生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_高分子ポリマーの架橋度の評価方法
出願番号:2014068130
年次:2015
IPC分類:G01N 19/00,C08J 3/24,B29C 35/00


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北川 直明 志賀 大樹 JP 2015190847 公開特許公報(A) 20151102 2014068130 20140328 高分子ポリマーの架橋度の評価方法 住友金属鉱山株式会社 000183303 北川 直明 志賀 大樹 G01N 19/00 20060101AFI20151006BHJP C08J 3/24 20060101ALI20151006BHJP B29C 35/00 20060101ALI20151006BHJP JPG01N19/00 AC08J3/24C08J3/24B29C35/00 1 3 OL 6 4F070 4F203 4F070AA13 4F070AE23 4F070GA04 4F070GB01 4F070GC02 4F203AA03 4F203AM23 4F203DA12 4F203DB01 4F203DC07本発明は、電気製品に汎用的に使用される高分子ポリマーであるポリエチレンや、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂の架橋度を評価するため方法で、安全、且つ簡便に評価することができる新規な高分子ポリマーの架橋度の評価方法に関する。電気特性に優れ、且つ耐熱性、耐溶剤性にも優れるので、従来からポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂が電気製品等には、さまざまな用途で使用されている。これらの高分子ポリマーは一般的に電子線・ガンマ線照射による放射線架橋や架橋剤、カップリング剤、過酸化物などによる化学反応(架橋反応)で架橋させることができる。ここで、高分子ポリマーを架橋させることで耐熱性や高温での機械的特性が大きく向上することが知られている。すなわち、この架橋反応の進行状況により樹脂の性能が大きく変化するため、高分子ポリマーの架橋度を精度よく評価することは重要である。一般的に、高分子ポリマーの架橋度は「ゲル分率」という試験方法で評価する(非特許文献1参照)。この方法を、簡単に示す。劇物及び有機溶剤であるキシレンを110℃に加熱し、評価する高分子ポリマーの試料を24時間浸漬保持し、その後試料を取り出し、温度100℃、真空度1.3kPa以下で24時間以上乾燥させる。ここで、乾燥した高分子ポリマー試料の質量M2を測定し、キシレンに浸漬する前の高分子ポリマー試料の質量M1として、架橋度をM1とM2との比であるM2/M1を「ゲル分率」として表す。すなわち、高分子ポリマーを溶剤で溶かした時に、溶かされずに残存する部分をゲル(架橋部分はゲルとして残る)とし、このゲル部分の質量と溶剤で溶かす前の質量との比(百分率)を「ゲル分率」として、架橋の進行の程度を評価するわけである。上記のゲル分率の測定方法は、有害な劇物及び有機溶剤であるキシレンを使用しなければならないうえに、測定に2日以上の時間がかかるという問題があった。ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法 JIS C 3005:2000 4.25電気製品に汎用的に使用される高分子ポリマーの架橋度を測定する方法として、一般的なゲル分率の測定方法の抱える問題点を解消できる、安全且つ簡便に測定できる高分子ポリマーの架橋度の評価方法が望まれていた。 本発明が提供する高分子ポリマーの評価方法は、放射線や架橋剤で架橋させた高分子ポリマーの架橋度の評価方法であって、室温から溶融温度まで温度範囲の動的粘弾性測定により貯蔵弾性率を測定し、この結果から得られる貯蔵弾性率と、JIS C 3005の架橋度の測定方法により得られるゲル分率との相関関係から検量線を得る高分子ポリマーの架橋度の評価方法である。 本発明によれば、電気製品で汎用的に使用される高分子ポリマーの架橋度を、安全かつ簡便に測定できる高分子ポリマーの架橋度の評価方法が提供される。ポリエチレン樹脂の貯蔵弾性率の測定結果貯蔵弾性率とゲル分率との関係を示した図実施例の高密度ポリエチレンの貯蔵弾性率とゲル分率との関係を示した図 本発明は、従来から電子部品用途で、汎用的に使用されるポリエチレンやポリプロピレンなどの高分子ポリマーの架橋度の測定方法であるゲル分率の前述した測定方法における問題点を解消するために、安全で且つ簡便に測定できる新規な高分子ポリマーの架橋度の評価方法を鋭意研究した。