タイトル: | 公開特許公報(A)_水中油型乳化組成物 |
出願番号: | 2014070680 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 8/39,A61K 8/44,A61K 8/34,A61Q 19/00,A61K 8/55,A61K 8/06,A61K 8/14 |
中村 行雄 益川 直子 JP 2015189762 公開特許公報(A) 20151102 2014070680 20140330 水中油型乳化組成物 小林製薬株式会社 000186588 山田 威一郎 100156845 田中 順也 100124431 立花 顕治 100124039 中村 行雄 益川 直子 A61K 8/39 20060101AFI20151006BHJP A61K 8/44 20060101ALI20151006BHJP A61K 8/34 20060101ALI20151006BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20151006BHJP A61K 8/55 20060101ALI20151006BHJP A61K 8/06 20060101ALI20151006BHJP A61K 8/14 20060101ALI20151006BHJP JPA61K8/39A61K8/44A61K8/34A61Q19/00A61K8/55A61K8/06A61K8/14 8 OL 25 4C083 4C083AA071 4C083AA072 4C083AC012 4C083AC071 4C083AC072 4C083AC122 4C083AC172 4C083AC182 4C083AC242 4C083AC352 4C083AC421 4C083AC422 4C083AC432 4C083AC482 4C083AC532 4C083AC662 4C083AC902 4C083AD132 4C083AD332 4C083AD412 4C083AD432 4C083AD492 4C083AD571 4C083AD572 4C083BB05 4C083CC05 4C083DD33 4C083DD45 4C083EE01 4C083EE06 4C083FF05 本発明は、水中油型乳化組成物に関する。より具体的には、本発明は、こっくりとした使用感(濃厚で重さのあるしっとり感)でありながら、ベタツキ感の少なく、しかも優れた安定性を備える水中油型乳化組成物に関する。 従来、クリーム状の水中油型乳化組成物は、ノニオン性界面活性剤と高級脂肪族アルコールとによりα−ゲルを系中に形成させることにより製剤の安定化が図られている。そのため、クリーム状の水中油型乳化組成物は、製剤安定性を確保する上で、十分な量のα−ゲルを系中に存在させる必要があり、通常、多くのノニオン性界面活性剤と高級脂肪族アルコールが配合されている。しかしながら、製剤中に存在するα−ゲルは、製剤安定性の向上に寄与するものの、皮膚への塗布時にベタツキ感を与えてしまうという欠点があった。 このようなるα−ゲルの欠点を改善する製剤処方として、ノニオン性界面活性剤の代わりに、アニオン性界面活性剤を使用して高級脂肪族アルコールとゲルを生じさせた水中油型乳化組成物が報告されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1が開示する水中油型乳化組成物では、さっぱりして軽い使用感となり、こっくりとした使用感(を求める使用者には満足のいくものではなかった。 また、ノニオン性界面活性剤と高級脂肪族アルコールの配合量を所定の範囲に調整することによって、経時安定性に優れ、使用感が良好な水中油型乳化組成物が得られることも報告されている(特許文献2)。しかしながら、特許文献2が開示する水中油型乳化組成物は、軽い使用感となり、こっくりとした使用感を求める使用者を満足させることはできず、更には使用するノニオン性界面活性剤によっては高温安定性が劣る等の問題があった。 このように、従来技術では、こっくりとした使用感でありながら、ベタツキ感の少ない水中油型乳化組成物は開発できていないのが現状である。特開2001−348325号公報特開2001−97816号公報 本発明は、こっくりとした使用感でありながら、ベタツキ感の少なく、しかも優れた安定性を備える水中油型乳化組成物を提供することを目的とする。 本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、水中油型乳化組成物において、(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)アニオン性界面活性剤、(C-1)ステアリルアルコール、(C-2)ベヘニルアルコール、及び(D)レシチンを含有させ、且つ(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)アニオン性界面活性剤、(C-1)ステアリルアルコール及び(C-2)ベヘニルアルコールの含有量を所定範囲に設定することによって、こっくりとした使用感でありながらも、ベタツキ感が少なく、しかも高い安定性を備えさせ得ることを見出した。更に、(D)レシチンとして、天然レシチンと水素添加レシチンを含むリポソームを採用し、当該リポソームと共に機能性成分を配合すると、当該機能性成分の肌への浸透感及び肌馴染みが向上することを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。 即ち、本発明は、下記に掲げる態様の水中油型乳化組成物を提供する。項1. (A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)アニオン性界面活性剤、(C-1)ステアリルアルコール、(C-2)ベヘニルアルコール、及び(D)レシチンを含有し、且つ(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.5〜1.2重量%、(B)アニオン性界面活性剤の含有量が0.1〜0.8重量%であり、(C-1)ステアリルアルコールの含有量が(C-2)ベヘニルアルコールに比べて多いことを特徴とする、水中油型乳化組成物。項2. 