タイトル: | 公開特許公報(A)_乾燥促進剤及びそれを含む酸化重合性組成物 |
出願番号: | 2014059563 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C09F 9/00,C08L 91/00,C08K 5/56,C07D 213/22,C09D 11/03,C07D 401/14,C07D 213/36,C07D 239/28,C07F 15/02,C09D 201/00,C09D 7/12 |
長澤 隆 輿水 英一 渡辺 修一 JP 2015183056 公開特許公報(A) 20151022 2014059563 20140324 乾燥促進剤及びそれを含む酸化重合性組成物 株式会社ティ−アンドケイ東華 592215435 森田 憲一 100090251 山口 健次郎 100139594 長澤 隆 輿水 英一 渡辺 修一 C09F 9/00 20060101AFI20150925BHJP C08L 91/00 20060101ALI20150925BHJP C08K 5/56 20060101ALI20150925BHJP C07D 213/22 20060101ALN20150925BHJP C09D 11/03 20140101ALN20150925BHJP C07D 401/14 20060101ALN20150925BHJP C07D 213/36 20060101ALN20150925BHJP C07D 239/28 20060101ALN20150925BHJP C07F 15/02 20060101ALN20150925BHJP C09D 201/00 20060101ALN20150925BHJP C09D 7/12 20060101ALN20150925BHJP JPC09F9/00C08L91/00C08K5/56C07D213/22C09D11/03C07D401/14C07D213/36C07D239/28C07F15/02C09D201/00C09D7/12 4 OL 25 4C055 4C063 4H050 4J002 4J038 4J039 4C055AA01 4C055BA02 4C055BA06 4C055BA25 4C055BA27 4C055BB02 4C055BB10 4C055CA01 4C055CA02 4C055CA06 4C055DA01 4C055EA01 4C055EA02 4C055EA03 4C055GA02 4C063AA05 4C063BB01 4C063CC43 4C063DD12 4C063EE10 4H050AA03 4H050AB40 4H050AB48 4H050AB76 4H050WB14 4J002AE051 4J002AF021 4J002CF211 4J002CF241 4J002EZ006 4J002FD156 4J002GH01 4J038BA231 4J038CG071 4J038DD111 4J038DD181 4J038JB28 4J038JB33 4J038KA07 4J038MA07 4J038NA27 4J039AB08 4J039AE02 4J039BC50 4J039BC51 4J039BC59 4J039BE14 4J039EA01 4J039EA02 4J039GA02 本発明は、遷移金属錯体及びそれを含む酸化重合性組成物に関する。本発明によれば、コバルト又はマンガンなどの健康有害性の高い(又は法規制の厳しい)金属を用いずに、酸化重合型のインキや塗料を乾燥させることができる。 漆や乾性植物油の酸化重合による被膜形成は大昔から知られ、現在でも印刷や塗料分野で酸化重合型のインキや塗料が産業的に使用されている。その乾燥を実用的に早めるため、樹脂や乾性植物油などの酸化重合組成物にカルボン酸金属塩を添加する方法が昔から用いられてきた。具体的にはコバルト、マンガン、鉛、鉄、又は亜鉛等の遷移金属と種々のカルボン酸との金属塩が用いられていた。特にコバルト金属塩及びマンガン金属塩は、優れた乾燥性能を有しているため、主要な乾燥促進剤(ドライヤー)として用いられている。 しかし、金属種によってはその健康有害性を無視できない場合もあり、鉛ドライヤーは塗料分野の一部を除き、数十年前にほとんど使われなくなった。IARC(国際がん研究機関)でコバルトがグループ2B(ヒトに対する発がん性が疑われる)に分類された。このため、各国で規制が厳しくなっている。法律上、コバルトドライヤーを使用禁止にした国や地域はまだ存在しないが、自社製品包装物への使用濃度の低減を求める大手食品メーカーも存在する。また、コバルトよりも低リスクとされるマンガンドライヤーも、日本では労働安全衛生法、水質汚濁防止法、及び水道法など各種の法規制がある。このようにコバルトやマンガンの不使用や削減が、以前よりも強く求められている状況であるが、両者よりも有害性が低い鉄等のドライヤーの効果は非常に低く、単独で実用的に用いることはできなかった。 印刷インキの分野では、印刷された後は速く乾燥する事を求められるが、印刷している時は印刷機上で乾燥しないという正反対の性能を求められる。更に、印刷時の乳化や紙のpHが低いなどの原因により乾燥が遅くなり、印刷物が不良品になるトラブルが起こる事が有り、印刷時と印刷後のより困難な乾燥バランスを求められる。これらの対策のため、金属ドライヤーをやや多く添加し、同時に酸化防止剤を添加する処方がしばしば用いられてきた。例えば、ハイドロキノン系の酸化防止剤はこの相反する乾燥バランスをとる効果が高いものの、水素を与えて還元効果を発揮すると健康有害性や刺激性が高いキノン構造に変化する。ドライヤーと酸化防止剤ともに削減を求められ、従来の処方の根本的な見直しを求められている状況である。 一方、金属ドライヤーに更にアミン化合物を添加する事によって、酸化重合をより速くできる事は以前から知られ(非特許文献1)、複数の特許文献も存在する。例えば特許文献1では、コバルト金属塩、又はマンガン金属塩に、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、又はn−ブチルジエタノールアミンを添加した乾燥促進剤が開示されている。また。特許文献2では脂肪酸マンガン塩に特定のアミノアルコールを添加した印刷インキ用ドライヤーが開示されている。