| タイトル: | 公開特許公報(A)_生体試料中の直接トロンビン阻害薬の測定試薬及び測定方法 |
| 出願番号: | 2014068923 |
| 年次: | 2014 |
| IPC分類: | G01N 33/86 |
藤岡 貴 門脇 淳 楊 宇航 金子 誠 矢冨 裕 菅野 信子 JP 2014209115 公開特許公報(A) 20141106 2014068923 20140328 生体試料中の直接トロンビン阻害薬の測定試薬及び測定方法 株式会社LSIメディエンス 591122956 国立大学法人 東京大学 504137912 森田 憲一 100090251 山口 健次郎 100139594 藤岡 貴 門脇 淳 楊 宇航 金子 誠 矢冨 裕 菅野 信子 JP 2013074086 20130329 G01N 33/86 20060101AFI20141010BHJP JPG01N33/86 6 OL 11 2G045 2G045AA10 2G045CA25 2G045CA26 2G045FA13 2G045GC10 本発明は、生体試料中の直接トロンビン阻害薬(Direct Thrombin Inhibitor:DTI)の測定試薬に関するものである。 各種抗凝固薬は血栓塞栓症予防、DIC(播種性血管内凝固症候群)の治療、体外循環回路の保護など広く用いられている。しかし、過剰投与などにより重篤な出血性副作用が発生する事も知られている。その為、代表的な経口抗凝固薬でビタミンK拮抗薬であるワルファリンはプロトロンビン時間−国際標準比(PT−INR)によるモニタリングが実施されている。このワルファリンよりも効果、副作用のいずれにおいても優れた新しい薬剤の臨床実用化が望まれており、とくに患者ごとに投与量の調節は原則不要で、血液モニター不要で固定量の投与が出来る画期的な薬剤が期待され、開発されてきている。 なかでも、2011年3月より非弁膜症性心房細動患者の脳卒中及び全身性塞栓症の予防薬として、経口投与可能な直接トロンビン阻害薬であるプラザキサ(一般名:Dabigatran Etexilate Methansulforate)が、本邦において発売が開始された。プロドラッグである本剤は消化管吸収後にエステラーゼにより代謝を受け、トロンビン阻害能を有するダビガトラン(Dabigatran)へ変換された後、トロンビンと競合的かつ可逆的に結合し、その凝固活性を阻止する(非特許文献1、2、3)。ダビガトランは、その殆どが腎より排泄される為、クリアチニンクリアランス(Ccr)を指標として腎機能が低下している患者への慎重投与及び、禁忌となっている(非特許文献4、5)。ダビガトラン投与患者における出血性副作用の多くは腎機能の低下を背景としているが、例外事例も発生しており、直接ダビガトランの血中濃度(凝固能)を評価する方法が望まれている(非特許文献6)。 抗凝固薬として臨床応用されている直接トロンビン阻害薬は、血中にてトロンビンを選択的に阻害する事により抗凝固作用を示す。そのDTIの血中濃度(凝固能)を評価するモニタリングには、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を指標とする事が推奨されているが、APTTはDTI以外にも血液凝固因子の低下、ループス抗凝固因子(Lupus Anticoagulant)として知られている抗リン脂質抗体の存在などの、薬剤以外の他の影響でも凝固時間が延長する。 その他の検査法として、トロンビン時間(TT)及び、それをDTI測定用に変更したヘモクロットトロンビンインヒビター活性(HemoClot Thrombin inhibitor activity、Hyphen Biomed社)が知られている。トロンビン時間は試薬中のトロンビンがDTIにより直接阻害を受け濃度依存的に凝固時間が延長するが、フィブリノゲンの量的・質的異常によっても短縮延長する。また、患者血漿中のフィブリノゲン量は一定では無い為、同容量のDTI投与患者であってもトロンビン時間の凝固時間は異なる。