タイトル: | 公開特許公報(A)_酪酸産生菌保有非ヒト動物モデル及びその作製方法 |
出願番号: | 2014067725 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A01K 67/027,C12Q 1/68 |
佐藤 直 楠原 史朗 横井 椎恵 伊藤 雅彦 宮崎 幸司 久代 明 JP 2015188368 公開特許公報(A) 20151102 2014067725 20140328 酪酸産生菌保有非ヒト動物モデル及びその作製方法 株式会社ヤクルト本社 000006884 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 佐藤 直 楠原 史朗 横井 椎恵 伊藤 雅彦 宮崎 幸司 久代 明 A01K 67/027 20060101AFI20151006BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20151006BHJP JPA01K67/027C12Q1/68 A 9 OL 27 4B063 4B063QA01 4B063QQ02 4B063QQ06 4B063QR32 4B063QR56 4B063QR62 4B063QS25 4B063QX02 本発明は、酪酸産生菌保有非ヒト動物モデル、その作製方法に関する。 酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸は、下部消化管において主に食物由来の難消化性糖質が腸内細菌により発酵を受けて産生される。短鎖脂肪酸は大腸粘膜上皮細胞の主要なエネルギー源として利用されるだけでなく、多くの生理作用を示す。特に酪酸は、上皮細胞の増殖促進作用、抗炎症作用、腸管の運動亢進作用など多彩な生理活性を示すと考えられている(非特許文献1及び非特許文献2)。また、酪酸が大腸癌や潰瘍性大腸炎の予防に重要であることが示唆されている(特許文献1)。近年では、下部消化管からの消化管ホルモンの分泌を促進すること(非特許文献3)、経口投与で末梢組織でのエネルギー消費を亢進して肥満を抑制するとともにインスリン抵抗性を改善すること(非特許文献4)等が報告されている。 腸内の酪酸濃度上昇促進剤として、ある種のラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属細菌が知られている(特許文献1)。また、酪酸を産生する細菌としてはAnaerostipesに属する細菌、特に、Anaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum)(以下、A.hadrus) DSM 3119T、Butyrate−producing bacterium SSC/2、Butyrate−producing bacterium SS2/1などが知られている(非特許文献5、非特許文献6及び非特許文献7)。特開平10−084909号公報Hamwe HM et al. Review article: the role of butyrate on colonic function. Aliment Pharmacol Ther. 27:104-119 (2008).Roy CC et al. Short-chain fatty acids: ready for prime time? Nutr Clin Pract. 21:351-366 (2006).Zhou J et al. Peptide YY and proglucagon mRNA expression patterns and regulation in the gut. Obesity. 14:683-689 (2006).Gao Z et al. Butyrate improves insulin sensitivity and increases energy expenditure in mice. Diabetes. 58:1509-1517 (2009).Allen-Vercoe et al. Anaerobe 18 (2012) 523-529Applied and Environmental Microbilogy (2004) p5810-5817J. Bacteriology 2004, 186 (7):2099-2106 しかし、上記菌株の酪酸産生量は十分でなく、より酪酸産生能が高い菌が望まれていた。 また、腸内で産生された酪酸が生体にどのような作用を示すかについては、in vivoでの適切な評価系、つまり腸内で酪酸を特異的に増やす系が確立していないため、未だ明らかとなっていない部分が多い。 従って、本発明の課題は、酪酸産生菌を保有する非ヒト動物モデル、その作製方法及びその非ヒト動物モデルの利用を提供することにある。 そこで本発明者は、難消化性糖類を添加してヒト糞便を培養すると酪酸の産生量が増大することを見出し、さらに難消化性糖類としてL−ソルボース及びD−キシリトールを用いてヒト糞便の培養をしてスクリーニングしたところ、L−ソルボースを基質とした際に、A.hadrusの基準株であるYIT 10092T(DSM 3119T)と比較して1.5倍以上の酪酸産生能を有する新たな酪酸産生菌を見出した。