前記(C-2)ベヘニルアルコール1重量部に対して、前記(C-1)ステアリルアルコールが1.5〜5重量部含まれる、項1に記載の水中油型乳化組成物。項3. 前記(D)レシチンとして、少なくとも水素添加レシチンを含む、項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。項4. 前記(D)レシチンが、水素添加レシチン及び天然レシチンを含むリポソーム形態で含まれる、項1〜3のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。項5. 前記天然レシチン1重量部に対して、前記水素添加レシチンが20〜130重量部含まれる、項4に記載の水中油型乳化組成物。項6. 前記天然レシチンとして、卵黄の低級アルコール抽出物が使用される、項4又は5のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。項7. 更に、前記リポソーム形態の(D)レシチンとは別に、卵黄の低級アルコール抽出物を含有する、項4〜6のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。項8. クリーム状の化粧料である、項1〜7のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。 本発明の水中油型乳化組成物は、こっくりとした使用感でありながら、ベタツキ感の少なく、従来の水中油型乳化組成物では実現し得なかった独特で良好か使用感が得られる。また、本発明の水中油型乳化組成物は、安定性に優れており、高温条件又は長期間保存しても乳化状態を安定に維持できる。更に、本発明の水中油型乳化組成物において、含有させるレシチンとして、天然レシチンと水素添加レシチンを含むリポソームを使用することによって、ヒアルロン酸又はその加水分解物等の機能性成分の肌への浸透感及び肌馴染みを格段に向上させることもできる。 本発明の水中油型乳化組成物は、(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)アニオン性界面活性剤、(C-1)ステアリルアルコール、(C-2)ベヘニルアルコール、及び(D)レシチンを含有し、且つ(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.5〜1.2重量%、(B)アニオン性界面活性剤の含有量が0.1〜0.8重量%であり、(C-1)ステアリルアルコールの含有量が(C-2)ベヘニルアルコールに比べて多いことを特徴とする。以下、本発明の水中油型乳化組成物について詳述する。(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル 本発明の水中油型乳化組成物は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する。本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルについては、特に制限されないが、こっくりとした使用感、べたつきのなさ、及び安定性向上を実現する上で、親水性のものが好適である。このような親水性のポリグリセリン脂肪酸エステルとして、具体的には、HLBが10以上、好ましくは10〜15の範囲にあるものが挙げられる。 本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルの種類については、特に制限されないが、例えば、重合度が6以上のポリグリセリンと炭素数6〜22の直鎖又は分岐を有する脂肪酸とのエステル体が挙げられる。 ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、具体的には、炭素数が12〜36の脂肪酸と重合度が6以上、特に6〜10のポリグリセリンとのエステルが挙げられる。ポリグリセリンとエステルを形成する脂肪酸としては、飽和、不飽和、直鎖状又は分枝鎖状のいずれの脂肪酸でもよく、具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘニン酸、リシノール酸等が挙げられる。 これらのポリグリセリン脂肪酸エステルの中でも、こっくりとした使用感、べたつきのなさ、及び安定性をより一層向上させるという観点から、好ましくは、ラウリン酸ポリグリセリル−6、ミリスチン酸ポリグリセリル−6、ステアリン酸ポリグリセリル−6、オレイン酸ポリグリセリル−6、ラウリン酸ポリグリセリル−10、ミリスチン酸ポリグリセリル−10、ステアリン酸ポリグリセリル−10、モノオレイン酸デカグリセリル、オレイン酸ポリグリセリル−10が挙げられる。 これらのポリグリセリン脂肪酸エステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 本発明の水中油型乳化組成物において、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、0.5〜1.2重量%の範囲に設定される。このような範囲を充足させることによって、こっくりとした使用感でありながら、ベタツキ感の少ない使用感を付与すると共に、優れた安定性を備えさせることが可能になる。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量として、こっくりとした使用感、べたつきのなさ、及び安定性をより一層向上させるという観点から、好ましくは0.5〜1.0重量%、より好ましくは0.5〜0.8重量%が挙げられる。(B)アニオン性界面活性剤 本発明の水中油型乳化組成物は、アニオン性界面活性を含有する。本発明で使用されるアニオン性界面活性剤については、特に制限されないが、こっくりとした使用感、べたつきのなさ、及び安定性向上を実現する上で、親水性のものが好適である。このような親水性のアニオン性界面活性剤として、具体的には、HLBが10以上、好ましくは10〜15の範囲にあるものが挙げられる。 