しかしながら、この特許文献2に記載の乾燥促進剤は、マンガン塩を用いるものであり、環境に負荷のかかるものであった。特開2001−49102号公報WO2011/158694特開2004−323732号公報特開2005−154628号公報市川家康著、「わかりやすい紙・インキ・印刷の科学」、増補改訂6版、財団法人印刷局朝陽会、1981年、p.237 また、健康有害性の低い鉄を用いた乾燥促進剤が報告されている。例えば、特許文献3には、酸化還元酵素及び遷移金属錯体を含む酸化重合性組成物が開示されている。しかしながら、特許文献3に記載の鉄錯体を用いた酸化重合性組成物の乾燥効果は、マンガン錯体を用いたものと比較すると十分ではなかった。更に、特許文献4には、ポルフィリン鉄錯体(テトラポルフィリン鉄又はフタロシアニン鉄)を用いた硬化性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、ポルフィリン鉄錯体は、着色されており、実質的にドライヤーとして使用することのできるものではなかった。また、溶解性が悪く、実施例においてはTHFに溶解されているが、THFは実質的にインキの溶媒として使用できるものではなかった。 従って、本発明の目的は、コバルト又はマンガンなどの健康有害性の高い金属を使用せず、且つ実用的な乾燥促進剤、及び酸化重合性組成物を提供することである。 本発明者は、コバルト又はマンガンなどの健康有害性の高い金属を使用しない印刷用インキの乾燥促進剤について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、特定の構造を有する配位子と鉄、セリウム、又はジルコニウム及びそれらの塩との錯体により、従来のコバルト又はマンガンを使用した乾燥促進剤と同等以上の性能を有する乾燥促進剤が得られることを見出した。 本発明は、こうした知見に基づくものである。 従って、本発明は、[1]鉄、セリウム、及びジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1つの遷移金属若しくはその塩;及び一般式(1):で表される配位子(但し、2,2’−ピピリジルを除く)、又は一般式(2):で表される配位子を含む配位子組成物又は遷移金属錯体であって、前記一般式(1)及び一般式(2)中、R1は、(i)単結合、(ii)式(3):(式(3)中、Xは単結合、又は炭素数1〜4のアルキレン基であり、R5は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルキル基若しくはメトキシ基で場合により置換されていることのある1つ以上のピリジル基を含む基である)で表される基、又は(iii)式(4):(式(4)中、R6は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルキル基若しくはメトキシ基で場合により置換されていることのある1つ以上のピリジル基を含む基である)で表される基であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基若しくはアリール基であり;R4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基又はアリール基である;前記配位子組成物又は前記金属錯体を含む乾燥促進剤、[2]前記1つ以上のピリジル基を含む基がピリジル基又は式(5):で表される基である、[1]に記載の乾燥促進剤、[3]前記配位子が、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン、トリス(2−ピリジルメチル)アミン、ビス(2−ピリジルメチル)アミン、2,4,6−トリ(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジン、5,5’−ジメチル−2,2’−ジピリジル、及び2,2’−ビピリジミルからなる群から選択される配位子である、[1]又は[2]に記載の乾燥促進剤、又は[4]樹脂若しくは乾性油を含むワニス、及び[1]〜[3]のいずれかに記載の乾燥促進剤を含む酸化重合性組成物、に関する。 本発明の乾燥促進剤によれば、健康有害性が高いコバルト又はマンガンなどの金属を用いずに、酸化重合を利用した印刷インキ、又は塗料を乾燥させることができる。また、本発明の乾燥促進剤は、ガラス板による乾燥時間と比較して、C型乾燥試験機による乾燥時間が短い。すなわち、印刷機上では乾燥しにくく、そして印刷された紙の上では乾燥しやすい。従って、実際の使用において、酸化防止剤を添加しなくても優れた乾燥バランスを有している上、従来ドライヤーよりも添加量を減らす事が可能である。〔乾燥促進剤〕 本発明の乾燥促進剤は配位子及び遷移金属(鉄、セリウム、及び/又はジルコニウム)若しくはその塩を含む遷移金属錯体を含むものである。 酸化重合を利用した印刷インキや塗料は、組成中の酸化重合可能な樹脂や乾性油(アマニ油、キリ油、又は大豆油など)などが、酸化重合により高分子化し、より強固な被膜となるもので、この重合速度を実用的に上げるのがドライヤーである。この酸化重合に影響する主な要因としては、温度、湿度、膜厚などが挙げられる。又、印刷分野では、前述の要因以外にも、紙のpH、顔料の種類(特に酸性カーボンブラック)、湿し水と乳化などがある。 本発明の乾燥促進剤は、特定の構造を有する配位子及び遷移金属塩を含んでもよく、又は特定の構造を有する配位子と遷移金属との遷移金属錯体を含んでもよい。《配位子》 本発明の乾燥促進剤に用いる配位子は、一般式(1):〔式中、R1は(i)単結合、(ii)式(3):(式(3)中、Xは単結合、又は炭素数1〜4のアルキレン基であり、R5は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルキル基若しくはメトキシ基で場合により置換されていることのある1つ以上のピリジル基を含む基である)で表される基、又は(iii)式(4):(式(4)中、R6は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルキル基若しくはメトキシ基で場合により置換されていることのある1つ以上のピリジル基を含む基である)で表される基であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基若しくはアリール基であり、R4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基又はアリール基である〕で表される配位子でもよい。 