また、当該酪酸産生菌と難消化性糖類とを含有する組成物を非ヒト動物に投与すれば、腸内の酪酸産生菌が増加し、酪酸産生菌が腸内で優勢となった非ヒト動物モデルが作製できることも見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔9〕を提供するものである。〔1〕酪酸産生菌が腸内で優勢となった非ヒト動物モデル。〔2〕動物がマウスである、〔1〕記載の非ヒト動物モデル。〔3〕酪酸産生菌が腸内で10%以上の占有率を示す〔1〕又は〔2〕記載の非ヒト動物モデル。〔4〕酪酸産生菌がAnaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum)に属する細菌である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の非ヒト動物モデル。〔5〕Anaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum)に属する細菌が、Anaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum)YIT 12354(NITE P−01831)又はAnaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum)YIT 12355(NITE P−01832)である〔4〕記載の非ヒト動物モデル。〔6〕難消化性糖類と酪酸産生菌を含有する組成物を動物に投与することを特徴とする酪酸産生菌が腸内で優勢となった非ヒト動物モデルの作製方法。〔7〕難消化性糖類が、イソマルト、イソマルチュロース、D−ガラクチトール、D−キシリトール、D−ソルビトール、L−ソルボース、マルチトール、D−マンニトール、ラクチトール及びガラクトオリゴ糖から選ばれる1種以上である〔6〕記載の非ヒト動物モデルの作製方法。〔8〕酪酸産生菌が、Anaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum)に属する細菌である〔6〕又は〔7〕記載の非ヒト動物モデルの作製方法。〔9〕Anaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum)に属する細菌が、Anaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum) YIT 12354(NITE P−01831)又はAnaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum)YIT 12355(NITE P−01832)である〔8〕記載の非ヒト動物モデルの作製方法。 本発明の非ヒト動物モデルを用いれば、腸内での酪酸の作用が明確になり、酪酸の関与した疾病等の研究に役立てることができる。各種難消化性糖類をヒト糞便に添加したときの酪酸産生量を示す。16S rRNA遺伝子配列を基にした分離株の系統解析結果を示す。分離株2株(YIT 12354及びYIT 12355)を太字で示した。系統樹は近隣接合法で作成し、Bootstrap値が50%以上(1,000回反復)であった箇所に数字を記載した。スケールバーはその座位で、0.01回の塩基置換が起こったことを示す。難消化性糖類を基質とした培地で酪酸産生菌を培養したときの酪酸産生量を示す。難消化性糖類を基質とした培地で酪酸産生菌を培養したときの総短鎖脂肪酸に占める酪酸の比率を示す。マウス糞便中に難消化性糖類及びA.hadrus YIT 12355を添加した際の酪酸濃度を示す。マウス糞便中に難消化性糖類及びA.hadrus YIT 12355を添加した際の総短鎖脂肪酸に占める酪酸の比率を示す。マウスに難消化性糖類及びA.hadrus YIT 12355を投与後の盲腸内容物中の細菌由来16S rRNA遺伝子のDGGEプロファイルを示す。マウス糞便培養系におけるマルチトール及びA.hadrus YIT 12355の併用効果を示す。 本発明の非ヒト動物モデルは、酪酸産生菌が腸内で優勢になった動物である。ここで動物としては、非ヒト動物であればよいが、げっ歯類であるのが好ましく、マウス、ラット、モルモット、ハムスター等がより好ましく、マウスがさらに好ましい。 酪酸産生菌が腸内で優勢になった状態は、腸内細菌叢における酪酸産生菌の占有率が高くなった状態をいうが、酪酸産生菌の占有率が腸内で10%以上であるのが好ましく、当該占有率が20%以上であるのがより好ましい。 本発明の非ヒト動物モデルの腸内で優勢になった酪酸産生菌としては、酪酸を産生する細菌であれば限定されないが、A.hadrus(Eubacterium hadrum)に属する細菌が好ましい。 また、前記酪酸産生菌は、A.hadrus(Eubacterium hadrum)に属する細菌の中でも、L−ソルボースを基質とした際の酪酸産生量がA.hadrus(Eubacterium hadrum)の基準株であるA.hadrus(Eubacterium hadrum)YIT 10092Tと比較して1.5倍以上の菌であるのがより好ましい。なお、前記酪酸産生菌のL−ソルボースを基質とした際の酪酸産生量は、YIT 10092Tの1.5〜2.5倍であるのが好ましく、1.5〜2.0倍であるのがより好ましく、1.5〜1.7倍であるのがさらに好ましい。 さらに、前記酪酸産生菌は、D−キシリトールを基質として酪酸を産生することができるものが好ましい。 