生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_セルロースの熱水処理方法
出願番号:2014048918
年次:2015
IPC分類:C07D 307/50,C07H 3/02,C08B 16/00


特許情報キャッシュ

川村 邦男 緒方 知徳 迫 勝善 田邉 和男 JP 2015172020 公開特許公報(A) 20151001 2014048918 20140312 セルロースの熱水処理方法 特定非営利活動法人広島循環型社会推進機構 506212916 田村 善光 100146020 古田 剛啓 100062328 川村 邦男 緒方 知徳 迫 勝善 田邉 和男 C07D 307/50 20060101AFI20150904BHJP C07H 3/02 20060101ALI20150904BHJP C08B 16/00 20060101ALN20150904BHJP JPC07D307/50C07H3/02C08B16/00 2 1 OL 10 4C037 4C057 4C090 4C037HA06 4C037HA20 4C037HA22 4C057AA05 4C057BB02 4C090AA04 4C090BA24 4C090CA04 4C090CA31 本発明は、木綿ポリエステル混合繊維製品廃棄物をリサイクルする技術としても利用でき、セルロースからグルコースや5−ヒドロキシメチルー2−フルフラール(以下、HMFとも記載する。)を生成するセルロースの熱水処理方法に関する。特許文献1には、セルロースを含有する材料からセルロース成分を超臨界水又は亜臨界水で可溶化した後、処理液にセルラーゼ製剤を添加し、セルロース及びセルロースの部分分解物である高重合度セロオリゴ糖をセルラーゼ製剤により加水分解することによって、グルコース及び/又はセロオリゴ糖を得る方法が開示されている。特許文献2には、セルロースから5−ヒドロキシメチルフルフラールおよびフルフラールを製造する5−ヒドロキシメチルフルフラールおよびフルフラールの製造方法において、反応温度250℃ 以上400℃ 未満、圧力10 MPa以上の水にセルロースと酸を共存させることによって、前記セルロースを直接前記5−ヒドロキシメチルフルフラールおよびフルフラールにまで選択的に分解することを特徴とする5−ヒドロキシメチルフルフラールおよびフルフラールの製造方法が開示されている。 特許文献3には、セルロースから5−ヒドロキシメチルフルフラールを製造する5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法において、反応温度200 ℃ 以上400 ℃ 未満、圧力10MPa以上40M Pa以下の水に、セルロースと酸と触媒を共存させることによって、前記セルロースを直接5−ヒドロキシメチルフルフラールにまで選択的に分解する分解工程を有することを特徴とする5− ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法が開示されている。また、非特許文献1には、綿製品の亜臨界水加水分解処理について記載されており、水相におけるグルコース等の生成に関する「図3−4−10水相中における糖類収率の経時変化」に、グルコース、HMF、セロビオース、フルクトース、グリコールアルデヒド、エリトロース、フルフラールなどが生成されると記載されている。特開2001−95594号公報特開2005−200321号公報特開2007−145736号公報平成18年度3Rシステム化可能性調査事業・「廃天然繊維製品等のカスケーディング活用に関わる3Rシステム調査事業」報告書(平成19年3月・近畿経済産業局、p.52〜56)特許文献1に記載の発明は、セルロースからグルコースを生成する発明であるが、セルロース成分を320℃〜500℃の超臨界水又は亜臨界水で可溶化する処理と、その処理後にセルラーゼ製剤を添加し加水分解させる処理を実施するという2段階の処理が必要であり、また高温で処理するためには高温高圧に耐える装置が必要となり、処理コストが増加し安全性が低下するので、実用化における難点があるという問題があった。特許文献2に記載の発明又は特許文献3に記載の発明は、セルロースからHMFを製造する発明であるが、硫酸や硝酸などの強酸を使用しなければならないことから設備が腐食するという問題があった。