また、血漿希釈液、過剰のフィブリノゲンおよびトロンビンを用いる定量トロンビン時間に基づくDTIの血漿レベルを測定するための定量方法が開示されている(特許文献1)。しかし、未だ、臨床現場で使用するためには不十分であった。特表平8−501682号公報Hauel NH, Nar H, Priepke H, et al., Structure-based design of novel potent nonpeptide thrombin inhibitors. J Med Chem 2002; 45: 1757-1766.Wienen W, Stassen JM, Priepke H, et al., In-vitro profile and ex-vivo anticoagulant activity of the direct thrombin inhibitor dabigatran and its orally active prodrug, dabigatran etexilate. Thromb Haemost 2007; 98: 155-162.van Ryn J, Hauel N, Waldmann L, et al., Dabigatran inhibits both clot-bound and fluid phase thrombin in vitro: Effects compared to heparin and hirudin (abstract). Blood 2007; 110: 3998.Connolly SJ, Ezekowitz MD, et al., Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med. 2009 Sep 17;361(12):1139-51, 2010 Nov 4;363(19):1877.日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社.プラザキサカプセル添付文書.日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社.市販後調査最終報告. 本発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、高感度・高精度で且つ簡便に生体試料中のDTIの測定をすることができる測定試薬及び測定方法を提供するものである。 本発明者らは、上記のような課題に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、低濃度のトロンビンを含有することによって、血漿中のDTI濃度を高感度・高精度に測定できることを見出した。また、あるDTIの濃度において、対照試料とDTI含有試料の凝固時間の比(Ratio)は一定であり、DTI濃度を直接定量しなくても、この比を求めることで、簡便に生体試料中のDTIの測定できることを見出した。 本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。 本発明は、以下の発明に関する:[1]低濃度トロンビン及びフィブリノゲンを含有することを特徴とする、直接トロンビン阻害薬の測定試薬。[2]凝固時間測定時の測定溶液中の最終濃度として、0.1NIHU/mL以上0.83NIHU/mL未満となる濃度でトロンビンを含有する、[1]の直接トロンビン阻害薬の測定試薬。[3]直接トロンビン阻害薬の測定が、対照試料の凝固時間に対する、直接トロンビン阻害薬含有試料の凝固時間の比を求めるものである、[1]又は[2]の直接トロンビン阻害薬の測定試薬。[4][1]〜[3]のいずれかの直接トロンビン阻害薬の測定試薬を使用することにより、生体試料、トロンビン、フィブリノゲンを溶液中で接触させ、その接触開始から凝固までの時間を測定する工程を含むことを特徴とする、直接トロンビン阻害薬の測定方法。[5]直接トロンビン阻害薬の測定が、対照試料の凝固時間に対する、直接トロンビン阻害薬含有試料の凝固時間の比を求めるものである、[4]の直接トロンビン阻害薬の測定方法。