ここで、L−ソルボース又はD−キシリトールを基質とした際の酪酸産生量とは、糖類としてL−ソルボース又はD−キシリトールのみを添加した培地で培養したときの酪酸産生量である。なお、培地組成及び培養条件は、通常の酪酸産生菌の培養に適した条件であればよいが、例えば菌株の凍結保存液(菌体を10%(w/v)スキムミルク−2%グルタミン酸ナトリウム溶液に懸濁した溶液)(菌数:2.0〜5.5×1010cells/mL)を融解し、その一部を33 mMの酢酸ナトリウム及び0.5(w/v)%のグルコースを添加したPY(peptone−yeast extract)液体培地(PYGA培地)4mLに1%接種し、37℃で24時間嫌気培養した後に、培養液をPYGA培地に1%接種し、37℃で24時間嫌気培養した後、培養液の一部を、33 mMの酢酸ナトリウム及び0.5(w/v)%のL−ソルボース又はD−キシリトールを含むPY培地に1%接種し、37℃で24時間嫌気培養した後、培養液中の酪酸濃度を測定すればよい。 なお、培養後の菌数を確認するために、PYGA培地及び/又は33 mMの酢酸ナトリウム及び0.5(w/v)%のL−ソルボース又はD−キシリトールを含むPY培地での培養後に濁度(OD660)を測定することが好ましい。 培養液中の酪酸濃度の測定は、酪酸濃度が測定可能な方法であれば特に限定されないが、例えばイオン排除高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定することができる。 また、前記酪酸産生菌は、短鎖脂肪酸の種類を多く含む培地(例えば、酢酸、プロピオン酸、イソブチル酸、イソ吉草酸、吉草酸を含むYCFA培地)でない、短鎖脂肪酸として酢酸(又はその塩)のみを含有する培地でも酪酸を産生できる性質を有するものが好ましい。 前記酪酸産生菌の具体例としては、A.hadrus(Eubacterium hadrum)YIT 12354(NITE P−01831)(以下、YIT 12354)、A.hadrus(Eubacterium hadrum)YIT 12355(NITE P−01832)(以下、YIT 12355)が挙げられる。 前記酪酸産生菌は、例えば難消化性糖類を唯一の糖源として添加した液体培地にヒト糞便の一部を接種して培養した後、培養液を平板培地に播種し、生育したコロニーを釣菌して酪酸産生能力を測定することによりヒト糞便から単離することができる。より具体的には、難消化性糖類を唯一の糖源として添加した液体培地にヒト糞便の希釈液を接種して培養し、一方には難消化性糖類を添加しない液体培地に接種して培養する。培養後、難消化性糖類を唯一の糖源として添加した寒天平板培地に各培養液の一部を播種し、生育したコロニーを観察する。難消化性糖類を添加した液体培地から得られたコロニーを、難消化性糖類を添加しない液体培地から得られたコロニーと比較し、形態が明らかに異なるものを釣菌する。釣菌した菌株を、PY培地に33mMの酢酸ナトリウムを添加したPYA液体培地にL−ソルボース等の難消化性糖類を唯一の糖源として添加した液体培地で嫌気培養し、培養液中の酪酸濃度を測定すればよい。ここで、難消化性糖類の添加濃度は0.1〜5.0(w/v)%が好ましく、さらに0.2〜1.0(w/v)%がより好ましく、0.4〜0.6(w/v)%がさらに好ましい。また、培養は30〜40℃で12〜48時間の嫌気培養を行うのが好ましく、37℃で24時間の嫌気培養がさらに好ましい。 前記酪酸産生菌は、幅広い種類の糖質を利用できるが、他の菌が利用しにくいL−ソルボース、D−キシリトール等の難消化性糖類を基質として培養した場合においても酪酸を産生する能力を有する。また、後記実施例のように16S rRNA遺伝子配列を基に系統解析を行った結果、A.hadrusに分類される。基準株A.hadrus YIT 10092Tと生化学的性状を比較したところ、酵素活性や糖資化性に違いがあることから基準株と相違し、新菌株と同定した。YIT 12354及びYIT 12355を独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに、それぞれ受託番号NITE P−01831及びNITE P−01832として寄託した。 本発明の非ヒト動物モデルは、難消化性糖類と酪酸産生菌を含有する組成物を動物に投与することによって作製することができる。 用いられる難消化性糖類としては、L−ソルボース、D−キシロース、イソマルチュロース、ラクチュロース、D−トレハロース等の単糖、二糖;イソマルト、D−ガラクチトール、D−キシリトール、D−ソルビトール、マルチトール、D−マンニトール、エリスリトール、ラクチトール等の糖アルコール;ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ペクチンオリゴ糖、シクロデキストリン等のオリゴ糖;発芽大麦;イヌリン;難消化性デキストリン;レジスタントスターチ等が挙げられる。このうち、特にイソマルト、イソマルチュロース、D−ガラクチトール、D−キシリトール、D−ソルビトール、L−ソルボース、マルチトール、D−マンニトール、ラクチトール及びガラクトオリゴ糖から選ばれる1種以上が好ましい。 非ヒト動物モデルの作製に用いる酪酸産生菌としては、前記の酪酸産生菌が好ましい。 前記組成物中には、酪酸産生菌を生菌として104cfu〜1014cfu含有するのが好ましい。また難消化性糖類は、0.01(w/v)%〜90(w/v)%、好ましくは、0.05(w/v)%〜50(w/v)%含有するのが好ましい。 