その結果、粘弾性体の一つである高分子ポリマーの貯蔵弾性率を動的粘弾性測定(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)により測定し、従来の架橋度の評価方法である「ゲル分率」との相関関係があることを見出し、高分子ポリマーの架橋度を簡便且つ安全に評価できる方法であることを見出し、本発明を完成するに至った。 まず、粘弾性体、貯蔵弾性率に関して説明する。一般に、粘弾性体とは粘性と弾性の両方の性質を併せ持つ物質である。弾性とは応力を加えると一定の歪が生じ、応力を取り去ると歪が完全に元に戻り、応力と歪の間に比例関係が成立する性質(フックの法則)である。また、粘性とは応力を加えると一定の歪速度の変形が生じ、応力を取り去ると歪が回復することなく一定に留まり、応力と歪速度の間に比例関係が成立する性質(ニュートンの法則)である。応力と歪体積により生じたエネルギーの内物質内部に貯える成分に比例する係数を貯蔵弾性率E(Pa)といい、熱として物質外部へ拡散する成分に比例する係数を損失弾性率E(Pa)といい、(複素)弾性率E(Pa)は貯蔵弾性率E(Pa)と損失弾性率E(Pa)のベクトル和として定義される。高分子ポリマーなどの粘弾性体は、温度が上がるに従い、硬いガラス状態からガラス転移温度を境に、柔らかくなる。さらに温度が上がり融点付近になると液状になる。縦軸に貯蔵弾性率(単位:Pa)をとると、温度とともに低下してきてある温度域でゴム状となり低下する。低下した最低温度付近が融点に近い値を取る。高分子固体の動的粘弾性温度分布曲線ではガラス転移温度を境に、ガラス領域、転移領域、ゴム状平坦領域に分けられる。一般にはガラス領域では貯蔵弾性率は高く、融点付近では大きく低下する。動的粘弾性測定(DMA)では、試料に変形(歪)を与え、試料から応答する力(応力)を求め、その歪をオプティカルデンコーダーで測定し変形を求める。貯蔵弾性率は高いときは試料の復元力が強く、温度が高くなるに従い低下してきて、融点付近で急激に低下する。すなわち試料の高分子ポリマーが軟化したことを示す。架橋が進んだ高分子ポリマーほど、室温と比較して、融点での貯蔵弾性率の低下が少なくなってくるといえる。この融点付近の貯蔵弾性率Emと室温付近の貯蔵弾性率Erを測定することで、高分子ポリマーの架橋度を評価することができる。すなわち、架橋反応が進んでいない(架橋度が低い)時には、ゲル分率は小さく、融点の貯蔵弾性率Emと室温(20℃)の貯蔵弾性率Erとの比Er/Emも小さい。架橋反応が進んで(架橋度が高い)、ゲル分率が高くなると、融点の貯蔵弾性率Emと室温(20℃)の貯蔵弾性率Erとの比Er/Emも大きくなる。以上のように考え、同じ試料を用いて、動的粘弾性測定(DMA)による貯蔵弾性率測定と、JIS C 3005:2000 4.25 によるゲル分率測定を行い、貯蔵弾性率比とゲル分率をとの相関関係を調べた。まず、動的粘弾性測定(DMA)による貯蔵弾性率測定について説明する。測定試料として3水準の放射線照射により架橋させたポリエチレン樹脂と照射前のポリエチレン樹脂を試料調製し、ティー・エイ・インスツルメント社 DMAQ800型を用いて、室温から170℃までの温度範囲について、貯蔵弾性率を測定した。図1にその測定結果を示す。放射線架橋させたポリエチレン樹脂は融点付近(135〜140℃)の貯蔵弾性率は3000〜5000MPaと高い値を示している。また、未架橋のポリエチレン樹脂は200〜400MPaと1ケタ低い値を示している。動的粘弾性測定(DMA)による貯蔵弾性率を測定する際は、測定周波数は1から10Hzが用いられ、1、3、5Hzが精度的に望ましい。昇温条件は周波数が小さくなれば昇温速度も小さくした方が精度は高くなる。測定時間や、測定精度を考慮すると、5℃/分以下とするのが望ましい。また、測定条件の応力を加える方法として引っ張り、圧縮、ずり、両持ち梁曲げ、方持ち梁曲げ、自由支持3点曲げ があるが、試料に余計な力を加えない方持ち梁曲げで測定するのが望ましい。ポリエチレン樹脂の融点(135℃)付近の貯蔵弾性率Emと室温付近の貯蔵弾性率Erを読み取り、融点の貯蔵弾性率と室温(20℃)の貯蔵弾性率の比Er/Emを算出する。次に、JIS C 3005:2000 4.25 によるゲル分率測定について説明する。