タイトル: | 公開特許公報(A)_イブプロフェンの口腔内濯ぎ剤 |
出願番号: | 2014055663 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 31/192,A61P 25/04,A61P 1/02,A61K 9/08,A61K 9/70,A61K 9/06,A61K 47/04,A61P 29/00 |
日比 徹 千葉 徹 JP 2015178462 公開特許公報(A) 20151008 2014055663 20140318 イブプロフェンの口腔内濯ぎ剤 合同会社Pharma Seeds Create 514068152 岩谷 龍 100077012 日比 徹 千葉 徹 A61K 31/192 20060101AFI20150911BHJP A61P 25/04 20060101ALI20150911BHJP A61P 1/02 20060101ALI20150911BHJP A61K 9/08 20060101ALI20150911BHJP A61K 9/70 20060101ALI20150911BHJP A61K 9/06 20060101ALI20150911BHJP A61K 47/04 20060101ALI20150911BHJP A61P 29/00 20060101ALI20150911BHJP JPA61K31/192A61P25/04A61P1/02A61K9/08A61K9/70A61K9/06A61K47/04A61P29/00 10 OL 16 4C076 4C206 4C076AA09 4C076AA12 4C076AA22 4C076AA72 4C076BB22 4C076CC01 4C076DD25Z 4C076FF61 4C076GG41 4C206AA01 4C206AA02 4C206DA24 4C206MA01 4C206MA02 4C206MA05 4C206MA06 4C206MA37 4C206MA48 4C206MA52 4C206MA77 4C206NA10 4C206ZA08 4C206ZA67 4C206ZB11 本発明は、イブプロフェンまたはその薬学的に許容される塩を含有する口腔内疾患に基因する疼痛および/または炎症を軽減する局所口腔用組成物に関する。また、その組成物の製造方法、およびその組成物を用いた治療方法、および又は予防法にも関する。 イブプロフェンは、1960年代に英Boot社(現Abbott Laboratories)の研究グループによって見出されたプロピオン酸系の化合物であり、非ステロイド系消炎鎮痛剤(以下、NSAIDsと記載することがある)に分類される。プロスタグランジン生合成阻害作用により、抗炎症・鎮痛・解熱作用を発揮し、医療用およびOTC医薬品として広く使用されている。 通常イブプロフェン原薬を口に含むと強い刺激性の苦味がある。その刺激性の苦味をマスクするため種々の工夫がなされている。たとえば、イブプロフェンを液中に溶解・懸濁させている市販のソフトカプセルは、カプセルに包み込むことによって、服用する際に口中で内容液が漏れないように工夫されている。また、イブプロフェンを含有する糖衣錠は錠剤の表面を糖でコーティングすることにより苦味を軽減している。いずれも有効成分であるイブプロフェン溶液や原薬自身に苦味除去の処理が施されているわけではない。したがって、ソフトカプセルを切断してカプセルから取り出し、口中に含む実験を行うと、刺激性の刺すような痛みと苦味が感じられる。また、糖衣錠も口中で噛み砕くと、喉が咳き込み口中がピリピリする刺激が感じられる。 これらのイブプロフェンソフトカプセルや糖衣錠などの経口製剤に関する添付文書に記載される使用方法としては、経口投与、服用、および頓用などと記してあり、いずれも経口的に摂取することにより、有効成分であるイブプロフェンを吸収し体内に入れることを前提としている。従来技術においては、治療用量のイブフロフェンは、体内に摂取されると、期待される血中濃度に到達し、薬物動態的の挙動に従って、薬効を発揮することとなる。 したがって、本発明が開示するような、口中に留めて、口の全体または一部に行き渡るような動作をしつつ暫くの時間経過後にそれを口中から吐き出す(本明細書では、「口濯ぎ」、または単に「濯ぐ」ということがある)という使用方法は、成分であるイブプロフェンを口腔に投与し体内に摂取することを前提としておらず、従来のイブプロフェン製剤としては想定していない方法である。 非ステロイド系消炎鎮痛剤で口内炎および口腔内疾患への局所投与方法の先行技術としては、以下のものが挙げられる。 すなわち、インドメタシンスプレー(0.25%, 1.25%)における、難治性口内炎治療の例(非特許文献1)、およびがん治療誘発性の口腔粘膜炎治療(非特許文献2)の例;アイスボール(Ice ball)を用いた例(非特許文献9);アズレン(Azulene)、ボルタレン含嗽水(0.05%)による口内炎の予防の例(非特許文献1);ジクロフェナックの口腔洗浄において、口腔内手術後疼痛に消炎鎮痛効果があるとする例(非特許文献3)、イブプロフェンの錠剤との併用で口腔内手術後の疼痛緩和に効果があるとする例(非特許文献4)、および歯周病(Gingivitis)に消炎効果があるとする例(非特許文献5);イブプロフェン口腔洗浄(ibuprofen D体:1.5%)においては、歯周病の治療効果に対してはプラセボとの有意差が認められなかったが、歯垢の生成・付着防止効果があるとする例(非特許文献6);イブプロフェン、ジフェンヒドラミン、アルミニウムMgSを用いた口腔洗浄において、プラセボとの比較で疼痛緩和に有意差が認められず、効果がないとした例(非特許文献7);および、苦味のマスキングによる高用量イブプロフェントローチ剤に関する特許の例(特許文献1)がある。 また、イブプロフェンと口内炎の関係については、イブプロフェンを経口投与された患者で副作用として口内炎を引き起こすことはよく知られた事実である(非特許文献8)。 上述の様に、インドメタシンやジクロフェナックナトリウム等のNSAIDsで口内炎および口腔内疾患への局所投与方法の先行情報はある。しかしながら、世界で最も汎用され安全性の高いとされるNSAIDsのイブプロフェンでの口腔内の局所投与による、口内炎、その他口腔内疾患、歯科疾患や、外傷、口腔外科手術後の疼痛緩和への適用で有効性を示す文献・特許情報は、見当たらない。