タイトル: | 公開特許公報(A)_乳酸菌の検出方法 |
出願番号: | 2014069593 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C12Q 1/04,C12Q 1/68,A23L 2/38 |
熊王 俊男 浅野 一朗 中室 賢一 藤井 繁佳 井村 直人 JP 2015188412 公開特許公報(A) 20151102 2014069593 20140328 乳酸菌の検出方法 味の素ゼネラルフーヅ株式会社 000243766 棚井 澄雄 100106909 高柴 忠夫 100086379 大槻 真紀子 100147267 熊王 俊男 浅野 一朗 中室 賢一 藤井 繁佳 井村 直人 C12Q 1/04 20060101AFI20151006BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20151006BHJP A23L 2/38 20060101ALN20151006BHJP JPC12Q1/04C12Q1/68 ZA23L2/38 P 6 OL 7 4B017 4B063 4B017LK18 4B017LP18 4B063QA01 4B063QQ06 4B063QQ16 4B063QQ63 4B063QR42 4B063QR75 4B063QX01 本発明は、滅菌処理後の飲料中の乳酸菌を検出する方法に関する。 一般的に、飲料は、容器に密閉充填された状態で市場に流通している。飲料中に生きた微生物が混入していると、流通過程において腐敗等の品質劣化を生ずるおそれがある。そこで通常は、容器に密閉充填された飲料に対して滅菌処理が施されるか、又は滅菌処理がなされた後に容器に滅菌充填された状態で流通される。また乳製品などチルド流通を必要とする飲料は、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」による乳製品の成分規格により、必ずしも無菌である必要がないが、賞味期限が短く腐敗を早めるような特定の微生物が混入していることは好ましくない。そこで、製品の品質管理上の点からは、各製品に混入している微生物の数およびその種類を確認することが重要であるとされている。 液体試料中の生存微生物の検出方法としては、一般的には例えば、当該液体試料を寒天平板培地等にまいて形成されたコロニーの数を計測するいわゆる培養法、試料中に含まれる微生物由来のアデノシン3リン酸(ATP)を蛍光色素により反応させその強度をルミノメーターにより検出するいわゆるATP法、液体試料そのもの、もしくはバッファー等で希釈した試料の吸光度を測定することで濁度を調べる比濁法等が挙げられる。「食品衛生検査指針 微生物偏2004」、厚生労働省監修、社団法人日本食品衛生協会発行、2004年 滅菌処理後に無菌充填された飲料中は基本的には無菌であるが、工程の不備により極微量の微生物が混入した場合、公定法に定められている検査方法を用いても検出することは非常に困難である。また、チルド流通を必要とする飲料は、無菌ではないものの特定の微生物が極微量に混入した場合についても検出することが非常に困難である。 本発明は、飲料中に極微量に混入している微生物、特に乳酸菌を高感度に検出するための方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、被検対象の飲料を25〜35℃で18時間以上保温することにより、当該飲料中の滅菌処理後に生残している乳酸菌を充分に増殖させられることを見出し、本発明を完成させた。[1] 本発明に係る乳酸菌の検出方法は、飲料中に混入している乳酸菌を検出する方法であって、被検対象である滅菌処理後の飲料を25〜35℃で18時間以上保温した後、当該飲料中で増殖した乳酸菌を検出することを特徴とする。[2] 前記[1]の乳酸菌の検出方法は、乳酸菌の検出を、乳酸菌由来のATPを検出することにより行うことが好ましい。[3] 前記[1]の乳酸菌の検出方法においては、乳酸菌の検出を、飲料の濁度を指標として行うことが好ましい。[4] 前記[1]〜[3]のいずれかの乳酸菌の検出方法においては、前記飲料が、乳製品であることが好ましい。[5] 前記[1]の乳酸菌の検出方法においては、前記飲料が、乳製品であり、乳酸菌の検出を、前記飲料のpHを5以下に低下させた後、沈殿物を除去して得られた上清の濁度を指標として行うことが好ましい。[6] 前記[5]の乳酸菌の検出方法においては、前記飲料が、チルド流通されるものであることが好ましい。 本発明に係る乳酸菌の検出方法により、滅菌処理後の飲料中に含まれている極微量の乳酸菌を高感度に検出することができる。 