用する美容方法を提供するものである。(本願第1発明) 上記課題を解決するための本願第1発明は、フラボノイドを含有することを特徴とする毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤である。(本願第2発明) 上記課題を解決するための本願第2発明は、前記フラボノイドが、ステルビン、ルテオリン、ディオスメチン及びヤーバサンタ抽出物からなる群より選択される1種以上の物質であることを特徴とする本願第1発明に記載の毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤である。(本願第3発明) 上記課題を解決するための本願第3発明は、前記フラボノイドが、エリオディクティオン・アングスティフォリウム種のヤーバサンタ抽出物であることを特徴とする本願第1発明に記載の毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤である。(本願第4発明) 上記課題を解決するための本願第4発明は、本願第1〜3発明のいずれかに記載の毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤を含むことを特徴とする白毛化抑制組成物である。(本願第5発明) 上記課題を解決するための本願第5発明は、本願第4発明に記載の白毛化抑制剤を適用する工程、を備えたことを特徴とする、白毛化を抑制する美容方法である(医療行為を除く。)。 前記第1発明によれば、フラボノイドが毛包ケラチノサイト幹細胞を保護し、毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷を抑制することができる。 前記第2及び第3発明によれば、本願発明の効果をより顕著に発揮する毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤を提供することができる。 前記第4発明によれば、フラボノイドにより毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷が抑制されるため、白毛化を抑制することができる。 前記第5発明によれば、前記第4発明の白毛化抑制組成物を適用することにより、毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷を抑制し、これにより引き起こされる白毛化を防止するという美容方法を提供することができる。各フラボノイドの塗布試験についての手順を示す説明図である。各種フラボノイドによる毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制効果を示す図である。各種フラボノイドによる白毛化抑制効果を示す写真である。各種フラボノイドによる白毛化抑制効果をL*値により示した図である。 次に、本発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。[フラボノイド] 本発明のフラボノイドとは、天然に存在する有機化合物であり、構造としてフラバン骨格を有する誘導体である。クロマン環の4位がカルボニル基となった環状ケトンであるフラバノン、さらに2,3位が脱水素を受けた共役環状ケトンであるフラボン、3ヒドロキシフラボン骨格を有するフラボノール、2−フェニル−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−3−オール骨格を有するフラバノール等が挙げられる。 フラバノンとしては、ステルビン、エリオジクチオール、ホモエリオジクチオール、ヘウペレチン等があり、フラボンとしては、ルテオリン、アピゲニン、クリソエリオール、ディオスメチン等がある。 また、本発明のフラボノイドには、複数種類のフラボノイドを含有するものも含まれる。複数のフラボノイドを含有するものとして、ヤーバサンタ抽出物が挙げられる。 ヤーバサンタは、ハゼリソウ科(Hydrophyllaceae)、エリオディクティオン属(Eriodictyon)の植物であり、エリオディクティオン・アングスティフォリウム種(Eriodictyon angustifolium)(以下、「E.angu種ヤーバサンタ」という。)、エリオディクティオン・カリフォルニカム種(Eriodictyon californicum)(以下、「E.cali種ヤーバサンタ」という。)等が挙げられる。 ヤーバサンタ抽出物とは、上記ヤーバサンタの花、果穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、種子又は全草等から溶媒抽出、超臨界流体抽出、水蒸気蒸留等の蒸留法、圧搾等の周知の方法により得られる抽出物をいう。