このことは、イブプロフェンを経口投与された患者で副作用として口内炎を引き起こすという技術常識からすれば当然ともいえる。また、イブプロフェンは、インドメタシンやジクロフェナックよりも安全性が高い分効力が弱く、更に味が悪い事からも当然とも思われる。米国特許公報公開番号: US2007/00 98789A1病院薬局製剤事例集(日本病院薬剤師会:薬事日報社)百憲二、薬剤学72(1)15-19, 2012.Agarwal S. et al., Efficacy and acceptability of 0.074% diclofenac-containing mouthwash after periodontal surgery; a crinical study, Indian J. Dent. Res. 2010, Jul-Sept. 21(3);408-412Jaber Yaghini et al.(Isfahan Univ.,Iran), The effect of Diclofenac mouthwash(0.01%) on periodontal postoperative pain, Dent. Res. J(Isfahan), 2011, Summer, 8(3); 146-149.Serafini Giampiero et al., Therapeutic efficacy and tolerability of the topical treatment of inflammatory conditions of the oral cavity with a mouthwash containing Diclofenac Epolamine(0.103%) (Controlled P3 study by IBSA), Clinical Drug Investigation, 32(1), 41-49, 2012.Rosin M., et al., The effect of a dexibuprofen mouth rinse on experimental gingivitis in human, J. Clin. 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本発明者らは、その技術思想を本明細書で開示する。すなわち、本発明は、[1]イブプロフェンまたはその薬学的に許容される塩と少なくとも1つの口腔に許容可能な担体を含有する、口腔内疾患に基因する疼痛および、または炎症を予防又は軽減する局所口腔用組成物;[2]水溶液、懸濁液、半固形状(クリーム状、ゲル状、軟膏状)、スプレー状、溶解型固形状(錠剤状、顆粒状、散剤状、発泡状等)、またはパッチ状である、[1]に記載の組成物;[3]イブプロフェンの薬学的に許容される塩がナトリウム塩またはカリウム塩またはマグネシウム塩である、[1]または[2]に記載の組成物;[4]口腔内疾患が、口内外傷、口内炎、歯周病、歯痛、抜歯後の疼痛、または口腔外科手術後の疼痛である、[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物;[5]口腔内に投与される最終形態がイブプロフェン、pH調整剤、および水を含有することを特徴とする、刺激性または苦味が軽減された溶液または懸濁液であって、[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物;[6]口濯ぎ剤である[1]に記載の組成物。[7][1]〜[6]のいずれかに記載の組成物であって、イブプロフェンまたはその薬学的に許容される塩と少なくとも1つの口腔に許容可能な担体を混合することを特徴とする、当該組成物の調製方法;[8][1]〜[6]のいずれかに記載の組成物をヒトを含む動物に投与することを特徴とする、口腔内疾患の治療方法、および又は予防法;[9]口濯ぎを行うことを特徴とする、[8]に記載の口腔内疾患の治療方法、および又は予防法;および[10]パッチ状の製剤を添付することを特徴とする、[8]に記載の口腔内疾患の治療方法、および又は予防法;を開示するものである。 上記に示す本発明の技術思想は、イブプロフェンが口内炎を引き起こすという技術常識を考慮すれば、驚くべきことである。 本発明に用いられるイブプロフェンは、薬学的に許容されるような安全面で許容されるその塩、立体異性体、光学異性体およびそれらの異性体の混合物、溶媒和物、非結晶形、結晶多形、同位体標識化合物などを含むものである。 イブプロフェンは、カルボキシル基を含み、対イオンは、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどから選ばれる無機塩からだけでなく、有機塩基との塩からも選ばれうる。これらの塩は、薬学的に安全面で許容されるべきである。本発明は、可能な限りのあらゆる化学量論形態および非化学量論形態の塩をその範囲内に包含するものである。 本明細書で使用するとき、用語「口腔内疾患」は、口内外傷の他、歯周病、歯肉炎、歯周炎、歯周症、成人および若年性歯周炎、ならびに口内炎に代表される口腔内組織の他の炎症状態、虫歯、壊死性潰瘍性歯肉炎、これらの疾患に起因する口内の悪臭または口臭などの状態、ヘルペス性病変などの他の状態、ならびに、骨手術、抜歯、歯周剥離掻爬手術、歯科インプラントおよび歯石除去と歯根掻爬などの歯科処置後に発生し得る感染症を含む。また特に、歯槽感染症、歯の膿瘍(たとえば顎蜂巣炎;顎骨髄炎)、急性壊死性潰瘍性歯肉炎(すなわちワンサン感染症(Vincent's infection))、感染性口内炎(すなわち口内粘膜の急性炎症)、および水がん(すなわち壊疽性口内炎または口腔内壊疽性病変)も挙げられる。さらに口腔内の外傷、口腔外科手術後の疼痛および/または炎症も挙げられる。口腔および歯の感染症については、ファインゴールド(Finegold)、「ヒトの疾患における嫌気性細菌(Anaerobic Bacteria in Human Diseases)」(第4章、78〜104頁、および第6章、115〜154頁、アカデミックプレス社(Academic Press,Inc.)、ニューヨーク、1977年)に、より詳細に開示されている。本発明の組成物および治療方法は、口内外傷、口内炎、歯周病、歯痛、抜歯後の疼痛、または口腔外科手術後の疼痛および/または炎症の治療および予防に特に有効である。