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タイトル:公開特許公報(A)_VEGF産生促進剤、育毛及び/又は発毛促進剤
出願番号:2014067274
年次:2015
IPC分類:A61K 8/97,A61Q 7/00


特許情報キャッシュ

福田 敬子 JP 2015034157 公開特許公報(A) 20150219 2014067274 20140327 VEGF産生促進剤、育毛及び/又は発毛促進剤 小林製薬株式会社 000186588 特許業務法人三枝国際特許事務所 110000796 福田 敬子 JP 2013147015 20130712 A61K 8/97 20060101AFI20150123BHJP A61Q 7/00 20060101ALI20150123BHJP JPA61K8/97A61Q7/00 5 OL 24 4C083 4C083AA111 4C083AA112 4C083AB032 4C083AC022 4C083AC072 4C083AC102 4C083AC122 4C083AC182 4C083AC242 4C083AC302 4C083AC422 4C083AC432 4C083AC642 4C083AC692 4C083AC712 4C083AC782 4C083AC792 4C083AD042 4C083AD432 4C083AD512 4C083AD532 4C083AD662 4C083CC37 4C083CC38 4C083DD27 4C083DD31 4C083EE22 本発明は、アロエエキスを有効成分とするVEGF産生促進剤に関する。 また、本発明は、アロエエキスを有効成分とする育毛及び/又は発毛促進剤に関する。 血管内皮増殖因子(VEGF、vascular endothelial growth factor)は、下垂体星状濾胞細胞の培養液より単離された、血管内皮細胞に特異的に作用する増殖因子である。そして、VEGFの産生細胞として、下垂体星状濾胞細胞はもとより、マクロファージ、平滑筋細胞、胚線維芽細胞等の多様な正常細胞、並びに腫瘍細胞の報告がある。 毛髪には毛周期があることが知られており、成長期、退行期及び休止期からなる周期的なヘアサイクル(毛周期)に従って、成長と脱落とを繰り返している。そして、薄毛及び脱毛を防止する、又は進行を止めるためには、毛髪が休止期から速やかに成長期に移行されることが重要であると考えられる。これらのステージにおける毛包上皮系細胞の増殖・分化に重要な役割を果たしているのが、毛乳頭細胞であると考えられている。 毛は、毛包角化細胞の増殖、分化(角化)により形成される。そして、毛乳頭(毛乳頭細胞)は、毛包角化細胞の増殖、分化及びアポトーシスを制御し、毛周期調節の中心的な役割を担っている。この毛乳頭には毛細血管が入りこんでおり、毛細血管は栄養供給等の役割を果している。また、毛乳頭細胞は、毛根近傍にある外毛根鞘細胞とマトリックス細胞とからなる毛包上皮系細胞の内側にあって、基底膜に包まれている毛根の根幹部分に位置する細胞である。 毛乳頭細胞についての報告は多く、例えば、毛乳頭細胞は、成長期に毛乳頭内の血管内皮細胞、つまり毛細血管を構成する細胞を増殖することが報告されている(非特許文献1)。また、アスペルギルス菌から見つかった血管新生阻害剤(TNP-470)をマウスの腹腔に注射した場合、体毛の毛周期が遅れ、成長期が始まらないことが報告されている(非特許文献2)。 一方、毛包では、外毛根鞘細胞及び毛乳頭細胞がVEGFを発現することが報告されている(非特許文献3及び4)。また、毛周期の進行には毛乳頭細胞が重要な役割を担っており、毛乳頭細胞から産生される種々の因子(血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子-7(FGF-7)等)が、成長期の維持や成長期から退行期及び休止期への移行に関与していると考えられている。また、VEGFの動きを阻害する特異抗体をマウス腹腔に注射すると、成長期が遅れるとともに毛包のサイズが小さくなり、毛包の発達や再生に血管新生が重要であることが報告されている(非特許文献5)。反対に、外毛根鞘でのVEGF合成量を増加させた場合、毛包のサイズが増大し、作られる毛の直径も太くなることが報告されている。更に、毛乳頭細胞から産生されるVEGFは発毛を促進することや、医薬品の育毛剤に用いられているミノキシジルの作用に関与すること等が知られている(非特許文献6)。 また、アロエ抽出物を有効成分とする毛乳頭活性化剤が報告されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1では、育毛に関して、毛乳頭における毛周期のうち、成長期を延長させる作用及び休止期から成長期への移行を促進する作用を見たものであり、育毛におけるVEGF産生促進作用を評価したものではない。 また、従来、例えばキダチアロエやアロエベラ等は、古くから医薬品や医薬部外品、化粧品等の外用組成物の有効成分として使用されている。これらのアロエ品種については、既に育毛分野での種々の研究が報告されている(非特許文献7〜9、及び特許文献2〜9)。 以上のことから、脱毛や薄毛といった症状の予防・改善のために、優れたVEGF産生促進剤、育毛剤及び発毛促進剤の開発が期待されている。また、VEGF産生促進効果を高めることで、血管新生が促され、毛細血管の生成も高められるので、育毛・発毛効果、創傷治癒効果、肌の血色改善効果、冷え改善効果、腸内の吸収促進効果等が期待できる。そして、育毛剤及び発毛促進剤に対するニーズは、ストレスの増加、女性の社会進出等に伴い増加傾向にある。 また、脱毛の症例には、円形脱毛症等の成長期性(棍棒毛性)脱毛症、男性型脱毛症等の休止期性(萎縮毛性)脱毛症がある。脱毛の悩みを抱える対象者が、育毛剤を適切に用いることで、薄毛・抜け毛の進行を遅らせ、現状を維持できることから、対象者の生活の質(QOL)を向上させることができる。Am.J.Anat.,147、243-253(1976)J.Invest.Dermatol.,114、909-916(2000)J.Invest.Dermatol.,106、17-23(1996)Arch.Dermatol.Res.,209,661-668(1998)J.Clin.Invest.,107、409-417(2001)小友 進、日薬理誌、Vol.119、p.167-174、2002アンチエイジングシリーズ(1)、白髪・脱毛・育毛の実際、NTS、p.1-18、2005新ヘアサイエンス、(社)日本毛髪科学協会、p75-166アロエの活性成分-200年、八木晟、p37-63特開平11-240823号公報特開2005-170861号公報特開2000-154122号公報特開2005-306771号公報特許第2512459号公報特開2000-344632号公報特許第4027949号公報特開平9-208431号公報特開2013-144650号公報 本発明は、VEGF産生促進剤を提供することを目的とする。 