[6][1]〜[3]のいずれかの直接トロンビン阻害薬の測定試薬を使用することにより、生体試料中の直接トロンビン阻害薬の存在量をモニタリングする方法において、(a)対照試料、トロンビン、フィブリノゲンを溶液中で接触させ、その接触開始から凝固までの時間を測定する工程(b)直接トロンビン阻害薬含有試料、トロンビン、フィブリノゲンを溶液中で接触させ、その接触開始から凝固までの時間を測定する工程(c)工程(a)及び(b)で得られた時間の比を求める工程を含む方法。 本発明の生体試料中のDTIの測定試薬及び測定方法によれば、高感度・高精度、且つ、簡便に生体試料中のDTIの有無や程度を測定することができる。従来の血中DTI濃度モニタリング試薬は、各種DTI毎に検量線を作成し、濃度を求めることが必要であった。しかし、本発明により、DTIを投与されている患者において、対照試料とDTI含有試料の凝固時間の比を使用することにより、生体試料中のDTI濃度を容易にモニタリングすることができる。トロンビン含有緩衝液中のトロンビン濃度の異なる各種測定試薬を用いて、各種濃度でダビガトランを含有する血漿の凝固時間を測定し、その測定値に基づいて、対照試料(ダビガトランを含まない血漿)の凝固時間に対する各ダビガトラン含有血漿の凝固時間の比(Ratio)を算出し、ダビガトラン濃度と前記比との関係を示すグラフである。トロンビン含有緩衝液中のトロンビン濃度の異なる各種測定試薬を用いて、各種濃度でアルガトロバンを含有する血漿の凝固時間を測定し、その測定値に基づいて、対照試料(アルガトロバンを含まない血漿)の凝固時間に対する各アルガトロバン含有血漿の凝固時間の比(Ratio)を算出し、アルガトロバン濃度と前記比との関係を示すグラフである。各抗凝固薬を投薬されている患者検体、及び血友病の患者検体における凝固時間を測定し、その測定値に基づいて、対照試料の凝固時間に対する各抗凝固薬を投薬されている患者検体及び血友病の患者検体の凝固時間の比(Ratio)を算出し、DTIを投薬されている患者検体とそれ以外の患者検体との関係を示すグラフである。 本発明の測定試薬及び測定方法は、従来のトロンビン時間測定系を改変した、生体試料中の直接トロンビン阻害薬の存在と程度を測定可能な凝固時間測定系を利用するものである。本発明の測定試薬及び測定方法は、外因性フィブリノゲンおよびトロンビンの存在下で、該凝固時間を特異的に測定することにより、生体試料中の直接トロンビン阻害薬の存在と程度を測定することができる。過剰の外因性フィブリノゲンが存在することにより、内因性の凝固因子の影響を排除し、直接トロンビン阻害薬の存在を該凝固時間として得ることができる。 本発明の実施形態における凝固時間の測定試薬及び測定方法は、外因性フィブリノゲンを含有すること以外は、従来の標準トロンビン時間測定試薬の構成を使用することができる。また、特表平8−501682号公報の定量トロンビン時間測定試薬の構成を参照することができる。具体的には、少なくとも、トロンビン、フィブリノゲン、及び緩衝液を含む。また、防腐剤、pH緩衝剤、凝固時間の測定に影響を及ぼす抗凝固作用物質の影響を回避するための添加剤等を加えることができる。 本発明で使用可能なトロンビンは、凝固時間を測定することができる限り限定されず、ヒト、ウシ等から適宜選択して使用することができる。生体から精製されたものでも良いし、組み換え体として合成されたものでも良い。 トロンビン溶液として構成する場合には、カルシウム塩(好ましくは、塩化カルシウム)を共存させることにより、トロンビンを安定化できるので好ましい。 また、含有されるトロンビンの凝固時間測定時の測定溶液中の最終濃度としては、通常の患者に投与された直接トロンビン阻害薬の血中濃度において、低濃度である方が、凝固時間の検出感度が高いので好ましい。特に、0.1NIHU/mL以上0.83NIHU/mL未満、好ましくは0.15NIHU/mL以上0.75NIHU/mL以下、より好ましくは0.25NIHU/mL以上0.65NIHU/mL以下であることが好ましい。 本発明で使用可能なフィブリノゲンは、凝固時間を測定することができる限り限定されず、ヒト、ウシ等から適宜選択して使用することができる。