また、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)の経口投与やプロピルアセチル尿素、無水カフェイン等のその他組成物、治療方法との併用も可能である。 本明細書で使用するとき、「局所口腔用組成物」とは、通常の使用過程では、特定の治療薬について全身投与の目的で意図的に嚥下されるのではなく、むしろ、口腔の活性を目的として実質的に歯の表面および/または口腔組織と全てまたは一部接触させるのに十分な時間にわたり、口腔内に保持される製品を意味する。又は、本発明を口腔内濯ぎ剤、含嗽剤又は口腔等の局所に適用する液状製剤と称しても良い。 本発明の局所口腔用組成物は、所望の段階で吐出すことにより、濯ぐことが可能であれば、水溶液などの液体状、ジェル状、口内スプレー状、ムース状、フォーム状、ガム状、またはパッチ状などの様々な形態であってもよい。特に水溶液、ジェル状、またはパッチ状が好ましい。 局所口腔用組成物が、ジェル状である場合、組成物の望ましい稠度を達成するために、増粘剤などが使用できる。また、ジェル状態を保つために保湿剤が加えられるなど、当業者に周知の方法で調整することができる。このようなジェル状である局所口腔用組成物にあっては、他の形状の局所口腔用組成物と同様、所望の段階で吐出すことにより、濯ぐことが可能であり、本発明の使用態様に含まれる。 局所口腔用組成物が、パッチ状である場合、患部に添付して最終的に剥がすというタイプではなく、分子が水和するに連れて次第に浸食され、溶解する接着性口腔内パッチが好ましい。そのような口内パッチはイブプロフェンを保持して放出するための結合剤が加えられる。この目的の結合剤としては、ゼラチン、カラギーナン、キサンタンガム、コンニャクガム、ローカストビーンガム、グアーガム、寒天、アラビアガム、HPMC,HPC,CMC-Na等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、およびペクチン等が挙げられる。パッチ状の製剤には、テープ製剤、パッチ剤、パップ剤、接着トローチ剤、プラスター剤であっても、分子が水和するに連れて次第に浸食され、溶解する接着性を有するものであれば、本発明のパッチ状である局所口腔用組成物に含有される。このようなパッチ状である局所口腔用組成物にあっては、他の形状の局所口腔用組成物と同様、所望の段階で吐出すことにより、濯ぐことが可能であり、本発明の使用態様に含まれる。 局所口腔用組成物が、口内スプレー状、ムース状、フォーム状、ガム状である場合も、当業者に周知の方法で調整することができる。そのような形状である局所口腔用組成物にあっては、所望の段階で吐出すことにより、濯ぐことが可能であり、本発明の使用態様に含まれる。 用語「口腔に許容可能な担体」とは、本明細書で使用するとき、本発明の組成物に使用するための安全で有効な物質を包含する。このような物質は口腔ケア組成物における従来の添加剤であり、それらとしては、水、ゲル化剤、pH調整剤、溶解剤、保湿剤、増粘剤、着香剤(香料)、甘味剤、矯味剤、着色剤、防腐剤、界面活性剤、および安定化剤が挙げられる。また、所望により、歯の健康等を目的として、フッ化物イオン源、抗結石剤または抗歯石剤、シリカなどの研磨剤、過酸化物源などの漂白剤、湿潤剤、二酸化チタンを添加しても良いが、これらに限定されるわけではない。特に、口腔に許容可能な担体の安全性には注意を払わなければならない。したがって、例えば塩化セチルピリジニウムは、副作用として、口や喉の刺激感、口の中のただれ、舌が黒くなる、舌炎、口内炎、歯肉出血など口腔疾患を悪化させる可能性のある症状が現れることがあり、必ずしもそのままでは口腔に許容可能な担体とは言えない。 本発明の口腔用組成物の調製に用いる水として例えば精製水、注射用蒸留水等を基本とし、場合によれば水道水など飲用に適する水が挙げられ、好ましくは、イオン含量が少なく、有機不純物を含まないものであるべきである。本発明の口腔用組成物において、水の含有量は、目的とする口腔用組成物の形状にも依存するが、組成物の1重量%〜約99重量%、好ましくは約3重量%〜約97重量%を占めてもよい。水の量には、添加される水に加え、他の添加剤等の担体と共に導入される水が包含される。 ゲル剤に使用される基剤としては、ゲル化剤、低級アルコール類、多価アルコール類、硬化油、および精製水等が挙げられる。ゲル化剤としては、液体をゲル化して固化する化学物質であればよく、界面活性剤の高濃度のミセルや高分子の溶液である高分子ゲルが用いられる。 低級アルコール類としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、およびベンジルアルコール等が挙げられる。 多価アルコールとしては、グリセリン、エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、マクロゴール、およびポリプロピレングリコール等が挙げられる。 ゲルを調製する際には、組成物の望ましい稠度を提供し、使用の際に望ましい活性剤放出特性を提供し、貯蔵安定性を提供し、組成物などの安定性を提供するために、いくつかの増粘剤を加えることが必要である。好ましい増粘剤は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、ラポナイト、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウムのようなセルロースエーテルの水溶性塩である。カラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、およびトラガカントゴムのような天然ゴムを使用することもできる。さらに質感を改善するために、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウムまたは超微粒子状シリカを増粘剤の一部として使用することができる。 ゲル化剤の含有量は、消炎鎮痛外用剤の全量に対して合計0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜5重量%、特に0.25〜3重量%であるのが好ましい。 pH調整剤としては、緩衝剤、アルカリ金属水酸化物などを用いてpHを所望の値に調整するための担体であればよい。