また、本発明は、育毛及び/又は発毛促進剤を提供することを目的とする。 本発明者は、鋭意検討した結果、特定の種のアロエから抽出されたエキスが、VEGF産生促進効果をもたらすことを見出した。 本発明者は、更に、特定の種のアロエから抽出されたエキスが、育毛及び発毛促進効果をもたらすことを見出した。 すなわち、本発明は、以下の通りである。 項1.アロエ・エルー、アロエ・カメロニー、アロエ・ケドンゲンシス、アロエ・フェロックス、アロエ・アフリカーナ、アロエ・アンドンゲンシス及びアロエ・トーメントーサ、並びにキダチアロエとアロエベラとの交配種からなる群より選択される少なくとも1種のアロエ植物体から抽出されたアロエエキスを有効成分とするVEGF産生促進剤。 項2.前記アロエエキスが、前記アロエ植物体の水、エタノール及び1,3−ブチレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出溶媒で抽出されたものである、前記項1に記載のVEGF産生促進剤。 項3.アロエ・エルー、アロエ・カメロニー、アロエ・ケドンゲンシス、アロエ・フェロックス、アロエ・アフリカーナ、アロエ・アンドンゲンシス及びアロエ・トーメントーサ、並びにキダチアロエとアロエベラとの交配種からなる群より選択される少なくとも1種のアロエ植物体から抽出されたアロエエキスを有効成分とする育毛及び/又は発毛促進剤。 項4.アロエエキスが、アロエ・エルー、アロエ・ケドンゲンシス及びアロエ・トーメントーサ、並びにキダチアロエとアロエベラとの交配種からなる群より選択される少なくとも1種のアロエ植物体から抽出されたアロエエキスである、前記項3に記載の育毛及び/又は発毛促進剤。 項5.前記アロエエキスが、前記アロエ植物体の水、エタノール及び1,3-ブチレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出溶媒で抽出されたものである、請求項3又は4に記載の育毛及び/又は発毛促進剤。 項6.アロエ・エルー、アロエ・カメロニー、アロエ・ケドンゲンシス、アロエ・フェロックス、アロエ・アフリカーナ、アロエ・アンドンゲンシス及びアロエ・トーメントーサ、並びにキダチアロエとアロエベラとの交配種からなる群より選択される少なくとも1種のアロエ植物体から抽出されたアロエエキスを有効成分とする細胞寿命延長剤。 本発明のVEGF産生促進剤は、アロエエキスが有するVEGF産生促進作用に基づいて、ヒト頭髪毛乳頭細胞等のVEGFの産生を促進することができる。 本発明のVEGF産生促進剤を用いると、VEGF産生量が高められ、血管新生が促され、毛細血管の生成も高められるので、脱毛の発生を防止し、発毛及び育毛を効果的に促進することが可能になる。また、創傷治癒効果、肌の血色改善効果、冷え改善効果、腸内の吸収促進効果等も期待できる。 また、本発明の育毛及び/又は発毛促進剤は、特定の種のアロエから抽出されたエキスを含有することにより、育毛及び/又は発毛を促進することができる。 この様に、薄毛又は脱毛症に対して、本発明のVEGF産生促進剤、育毛及び/又は発毛促進剤を適切に用いることで、薄毛・抜け毛の進行を遅らせ、現状を維持することが期待できる。 また、本発明の細胞寿命延長剤は、特定の種のアロエから抽出されたエキスを含有することにより、細胞の寿命を延長させることができる。図1は、陰性対照、キダチアロエ及びアロエ・トーメントーサの、マウス育毛及び発毛の試験における19日目の育毛及び発毛状態を示す。 以下、本発明について説明する。 本発明のVEGF産生促進剤は、有効成分として特定の種のアロエエキスを含有する。 また、本発明の育毛及び/又は発毛促進剤は、有効成分として特定の種のアロエエキスを含有する。本発明でいう、育毛及び/又は発毛促進剤とは、発毛(毛を生やすこと)及び/又は育毛(毛を発育させたり、増やしたり、丈夫で太いものに育てること)を促進させるものである。 (1)アロエエキス 本発明のVEGF産生促進剤及び育毛及び/又は発毛促進剤に用いるアロエエキスを調製するためのアロエは、優れたVEGF産生促進作用、育毛促進作用及び/又は発毛促進作用を有することに加え、効果安全性、栽培の容易さ、又は日本薬局方でアロエとして使用が認められているという理由から、アロエ・エルー(学名:Aloe eru)、アロエ・カメロニー(又はアロエ・カメロン)(学名:Aloe cameronii)、アロエ・ケドンゲンシス(学名:Aloe kedongensis)、アロエ・フェロックス(学名:Aloe ferox)、アロエ・アフリカーナ(学名:Aloe africana)、アロエ・アンドンゲンシス(学名:Aloe andongensis)及びアロエ・トーメントーサ(学名:Aloe tomentosa)、並びにキダチアロエ(学名:Aloe arborescens)とアロエベラ(学名:Aloe vera)との交配種からなる群より選択される少なくとも1種である。 育毛及び/又は発毛促進剤に用いるアロエエキスとしては、前記アロエの中でも、特にアロエ・エルー(学名:Aloe eru)、アロエ・ケドンゲンシス(学名:Aloe kedongensis)及びアロエ・トーメントーサ(学名:Aloe tomentosa)、並びにキダチアロエ(学名:Aloe arborescens)とアロエベラ(学名:Aloe vera)との交配種からなる群より選択される少なくとも1種のアロエ植物体からの抽出物を好適に挙げることができる。 前記特定の種のアロエエキスは、植物由来であり、安全性が高く、日常的に摂取又は塗布し易いという利点を有する。 本発明では、前記種から任意に選択した種間の交配種を使用することも可能であり、かかる交配種としては、アロエ・フェロックスとアロエ・アフリカーナとの交配種を挙げることができる。 また、本発明で使用するアロエは、前記種の改良種を含むものである。 (2)アロエエキスの調製方法 本発明の有効成分であるアロエエキスの原料には、アロエ植物の全体をそのまま使用しても良い。またアロエの葉の外皮を使用しても良く、葉内部のゼリー質を使用しても良い。調製が容易という理由から、アロエ植物の全体を使用して、アロエエキスを調製することが好ましい。 抽出するアロエは、植物体(例えば、葉、茎、根等)の生の状態のもの(未乾燥物)、乾燥させたもの(乾燥物)、又は凍結したもの(凍結物)を用いることができる。また、アロエ植物体の未乾燥物、乾燥物又は凍結物を適切な大きさに細砕し粉末化したものを用いることもできる。 本発明に関するアロエのエキスを作製する方法としては、抽出工程及び分離工程を組み合わせる方法、上記方法に更に分画工程を組み合わせる方法等があげられるが、これらに限定されない。 