本発明に係る乳酸菌の検出方法は、飲料中に混入している乳酸菌を検出する方法であって、被検対象である滅菌処理後の飲料を特定の温度条件で一定期間保温した後、当該飲料中で増殖した乳酸菌を検出することを特徴とする。滅菌処理後の飲料を25〜35℃で18時間以上保温することにより、当該飲料中の生残乳酸菌を、通常の検出方法によって検出可能な程度(例えば、1×104CFU/mL以上)にまで増殖させることができる。 被検対象の飲料は、滅菌処理後の飲料であれば特に限定されるものではないが、本発明の効果をより発揮し得ることから、容器に密閉充填された滅菌処理済のものが好ましい。当該飲料からサンプリングした試料を乳酸菌が培養可能な培地等で培養する方法ではなく、当該飲料をそのまま保温することにより、流通過程で問題となり得る乳酸菌コンタミをより効率よく調べることができる。中でも、チルド飲料が特に好ましい。チルド飲料は、冷蔵状態で流通されるため、仮に滅菌処理後に生菌が残存していた場合であっても、流通過程で(消費者の手元に届く前に)コンタミを発見することは非常に困難である。本発明に係る乳酸菌の検出方法により、滅菌処理後のチルド飲料中に極微量に残存している乳酸菌も感度よく検出することができる。 被検対象の飲料としては、特に、乳酸菌のコンタミが疑われる飲料であることが好ましく、カフェオレ、ミルクティー、抹茶オレ、ヨーグルト飲料(ヨーグルトを構成している乳酸菌以外のコンタミ)等の乳成分を原料とする飲料がより好ましい。 本発明において、被検対象の飲料を保温する温度は、25〜35℃の範囲内であればよく、28〜32℃の範囲内が好ましく、30℃がより好ましい。なお、保温温度は、当該温度範囲内であればよく、保温期間中に必ずしも一定温度を維持する必要はない。 本発明において、被検対象の飲料の保温時間は、18時間以上であればよいが、20時間以上であることが好ましく、22時間以上であることがより好ましい。培養時間が長くなれば、より確実に、被検飲料中の生残乳酸菌を検出限界以上に増殖させることができる上に、乳酸菌以外の生残微生物も検出可能な程度に増殖させることが期待できる。 本発明において、一定期間保温した後の飲料中の生きている乳酸菌は、生菌を検出する際に用いられる方法の中から、適宜選択して行うことができる。例えば、当該飲料中の生乳酸菌は、直接生細菌数を計数してもよく、ATP法、比濁法等により検出することができる。各方法は、常法により、又は必要に応じて改良して行うことができる。 生乳酸菌を直接計数する場合、DNAや乳酸菌に特有のタンパク質や脂質、糖類等を染色することにより、乳酸菌とその形状が類似したその他の物質(例えば、デブリス、乳酸菌以外の微生物等)を区別しておくこともできる。また、計数前に予めトリパンブルー染色等を行うことにより、生菌と死菌を区別しておいてもよい。 ATP法は、生物由来のATPを、ルシフェラーゼ等の酵素と反応させて発光させることにより定量的に検出する方法である。生乳酸菌をATP法により検出する場合、使用する酵素や反応条件等は、常法により行うことができる。また、市販のATP測定キットを使用してもよい。被検対象となる飲料と同種の飲料に、予め濃度既知の乳酸菌を接種したものについて、同様にATP法により発光量を測定し、検量線を作成しておくことにより、被検飲料中の乳酸菌量を定量することもできる。 比濁法で生乳酸菌を検出する場合、濁度を測定する波長は、550〜650nmの範囲内であることが好ましく、600nmがより好ましい。被検対象の飲料が乳成分を含むもの等、タンパク質分を多く含み、滅菌直後であっても濁度が高い場合には、濁度の測定前に予めpHを酸性に、例えばpH5以下に調整し、タンパク質を変性させて沈殿させ、その上清の濁度を測定することにより、微生物の増殖による濁度の変化を測定しやすくなる。被検対象となる飲料と同種の飲料に、予め濃度既知の乳酸菌を接種したものについて、同様に濁度を測定し、検量線を作成しておくことにより、被検飲料中の乳酸菌量を定量することもできる。 次に、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本実施例は本発明の実施態様を具体的に説明したものであって、本発明の範囲を限定することを意図しない。[実施例1] 滅菌処理後のカフェオレに各種微生物を接種させたものを被検飲料として、一定期間保温後に微生物を検出した。被検微生物としては、乳酸菌3株[ラクトバチルス・ラクチス(Lactococcus lactis) AGF491株、エンテロコッカス・ガリナラム(Enterococcus gallinarum) AGF492株、ロイコノストック・シトレウム(Leuconostoc citreum) AGF338株]、その他の微生物3株[ラルストニア・スピーシーズ(Ralstonia sp.) AGF349株、エキギュオバクテリウム・インディクム(Exiguobacterium indicum) AGF443株、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli) AGF498株]を用いた。 