本発明では、本発明の組成物をpH約3.0〜pH約10の範囲、より好ましくは、pH約5.0〜pH約8.5の範囲に調整するために用いることができる。好ましいpH調整剤および又は緩衝剤としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、炭酸塩、セスキ炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、および有機酸、有機酸塩、有機塩基などが挙げられる。具体的なpH調整剤および又は緩衝剤には、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム)、アルカリ金属重炭酸塩(炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム)、ピロリン酸塩、ホウ酸、クエン酸、およびクエン酸ナトリウム、リンゴ酸、酒石酸、酒石酸ナトリウム、乳酸、イミダゾール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びリドカイン等が挙げられる。好ましくは、アルカリ金属水酸化物や、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム(以下、重曹と表記することもある)などのアルカリ金属重炭酸塩、リン酸塩、有機酸、有機酸塩、リドカイン等が挙げられる。 pH調整剤は、所望のpHを達成できる緩衝剤などの量で規定されるが、重量として、本組成物は、口腔用組成物の約0.01重量%〜約50重量%、好ましくは約0.01重量%〜約40重量%、より好ましくは約0.03重量%〜約30重量%、最も好ましくは約0.03重量%〜約25重量%のアルカリ重炭酸塩を含有してもよい。 保湿剤は、練り歯磨きなどに代表されるペースト状の組成物が空気への曝露時に硬化するのを防ぎ、組成物に口への潤い感を付与し、特定の保湿剤では、練り歯磨き組成物に望ましい甘い香味を付与するのに役立つ。保湿剤は、純保湿剤を基準にすると、一般に本明細書の組成物の約0重量%〜約70重量%、好ましくは約5重量%〜約25重量%を構成する。本発明の組成物における使用に好ましい保湿剤としては、たとえば、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールのような食用多価アルコール、特にソルビトールおよびグリセリンが挙げられる。 着香剤(香料)としては、たとえば、ウインターグリーン油、ペパーミント油、スペアミント油、クローブ芽油、メンソール、アネトール、サリチル酸メチル、オイカリプトール、カッシア、1−メンチルアセテート、セージ、オイゲノール、パセリ油、オキサノン(oxanone、α−イリソン、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグエトール、シナモン、バニリン、チモール、リナロール、およびCGAとして知られるシンナムアルデヒドグリセロールアセタールなどが挙げられる。着香剤は、本発明の組成物の約0.001重量%〜約5重量%の濃度で用いられる。 甘味剤としては、たとえば、スクロース、グルコース、サッカリン、グリチルリチン酸およびその塩、デキストロース、果糖、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、フルクトース、マルト−ス、キシリトール、サッカリン塩、タウマチン、アスパルテーム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファムおよびシクラミン酸塩、特にシクラミン酸ナトリウムおよびサッカリンナトリウムなどが挙げられる。甘味剤は、本発明の組成物の約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは約0.05重量%〜約3重量%の濃度で用いられる。 矯味剤としては、たとえば、アスコルビン酸(塩)、アセンヤク、アマチャ、ウイキョウ、エリスリトール、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、オイゲノール、オウバクエキス、オウレン、オレンジ(油)、カカオ、カラメル、カルバコール、カンゾウ、カンフル、5‘−グアニル酸、クエン酸(塩)、グリチルリチン酸(塩)、グルタミン酸(塩)、クロレラエキス、ケイヒエキス、ケイヒ油、コハク酸(塩)、サフラン、サリチル酸メチル、サンショウチンキ、シャクヤクエキス、酒石酸(塩)、ショウキョウ、シンナムアルデヒド、ステビアエキス、センブリ、D-ソルビトール、ダイズ油、タイソウエキス、タウリン、タンニン酸、チョウジ油、トウヒエキス、ニガキエキス、梅肉エキス、ハチミツ、ハッカ水、ハッカ油、フマル酸(塩)、l−メントール、ポビドン、d−ボルネオール、マルツエキス、ユーカリ油、緑茶末、リンゴ酸(塩)、レモン油、ローズ油、およびローヤルゼリーなどが挙げられる。矯味剤は、組成物の約0.05重量%〜約30重量%、好ましくは約0.2重量%〜約20重量%の濃度で用いられる。 着色剤は水溶液の形態であってもよく、たとえば、食用青色1号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、および食用赤色102号など医薬品または食品に安全に使用される周知のものが挙げられる。好ましくは1%の着色剤水溶液であってもよい。着色溶液は、一般に組成物の約0.01重量%〜約5重量%の濃度で用いられる。 防腐剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、カンテン、クロルヘキシジン、パラオキシ安息香酸エステル(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、およびブチルエステル)、塩化ベンザルコニウム、および塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。防腐剤は、一般に組成物の約0.01重量%〜約5重量%を構成する。 界面活性剤としては、広いpH範囲にわたって適度に安定かつ発泡性であるものである。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性、双性イオン性、またはカチオン性であってよい。 