抽出工程は、アロエ植物体から抽出溶媒を用いて、抽出物として必要な成分を取り出す工程であり、抽出方法や抽出条件は特に限定されない。 抽出溶媒の種類は特に限定されないが、水、有機溶媒及びこれらの混合溶媒が挙げられる。上記の水としては、冷水、常温水、温水、熱水及び水蒸気等の全ての温度における水が挙げられ、また、殺菌処理、イオン交換処理、浸透圧調整又は緩衝化されていてもよい。有機溶媒としては、親水性有機溶媒が好ましく、例えば、炭素数1〜5の1価アルコール(エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール等)、炭素数2〜5の多価アルコール(グリセリン、イソプロピレングリコール、プロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコール等)、エステル(酢酸メチル等)、ケトン(アセトン等)等を用いることができる。これらの親水性有機溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明では、安全性及び有効成分の抽出効率の点から、水、エタノール、1,3-ブチレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出溶媒を用いることが好ましい。 抽出溶媒として水及び1,3-ブチレングリコールの混合液を用いる場合は、混合液中の1,3-ブチレングリコールの含有率は、0.1〜70重量%程度が好ましく、5〜60重量%程度がより好ましく、10〜50重量%程度が更に好ましい。 抽出溶媒として、水及びエタノールの混合液を用いる場合は、混合液中のエタノールの含有率は、0.1〜99.5重量%程度が好ましく、5〜95重量%程度がより好ましく、50〜90重量%程度が更に好ましく、60〜80重量%程度が最も好ましい。 抽出手法としては、浸漬抽出、攪拌抽出、還流抽出、振とう抽出及び超音波抽出があげられ、抽出条件としては、室温抽出、加熱抽出(加温抽出ともいう)、加圧抽出、超臨界抽出等があげられるが、好ましくは、室温又は加熱抽出である。抽出時間は特に限定されない。また、pH調整してもよい。上記抽出操作は、1回でもよく、抽出操作を行った後に得られる抽出残渣を再度抽出することを複数回数繰り返すことにより行ってもよい。更に、抽出工程の前後に、必要に応じて濾過等の処理を行ってもよい。 分離工程は、上記で得られた抽出物から、抽出残渣である不溶物と抽出液とを分離する固液方法であり、例えば、遠心分離、フィルタプレス、濾過(加圧、常圧)、クロマトグラフィー等の吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離等による方法が挙げられる。抽出液から分取された抽出物はそのまま用いてもよく、更に分画等により精製してもよい。 分画工程は、上記で得られた抽出物から必要な成分を分画して精製及び濃縮する方法である。分画工程に用いられる方法としては、担体として活性炭、陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂、シリカゲル、芳香族化合物を吸着するポリスチレン系の樹脂等を用いるクロマトグラフィー、透析、分子ふるい、減圧濃縮、凍結乾燥等の方法があげられるがこれらに限定されない。更に、本工程後に、必要に応じて遠心分離等により上清を回収する工程を行ってもよい。 なお、上記各工程の前後に、必要に応じて濾過等の処理を行ってもよい。濾過には、ガーゼや濾過フィルター、市販の濾過器等を用いることができる。また、必要に応じて、滅菌処理等を施すことができる。 上記方法により、本発明のアロエエキスを得ることができる。得られたアロエエキスは、そのままの液状形態を有していてもよいが、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の乾燥工程により粉末化することもできる。 (3)VEGF産生促進剤 本発明のVEGF(血管内皮増殖因子、vascular endothelial growth factor)産生促進剤は、前記アロエエキスを有効成分として含有するものである。 本発明のVEGF産生促進剤におけるアロエエキスの配合割合は、本発明の効果が発揮されることを限度として制限されないが、例えば、VEGF産生促進剤中に、アロエエキスが100重量%含まれていてもよく、好ましくは10〜90重量%程度、より好ましくは20〜80重量%程度が挙げられる。 本発明のVEGF産生促進剤(医薬品の形態を含む)は、その形態は特に制限されず、非経口投与形態及び経口投与形態のいずれもが含まれる。 非経口投与形態としては、注射剤、点滴剤、経皮吸収剤等が挙げられる。経皮吸収剤とする場合、軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、噴霧剤、溶液剤、懸濁液剤等の外用製剤とすることができる。また、注射剤とする場合、局所注入、腹腔内投与、選択的静脈注入、静脈注射、皮下注射、臓器灌流液注入等の方法を選択することができる。 本発明のVEGF産生促進剤を外用製剤として使用する場合、基剤として、低級アルコール及び水を使用することができる。低級アルコールとしては、メタノール;エタノール;n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール;1,3-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール;ベンジルアルコール等の炭素数1〜7のアルコールを例示することができる。 外用製剤として使用する場合、肌への刺激性軽減という理由から、そのpHが4〜8の範囲にあることが好ましい。pH調整は、塩基性物質又は酸性物質を用いて行うことができる。塩基性物質としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の無機塩基;トリエタノールアミンやジイソプロパノールアミン等の有機アミン類;アルギニン、リジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸等を挙げることができる。また、酸性物質としては、塩酸、硝酸、メタスルホン酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等の無機酸及び有機酸を挙げることができる。 外用製剤として使用する場合、他成分として薬効補助剤を配合することも可能である。