また、非特許文献1から、綿製品の亜臨界水加水分解処理を実施すると、目的物質であるグルコース及びHMF以外に、非特許文献1の図3−4−10に記載されているようにセロビオース、フルクトース、グリコールアルデヒド、エリトロース、フルフラール等の糖類、及び、図3−4−9に記載されているようにピルビン酸、グリコール酸、乳酸、ギ酸、酢酸、レプリン酸、プロピオン酸等の有機酸などの副産物が多く生成されてグルコース及びHMFの収率が低いという問題があった。そして、グルコース及びHMFを回収しようとすると精製が必要となり精製コストがかかるという問題があった。そこで、本発明の課題は、木綿を含有する製品等のセルロースからグルコースやHMFを生成させるために、設備が腐食しにくく、反応温度を低温化でき、圧力を低くすることができて設備投資コストを安価化でき、副産物が生成しにくい方法を提供することである。請求項1に記載のセルロースの熱水処理方法は、セルロースを、容器内に貯留した弱酸水溶液に浸漬し、前記浸漬したセルロースを160〜230℃に加温してグルコース及び5−ヒドロキシメチル−2−フルフラールを生成することを特徴とする。請求項2に記載のセルロースの熱水処理方法は、請求項1において、前記弱酸がカルボン酸であることを特徴とする。請求項1及び2に記載の発明は、反応温度を、超臨界水や亜臨界水で加水分解するときの温度である略300℃以上より低温である160〜230℃で目的物質であるグルコース及びHMFを生成できるので、高温にするために高温高圧に耐える装置が不必要となり処理コストを安価化できるという効果を奏する。本発明において、加水分解とは、セルロースがグルコースを単位としてできていて、グルコースとグルコースの結合が水が加わることによって切れる過程を意味する。また、添加する酸が、強酸でなく弱酸であることから、設備の腐食が生じにくく、さらに強酸に比較して設備の中和処理に要する手間が少ないという効果を奏する。強酸であっても設備の腐食の進行を遅らせようとして強酸を薄めて使用した場合は、酸としての機能が弱まり化学反応がばらつきやすいという問題があった。さらに、目的物質であるグルコース及びHMF以外の副産物がほとんど生成されないため、グルコース及びHMFの収率が高いという効果を奏する。実施例1の場合のグルコース及びHMFの生成率を示す図である。本発明に係るセルロースの熱水処理方法は、セルロースを、容器内に貯留した弱酸水溶液に浸漬し、前記浸漬したセルロースを160〜230℃に加温してグルコース及び5−ヒドロキシメチル−2−フルフラールを生成する方法である。そして、前記弱酸がカルボン酸であり、該カルボン酸には、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、モノクロロ酢酸、フマル酸、フタル酸又は安息香酸等が含まれる。前記弱酸に代替して希釈した塩酸を使用した場合について説明する。試料として白色の木綿100重量%の生地を、透明な瓶に塩酸液10mLを貯留し、該塩酸液中に前記生地試料0.1g(塩酸液重量に対して1重量%)を分散させて投入し、加熱温度を225℃で30分維持したときの前記瓶内の状態を観察した。その結果、0.01%濃度の塩酸の場合は瓶内にはほとんど変化が見られず反応が進行しておらず、0.1%濃度の塩酸の場合は瓶内にはほとんど変化が見られず反応が進行しておらず、1%濃度の塩酸の場合は瓶内の液が黒色化し沈殿物が見られた。これにより、強酸を希釈させた場合は、化学反応が安定せずかつ化学反応がほとんど進行しないことが示された。セルロースには、セルロースの他に、木綿繊維製品、木綿ポリエステル混合繊維製品などの木綿と他の繊維との混合繊維製品、紙、木材などのセルロースを含有した原料や製品が含まれる。以下に、セルロースからグルコース及びHMFを生成する方法を説明する。前記生成方法はバッチ生産やフロー生産のいずれにも適する。例として木綿繊維製品や木綿ポリエステル混合繊維製品などのセルロースを含有した繊維製品で以下に説明する。まず、木綿繊維製品や木綿ポリエステル混合繊維製品などのセルロースを含有した繊維製品を、ワンダーブレンダー等の切断手段で粉砕してもいいし、粉砕しなくてもよい。繊維製品の大きさに限らず有効にグルコース及びHMFを製造することができる。次に、容器内に濃度0.1〜30%、好ましくは濃度1〜10%のクエン酸水溶液を貯留し、前記クエン酸水溶液中にセルロースを含有した繊維製品を投入する。このときにセルラーズ製剤などの添加物は不要である。