前記組成物は、酪酸産生菌及び難消化性糖類の他、固体又は液体の動物用医薬用無毒性担体を含有させることができ、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、凍結乾燥製剤等の形態とすることができる。これらの形態は常套手段により調製することができる。上記の動物用医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤、賦形剤等の慣用の添加剤を適宜添加することもできる。 また、前記組成物は、動物用の飼料として使用可能な成分、添加剤を含有することができ、慣用の手段を用いて飼料に適した固体状、液体等の形態とすることができる。これらの形態としては、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペースト等が挙げられる。 前記組成物の投与は、経口、非経口のいずれの方法でも行うことができるが、経口的に行うのが好ましく、その投与量は1日あたり酪酸産生菌として生菌数で1.0×104cfu以上が好ましく、さらに1.0×108cfu〜1.0×1012cfuがより好ましい。また投与は1回でもよいが、1回/週以上の頻度で2回以上行うのが好ましく、2回/週の頻度で2回(計4回)行うのがより好ましい。 次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。実施例1(酪酸産生菌の分離)(1)ヒト糞便培養による各種難消化性糖類の酪酸産生促進効果 健常成人男性5名(A〜E)の新鮮排泄糞便をグローブボックス内に搬入し、糞便20gをフィルター付きホモジナイズバッグPYXON−30(エルメックス社製)に移した。そこに糞便の9倍量の嫌気置換済0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を加えて10倍希釈した後、フィルターろ過して残渣を除いて糞便希釈液を調製した。糞便希釈液9.5 mLに、発芽大麦(GBF)、L−アラビノース、D−ガラクチトール、ガラクトオリゴ糖、D−キシリトール、D−キシロース、D−ソルビトール、L−ソルボース、マルチトール、D−マンニトール、フラクトオリゴ糖の各糖類の10(w/v)%溶液を0.5mL(糖類の最終濃度0.5(w/v)%)添加し、37℃で24時間嫌気培養した。 その結果を図1に示す。図1から、ヒト糞便に難消化性糖類を添加して培養すると、酪酸産生量が増加し、ヒト健常成人糞便中に酪酸産生菌が存在することを確認した。 (2)YIT 12354及びYIT 12355の分離 健常成人男性2名(C:30歳,E:29歳)から糞便を採取し、グローブボックス内に搬入した。糞便を十分に均質化した後、一部をフィルター付きホモジナイズバッグPYXON−30(エルメックス社製)に移した。そこに糞便の9倍量の嫌気置換済0.1Mリン酸Naバッファー(pH6.8)を加えてホモジナイズし、残渣を除いた。糞便希釈液の一部をPY(表1)、0.5(w/v)%L−ソルボース添加PY(PYS)、及び0.5(w/v)%D−キシリトール添加PY(PYX)液体培地に0.5%接種し、37℃のもと24時間嫌気培養した。培養後、培養液を嫌気置換したPBSで106-7倍希釈し、PY、PYS、及びPYX寒天平板培地に播種し、37℃で72時間嫌気培養した。PYS及びPYX平板培地に生育したコロニーのうち、PY平板培地上のそれと比較して形態が異なるコロニーを釣菌し、PYS及びPYX液体培地に接種して37℃で24時間嫌気培養した。これらの分離株のうち、培養液中に酪酸を産生した株を選抜した。その結果、分離株2株(YIT 12354及びYIT 12355)を選抜した。 実施例2(YIT 12354及びYIT 12355の特徴1)(1)酪酸産生量 1)各種菌株によるL−ソルボース及びD−キシリトールからの酪酸の産生 各菌株の凍結保存液(菌体を10%(w/v)スキムミルク−2%グルタミン酸ナトリウム溶液に懸濁した溶液)(菌数:2.0〜5.5×1010cells/mL)を融解し、その一部を33mMの酢酸ナトリウム及び0.5(w/v)%のグルコースを添加したPY液体培地(PYGA培地)4mLに1%接種し、37℃で24時間嫌気培養した。培養後、培養液の一部を新しいPYGA培地に1%接種し、37℃で24時間嫌気培養した。培養後、培養液の濁度(OD660)を測定した。その後、培養液の一部を、PY培地に0.5(w/v)%のL−ソルボース又はD−キシリトールと33mMの酢酸ナトリウムを含む培地(L−ソルボースを含む培地:PYSA、D−キシリトールを含む培地:PYXA)に1%接種し、37℃で24時間嫌気培養した後、濁度(OD660)を測定した。培養終了後の培養液中の有機酸濃度はイオン排除HPLCで定量した。このとき、酢酸ナトリウムは添加しているがL−ソルボース又はD−キシリトールは添加しないPY培地(PYA培地)で培養したものをブランクとした。(HPLC分析条件)溶離液:15 mM過塩素酸−7%アセトニトリルpH調整剤:15 mM過塩素酸−60 mMトリスヒドロキシメチルアミノメタン−7%アセトニトリル分離カラム:有機酸分析用カラムRSpak KC−811×2(昭和電工社製)カラム温度:42℃注入試料量:10μL流速:1.0 mL/min分析時間:35分検出器:Waters432電気伝導度検出器セル温度:45℃なお、酪酸産生量は(数1)に従って算出した。 