生体から精製されたものでも良いし、組み換え体として合成されたものでも良い。 本発明で対象となる直接トロンビン阻害薬とは、公知のものであれば限定されない。例えば、ヒルジン、アルガトロバン、ダビガトラン等が挙げられる。 投与された該直接トロンビン阻害薬の血漿中濃度は、医薬品インタビューフォーム等で報告されている。例えば、アルガトロバンは約0〜500μg/mL、ダビガトランは約0〜200μg/mLで推移することが知られている。 本発明で対象となる生体試料は、全血、血漿、血清等が挙げられ、好ましくは、血漿である。 生体試料は、適宜、緩衝液等で希釈して使用することができる。例えば、血漿1に対して緩衝液1〜10容量から選択することができるが、多くのトロンビン時間測定試薬で設定されている血漿1に対して緩衝液9容量が好ましい。利用者が容易に使用することができる。 また、該緩衝液は、フィブリノゲンを含有していることが好ましい。 本発明の測定試薬及び測定方法では、少なくとも、血液凝固時間を得ることができる。例えば、血漿にトロンビン溶液を添加すると速やかにフィブリン重合反応が起こり、凝固塊(Fibrin clot)が生じる。試薬添加後、凝固塊が生じるまでに要した時間を凝固時間とすることができる。 前記希釈された生体試料は、トロンビン溶液と、1:5〜1:1で混合されると良い。 本発明の測定方法における第一の実施形態としては、凝固時間は試料中の各種直接トロンビン阻害薬に濃度依存的に延長することから、当業者であれば、容易に試料中の直接トロンビン阻害薬の濃度を求めることができる。既知濃度の各種直接トロンビン阻害薬とそれぞれの凝固時間を延長の関係を求めておき、例えば、その得られた検量線に基づいて、試料中の未知の直接トロンビン阻害薬の濃度を決定することができる。 本発明の測定方法における第二の実施形態としては、凝固時間は試料中の各種直接トロンビン阻害薬に濃度依存的に延長することから、凝固時間の延長の程度は凝固時間の比として求めることもできる。対照試料(例えば、直接トロンビン阻害薬を含有しない試料)の凝固時間に対する、直接トロンビン阻害薬含有試料の凝固時間の比を求めても、直接トロンビン阻害薬含有試料の凝固時間に対する、対照試料の凝固時間の比を求めることが挙げられる。当業者であれば、適宜、好適な算出をすることができる。各種直接トロンビン阻害薬に応じて、ある濃度における前記比は一定の値が得られることから、製造された試薬のロット差や試薬製造メーカーの違いによる性能差の影響を抑制することができる。また、前記比を求めることにより、濃度を定量して特定しなくても、容易に各種直接トロンビン阻害薬の試料中の存在の程度を把握することが可能であり、医師が、短時間で容易に治療方針を決定することができるので好ましい。 上記のように、本発明の測定試薬及び測定方法は、各種直接トロンビン阻害薬を投与されている患者において、各種直接トロンビン阻害薬をモニタリングするために使用することができる。 また、本発明の測定試薬及び測定方法の実施形態としては、液状品でも、凍結品であっても良い。 以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。《実施例1:DTI測定試薬の調製と測定方法》 本発明のDTI測定試薬として、トロンビン含有緩衝液と、フィブリノゲン含有緩衝液の2種類から構成される測定試薬を調製した。(1)トロンビン含有緩衝液 トロンビン(トロンビン液モチダ、持田製薬)を各濃度(0.3125、0.625、1.25、2.5、5、10NIHU/mL)となるように、30mmol/L BisTris、200mmol/L塩化ナトリウム、20mmol/L塩化カルシウムからなる緩衝液に溶解させ調製した。(2)フィブリノゲン含有緩衝液 オーレンベロナール緩衝液(SYSMEX社)にフィブリノゲン(Enzyme Reseach Laboratories社)を200mg/dLとなるよう溶解させ調製した。