タイトル: | 公開特許公報(A)_高純度オメガ3系脂肪酸エチルエステルの生産方法 |
出願番号: | 2014058816 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C11C 1/06,C11B 1/02,C11C 1/10,C11C 3/04,C11C 3/10,C11B 3/12,C11B 3/10,C11B 3/02,C11B 5/00,C12P 7/64,A61K 31/232,A61P 9/10,A61P 3/06 |
清水 芳雄 瓜生 圭介 平 哲郎 藤井 淳 JP 2015063653 公開特許公報(A) 20150409 2014058816 20140320 高純度オメガ3系脂肪酸エチルエステルの生産方法 備前化成株式会社 391007356 山本 秀策 100078282 森下 夏樹 100113413 清水 芳雄 瓜生 圭介 平 哲郎 藤井 淳 JP 2013179769 20130830 C11C 1/06 20060101AFI20150313BHJP C11B 1/02 20060101ALI20150313BHJP C11C 1/10 20060101ALI20150313BHJP C11C 3/04 20060101ALI20150313BHJP C11C 3/10 20060101ALI20150313BHJP C11B 3/12 20060101ALI20150313BHJP C11B 3/10 20060101ALI20150313BHJP C11B 3/02 20060101ALI20150313BHJP C11B 5/00 20060101ALI20150313BHJP C12P 7/64 20060101ALI20150313BHJP A61K 31/232 20060101ALN20150313BHJP A61P 9/10 20060101ALN20150313BHJP A61P 3/06 20060101ALN20150313BHJP JPC11C1/06C11B1/02C11C1/10C11C3/04C11C3/10C11B3/12C11B3/10C11B3/02C11B5/00C12P7/64A61K31/232A61P9/10 101A61P3/06 22 OL 26 4B064 4C206 4H059 4B064AD88 4B064AD90 4B064CE01 4B064DA01 4B064DA10 4C206AA04 4C206DB09 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA20 4C206ZA45 4C206ZC33 4H059AA03 4H059AA13 4H059BC06 4H059BC48 4H059CA02 4H059CA07 4H059CA20 4H059CA24 4H059CA36 4H059CA38 4H059CA48 4H059EA23 本発明はエイコサペンタエン酸(以後、「EPA」という)および/またはドコサヘキサエン酸(以後、「DHA」という)などのオメガ3系脂肪酸(以後、「ω3系脂肪酸」という)を含む原料油脂からEPAやDHAを、従来技術よりも高収率に取得する工業的生産方法に関する。 ω3系脂肪酸であるEPAやDHAは循環器系疾患、神経伝達系疾患を始めとする様々な生理作用を持ち、医薬品、健康食品、食品素材、および、飼料などとして利用されている。例えば、90wt%以上の高純度EPAエチルエステルは動脈硬化や高脂血症の治療薬として用いられ、また、EPAやDHAを含む飲料は特定保健用食品としても認可されている。EPAやDHAのグリセリドやエチルエステルは世界中で健康補助食品として利用されている。 EPAやDHAなどのω3系脂肪酸を含む魚油、海藻類油脂、単細胞藻類油脂などの水産油脂はガム質やリン脂質、遊離脂肪酸の他、各種の原料由来不純物を含むが、大半は脂肪酸のグリセリドであり、EPAやDHAも大半はグリセリドの形で存在している。EPAやDHAの多くはグリセリドの2位に結合している。これらの水産油脂は公知の方法によって脱ガム・脱酸(非特許文献1)される。 グリセリド体のEPAやDHAを濃縮精製するためには、一般に低温溶媒分別結晶法やウィンタリング法などが利用されるが濃縮効率が低いため、該グリセリドの1位、3位に結合しているEPAやDHA以外の脂肪酸を特異的に加水分解するリパーゼを用いてグリセリドの形態でEPAやDHAを効率よく濃縮する技術が産業的に多用されている(特許文献1)。さらに、生産性を高めるために反応系への水酸化カルシウム、塩化マグネシウムなどの反応添加剤添加(特許文献2)、低級アルコールを含む極性溶媒添加(特許文献3)などが提案されている。 更に高純度のEPAやDHAを得るためには、まず、グリセリドに結合した脂肪酸を例えばエチルエステル化し、モノマーとすることが行われている。エチルエステル化は酵素法のほか、酸触媒法、アルカリ触媒法などが公知である(特許文献4、非特許文献2)。 エチルエステル化されたω3系脂肪酸を含む油脂中のEPAやDHAなどの高度不飽和脂肪酸は、尿素付加法(特許文献5、6)、硝酸銀錯体法(特許文献7、8)、真空薄膜蒸留法を含む真空精密蒸留法(特許文献9)、液体クロマトグラフィー(以後、HPLCという)や疑似移動相クロマト法などのクロマト法(特許文献9)などの1種類以上の組み合わせ法により比較的高純度に精製される。 このようにして得られたEPAやDHAなどの高純度ω3系脂肪酸エチルエステルは、製造中に混入した異物や過酸化物、着色物質、臭い成分などの不純物成分を除くため、活性炭、活性白土、酸性白土、シリカゲル、アルミナなどが利用される(特許文献10〜12)。 このようにして生産されたEPAやDHAなどの高純度ω3系脂肪酸エチルエステルは、健康食品、医薬品として世界で生産利用され、現在も市場拡大を続けている。 しかしながら、従来技術により水産油脂エチルエステルの混合物からEPAやDHAなどのω3系脂肪酸エチルエステルをそれぞれ高純度品として、かつ、高収率に取得する場合、例えば、70wt%以上のEPAエチルエステルを調製する場合はEPAエチルエステルと類似した物理化学的性質を有するall−cis−6,9,12,15−オクタデカテトラエン酸(18:4ω3以後、「SDA」という)エチルエステルやDHAエチルエステルなどの夾雑物の除去が必要であるものの、これらの除去は一般に困難であり、その一方で、これら夾雑物の低減化を目指した場合には最終製品の収率の低下を招く、と言う技術的問題がある。 また、70wt%以上のDHAエチルエステルを調製する場合には、SDAエチルエステルやEPAエチルエステルの除去が困難となり、同様に最終製品の収率の低下を招くと言う技術的問題がある。 EPAやDHAなどのω3系脂肪酸エチルエステルをそれぞれ高純度品として、かつ、高収率に取得するためには、SDAを含む夾雑成分を効率的に除去する技術の提供が必要とされる。特開2002−69475号公報特開2013−5589号公報特開2013−121366号公報特開2006−288228号公報特開2007−89522号公報特表2009−504588号公報特開2010−64974号公報特開平7−242895号公報特開平11−209786号公報特開平6−72959号公報特表2003−516466号公報特開2003−313578号公報安田耕作他、油脂製品の知識、幸書房(東京)、1977年、103-104頁日本油化学会編、第4版油脂化学便覧、丸善(東京)、2001年、454-456頁 EPAやDHAなどのω3系脂肪酸エチルエステルをそれぞれ高純度品として、かつ、高収率に取得する方法を提供することを、本発明の課題とする。 本発明者らはエチルエステル化されたω3系脂肪酸を含む油脂中のEPAやDHAなどの高度不飽和脂肪酸を高純度に精製する場合(例えば、尿素付加法、硝酸銀錯体法、真空精密蒸留法、クロマト法などの1種類以上の組み合わせ法により高純度に精製する場合)、予め脂質分解酵素によって油脂を処理し、グリセリド画分(グリセリン脂肪酸エステルを多く含む画分)と遊離脂肪酸画分(遊離脂肪酸画分は、エチルエステル化した画分であっても、エチルエステル化していない画分であってもよい)に分け、必要に応じてそれぞれの画分をエチルエステル化し、さらに精製して目的物質(目的とする脂肪酸エチルエステルまたはグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分がエチルエステル化した物質)に対するその他の脂肪酸エステルまたはグリセリン脂肪酸エステルの割合が小さい画分を調製することにより、従来法よりも高い回収率で目的物質を得ることが可能であることを見出し、本発明に至ったものである。例えば、本発明では、脂質分解酵素によって油脂を処理し、必要に応じてエチルエステル化を行い、エチルエステル化グリセリド画分(主にグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分がエチルエステル化されている)とエチルエステル化遊離脂肪酸画分に分け、エチルエステル化したグリセリド画分を(1)DHAをEPAよりも多く含む画分と(2)EPAをDHAよりも多く含む画分に分け、エチルエステル化した遊離脂肪酸画分を(3)DHAをEPAよりも多く含む画分と(4)EPAをDHAよりも多く含む画分に分け、(1)と(3)を合わせた混合物、(2)と(4)を合わせた混合物をそれぞれ調製し、これら混合物をさらに精製することによって、高純度のEPA精製物、および、高純度のDHA精製物を得ることができる。