結果を表3に示す。 表3から、分離株2株のL−ソルボース添加時の酪酸産生量はいずれも基準株の1.5倍以上を示した。また、基準株はD−キシリトールを資化して酪酸を産生することができない一方で、分離株2株はD−キシリトールを基質とした場合に酪酸を産生した。 2)酢酸塩及び乳酸塩を加えた培地で培養した際の酪酸産生量 前記1)に記載した条件と同条件でPYGA液体培地にて培養した菌液の一部を、33mMの酢酸ナトリウムを含むPYA培地にさらに40mMの乳酸ナトリウムを加えた培地に1%接種し、37℃で24時間嫌気培養した。培養終了後の培養液中の有機酸濃度をイオン排除HPLCで分析した。分析条件は前記1)と同じ条件で行った。なお、酪酸産生量は、(数2)に従って算出した。 結果を表4に示す。 非特許文献6には、YCFA(33mM酢酸+9mMプロピオン酸+1.2mMイソブチル酸+1.0mMイソ吉草酸+1.0mM吉草酸)培地に35mMの乳酸塩を加えた培地で37℃、24時間培養した際の既知酪酸産生菌SS2/1及びSSC/2の酪酸産生量がそれぞれ12.98mM、13.49mMであったことが記載されている。 上記酪酸産生菌は、YCFAのような短鎖脂肪酸の種類を多く含む培地でない、短鎖脂肪酸として酢酸(又はその塩)のみを含有する培地でも酪酸を産生できる性質を有することが分かった。また、酪酸産生量自体もSS2/1及びSSC/2に比べ高かった。(2)16SrRNA遺伝子配列を基にした分離株の系統解析結果 各菌株の培養液からビーズフェノール法によりDNAを抽出し、16SrDNAの全長をPCRで増幅した後、配列のほぼ全長をシークエンスした。得られた配列は日本DNAデータバンク(DDBJ)のFASTA検索に供し、既知菌種の配列データベースと照合した。さらに、Clustal Xを用いた近隣結合(NJ)法で分離株の配列を系統解析し、Tree−Viewプログラムを用いて系統樹を作成した。 結果を図2に示す。 YIT 12354及びYIT 12355の16SrRNA遺伝子配列(約1,450bp)を基に系統解析を行った結果、いずれもClostridialクラスターXIVa中のAnaerostipes属のサブクラスターに位置し、さらにA.hadrus(=Eubacterium hadrum)の基準株であるA.hadrus YIT 10092Tの配列とそれぞれ99.7%及び99.8%の相同性を示した。この結果から、YIT 12354及びYIT 12355は、いずれもA.hadrusに分類されることがわかった。(3)各種菌株の生化学性状の比較 各種菌株の生化学性状検査には、市販のアピZYM、ラピッドID32Aアピ、及びアピケンキ20A(シスメックス・ビオメリュー(株))を用いた。検査方法は製品マニュアルに従った。 結果を表5に示す。 表5から、これら3菌株は類似した性質を示すものの、同一の性質でなく、互いに株レベルで異なることがわかった。なお、3菌株はいずれもグラム陽性の桿菌であった。 これらの結果から、YIT 12354及びYIT 12355は新規な菌株と判定し、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターにそれぞれ受託番号NITE P−01831及びNITE P−01832として寄託した。実施例3(YIT12354及びYIT12355の特徴2)a)難消化性糖類 難消化性糖類として、ガラクトオリゴ糖(GOS)、マルチトール、D−マンニトール、ラクチトール、イソマルト、イソマルチュロース、L−ソルボース、D−ソルビトールを用いた。なお、GOS以外は試薬グレードのものを使用した。GOSは市販のオリゴメイト55N(ヤクルト薬品工業)から、活性炭カラムを用いて単糖及び乳糖画分(上部消化管で消化吸収される画分)を除去したものを使用した。具体的には、精製水で膨潤させた活性炭(和光純薬社製)を詰めたカラムに、精製水で希釈した糖液を添加し、2%エタノール溶液でカラムを洗浄した後、50%エタノール溶液で難消化性画分を溶出し、溶出液を減圧乾燥して得たGOS糖液を使用した。b)使用菌株 代表的なヒト腸内酪酸産生菌であるA.hadrusの基準株であるA.hadrus YIT 10092T(DSM 3119T)及び分離株2株を使用した。c)酪酸産生能力の評価 上記の菌株を0.5%D−グルコースを添加した33mMの酢酸ナトリウムを含むPYA培地(PYGA培地)で37℃24時間嫌気培養した。培養液の一部を、0.5(w/v)%の各難消化性糖類を含むPYA培地(試験培地)に1%接種し、37℃24時間嫌気培養した。培養終了後、培養液中の有機酸濃度をイオン排除HPLCで分析した。分析条件は前記実施例2と同じ条件で行った。有機酸濃度の定量後、各難消化性糖類からの酪酸産生量及び総短鎖脂肪酸に占める酪酸の比率を以下の式に従って算出した。 結果を図3及び図4に示す。図3及び図4より、YIT 12354及びYIT 12355は、基準株YIT 10092Tと比較して多くの難消化性糖類を資化することができ、かつ、酪酸産生量も多いことがわかる。また、分離株2株のL−ソルボース添加時の酪酸産生量はいずれも基準株の1.5倍以上を示している。さらに、総短鎖脂肪酸に占める酪酸の比率も、基準株YIT 10092Tと比較して酪酸の比率が高いことがわかる。 