アニオン性界面活性剤の種類については、特に制限されないが、例えば、炭素数16以上の直鎖アルキル基を有するN−アシル−L−グルタミン酸塩、炭素数16以上の直鎖アルキル基を有するモノアルキルリン酸塩等が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤の中でも、こっくりとした使用感、べたつきのなさ、及び安定性をより一層向上させるという観点から、好ましくは、N−ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸トリエタノールアミン、セチルリン酸ナトリウムが挙げられる。 これらのアニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 本発明の水中油型乳化組成物において、アニオン性界面活性剤の含有量は、0.1〜0.8重量%の範囲に設定される。このような範囲を充足させることによって、こっくりとした使用感でありながら、ベタツキ感の少ない使用感を付与すると共に、優れた安定性を備えさせることが可能になる。アニオン性界面活性剤の含有量として、こっくりとした使用感、べたつきのなさ、及び安定性をより一層向上させるという観点から、好ましくは0.1〜0.5重量%が挙げられる。(C-1)ステアリルアルコール及び(C-2)ベヘニルアルコール 本発明の水中油型乳化組成物は、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコールを含有する。 本発明の水中油型乳化組成物において、ステアリルアルコールの含有量は、ベヘニルアルコールよりも多くなるように設定される。このような含有量で、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコールを含有することによって、こっくりとした使用感、べたつきのなさ、及び安定性向上が実現される。ステアリルアルコールとベヘニルアルコールの比率として、こっくりとした使用感、べたつきのなさ、及び安定性をより一層向上させるという観点から、ベヘニルアルコール1重量部に対して、ステアリルアルコールが好ましくは1.5〜5重量部、更に好ましくは2〜4重量部、特に好ましは2.5〜3.5重量部が挙げられる。 本発明の水中油型乳化組成物において、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコールの含有量は、前述する比率を充足する範囲で適宜設定すればよいが、具体的には、ステアリルアルコールの含有量として、好ましくは1.5〜6重量%、更に好ましくは2〜5重量%が挙げられ、ベヘニルアルコールの含有量として、好ましくは0.8〜2重量%、更に好ましくは1〜1.5重量%が挙げられる。(D)レシチン 本発明の水中油型乳化組成物は、レシチンを含有する。本発明で使用されるレシチンとして、具体的には、天然レシチン、水素添加レシチン等が挙げられる。これらのレシチンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合せて使用してもよい。これらのレシチンの中でも、こっくりとした使用感、べたつきのなさ、及び安定性をより一層向上させるという観点から、少なくとも水素添加レシチンを含むことが好ましい。(水素添加レシチン) 水素添加レシチンとは、天然レシチンに対して水素添加処理することにより、不飽和二重結合の少なくとも一部が飽和結合に変換されたレシチンである。水素添加レシチンは、不飽和二重結合が減じられており、ヨウ素価は通常10以下である。本発明で使用される水素添加レシチンとして、肌への浸透感、肌馴染み、及び安定性をより一層向上させるという観点から、水素添加レシチンのヨウ素価として、好ましくは8以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下が挙げられる。 水素添加レシチンに含まれるリン脂質の種類については、特に制限されず、前記天然レシチンで例示したリン脂質が水素添加されたものであればよい。また、本発明で使用される水素添加レシチンは、1種のリン脂質で構成されていてもよく、また2種以上のリン脂質組み合わせによって構成されていてもよい。本発明で使用される水素添加レシチンとして、こっくりとした使用感、べたつきのなさ、及び安定性をより一層向上させるという観点から、ホスファチジルコリン含量が、10重量%以上、好ましくは15重量%以上、更に好ましくは20重量%以上である水素添加レシチンが挙げられる。水素添加レシチンのホスファチジルコリン含量の上限としては、特に制限されないが、99重量%以下が挙げられる。 本発明で使用される水素添加レシチンの由来については、特に制限されず、動物又は植物由来のレシチンが水素添加されたものであればよい。動物由来の水素添加レシチンとしては、具体的には、卵黄レシチン、魚介類由来のレシチン等の動物由来レシチンが水素添加されたものが挙げられる。また、植物由来の水素添加レシチンとしては、具体的には、大豆レシチン、ゴマレシチン、とうもろこしレシチン、アマニレシチン、オリーブレシチン、米レシチン、なたねレシチン、ひまわりレシチン、サフラワーレシチン、綿実レシチン、キリレシチン、グレープレシチン、アボガドレシチン、ヤシレシチン、パームレシチン等の植物由来レシチンが水素添加されたものが挙げられる。 これらの水素添加レシチンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明で使用される水素添加レシチンとして、こっくりとした使用感、べたつきのなさ、及び安定性をより一層向上させるという観点から、好ましくは、水素添加大豆リン脂質、水素添加卵黄レシチン、更に好ましくは水素添加大豆リン脂質が挙げられる。 水素添加レシチンは商業的に入手可能であり、本発明では商業的に入手可能な天然レシチンを使用することができる。商業的に入手可能な水素添加レシチンとしては、例えば、水素添加大豆リン脂質として、日光ケミカルズ株式会社(NIKKOL レシノール S−10、NIKKOL レシノール S−10E、NIKKOL レシノール S−10EX)、日油株式会社(商品名:COATSOME NC−21)等が挙げられ、水素添加卵黄レシチンとして、キユーピー株式会社(商品名:卵黄レシチンPL−100P)、日油株式会社(商品名:COATSOME NC−11)等が挙げられる。(水素添加レシチンと天然レシチンの組み合せ) 前記水素添加レシチンと天然レシチンを組み合わせて使用すると、更に発明の水中油型乳化組成物において肌への浸透感及び肌馴染み感を向上させることも可能になる。 