例えば、本発明では、脂肪酸をエチルエステル化する条件下(主に遊離脂肪酸がエチルエステル化される条件下)で脂質分解酵素によって予め油脂を処理し、グリセリド画分とエチルエステル化遊離脂肪酸画分に分け、グリセリド画分をエチルエステル化し、エチルエステル化したグリセリド画分(主にグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分がエチルエステル化されている)を(1)DHAをEPAよりも多く含む画分と(2)EPAをDHAよりも多く含む画分に分け、エチルエステル化した遊離脂肪酸画分を(3)DHAをEPAよりも多く含む画分と(4)EPAをDHAよりも多く含む画分に分け、(1)と(3)を合わせた混合物、(2)と(4)を合わせた混合物をそれぞれ調製し、これら混合物をさらに精製することによって、高純度のEPA精製物、および、高純度のDHA精製物を得ることができる。例えば、本発明では、予め脂質分解酵素によって油脂を処理し、グリセリド画分と遊離脂肪酸画分に分け、それぞれの画分をエチルエステル化し、エチルエステル化したグリセリド画分(主にグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分がエチルエステル化されている)を(1)DHAをEPAよりも多く含む画分と(2)EPAをDHAよりも多く含む画分に分け、エチルエステル化した遊離脂肪酸画分を(3)DHAをEPAよりも多く含む画分と(4)EPAをDHAよりも多く含む画分に分け、(1)と(3)を合わせた混合物、(2)と(4)を合わせた混合物をそれぞれ調製し、これら混合物をさらに精製することによって、高純度のEPA精製物、および、高純度のDHA精製物を得ることができる。 例えば、本発明において、尿素付加法、硝酸銀錯体法、真空精密蒸留法、クロマト法などの1種類以上の組み合わせ法により更に高純度に精製するより前の工程において、酵素処理によりEPA純度又はDHA純度を高め、SDAを含むその他の脂肪酸の割合を少なくした水産油脂由来グリセリド画分または遊離脂肪酸画分を出発原料とすることによって、製品回収率を高めることができる。例えば、本発明において、高純度EPA取得のために、EPAに対するDHAやSDAの割合を小さくし、また、高純度DHA精製のためにはDHAに対するEPAやSDAの割合を小さくすることにより目的成分の回収率を高めることが本発明の特徴の一つである。 本発明は例えば以下を提供する。(項目1) エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸を含む原料油脂からエイコサペンタエン酸エチルエステルおよびドコサヘキサエン酸エチルエステルを調製する方法であって、以下の工程:(a)原料油脂を、脂質分解酵素によって処理する工程;(b)工程(a)の処理物を分画する工程;(c)必要に応じて(例えば、工程(b)で得られた画分がエチルエステル化されていない画分の場合)工程(b)で得られた画分を、エチルエステル化する工程;(d)エチルエステル化したグリセリド画分を精製して、 (1)ドコサヘキサエン酸エチルエステルを精製前のエチルエステル化したグリセリド画分より多く含み、かつ、エイコサペンタエン酸エチルエステルを精製前のエチルエステル化したグリセリド画分より少なく含む画分と、 (2)エイコサペンタエン酸エチルエステルを精製前のエチルエステル化したグリセリド画分より多く含み、かつ、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを精製前のエチルエステル化したグリセリド画分より少なく含む画分に分画する工程;(e)エチルエステル化した遊離脂肪酸画分を精製して、 (3)ドコサヘキサエン酸エチルエステルを精製前のエチルエステル化した遊離脂肪酸画分より多く含み、かつ、エイコサペンタエン酸エチルエステルを精製前のエチルエステル化した遊離脂肪酸画分より少なく含む画分と、 (4)エイコサペンタエン酸エチルエステルを精製前のエチルエステル化した遊離脂肪酸画分より多く含み、かつ、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを精製前のエチルエステル化した遊離脂肪酸画分より少なく含む画分に分画する工程;(f)工程(d)の(1)の画分と工程(e)の(3)の画分を混合する工程;(g)工程(d)の(2)の画分と工程(e)の(4)の画分を混合する工程;(h)工程(f)の混合物をさらに精製して、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを含む精製物を得る工程;(i)工程(g)の混合物をさらに精製して、エイコサペンタエン酸エチルエステルを含む精製物を得る工程;を包含する方法。(項目2) エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸を含む原料油脂からエイコサペンタエン酸エチルエステルおよびドコサヘキサエン酸エチルエステルを調製する方法であって、以下の工程:(a)原料油脂を、脂肪酸をエチルエステル化する条件下で脂質分解酵素によって処理する工程;(b)工程(a)の処理物を、グリセリド画分とエチルエステル化した遊離脂肪酸画分に分画する工程;(c)工程(b)で得られたグリセリド画分を、エチルエステル化する工程;(d)工程(c)で得られたエチルエステル化したグリセリド画分を精製して、 (1)ドコサヘキサエン酸エチルエステルを工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物より多く含み、かつ、エイコサペンタエン酸エチルエステルを工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物より少なく含む画分と、 (2)エイコサペンタエン酸エチルエステルを工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物より多く含み、かつ、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物より少なく含む画分に分画する工程;(e)工程(b)で得られたエチルエステル化した遊離脂肪酸画分を精製して、 (3)ドコサヘキサエン酸エチルエステルを工程(b)のエチルエステル化した遊離脂肪酸画分より多く含み、かつ、エイコサペンタエン酸エチルエステルを工程(b)のエチルエステル化した遊離脂肪酸画分より少なく含む画分と、 (4)エイコサペンタエン酸エチルエステルを工程(b)のエチルエステル化した遊離脂肪酸画分より多く含み、かつ、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを工程(b)のエチルエステル化した遊離脂肪酸画分より少なく含む画分に分画する工程;(f)工程(d)の(1)の画分と工程(e)の(3)の画分を混合する工程;(g)工程(d)の(2)の画分と工程(e)の(4)の画分を混合する工程;(h)工程(f)の混合物をさらに精製して、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを含む精製物を得る工程;(i)工程(g)の混合物をさらに精製して、エイコサペンタエン酸エチルエステルを含む精製物を得る工程;を包含する方法。(項目3) エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸を含む原料油脂からエイコサペンタエン酸エチルエステルおよびドコサヘキサエン酸エチルエステルを調製する方法であって、以下の工程:(a)原料油脂を、脂質分解酵素によって処理する工程;(b)工程(a)の処理物を、グリセリド画分と遊離脂肪酸画分に分画する工程;(c)工程(b)で得られたグリセリド画分および遊離脂肪酸画分のそれぞれを、エチルエステル化する工程;(d)工程(c)で得られたエチルエステル化したグリセリド画分を精製して、 (1)ドコサヘキサエン酸エチルエステルを工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物より多く含み、かつ、エイコサペンタエン酸エチルエステルを工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物より少なく含む画分と、 (2)エイコサペンタエン酸エチルエステルを工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物より多く含み、かつ、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物より少なく含む画分に分画する工程;(e)工程(c)で得られたエチルエステル化した遊離脂肪酸画分を精製して、 (3)ドコサヘキサエン酸エチルエステルを工程(c)の遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物より多く含み、かつ、エイコサペンタエン酸エチルエステルを工程(c)の遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物より少なく含む画分と、 (4)エイコサペンタエン酸エチルエステルを工程(c)の遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物より多く含み、かつ、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを工程(c)の遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物より少なく含む画分に分画する工程;(f)工程(d)の(1)の画分と工程(e)の(3)の画分を混合する工程;(g)工程(d)の(2)の画分と工程(e)の(4)の画分を混合する工程;(h)工程(f)の混合物をさらに精製して、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを含む精製物を得る工程;(i)工程(g)の混合物をさらに精製して、エイコサペンタエン酸エチルエステルを含む精製物を得る工程;を包含する方法。