本明細書で有用なアニオン性界面活性剤には、アルキル残基に8個〜20個の炭素原子を有するアルキルサルフェートの水溶性塩(たとえば、アルキル硫酸ナトリウム)、および8個〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性塩が挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウムおよびココナツモノグリセリドスルホン酸ナトリウムは、この種類のアニオン性界面活性剤の例である。他の好ましいアニオン性界面活性剤は、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、タウレート、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなサルコシネートである。アニオン性界面活性剤の混合物を使用することもできる。多くの好ましいアニオン性界面活性剤が、米国特許第3,959,458号(アグリコーラ(Agricola)ら、1976年5月25日発行)に開示されている。 本発明の組成物に用いることができる非イオン性界面活性剤は、アルキレンオキシド基(性質上親水性)と、性質上脂肪族またはアルキル−芳香族であってもよい有機疎水性化合物との縮合によって生成される化合物として広く定義できる。好ましい非イオン性界面活性剤の例には、ポロキサマー(商標名プルロニック(Pluronic)として販売)、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(商標名トゥイーンズ(Tweens)として販売)、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、脂肪族アルコールエトキシレート、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、プロピレンオキシドおよびエチレンジアミンの反応生成物とエチレンオキシドの縮合から得られる生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、長鎖第三級アミンオキシド、長鎖三級ホスフィンオキシド、および長鎖ジアルキルスルホキシドなどが挙げられる。非イオン性界面活性剤ポロキサマー407は、ポロキサマーがまた乳化剤、結合剤、安定剤としても機能し得、第一スズおよび亜鉛のような金属イオンの収斂性を低減するので、最も好ましい界面活性剤の1つである。ポロキサマーは、分子量が1,000〜15,000超の範囲である、一級ヒドロキシル基で終端をなす二官能性ブロックポリマーである。ポロキサマーは、BASFによりプルロニクス(Pluronics)およびプルラフロ(Pluraflo)の商標名で販売されている。本発明に好ましいポロキサマーは、ポロキサマー407およびプルラフロL4370である。 本発明において有用な両性界面活性剤は、脂肪族第二級および第三級アミンの誘導体として広く記載することができ、その際、脂肪族残基は直鎖または分枝鎖状であることができ、また脂肪族置換基の1つは約8〜約18個の炭素原子を含有し、1つはアニオン性水溶性基、たとえばカルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、またはホスホネートを含有する。他の好ましい両性界面活性剤はベタイン、特に、コカミドプロピルベタインである。両性界面活性剤の混合物も使用できる。この好ましい非イオン性および両性界面活性剤の多くが、米国特許第4,051,234号(ギースキー(Gieske)ら、1977年9月27日発行)に開示されている。本組成物は、典型的には、組成物の約0.25重量%〜約12重量%、好ましくは約0.5重量%〜約8重量%、最も好ましくは約1重量%〜約6重量%の各濃度で1つ以上の界面活性剤を含む。 安定化剤としては、アジピン酸、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エデト酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸、およびシステイン等が挙げられる。 本発明の口腔用組成物は、任意に、生物学的に利用可能で有効なフッ化物イオンを提供することができる可溶性フッ化物源を包含してもよい。可溶性フッ化物イオン源には、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化インジウム、フッ化アミン、およびモノフルオロリン酸ナトリウムが挙げられる。 本組成物は、約50ppm〜約3500ppm、好ましくは約500ppm〜約3000ppmの遊離フッ化物イオンを提供できる可溶性フッ化物イオン源を含有してもよい。所望の量のフッ化物イオンを送達するために、フッ化物イオン源は、全口腔用組成物中に、口腔に送達される全組成物の約0.1重量%〜約5重量%、好ましくは約0.2重量%〜約1重量%、より好ましくは約0.3重量%〜約0.6重量%の量で存在してもよい。 本発明は、組成物中に過酸化物源を含んでいてもよい。白化に加えて、過酸化物はまた口腔に他の効果も提供する。過酸化水素および他の過酸素化合物は、虫歯、歯垢、歯肉炎、歯周炎、口臭、慢性再発性アフター性潰瘍、義歯の炎症、歯列矯正装置の損傷、抜歯後および歯根膜手術後、外傷性口腔病変、ならびに粘膜感染、ヘルペス口内炎などに対する治療的および/または予防的処置に有効であると長い間認められてきた。口腔内の過酸化物含有剤は、組織および唾液酵素との相互作用によって生じる何千もの小さな酸素の泡を生成する化学機械的作用を及ぼす。口内洗浄剤の激しい動き(swishing action)が、この特有の化学機械的作用を増強する。そのような作用は、その他の剤を感染した歯肉のクレバスに送達するために推奨されてきた。故に、過酸化物は、歯周病と関連することが知られている嫌気性細菌のコロニー形成および増殖を防ぎ、本明細書で使用するのに好ましい抗菌剤の1つである。 過酸化物源は、過酸化水素、過酸化カルシウム、および過酸化尿素からなる群から選択される。以下の量は過酸化物原料物質の量を示すが、過酸化物源は過酸化物原料物質以外の成分を含有してもよい。本組成物は、口腔用組成物の約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.2重量%〜約3重量%、最も好ましくは約0.3重量%〜約0.8重量%の過酸化物源を含有してもよい。 