当該抽出物は抽出により得られる物であれば良く、揮発性成分、不揮発性成分、乾固により構造が変化する成分を含んでよい。抽出物の調製に好ましい部位は葉、茎である。 ヤーバサンタから抽出される種々のフラボノイドは、抽出溶媒によって組成が異なるため、特定のフラボノイドが多く抽出されるように適宜選択してよい。抽出に用いる溶媒の種類は限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、エーテル類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等を挙げることができ、これらの1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。上記した抽出溶媒のうち特に、水、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンが好ましい。 好ましいヤーバサンタの抽出溶媒は、水分を0.5〜99体積%含む含水エタノールであり、より好ましくは、水分を0.5〜80体積%含む含水エタノールであり、特に好ましくは、水分を0.5〜60体積%含む含水エタノールである。 抽出温度は、5〜80℃が好ましく、10〜60℃がより好ましく、15〜45℃が特に好ましい。 本発明において、好ましいフラボノイドは、ステルビン、ルテオリン、ディオスメチン、ヤーバサンタ抽出物であり、特に好ましいフラボノイドは、ステルビン、E.angu種ヤーバサンタ抽出物である。[毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤] 本発明の毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤とは、上記のフラボノイドを含有し、放射線等の刺激から毛包ケラチノサイト幹細胞を保護し、DNAの損傷を抑制するものである。 本発明の毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤中のフラボノイドの含有量は特に限定されず、当該剤の使用者の所望する効果や剤型に合わせてフラボノイドの含有量を適宜選択することが好ましい。フラボノイドの含有量は、0.000001〜10質量%であることが好ましく、0.00001〜5質量%がより好ましく、0.00001〜2質量%が更に好ましい。 ヤーバサンタ抽出物の場合には、ステルビンを0.000001〜10質量%含むように配合することが好ましく、0.00001〜5質量%がより好ましく、0.00001〜2質量%が更に好ましい。ここで、ステルビンの含有量は、高速液体クロマトグラフィー(装置:Waters社製alliance2695、カラム:資生堂カプセルパックC18 UG120 5μm 4.6mmφ*250mm、移動相:H2O/CH3CN=7/3、pH:2.2、流速:1.0mL/min、カラム温度:40℃)で測定できる。[白毛化抑制組成物] 本発明の白毛化抑制組成物とは、上記の毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤を含有し、ヒトを含む動物の体毛の白毛化を抑制するものである。白毛化の原因としては、毛包ケラチノサイト幹細胞のDNAの損傷であればよく、紫外線や放射線等によるDNAの損傷、酸化ストレスによるDNA損傷、老化によるDNA損傷が挙げられる。 本発明の白毛化抑制組成物には、上記の毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤が0.1〜100質量%含まれ、必要に応じて、その他の有効成分を添加することが好ましい。ここで、100質量%とは、上記DNA損傷抑制剤をそのまま白毛化抑制組成物として使用してもよいという意味である。 ここで、体毛とは、ヒトを含む動物の任意の毛を意味する。体毛は頭に生える毛髪、口髭や顎鬚を含むひげ、眉毛、睫毛、鼻毛、腕・脚・胸等の胴体に生える毛を好ましく例示することができ、毛髪、ひげ、眉毛、睫毛を更に好ましく例示することができ、毛髪、ひげを特に好ましく例示することができる。[剤型] 本発明のDNA損傷抑制剤及び白毛化抑制組成物の剤型は限定されないが、例えば液状、乳液状、クリーム状又はゲル状が好適である。また、顆粒剤、糖衣剤、カプセル剤、吸入剤とすることも好ましい。これらの剤型は、周知の方法や常法に従って実現可能である。 剤型に応じて、その他の成分を添加してもよい。