薬効補助剤としては、カンフル、テレピン油、ハッカ油、メントール及びその誘導体、ユーカリ油、乳酸メンチル等の清涼化剤;ノナン酸バニリルアミド、カプサイシン等の局所刺激剤;グリチルリチン酸等の抗炎症剤;ジフェニルイミダゾール、ジフェンヒドラミン及びその塩、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤;酢酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジル等の血行促進剤;アルニカチンキ、オウバクエキス、サンシシエキス、セイヨウトチノキエキス、ロートエキス、ベラドンナエキス、トウキエキス、シコンエキス、サンショウエキス、トウガラシエキス等の生薬等が挙げられる。上記の成分の他、適当な併用可能な活性成分、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤等の通常の皮膚外用剤に使用される添加剤を適宜用いることができる。 本発明のVEGF産生促進剤は、外用製剤として調製され、局所的に外用投与することができる。本発明のVEGF産生促進剤の投与量は、対象者の年齢や性別、脱毛症状の程度等によって異なり、一律に規定することはできないが、VEGF産生を促進できれば良い。VEGF産生促進剤の投与量は、アロエエキスの乾燥重量に換算して、成人1日用量として、好ましくは0.00001〜1g、より好ましくは0.0001〜0.1g程度となる量であることが望ましい。 経口投与形態としては、慣用の形態がいずれも含まれ、特に制限されない。通常、液剤(シロップ等を含む)等の液状製剤(懸濁剤含む);及び錠剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)等の固形製剤が含まれる。 本発明のVEGF産生促進剤は、経口投与可能な形態とする場合、製剤には薬剤的に許容できる種々の担体を加えることができる。例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着香剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、コーティング剤、抗酸化剤等を含むことができる。 本発明のVEGF産生促進剤を、経口投与形態とする場合、摂取量は、VEGFの産生を促進できる量であれば良い。VEGF産生促進剤の投与量は、アロエエキスの乾燥重量に換算して、成人1日用量として、好ましくは0.0006〜6g(0.01〜100mg/kg体重)、より好ましくは0.006〜6g(0.1〜100mg/kg体重)を使用する。勿論個別的に、投与されるヒトの年齢、体重、症状、投与経路、投与期間及び治療経過等に応じて変化させることもできる。1日あたりの量を数回に分けて投与することもできる。 また、本発明のVEGF産生促進剤は、一成分として食品に配合させることもできる。この場合は、本発明のVEGF産生促進剤を、例えば、食品添加物の形態とすることもできる。また医薬品又は医薬部外品の形態に調製して皮膚の脱毛改善用に使用したり、育毛及び/又は発毛促進用の医薬品又は医薬部外品に適用したりすることも可能である。 VEGF産生促進剤を配合する食品として、好ましくは、保健機能食品(栄養機能食品及び特定保健用食品)、所謂健康食品、栄養補助食品又は特別用途食品(病者用食品等)等を挙げることができる。形態としては、例えば、散剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、ゼリー等の形態のものが挙げられる。水を抽出溶媒として用いて得られるアロエエキスはそのまま飲用することができるので、該抽出液自体、又はその濃縮液や希釈液を飲料形態の食品としてもよい。 本発明のVEGF産生促進剤は、非経口投与形態又は経口投与形態である他の育毛剤と組み合わせて使用してもよく、これによって育毛効果をより顕著に発現することもある。 本発明は、アロエエキスを有効成分とするので、後述する実験データで示される通り、VEGFの産生を促進することができる。 (4)アロエエキスのVEGF産生促進の評価方法 アロエエキスのVEGF産生促進作用は、ヒト頭髪毛乳頭細胞(HFDPC)等の哺乳類の毛乳頭細胞を使用して、評価することができる。 毛乳頭細胞が産生するVEGF量の測定 以下の手順で、毛乳頭細胞によって培養液中に分泌されたVEGFをELISAにより測定する。 1.毛乳頭細胞を、専用の毛乳頭細胞増殖培地(PCGM、東洋紡績(株)より購入)で調製し、植え継ぎを行い、37℃の条件で一晩培養する。次に細胞の生育状況を確認し、培養液全量を交換する。 2.培養液中に被検物質(アロエエキス)を添加してインキュベートを開始する。 この際、VEGFの産生を促進するモデル薬剤として、ミノキシジル(Minoxidil)を使用してもよい。 3.培養液をサンプリングし、市販のHuman VEGF ELISAキット(R&D SYSTEMS:DY293B)を用いて、培養液中のVEGF濃度を測定する。 陰性対照として、被検物質の代わりに、使用する抽出溶媒のみを添加した培養液を用いる。この陰性対照に対して、被検物質を添加したサンプル中のVEGF濃度が高いとき、そのサンプルはVEGF産生促進作用が有ると判断できる。 (5)育毛及び/又は発毛促進剤 前記アロエエキスによれば、VEGF産生量が高められる結果、血管新生が促され、毛細血管の生成も高められるので、育毛効果及び発毛効果を発揮することが出来る。 よって、本発明は、前記アロエエキスを有効成分とする育毛及び/又は発毛促進剤を提供する。本発明の育毛及び/又は発毛促進剤を使用することで、育毛及び/又は発毛を促進することができる。 本発明の育毛及び/又は発毛促進剤は、アロエ・エルー、アロエ・カメロニー、アロエ・ケドンゲンシス、アロエ・フェロックス、アロエ・アフリカーナ、アロエ・アンドンゲンシス及びアロエ・トーメントーサ、並びにキダチアロエとアロエベラとの交配種からなる群より選択される少なくとも1種のアロエ植物体から抽出されたアロエエキスを有効成分とすることが好ましい。 本発明の育毛及び/又は発毛促進剤におけるアロエエキスの配合割合は、前記VEGF産生促進剤の項で記載した配合割合を適用することができる。 また、本発明の育毛及び/又は発毛促進剤の形態も、前記VEGF産生促進剤の項で記載した非経口投与形態(外用製剤等)及び経口投与形態のいずれも適用することができる。 また、本発明の育毛及び/又は発毛促進剤は、前記VEGF産生促進剤の項で記載した投与量又は摂取量を適用することができる。 また、本発明の育毛及び/又は発毛促進剤は、前記VEGF産生促進剤の項で記載したように、一成分として食品(保健機能食品等)に配合させることもできる。本発明の育毛及び/又は発毛促進剤を、例えば、食品添加物の形態とすること等も可能である。 本発明の育毛及び/又は発毛促進剤は、前記アロエエキスの中でも、優れた育毛効果及び発毛効果が得られるという理由から、アロエ・エルー、アロエ・ケドンゲンシス、アロエ・トーメントーサ及びキダチアロエとアロエベラとの交配種からなる群より選択される少なくとも1種のアロエ植物体から抽出されたアロエエキスを有効成分とすることが好ましい。 