本組成物は、任意に、キレート化活性を有する物質であり、歯石形成に関連する鉱物の沈着を低減するのに有効な抗結石剤を含んでいてもよい。このようなキレート剤は、細菌の細胞壁に見られるカルシウムを錯化でき、さらにこのバイオマスをそのまま保持するのに役立つカルシウム架橋からカルシウムを除去することによって歯垢を分解できる。しかしながら、カルシウムに対する親和性が高すぎるキレート剤を用いることは、結果として歯の脱ミネラル化(demineralization)をもたらす可能性があり、望ましくはない。好ましいキレート剤は、洗浄を改善し、歯垢および結石の形成を減少させる。キレート剤はまた、金属イオンと錯化することができ、故に組成物に存在する場合に第一スズを安定化するために使用することができる。 抗結石活性に有用なこのようなキレート剤には、ピロリン酸塩、トリポリホスフェートおよびジホスホネート、たとえばEHDPおよびAHPが挙げられる。本組成物にてピロホスフェートイオン源として有用なピロホスフェート塩には、ジアルカリ金属ピロホスフェート塩、およびテトラアルカリ金属ピロホスフェート塩が挙げられる。無水和物ならびに水和物の形の、二水素ピロリン酸二ナトリウム(Na2H2P2O7)、ピロリン酸四ナトリウム(Na4P2O7)、およびピロリン酸四カリウム(K4P2O7)が好ましい。本発明の組成物では、ピロホスフェート塩は、主に溶解した形態、主に溶解していない形態、または溶解した形態と溶解していない形態のピロホスフェートの混合物、の3つの形態のうちの1つで存在してよい。 ポリマー性ポリカルボキシレートも抗結石剤として用いられる。それらには、無水マレイン酸またはマレイン酸と別の重合可能なエチレン性不飽和モノマー、たとえばメチルビニルエーテル(メトキシエチレン)、スチレン、イソブチレンまたはエチルビニルエーテルとのコポリマーが挙げられる。このような物質は当該技術分野において周知であり、その遊離酸または部分的に若しくは好ましくは完全に中和された水溶性アルカリ金属塩(たとえばカリウム、好ましくはナトリウム)若しくはアンモニウム塩の形態で使用される。例は、約3万〜約100万の分子量を有する無水マレイン酸とメチルビニルエーテルの1:4〜4:1コポリマーである。これらのコポリマーは、たとえば、GAFケミカルズ・コーポレーション(GAF Chemicals Corporation)のガントレッツAN139(分子量50万)、AN119(分子量25万)、およびS−97医薬品等級(分子量7万)として入手可能である。 本発明に用いられるのに好ましいこれらのキレート剤の量は、約0.1%〜約2.5%、好ましくは約0.5%〜約2.5%、より好ましくは約1.0%〜約2.5%である。 本発明の組成物の局所口腔担体において有用な研磨剤には、歯科用として通常用いられる物質が挙げられる。選択される物質は、目的の組成物中で混和性があり、象牙質を過度に削らないものでなければならない。好ましい研磨剤には、たとえば、ゲルおよび沈殿物を包含するシリカ、不溶性ポリメタリン酸ナトリウム、水和アルミナ、炭酸カルシウム、オルトリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸カルシウム、および尿素とホルムアルデヒドとの粒子状縮合生成物のような樹脂性研磨剤物質が挙げられる。好ましい樹脂には、たとえば、フェノール樹脂、尿素、架橋エポキシド、および架橋ポリエステルが挙げられる。 シリカ砥粒研磨物質は、一般に、約0.1〜約30ミクロン、好ましくは約5〜約15ミクロンの範囲の平均粒径を有する。研磨剤は、沈殿シリカ、またはシリカキセロゲルのようなシリカゲルであることができる。例には、商標名「シロイド(Syloid)」としてW.R.グレース・アンド・カンパニー、デイビソン・ケミカル・ディビジョン(W.R. Grace & Company Davison Chemical Division)から市販されているシリカキセロゲル、およびJ.M.フーバーコーポレーション(J. M. Huber Corporation)から商標名ゼオデント(Zeodent)(登録商標)で市販されるもの、特に、ゼオデント(Zeodent)(登録商標)119、ゼオデント(Zeodent)(登録商標)118、ゼオデント(Zeodent)(登録商標)109、およびゼオデント(Zeodent)(登録商標)129という表記を有する沈殿シリカ物質が挙げられる。 上に列挙された様々な等級のゼオデント(登録商標)シリカ研磨剤の混合物のような研磨剤の混合物を用いることができる。本発明の歯磨剤組成物中の研磨剤の総量は、典型的には組成物の約6重量%〜約70重量%であり、練り歯磨きは、好ましくは約10重量%〜約50重量%の研磨剤を含有する。本発明の歯科用溶液、口内スプレー、うがい薬、および非研磨剤ゲル組成物は、典型的には、少量の研磨剤しか含有しないか、または研磨剤を全く含有しない。 本発明に係る組成物に含まれる本発明の化合物の量は特に限定されないが、安全かつ有効な量とすべきである。安全かつ有効な量とは、口腔の硬組織および軟組織に安全であると共に所望の利益を提供する、活性剤の十分な量を意味する。有効成分であるイブプロフェンの安全で有効な量は、治療される特定の状態、治療される患者の年齢および身体状態、状態の重症度、治療期間、併用療法の性質、使用する特定の剤形、ならびに薬剤を適用するための特定のビヒクルによって異なる。また、目的に応じても使用する量は適宜調製されるものである。 本発明にかかる組成物は、通常、成人の場合は100mLあたり、イブプロフェンまたはその薬理学的に許容される塩を約100μg〜20g、好ましくは1mg〜10g、より好ましくは10mg〜6g、さらに好ましくは100mg〜3gであり、それぞれ1回または数回に分けて使用する。また、複数回繰り返して使用してもよい。 本発明の局所口腔用組成物は、少なくとも以下に記載する効果を示す。 1.本発明(イブプロフェンの口腔内の局所投与)は、口内外傷、口内炎、歯周病、歯痛、抜歯後の疼痛、または口腔外科手術後の疼痛に代表される口腔内疾患に鎮痛および消炎効果がある。また、使用の回数を増やすことにより、その効果は増大する場合もある。 2.