また、本発明の乾燥促進剤に用いる配位子は、一般式(2):〔式中、R1は(i)単結合、(ii)前記式(3)で表される基、又は(iii)前記式(4)で表される基であり、R4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基又はアリール基である〕で表される配位子でもよい。 なお、前記一般式(1)及び(2)中、R4はピリジル基の窒素原子に対して、オルト、メタ、パラの3つの位置の基を意味するものであり、1つの基が炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基又はアリール基であってもよく、2つの基が炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基又はアリール基であってもよく、3つの基が炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基又はアリール基であってもよい。 R1は、単結合、式(3)で表される基、又は式(4)で表される基であるが、窒素原子を含んでいる基が好ましく、最も好ましくは、式(3)で表される基である。《一般式(1)の配位子》(R1が式(3)で表される基の場合) R1が式(3)で表される基の場合、Xは単結合、又は炭素数1〜4のアルキレン基であり、R5は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は1つ以上のピリジル基を含む基である。なお、前記ピリジル基は、炭素数1〜4のアルキル基若しくはメトキシ基で場合により置換されていてもよい。 ここで、Xが単結合の場合、限定されるものではないが、R5は水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。 また、Xが、炭素数1〜4のアルキレン基の場合、R5は水素原子、1つ以上のピリジル基を含む基でよい。特にXが、炭素数1のアルキレン基(メチレン基)の場合、限定されるものではないが、R5は前記1つ以上のピリジル基を含む基が好ましく、ピリジル基がより好ましい。また、Xが、炭素数2のアルキレン基(エチレン基)の場合、限定されるものではないが、R5は1つ以上のピリジル基を含む基が好ましく、式(5):で表される基がより好ましい。 R1が式(3)で表される基の場合の具体的な配位子としては、下記式(6)で表される(A)N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン、下記式(7)で表される(B)トリス(2−ピリジルメチル)アミン、又は下記式(8)で表される(C)ビス(2−ピリジルメチル)アミンを挙げることができる。(A)(B)(C) 更に、トリス(2−ピリジルメチル)アミンの誘導体として、ピリジル基の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基若しくはメトキシ基によって置換された下記式(9)で表される化合物を挙げることができる。(R1が式(4)で表される基の場合) R1が式(4)で表される基の場合、R6は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は1つ以上のピリジル基を含む基である。限定されるものではないが、ピリジル基又は一般式(5)で表される基が好ましい。 なお、前記ピリジル基は、炭素数1〜4のアルキル基若しくはメトキシ基で場合により置換されていてもよい。 R1が式(4)で表される基の場合の具体的な配位子としては、下記式(10)で表される(D)2,4,6−トリ(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジンを挙げることができる。(D)(R1が単結合の場合) R1が単結合の場合、限定されるものではないが、前記配位子はジピリジル、又はその誘導体が好ましい。この場合、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又はアリール基であってもよいが、好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基である。 R1が単結合の場合の具体的な配位子としては、下記式(11)で表される(E)5,5’−ジメチル−2,2’−ジピリジルを挙げることができる。(E) 《一般式(2)の配位子》(R1が単結合の場合) R1が単結合の場合、限定されるものではないが、前記配位子はジピリジミル、又はその誘導体が好ましい。R1が単結合の場合の具体的な配位子としては、下記式(12)で表される(F)2,2’−ジピリジミルを挙げることができる。(F)《遷移金属塩》 本発明の乾燥促進剤に用いることのできる遷移金属塩は、前記配位子と錯体を形成することができる限りにおいて限定されるものではないが、鉄塩、セリウム塩、又はジルコニウム塩を挙げることができるが、促進効果が高いことから、鉄塩が好ましい。 鉄塩としては、前記配位子と鉄錯体を形成することのできる鉄原子を含む限りにおいて、限定されるものではないが、酢酸鉄、ギ酸鉄、乳酸鉄、塩化鉄、オクチル酸鉄、又はナフテン酸鉄を挙げることができる。 また、セリウム塩としては、例えば酢酸セリウム、ギ酸セリウム、乳酸セリウム、塩化セリウム、オクチル酸セリウム、又はナフテン酸セリウムを挙げることができる。更に、ジルコニウム塩としては、酢酸ジルコン、ギ酸ジルコン、乳酸ジルコン、オクチル酸ジルコン、オクチル酸ジルコン、又はナフテン酸ジルコンを挙げることができる。 本発明に用いることのできる鉄塩、セリウム塩、及びジルコニウム塩などは、コバルト又はマンガンと比較して生体又は環境に対する安全性が高く、環境への負荷が低い遷移金属塩である。《遷移金属錯体》 本発明の乾燥促進剤は、遷移金属錯体を含むものでもよい。