(3)対象試料(3−1)ダビガトラン 各濃度のダビガトラン(Tront Research Chemicals)をキャリブレーションコントロール(Calibration Control、IL社)に添加して調製した。(3−2)アルガトロバン 各濃度のアルガトロバン(ノバスタンHI、田辺三菱製薬)をキャリブレーションコントロール(Calibration Control、IL社)に添加して調製した。(4)測定方法 (3)に示す方法で調製した試料8μLにフィブリノゲン含有緩衝液72μLを添加し、さらに、トロンビン含有緩衝液80μLを添加した。添加後の反応液の濁度変化を吸光度λ=660nmにて測定した。得られた濁度変化量より凝固時間(秒)を決定した。また、直接トロンビン阻害剤を添加していない血漿の凝固時間に対する、直接トロンビン阻害剤を添加した血漿の凝固時間の比(Ratio)を算出した。上記の手順を、全臨床検査システムSTACIA(三菱化学メディエンス)を用いて実施した。(5)結果 図1、図2に、それぞれ、ダビガトランとアルガトロバンにおける凝固時間の比に対するトロンビン濃度の影響を示した。なお、図1、図2に示すトロンビン濃度は、凝固時間測定時の測定溶液中の最終濃度である。例えば、トロンビン濃度が2.5NIHU/mLであるトロンビン含有緩衝液(80μL)を用いた場合、凝固時間測定時の測定溶液(160μL)中の最終濃度は1.25NIHU/mLとなる。 図1、図2に示すように、トロンビン濃度の低下に従い、ダビガトラン、アルガトロバンにおける凝固時間の比は上昇することが解った。凝固時間の比が高い方が、特に低値の感度の上昇につながり好ましい。ダビガトラン、アルガトロバンのいずれも、凝固時間測定時の測定溶液中の最終濃度が1.25NIHU/mL以上では、直線性が悪く、特に低値の測定精度が低かった。よって、測定液中の最終濃度としてトロンビン濃度が1.25NIHU/mL未満が適していることがわかった。 また、測定したい、ダビガトラン、アルガトロバン投与後の血中濃度に合わせて、適宜、測定液中の最終濃度としてのトロンビン濃度を設定することができるが、0.156NIHU/mLより大きく、0.625NIHU/mL以下が好ましいことがわかった。《実施例2:異なる被検試料に対するDTI測定試薬の比で表す効果》 表1に、実施例1に従って調製したDTI測定試薬を用いて、(1)〜(6)の各血漿にダビガトランを250ng/mLとなるように添加したサンプルを測定した結果を示した。トロンビン含有緩衝液は、1.25NIHU/mLとなるように調製した(凝固時間測定時の測定溶液中の最終濃度として0.625NIHU/mL)。 ダビガトランの比は血漿の種類に依らず一定であることがわかった。各血漿は含有する凝固因子にバラツキがあると考えられるが、それにも関わらず、一定の比を得ることができることから効果が高いと言える。(1)Calibration Plasma(IL社)(2)Normal Control(IL社)(3)SHP(シスメックス社)(4)Ci−Trol Lv1(シスメックス社)(5)Ci−Trol Lv2(シスメックス社)(6)Ci−Trol Lv3(シスメックス社)≪実施例3:異なる測定装置に対するDTI測定試薬の比で表す効果≫ 実施例1に従って調製した試薬を、全臨床検査システムSTACIA(三菱化学メディエンス)、コアプレスタ2000(積水メディカル)を用いて測定した。 サンプルには、ダビガトラン125ng/mLを添加した血漿を用いた。トロンビン含有緩衝液は、1.25NIHU/mLとなるように調製した(凝固時間測定時の測定溶液中の最終濃度として0.625NIHU/mL)。 表2に示すように凝固時間は装置によって大きく異なるが、比は変わらないことがわかった。この結果から、比は、測定装置に依らずDTI濃度を評価できる指標であるといえる。《実施例4:DTI測定試薬による臨床検体の測定》(1)トロンビン含有緩衝液 トロンビン(トロンビン液モチダ、持田製薬)を1.5NIHU/mLとなるように、30mmol/L BisTris、200mmol/L塩化ナトリウム、20mmol/L塩化カルシウムからなる緩衝液に溶解させ調製した。