イブプロフェンは、インドメタシンやジクロフェナックよりも4〜8倍効力がマイルドであり、インドメタシンやジクロフェナックに比べて安全性が高いため、「口腔内での本剤を用いた濯ぎ」という使用態様では、使用量(患部への直接接触組成物量)の上限は実務上ほとんど気にしなくても良いという利点がある。 3.イブプロフェンは、強烈な刺激性の苦味を有している。したがって、鎮痛・消炎を対象としたこれまでのイブプロフェンの使用方法としては、服用のみが使われてきたため、苦味等の副作用を排除するためにカプセル化・錠剤や顆粒のコーティングなどの処理を行うことで、この課題に対応してきた。 これに対し、本発明は、溶解状態で強烈な刺激性の苦味を軽減できる。すなわち、本発明の一態様である、水酸化ナトリウムと少量の塩酸を処方したイブプロフェン処方液では、飲込まずに口腔内に含むだけの場合には原薬の刺激性の苦味をほとんど感じない事を発見した。これは、口腔内におけるイブプロフェンの新たな苦味マスキング手法である。さらに口腔に許容可能な担体を含有できるため、水、ゲル化剤、増粘剤、pH調整剤、保湿剤、着香剤(香料)、甘味剤、矯味剤、着色剤、防腐剤、界面活性剤、安定化剤等を適切に配合することにより、小児を含む患者に広く受け入れられ、患者の物理的、心理的負担を軽減するものである。 4.本発明の場合には口腔内患部に直接イブプロフェンが接触するので、速効性である。特に鎮痛効果は、以下の実施例で示されるように口内炎・軽度の歯痛でそれぞれ確認されている。 5.本発明は、口中濯ぎ剤としてイブプロフェンを使用する場合、イブプロフェンを服用しないため、薬物による全身性の副作用が、ほとんど発生しないと考えられるので、本発明は、画期的な組成物であり、その使用法において著しく有利である。したがって、口中濯ぎ剤としてイブプロフェンの量を経口剤の量以下にしておけば、もし万一、患者が本発明の組成物を適用している際に、誤って薬剤の一部あるいは全部を飲み込んだとしても、従来から認可/適用されてきたイブプロフェンの鎮痛に対する使用方法と同じことになり、そこで指摘されている副作用以上の問題は生じないため、安全性が高いことが言える。 6.イブプロフェンの高い安全性により、本発明の局所口腔用組成物の一日の使用回数や使用量は、患者の所望により増減できる。このことは、インドメタシンやジクロフェナックなどのNSAIDsの口腔内組成物では、使用量が厳しく制限されている事実を考慮すると本発明の組成物には患者の利益に直結する大きな利点がある。 がんの化学療法、放射線療法で最も多い副作用が口内炎であると言われている。臨床現場では、適切で効果的な疼痛緩和を促すような市販医薬品もなく、適切で効果的な治療法がないのが現状であり、院内製剤として一部の病院でインドメタシンスプレーやボルタレン含嗽剤が一部の病院で使われている程度である。(非特許文献1、2) 本発明は、この例を含む様々な医療上の要求に迅速、簡便、かつ安全に使用できる。 次に具体的な実施等を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者には明白なように、本発明の範囲から逸脱することなく、材料および方法の両面で多々の改変が可能である。 本発明に使用する材料、試薬等は、市販品、または本技術分野で公知の方法を用いて調製することができる。 [実施例1]イブプロフェンの刺激性苦味の確認試験1 イブプロフェン市販ソフトカプセル150mg4個を水道水100mLのみに入れて3時間放置すると崩壊し、内容液が分散した淡青みがかった乳白色懸濁液が得られた(色はソフトカプセルの着色料由来と考えられる)。この液を良く撹拌後、約10mLを口中に約30秒前後含むと、全員、口中に若干のしびれ感・刺激性苦味(burning sensation)が感じられた。(n=3:通常の大人であれば十分我慢できる範囲) [実施例2]イブプロフェンの刺激性苦味の確認試験21.イブプロフェン市販ソフトカプセル150 mgを切断して、内容液をカプセルから取り出し口中に含む実験を行うと、刺激性の刺すような痛みと若干の苦味が感じられた。(n=1) [実施例3]イブプロフェンの刺激性苦味の確認試験3 イブプロフェン市販ソフトカプセル150mg4個を水道水100mLのみに入れて3時間放置して得られた懸濁液に、炭酸水素ナトリウム約240mgを添加し撹拌したら澄明となった。上記実施例1に参加した同一人物がこの液を口に含むと、全員、炭酸水素ナトリウム未添加懸濁液(実施例1)で感じられた刺激性苦味やしびれ感は感じられなかった。(n=3) [実施例4]イブプロフェンの刺激性苦味の確認試験4 上記実施例1に参加した同一人物が、市販のイブプロフェン錠剤(150mg糖衣錠)を口中で噛み砕いてしばらく保持したところ、全員、上述の実施例1のソフトカプセル内容物の水性懸濁液よりも強い刺激性苦味やしびれ感が感じられ、30秒〜1分前後保持して使用する本発明の目的には実用上不可である事が確認された。(n=3) [実施例5]イブプロフェン口腔内濯ぎ剤処方例 注)イブプロフェン原薬(CAS.NO:15687-27-1)は、市販品を用いることができる。また、リングルアイビー200mg錠からイブプロフェンを抽出し、精製して用いることもできる。また、イブプロフェン単剤の市販製剤を使用してもよい。その場合、市販錠200mgの場合は3錠、市販のソフトカプセル150mgの場合は4個を、本処方では使用できる。 [実施例6]調製方法例1 蓋付き容器に水道水100mLを入れ、重曹3gを加え軽く振盪撹拌し重曹を溶かす(水溶液I:重曹3000mg/100mL)。水溶液Iを2.5倍希釈する(水溶液II:重曹1200mg/100mL)。水溶液IIを5倍希釈する(水溶液III:重曹240mg/100mL)。水溶液IIIに、イブプロフェン単剤の市販200mg錠なら3錠、市販のソフトカプセル150mgなら4個を投入し、約2時間室温放置する。錠剤は崩壊し、ソフトカプセルは一部溶解し内容物が漏出しているので、均一になる様に撹拌し、イブプロフェン口腔内洗浄剤を得た。なお、必要に応じて不要物は濾過する。 [実施例7]調製方法例2 100mlのビーカーに精製水40mlを入れ、予め調製した1N水酸化ナトリウム1.5mlを撹拌下添加し、イブプロフェン(和光純薬、1g入り、生化学用)300mgを投入し、均一になるように室温下撹拌した。約10分後、未溶解のイブプロフェンが認められたので、1N水酸化ナトリウム0.3mlを撹拌下徐々に添加し、全量溶解させ澄明な水溶液を得た(pH11.5)。 