タイトル: | 公開特許公報(A)_耐腐敗性が付与された水溶性機能流体 |
出願番号: | 2014044147 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A01N 43/647,A01P 3/00,A01N 33/08,A01N 33/04,A01N 43/84,A01N 31/02,A01N 25/02,C11D 7/32,C11D 7/26,C07D 249/18 |
渕上 正晴 永井 敬子 高橋 宏明 竹沢 雅史 上田 真司 JP 2014210763 公開特許公報(A) 20141113 2014044147 20140306 耐腐敗性が付与された水溶性機能流体 ユシロ化学工業株式会社 000115083 山本 典輝 100129838 渕上 正晴 永井 敬子 高橋 宏明 竹沢 雅史 上田 真司 JP 2013078811 20130404 A01N 43/647 20060101AFI20141017BHJP A01P 3/00 20060101ALI20141017BHJP A01N 33/08 20060101ALI20141017BHJP A01N 33/04 20060101ALI20141017BHJP A01N 43/84 20060101ALI20141017BHJP A01N 31/02 20060101ALI20141017BHJP A01N 25/02 20060101ALI20141017BHJP C11D 7/32 20060101ALI20141017BHJP C11D 7/26 20060101ALI20141017BHJP C07D 249/18 20060101ALN20141017BHJP JPA01N43/647A01P3/00A01N33/08A01N33/04A01N43/84 101A01N31/02A01N25/02C11D7/32C11D7/26C07D249/18 7 OL 17 4H003 4H011 4H003BA12 4H003DA09 4H003DA14 4H003EB04 4H003EB20 4H003FA34 4H011AA02 4H011BA06 4H011BB03 4H011BB04 4H011BB09 4H011DA13 4H011DC05 4H011DD01 4H011DE14 4H011DF04 4H011DG02 4H011DG09 4H011DG16 本発明は、水溶性切削油、水溶性研削油、水溶性洗浄剤等の水溶性機能流体に防腐・殺菌性を付与する新規技術に関する。 水溶性切削油、水溶性研削油、水溶性洗浄剤等の水溶性機能流体は、使用される条件により微生物の影響を受け、腐敗によって本来の性能を失うことがしばしばある。 例えば、水溶性切削油及び研削油では、使用濃度に希釈して長時間循環使用されることにより、外部から微生物が混入して腐敗が進行し、悪臭を放つようになるばかりか、濃度低下や希釈液分離等によって切削加工トラブルを起こしたり、重要な性能である防錆性能等も低下し、加工機械、加工物の錆を発生させる。また、濃度低下によって補給される原液の量が増大し、コストも増大する。水溶性洗浄剤の場合も同様で、腐敗によって濃度低下や洗浄性の低下等、本来の機能が損なわれてしまう。同様の問題は、水溶性塑性加工油(曲げ加工用、プレス用、鍛造用、圧延用、調圧用等)、水溶性切断油、水溶性研磨油(ガラス、シリコン等の切断、研磨油等)、水溶性作動油、空調等の冷却水、ラテックス製品等の各種水溶性機能流体においても生じる。 これら水溶性機能流体の防腐のため、通常、流体中にはアミン系やチアゾリン系の防腐・殺菌剤が添加される(特許文献1等)。しかしながら、これらの防腐・殺菌剤は価格が高いこと、皮膚刺激性が強いこと等から添加される量が使用濃度で数百ppm以下と低濃度であり、実使用時において当初設定した殺菌性能を十分に満足しないことが往々にして見受けられた。また、第一級アミンを防腐殺菌剤として使用する油剤にあっては、高いpHで防腐・殺菌性が発現するものであるが故、非鉄金属(特にアルミニウム)を変色させる虞もあった。 或いは、アミン系やチアゾリン系以外の防腐・殺菌剤についても提案されているが(特許文献2等)、水溶性切削油、水溶性研削油、水溶性洗浄剤等の水溶性機能流体に適用した場合において、十分な防腐・殺菌性を有するかは確認されておらず、また、被加工材や被洗浄材に対する影響、或いは、加工機器等への影響についても何ら確認されていなかった。 