(項目4) 項目1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、前記原料油脂が脱酸処理された原料油脂である、方法。(項目5) 項目4に記載の方法であって、ここで、前記脱酸処理された原料油脂の酸価が3以下である、方法。(項目6) 項目1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、前記原料油脂が4wt%以上のエイコサペンタエン酸および4wt%以上のドコサヘキサエン酸を含む、方法。(項目7) 項目1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、前記脂質分解酵素がトリグリセリドの1位及び3位を選択的に加水分解する微生物由来リパーゼである、方法。(項目8) 項目1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、工程(b)の分画が、流下薄膜式分子蒸留法、遠心式分子蒸留法、および、溶出法からなる群から選択される方法によって行われる、方法。(項目9) 項目8に記載の方法であって、ここで、工程(b)の分画が溶出法によって行われ、ここで、ヘキサンによる溶出液がエチルエステル化遊離脂肪酸画分として回収され、そして、ジエチルエーテルによる溶出液がグリセリド画分として回収される、方法。(項目10) 項目1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化が、アルカリ触媒法又は酵素法によって行われる、方法。(項目11) 項目1または3に記載の方法であって、ここで、工程(c)の遊離脂肪酸画分のエチルエステル化が、酸触媒法又は酵素法によって行われる、方法。(項目12) 項目1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、工程(d)の精製が、真空精密蒸留法、尿素附加法、硝酸銀錯体法、固定層クロマトグラフィー法、および、SMBクロマトグラフィー法からなる群から選択される方法によって行われる、方法。(項目13) 項目1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、工程(e)の精製が、真空精密蒸留法、尿素附加法、硝酸銀錯体法、固定層クロマトグラフィー法、および、SMBクロマトグラフィー法からなる群から選択される方法によって行われる、方法。(項目14) 項目1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、工程(h)の精製が、真空精密蒸留法、尿素附加法、硝酸銀錯体法、固定層クロマトグラフィー法、および、SMBクロマトグラフィー法からなる群から選択される方法によって行われる、方法。(項目15) 項目1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、工程(i)の精製が、真空精密蒸留法、尿素附加法、硝酸銀錯体法、固定層クロマトグラフィー法、および、SMBクロマトグラフィー法からなる群から選択される方法によって行われる、方法。(項目16) 項目1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、 工程(d)の画分(1)のドコサヘキサエン酸エチルエステル濃度が15w%以上であり、 工程(d)の画分(2)のエイコサペンタエン酸エチルエステル濃度が15w%以上であり、 工程(e)の画分(3)のドコサヘキサエン酸エチルエステル濃度が15w%以上であり、 工程(e)の画分(4)のエイコサペンタエン酸エチルエステル濃度が15w%以上である、方法。(項目17) 項目1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、 工程(f)の混合物のドコサヘキサエン酸エチルエステル濃度が15w%以上であり、かつ、エイコサペンタエン酸エチルエステル濃度が15w%以下であり、 工程(g)の混合物のエイコサペンタエン酸エチルエステル濃度が15w%以上であり、ドコサヘキサエン酸エチルエステル濃度が15w%以下である、方法。(項目18) 項目1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、 工程(h)の精製物におけるドコサヘキサエン酸エチルエステル濃度が70w%以上であり、 工程(i)の精製物におけるエイコサペンタエン酸エチルエステル濃度が70w%以上である、方法。(項目19) 項目1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、さらに、以下の工程:(j)工程(h)で得られた精製物を吸着剤処理して、不純物を除去する工程;および、(k)工程(i)で得られた精製物を吸着剤処理して、不純物を除去する工程、を包含する方法。(項目20) 項目19に記載の方法であって、前記吸着剤が、酸性白土、活性白土、活性炭、ケイ酸、および、アルミナからなる群から選択され、そして、吸着剤処理後の過酸化物価が3以下である、方法。(項目21) 項目19に記載の方法であって、さらに、以下の工程:(l)工程(j)で得られた物質に抗酸化剤を添加する工程;および、(m)工程(k)で得られた物質に抗酸化剤を添加する工程、を包含する方法。(項目22) 項目21に記載の方法であって、ここで、前記抗酸化剤がトコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、カテキン、および、ローズマリー抽出物からなる群から選択される、方法。 本発明によって、EPAやDHAなどのω3系脂肪酸エチルエステルをそれぞれ高純度品として、かつ、高収率に取得する方法が提供される。本発明により、より安価な高純度EPAやDHAなどのω3系脂肪酸エチルエステルの提供が可能となる。 以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。また、本明細書において「wt%」は、「質量パーセント濃度」と互換可能に使用される。 (用語の定義) 以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。 本明細書において使用される用語「原料油脂」とは、本発明の精製の原料として使用する油脂をいう。原料油脂は、脱酸処理されていても、されていなくてもよい。好ましくは、本発明の原料油脂は、脱酸処理された原料油脂である。 本明細書において使用される用語「グリセリド」とは脂肪酸のトリグリセリド、ジグリセリド、及びモノグリセリドからなる群から選択される成分を含む。本発明において、そうでないと規定しない限り、「グリセリド」は、リン脂質や糖脂質を含まない。 本明細書において使用される用語「脂質分解酵素」とは、脂質を分解する酵素であり、代表的には、リパーゼをいう。好ましくは、本発明の「脂質分解酵素」は、リパーゼであり、より好ましくは、トリグリセリドの1位及び3位を選択的に加水分解するリパーゼである。本発明において使用される「脂質分解酵素」は、天然の酵素であっても、組換え酵素であってもよい。また、本発明において使用される「脂質分解酵素」は、溶液の形態であっても、固定化された形態であってもよい。 本明細書において使用される用語「グリセリド画分」とは、原料油脂を脂質分解酵素処理した後の反応液における混合油脂画分の中で、グリセリドを比較的多く含む画分、例えば、他の画分と比べて、遊離脂肪酸に対するグリセリドの割合が多い画分をいう。グリセリド画分に含まれるグリセリン脂肪酸エステル中の脂肪酸は、エチルエステル化されていても、エチルエステル化されていなくてもよい。 本明細書において使用される用語「遊離脂肪酸画分」とは、原料油脂を脂質分解酵素処理した後の反応液における混合油脂画分の中で、遊離脂肪酸を比較的多く含む画分、例えば、他の画分と比べて、グリセリドに対する遊離脂肪酸の割合が多い画分をいう。遊離脂肪酸画分の遊離脂肪酸は、エチルエステル化されていても、エチルエステル化されていなくてもよい。 本明細書において使用される用語「エチルエステル化」とは、グリセリドおよび/または脂肪酸をエチルアルコール存在下でエステル化する反応をいう。グリセリドをエチルエステル化する方法は、当該分野で周知である。脂肪酸をエチルエステル化する方法は、当該分野で周知である。例えば、エチルアルコール存在下で原料油脂を脂質分解酵素処理した場合、得られる遊離脂肪酸画分は、エチルエステル化された遊離脂肪酸である。 本明細書において使用される用語「画分をエチルエステル化する」工程とは、画分に含まれる物質の少なくとも1つをエチルエステル化する工程をいう。 本明細書において使用される用語「グリセリド画分をエチルエステル化する」工程とは、グリセリド画分中の成分をエチルエステル化(好ましくは、グリセリド画分に含まれるグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分をエチルエステル化)する工程をいう。 本明細書において使用される用語「エチルエステル化したグリセリド画分」とは、グリセリド画分に含まれる物質がエチルエステル化(好ましくは、グリセリド画分に含まれるグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分がエチルエステル化)した画分をいう。 本明細書において使用される用語「遊離脂肪酸画分をエチルエステル化する」工程とは、遊離脂肪酸画分(好ましくは、遊離脂肪酸画分中の遊離脂肪酸)をエチルエステル化する工程をいう。 