得られた水溶液に、撹拌下、0.5N塩酸を0.45ml徐々に添加し、精製水で50mlにメスアップしてイブプロフェン口腔内洗浄剤を得た(pH7.2)。 [実施例8] 実施例7で得られたイブプロフェン口腔内洗浄剤の刺激性苦味の確認試験 実施例7で得られたイブプロフェン口腔内洗浄剤10mlを口中に約30秒含み、その後吐き出し刺激・苦み・しびれ感等を評価した。6人中3人でごくわずか刺激が感じられたが十分許容できる程度であり、苦みやしびれ感は、全員認められなかった。(n=6) [実施例9]調製方法例3 100mlのビーカーに精製水40mlを入れ、重曹125mgを撹拌下添加し溶解させた後、イブプロフェン(和光純薬、1g入り、生化学用)300mgを投入し、均一になるように室温下撹拌した。約10分後、未溶解のイブプロフェンが認められたので、更に832mgの重曹を撹拌下徐々に添加後、更に追加で1N水酸化ナトリウム0.6mlを徐々に添加し溶解させ、澄明な水溶液を得た(pH8.6)。 得られた水溶液を、精製水で50mlにメスアップしてイブプロフェン口腔内洗浄剤を得た(pH7.9)。 [実施例10]実施例9で得られたイブプロフェン口腔内洗浄剤の刺激性苦味の確認試験 実施例9で得られたイブプロフェン口腔内洗浄剤10mlを口中に約30秒含み、その後吐き出し刺激・苦み・しびれ感等を評価した。全員刺激やしびれ感は認められず、6人中1人が少し苦みを感じたが十分許容できる程度であり、残り5人は苦みを感じなかった。(n=6) [実施例11]調製方法例4 100mlのビーカーに精製水40mlを入れ、予め調製した1N水酸化カリウム1.5mlを撹拌下添加し、イブプロフェン(和光純薬、1g入り、生化学用)300mgを投入し、均一になるように室温下撹拌した。約15分後、未溶解のイブプロフェンが認められたので、1N水酸化カリウム0.2mlを撹拌下徐々に添加し、全量溶解させ澄明な水溶液を得た(pH7.6)。得られた水溶液を、精製水で50mlにメスアップしてイブプロフェン口腔内洗浄剤を得た(pH7.2)。 [実施例12]実施例11で得られたイブプロフェン口腔内洗浄剤の刺激性苦味の確認試験 実施例11で得られたイブプロフェン口腔内洗浄剤10mlを口中に約30秒含み、その後吐き出し刺激・苦み・しびれ感等を評価した。全員、実施例7で得られた試料より少しは強いがわずかの刺激或いは苦みが感じられたが十分許容できる程度であり、しびれ感は認められなかった。(n=6) [実施例13]鎮痛消炎効果に関する試験1 強い痛みの口内炎を患っているがん患者Aに、調製方法例1のように調整したイブプロフェン口腔内洗浄剤処方液を口に含んでもらう。口中に留めて、口の全体、特に患部に行き渡るような動作をしつつ、30秒経過後にそれを口中から吐き出す(口濯ぎ)。 その結果、本発明のイブプロフェン口腔内洗浄剤処方液、およびその使用方法により、消炎・鎮痛効果が認められた。また、口腔内に留めたことによる刺激性の痛みの訴えはなかった。 [実施例14]鎮痛消炎効果に関する試験2 実施例12と同様な試験を軽度の口内炎患者Bに適用した場合(就寝前。口腔内保持時間:約30秒)、鎮痛効果が認められた。また、口腔内の刺激性の痛みや苦味もなかった。さらに、翌朝痛みを確認したところ、かなり痛みが軽減していた。 [実施例15]鎮痛消炎効果に関する試験3 実施例12と同様な試験を軽度の歯痛(歯にヒビがあり、そこが沁みた事による歯痛)のある患者Cへ本発明の適用を試みたところ(口腔内保持時間:約30秒)、鎮痛効果が認められた。同時に、口中の痛みや刺激性の苦味の訴えはなかった。また、口腔内洗浄直後に沁み具合も軽減され、繰り返し適用(一回目の適用後、それぞれ数分を置いて2回適用)を試みたところ、歯の痛みがより軽減された。 本発明は、イブプロフェンまたはその薬学的に許容される塩を含有する、口腔内疾患に基因する疼痛および/または炎症を軽減する局所口腔用組成物を提供する。また、その組成物の製造方法、およびその組成物を用いた治療方法をも提供する。本発明は、医療上の要求に迅速、簡便、かつ安全に対応でき、産業上の有用性は極めて大きい。 イブプロフェンまたはその薬学的に許容される塩と少なくとも1つの口腔に許容可能な担体を含有する、口腔内疾患に基因する疼痛および/または炎症を予防又は軽減する局所口腔用組成物。 水溶液、ジェル状、またはパッチ状である、請求項1に記載の組成物。 イブプロフェンの薬学的に許容される塩がナトリウム塩またはカリウム塩である、請求項1または請求項2に記載の組成物。 口腔内疾患が、口内外傷、口内炎、歯周病、歯痛、抜歯後の疼痛、または口腔外科手術後の疼痛である、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の組成物。 イブプロフェン、pH調整剤、および水を含有することを特徴とする、刺激性または苦味が軽減された溶液または懸濁液であって、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の組成物。 口濯ぎ剤である請求項1に記載の組成物。 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の組成物であって、イブプロフェンまたはその薬学的に許容される塩と少なくとも1つの口腔に許容可能な担体を混合することを特徴とする、当該組成物の調製方法。 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の組成物をヒトを含む動物に投与することを特徴とする、口腔内疾患の治療方法。 口濯ぎを行うことを特徴とする、請求項8に記載の口腔内疾患の治療方法。 パッチ状の製剤を(貼付、あるいは挿入)することを特徴とする、請求項8に記載の口腔内疾患の治療方法。 【課題】口内外傷、口内炎、歯周病、歯痛、抜歯後の疼痛、又は口腔外科手術後の疼痛を含む口腔内疾患に基因する疼痛及び/又は炎症を軽減する組成物、及びその組成物の調整方法、及びその組成物を用いた治療方法の提供。【解決手段】イブプロフェン((2RS)−2(4−(2−メチルプロピル)フェニルプロパン酸)又はその薬学的に許容される塩と少なくとも1つの口腔に許容可能な担体を含有する水溶液、ジェル状、又はパッチ状である局所口腔用組成物およびその組成物の調整方法、およびその組成物を用いた治療方法。【選択図】なし