このように、従来の防腐・殺菌剤にあっては、水溶性機能流体に適用する場合に十分な防腐・殺菌性能を奏さない虞があり、また、被加工材や被洗浄材等への悪影響(変色等)も懸念された。特開2011−79956号公報特表平11−508544号公報 そこで本発明は、十分な防腐・殺菌性能を有し、被加工材等への悪影響も低減された水溶性機能流体を提供することを課題とする。 上記課題に鑑み本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得た。(1)銅合金の腐食防止剤として知られるトリアゾール類をアミン塩とし、当該アミン塩を水溶性機能流体に所定濃度以上で添加した場合、十分な防腐・殺菌性を有する水溶性機能流体とすることができる。(2)上記トリアゾール類のアミン塩は、ほぼ中性域のpHで、十分な防腐・殺菌効果が発現されるため、高pHにて通常用いられる公知のアミン系防腐・殺菌剤と比較して、アルミニウム等の被加工材への悪影響が低減される。(3)上記トリアゾール類のアミン塩は、公知のアミン系防腐・殺菌剤等と比較して、皮膚刺激性等が少なく、水溶性機能流体における濃度を増大させることが可能である。(4)上記トリアゾール類のアミン塩に加えて、さらにアルコールを配合することで、水溶性機能流体の防腐・殺菌効果が相乗的に向上する。 本発明は上記知見に基づいてなされたものである。すなわち、 第1の本発明は、ベンゾトリアゾールのアミン塩及び/又はトリルトリアゾールのアミン塩を3000ppm以上の質量%濃度で配合してなる、水溶性機能流体である。 本発明において、「ベンゾトリアゾールのアミン塩及び/又はトリルトリアゾールのアミン塩を3000ppm以上の質量%濃度で配合」とは、ベンゾトリアゾールのアミン塩を3000ppm以上の濃度で配合する形態、トリルトリアゾールのアミン塩を3000ppm以上の濃度で配合する形態のように、成分単独で3000ppm以上となる形態のほか、ベンゾトリアゾールのアミン塩及びトリルトリアゾールのアミン塩を合計で3000ppm以上の濃度で配合する形態のように、複数種のトリアゾールアミン塩が合計で3000ppm以上の濃度となる形態も含む概念である。 第1の本発明に係る水溶性機能流体は、水溶性切削油、水溶性研削油、水溶性洗浄剤、水溶性プレス油、水溶性鍛造油、水溶性圧延油、水溶性切断油、水溶性研磨油又は水溶性作動油として使用されることが好ましい。 第1の本発明において、さらに炭素数6〜15のアルコールを含むことが好ましい。この場合「アルコール」は一価のアルコールであっても、多価のアルコールであってもよい。特に、1,2−オクタンジオール、炭素数14の分岐アルコール、炭素数15の分岐アルコール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上であることが好ましい。 第2の本発明は、水溶性機能流体を使用する場合において、ベンゾトリアゾールのアミン塩及び/又はトリルトリアゾールのアミン塩の質量%濃度が3000ppm以上となるように調整する、水溶性機能流体の使用方法である。 第2の本発明において、さらに炭素数6〜15のアルコールを共存させるように調整することが好ましい。「アルコール」の詳細は上述した通りである。 本発明によれば、十分な防腐・殺菌性能を有し、被加工材等への悪影響も低減された水溶性機能流体を提供することができる。 一般にベンゾトリアゾールに代表されるトリアゾール類は銅合金の腐食防止剤として市販されており、使用時は「数百ppm以下」の低濃度とされる。しかしながら、これら一連の化合物の水溶性機能流体における防腐、殺菌性については何ら見出されていなかった。一方、本発明者らは、当該トリアゾール類をアミン塩とし、当該アミン塩を、従来の腐食防止剤としてのトリアゾール類の添加量よりも高濃度で添加することで、水溶性機能流体に使用した場合に要求される防腐・殺菌性を十分に示すことを見出し、本発明を完成させたのである。<水溶性機能流体> 本発明に係る水溶性機能流体は、所定のトリアゾール類のアミン塩を3000ppm以上の質量%濃度で配合してなることに特徴を有する。すなわち、本発明においては、従来、防錆剤として用いられてきたトリアゾール類の添加濃度よりも高濃度にて、トリアゾール類のアミン塩を水溶性機能流体に配合させている。1.トリアゾール類 本発明において用いられるトリアゾール類は、トリアゾール骨格を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、従来防錆剤として使用されてきたトリアゾール類を用いることができる。