本発明の乾燥促進剤に含むことのできる遷移金属錯体は、前記配位子と、鉄、セリウム、及びジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1つの遷移金属とが配位結合した遷移金属錯体である。遷移金属錯体の配位子としては、前記配位子を制限なく用いることができる。遷移金属錯体の金属としては、鉄、セリウム、又はジルコニウムを制限なく用いることができる。配位結合は、結合を形成する二つの原子の一方からのみ結合電子が分子軌道に提供される化学結合である。 本発明の遷移金属錯体の取得方法は限定されるものではなく、通常の方法で得ることができる。 例えば、前記配位子と前記遷移金属塩とを混合することによって得ることができる。配位子と遷移金属塩との混合比は、本発明に用いることのできる金属錯体が得られる限りにおいて、限定されるものではないが、遷移金属塩1分子に対し、配位子中の窒素原子が3個〜4個配位することが好ましい。従って、窒素原子2個を含む配位子の場合、遷移金属塩1モルに対する配位子のモル比率は、好ましくは0.18〜18.0であり、より好ましくは0.9〜3.6である。窒素原子3個を含む配位子の場合は、遷移金属塩1モルに対する配位子のモル比率は、好ましくは0.12〜12.0であり、より好ましくは0.6〜2.4である。窒素原子4個を含む配位子の場合は、遷移金属塩1モルに対する配位子のモル比率は、好ましくは0.09〜9.0であり、より好ましくは0.45〜1.8である。窒素原子5個を含む配位子の場合は、遷移金属塩1モルに対する配位子のモル比率は、好ましくは0.07〜7.0であり、より好ましくは0.35〜1.4である。窒素原子6個を含む配位子の場合は、遷移金属塩1モルに対する配位子のモル比率は、好ましくは0.06〜6.0であり、より好ましくは0.30〜1.2である。《金属錯体を含む乾燥促進剤》 本発明の乾燥促進剤の1つの実施態様として、前記遷移金属錯体を含む乾燥促進剤を挙げることができる。 本発明の乾燥促進剤においては、前記遷移金属錯体を1種で用いてもよいが、2つ以上組み合わせて用いてもよい。 本発明の乾燥促進剤は、インキ又は塗料に添加した場合に乾燥促進剤としての機能を阻害しない限りにおいて、遷移金属錯体以外の化合物を含むことができる。具体的に添加される化合物としては、配位子及び金属塩の希釈剤などを挙げることができる。 例えば希釈剤としては、アルコール、グリコール、多価アルコール、それらのエステルやエーテルなどを挙げることができる。 なお、本発明の乾燥促進剤は、乾燥時間を調整するための乾燥抑制剤(酸化防止剤)を含むこともできる。《配位子及び金属塩を含む乾燥促進剤》 本発明の乾燥促進剤の1つの実施態様として、配位子及び遷移金属を含む乾燥促進剤を挙げることができる。本発明の乾燥促進剤は、配位子と金属塩とが一液(一剤)として提供される一液性乾燥促進剤でもよい。また、配位子を含む液(以下、配位子含有液と称することがある)と、遷移金属塩を含む液(以下、遷移金属含有液と称することがある)とが、別の二液(二剤)として提供される二液性乾燥促進剤でもよい。すなわち、配位子組成物として、個別に提供された配位子と、遷移金属塩とを、第一液と第二液とに個別に含ませる態様でもよい。 二液性乾燥促進剤の場合、配位子含有液をインキ、又は塗料に添加し、その後に遷移金属含有液をインキ、又は塗料に添加してもよい。また、遷移金属含有液をインキ、又は塗料に添加し、その後に配位子含有液をインキ、又は塗料に添加してもよい。 本発明の乾燥促進剤においては、前記配位子を1種で用いてもよいが、2つ以上組み合わせて用いてもよい。また、前記遷移金属塩を1種で用いてもよいが、2種以上組み合わせて用いてもよい。 乾燥促進剤における配位子と遷移金属塩とのモル比率は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、遷移金属塩1分子に対し、配位子中の窒素原子が3個〜4個配位することが好ましい。従って、遷移金属塩1モルに対する配位子のモル比率の範囲は、前記「遷移金属錯体」に記載の範囲が好ましい。 本発明の配位子及び金属塩を含む乾燥促進剤又は遷移金属錯体乾燥促進剤のインキ中の添加量は、乾燥促進剤を用いない場合と比較して乾燥時間が短縮される限りにおいて、限定されるものではない。すなわち、添加するインクのタイプ、及びワニス組成等に従って、適宜調整することが可能であるが、例えば乾燥促進剤(ドライヤー)として、0.001重量%〜5重量%で用いることができ、好ましくは0.005重量%〜2重量%であり、より好ましくは0.01重量%〜1重量%である。また、環境への付加の軽減、及び安全性の観点から、錯体の配合量を必要な乾燥時間の範囲で可能な限り減らすことが望ましい。《配位子及び遷移金属塩を含む配位子組成物》 本発明の乾燥促進剤は、配位子及び遷移金属塩を含む配位子組成物を含んでもよい。配位子組成物は、前記配位子及び前記遷移金属塩を含む組成物であり、酸化重合乾燥型印刷インキ、塗料の乾燥促進に用いることができる。配位子組成物は、前記配位子を1つ又は2つ以上含むことができる。更に、配位子組成物は、前記遷移金属塩を1つ、又は2つ以上含むことができる。 配位子組成物は、通常、配位子と遷移金属塩とが混合され提供されるものである。しかしながら、本発明の配位子組成物には、配位子と遷移金属塩とを個別に含む組成物が含まれる。例えば、本発明の配位子組成物は、配位子を含む第1液と遷移金属塩を含む第2液とを含む試薬として提供され、使用者が混合する態様を含む。〔酸化重合性組成物〕 前記遷移金属錯体又は乾燥促進剤を含む酸化重合性組成物は、酸化重合乾燥を利用するものである限りにおいて限定されるものではなく、従来の酸化重合型のインキや塗料中のドライヤーを置き換えるだけでよい。本発明の酸化重合性組成物は、樹脂又は乾性油を含むものである。 本発明の酸化重合性組成物に含まれる樹脂としては、従来、酸化重合性組成物に含まれていた樹脂を変更せずに使う事ができる。例えばロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、不飽和ポリエステル、又はアルキド樹脂などを挙げることができる。又、酸化重合しない樹脂が併用されている場合も、従来どおりの樹脂組成で使用できる。 