実施例4(マウス糞便中に各難消化性糖類及びYIT 12355を添加した際の酪酸及び総短鎖脂肪酸に対する酪酸の比率) マウスの糞便0.8gをPBSで12.5倍希釈し、各種難消化性糖類(ラクチトール、マルチトール、D−マンニトール、D−ソルビトール、L−ソルボース、D−キシリトール)を0.5%、PYGA培地で前培養したYIT 12355を1.0%添加した後、37℃で24時間嫌気培養した。また、各種消化性糖類を添加しない培地も同様に培養した。培養終了後、培養液中の有機酸濃度をイオン排除HPLCで分析した。分析条件は前記実施例2と同じ条件で行った。有機酸濃度の定量後、(数3)と同様の式に従って酪酸産生量と酪酸の比率を算出した。 その結果を図5及び図6に示す。図5及び図6に示すように、難消化性糖類の単独添加時及び本発明の酪酸産生菌単独添加時に比べて、酪酸産生菌と難消化性糖類を組み合わせることで、酪酸産生が大きく亢進される。また、総短鎖脂肪酸に対する酪酸の比率も同様に、難消化性糖類の単独添加時及び本発明の酪酸産生菌の単独添加時に比べて、これらを組み合わせることで大きく高まる。実施例5(難消化性糖類を摂取させたマウスへのYIT 12355の反復経口投与試験)1)試験設計 全体の試験スケジュールを表6に示した。マウスは1週間F2飼料(フナバシファーム社製)で馴化飼育した後、各群の平均体重がほぼ等しくなるように6群に分けた。その後、1週間対照食(表7)を投与し、難消化性素材を含む精製飼料に切り替えて2週間投与した。YIT 12355の生菌懸濁液は2回/週、計4回経口ゾンデ投与した。試験最終日に解剖し、盲腸及び結腸内容物を回収して有機酸濃度を調べた。また、腸管内容物中のYIT 12355の菌数を定量PCR法にて測定するとともに、腸内菌叢全体の変化をPCR−DGGE(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis)法を用いて調べた。<試験系>使用動物 : マウスC57BL/6J(4週齢:日本クレア)試験期間 : 3週間使用した難消化性糖類 : ラクチトール、マルチトール難消化性糖類の投与量: 5%(w/w)投与菌株 : YIT 12355菌投与量 :生菌投与量 3.9〜6.9×108cfu/マウス(生食懸濁液のゾンデ投与)。死菌を含めた総菌数では、3.6〜4.6×109cfu/マウス。群構成 : 6群(5匹/群) −/−群, 対照 AH/−群, YIT 12355単独投与 −/LAC群,ラクチトール単独投与 −/MAL群,マルチトール単独投与 AH/LAC群, YIT 12355及びラクチトール共投与 AH/MAL群, YIT 12355及びマルチトール共投与飼料組成 : AIN−93Gをベースとする精製飼料(表7)測定項目 : 盲腸内菌叢解析(定量PCR法による投与菌の菌数測定、DAPIカウント法による総菌数測定、PCR−DGGE法による菌叢変化観察)2)投与菌(YIT 12355)の調製及び菌数測定 YIT 12355は、PYGA培地により37℃で24時間培養した後、遠心ペレットを10%スキムミルク−2%グルタミン酸ナトリウム溶液に懸濁し、−80℃で凍結したものを凍結保存ストックとした。YIT 12355の投与菌液の調製は、この凍結保存ストックを用いて以下のように行った。 YIT 12355の凍結保存ストック液を融解し、4mLのPYGA培地に1%接種し、37℃で24時間嫌気培養した。培養液の一部を、同じ組成の培地56mLに1%植菌し、37℃で24時間嫌気培養した。菌液を4℃のもと、10,000rpmで10分間遠心した後、上清を除いた。予め嫌気置換しておいた冷生理食塩水30mLを加えてペレットを再懸濁し、遠心して上清を除いた。ペレットを6mLの冷生理食塩水で再懸濁して投与菌液とした。なお、菌体の懸濁はグローブボックス内で行った。 菌液を嫌気置換した生理食塩水で段階希釈し、PYGA平板培地に播種して37℃で24時間嫌気培養した後、コロニーをカウントして生菌数を算出した。総菌数は、菌液の一部を4%パラホルムアルデヒド/PBS溶液で固定した後、DAPIカウント法により測定した。3)腸管内容物の採取 被験飼料の投与2週目にマウスをジエチルエーテルで麻酔し、頸椎脱臼にて安楽死させた。開腹して盲腸組織及び結腸組織を摘出し、内容物を回収した。盲腸及び結腸内容物はPBSにより10倍希釈し、DNAの抽出に供した。4)腸管内容物中の菌叢解析 a)定量PCR法によるYIT 12355の菌数測定 腸管内容物の10倍希釈液からビーズフェノール法によりDNAを抽出した。すなわち、腸管内容物の希釈液200μLに0.3gのガラスビーズ(直径0.1mm)と300μLのTris−SDS溶液(250mLの200mM Tris−HCl 80mM EDTA pH9.0と50mLの10%SDSを混合した溶液)、及び500μLのTE飽和フェノールを加えてFastPrep FP120(パワーレベル5.0)により30秒間激しく振とうした。15,000rpmで5分間遠心した後、400μLの上清にフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)溶液400μLを加え、FastPrep FP120(パワーレベル4.0)により45秒間振とうした。15,000rpmで5分間遠心した後、上清250μLに25μLの3M酢酸ナトリウム(pH5.4)及び250μLのイソプロパノールを加えて混合した。