本明細書において使用される用語「エチルエステル化した遊離脂肪酸画分」とは、遊離脂肪酸画分に含まれる物質(好ましくは、遊離脂肪酸画分中の遊離脂肪酸)がエチルエステル化した画分をいう。 本明細書において使用される用語「ドコサヘキサエン酸」とは、「DHA」と互換可能に使用され、そして、遊離脂肪酸の形態と、グリセリンにエステル結合した形態のいずれも包含する。 本明細書において使用される用語「ドコサヘキサエン酸エチルエステル」とは、「DHAエチルエステル」と互換可能に使用され、そして、エチルエステル化した遊離脂肪酸の形態と、グリセリンにエステル結合したドコサヘキサエン酸がエチルエステル化された形態のいずれも包含する。 本明細書において使用される用語「エイコサペンタエン酸」とは、「EPA」と互換可能に使用され、そして、遊離脂肪酸の形態と、グリセリンにエステル結合した形態とのいずれも包含する。 本明細書において使用される用語「エイコサペンタエン酸エチルエステル」とは、「EPAエチルエステル」と互換可能に使用され、そして、エチルエステル化した遊離脂肪酸の形態と、グリセリンにエステル結合したエイコサペンタエン酸がエチルエステル化された形態のいずれも包含する。 本明細書において使用される用語「精製」とは、精製の目的となる物質の濃度を高める任意の操作をいう。 本明細書において使用される用語「SMBクロマトグラフィー」とは、液体クロマトグラフィーの原理を利用する分離法であって、原料中の特定の成分と、別の特定の成分に対して異なる選択的吸着能力を有する吸着剤が充填された複数の単位充填層を直列に連結するとともに、最下流部の単位充填層と最上流部の単位充填層とを連結し、無端状の循環系を形成した移動層を用いるクロマトグラフィーをいう。本願明細書において、「SMBクロマトグラフィー」は、「擬似移動層クロマトグラフィー」と互換可能に使用される。 (本発明の精製法) 本発明は、高純度のω3系脂肪酸エチルエステル(例えば、EPAのエチルエステルおよびDHAのエチルエステルが挙げられるがこれらに限定されない)を調製する方法であって、以下:(a)原料油脂を、脂質分解酵素によって処理する工程(この工程によって、DHAリッチなグリセリド画分と、EPAリッチな遊離脂肪酸画分が生成される。反応条件によって、遊離脂肪酸は、エチルエステル化された遊離脂肪酸である場合と、エチルエステル化されていない遊離脂肪酸である場合がある);(b)工程(a)の処理物を、グリセリド画分と遊離脂肪酸画分(遊離脂肪酸は、エチルエステル化された遊離脂肪酸であっても、エチルエステル化されていない遊離脂肪酸であってもよい)に分画する工程;(c)必要に応じて(例えば、グリセリドおよび/または遊離脂肪酸がエチルエステル化されていない場合)、工程(b)で得られたグリセリド画分および/または遊離脂肪酸画分を、エチルエステル化する工程;(d)エチルエステル化したグリセリド画分を精製して、 (1)ドコサヘキサエン酸エチルエステルを原料グリセリド画分のエチルエステル化物(工程(b)または(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物)より多く含み、かつ、エイコサペンタエン酸エチルエステルを原料グリセリド画分のエチルエステル化物(工程(b)または(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物)より少なく含む画分と、 (2)エイコサペンタエン酸エチルエステルを原料グリセリド画分のエチルエステル化物(工程(b)または(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物)より多く含み、かつ、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを原料グリセリド画分のエチルエステル化物(工程(b)または(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物)より少なく含む画分に分画する工程;(e)エチルエステル化した遊離脂肪酸画分を精製して、 (3)ドコサヘキサエン酸エチルエステルを原料遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物(工程(b)または(c)の遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物)より多く含み、かつ、エイコサペンタエン酸エチルエステルを原料遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物(工程(b)または(c)の遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物)より少なく含む画分と、 (4)エイコサペンタエン酸エチルエステルを原料遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物(工程(b)または(c)の遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物)より多く含み、かつ、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを原料遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物(工程(b)または(c)の遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物)より少なく含む画分に分画する工程;(f)工程(d)の(1)の画分と工程(e)の(3)の画分を混合する工程;(g)工程(d)の(2)の画分と工程(e)の(4)の画分を混合する工程;(h)工程(f)の混合物をさらに精製して、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを含む精製物を得る工程(なお、この精製工程で得られたエイコサペンタエン酸エチルエステルを多く含む画分は、エイコサペンタエン酸エチルエステル精製物としても使用可能である);(i)工程(g)の混合物をさらに精製して、エイコサペンタエン酸エチルエステルを含む精製物を得る工程(なお、この精製工程で得られたドコサヘキサエン酸エチルエステルを多く含む画分は、ドコサヘキサエン酸エチルエステル精製物としても使用可能である);を包含する方法を提供する。 (1.原料油脂) 上記工程(a)において使用する原料油脂は、好ましくは、エイコサペンタエン酸を4wt%以上かつドコサヘキサエン酸を4wt%以上含む。例えば、本発明において使用する原料油脂としては、水産物の油脂(以下、「水産油脂」という)が挙げられるがこれらに限定されない。水産油脂としては、例えば、アンチョビィ油、ピルチャード油、マイワシ油、メンヘーデン油、サケ油、ニシン油、カツオ油、マグロ油などのほか、藻類由来油脂が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書において用いる魚油名は、(財)日本水産油脂協会編、魚介類の脂肪酸組成表、光琳(東京)、1989年に準拠する。 本発明において原料として用いる水産油脂に含まれるEPA純度は、好ましくは、4.0wt%以上60%以下、より好ましくは10wt%以上60wt%以下であるがこれらに限定されない。また、本発明において用いる水産油脂に含まれるDHA純度は、好ましくは、4.0wt%以上60%以下、より好ましくは10wt%以上35wt%以下であるがこれらに限定されない。本発明において使用する原料油脂が、EPAのみを上記の濃度範囲で含有し、DHAを上記の濃度以下で含有する場合、そのような原料油脂を高純度EPAを精製するための出発材料として使用することができる。本発明において使用する原料油脂が、DHAのみを上記の濃度範囲で含有し、EPAを上記の濃度以下で含有する場合、そのような原料油脂を高純度DHAを精製するための出発材料として使用することができる。 上記工程(a)において使用する原料油脂は、好ましくは、脱酸処理した油脂である。脱酸処理の方法は周知であり、例えば、非特許文献1(安田耕作他、油脂製品の知識、幸書房(東京)、1977年、103−104頁)に記載されている。脱酸処理された原料油脂の酸価(以後、「AV」という)は、3.0以下、好ましくは1.0以下であるがこれらに限定されない。通常、この原料油脂の90wt%以上は脂肪酸のグリセリドであり、更にその90wt%以上はトリグリセリドであり、残余のグリセリドはジグリセリド、モノグリセリドである。原料油脂における脂肪酸のグリセリドの濃度は原料油の由来により異なるため、本発明を制限しない。 本明細書で用いる脂肪酸組成分析法、酸価、過酸化物価(以下、「POV」という)の測定法は、周知であり、例えば、2003年版基準油脂分析試験法((社)日本油化学会編纂)に記載されるとおりである。 上記工程(a)において使用する原料油脂は、好ましくは、脱ガム処理した油脂である。脱ガム処理の方法は周知であり、例えば、非特許文献1(安田耕作他、油脂製品の知識、幸書房(東京)、1977年、103-104頁)に記載されている。脱ガム処理は必須ではないが、一般に、脱ガム処理を経た原料油脂の方が不純物が少なく、続く精製工程が容易となる。 (2.脂質分解酵素処理) 原料油脂(代表的には、脱酸処理後の原料油脂)は脂質分解酵素によって処理される。原料魚油に含まれるEPAやDHAは通常はグリセリドの2位に結合している割合が多いとされる(万倉三正・鹿山 光、AA、EPA、DHAの生理機能と利用、「AA、EPA、DHA−高度不飽和脂肪酸」、鹿山光編、恒星社厚生閣(東京)、1995年、207〜224頁)。そのため、本発明においては、1位選択性、および/または、3位選択性を有する脂質分解酵素(リパーゼ)を用いることが好ましい。