天然レシチンとは、動物又は植物から得られ、脂肪酸鎖として不飽和脂肪酸鎖を含むレシチンである。天然レシチンは、不飽和二重結合を多く含んでおり、ヨウ素価は通常20以上である。本発明において、天然レシチンを前記水素添加レシチンと組み合わせて使用することにより、本発明の水中油型乳化組成物において肌への浸透感及び肌馴染み感を向上させることが可能になる。天然レシチンとして肌への浸透感及び肌馴染み感をより一層向上させるという観点から、天然レシチンのヨウ素価として、好ましくは25以上、更に好ましくは30以上が挙げられる。天然レシチンのヨウ素価の上限としては、通常120以下、好ましくは100以下、更に好ましくは95以下が挙げられる。 天然レシチンに含まれるリン脂質の種類については、特に制限されず、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸等が挙げられる。本発明で使用される天然レシチンは、これらのリン脂質の内の1種単独で構成されていてもよく、また2種以上の組み合わせによって構成されていてもよい。天然レシチンとして、肌への浸透感及び肌馴染み感をより一層向上させるという観点から、ホスファチジルコリン含量が、10重量%以上、好ましくは15重量%以上、更に好ましくは20重量%以上である天然レシチンが挙げられる。天然レシチンのホスファチジルコリン含量の上限としては、特に制限されないが、95重量%以下が挙げられる。 天然レシチンの由来については、特に制限されず、前記水素添加レシチンで例示した動物又は植物由来のものを使用できる。前記水素添加レシチンと組み合わせて使用する天然レシチンとして、肌への浸透感及び肌馴染み感をより一層向上させるという観点から、好ましくは、卵黄レシチン、大豆レシチン、更に好ましくは卵黄レシチンが挙げられる。 また、天然レシチンは、精製物を使用してもよいが、天然レシチンが含まれていることを限度として他の成分が含まれていてもよい。特に、卵黄レシチンを使用する場合であれば、卵黄の低級アルコール抽出物を使用することが好ましい。 卵黄の低級アルコール抽出物は、卵黄を、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールでレシチン等の脂質、その他の油脂成分を抽出したものであり、卵黄レシチン、及びその他の油脂成分が含まれる。卵黄の低級アルコール抽出物は、低級アルコールで抽出処理をして得られた抽出液をそのまま使用してもよく、また必要に応じて当該抽出液を乾燥・固化したものを使用してもよい。更には、乾燥・固化した抽出物を、更に低級アルコールでの抽出処理に供し、レシチン以外の脂質や油脂成分を低減又は除去したものを使用してもよい。卵黄の低級アルコール抽出物は、卵黄レシチンが15重量%以上含まれていることが好ましく、20重量%以上含まれていることが好ましく、25重量%以上含まれていることが更に好ましい。卵黄の低級アルコール抽出物には、レシチン以外の油脂成分が含まれており、これを前記水素添加レシチンと組み合わせることで、より一層効果的に肌への浸透感及び肌馴染み感の向上を図ることが可能になる。 天然レシチンは商業的に入手可能であり、本発明では商業的に入手可能な天然レシチンを使用することができる。商業的に入手可能な天然レシチンとしては、例えば、大豆レシチンとして、日油株式会社(商品名:COATSOME NC−20(SPC))、Lipoid社(商品名:LIPOID P100)等が挙げられ、卵黄レシチンとして、日油株式会社(商品名:COATSOME NC−50(EPC))、Lipoid社(商品名:LIPOID E PC S)、キユーピー株式会社(商品名:卵黄レシチンPL−30S)等が挙げられる。 本発明の水中油型乳化組成物において、レシチンとして、水素添加レシチンと天然レシチンを併用する場合、これら比率については、特に制限されないが、例えば、天然レシチン1重量部に対して、水素添加レシチンが20〜130重量部であることが好ましく、30〜100重量部であることがより好ましく、35〜85重量部が更に好ましい。このような比率を充足することによって、肌への浸透感及び肌馴染み感をより一層向上させることが可能になる。 また、水素添加レシチンと天然レシチンを併用する場合、これらは各々単独で本発明の水中油型乳化組成物に含まれていてもよいが、水素添加レシチンと天然レシチンによってリポソームを形成した状態で含まれていることが好ましい。このように、水素添加レシチンと天然レシチンによってリポソームを形成することによって、肌への浸透感及び肌馴染み感をより一層向上させることが可能になる。 水素添加レシチンと天然レシチンによってリポソームを形成する場合、リポソーム中の水素添加レシチンと天然レシチンの含有量については、特に制限されないが、例えば、リポソームの膜構成成分の総量100重量部当たり、天然レシチン及び水素添加レシチンが総量で20〜100重量部、好ましくは30〜100重量部、更に好ましくは40〜100重量部が挙げられる。 水素添加レシチンと天然レシチンによってリポソームを形成する場合、天然レシチン及び水素添加レシチン以外に、本発明の効果を妨げないことを限度として、必要に応じて他の成分が膜構成成分として含まれていてもよい。このような膜構成成分としては、例えば、リン脂質重合体、ステロール類、荷電物質、アシルアミノ酸系界面活性剤等が挙げられる。 リン脂質重合体としては、例えば、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ナトリウム共重合体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体等が挙げられる。これらのリン脂質重合体の中でも、好ましくは、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体が挙げられる。