15,000rpmで5分間遠心した後、上清を除き、500μLの70%エタノールを加えて再度15,000rpmで5分間遠心した。上清を除いてペレットを乾燥させ、1.0mLのTEバッファーに溶解した。得られたDNA溶液を精製水で10倍希釈し、鋳型DNA溶液とした。定量PCRには、7500 Real−Time PCR System(Life Technologies社製)を用いた。反応液は、総量を20 μLとし、1.0 μMの各プライマーを含むSYBR Premix Ex Taq II(タカラバイオ(株))と鋳型DNA溶液を混合した後、定量PCRに供した。反応条件は、95℃で2分間加熱した後、95℃で20秒間、55℃で20秒間、72℃で50秒間の反応を1サイクルとしてこれを40サイクル繰り返し、72℃で3分間反応させた。さらに、これに引き続きTm値解析のため、60℃で1分間反応させた後、0.2℃/秒の温度勾配で95℃まで温度を上昇させ、このときのSYBR Green Iの蛍光を測定して増幅産物の2本鎖が解離するときの温度(Tm)を測定した。定量PCRに使用したA.hadrus特異的プライマーの配列を表8に示した。なお、A.hadrusの定量に使用する検量線は、一定菌数に調製したA.hadrus YIT12355の菌体から抽出したDNAを鋳型に用いて作製した。 腸管内容物の10倍希釈液の一部を4%パラホルムアルデヒド/PBS溶液で固定した後、DAPIカウント法により総菌数を測定した。上記のYIT 12355の菌数を総菌数で除して占有率(%)を算出した。 c)PCR−DGGE法による盲腸内容物中の菌叢解析 上記4)−aで抽出したDNAを群ごとにプールし、これを鋳型にしてGCクランプを付与したプライマー(表9)により細菌の16S rRNA遺伝子断片(V3,V4領域含む)をPCRにより増幅した。PCR条件は50μLの反応液中に5μLの10×ExTaq Buffer、1μLのBSA(20mg/mL)溶液、2μLの2.5mM dNTP、1μLの25 pmol/μLプライマー溶液、1.25unitsの Ex Taq polymerase HS(タカラバイオ社)、0.1ng template DNAで行った。温度条件は94℃5分、(94℃20秒、55℃45秒、72℃1分)×30サイクル、72℃7分で行った。増幅産物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)で精製した後、1wellあたり200ngのDNAをゲルにアプライした。Gradient Former(Bio−Rad社)で35−50%の変性剤の濃度勾配(ここでは100%変性剤とは7Mのureaと40%formamideの混合物)をつけた8%アクリルアミドゲル(8%Acrylamide/Bis(37:5:1)、1×TAE(pH8.0)、0.1%TEMED、0.1%Ammonium persulfate)を用いて60℃、130Vで5分間泳動した後、70Vで16時間泳動した。泳動後、GelRed(Biotium社)で染色し、UVランプ下でバンドを確認撮影した。なお、A.hadrus YIT 12355に由来するバンドを特定するため、本菌株の純粋培養菌体から抽出したDNAを鋳型にPCRを行い、泳動サンプルとした。 腸内の総菌数及びYIT 12355の菌数、ならびにYIT 12355の占有率の測定結果を表10に、PCR−DGGE法による盲腸内容物中の菌叢解析結果を図7に示す。 表10より、YIT 12355のみ、又は難消化性糖類のみの投与では、腸内のA.hadrusの菌数及び占有率ともに大きな変化はないが、酪酸産生菌と難消化性糖類とを組み合わせて投与することで、A.hadrusの菌数及び占有率が大幅に上昇することが分かった。 また、図7より、AH/LAC群及びAH/MAL群でYIT 12355に由来するバンド(図7の枠部分)が増加したため、酪酸産生菌と難消化性糖類とを組み合せて投与することで、腸内の菌叢全体の変化で観察した際にも本発明の酪酸産生菌が特異的増加することが確認できた。実施例6(難消化性糖類を摂取させたマウスへのYIT 12355の単回経口投与試験)1)試験設計 表11に群構成と試験スケジュールを示した。マウスは1週間F2飼料で馴化飼育した後、各群の平均体重がほぼ等しくなるように4群に分けた。対照食(表12)を1週間投与した後、対照群(−/−群)及びAH/−群には対照食を、−/MAL群及びAH/MAL群にはマルチトールを含む精製飼料(MAL含有食)を2週間投与した。YIT 12355の生菌懸濁液は1週間の対照食を投与した後に単回ゾンデ投与した。試験最終日に解剖し、盲腸内容物を回収した。盲腸内容物はYIT 12355の菌数測定に供した。<試験系>被験素材:マルチトール(5%混餌投与)投与菌株:YIT 12355動物種 :マウスC57BL/6J(4週齢:日本クレア)群構成 :7匹×4群 −/−群, 対照 AH/−群, YIT 12355単独投与 −/MAL群, マルチトール単独投与 AH/MAL群, YIT 12355及びマルチトール共投与(表11参照)試験期間:3週間(対照食1週間 + 試験食もしくは対照食2週間)菌投与法:生菌の生食懸濁液の単回ゾンデ投与飼料組成:AIN−93Gをベースとする精製固形飼料(表12)測定項目:盲腸内菌叢(投与菌の菌数及び占有率)2)投与菌(YIT 12355)の調製及び菌数測定 投与菌であるYIT 12355の生菌懸濁液は前記実施例5、2)と同様に行った。