前記容器は、水の蒸気圧より高い圧力を保持できる容器であって、加熱によって貯留している水溶液が沸騰せず液体として保持される構造であればよく、例えばバッチ処理の場合は密閉された容器であり、フロー処理の場合は所定の圧力に設定できる容器であればよい。次に、前記クエン酸水溶液の温度を低温である160℃〜230℃のうちのいずれかの温度に加温し、5分から180分間保持する。保持する時間は弱酸の濃度や温度によって任意に設定する。これにより、前記貯留された液中にセルロースからグルコースが生成され、該グルコースが脱水反応してHMFに転換される。これにより、セルロース含有繊維製品からグルコース及びHMFが生成される。以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。クエン酸中での加熱時間に対する分解挙動の影響を説明する。試料として木綿25重量%とポリエステル75重量%のユニフォーム(青色生地)をワンダーブレンダーで粉砕した。そして、密閉容器内に1%濃度のクエン酸水溶液10mLを貯留し、該クエン酸水溶液に前記生地粉砕試料0.1g(クエン酸水溶液重量に対して1重量%)を分散させて投入し、加熱温度を225℃で5分から60分維持したときのグルコース及びHMFの生成率を調査した。その結果を表1又は図1に示す。 グルコースは、呈色試薬キットである和光純薬製グルコースCH−テストワコーを用いて定量し、HMFは280nmの吸光度の変化を観察して濃度を調査した。その結果を表1及び図1に示す。図1において、グルコースaとHMFbの生成率を加熱時間経過とともに表している。 表1又は図1より、グルコースの生成率は反応開始からすぐに生成が開始され反応時間が約30分までは増加し約20%の高い生成率を示して、約50分までは横ばいで推移し、その後生成率が減少してきている。一方、HMFは、グルコースの脱水反応によって生成されることから、約20分後から生成が開始され約50分過ぎまで増加傾向にあり生成率が約12%に達することが示唆されている。一般的にセルロースからグルコースを得るためには、例えばセルラーゼ等の酵素を使用して加水分解する方法、硫酸等の強酸なる酸触媒を用いて加水分解する方法、又は、水を使用して超臨界水や亜臨界水で加水分解する方法がある。本発明はカルボン酸なる弱酸を用いることにより、超臨界水を使用するときの温度320〜500℃や亜臨界水を使用するときの温度270〜310℃より低温で、かつ強酸を使用しないで、約20%という多くのグルコースや約12%という多くのHMFが生成できることが示唆されている。繊維製品の処理量の違いによるグルコースやHMFの生成率を説明する。実施例1の場合において繊維製品の処理量をクエン酸水溶液の重量に対して5重量%にする他は、実施例1と同じように、実施例1と同じ試料を使用し、密閉容器内に1%濃度のクエン酸水溶液10mLを貯留し、加熱温度を225℃で30分から40分維持したときのグルコース及びHMFの生成率を調査した。その結果を表2に示す。表2と表1との比較から、グルコースの生成率はあまり変化がないが、HMFの生成率は3〜4倍に増加することが示された。そして、繊維製品の処理量が変化してもグルコースやHMFの生成は実施されることが示唆された。次に、クエン酸濃度を変化させた場合のグルコースやHMFの生成率を説明する。実施例1の場合においてクエン酸濃度を1〜10%濃度で変化させた以外は、実施例1と同じように、実施例1と同じ試料を使用し、密閉容器内にクエン酸水溶液10mLを貯留し、該クエン酸水溶液に前記生地粉砕試料0.1g(クエン酸水溶液重量に対して1重量%)を分散させて投入し、加熱温度を225℃で40分維持したときのグルコース及びHMFの生成率を調査した。その結果を表3に示す。表3より、クエン酸濃度を1〜10%で変化させると、クエン酸濃度2%でグルコース生成率が最大となった。HMFの生成は、クエン酸の濃度にかかわらず8〜11%であった。加熱温度200℃に設定した場合におけるグルコースやHMFの生成率を説明する。実施例1と同じ試料を使用し、密閉容器内に1%〜10%濃度のクエン酸水溶液10mLを貯留し、該クエン酸水溶液に前記生地粉砕試料0.1g(クエン酸水溶液重量に対して1重量%)を分散させて投入し、加熱を30〜60分維持したときのグルコース及びHMFの生成率を調査した。その結果を表4に示す。 表4から、加熱温度200℃では加熱時間を大きくすれば、加熱温度225℃の場合と同じ約20%のグルコースが生成され、HMFの生成率も高くなることが示されている。