被検試料としては、コーヒー固形分、牛乳、及び砂糖を混合しUHT殺菌(超高温瞬間殺菌)後、ポリエチレンカップに充填したカフェオレを用いた。当該被検試料に、1CFU/mL以下の濃度になるように、各種微生物を植菌した後、30℃で培養した。培養開始から18時間後、20時間後、及び22時間後に、当該被検試料からサンプリングし、血球計算板を用いて当該試料中の微生物の生存数(CFU/mL)を計数した。測定結果を表1に示す。 乳酸菌系である3菌種は、30℃18時間以上の保温で、104CFU/mL以上の増菌が確認された。一方、非乳酸菌系である3菌種では、30℃20時間までは明らかな菌の増殖を確認することができなかった。この結果は、カフェオレなどの乳製品に少量の乳酸菌がコンタミした場合、30℃18時間の保温により、大幅な菌の増殖をさせることが可能であることを示すものである。[参考例1] ラクトバチルス・ラクチスAGF491株を植菌したカフェオレ、ミルクティー、及び抹茶オレについて、保温後の飲料の濁度を測定することにより、乳酸菌数を測定した。 実施例1と同様にして調製したカフェオレと、紅茶固形分、牛乳及び砂糖を混合した後にUHT殺菌し、その後ポリエチレンカップに充填したミルクティーと、抹茶、牛乳及び砂糖を混合した後にUHT殺菌し、その後ポリエチレンカップに充填した抹茶オレと、について、ラクトバチルス・ラクチスAGF491株を植菌したものを、被検飲料として用いた。 分光光度計を用いて濁度(Ab=600nm)を測定するためには、乳製品中の透過度を上げる必要がある。そこで、まず、植菌後の被検飲料に酢酸を添加してpH4.7に低下させ、沈殿物を生じさせた。その後、粒子径θが7μmであるフィルター(製品名:5A、ADVANTEC社製)を使用した濾過処理を行い、沈殿物と濾液を分離した。得られた濾液について、分光光度計で600nmの吸光度を測定した。吸光度測定時のブランクは、菌をコンタミさせていない各製品に対して同様に処理を行ったサンプルを用いた。 測定結果を表2に示す。この結果、各飲料ともに、コンタミさせた菌数及び吸光度の関係は高い相関が得られた。このことから、比濁法により、培養法よりも短時間で菌数を測定することが可能であることが示唆された。[実施例2] 参考例1と同様にして調製したカフェオレ、ミルクティー、及び抹茶オレに対して、ラクトバチルス・ラクチスAGF491株を1CFU/mL以下の濃度になるように植菌した後、30℃で18時間保温した。その後、市販のATP濃度測定キット(製品名:ルシフェールAT−100、キッコーマンバイオケミファ社製)を用いて、ATP濃度の発光量単位であるRLU値を測定した。得られた結果は、各製品がもつバックグラウンド値(BG、 製品中に含まれる消去しきれないATPによって得られるRLU値)を差し引いた値を求めた。 測定結果を表3に示す。供試した全ての飲料において、30℃18時間以上の保温により、RLU値の明らかな上昇が確認された。この結果より、本発明に係る乳酸菌の検出方法により、従来の培養法よりも短時間で菌数を測定することが可能であることがわかった。 飲料中に混入している乳酸菌を検出する方法であって、被検対象である滅菌処理後の飲料を25〜35℃で18時間以上保温した後、当該飲料中で増殖した乳酸菌を検出することを特徴とする、乳酸菌の検出方法。 乳酸菌の検出を、ATPを検出することにより行う、請求項1に記載の乳酸菌の検出方法。 乳酸菌の検出を、飲料の濁度を指標として行う、請求項1に記載の乳酸菌の検出方法。 前記飲料が、乳製品である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の乳酸菌の検出方法。 前記飲料が、乳製品であり、 乳酸菌の検出を、前記飲料のpHを5以下に低下させた後、沈殿物を除去して得られた上清の濁度を指標として行う、請求項1に記載の乳酸菌の検出方法。 前記飲料が、チルド流通されるものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳酸菌の検出方法。 【課題】滅菌処理後の飲料中に極微量に混入している乳酸菌を、高感度に検出するための方法を提供する。【解決手段】飲料中に混入している乳酸菌を検出する方法であって、被検対象である滅菌処理後の飲料を25〜35℃で18時間以上保温した後、当該飲料中で増殖した乳酸菌を検出することを特徴とする、乳酸菌の検出方法である。前記検出方法においては、乳酸菌の検出を、ATPを検出することにより行なったり、飲料の濁度を指標として行うことが好ましい。【選択図】なし