従来の組成に乾性油が含まれる場合は、特に組成を変更する事なく使用することができる。例えば、乾性油としてアカリットム脂、麻実油、あまに油、イサノ油、うるし核油、えごま油、オイチシカ油、かや油、くるみ油、けし油、ざくろ種子油、サフラワー油、しなぎり油、大豆油、たばこ種子油、とうはぜ核油、日本きり油、ゴム種子油、月見草種子油、ひまわり種子油、ぶどう種子油、ほうせんか種子油、みつば種子油、又はルンバナット油を挙げることができる。又、半乾性油や不乾性油を併用していた場合も、組成を変更する事なく使用する事ができる。(着色剤) 本発明の酸化重合組成物に含むことのできる着色剤としては、従来使用されていた着色剤を限定することなく用いることができる。着色剤としては顔料又は染料を挙げることができる。 顔料としては有機顔料及び/又は無機顔料を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、イソインドリン系、キノフタロン系、イソインドリン系の顔料を挙げることでき、より具体的にはジスアゾイエロー、又はフタロシアニンブルーを挙げることができる。無機顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、弁柄、アルミニウム、又はパールを挙げることができる。染料としては、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、メチン系染料、縮合多環系染料、又は反応染料を挙げることができる。(溶剤) 従来の組成に溶剤が使用されていた場合は、特に制限なく従来の組成のまま使用することができる。(補助剤) 従来の組成が補助剤を含んでいた場合、特に制限なく従来の組成のまま使用することができる。補助剤としては、例えば、ワックス、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング調整剤、チキソ性調整剤、界面活性剤などを挙げることができる。また、酸素発生剤である過酸化物を併用していた場合も、特に制限なく従来の組成のまま使用することができる。(生産方法) 本発明の酸化重合組成物の生産方法は、特に変更無く従来の方法と同様でよい。《使用方法》 本発明の酸化重合組成物は、従来の印刷や塗布の方法を特に変更せずに使用する事ができる。また、従来から乾燥促進剤を使用直前に混合する場合もあったが、本発明の乾燥促進剤も同様の使用方法を行うことができる。《作用》 酸化重合は、不飽和結合のまわりの炭素からの水素引き抜きで始まり、過酸化状態を経由するラジカル反応であるとされる。これらのラジカルは不安定ですぐに消滅してしまうが、これを安定化させ、実用的な酸化重合をさせるものがドライヤーである。ドライヤーとして使用される脂肪酸金属塩の金属種による効果の違いは、その電子軌道の違いによって生じるとされている。 アミン添加による乾燥性向上は電子供与性であるN原子が金属原子に配位する事により生じ、その配位したN原子がπ電子共役系の中にある場合は、更に優れた効果を発揮する事が明らかになった(N原子が金属原子に配位できない構造の配位子では効果が得られない)。すなわち、本発明における、一般式(1)及び一般式(2)の構造を有する配位子は、従来の配位子と比較して、金属原子との配位が優れており、そのためドライヤーに用いた場合に、乾燥時間を改善することが可能である。 また、効果が高く、更に健康有害性が低い配位子と金属を選択する事により、仮に健康有害性がさほど高くなくとも、添加量を可能な限り減らして将来にわたっても健康や環境へのリスクを最小にするという市場の要請に応える事ができる。 以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。 以下の実施例において、乾燥試験法(ガラス板による方法)及び乾燥試験法(C型乾燥試験機による方法)は以下の方法で実施した。《ガラス板による方法》 ガラス板による乾燥性の試験は、JIS K5701−1 4.4.4に準じて、以下のように行った。 試料(インク)の膜厚が75μmになるようにガラス板に塗布した。一定時間ごとに、転写用の紙を巻いたロールを試料面に押し付け試料が移る状態を調べた。同様の操作を一定時間ごとに繰り返し、転写用の紙にインキが移らなくなるまで続けた。インキが付着しなくなった時間を乾燥時間とした。なお、温度35℃、及び湿度35%で行った。《C型乾燥試験機による方法》 C型乾燥試験機による乾燥性の試験は、JIS K5701−1 4.4.3に従って、以下のように行った。 展色試料をJIS K5701−1 5.2.1b)に記載の簡易展色機を用いて、JIS K5701−1 5.3.2の「簡易展色機及び簡易展色器具による展色」に従って作製した。インキピペットを用いて0.05ccのインキを、RIテスターで紙(三菱特アート)に展色した。4分割ロール上でインキを均一にのばした後、更にロール上において30秒間湿し水で乳化後に展色して展色試料を作製した。 作製した試料は、直ちに当て紙用紙を展色試料の展色面に重ね合わせ、当て紙が外側になるように回転ドラムに巻きつけた。当て紙用紙に押し圧歯車の歯形がほとんど移らなくなった時間を乾燥時間とした。《ワニスの作成》 ワニスは、表1に記載のV1の組成のものを用いた。ロジン変性フェノール樹脂(軟化点173℃、分子量4万、トレランス5.0g/g(AF5sol/樹脂))44重量部、アマニ油15重量部、キリ油10重量部、石油系溶剤(AF5sol:JX日鉱日石製)31重量部、キレート(ALCH:川研ファインケミカル社製)1.2重量部、酸化防止剤(BHT)0.05重量部を混合し、ワニスとした。ワニス5gに、0solH(JX日鉱日石製)をワニスが白濁するまで添加し、ワニストレランスを測定した(表1)。《ベースインキ作成》 乾燥試験用のインキは、表2に記載の組成で調製した。前記ワニス68重量部、アルキド樹脂(SYNKYD50:森村ファインケミカル製)3重量部、カーボンブラック(M80A11:三菱化学製)20重量部、ワックスコンパウンド(MC850:森村ファインケミカル製)4重量部、及び石油系溶剤(AF5sol:JX日鉱日石製)5重量部を混合して、インキとした(表2)。