薄毛又は脱毛症に対して、本発明の育毛及び/又は発毛促進剤を適切に用いることで、薄毛・抜け毛の進行を遅らせ、現状を維持することが期待できる。 本発明の本発明の育毛及び/又は発毛促進剤を、脱毛の防止及び育毛を目的とする外用剤である、育毛剤(養毛剤)の医薬品又は医薬部外品への適用が可能である。医薬品及び医薬部外品の剤型として、液剤及びエアゾール剤の剤型等への応用が可能である。 本発明の育毛及び/又は発毛促進剤を、医薬品又は医薬部外品として使用することで、育毛、薄毛・かゆみ・脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ・病後・産後の脱毛の予防、及び養毛の効果を得ることができる。 本発明の育毛及び/又は発毛促進剤を、薬用化粧品への適用が可能である。薬用化粧品として、シャンプー及びリンスへの応用が可能である。 本発明の育毛及び/又は発毛促進剤を、薬用化粧品のシャンプーとして使用することで、毛髪をすこやかに保つ、又は毛髪をしなやかにする効果を得ることができる。また、本発明の育毛及び/又は発毛促進剤を、薬用化粧品のリンスとして使用することで、裂毛・切毛・枝毛を防ぐ、毛髪をすこやかに保つ、又は毛髪をしなやかにする効果を得ることができる。 本発明の育毛及び/又は発毛促進剤を、化粧品(化粧料)への適用が可能である。化粧品としては、化粧水、ローション等の乳液、クリーム、ジェル等が好ましい。化粧品の剤型として、固形化粧料、液状化粧料、練状化粧料、粉状化粧料、ゼリー状化粧料、ジェル状化粧料、ペースト状化粧料、スプレー型化粧料等の剤型への応用が可能である。 本発明の育毛及び/又は発毛促進剤を、化粧料として使用することで、(1)頭皮、毛髪をすこやかに保つ、(2)毛髪にはり、こしを与える、(3)頭皮、毛髪にうるおいを与える、(4)頭皮、毛髪のうるおいを保つ、(5)毛髪をしなやかにする、(6)毛髪のつやを保つ、(7)毛髪につやを与える、(8)フケ、カユミがとれる、(9)フケ、カユミを抑える、(10)毛髪の水分、油分を補い保つ、(11)裂毛、切毛、枝毛を防ぐ、等の効果を得ることができる。 (6)アロエエキスの育毛及び発毛促進の評価方法 アロエエキスの育毛及び発毛促進作用は、直接的には、マウス等の哺乳類を用いた発毛試験により、評価することができる。また、間接的には、線虫寿命延長作用に基づいて評価することも出来る。その測定方法については、実施例に記載する。 マウス育毛及び発毛の試験 以下の手順で、マウスの皮膚に対する育毛及び発毛促進効果を評価する。 1.被験物質(アロエエキス)をエタノール水溶液(50重量%程度)に溶解し、試験サンプルとする(例:固形分3重量%)。陰性対照として、エタノール水溶液を用いる。 2.除毛したマウスの背部皮膚に、1日1回、数日間、連日で、試験サンプルを塗布投与する。 3.投与開始日(投与1日)〜投与最終日の投与期間で、除毛部位内を観察する。 陰性対照として、被検物質の代わりに、50重量%エタノール水溶液等を用いる。この陰性対照群に対して、被検物質のエタノール水溶液(試験サンプル)群で発毛及び育毛が認められたとき、その試験サンプルは育毛及び発毛促進作用が有ると判断できる。 (7)細胞寿命延長剤 前記アロエエキスによれば、後述の線虫寿命延長試験により、細胞の寿命に対する延長作用を示すことが明らかとなった。 よって、本発明は、前記アロエエキスを有効成分とする細胞寿命延長剤を提供する。 本発明の細胞寿命延長剤は、アロエ・エルー、アロエ・カメロニー、アロエ・ケドンゲンシス、アロエ・フェロックス、アロエ・アフリカーナ、アロエ・アンドンゲンシス及びアロエ・トーメントーサ、並びにキダチアロエとアロエベラとの交配種からなる群より選択される少なくとも1種のアロエ植物体から抽出されたアロエエキスを有効成分とすることが好ましい。 本発明の細胞寿命延長剤におけるアロエエキスの配合割合は、前記VEGF産生促進剤の項で記載した配合割合を適用することができる。 また、本発明の細胞寿命延長剤の形態も、前記VEGF産生促進剤の項で記載した非経口投与形態(外用製剤等)及び経口投与形態のいずれも適用することができる。 また、本発明の細胞寿命延長剤は、前記VEGF産生促進剤の項で記載した投与量又は摂取量を適用することができる。 また、本発明の細胞寿命延長剤は、前記VEGF産生促進剤の項で記載したように、一成分として食品(保健機能食品等)に配合させることもできる。本発明の細胞寿命延長剤を、例えば、食品添加物の形態とすること等も可能である。 本発明の細胞寿命延長剤は、前記アロエエキスの中でも、優れた細胞寿命の延長作用が得られるという理由から、アロエ・エルー、アロエ・ケドンゲンシス、アロエ・トーメントーサ及びキダチアロエとアロエベラとの交配種からなる群より選択される少なくとも1種のアロエ植物体から抽出されたアロエエキスを有効成分とすることが好ましい。 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。 実験例1 アロエエキスによるVEGF産生促進作用 (1)アロエエキスの調製 各種アロエ(生の植物体として1kg)を細かく刻んだ後に乾燥し、その乾燥物全量(30〜70g)に、8倍量のエタノール水溶液(90重量%エタノール)を加えて50℃で5時間攪拌し、ろ過、濃縮、凍結乾燥の工程を経てエキス(抽出物)を得た(表1)。 参考例として、キダチアロエ及びアロエベラ(乾燥物の植物体として10g)を細かく刻み、その粉砕物に、10倍量の水、エタノール又は1,3-ブチレングリコール(100mL)を加えて、2日間静置し、エキス(抽出液)を調製した(表2)。 比較例として、アロエ以外の植物体のエキスも同様にして得た(表2)。 アロエエキスを含む各エキスの詳細を表1に示した。表中、EtOHはエタノールを示し、BGは1,3-ブチレングリコールを示す。 (2)VEGF産生作用の評価 1.毛乳頭細胞が産生したVEGF量の測定 上記調製した各サンプルのVEGF産生量を、ヒト頭髪毛乳頭細胞(HFDPC)(東洋紡績株式会社製)を使用して、評価した。 1-1.専用の増殖培地(PCGM)とT-75フラスコ(collagen-coated)を用いて、37℃、CO2インキュベーター(5%)内で細胞を培養した。 1-2.対数増殖期にある毛乳頭細胞を、専用の毛乳頭細胞増殖培地(PCGM、東洋紡績(株)より購入)で3×104cells/mlに調製し、1mlを24-well plate(collagen-coated)に植え継いで、37℃の条件で一晩培養した。顕微鏡観察によって細胞の生育状況を確認した後、培養液全量を交換した。 1-3.培養液中に表1の被検サンプル又は表2の参考及び比較サンプルを添加してインキュベートを開始した。 この際、VEGFを産生促進するモデル薬剤として、ミノキシジルを30μM(最終濃度)で使用した。