(2)フィブリノゲン含有緩衝液 オーレンベロナール緩衝液(SYSMEX社)にフィブリノゲン(Enzyme Reseach Laboratories社)を400mg/dLとなるよう溶解させ調製した。(3)対象試料(3−1)臨床検体 抗凝固薬を投薬されている患者血漿検体、及び血友病の患者血漿検体(1例:検体番号67)を使用した。投薬されている抗凝固薬は、DTIとしてダビガトラン(42例:検体番号1〜42)、アルガトロバン(2例:検体番号43〜44)、抗Xa薬としてリバロキサバン(15例:検体番号45〜59)、エドキサバン(1例:検体番号60)、さらに従来からよく使用されている抗凝固薬(ビタミンK拮抗薬)であるワルファリン(6例:検体番号61〜66)である。(3−2)対照試料 対照試料として、シスメックス社のCi−Trol Lv1を用いた。(4)測定方法 (3)に示した検体8μLにフィブリノゲン含有緩衝液72μLを添加し、さらに、トロンビン含有緩衝液80μLを添加した。添加後の反応液の濁度変化を吸光度λ=660nmにて測定した。得られた濁度変化量より凝固時間(秒)を決定した。また、対照試料に対する、抗凝固薬を投薬されている患者検体、及び血友病の患者検体の凝固時間の比(Ratio)を算出した。上記の手順を、全臨床検査システムSTACIA(三菱化学メディエンス)を用いて実施した。 なお、Ci−Trol Lv1の凝固時間は、13.5秒であった。(5)結果 図3に、各抗凝固薬を投薬されている患者検体、及び血友病の患者検体における凝固時間の比を示した。図3より、DTIを投薬されている患者検体でのみ比が延長していることが解った。この結果から、本DTI測定試薬は、検体中のDTI存在の影響を精度良く反映をすることが可能であり、DTIの投薬の有無や検体中のDTI濃度を簡便に高精度で評価できることが示された。 本発明は、生体試料中のDTIの測定に利用できる。DTIを投与されている患者において、生体試料中のDTI濃度を容易にモニタリングすることができる。 低濃度トロンビン及びフィブリノゲンを含有することを特徴とする、直接トロンビン阻害薬の測定試薬。 凝固時間測定時の測定溶液中の最終濃度として、0.1NIHU/mL以上0.83NIHU/mL未満となる濃度でトロンビンを含有する、請求項1に記載の直接トロンビン阻害薬の測定試薬。 直接トロンビン阻害薬の測定が、対照試料の凝固時間に対する、直接トロンビン阻害薬含有試料の凝固時間の比を求めるものである、請求項1又は2に記載の直接トロンビン阻害薬の測定試薬。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の直接トロンビン阻害薬の測定試薬を使用することにより、生体試料、トロンビン、フィブリノゲンを溶液中で接触させ、その接触開始から凝固までの時間を測定する工程を含むことを特徴とする、直接トロンビン阻害薬の測定方法。 直接トロンビン阻害薬の測定が、対照試料の凝固時間に対する、直接トロンビン阻害薬含有試料の凝固時間の比を求めるものである、請求項4に記載の直接トロンビン阻害薬の測定方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の直接トロンビン阻害薬の測定試薬を使用することにより、生体試料中の直接トロンビン阻害薬の存在量をモニタリングする方法において、(a)対照試料、トロンビン、フィブリノゲンを溶液中で接触させ、その接触開始から凝固までの時間を測定する工程(b)直接トロンビン阻害薬含有試料、トロンビン、フィブリノゲンを溶液中で接触させ、その接触開始から凝固までの時間を測定する工程(c)工程(a)及び(b)で得られた時間の比を求める工程を含む方法。 【課題】高感度・高精度で且つ簡便に生体試料中の直接トロンビン阻害薬の測定をすることができる測定試薬及び測定方法を提供する。【解決手段】前記測定試薬は、低濃度トロンビン及びフィブリノゲンを含有する。前記測定方法は、前記測定試薬を使用することにより、生体試料、トロンビン、フィブリノゲンを溶液中で接触させ、その接触開始から凝固までの時間を測定する工程を含む。【選択図】なし