《実施例1》 本実施例では、配位子としてN,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン(以下、TPENと称する)を用いた乾燥促進剤の効果を検討した。 TPEN及び酢酸鉄(金属塩)をモル比1:1になるように計り取った。その混合物をエタノールに10重量%となるように溶解し、錯体のエタノール溶液を作成した。溶けにくい場合は、40〜60℃に加温した。 前記インキ(ベース墨インキ)に、乾燥促進剤として、前記のTPEN及び酢酸鉄のエタノール溶液を添加し、ガラス板による乾燥性の試験、及びC型乾燥機による乾燥性の試験を行った。結果を表3に示す。なお、表3に記載の「乾燥促進剤濃度」は、エタノールを含まない、TPEN及び酢酸鉄の混合物の重量%を示した。《実施例2》 本実施例では、TPEN及び酢酸鉄から得られた混合物の量を検討した。混合物の添加量0.1重量%を0.05重量%としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《実施例3》 本実施例では、TPEN及び酢酸鉄から得られた混合物の量を検討した。混合物の添加量0.1重量%を0.03重量%としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《実施例4》 本実施例では、TPEN及び酢酸鉄から得られた混合物の量を検討した。混合物の添加量0.1重量%を0.01重量%としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《実施例5》 本実施例では、配位子としてトリス(2−ピリジルメチル)アミン(以下、TPMAと称する)を用いた乾燥促進剤の効果を検討した。TPENに代えてTPMAを用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《実施例6》 本実施例では、TPMA及び酢酸鉄から得られた混合物の量を検討した。TPENに代えてTPMAを用いたことを除いては、実施例2の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《実施例7》 本実施例では、TPMA及び酢酸鉄から得られた混合物の量を検討した。TPENに代えてTPMAを用いたことを除いては、実施例4の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《実施例8》 本実施例では、配位子としてビス(2−ピリジルメチル)アミン(以下、BPMAと称する)を用いた乾燥促進剤の効果を検討した。TPENに代えてTPMAを用いたこと、及び混合物の添加量0.1重量%を0.5重量%としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《実施例9》 本実施例では、配位子として2,4,6−トリ(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジン(以下、TPTと称する)を用いた乾燥促進剤の効果を検討した。TPENに代えてTPTを用いたこと、及び混合物の添加量0.1重量%を0.5重量%としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《実施例10》 本実施例では、配位子として2,2’−ビピリジミル(以下、2ビピリジミルと称する)を用いた乾燥促進剤の効果を検討した。TPENに代えて2ビピリジミルを用いたこと、及び混合物の添加量0.1重量%を0.5重量%としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《参考例1》 本実施例では、配位子として式(13):で表されるα,α’,α”−トリピリジル(以下、αトリピリジルと称する)を用いた乾燥促進剤の効果を検討した。TPENに代えてαトリピリジルを用いたこと、及び混合物の添加量0.1重量%を0.5重量%としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。 なお、α,α’,α”−トリピリジルは、国連GHS分類のどくろマークを有するものであり、従って、本明細書では、参考例として記載している。《参考例2》 本参考例では、配位子として式(14):で表される1,10−フェナントロリン(以下、FHENと称する)を用いた乾燥促進剤の効果を検討した。TPENに代えてFHENを用いたこと、及び混合物の添加量0.1重量%を0.5重量%としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。 なお、1,10−フェナントロリンは、国連GHS分類のどくろマークを有するものであり、従って、本明細書では、参考例として記載している。《参考例3》 本実施例では、配位子として式(15):で表される4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(以下、DFと称する)を用いた乾燥促進剤の効果を検討した。TPENに代えてDFを用いたこと、及び混合物の添加量0.1重量%を0.5重量%としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《参考例4》 本実施例では、配位子として式(16):で表される2,2’−ビピリジル(以下、2ビピリジルと称する)を用いた乾燥促進剤の効果を検討した。TPENに代えて2ビピリジルを用いたこと、及び混合物の添加量0.1重量%を0.5重量%としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。 なお、2,2’−ビピリジミルは、国連GHS分類のどくろマークを有するものであり、従って、本明細書では、参考例として記載している。《実施例11》 本実施例では、配位子として5,5’−ジメチル−2,2’−ジピリジル(以下、DPと称する)を用いた乾燥促進剤の効果を検討した。TPENに代えてDPを用いたこと、及び混合物の添加量0.1重量%を0.5重量%としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《比較例1》 本比較例では、配位子として式(17):で表される4,4’−ビピリジル(以下、4ビピリジルと称する)を用いた乾燥促進剤の効果を検討した。