ミノキシジルは不安定で分解されやすいため、1日毎に培養液中に添加した。 1-4.1日毎に250μlの培養液をサンプリングし、4℃で保存した。 1-5.2日目のサンプリングを行った後、Human VEGF ELISAキット(R&D SYSTEMS:DY293B)を用いて各サンプル中のVEGF濃度を測定した。 陰性対照試験は、被検サンプルを添加せずに、抽出溶媒のみを添加した反応液とした。 2.毛乳頭細胞でのFGF-7の遺伝子発現の解析 以下の手順で、毛乳頭細胞からtotal RNAを抽出し、FGF-7の遺伝子発現解析を行った。 2-1.毛乳頭細胞(3×104cells/ml)を24-well plate(collagen-coated)に植え継ぎ、37℃の条件で一晩培養した。 2-2.培養液全量を交換した後、表1の被検サンプル又は表2の参考及び比較サンプルを培養液中に添加し、37℃で1〜2時間インキュベートした。この際、FGF-7の発現誘導剤としてアデノシンを100μM(最終濃度)で使用した。これまで、FGF-7は、毛乳頭細胞から産生され、毛母細胞に作用し、毛母細胞の増殖、分裂を促すことで毛髪を成長させること、そして、アデノシンが毛乳頭細胞表面の受容体に直接作用し、FGF-7(fibroblast growth factor 7、発毛因子)の産生を高めることが、報告されている。 2-3.培養液を除き、細胞を1mlのISOGEN(株式会社ニッポンジーン製)に溶解し、5分間静置した。細胞溶解液を1.5mlチューブに採取し、0.2mlのクロロホルムを加えて激しく転倒混和した。遠心分離(12,000rpm、4℃、10分)し、水層を新しい1.5mlチューブに採取し、等量の70重量%エタノールを加えた。この溶液全量をRNeasy Mini Kit(株式会社キアゲン製)に付属するスピンカラムにアプライし、製造会社が推奨するプロトコルに従ってtotal RNAを精製した。100ngのtotal RNAを鋳型とし、SuperScript III Reverse Transcriptase (Invitrogen社製)を用いてcDNAを合成した。 2-4.この反応液2μl(合成したcDNA)を鋳型とし、SYBR Premix EX Taq II(タカラバイオ株式会社製)及びLightCycler 480(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製)を用いてreal-time PCRを行った。 対照試験は、被検サンプルを添加せずに、抽出溶媒のみを添加した反応液とした。 3.5-α-リダクターゼ活性測定 更に、以下の手順で、5-α-リダクターゼの活性測定を行った。 5-α-リダクターゼは、NADPHの存在下で、テストステロンをジヒドロテストステロン(DHT)に変換する働きを持つ酵素である。DHTは、その後3α-HSD(3α-hydroxysteroid dehydrogenase)により、A-diol(3α-Androstanediol)に変換される。これまで、変換されたDHTは脱毛を引き起こす直接的な原因物質であり、5-α-リダクターゼ活性を抑制することで、脱毛抑制に繋がることが、報告されている。そして、DHT及びA-diolの合計量を定量することで、5-α-リダクターゼの活性を評価することができる。5-α-リダクターゼとして、ラット肝臓ホモジネートS-9(オリエンタル酵母:636-00221)を使用した。 3-1.2ml チューブ内に、下記表3に従って被検サンプルを含む反応液を調製した。ネガティブコントロールは、DHTの合成に必須であるNADPHを含まない反応液とした。ポジティブコントロールは、既存の5-α-リダクターゼ阻害剤であるフィナステリド(Finasteride)を最終濃度0.5μMで使用し、抽出溶媒(エタノール、1,3-ブチレングリコール又は水)を含む反応液とした。 3-2.調製した反応液を37℃で1時間インキュベートした。 3-3.500μlのジクロロメタン(塩化メチレン)を加え、ボルテックスミキサーで激しく混合した。遠心分離(9,000 rpm、10分)を行い、ジクロロメタン層をガラス瓶に回収した。窒素ガスを吹き付け、溶媒を揮発させた。 3-4.試料を40μlのメタノールに溶解し、10μlをガスクロマトグラフィ(GC)で分析した。GC分析条件は、使用装置:GC-2014(株式会社島津製作所製)、カラム:TC-1(ジーエルサイエンス株式会社製)、カラム温度:240℃、気化室温度:300℃、検出器(温度):FID(300℃)、入口圧:100kPa、スプリット比:50、キャリアガス:ヘリウム、注入量:10μl、RUN time:25分である。 3-5.GC分析によって得られたDHTとA-diolの物質量を合計し、テストステロンから生成されたDHTの総量を算出した。算出したDHTの総量から、5-α-リダクターゼ活性の程度を評価した。つまり、反応液にフィナステリドを添加した場合の5-α-リダクターゼに対する阻害率を100%とし(ポジティブコントロール)、各被検サンプルの相対的な阻害率をそれぞれ算出した。 (3)試験結果 毛乳頭細胞が産生したVEGF量及びFGF-7の遺伝子発現量について、下記の基準に従って評価した。 ◎:陰性対照に対して50%以上向上 ○:陰性対照に対して20%以上向上 △:陰性対照に対して10%以上向上 ×:陰性対照に対して数値の向上が10%未満 また、5-α-リダクターゼ活性阻害効果について、下記の基準に従って評価した。 ◎:50%以上阻害 ○:20%以上阻害 △:10%以上阻害 ×:阻害効果が10%未満 被検サンプルの試験結果を下記表4に示した。 参考及び比較サンプルの試験結果は下記表5に示した。 更に前記アロエ(アロエ・エルー、アロエ・カメロニー、アロエ・ケドンゲンシス、アロエ・フェロックス、アロエ・アフリカーナ、アロエ・アンドンゲンシス及びアロエ・トーメントーサ、並びにキダチアロエとアロエベラとの交配種)に換えて、アロエ・フェロックスとアロエ・アフリカーナとの交配種、アロエ・スピカータ(学名:Aloe spicata)、アロエ・ノビリス(学名:Aloe nobilis)、アロエ・コンパクタ(学名:Aloe compacta)、アロエ・サポナリア(学名:Aloe saponaria)、アロエ・マルロシー/アロエ・マーロシー(学名:Aloe marlothii)、アロエ・ベラ・バリエイタス・キネンシス(学名:Aloe vera var. chinensis)、アロエ・マウイー(学名:Aloe mawii)、アロエ・ルーペストリス(学名:Aloe rupestris)、アロエ・マイクロスティグマ(学名:Aloe microstigma)、アロエ・バイネシー(学名:Aloe bainesii)、アロエ・ボルケンシー(学名:Aloe volkensii)、アロエ・アローイデス(学名:Aloe alooides)、アロエ・アキュレアータ/アロエ・アクレアータ(学名:Aloe aculeata)、アロエ・トラスキー(学名:Aloe thraskii)、アロエ・デラエティ(学名:Aloe delaetii)、アロエ・エスクレンタ(学名:Aloe esculenta)、アロエ・フォルケンジー(学名:Aloe volkensii)及びアロエ・ドロセア(学名:Aloe dorotheae)を用いて、前記アロエと同様にアロエエキスを調製した。