3)YIT 12355の投与 上記2)で調製した菌液(生菌数3.1×109cfu/mL,総菌数1.9×1010cells/mL)をマウスに0.2mL(生菌数6.2×108cfu/マウス,総菌数3.8×109cells/マウス)単回経口ゾンデ投与した。対照群及び−/MAL群には菌液の代わりに0.2mLの生理食塩水を投与した。4)検体採取 試験開始3週目(菌液ゾンデ投与2週目)に、ソムノペンチル麻酔下で開腹して下大静脈から全採血し、安楽死させた。その後、盲腸内容物を回収した。盲腸内容物はPBSで10倍希釈し、DNA抽出に供した。5)盲腸内容物中のYIT 12355の菌数測定 5)−1 定量PCR法によるYIT 12355の菌数測定 腸管内容物の10倍希釈液から前記実施例5、4)a)に記載のビーズフェノール法によりDNAを抽出した。得られたDNAを鋳型にして、前記実施例5、4)a)に記載の菌種特異的プライマーを用いた定量PCR法によりYIT 12355の菌数を測定した。 5)−2 腸内の総菌数に対するYIT 12355の占有率の測定 腸管内容物の10倍希釈液の一部を4%パラホルムアルデヒド/PBS溶液で固定した後、DAPIカウント法により総菌数を測定した。上記のYIT12355の菌数を総菌数で除して占有率(%)を算出した。 腸内の総菌数ならびにYIT 12355の菌数及びYIT 12355の占有率の測定結果を表13に示す。表13より、単回投与で行った場合も反復投与と同様に、AHのみ、又は難消化性糖類のみでは、菌数、占有率は大きな変化はないが、酪酸産生菌と難消化性糖類とを組み合わせて投与することで、菌数、占有率が大幅に上昇する。実施例7(A.hadrusの菌数増加と酪酸濃度との対応に関する試験) 実施例6の単回投与試験における試験開始1週間後のマウス新鮮糞便0.8gをサンプルチューブに採取し、低温・嫌気状態を保ったままグローブボックス内に搬入した。予め嫌気置換したPBSで希釈し(最終12.5倍希釈)、マルチトール溶液(最終濃度0.5%)及び/又はYIT 12355の培養菌液(1%接種)を添加した後、37℃で24時間嫌気培養した。培養後の酪酸濃度は、電気伝導度検出器を用いたイオン排除HPLCを用いて測定した。 結果を図8に示す。In vitroにおいて、酪酸産生菌と難消化性糖類とを併用すると、菌数増加とともに、酪酸濃度が増加する。 実施例5〜7の結果より、難消化性糖類の単独添加では、YIT 12355の菌数は106cells/mL未満であり、酪酸濃度も増加しなかった。一方、YIT 12355の単独投与では、YIT 12355の菌数が増加し、それに伴い、酪酸濃度も増加した。さらに、難消化性糖類とYIT 12355を組み合わせると、A.hadrusの菌数は、YIT 12355の単独投与時と比べ100倍程度増加し、菌数の増加に伴い酪酸濃度も上昇した。これにより、酪酸産生菌と難消化性糖類とを併用すると、菌数増加とともに、酪酸濃度も増加することがわかった。 酪酸産生菌が腸内で優勢となった非ヒト動物モデル。 動物がマウスである、請求項1記載の非ヒト動物モデル。 酪酸産生菌が腸内で10%以上の占有率を示す請求項1又は2記載の非ヒト動物モデル。 酪酸産生菌がAnaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum)に属する細菌である請求項1〜3のいずれかに記載の非ヒト動物モデル。 Anaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum)に属する細菌が、Anaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum)YIT12354(NITE P−01831)又はAnaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum)YIT12355(NITE P−01832)である請求項4記載の非ヒト動物モデル。 難消化性糖類と酪酸産生菌を含有する組成物を動物に投与することを特徴とする酪酸産生菌が腸内で優勢となった非ヒト動物モデルの作製方法。 難消化性糖類が、イソマルト、イソマルチュロース、D−ガラクチトール、D−キシリトール、D−ソルビトール、L−ソルボース、マルチトール、D−マンニトール、ラクチトール及びガラクトオリゴ糖から選ばれる1種以上である請求項6記載の非ヒト動物モデルの作製方法。 酪酸産生菌が、Anaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum)に属する細菌である請求項6又は7記載の非ヒト動物モデルの作製方法。 Anaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum)に属する細菌が、Anaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum) YIT12354(NITE P−01831)又はAnaerostipes hadrus(Eubacterium hadrum)YIT12355(NITE P−01832)である請求項8記載の非ヒト動物モデルの作製方法。 【課題】酪酸産生菌を保有する非ヒト動物モデル及びその作製方法の提供。【解決手段】酪酸産生菌が腸内で優勢となった非ヒト動物モデル及びその作製方法。【選択図】なし配列表