TPENに代えて4ビピリジルを用いたこと、及び混合物の添加量0.1重量%を0.5重量%としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。 なお、4,4’−ビピリジルは、国連GHS分類のどくろマークを有するものである。《参考例5》 本実施例では、配位子として式(18):で表される2,2’−ビピペリジン(以下、2ビピペリジンと称する)を用いた乾燥促進剤の効果を検討した。TPENに代えて2ビピペリジンを用いたこと、及び混合物の添加量0.1重量%を0.5重量%としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《比較例2》 本比較例では、配位子として式(19):で表される4,4’−ビピペリジン(以下、4ビピペリジンと称する)を用いた乾燥促進剤の効果を検討した。TPENに代えて4ビピペリジンを用いたこと、及び混合物の添加量0.1重量%を0.5重量%としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《実施例12》 本実施例では、配位子としてTPENを用い、金属塩として塩化鉄を用いた乾燥促進剤の効果を検討した。酢酸鉄に代えて塩化鉄を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《実施例13》 本実施例では、金属塩としてオクチル酸鉄を用いた乾燥促進剤の効果を検討した。酢酸鉄に代えてオクチル酸鉄を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《参考例6》 本実施例では、配位子として式(20):で表されるトリエチレンテトラミン(以下、TATと称する)を用いた乾燥促進剤の効果を検討した。TPENに代えてTATを用いたこと、及び混合物の添加量0.1重量%を0.7重量%としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。 なお、トリエチレンテトラミンは、国連GHS分類のどくろマークを有するものである。《実施例14》 本実施例では、DPと酢酸鉄とのモル比を2:1としたことを除いては、実施例11の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《実施例15》 本実施例では、DPと酢酸鉄とのモル比を3:1としたことを除いては、実施例11の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《実施例16》 本実施例では、TPENと酢酸鉄とのモル比を1:2としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《実施例17》 本実施例では、TPENと酢酸鉄とのモル比を1:3としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《実施例18》 本実施例では、TPENと酢酸鉄とのモル比を1:5としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《比較例3》 本実施例では、遷移金属を加えない場合のTPENを用いた乾燥促進剤の効果を検討した。酢酸鉄を添加しないことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《比較例4》 本実施例では、遷移金属を加えない場合のDPを用いた乾燥促進剤の効果を検討した。酢酸鉄を添加しないことを除いては、実施例11の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《比較例5》 本比較例では、配位子を用いない酢酸鉄を乾燥促進剤として用いた場合の効果を検討した。配位子と遷移金属鉄との混合物の代わりに、酢酸鉄0.5重量%を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《比較例6》 本比較例では、従来乾燥促進剤として用いられていたナフテン酸コバルトの乾燥促進剤としての効果を検討した。配位子と遷移金属鉄との混合物の代わりに、ナフテン酸コバルト0.2重量%を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《比較例7》 ナフテン酸コバルトの添加量を0.2重量%に代えて、0.1重量%としたことを除いては、比較例6の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《比較例8》 本比較例では、従来乾燥促進剤として用いられていたナフテン酸マンガンの乾燥促進剤としての効果を検討した。配位子と遷移金属鉄との混合物の代わりに、ナフテン酸マンガン0.6重量%を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《比較例9》 ナフテン酸コバルトの添加量を0.6重量%に代えて、0.3重量%としたことを除いては、比較例8の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《実施例19》 本実施例では、ワニスの乾性油として、キリ油を用いない場合の検討を行った。アマニ油15重量%及びキリ油10重量%に代えて、アマニ油25重量%のワニス(表1)を用いたことを除いては実施例1の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《比較例10》 本比較例では、実施例15のワニスを用い、配位子を用いない酢酸鉄を乾燥促進剤として用いた場合の効果を検討した。配位子と遷移金属鉄との混合物の代わりに、酢酸鉄0.5重量%を用いたことを除いては、実施例19の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《比較例11》 本比較例では、実施例15のワニスを用い、従来乾燥促進剤として用いられていたナフテン酸コバルトの乾燥促進剤としての効果を検討した。