その他の成分としては、例えば、水、低級アルコール、多価アルコール等の溶剤、界面活性剤、油脂、ロウ、炭化水素、脂肪酸、高級アルコール、シリコーン等の油剤、アラビアガム等の増粘剤、アミノ酸類、でんぷん、デキストリン等の多糖類、乳糖、ぶどう糖等の糖類、ソルビトール、マルトース等の糖アルコール類、パラベン、安息香酸ナトリウム等の防腐成分、EDTA−2Na等のキレート成分、フェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等の安定成分、リン酸、クエン酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸等のpH調整成分、上記したヤーバサンタではない植物又は生薬抽出物、ビタミン類、香料、紫外線吸収成分、美白成分、皮膚用柔軟化成分、殺菌成分等が挙げられる。[投与経路] 本発明のDNA損傷抑制剤及び白毛化抑制組成物の投与経路は特に限定されず、経口投与、吸入投与、手や塗布具等によって皮膚に塗布する等剤を目的部位に付着させる経皮吸収、血管投与、皮下注射および皮内注射などが可能であり、経皮吸収及び経口投与が好ましく、経皮吸収が特に好ましい。[美容方法] 本発明の白毛化を抑制する美容方法は、上記白毛化抑制組成物を適用する方法である。当該方法は非治療的なものであり、いわゆる医療行為を含まない。本発明の美容方法では、化粧用品等を用いることが好ましい。 本発明の美容方法における適用は、手や塗布具等によってする行為を始め、組成物を目的部位に付着させる行為が含まれ、塗布又は飲用する行為が挙げられる。好ましくは塗布により組成物を適用する。 ヒトの皮膚での経皮吸収とする場合、皮膚20〜40cm2あたり、フラボノイドが0.0025〜25mg/回が皮膚に適用されることが好ましく、適用間隔は少なくとも1日1〜2回塗布とすることが好ましい。 なお、ヤーバサンタ抽出物の場合の塗布量は、0.025〜250mg/回であることが好ましい。 非ヒト哺乳動物の皮膚での経皮吸収とする場合、皮膚4〜5cm2あたり、フラボノイドが0.002〜20mg/回が皮膚に適用されることが好ましく、適用間隔は少なくとも1日1回塗布とすることが好ましい。 なお、ヤーバサンタ抽出物の場合の塗布量は、0.02〜200mg/回であることが好ましい。 ここで、皮膚とは、ヒトを含む体毛を有する動物一般の皮膚をさす。当該皮膚としては、ヒトの皮膚、非ヒト哺乳動物の皮膚が好ましい。また、後述の剤、組成物等を塗布、適用等する場合、部位としては、頭、腕、脚などの体毛を有する部位が好ましく挙げられる。より好ましくは、頭皮、あごを含む顔、くび、手、脚等である。 以下に、本発明の実施例を説明する。比較例は、コントロールとして50体積%エタノールを用いた。[試料の調製](ステルビン、ルテオリン、ディオスメチン) ステルビン、ルテオリン、ディオスメチン各10mgを、それぞれ10mLのエタノールに溶解して、各フラボノイドの試料とした。(ヤーバサンタ抽出物) E.angu種及びE.cali種について、それぞれヤーバサンタ抽出物を調製した。その抽出方法は、ヤーバサンタ(葉及び茎の混合物)の乾燥物1gに50体積%エタノール溶液200mLを加え、室温で約1週間抽出後、ろ過して得られたろ液をヤーバサンタ抽出物とした。また、E.angu種のヤーバサンタ抽出物については、50体積%エタノールで10倍に希釈した試料も調製した(以下、「10倍希釈ヤーバサンタ抽出物」という。)。 各ヤーバサンタ抽出物について、代表的なフラボノイドの含有量を高速液体クロマトグラフィー(Waters社製alliance2695)で測定した。結果を表1に示す。[塗布試験] 図1に各フラボノイドの塗布試験についての手順を示した。 7週齢のC57BL/6Jマウスの背部をバリカンで刈り取り、その部位に200μLの試料を毎日1週間塗布した。1週間後、除毛クリーム(クラシエホームプロダクツ株式会社製「エピラット」)を用いて塗布部位の体毛を完全に除去することにより、休止期から成長期に発毛を誘導した。翌日、マウスに放射線(5Gy)を照射した。[毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷試験] 放射線照射6時間後の皮膚を回収し、免疫染色を実施した。毛包ケラチノサイト幹細胞の染色マーカーはCD34を用い、DNAの損傷した細胞の染色マーカーはγH2AXを用いた。毛包中において、CD34に陽性の細胞と、CD34及びγH2AXのいずれにも陽性の細胞について、それぞれ細胞数をカウントした。1匹あたり10個以上の毛包について評価し、平均値を算出した(N=1以上)。ステルビン、ルテオリン、ディオスメチン、E.angu種ヤーバサンタ抽出物、10倍希釈ヤーバサンタ抽出物及び50体積%エタノール(コントロール)を塗布したマウスについて評価した結果を図2に示す。 図2に示すとおり、コントロールでは、平均5.6個のγH2AX陽性細胞があるのに対して、ステルビン2.4個、ルテオリン4.8個、ディオスメチン3.9個、E.angu種ヤーバサンタ抽出物2.1、10倍希釈ヤーバサンタ抽出物4.4個であった。