具体的には、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾールである。2.アミン 本発明において、上記したトリアゾール類はアミンと塩を形成する。本発明において用いられるアミンとしては、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンのいずれであってもよい。具体的には以下の一般式(1)で示されるアミンを用いることができる。 上記一般式(1)において、R1、R2、R3は、それぞれ独立に水素、炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のヒドロキシアルキル基、炭素数6以上8以下のアラルキル基又は炭素数6以上8以下のアルキルアラルキル基のいずれかである。ただし、R1、R2、R3がともに水素である場合を除く。尚、R1、R2、R3は、末端がヘテロ原子を介して結合し、環を巻いていても良い。 このうち、例えば、アルキル基の炭素数は1以上8以下、好ましくは1以上4以下、より好ましくは1以上3以下である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基、シクロヘキシル基が挙げられ、この中でもメチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。また、ヒドロキシアルキル基の炭素数は1以上6以下、好ましくは2以上4以下、より好ましくは2以上3以下である。具体的にはヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2−メチル2−ヒドロキシプロピル基が挙げられ、この中でも、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基が好ましい。さらに、R1、R2、R3は、末端がヘテロ原子を介して結合していてもよく、例えば、モルホリン等を用いても良い。 R1、R2、R3の組み合わせとしては、特に限定されるものではなく、同一の基の組み合わせでもよいし、異なる基の組み合わせでもよい。 本発明に係る水溶性機能流体は、上記したトリアゾール類のアミン塩を3000ppm以上の質量%濃度で配合してなる。トリアゾール類のアミン塩の添加量は、下限が好ましくは5000ppm以上、より好ましくは7000ppm以上、さらに好ましくは10000ppm以上であり、上限が好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下である。このように、本発明においては、上記トリアゾール類のアミン塩の含有量を、腐食防止剤として添加される従来のトリアゾール含有量よりも増大させる。これにより、水溶性機能流体の防腐・殺菌性能を長期に亘って安定的に発現させることができる。 本発明においては、水溶性機能流体中に上記したトリアゾール類のアミン塩が所定濃度以上で配合されるような形態であれば、その添加形態については特に限定されるものではない。すなわち、上記したトリアゾール類のアミン塩を水溶性機能流体中に添加する形態の他、上記したトリアゾール類とアミンとを別々に水溶性機能流体中に添加することによって、結果的に、水溶性機能流体中にトリアゾール類のアミン塩を配合するような形態であってもよい。 本発明に係る水溶性機能流体は、比較的中性に近いpH域(pH7〜10、好ましくはpH7.4〜9)においても高い防腐・殺菌性を示す。それゆえ、アルカリ腐食が懸念される被加工材や被洗浄材に対しても好適に使用することができる。 さらに本発明に係る水溶性機能流体の秀でた点として、非鉄金属のみならず鉄系金属に対しても防錆性を有し、また使用する際の不都合な泡立ちもほとんどないことが挙げられる。すなわち、本発明においては、トリアゾール類のアミン塩を用いたことで、従来にない複数の機能を発現させることができる。 また、従来においては防腐性を向上させる目的で、例えば、高いpHにおいて防腐・殺菌性を発現する第一級アミン等を使用しており、アルミニウムの変色や皮膚への刺激が懸念されていたが、上記のトリアゾール誘導体は、上述の通り、ほぼ中性のpHで十分な防腐・殺菌性を発現させることができ、アルミニウム等の被加工材への悪影響が低減され、また、皮膚刺激性等も少ない。さらに、水溶性機能流体における濃度を増大させた場合でも被加工材や作業者への悪影響を抑えることが可能である。 尚、本発明に係る効果を損なわない範囲であれば、従来から使用されているアミン系防腐剤やチアゾリン系防腐剤、さらには第一級アミン脂肪酸塩等を添加することも可能であり、油剤開発目的に沿って適宜調整すればよい。