これらのリン脂質重合体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 ステロール類としては、例えば、コレステロール、酢酸コレステリル、ノナン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、イソステアリン酸フィトステリル、ステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、パルミトレイン酸フィトステリル、軟質ラノリン脂肪酸コレステリル、硬質ラノリン脂肪酸コレステリル、長鎖分岐脂肪酸コレステリル、長鎖α−ヒドロキシ脂肪酸コレステリル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル等が挙げられる。これらのステロール類は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 荷電物質としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、エレオステアリン酸、2,4−オクタデカジエン酸等の脂肪酸;これらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等の脂肪酸塩;ホスファチジン酸、ジセチルホスフェート等が挙げられる。また、リン脂質成分としてホスファチジルグリセロールを又はその塩を用いた場合、それ自身が荷電物質としても作用する。これらの荷電物質は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 アシルアミノ酸系界面活性剤としては、例えば、サルコシン、グルタミン酸、タウリン、グリシン等のアミノ酸の脂肪酸アミド塩が挙げられる。これらのアシルアミノ酸系界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 水素添加レシチンと天然レシチンによってリポソームを形成する場合、当該リポソームには、必要に応じて、香粧学的又は薬学的な機能性を示す機能性成分を内水相(リポソームの内相)及び/又は膜内部(リポソーム膜内)に含んでいてもよい。このような機能性成分の種類については、後述する「(H)機能性成分」の欄に記載の通りである。機能性成分の中でも、ヒアルロン酸又はその加水分解物は、従来技術では肌への浸透感及び肌馴染みの双方を満足させることが困難な機能性成分であるが、水素添加レシチンと天然レシチンによって形成したリポソームによれば、ヒアルロン酸又はその加水分解物の肌への浸透感及び肌馴染みの双方を効果的に向上させることができる。かかる本発明の効果に鑑みれば、リポソームに含有させる機能性成分として、好ましくはヒアルロン酸又はその加水分解物、更に好ましくはヒアルロン酸の加水分解物が挙げられる。ヒアルロン酸の加水分解物の平均分子量については、特に制限されないが、例えば、1万以下が挙げられる。 水素添加レシチンと天然レシチンによって形成されるリポソームにおいて、前記機能性成分の含有量については、使用する機能性成分の種類に応じて適宜設定されるが、例えば、リポソームの膜構成成分の総量100重量部当たり、機能性成分が0.01〜35重量部、好ましくは0.1〜25重量部、更に好ましくは0.5〜20重量部が挙げられる。 また、水素添加レシチンと天然レシチンによってリポソームを形成する場合、当該リポソームには、内水相及び/又は膜内部には、必要に応じて、皮膚外用組成物に配合される油分や添加剤が含まれていてもよい。このような油分や添加剤の種類については、後述する「(F)他の油分」及び「(I)その他の添加剤」の欄に記載の通りである。 水素添加レシチンと天然レシチンによってリポソームを形成する場合、膜構成成分、水、必要に応じて添加される機能性成分や添加剤を混合し、公知のリポソーム形成方法に供すればよい。リポソーム形成方法については、特に制限されないが、例えば、ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、真空乳化機等で処理する方法、超音波処理法、フレンチプレス法、凍結融解法、逆相蒸発法、界面活性剤法、エクストルージョン法、カルシウム−EDTAキレート法等が挙げられる。 水素添加レシチンと天然レシチンによって形成されるリポソームの平均粒径については、特に制限されないが、例えば50〜500nm程度が挙げられる。(レシチンの含有量) 本発明の水中油型乳化組成物においてレシチンの含有量については、特に制限されないが、例えば、レシチンが総量で0.00005〜5重量%、好ましくは0.0001〜3重量%、更に好ましくは0.0001〜2重量%となる範囲が挙げられる。このような範囲を充足することによって、こっくりとした使用感、べたつきのなさ、及び安定性をより一層向上させることができる。(E)水 本発明の水中油型乳化組成物は、水相を形成するために水を含有する。本発明の水中油型乳化組成物における水の含有量については、本発明の水中油型乳化組成物の剤型等に応じて適宜設定されるが、例えば40〜85重量%、好ましくは50〜80重量%、更に好ましくは55〜80重量%が挙げられる。(F)他の油分 本発明の水中油型乳化組成物は、前述する成分以外に、必要に応じて、炭化水素、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸、植物油、動物油、高級アルコール(ステアリルアルコールとベヘニルアルコール以外)、シリコーンオイル等の油分が含まれていてもよい。 炭化水素としては、具体的には、パラフィン、流動パラフィン、ゲル化炭化水素(プラスチベース等)、ワセリン、鉱物油(ミネラルオイル)等が挙げられる。これらの炭化水素は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 脂肪酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数6〜20の脂肪酸と炭素数2〜20のアルコールのエステルが挙げられ、具体的には、エチルヘキサン酸セチル、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、セバシン酸ジエチル、オレイン酸エチル等が挙げられる。これらの脂肪酸アルキルエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 脂肪酸としては、例えば、炭素数8〜20の脂肪酸が挙げられ、具体的には、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、セバシン酸、オレイン酸等が挙げられる。