加熱温度180℃に設定した場合におけるグルコースやHMFの生成率を説明する。実施例1と同じ試料を使用し、密閉容器内に2%濃度のクエン酸水溶液10mLを貯留し、該クエン酸水溶液中に前記生地粉砕試料0.1g(クエン酸水溶液重量に対して1重量%)を分散させて投入し、加熱を40〜120分維持したときのグルコース及びHMFの生成率を調査した。その結果を表5に示す。表5から、生地粉砕試料の投入割合が同一で、クエン酸濃度が同一で、加熱時間が同一の場合には加熱温度が低下すると加熱温度が高い場合に比較して、グルコース生成率及びHMF生成率がともに低いが、加熱時間が長くなるにつれてグルコース生成率及びHMF生成率がともに高まることが示されている。加熱温度160℃に設定した場合におけるグルコースやHMFの生成率を説明する。実施例1と同じ試料を使用し、密閉容器内に10%濃度のクエン酸水溶液10mLを貯留し、該クエン酸水溶液に前記生地粉砕試料0.1g(クエン酸水溶液重量に対して1重量%)、0.5g(クエン酸水溶液重量に対して5重量%)を分散させて投入し、加熱時間を120分、180分維持したときのグルコース及びHMFの生成率を調査した。その結果を表6に示す。 表6から、加熱温度が160℃の場合は加熱温度225℃や200℃に比較して、グルコースやHMFの生成の速度に違いがみられるが、加熱温度が160℃の低温においてもグルコースやHMFが生成されることが示されている。 グルコースやHMF生成時に同時に生成される副生成物として各種糖類と有機酸の生成状況を説明する。試料として木綿100重量%の糸をワンダーブレンダーで粉砕した。そして、密閉容器内に1%濃度のクエン酸水溶液10mLを貯留し、該クエン酸水溶液中に前記生地粉砕試料0.1g(クエン酸水溶液重量に対して1重量%)を分散させて投入し、加熱温度を225℃で40分、50分、60分維持したときのグルコース、HMF及び副生成物を調査した。その糖類の検出結果を表7に示す。 糖類の検出は、装置は、HPLCであって、型式がGLサイエンス社製 GL−7400 HPLC systemで、カラムはAsahipak NH2P−50 4E 250×4.6mmI.Dを使用し、試料を0.45μmフィルターでろ過し、単糖、2糖、3糖をフェニルヒトラジン蛍光検出法により測定した。単糖7種(ラムノース、キシロース、アラビノース、フルクトース、マンノース、クルコース、カラクトース)、2糖3種(シュクロース、セロヒオース、マルトース)、3糖1種(マルトトリオース)のそれぞれの標準物質を用いて定性及び定量評価した。 表7から、グルコース以外の副生成物である糖類は微量しか検出されなかったことを示している。このことは目的物質であるグルコース及びHMPの収量が多くなり、純度が高くなることを示唆している。 次に、有機酸について測定した。有機酸の測定方法は、キャピラリー電気泳動法で定性分析を行った。このときに、イオンクロマトグラフィーによる測定も実施した。その結果、クエン酸の0.7重量%を除いて、いずれも測定不可能のレベルにあり、測定対象としていたシュウ酸、ギ酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グリコール酸、酢酸、ピルビン酸、乳酸、プロピオン酸はいずれも検出限界以下であって検出されなかった。このことは目的物質であるグルコース及びHMPの収量が多くなり、純度が高くなることを示唆している。 セルロースを、容器内に貯留した弱酸水溶液に浸漬し、前記浸漬したセルロースを160〜230℃に加温してグルコース及び5−ヒドロキシメチル−2−フルフラールを生成することを特徴とするセルロースの熱水処理方法。 前記弱酸がカルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースの熱水処理方法。 【課題】木綿等のセルロースからグルコースやHMFを生成させるために、設備が腐食しにくく、反応温度を低温化でき、副産物が生成しにくい方法を提供する。【解決手段】 セルロースを、容器内に貯留した弱酸水溶液に浸漬し、前記浸漬したセルロースを160〜230℃に加温してグルコース及び5−ヒドロキシメチル−2−フルフラールを生成することを特徴とするセルロースの熱水処理方法によって課題解決できた。【選択図】 図1


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