配位子と遷移金属鉄との混合物の代わりに、ナフテン酸コバルト0.5重量%を用いたことを除いては、実施例19の操作を繰り返した。結果を表3に示す。《比較例12》 本比較例では、実施例15のワニスを用い、従来乾燥促進剤として用いられていたナフテン酸マンガンの乾燥促進剤としての効果を検討した。配位子と遷移金属鉄との混合物の代わりに、ナフテン酸マンガン0.6重量%を用いたことを除いては、実施例19の操作を繰り返した。結果を表3に示す。TPEN(A):N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン、TPMA(B):トリス(2−ピリジルメチル)アミンBPMA(C):ビス(2−ピリジルメチル)アミンTPT(D):2,4,6−トリ(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジンDP(E):5,5’−ジメチル−2,2’−ジピリジル2ビピリジミル(F):2,2’−ビピリジミルαトリピリジル(G):α,α’,α”−トリピリジルFHEN(H):1,10−フェナントロリンDF(I):4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン2ビピリジル(J):2,2’−ビピリジル4ビピリジル(K):4,4’−ビピリジル2ビピペリジン(L):2,2’−ビピペリジン4ビピペリジン(M):4,4’−ビピペリジンTAT(N):トリエチレンテトラミン 実施例1〜18の乾燥促進剤を用いたインキは、比較例3の酢酸鉄のみを用いたインキと比較して、ガラス板による乾燥性の試験、及びC型乾燥機による乾燥性の試験のいずれの試験においても、乾燥時間が短くなった。 また従来のドライヤーである、比較例6〜9のナフテン酸コバルト、及びナフテン酸マンガンと比較して、遜色ない乾燥時間であった。 更に、湿し水を使うオフセット印刷では、印刷時の乳化による乾燥遅延トラブルの目安として、C型乾燥機による乳化後の紙上乾燥時間がガラス板乾燥時間と比べて極端に遅くならない事が重要である。この観点から、本発明の乾燥促進剤の多くは、従来のナフテン酸コバルト、及びナフテン酸マンガンよりも優れていると考えられる。 また、本発明の乾燥促進剤は、キリ油を含まないワニスを用いた場合(実施例19)にも、ナフテン酸コバルト、及びナフテン酸マンガンと比較して優れた乾燥時間を示した。一般に、乾性油としてキリ油を含まない場合、乾燥時間が長くなる傾向があるが、この点からも本発明の乾燥促進剤は、顕著な効果を有している。 なお、本発明の促進剤を添加した後の保存安定性に問題ない事と、湿し水を使用するオフセット印刷を行い、地汚れや過剰乳化の問題を越さない事を確認している。 本発明の乾燥促進剤を最小限使用する事により、健康や環境へのリスクを可能な限り減らすという市場の要請に応える事ができる。 なお、表4に実施例、比較例、及び参考例に使用した化合物(配位子)と、健康・環境有害性に関する国連GHS分類マーク(物理化学的危険性マークを除く)との関係を示す。本発明において用いる配位子は、感嘆符マークかマーク無の配位子を選択している。また、環境への付加の軽減、及び安全性の観点から、錯体の配合量を必要な乾燥時間の範囲で可能な限り減らすことが望ましい。 本発明の遷移金属錯体及び乾燥促進剤は、従来の脂肪酸金属塩のドライヤーを使用していた酸化重合性組成物、例えばインキや塗料などに、特に制限なく置き換えて使用する事ができる。 鉄、セリウム、及びジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1つの遷移金属若しくはその塩;及び 一般式(1):で表される配位子(但し、2,2’−ピピリジルを除く)、又は一般式(2):で表される配位子を含む配位子組成物又は遷移金属錯体であって、前記一般式(1)及び一般式(2)中、R1は、(i)単結合、(ii)式(3):(式(3)中、Xは単結合、又は炭素数1〜4のアルキレン基であり、R5は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルキル基若しくはメトキシ基で場合により置換されていることのある1つ以上のピリジル基を含む基である)で表される基、又は(iii)式(4):(式(4)中、R6は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルキル基若しくはメトキシ基で場合により置換されていることのある1つ以上のピリジル基を含む基である)で表される基であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基若しくはアリール基であり;R4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基又はアリール基である;前記配位子組成物又は前記金属錯体を含む乾燥促進剤。 前記1つ以上のピリジル基を含む基がピリジル基又は式(5):で表される基である、請求項1に記載の乾燥促進剤。 前記配位子が、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン、トリス(2−ピリジルメチル)アミン、ビス(2−ピリジルメチル)アミン、2,4,6−トリ(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジン、5,5’−ジメチル−2,2’−ジピリジル、及び2,2’−ビピリジミルからなる群から選択される配位子である、請求項1又は2に記載の乾燥促進剤。 樹脂若しくは乾性油を含むワニス、及び請求項1〜3のいずれか一項に記載の乾燥促進剤を含む酸化重合性組成物。 【課題】本発明の目的は、コバルト又はマンガンなどの健康有害性の高い金属を使用せず、且つ実用的な乾燥促進剤、及び酸化重合性組成物を提供することである。【解決手段】前記課題は、本発明の鉄、セリウム、及びジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1つの遷移金属若しくはその塩、及び一般式(1)で表される配位子(但し、2,2’−ピピリジルを除く)、又は一般式(2)で表される配位子を含む配位子組成物、又は遷移金属錯体を含む乾燥促進剤によって解決することができる。【選択図】なし