微生物由来の脂質分解酵素(リパーゼ)としては、例えば、Candida cylindoracea由来のリパーゼOF(商品名、名糖産業(株)製)、Alcaligenes sp.由来のリパーゼQLM、リパーゼQLC、リパーゼPL(いずれも商品名、名糖産業(株)製)、Burkholderia cepacia由来のリパーゼPS(商品名、天野エンザイム(株)製)、Pseudomonas fluorescens由来のリパーゼAK(商品名、天野エンザイム(株)製)などが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、本発明において使用する脂質分解酵素(リパーゼ)は、トリグリセリドの1位及び3位を選択的に加水分解する微生物由来リパーゼである。本発明においては、固定化リパーゼ、例えば、Thermomyces lanuginosa由来の固定化リパーゼ、リポザイムTLIM(商品名、ノボザイム社製)を用いることができるがこれに限定されない。これらのリパーゼは1、3位選択性が高いため、主に2位に結合しているEPAやDHAはグリセリドとして残りグリセリド画分となり、1、3位に結合しているその他の脂肪酸は遊離脂肪酸画分として系内に残る。 脂質分解酵素処理に際しては、反応時間、温度などに制限はない。当業者は、例えば、特許文献1〜3などに記載される周知の条件を利用することができる。酵素反応の進行はAV測定により管理できる。出発原料の種類、EPA純度、DHA純度など目標としている製品の品質により反応を停止するべきAVは任意に設定できるが、一般に、30〜130の範囲、望ましくは70〜100の範囲で反応を停止する。例えば、エチルアルコール存在下で脂質分解酵素処理を行うと、脂肪酸のグリセリドが脂肪酸とグリセリドに分解され、そして、遊離脂肪酸がエチルエステル化される。 (3.グリセリド画分と遊離脂肪酸画分への分画) 脂質分解酵素(リパーゼ)処理終了後の反応液は、グリセリド画分と遊離脂肪酸画分(脂肪酸画分中の脂肪酸は、エチルエステル化されていても、エチルエステル化されていなくてもよい)を含む混合油脂画分と水性画分に分離することができる。この分離は、例えば、2層液々分離法、遠心分離法などの周知の方法によって行うことができる。これらの方法によって反応液から水分や酵素由来不純物等を除き、グリセリド画分と遊離脂肪酸画分の混合液を取得する。 次に、このグリセリド画分と遊離脂肪酸画分を含む混合液を、グリセリド画分と遊離脂肪酸画分に分離する。この分離は、例えば、遠心式分子蒸留法、又は、流下薄膜式分子蒸留法、又は、溶出法によって行うことが出来る。例えば、流下薄膜式分子蒸留の場合、特開2000−342291号公報に記載されるように、真空度0.005mmHg、蒸発面温度200℃、流速30g/Lの条件で処理を行い、留分として遊離脂肪酸画分、残分としてグリセリド画分を取得できる。流下薄膜式分子蒸留の場合、分子蒸留操作における真空度、蒸発面温度、および/または、フィード量は、装置の型式、原料油の違いにより当業者が適宜変更することができる。溶出法の場合、代表的には、例えば、ヘキサンによる溶出液をエチルエステル化遊離脂肪酸画分として回収し、ジエチルエーテルによる溶出液をグリセリド画分として回収する。これら溶媒の組み合わせは当業者が適宜選択することができる。 (4.エチルエステル化) 上記のとおり、脂質分解酵素の反応条件に依存して、酵素反応の結果、遊離脂肪酸がエチルエステル化される場合とエチルエステル化されない場合がある。グリセリド画分(特にグリセリド画分に含まれるグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分)および/または遊離脂肪酸画分(特に遊離脂肪酸画分中の遊離脂肪酸)がエチルエステル化されていない場合、エチルエステル化を行う。 脂肪酸を含む画分のエチルエステル化法は、周知である。例えば、分画されたグリセリド画分中の脂肪酸はエチルアルコールとの共存下、酸触媒又はアルカリ触媒又は酵素(リパーゼ)によりエチルエステル化される。好ましくは、分画されたグリセリド画分に含まれるグリセリン脂肪酸エステル中の脂肪酸はアルカリ触媒法または酵素法によってエチルエステル化される。分画された遊離脂肪酸画分中の脂肪酸はエチルアルコールとの共存下、酸触媒又は酵素(リパーゼ)によりエチルエステル化される(非特許文献2、特許文献4)。酵素を利用する場合、添加するエチルアルコールの量は、好ましくは、酵素を失活させない量であり、好ましくは、グリセリドまたは遊離脂肪酸に対して4モル当量以下、さらに好ましくは2モル当量以下であるがこれらに限定されない。一般に、グリセリド画分はDHAエチルエステルをEPAエチルエステルよりも多く含み、遊離脂肪酸画分は、EPAエチルエステルをDHAエチルエステルよりも多く含む。 エチルエステル化工程は、必ずしも上記脂質分解酵素処理と別工程で行う必要はない。例えば、リパーゼのような脂質分解酵素による原料油脂の処理をエチルエステル化条件(例えば、エチルアルコール存在下でのリパーゼ処理)で行うと、脂質分解と同時にエチルエステル化を行うことができる。脂質分解酵素による原料油脂の処理とエチルエステル化を同時に行う場合、酵素処理後に再度エチルエステル化を行うことは、必ずしも必要ではない。例えば、脂質分解酵素による原料油脂の処理とエチルエステル化を同時に行った場合、酵素処理後に、エチルエステル画分と残分(グリセリド画分)に分画することができる。 (5.エチルエステル化したグリセリド画分および/または遊離脂肪酸画分の精製) エチルエステル化したグリセリド画分および/または遊離脂肪酸画分の精製としては、例えば、真空精密蒸留法、尿素付加法、硝酸銀錯体法、クロマト法等の精製法が挙げられるがこれらに限定されない。これら精製法は、周知である。概略を以下に述べる。 (5.1.真空精密蒸留法) 真空精密蒸留法とは、各成分の沸点差を利用して分離する方法である。EPAの場合、EPAを含む炭素鎖数が20の成分は魚油脂肪酸の中で中間の沸点に位置しており、バッチ式の場合、単塔式蒸留装置を用いる事が、連続蒸留の場合、二塔式装置ないしは四塔式装置が必要となる。二塔式であればC19以下の成分(初留)を留出させ、その残留分を第二塔に送りC20成分を(主留)を分取することにより精製を行う。 (5.2.尿素付加法) 尿素付加法とは、溶解した尿素が結晶化する際に直鎖の分子を取り込みながら六角柱状の付加物結晶を形成する性質を利用する精製法である。例えば、原料と尿素メタノール溶液を混合し冷却し、飽和脂肪酸やモノ不飽和脂肪酸を取り込んだ尿素付加物を形成させ、これをろ別することにより精製を行う。代表的には、尿素付加物からn−ヘキサン抽出し、シリカゲル処理の後、n−ヘキサンを留去して目的の不飽和脂肪酸を得る。 (5.3.硝酸銀錯体法) 硝酸銀錯体法とは、脂肪酸の二重結合に対して硝酸銀溶液が錯体を形成する性質を利用する精製法である。高度不飽和脂肪酸エチルを精製する場合、原料と硝酸銀溶液を撹拌し、未反応エステルを例えばn−ヘキサン抽出した後に水相を希釈または加温し、遊離したエステルを再度n−ヘキサンにて抽出することにより目的の高度不飽和脂肪酸エチルの濃縮・精製を行う。 (5.4.クロマト法) クロマト法としては、固定層クロマトグラフィーを用いる方法(固定層クロマトグラフィー法)およびSMBクロマトグラフィー法(擬似移動層クロマトグラフィー法)が挙げられる。固定層クロマトグラフィー法は、カラムに充填剤を詰め、原料を溶離液で通過させることにより目的の成分を含む画分を取り出し、濃縮・精製する方法である。本発明の方法においては、好ましい充填剤としては、シリカゲル、逆相シリカゲル、硝酸銀含浸シリカゲルが挙げられるがこの限りではない。 (5.5.代表的な精製法) エチルエステル化したグリセリド画分からの脂肪酸エチルエステルの精製は、例えば、真空精密蒸留法、尿素付加法、硝酸銀錯体法、クロマト法等によって行うことができる(特許文献4〜9)。(1)これらのいずれかの精製法により、エチルエステル化したグリセリド画分から、15wt%以上の濃度(好ましくは50wt%以上、より好ましくは80wt%以上の濃度)のEPAエチルエステル画分、および、15wt%以上の濃度(好ましくは20wt%以上、より好ましくは35wt%以上の濃度)のDHAエチルエステル画分を得ることが出来る。(2)エチルエステル化した遊離脂肪酸画分からの脂肪酸エチルエステルの精製は、例えば、真空精密蒸留法、尿素付加法、硝酸銀錯体法、クロマト法等によって行うことができる(特許文献4〜9)。これらの精製法により、これらのいずれかの精製法により、エチルエステル化した遊離脂肪酸画分から、15wt%以上の濃度のEPAエチルエステル画分、および、10wt%以上の濃度(好ましくは15wt%以上の濃度)のDHAエチルエステル画分を得ることが出来る。 続けて、グリセリド画分のエチルエステル化物からのEPAエチルエステルに富む画分と遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物からのEPAエチルエステルに富む画分を合わせてEPAエチルエステル画分(好ましくは、純度15wt%以上)を調製し、また、グリセリド画分からのDHAエチルエステルに富む画分と遊離脂肪酸画分からのDHAエチルエステルに富む画分を合わせてDHAエチルエステル画分(好ましくは、純度15wt%以上)を調製する。 続けて、上記の画分の混合によって得られたEPAエチルエステル画分と該DHAエチルエステル画分はそれぞれ、真空精密蒸留法、尿素付加法、硝酸銀錯体法、クロマト法等により、再度濃縮精製される。 例えば、純度30wt%以上のEPAエチルエステル画分を薄膜式真空精密蒸留法とHPLC法を組み合わせて精製することにより、純度70wt%以上、好ましくは、純度95wt%以上のEPAエチルエステルを高収率で取得できる。