これらの脂肪酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 植物油としては、具体的には、オリーブ油、小麦胚芽油、こめ油、サフラワー油、大豆油、つばき油、とうもろこし油、なたね油、ひまわり油、綿実油、落花生油、ホホバ脂、硬化油、アボガド油、ウイキョウ油、チョウジ油、ハッカ油、ユーカリ油、レモン油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、蜜ロウ、木ロウ等が挙げられる。これらの植物油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 動物油としては、具体的には、ラード、魚油、スクワラン等が挙げられる。これらの動物油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 高級アルコールとしては、例えば、炭素数8〜20の1価アルコールが挙げられ、具体的には、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。これらの高級アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 シリコーンオイルとしては、具体的には、メチルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アクリルシリコン、フェニル変性シリコーン等が挙げられる。これらのシリコーンオイルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 これらの油分の中でも、こっくりとした使用感、べたつきのなさ、及び安定性をより一層向上させるという観点から、好ましくは動物油、鉱物油、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸グリセリンエステル、脂肪酸及び高級アルコールが挙げられる。これらの油分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 本発明の水中油型乳化組成物において、これらの油分の含有量については、特に制限されないが、例えば、5〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、更に好ましくは5〜30重量%が挙げられる。(G)卵黄の低級アルコール抽出物 本発明の水中油型乳化組成物には、必要に応じて、卵黄の低級アルコール抽出物が含まれていてもよい。このように卵黄の低級アルコール抽出物を含有させることによって、本発明の水中油型乳化組成物の肌への浸透感及び肌馴染み感を向上させることができる。とりわけ、レシチンとして、水素添加レシチンと天然レシチンによって形成されたリポソームを使用する場合に、当該リポソームとは別に、卵黄の低級アルコール抽出物を含有させ、水中油型乳化組成物中で卵黄の低級アルコール抽出物をリポソームに取り込まれない形で存在させることによって、こっくりとした使用感、べたつきのなさ、肌への浸透感、及び肌馴染み感を格段に向上させることができる。卵黄の低級アルコール抽出物については、前記「天然レシチン」の欄に記載の通りである。 また、本発明の水中油型乳化組成物の卵黄の低級アルコール抽出物の含有量(水素添加レシチンと天然レシチンによって形成されたリポソームとは別に添加される量)については、特に制限されないが、例えば、乾燥重量換算で、0.001〜5重量%、好ましくは0.001〜3重量%、更に好ましくは0.001〜2重量%が挙げられる。(H)機能性成分 本発明の水中油型乳化組成物には、必要に応じて、香粧学的又は薬学的な機能性を示す機能性成分が含まれていてもよい。このような機能性成分としては、特に制限されないが、例えば、水溶性のビタミン及びその誘導体、油溶性のビタミン及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、アスタキサンチン、コエンザイムQ10、α−リポ酸、セラミド又はその類似物質、リノール酸、アルブチン、トラネキサム酸、コウジ酸、酵素、ペプチド、ホルモン、各種サイトカイン、ヒアルロン酸等のグリコサミノグリカン類及びその塩類或いはその誘導体、ヒアルロン酸加水分解物、コラーゲン又はその加水分解物、エラスチン又はその加水分解物、糖類等の生理活性物質、各種動植物抽出物、微生物による発酵で得られる物質、ステロイド剤、抗ヒスタミン、局所麻酔剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗菌剤、鎮痒剤、皮膚保護剤、血行促進剤、ステロール類等が挙げられる。本発明の水中油型乳化組成物において、レシチンとして水素添加レシチンと天然レシチンによって形成されたリポソームを使用する場合には、前述するように、これらの機能性成分は当該リポソームの内水相及び/又は膜内部に含まれていてもよい。 これらの機能性成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 本発明の水中油型乳化組成物において、これらの機能性成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、0.0003〜10重量%、好ましくは0.0003〜8重量%、更に好ましくは0.0005〜8重量%が挙げられる。(I)その他の添加剤 本発明の水中油型乳化組成物は、前述する成分以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、皮膚外用組成物に配合される添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級1価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール;ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸塩等の酸化防止剤;フェノキエタノール、オクトキシグリセリン、パラベン等の防腐剤;リン脂質重合体、顔料、パール化剤、増粘剤、界面活性剤(アニオン性界面活性剤以外)、安定化剤、キレート剤、着色料、香料、緩衝剤、pH調整剤等が挙げられる。