そして、これらアロエエキスについても、前記アロエと同様にVEGF産生量を測定した。 その結果、アロエ・フェロックスとアロエ・アフリカーナとの交配種、アロエ・スピカータ、アロエ・ノビリス、アロエ・コンパクタ、アロエ・サポナリア、アロエ・マルロシー/アロエ・マーロシー、アロエ・ベラ・バリエイタス・キネンシス、アロエ・マウイー、アロエ・ルーペストリス、アロエ・マイクロスティグマ、アロエ・バイネシー、アロエ・ボルケンシー、アロエ・アローイデス、アロエ・アキュレアータ/アロエ・アクレアータ、アロエ・トラスキー、アロエ・デラエティ及びアロエ・エスクレンタ、アロエ・フォルケンジー、アロエ・ドロセアから抽出されたアロエエキスについても、VEGF産生促進効果が確認された。 これらのことから、上記種のアロエ植物体も、本発明と同様に、VEGF産生促進剤、育毛及び/又は発毛促進剤の有効成分となるアロエエキスの原料として用いることができると考えられる。 試験結果から、表4に記載のアロエエキスにおいて、VEGF産生促進の効果が確認された。 また、表5より、FGF-7遺伝子の発現量を増加させる成分及び5-α-リダクターゼ活性を阻害させる成分が、必ずしもVEGF産生を促進するものではないことが明らかとなった。例えば、アセンヤクエキス及びカワラヨモギエキスは、5-α-リダクターゼ活性を阻害させるが、VEGF産生促進効果は見られなかった。また、ローヤルゼリー酸は、FGF-7遺伝子発現量を増加させるが、VEGF産生促進効果は見られなかった。 つまり、使用するアロエエキスによっては、これまで育毛促進及び脱毛抑制に関与すると報告されていたFGF-7遺伝子発現量及び5-α-リダクターゼ活性阻害と、VEGF産生促進効果との間には、必ずしも相関関係があるわけではないことが明らかになった。 そして、本発明によって、初めて、特定の種のアロエ(アロエ・エルー、アロエ・カメロニー、アロエ・ケドンゲンシス、アロエ・フェロックス、アロエ・アフリカーナ、アロエ・アンドンゲンシス及びアロエ・トーメントーサ、並びにキダチアロエとアロエベラとの交配種)から抽出されたアロエエキスには、育毛促進及び脱毛抑制の中でも、VEGF産生を促進する効果に優れることが確認された。 また、特定の種のアロエエキスにより、VEGFの産生量が高められる結果、血管新生が促され、毛細血管の生成も高められ、また、特定の種のアロエエキスを用いることにより、優れた育毛効果及び発毛効果が期待できる。 そこで、更に、特定の種のアロエエキスを用いて、発毛促進作用及び育毛促進作用の効果を確認した。 実験例2 アロエエキスによる育毛及び発毛促進作用 (1)アロエエキスの調製 アロエ植物体として、アロエ・エルー、アロエ・ケドンゲンシス、アロエ・トーメントーサ、及びキダチアロエとアロエベラとの交配種を用いて、上記実験例1と同様にして、アロエエキス(抽出溶媒:90重量%エタノール水溶液)を調製した。 得られた各アロエエキスの詳細を表6に示した。表中、EtOHはエタノールを示す。 (2)マウスの育毛及び発毛促進作用の評価 以下の手順で、マウスの皮膚に対する育毛及び発毛促進効果を評価した。 1.アロエエキスを固形分3重量%となるように50重量%エタノール水溶液に溶解し、試験サンプルとした。陰性対照として、50重量%エタノール水溶液(50%EtOH)を用いた。 2.バリカン及びカミソリで除毛したマウスの背部皮膚に、1日1回、18日間の連日で、試験サンプルを塗布投与した。マウスはC3H/HeNCrlCrlj(SPF)を用いて、各群10匹とした。 3.投与開始日を投与1日目とし、最終投与翌日までの除毛部位内(約3×5cm)の様子を観察した。 4.育毛及び発毛促進の程度を、表7の毛再生スコアで判定し、各スコアの平均値を求めた(「皮膚と美容」,Vol31 No.4,5512-5518,1999参照)。更に毛の状態を示す写真を一定条件下にて撮影した。 (3)試験結果 陰性対照、アロエ・エルー、アロエ・ケドンゲンシス及びアロエ・トーメントーサ、並びにキダチアロエとアロエベラとの交配種の11日目の毛再生スコアの平均値に基づき、各アロエエキスの育毛及び発毛促進効果を、陰性対照を100%とした育毛・発毛率で表8に示した。 試験結果から、陰性対照(50%EtOH)と比較して、アロエ・エルー、アロエ・ケドンゲンシス及びアロエ・トーメントーサ、並びにキダチアロエとアロエベラとの交配種は、優れた育毛及び発毛促進効果を示した。また、上記実験例1と同様にしてキダチアロエのエキス(抽出溶媒:90重量%エタノール水溶液)を調製し、実験例2と同様に育毛及び発毛促進効果を評価したところ、アロエ・エルー、アロエ・ケドンゲンシス及びアロエ・トーメントーサ、並びにキダチアロエとアロエベラとの交配種のいずれも、キダチアロエに比べて優れた効果を示した。 特にアロエ・ケドンゲンシス及びアロエ・トーメントーサ、並びにキダチアロエとアロエベラとの交配種では、その効果が顕著であった。また、アロエ・トーメントーサは、試験期間中のいずれにおいても、キダチアロエを上回る良好な育毛・発毛率を示した。更に、陰性対照、キダチアロエ及びアロエ・トーメントーサの19日目における育毛及び発毛促進効果を図1に示す。図1からも分かるように、アロエ・トーメントーサは、キダチアロエに比べて非常に優れた育毛及び発毛促進効果を示した。 また、キダチアロエ(従来種、比較例)と比較して、アロエ・エルーは、試験期間11日目、13日目、19日目において、優れた育毛及び発毛促進効果を示した。キダチアロエとアロエベラとの交配種は、試験期間11日目、17日目において、優れた育毛及び発毛促進効果を示した。 参考として、表9にキダチアロエ、アロエ・エルー及びアロエ・トーメントーサにおけるアロエニン含有量を示す。アロエニンは、キダチアロエ等に含まれ、発毛及び育毛を促進する効果が有ると言われている有効成分である。なお、各種アロエに含まれるアロエニンの含有量については、高速液体クロマトグラフィー法にて定量した。 一方、アロエ・エルー及びアロエ・トーメントーサには、アロエニンが検出されず、アロエニンが含有されていないことがわかった。しかしながら、試験結果から、アロエ・エルー及びアロエ・トーメントーサにおいて、発毛促進の効果が確認された。このことは、特定の種から抽出されたアロエエキスでは、アロエニンが含まれていなくても、発毛促進の効果を奏することが明らかとなった。