残余のDHAエチルエステルはDHAエチルエステル画分と合わせて利用可能である。 また、純度30wt%以上のDHAエチルエステル画分を薄膜式真空精密蒸留法とHPLC法を組み合わせて精製することにより、純度70wt%以上、好ましくは、純度85wt%以上のDHAエチルエステルを高収率で取得できる。残余のEPAエチルエステルはEPAエチルエステル画分と合わせて利用可能である。 このようにして、濃縮精製されたEPAエチルエステルとDHAエチルエステルは、精製中に発生した脂質の過酸化物、着色成分、原料由来の異物などの不純物を含むため、公知の手法(特許文献10〜12)に基づき活性炭、活性白土、酸性白土、ケイ酸、シリカゲル、アルミナなどの吸着剤から選ばれる1種類以上の組み合わせにより吸着剤処理し、例えば、POVを3以下、望ましくは1以下とすることができる(すなわち、脂質の過酸化物を含む不純物を除去することによって、POVを低下させることができる)。 このようにして取得された高純度EPAエチルエステルと高純度DHAエチルエステルには、品質保持のため抗酸化剤としてトコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、カテキン、および、ローズマリー抽出物からなる群から選択される物質を配合してもよい。 (6.SMBクロマトグラフィー) SMBクロマトグラフィーでは、無端状の循環系に対して原料と溶離液とを供給し、カラム内(単位充填層)を高速で移動するX成分(すなわち、弱親和性成分)と、カラム内を低速で移動するY成分(すなわち、親和性成分)とをそれぞれ異なる位置から抜き出す。そして、SMBクロマトグラフィーは、原料供給位置、溶離液供給位置、X成分抜き出し位置、およびY成分抜き出し位置を、一定の位置関係に保ちながら流体循環方向下流側に順次移動させることで、原料供給を連続的に行う処理操作を擬似的に実現する。その結果、層内での各成分の分布状態はほぼ一定の幅で移動し、各成分の抜出位置も、純度・濃度ともに高い部分を取り続けることが可能な操作方式である。 本発明のSMBクロマトグラフィーは、1種類のカラムを用いても、2種類以上のカラムを用いてもよい。例えば、本発明においては、C18カラムのみを用いてもよく(例えば、4本のC18カラム)、あるいは、C18カラム3本とC8カラム(あるいは、C8カラムの代わりに、C4カラムもしくはC1カラム)1本とを用いてもよい。カラムサイズは限定されることはないが、例えば、直径10mm×高さ500mmのカラムを使用してもよい。クロマトグラフィーの条件は、当業者が適宜決定することができる。例えば、クロマトグラフィーの条件としては、原料油脂の供給量を1時間当り充填剤1L当り21mL(21 mL/L−R/h)とし、溶離液(例えば、メタノール)を、溶離液量:1時間当り充填剤1L当り400mL(0.40 L/L−R/h)で使用することが挙げられるがこれらに限定されない。 以下に実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 (実施例1) ペルー産アンチョビー油100.0Kg(AV2.5、SDA 0.7wt%,EPA 17.5wt%,DHA 9.2wt%)を出発原料とし、常法に従いアルカリ脱酸処理し、AV0.5の脱酸済アンチョビー油95.0Kgを得た(SDAは「all−cis−6,9,12,15−オクタデカテトラエン酸」を示し、「18:4ω3」ともいう)。これに水100リットル、リパーゼOF(名糖産業)を2000unit/g加え、40℃で撹拌しながら酵素反応を継続し、AV85に達した時(約12時間反応)反応を停止し、遠心分離により水分を除去した。その後、グリセリンなどの不純物を除去するため、油層を約30リットルの水で3回洗浄し、グリセリド画分と遊離脂肪酸画分を含む94.5Kgの混合油を得た。混合油は流下薄膜式分子蒸留装置により、真空度0.005mmHg、蒸発面温度200℃で処理し、留分側に遊離脂肪酸画分44Kg(SDA 0.8wt%、EPA 16.2wt%、DHA 5.5wt%)、残分側に脂肪酸グリセリド50Kg(SDA 0.6%、EPA 19.0%、DHA 12.9%)を取得した。 定法に従い、遊離脂肪酸画分を酸触媒法によりエチルエステル化し46.5Kgの製品を得た。グリセリド画分をアルカリ触媒法によりエチルエステル化し49.0Kgの製品を得た。 グリセリド画分より得たエチルエステル、遊離脂肪酸画分より得たエチルエステルの両者について、特許文献9に準拠して、真空精密蒸留法によって分離精製し表1の製品を得た。 各分画品から、(1)と(3)を混合したDHAエチルエステル(DHA−EE)画分12.2Kg(SDA 0.5%、EPA 3.5%、DHA 58.9%)と、(2)と(4)を混合したEPAエチルエステル(EPA−EE)画分21.1Kg(SDA 2.1%、EPA 71.5%、DHA 8.1%)を調製した。 DHAエチルエステル画分とEPAエチルエステル画分はそれぞれ疑似移動相クロマトグラフィー(SMB)にて処理した。逆相(ODS)カラム(C18カラム4本を用いた)を装着し、溶離液にはメタノールを用いた。 その結果、DHAエチルエステル画分から95.2wt%DHAエチルエステルが6.8Kg(DHA回収率70.2%、POV 3.8)、EPAエチルエステル画分から96.5wt%EPAエチルエステルが13.6Kg(EPA回収率75.0%、POV 3.3)が回収された。 上記DHAエチルエステル及びEPAエチルエステルのそれぞれに、活性白土1.0wt%を添加し、40℃にて1時間、減圧下で撹拌したのち、窒素ガス存在下で吸引濾過により標品を得た。この時の回収率は共に99.0wt%(POV 0.5)であった。 これら精製標品のそれぞれに、0.2wt%のDL−α−トコフェロールを添加し、窒素ガス気流下で混合溶解させ製品を得た。 (比較例1) 実施例1における酵素処理の効果を実証するために、酵素処理工程を含まないこと以外は実施例1と同様の手法で、精製を行った。なお、比較を明瞭に示すため、EPAエチルエステルの濃縮精製を追跡し、DHAエチルエステルは含めていない。 ペルー産アンチョビー油100.0Kg(AV 2.5、SDA 0.7wt%、EPA 17.5wt%、DHA 9.2wt%)を出発原料とし、常法に従いアルカリ脱酸処理し、AV0.5の脱酸済アンチョビー油を95.0Kg得た。 脱酸処理した標品を、実施例1と同様にエチルエステル化し、続けて、該エチルエステルを特許文献9及び実施例1と同様に、真空精密蒸留にて分離精製し、EPAエチルエステルの中間精製品を取得した。中間精製品は、実施例1と同様にSMBにて更に濃縮精製し、表2に示す結果を得た。 以上の結果から、真空精密蒸留工程、クロマト工程などの濃縮精製工程において、精製純度を低下させる要因となるSDAやDHAの割合をEPAに対して小さくすることの有効性が示されると同時に、この目的のために酵素処理工程を加えることの重要性が示された。 (実施例2) 実施例1で用いた原料油脂とは異なる原料油脂について、酵素処理の有効性を見るために、実施例2および比較例2の実験を行った。比較を明瞭に示すため、EPAエチルエステルの濃縮精製を追跡し、DHAエチルエステルは含めていない。 実施例2では、以下のとおり、実施例1と完全に同様の酵素処理工程を加えた処理を行った。具体的には、原料油脂として米国産メンヘーデン原油100.0Kg(AV4.8、SDA2.8wt%, EPA11.0wt%, DHA9.1wt%)を用いた。常法に従いアルカリ脱酸処理し、AV0.5の脱酸済メンヘーデン油を94.0Kgを得た。実施例1と同様の精製を行った結果、真空精密蒸留前のEPAエチルエステル画分の組成は、SDA−EE 1.2wt%、EPA−EE wt52.9%、DHA 15.5wt%であったが、最終のクロマト精製後に、95.5wt%EPAエチルエステルが4.8Kgが回収された(EPA回収率41.4%、POV 3.3)。 (比較例2) 本実施例2における酵素処理の効果を実証するために、酵素処理工程を含まないこと以外は実施例2と同様の実験を行う比較例2の実験を行った。 実施例2と同様に、米国産メンヘーデン原油100.0Kg(AV 4.8、SDA 2.8wt%、EPA 11.0wt%、DHA 9.1wt%)を出発原料とし、常法に従いアルカリ脱酸処理し、AV0.5の脱酸済メンヘーデン油を94.0Kgを得た。 脱酸処理した標品を比較例1と同様に、エチルエステル化し、続けて、該エチルエステルを特許文献9及び比較例1と同様に、真空精密蒸留にて分離精製し、EPAエチルエステルの中間精製品を取得した。これをクロマト法(SMBクロマトグラフィー)にて更に濃縮精製し、表3に示す結果を得た。最終のクロマト精製後に、92.9wt%EPAエチルエステルが3.6Kgが回収された(EPA回収率30.4%、POV 3.3)。 以上の結果から、真空精密蒸留工程、クロマト工程などの濃縮精製工程において、精製純度を低下させる要因となるSDAやDHAの割合をEPAに対して小さくすることの有効性が示されると同時に、この目的のために酵素処理工程を加えることの重要性が示された。 (実施例3) 実施例1〜2で用いた原料油脂とは異なる原料油脂について、酵素処理の有効性を見るために、実施例3および比較例3の実験を行った。比較を明瞭に示すため、DHAエチルエステルの濃縮精製を追跡し、EPAエチルエステルは含めていない。 実施例3では、以下のとおり、実施例1と完全に同様の酵素処理工程を加えた処理を行った。原料油脂として日本産カツオ原油100.0Kg(AV 4.2、SDA 3.3wt%、EPA 5.6wt%、DHA 28.5wt%)を出発原料とし、常法に従いアルカリ脱酸処理し、AV0.3の脱酸済カツオ油を95.0Kgを得た。 