製造方法 本発明の水中油型乳化組成物は、知の水中油型乳化組成物製造方法に従って製造することができる。具体的には、配合する成分を、水溶性成分と脂溶性成分に別けて、水溶性成分を含む水相と、脂溶性成分を含む油相をそれぞれ調製し、得られた水相と油相を混合し、ホモジナイザー等の乳化手法によって乳化させることにより、本発明の水中油型乳化組成物を製造することができる。剤型及び製剤形態 本発明の水中油型乳化組成物は、液状、固形状、クリーム状、ジェル状等のいずれの剤型であってもよい。これらの剤型の中でも、肌への浸透感及び肌馴染み感をより一層実感させ易くするという観点から、好ましくはクリーム状が挙げられる。 本発明の水中油型乳化組成物は、化粧料、外用医薬品等の皮膚外用組成物として使用される。本発明の水中油型乳化組成物の製剤形態については、特に制限されないが、例えば、クリーム、化粧水、美容液、乳液、ジェル、口紅、ファンデーション等の化粧料;液剤(ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、及び乳液剤を含む)、フォーム剤、軟膏剤、クリーム剤、ジェル剤、貼付剤等の外用医薬品が挙げられる。これらの製剤形態の中でも、肌への浸透感及び肌馴染み感をより一層実感させ易くするという観点から、好ましくは化粧料、更に好ましくはクリーム、美容液及び乳液が挙げられる。 以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。試験例1 表1及び2に示す組成のクリーム状の水中油型乳化組成物を調製した。具体的には、及び2に示す(A)の各成分を80℃に加熱して混合した油相と、及び2に示す(B)の各成分を80℃に加熱して混合した水相をそれぞれ調製し、得られた油相と水相を混合してホモミキサーを用いて乳化させ、40℃まで撹拌冷却した後に、所定量の水素添加大豆レシチンを添加し、更に30℃まで撹拌冷却することにより、クリーム状の水中油型乳化組成物を製造した。 得られた各水中油型乳化組成物について、以下の方法で、製剤安定性、こっくりとした使用感、べたつき感のなさについて、評価した。製剤安定性 各水中油型乳化組成物を50℃にて4週間暗所で保存した後に、保存後の外観性状を観察し、下記の判定基準に従って、製剤安定性を評価した。<製剤安定性の判定基準>○:標準品(25℃保存品)と比較して変化していない。△:標準品(25℃保存品)と比較して流動性が見られる。×:クリーミング又は2層分離している。こっくりとした使用感及びべたつき感のなさ 評価モニター10名が各水中油型乳化組成物のこっくりとした使用感及びべたつき感のなさについて評価した。具体的には、各水中油型乳化組成物約0.5gを顔に塗布し、感じられるこっくりとした使用感とべたつき感のなさについて評価した。評価は、濃厚で重さのあるしっとり感が感じられず、こっくりとした使用感がないを「1」、濃厚で重さのあるしっとり感が感じられ、こっくりとした使用感があるを「10」;べたつきを感じる「1」、べたつきを感じないを「10」としたVisual Analogue Scale(以下、VASと記載する)によるアンケートを実施することにより行った。アンケート結果を平均し、小数点第一位を四捨五入することにより、評価結果をまとめた。 得られた結果を表1及び2に示す。表2から明らかなように、ステアロイルグルタミン酸を含まない場合には、こっくりとした使用感が不十分で、更にはべたつきが強く感じられた(比較例1)。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含まない場合には、製剤安定性が悪く、更にこっくりとした使用感とべたつきの点でも不十分であった(比較例2)。更に、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.5重量%未満であると、こっくりとした使用感が不十分になり、更にポリグリセリン脂肪酸エステルが1.2重量%を超えると、強いべたつきが感じられた(比較例3及び4)。また、ステアロイルグルタミン酸ナトリウムが0.1重量%未満の場合には、製剤安定性、こっくりとした使用感、べたつきのなさの点で不十分であり、更に0.8重量%を超える場合には、こっくりとした使用感とべたつきの点で不十分であった(比較例5及び6)。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルに代えて、他のノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)を使用した場合には、製剤安定性、こっくりとした使用感、べたつきのなさの全ての点において、悪くなっていた(比較例7及び8)。また、ベヘニルアルコール及びステアリルアルコールのいずれかい一方でも欠けた場合では、製剤安定性、こっくりとした使用感、べたつきのなさの全ての点において不十分であり、更にベヘニルアルコールがステアリルアルコールよりも含有量が多い場合では、こっくりとした使用感が不十分で、強いべたつきも感じられた(比較例9〜11)。更に、レシチンを含有しない場合には、強いべたつきが感じられた。 これに対して、表1から明らかなように、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.5〜1.2重量%、アニオン性界面活性剤(ステアロイルグルタミン酸ナトリウム)0.1〜0.8重量%、ステアリルアルコール、及びステアリルアルコールよりも少量のベヘニルアルコールが含まれている場合には、製剤安定性に優れ、更にこっくりとした使用感が十分に感じられ、べたつきも十分に抑制できていた(実施例1〜15)。試験例2 先ず、水素添加大豆レシチン[日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL レシノール S−10E」、ヨウ素価0.1、ホスファチジルコリン含量82.2重量%]及び/又は卵黄のエタノール抽出物(卵黄油)[キユーピー株式会社製「卵黄レシチンPL−30S」;当該抽出物には、卵黄レシチン(ヨウ素価73、ホスファチジルコリン含量29.6重量%)が30重量%含有されている]を用いてリポソームの製造を行った。