ゲル分率とは一般的に高分子ポリマーの硬化の度合い、すなわち架橋度を測定する手法である。有機溶剤キシレンに浸漬する前の試料の質量M1を測定し、試験後の試料の質量M2を測定し、両者の比M2/M1を算出して、架橋度X(%)をゲル分率=M2/M1×100として表す。試料を110℃のキシレン中に24時間浸漬保持し、キシレンが揮発しないように容器に密閉して試料を保持した。24時間後にドラフト内で試料を取り出し、さらに真空乾燥器を用い、100℃、1.3kPa以下で24時間乾燥させた。その後、乾燥後の樹脂の重量を測定し、キシレンに浸漬する前の樹脂重量と比較して、溶解せず残った樹脂をゲル分率ゲル分率=M2/M1×100として測定した。以上のように、1試料測定するのに実質3日間を要した。 「融点の貯蔵弾性率と室温の貯蔵弾性率の比Er/Em」を横軸に、JIS C 3005:2000 4.25 によるゲル分率測定により得られた「ゲル分率M2/M1×100」を縦軸にプロットし、図2に示す。 図2から明らかに「融点の貯蔵弾性率と室温の貯蔵弾性率の比Er/Em」と「ゲル分率M2/M1×100」には、相関関係が認められ、高分子ポリマーの架橋度の評価方法として、高分子ポリマーの動的粘弾性測定(DMA)による貯蔵弾性率を測定が有効であることがわかる。以下に、実施例で詳細に説明する。試料として、融点135℃の高密度ポリエチレン(密度 960kg/m3)を使用した。この樹脂を、160℃の熱プレス機にて厚さ0.6mmのシート状に成形した。架橋は電子線を用いる放射線架橋を選択した。電子線加速器は、株式会社NHXコーポレーション社製、EPS-3000を用いた。放射線架橋条件として、加速電圧3000kV、電流20mA、で吸収線量250kGy照射したものと、500kGy照射したものを得た。 この2種の照射試料と、未照射試料との3種の試料について、動的粘弾性測定(DMA)を行った。粘弾性測定装置として、ティー・エイ・インスツルメント社(DMAQ800型)を使用した。試料サイズは長さ30mm、幅5mm、厚さ0.5mmに切り出し、3点方持ちで装置に取り付けた。素子に応力を加える条件として、周波数0.5Hz、昇温速度1℃/分 測定温度は室温から170℃まで測定したその結果、融点(135℃)と室温(20℃)の貯蔵弾性率比Er/Emは、250kGy照射したものは0.11、500kGy照射したものは0.13であった。なお、未照射のものは0.023であった。 また、この3種の試料をJIS C 3005のゲル分率で架橋度を測定した。試料を110℃のキシレン中に24時間浸漬保持し、キシレンが揮発しないように容器に密閉して試料を保持した。24時間後にドラフト内で試料を取り出し、さらに真空乾燥器を用い、100℃、1.3kPa以下で24時間乾燥させた。その後、乾燥後の樹脂の重量を測定し、キシレンに浸漬する前の樹脂重量と比較して、溶解せず残った樹脂をゲル分率として測定した。以上のように、1試料測定するのに実質3日間を要した。 その結果、ゲル分率は250kGy照射したものは85%、500kGy照射したものは94%であった。なお、未照射のものは20%であった。 以上の測定結果を図2に示す。放射線照射により、架橋が進む過程が貯蔵弾性率比Er/Emとゲル分率の相関関係からも認められ、この高密度ポリエチレンを十分架橋を進めるためには、ゲル分率85%以上となる貯蔵弾性率比Er/Emが0.13である電子線照射量を250kGy以上が必要であるということがわかる。放射線や架橋剤で架橋させた高分子ポリマーの架橋度の評価方法であって、室温から溶融温度まで温度範囲の動的粘弾性測定により貯蔵弾性率を測定し、この結果から得られる貯蔵弾性率と、JIS C 3005の架橋度の測定方法により得られるゲル分率との相関関係から検量線を得ることを特徴とする高分子ポリマーの架橋度の評価方法。 【課題】高分子ポリマーの架橋度を測定する方法として、安全かつ簡便に測定できる評価方法を提供する。。【解決手段】放射線や架橋剤で架橋させた高分子ポリマーの架橋度の評価方法であって、室温から溶融温度まで温度範囲の動的粘弾性測定により貯蔵弾性率を測定し、この結果から得られる貯蔵弾性率と、JIS C 3005の架橋度の測定方法により得られるゲル分率との相関関係から検量線を得て、その後は貯蔵弾性率を測定することで、ゲル分率を測定することなく、高分子ポリマーの架橋度を評価することができる。【選択図】図3


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