実施例1と完全に同様の酵素処理工程を加えた処理をした場合、真空精密蒸留前のDHAエチルエステル画分の組成はSDA−EE 2.1wt%、EPA−EE wt4.7%、DHA 47.5wt%であったが、最終のクロマト精製後に、96.5wt%DHAエチルエステルが17.9Kgが回収された(EPA回収率60.1%、POV 3.3)。 (比較例3) 本実施例3における酵素処理の効果を実証するために、酵素処理工程を含まないこと以外は実施例3と同様の実験を行う比較例3の実験を行った。 脱酸処理した標品を比較例1と同様にエチルエステル化し、続けて、該エチルエステルを特許文献9及び比較例1と同様に、真空精密蒸留にて分離精製し、EPAエチルエステルの中間精製品を取得した。これをクロマト法(SMB)にて更に濃縮精製し、表4に示す結果を得た。最終のクロマト精製後に、99.1wt%DHAエチルエステルが15.8Kgが回収された(DHA回収率54.9%、POV 3.1)。 以上の結果から、真空精密蒸留工程、クロマト工程などの濃縮精製工程において、精製純度を低下させる要因となるSDAやEPAの割合をDHAに対して小さくすることの有効性が示されると同時に、この目的のために酵素処理工程を加えることの重要性が示された。 (実施例4) ペルー産アンチョビー油100.0Kg(AV3.6、SDA 2.9wt%,EPA 18.3wt%,DHA 9.0wt%)を出発原料とし、常法に従いアルカリ脱酸処理し、AV0.5の脱酸済アンチョビー油94.0Kgを得た。脱酸済アンチョビー油にエタノール100L、リパーゼ(リパーゼQLM(名糖産業(株)製)、リパーゼPL(名糖産業(株)製)、または、リポザイム(ノボザイム社製))を1000unit/g加え、40℃で撹拌しながら約24時間後に反応を停止し、反応液をヘキサン200Lで抽出し、エタノールおよび水で洗浄した。水層(下層)は破棄した。上層(ヘキサン層)は無水硫酸ナトリウムによる脱水後、エバポレーターで濃縮した。 濃縮物はアルミナを充填したカラムに供し、ヘキサンによる溶出液を回収し(エチルエステル化遊離脂肪酸画分)、ジエチルエーテルによる溶出液を回収した(グリセリド画分)。回収液はエバポレーターで濃縮し、それぞれの画分として回収した。グリセリド画分は65.0kg、エチルエステル化遊離脂肪酸画分は26.0kg取得した。 脂質酸組成の分析は、三菱化学メディエンス株式会社 イアトロスキャンMK−6Sを用いて行った。上記のとおり、40℃で撹拌しながら約24時間後に反応を停止し、停止後に回収した油の2容量%のヘキサン溶液(1μL)をシリカゲルロッドにスポット後、ヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸(90:10:1、体積比)で30分展開し、薄層クロマトグラフィー/FIDを用いて分析を行った。結果は、以下のとおりである。 *表中の数字はTLC/FIDによる組成%である。 MG:モノグリセロール DG:モノグリセロール TG:モノグリセロール EE:エチルエステル化。 EE画分(エチルエステル化画分)についてのガスクロマトグラフィー分析の結果は、以下のとおりである: ガスクロマトグラフィーは、島津製作所 GC−2010plusを用いて行った。キャピラリーカラム等は、DB−WAX(Agilent Technologies)、0.25mmID×30m、0.25μm フィルム厚、キャリアーガス:ヘリウム、検出器:260℃,FID、注入口:250℃、スプリット比1:1、注入量1.5μL、カラム温度:210℃の条件で行った。 GC分析手順は、次のとおりである。脂肪酸のエチルエステル画分については、40℃で撹拌しながら約24時間後に回収した油5.5μLをヘキサン1mLに溶解させGCで分析を行った。グリセリド画分については、グリセリド画分16.7μLをヘキサン2μLに溶解させ、飽和水酸化カリウム水溶液2μLを加えてメチル化を行い、飽和食塩水で洗浄後遠心分離し、ヘキサン層を無水硫酸ナトリウムで脱水した後にGCで分析を行った。 定法に従い、グリセリド画分をアルカリ触媒法により64.0kgのエチルエステル化グリセリドを得た。 グリセリド画分より得たエチルエステル、遊離脂肪酸画分より得たエチルエステルの両者について、特許文献9に準拠して、真空精密蒸留法によって分離精製し表7の製品を得た。 各分画品から、(1)と(3)を混合したDHAエチルエステル(DHA−EE)画分9.4Kg(SDA 0.4%、EPA 4.1%、DHA 60.4%)と、(2)と(4)を混合したEPAエチルエステル(EPA−EE)画分21.2Kg(SDA 3.1%、EPA 88.7%、DHA 2.4%)を調製した。 DHAエチルエステル画分とEPAエチルエステル画分はそれぞれ疑似移動相クロマトグラフィー(SMB)にて処理した。逆相(ODS)カラム(C18カラム4本を用いた)を装着し、溶離液にはメタノールを用いた。 その結果、DHAエチルエステル画分から96.1wt%DHAエチルエステルが5.5Kg(DHA回収率58.7%、POV 3.9)、EPAエチルエステル画分から98.3wt%EPAエチルエステルが14.2Kg(EPA回収率76.3%、POV 3.5)が回収された。 上記DHAエチルエステル及びEPAエチルエステルのそれぞれに、活性白土1.0wt%を添加し、40℃にて1時間、減圧下で撹拌したのち、窒素ガス存在下で吸引濾過により標品を得た。この時の回収率は共に99.0wt%(POV 0.5)であった。 これら精製標品のそれぞれに、0.2wt%のDL−α−トコフェロールを添加し、窒素ガス気流下で混合溶解させ製品を得た。 以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみ、その範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。 本発明によって、EPAやDHAなどのω3系脂肪酸エチルエステルをそれぞれ高純度品として、かつ、高収率に取得する方法が提供される。本発明により、より安価な高純度EPAやDHAなどのω3系脂肪酸エチルエステルの提供が可能となる。 エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸を含む原料油脂からエイコサペンタエン酸エチルエステルおよびドコサヘキサエン酸エチルエステルを調製する方法であって、以下の工程:(a)原料油脂を、脂質分解酵素によって処理する工程;(b)工程(a)の処理物を分画する工程;(c)必要に応じて工程(b)で得られた画分を、エチルエステル化する工程;(d)エチルエステル化したグリセリド画分を精製して、 (1)ドコサヘキサエン酸エチルエステルを精製前のエチルエステル化したグリセリド画分より多く含み、かつ、エイコサペンタエン酸エチルエステルを精製前のエチルエステル化したグリセリド画分より少なく含む画分と、 (2)エイコサペンタエン酸エチルエステルを精製前のエチルエステル化したグリセリド画分より多く含み、かつ、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを精製前のエチルエステル化したグリセリド画分より少なく含む画分に分画する工程;(e)エチルエステル化した遊離脂肪酸画分を精製して、 (3)ドコサヘキサエン酸エチルエステルを精製前のエチルエステル化した遊離脂肪酸画分より多く含み、かつ、エイコサペンタエン酸エチルエステルを精製前のエチルエステル化した遊離脂肪酸画分より少なく含む画分と、 (4)エイコサペンタエン酸エチルエステルを精製前のエチルエステル化した遊離脂肪酸画分より多く含み、かつ、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを精製前のエチルエステル化した遊離脂肪酸画分より少なく含む画分に分画する工程;(f)工程(d)の(1)の画分と工程(e)の(3)の画分を混合する工程;(g)工程(d)の(2)の画分と工程(e)の(4)の画分を混合する工程;(h)工程(f)の混合物をさらに精製して、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを含む精製物を得る工程;(i)工程(g)の混合物をさらに精製して、エイコサペンタエン酸エチルエステルを含む精製物を得る工程;を包含する方法。 エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸を含む原料油脂からエイコサペンタエン酸エチルエステルおよびドコサヘキサエン酸エチルエステルを調製する方法であって、以下の工程:(a)原料油脂を、脂肪酸をエチルエステル化する条件下で脂質分解酵素によって処理する工程;(b)工程(a)の処理物を、グリセリド画分とエチルエステル化した遊離脂肪酸画分に分画する工程;(c)工程(b)で得られたグリセリド画分を、エチルエステル化する工程;(d)工程(c)で得られたエチルエステル化したグリセリド画分を精製して、 (1)ドコサヘキサエン酸エチルエステルを工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物より多く含み、かつ、エイコサペンタエン酸エチルエステルを工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物より少なく含む画分と、 (2)エイコサペンタエン酸エチルエステルを工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物より多く含み、かつ、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物より少なく含む画分に分画する工程;(e)工程(b)で得られたエチルエステル化した遊離脂肪酸画分を精製して、 (3)ドコサヘキサエン酸エチルエステルを工程(b)のエチルエステル化した遊離脂肪酸画分より多く含み、かつ、エイコサペンタエン酸エチルエステルを工程(b)のエチルエステル化した遊離脂肪酸画分より少なく含む画分と、 (4)エイコサペンタエン酸エチルエステルを工程(b)のエチルエステル化した遊離脂肪酸画分より多く含み、かつ、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを工程(b)のエチルエステル化した遊離脂肪酸画分より少なく含む画分に分画する工程;(f)工程(d)の(1)の画分と工程(e)の(3)の画分を混合する工程;(g)工程(d)の(2)の画分と工程(e)の(4)の画分を混合する工程;(h)工程(f)の混合物をさらに精製して、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを含む精製物を得る工程;(i)工程(g)の混合物をさらに精製して、エイコサペンタエン酸エチルエステルを含む精製物を得る工程;を包含する方法。 エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸を含む原料油脂からエイコサペンタエン酸エチルエステルおよびドコサヘキサエン酸エチルエステルを調製する方法であって、以下の工程:(a)原料油脂を、脂質分解酵素によって処理する工程;(b)工程(a)の処理物を、グリセリド画分と遊離脂肪酸画分に分画する工程;(c)工程(b)で得られたグリセリド画分および遊離脂肪酸画分のそれぞれを、エチルエステル化する工程;(d)工程(c)で得られたエチルエステル化したグリセリド画分を精製して、 (1)ドコサヘキサエン酸エチルエステルを工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物より多く含み、かつ、エイコサペンタエン酸エチルエステルを工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物より少なく含む画分と、 (2)エイコサペンタエン酸エチルエステルを工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物より多く含み、かつ、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化物より少なく含む画分に分画する工程;(e)工程(c)で得られたエチルエステル化した遊離脂肪酸画分を精製して、 (3)ドコサヘキサエン酸エチルエステルを工程(c)の遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物より多く含み、かつ、エイコサペンタエン酸エチルエステルを工程(c)の遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物より少なく含む画分と、 (4)エイコサペンタエン酸エチルエステルを工程(c)の遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物より多く含み、かつ、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを工程(c)の遊離脂肪酸画分のエチルエステル化物より少なく含む画分に分画する工程;(f)工程(d)の(1)の画分と工程(e)の(3)の画分を混合する工程;(g)工程(d)の(2)の画分と工程(e)の(4)の画分を混合する工程;(h)工程(f)の混合物をさらに精製して、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを含む精製物を得る工程;(i)工程(g)の混合物をさらに精製して、エイコサペンタエン酸エチルエステルを含む精製物を得る工程;を包含する方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、前記原料油脂が脱酸処理された原料油脂である、方法。 請求項4に記載の方法であって、ここで、前記脱酸処理された原料油脂の酸価が3以下である、方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、前記原料油脂が4wt%以上のエイコサペンタエン酸および4wt%以上のドコサヘキサエン酸を含む、方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、前記脂質分解酵素がトリグリセリドの1位及び3位を選択的に加水分解する微生物由来リパーゼである、方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、工程(b)の分画が、流下薄膜式分子蒸留法、遠心式分子蒸留法、および、溶出法からなる群から選択される方法によって行われる、方法。 請求項8に記載の方法であって、ここで、工程(b)の分画が溶出法によって行われ、ここで、ヘキサンによる溶出液がエチルエステル化遊離脂肪酸画分として回収され、そして、ジエチルエーテルによる溶出液がグリセリド画分として回収される、方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、工程(c)のグリセリド画分のエチルエステル化が、アルカリ触媒法又は酵素法によって行われる、方法。 請求項1または3に記載の方法であって、ここで、工程(c)の遊離脂肪酸画分のエチルエステル化が、酸触媒法又は酵素法によって行われる、方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、工程(d)の精製が、真空精密蒸留法、尿素附加法、硝酸銀錯体法、固定層クロマトグラフィー法、および、SMBクロマトグラフィー法からなる群から選択される方法によって行われる、方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、工程(e)の精製が、真空精密蒸留法、尿素附加法、硝酸銀錯体法、固定層クロマトグラフィー法、および、SMBクロマトグラフィー法からなる群から選択される方法によって行われる、方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、工程(h)の精製が、真空精密蒸留法、尿素附加法、硝酸銀錯体法、固定層クロマトグラフィー法、および、SMBクロマトグラフィー法からなる群から選択される方法によって行われる、方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、工程(i)の精製が、真空精密蒸留法、尿素附加法、硝酸銀錯体法、固定層クロマトグラフィー法、および、SMBクロマトグラフィー法からなる群から選択される方法によって行われる、方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、 工程(d)の画分(1)のドコサヘキサエン酸エチルエステル濃度が15w%以上であり、 工程(d)の画分(2)のエイコサペンタエン酸エチルエステル濃度が15w%以上であり、 工程(e)の画分(3)のドコサヘキサエン酸エチルエステル濃度が15w%以上であり、 工程(e)の画分(4)のエイコサペンタエン酸エチルエステル濃度が15w%以上である、方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、 工程(f)の混合物のドコサヘキサエン酸エチルエステル濃度が15w%以上であり、かつ、エイコサペンタエン酸エチルエステル濃度が15w%以下であり、 工程(g)の混合物のエイコサペンタエン酸エチルエステル濃度が15w%以上であり、ドコサヘキサエン酸エチルエステル濃度が15w%以下である、方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、 工程(h)の精製物におけるドコサヘキサエン酸エチルエステル濃度が70w%以上であり、 工程(i)の精製物におけるエイコサペンタエン酸エチルエステル濃度が70w%以上である、方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、さらに、以下の工程:(j)工程(h)で得られた精製物を吸着剤処理して、不純物を除去する工程;および、(k)工程(i)で得られた精製物を吸着剤処理して、不純物を除去する工程、を包含する方法。 請求項19に記載の方法であって、前記吸着剤が、酸性白土、活性白土、活性炭、ケイ酸、および、アルミナからなる群から選択され、そして、吸着剤処理後の過酸化物価が3以下である、方法。 請求項19に記載の方法であって、さらに、以下の工程:(l)工程(j)で得られた物質に抗酸化剤を添加する工程;および、(m)工程(k)で得られた物質に抗酸化剤を添加する工程、を包含する方法。 請求項21に記載の方法であって、ここで、前記抗酸化剤がトコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、カテキン、および、ローズマリー抽出物からなる群から選択される、方法。 【課題】EPAやDHAなどのω3系脂肪酸エチルエステルをそれぞれ高純度品として、かつ、高収率に取得する方法を提供すること。【解決手段】本発明の方法においては、EPAとDHAを含む原料油脂を脂質分解酵素処理し、必要に応じてエチルエステル化を行い、エチルエステル化したグリセリド画分とエチルエステル化した遊離脂肪酸画分に分画し、各エステル化画分からEPAエステルを多く含む画分とDHAエステルを多く含む画分を得て、EPAエステルを多く含む画分を精製して高純度EPAエステルを調製し、DHAエステルを多く含む画分を精製して高純度DHAエステルを調製する。【選択図】なし