具体的には、水素添加大豆レシチン及び/又は卵黄のエタノール抽出物を表3に示す所定量混合して85℃で加熱分散させた混合液を、表3の(B)に示す所定量の各成分を85℃で加熱溶解させた液に添加し、80℃で6,000rpmで5分間ホモジナイズ処理(プライミクス株式会社、ロボミックスを使用)を行った。ホモジナイズ処理後、60℃まで空冷で冷却した後に、水冷して室温まで冷却してリポソーム組成物を得た。 得られたリポソーム組成物を用いて、表4に示す組成のクリーム状の水中油型乳化組成物を調製した。製造方法及び組成は、水素添加大豆レシチンに代えて、リポソーム組成物を使用したこと以外は、前記実施例2と同様である。 得られた水中油型乳化組成物について、こっくりとした使用感、べたつき感のなさ、肌馴染み、及び浸透感について評価した。具体的には、各水中油型乳化組成物約0.5gを顔に塗布し、感じられるこっくりとした使用感、べたつき感のなさ、肌馴染み、及び浸透感について評価した。各評価は、濃厚で重さのあるしっとり感が感じられず、こっくりとした使用感がないを「1」、濃厚で重さのあるしっとり感が感じられ、こっくりとした使用感があるを「10」;べたつきを感じる「1」、べたつきを感じないを「10」;肌馴染みが悪いと感じるを「1」、肌馴染が良いと感じるを「10」;浸透感が悪いと感じるを「1」、浸透感が良いと感じるを「10」として、VASによるアンケートを実施することにより行った。アンケート結果を平均し、小数点第一位を四捨五入することにより、評価結果をまとめた。 得られた結果を表4に示す。水素添加大豆レシチンをリポソームの形態で添加することにより、こっくりとした使用感が向上することが確認された(実施例16)。特に、水素添加大豆レシチンと卵黄のエタノール抽出物(卵黄レシチン)を併用してリポソームを形成し、これを添加すると、こっくりとした使用感、べたつきのなさ、肌馴染み及び浸透感の全ての点において、格段に優れた水中油型乳化組成物が得られることも確認された。試験例3 前記試験例2で得られたリポソーム組成物を使用して、表5に示す組成のクリーム状の水中油型乳化組成物を調製した。製造方法及び組成は、水素添加大豆レシチンに代えてリポソーム組成物を使用し、卵黄のエタノール抽出物(卵黄油)[キユーピー株式会社製「卵黄レシチンPL−30S」;当該抽出物には、卵黄レシチン(ヨウ素価73、ホスファチジルコリン含量29.6重量%)が30重量%含有されている]を添加(添加タイミングはリポソーム組成物と同時)したこと以外は、前記実施例2と同様である。 得られた水中油型乳化組成物について、前記試験例2と同様の方法で、こっくりとした使用感、べたつき感のなさ、肌馴染み、及び浸透感について評価した。 得られた結果を表5に示す。この結果から、水素添加大豆レシチンと卵黄のエタノール抽出物(卵黄レシチン)で形成したリポソームと共に、別途卵黄のエタノール抽出物を添加することによって、肌馴染及び浸透感が一段と高まり、使用感が極めて良好な水中油型乳化組成物が得られることが明らかとなった。処方例1〜34 表6〜9に記載の処方に従い、リポソーム組成物を調製した。具体的には、試験例2と同様にしてリポソーム組成物を調製した。また、試験例3と同様にして、得られたリポソーム組成物を含有する水中油型乳化組成物を調製した。得られた水中油型乳化組成物は、こっくりとした使用感、べたつき感のなさ、肌馴染み、及び浸透感の点で、優れていた。 (A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)アニオン性界面活性剤、(C-1)ステアリルアルコール、(C-2)ベヘニルアルコール、及び(D)レシチンを含有し、且つ(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.5〜1.2重量%、(B)アニオン性界面活性剤の含有量が0.1〜0.8重量%であり、(C-1)ステアリルアルコールの含有量が(C-2)ベヘニルアルコールに比べて多いことを特徴とする、水中油型乳化組成物。 前記(C-2)ベヘニルアルコール1重量部に対して、前記(C-1)ステアリルアルコールが1.5〜5重量部含まれる、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。 前記(D)レシチンとして、少なくとも水素添加レシチンを含む、請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。 前記(D)レシチンが、水素添加レシチン及び天然レシチンを含むリポソーム形態で含まれる、請求項1〜3のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。 前記天然レシチン1重量部に対して、前記水素添加レシチンが20〜130重量部含まれる、請求項4に記載の水中油型乳化組成物。 前記天然レシチンとして、卵黄の低級アルコール抽出物が使用される、請求項4又は5のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。 更に、前記リポソーム形態の(D)レシチンとは別に、卵黄の低級アルコール抽出物を含有する、請求項4〜6のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。 クリーム状の化粧料である、請求項1〜7のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。 【課題】本発明は、こっくりとした使用感(濃厚で重さのあるしっとり感)でありながら、ベタツキ感の少なく、しかも優れた安定性を備える水中油型乳化組成物を提供することを目的とする。【解決手段】水中油型乳化組成物において、(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)アニオン性界面活性剤、(C-1)ステアリルアルコール、(C-2)ベヘニルアルコール、及び(D)レシチンを含有させ、且つ(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)アニオン性界面活性剤、(C-1)ステアリルアルコール及び(C-2)ベヘニルアルコールの含有量を所定範囲に設定することによって、こっくりとした使用感でありながらも、ベタツキ感が少なく、しかも高い安定性を備えさせ得る。【選択図】なし