つまり、使用するアロエエキスによっては、アロエニンと発毛促進及び育毛促進の効果との間には、必ずしも相関関係があるわけではないことが明らかになった。 この様に、本発明によって、初めて、特定の種のアロエエキスには、アロエニンが含まれていなくとも、発毛促進及び育毛促進の効果を奏することが確認された。更に、特定の種のアロエエキスは、従来のキダチアロエ(従来種、比較例)と比較して、優れた育毛促進及び発毛促進の効果を奏することも確認された。 実験例3 アロエエキスによる線虫寿命延長作用 線虫寿命延長試験は、細胞の寿命に対する延長作用を評価するために利用されている。ここでは、線虫寿命延長試験を用いて、アロエエキスの細胞(毛乳頭細胞)の寿命に対する延長作用を評価した。 (1)線虫寿命延長の試験 以下の手順で、線虫(Caenorhabditis elegans)を用いて、毛乳頭細胞の寿命の延長効果を評価した。1.同一生育ステージの線虫を得るため、産卵期にある成虫から卵を回収した。具体的には、卵を抱えた線虫をS-bufferで回収し、漂白剤及びNaOH溶液を用いて成虫を溶解することにより卵のみを得た。2.卵はS-bufferに入れ、20℃で一晩かけて孵化させた。3.生育ステージを合わせたL1期幼虫を、大腸菌を加えたS-mediumに移した。線虫2,000匹を液体培地10mLに加え、50mLの三角フラスコで3日間培養し、成虫とした。4. アンピシリン20μl(Final 200μg/ml)と陰性対照(0.25%重量エタノール,被験物質の溶媒)若しくは被験物質(アロエエキス)を入れ培養した。5.線虫寿命の測定は2〜3日に一度、一定量をサンプリングしてその中の線虫の生死数をカウントした。線虫の生死数カウントは4回行い、統計処理に用いた。線虫の生存率については、以下の式(1)にしたがって算出した。 式(1):線虫の生存率(%)=100×生存している線虫/(生存している線虫+死んだ線虫) (2)線虫寿命延長の試験の評価結果 キダチアロエ(従来種、比較例)及びアロエ・トーメントーサの線虫寿命延長試験を実施した。 寿命延長効果を示したアロエ・トーメントーサの結果を表10に示した。 *p<0.05 (vs. Ethanol)、**p<0.01 (vs. Ethanol) 試験結果から、アロエ・トーメントーサは、陰性対照(0.25%重量エタノール)と比べて、有意に寿命を延長させることが示された。つまり、本発明によって、初めて、特定の種のアロエエキスには、線虫の寿命を延長させる効果を奏することが確認され、細胞の寿命を延長させる可能性があることが示された。 この試験結果から、特定の種のアロエから抽出したアロエエキスは、毛乳頭細胞の寿命を延長させる効果があることが示唆された。 実験例4 アロエエキス安定性の試験 以下の手順で、アロエエキスの安定性を評価した。 1.被験物質(アロエエキス)が固形分濃度0.75重量%となるよう、90重量%エタノール水溶液(90%EtOH水溶液)に溶解し、試験サンプルとした。 2.試験サンプルを、5℃、1週間程度静置し、外観を観察した。 アロエエキス安定性の試験及び評価結果 キダチアロエ(従来種、比較例)及びアロエ・ケドンゲンシスの90%EtOH水溶液中の安定性の試験の結果を示した。 各試験サンプルの90%EtOH水溶液中での透明度を観察した(表11)。 表中「○」評価は外観性状が均一で透明であることを示し、「×」評価は外観性状に濁りがあり不均一であることを示す。 キダチアロエ(従来種)は、90%EtOH水溶液中において濁りが生じた。 一方、アロエ・ケドンゲンシスは、90%EtOH水溶液中において濁りが生じず、透明であった。つまり、キダチアロエ(従来種)と比較して、アロエ・ケドンゲンシスは、エタノール水溶液中での安定性が優れていることが確認できた。 育毛剤及び発毛剤は、通常多量のエタノールを含む。そのため、特定の種のアロエエキスが、エタノール水溶液中で安定に存在することは、育毛剤及び発毛剤へ配合することに適していることが示唆された。 上記試験結果より、種々のアロエエキスの中でも、アロエ・エルー、アロエ・ケドンゲンシス及びアロエ・トーメントーサ、並びにキダチアロエとアロエベラとの交配種からなる群より選択される少なくとも1種から抽出されたアロエエキスが、優れた育毛効果及び発毛効果を奏することが立証された。 更に、本発明の育毛及び/又は発毛促進剤は、特定の種のアロエエキスを有効成分とすることにより、育毛剤及び発毛剤に適用しても、製品としての優れた安定性を奏することが期待できる。 処方例 以下、本発明に係る育毛及び/又は発毛剤原料を配合した、育毛及び/又は発毛剤組成物の処方例を表12〜16に示す。いずれの組成物においても、優れた育毛及び発毛促進効果が示された。 育毛及び発毛用ローション(表12) 育毛シャンプー(表13) 育毛クリーム(表14) 頭皮用美容液(表15) 錠剤(表16) アロエ・エルー、アロエ・カメロニー、アロエ・ケドンゲンシス、アロエ・フェロックス、アロエ・アフリカーナ、アロエ・アンドンゲンシス及びアロエ・トーメントーサ、並びにキダチアロエとアロエベラとの交配種からなる群より選択される少なくとも1種のアロエ植物体から抽出されたアロエエキスを有効成分とするVEGF産生促進剤。 前記アロエエキスが、前記アロエ植物体の水、エタノール及び1,3−ブチレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出溶媒で抽出されたものである、請求項1に記載のVEGF産生促進剤。 アロエ・エルー、アロエ・カメロニー、アロエ・ケドンゲンシス、アロエ・フェロックス、アロエ・アフリカーナ、アロエ・アンドンゲンシス及びアロエ・トーメントーサ、並びにキダチアロエとアロエベラとの交配種からなる群より選択される少なくとも1種のアロエ植物体から抽出されたアロエエキスを有効成分とする育毛及び/又は発毛促進剤。 アロエエキスが、アロエ・エルー、アロエ・ケドンゲンシス及びアロエ・トーメントーサ、並びにキダチアロエとアロエベラとの交配種からなる群より選択される少なくとも1種のアロエ植物体から抽出されたアロエエキスである、請求項3に記載の育毛及び/又は発毛促進剤。 前記アロエエキスが、前記アロエ植物体の水、エタノール及び1,3-ブチレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出溶媒で抽出されたものである、請求項3又は4に記載の育毛及び/又は発毛促進剤。 【課題】VEGF産生促進剤及び育毛及び/又は発毛促進剤を提供する。【解決手段】アロエエキスを有効成分とするVEGF産生促進剤及び育毛及び/又は発毛促進剤。【選択図】なし


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