よって、いずれのフラボノイド及びヤーバサンタ抽出物においても、毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制効果が認められた。 フラボノイドの種類について比較すると、ステルビンは高いDNA損傷抑制効果が認められ、E.angu種ヤーバサンタ抽出物はさらに高いDNA損傷抑制効果が認められた。 E.angu種ヤーバサンタ抽出物は、表1に示すとおり種々のフラボノイドが含まれており、これらのフラボノイドの相乗作用により高いDNA損傷抑制効果を発揮していると推察される。[白毛化試験] 放射線照射1カ月後、抜去した体毛が生えそろった時点で、体毛を目視にて評価した。図3は、体毛の色を評価した写真である。 その結果、ステルビン、ルテオリン、ディオスメチン、E.angu種ヤーバサンタ、及び、E.cali種ヤーバサンタを塗布したマウスの体毛は、いずれも50体積%エタノールを塗布したマウスの体毛よりも黒い毛が多く生えた。 さらに、生えそろった体毛を回収し、分光側色計(ミノルタ製「CM508d」)を用いてL*値を測定し、体毛の明度を評価した。各試料塗布群について5匹以上のマウスの体毛を刈り取った後、それぞれのL*値を測定し、その平均を算出した。この結果を、図4に示した。 L*値を測定した結果、50体積%エタノール(コントロール)塗布群は45.1、ステルビン塗布群35.8、ルテオリン塗布群41.8、ディオスメチン塗布群41.7、E.cali種ヤーバサンタ抽出物塗布群39.5、E.angu種ヤーバサンタ抽出物35.1、10倍希釈ヤーバサンタ抽出物39.7であった。 フラボノイド又はヤーバサンタ抽出物を塗布した群では、いずれも50体積%エタノールを塗布した群より低いL*値を示し、特にE.angu種ヤーバサンタ抽出物を塗布した群が最も低いL*値を示した。この結果は、上述した毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷試験と同じ傾向を示しており、毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷を抑制することにより、体毛の白毛化を抑制しているといえる。 本発明により、毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷を抑制するDNA損傷抑制剤を提供することができる。また、このDNA損傷抑制剤を配合した白毛化抑制組成物を提供することができる。 本発明の白毛化抑制組成物を適用することにより、白毛化を抑制するための美容方法も提供することができる。 本発明の白毛化抑制組成物は、白毛化の原因となる毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷を抑制することができるため、例えば、老化により白毛化が生じる前に適用する等、白毛化の予防に利用することができる。 さらに、本発明は、放射線照射による毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷を抑制することができるため、放射線治療用のDNA損傷抑制剤として利用してもよい。放射線治療により生じる副作用として、白毛化の他、皮膚がん等が生じる恐れもある。これに対して、本発明のDNA損傷抑制剤を適用することにより放射線治療時の副作用を抑制できる可能性がある。 フラボノイドを含有することを特徴とする毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤。 前記フラボノイドが、ステルビン、ルテオリン、ディオスメチン及びヤーバサンタ抽出物からなる群より選択される1種以上の物質であることを特徴とする請求項1に記載の毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤。 前記フラボノイドが、エリオディクティオン・アングスティフォリウム種のヤーバサンタ抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤。 請求項1〜3のいずれかに記載の毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤を含むことを特徴とする白毛化抑制組成物。 請求項4に記載の白毛化抑制剤を適用する工程、を備えたことを特徴とする、白毛化を抑制する美容方法(医療行為を除く。)。 【課題】毛包ケラチノサイト幹細胞のDNAが損傷すると、メラノサイト幹細胞の増加を抑制して白毛化が生じる。本発明は、毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷を抑制して、体毛の白毛化を抑制することを目的とする。【解決手段】上記課題を解決するために、フラボノイドを含有することを特徴とする毛包ケラチノサイト幹細胞のDNA損傷抑制剤を提供する。【選択図】図2