この場合、上記したトリアゾール類のアミン塩の使用量を減量することができ、経済的でもある。<用途> 本発明に係る水溶性機能流体は、水溶性切削油、水溶性研削油、水溶性洗浄剤、水溶性プレス油、水溶性鍛造油、水溶性圧延油、水溶性切断油、水溶性研磨油又は水溶性作動油等として適用することが可能である。用途に応じて、基油、アルコール(グリコール)類やエーテル(グリコールエーテル)類、脂肪酸、界面活性剤等の各種添加剤等、上記したトリアゾール類のアミン塩以外の必要な成分を含ませればよい。 本発明者らが鋭意研究したところ、水溶性機能流体において、上記トリアゾール類のアミン塩と所定のアルコールとを組み合わせることで、これらが相乗的に作用し、防腐・殺菌性が飛躍的に向上することを知見した。 水溶性機能流体に適用される「アルコール」は炭素数6〜15のアルコールである。特に、炭素数6〜15の直鎖アルキル又はアルケニル構造を有する脂肪族アルコール、或いは、炭素数6〜15の芳香族アルコールが好ましい。アルコールは一価アルコールであっても多価アルコールであってもよい。また、分子鎖中にヘテロ原子を有するもの(エーテル結合を有するアルコール等)であってもよい。具体的には、1,2−オクタンジオール、C14分岐アルコール、C15分岐アルコール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−フェノキシ−2−プロパノール、2−フェニル−1−エタノール、2−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、2−シクロヘキサノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−ウンデカノール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−フェノキシエタノール、1,2−デカンジジオール、ジプロピレングリコール、ベンジルグリコール等が好ましく、1,2−オクタンジオール、C14分岐アルコール、C15分岐アルコール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルがより好ましく、1,2−オクタンジオールが特に好ましい。 本発明に係る水溶性機能流体は、上記したアルコールを2500ppm以上の質量%濃度で配合してなることが好ましい。アルコールの添加量は、下限が好ましくは500ppm以上、より好ましくは1000ppm以上、さらに好ましくは2500ppm以上であり、上限が好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。このように、本発明においては、上記トリアゾール類のアミン塩に加えて、アルコールを微量添加するだけで、水溶性機能流体の防腐・殺菌性能を相乗的に向上させることができる。コストの観点からもアルコールの添加量は微量で良い。<水溶性機能流体の使用方法> 上記した本発明に係る水溶性機能流体は希釈して使用することができる。より具体的には、水で希釈する場合、上記したトリアゾール類のアミン塩の濃度が3000ppm以上となるように調整する。好ましくは5000ppm以上、より好ましくは7000ppm以上である。これにより、実使用時において水溶性機能流体に十分な防腐・殺菌性を発現させることができる。 尚、本発明に係る水溶性機能流体を水で希釈して使用する際も、上述したようにpHをほぼ中性域(pH7〜10、好ましくはpH7.4〜9)として使用することができる。これにより、被加工材や設備機器、或いは、作業者への悪影響を抑えることが可能である。 以上の通り、本発明によれば、上記した所定のトリアゾール類のアミン塩を高濃度で含ませることによって、水溶性機能流体に十分な防腐・殺菌性能を発現させることが可能である。当該トリアゾール類のアミン塩による防腐・殺菌性は、トリアゾール類を単独で添加した場合には見られない効果である。また、公知のアミン系防腐・殺菌剤等と比較して、中性域での使用が可能でありアルミニウム等の被加工材への悪影響が低減されている点、皮膚刺激性等が少なく、水溶性機能流体における濃度を増大させることが可能である点にも特徴があり、使用時の泡立ち等もほとんどなく水溶性機能流体に対し長期に亘って安定的に防腐・殺菌性能を発現させることができる。 以下、実施例に基づいて、本発明についてさらに詳述する。尚、以下に示す実施例において「ppm」とは質量比を意味する。<試料の合成> 以下の表1に示すトリアゾール類と各種アミンとを用いて、トリアゾール類のアミン塩を作成し、実施例1〜16に係る評価試料とした。 尚、上記表1において、TEAはトリエタノールアミン、DEAはジエタノールアミン、MEAはモノエタノールアミン、TIPAはトリイソプロパノールアミン、DIPAはジイソプロパノールアミン、MIPAはモノイソプロパノールアミン、DCHAはジシクロヘキシルアミン、MOはモルホリン、AMPは2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、DMAはジメチルアミン、DPAはジ−n−プロピルアミン、CHA−2はN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、DBZAはジベンジルアミンを示す。 さらに、比較例1としてベンゾトリアゾールを単独で、比較例2としてトリルトリアゾールを単独で用いた。 また、比較例3〜15として、各種アミンを単独で用いた。アミンを単独で用いる場合、pHが高くなり過ぎるため、塩酸を加えてpHを9±0.3に調整して実験を行った。<防腐・殺菌性の評価> 各試料について、水溶性機能流体における防腐作用・殺菌作用を確認した。具体的には、水溶性切削液の腐敗液(シュードモナスSP、腸内細菌類を含む腐敗液、生菌数7×106個/ml、pH8.4)に各試料を所定濃度加えた後、攪拌し、1昼夜30℃に静置した後、試料を普通寒天培地平板に1白金耳塗布し、48時間培養して生菌の有無を確認した。結果を下記表2に示す。尚、表2において、生菌多数の場合を「++」、ブランクより減少しているものの生菌が存在する場合を「+」、生菌なし(完全殺菌)の場合を「−」として示した。 表2に示す結果から明らかなように、まず、アミン塩とされていないトリアゾール類そのもの(比較例1、2)は、防腐・殺菌性が奏されない。ただし、トリアゾール類そのものについては、系を強制分散系のエマルションとした場合には防腐・殺菌効果が認められた。すなわち、トリアゾール類単独で用いる場合には、例えば、アルコールで希釈液を作成したうえで、所定濃度となるように添加し、エマルション系にうまく分散できれば、殺菌効果が現れることがわかった。 また、アミンそのもの(比較例3〜15)については、中性域の機能性流体において、一部を除き防腐・殺菌性が奏されない。ただし、油溶性のアミンについては防腐・殺菌効果が認められた。 一方、トリアゾール類をアミン塩とした場合(実施例1〜16)は、中性域の機能性流体においても所定濃度以上で顕著な防腐・殺菌性が認められる。また、トリアゾール類単独で用いた場合と比較して、界面活性剤のみの系でも十分な効果が発揮される。尚、当該濃度は、従来の防錆剤としてのトリアゾール類の含有量よりも高濃度である。表2における傾向を見ると、水溶性アミンとの塩よりも油溶性アミンとの塩のほうが、高い防腐・殺菌効果を奏することが分かる。<金属材に対する防錆性・変色の評価> 実施例1〜16、比較例1〜15に係る試料について、それぞれ1%希釈液を作成し、ここに研磨したテストピースを全浸漬して、室温(30±5℃)で24時間静置した。その後、テストピースを取り出し、試料液やテストピースの外観の変化を観測するとともに、テストピースの重量変化を測定した。 さらに、参考例として、オレイルザルコシンDEA等量塩(OZ−DEA塩)を用いた場合(参考例1)、ノニオン系の高級アルコールEO7モル付加物を用いた場合(参考例2)、トリアジン系防腐剤(クラリアント社製)を用いた場合(参考例3)、防腐剤等を添加せず水(水道水)をそのまま用いた場合(参考例4)について、同様の評価を行った。 テストピースとしてアルミニウム片(A5052、30×50×3mm)を用いた場合、鋼片(SPCC、30×50×1mm)を用いた場合、黄銅片(C2801、30×50×2mm)を用いた場合について、結果をそれぞれ下記表3に示す。 表3に示した結果から明らかなように、トリアゾール類のアミン塩は、各種金属の変色を生じさせることがほとんどなく、防錆性を有することが分かる。特にアルミニウム片や鋼片に対して顕著な効果が認められ、トリアゾール類のアミン塩は非鉄金属のみならず鉄系金属に対しても防錆性を付与できることが明らかである。すなわち、例えば、機能性流体を循環させるための配管、機能性流体を吹き付けるためのノズル等、機能性流体を使用する設備において鋼材を用いることが想定されるが、このような場合において、本発明のようにトリアゾール類のアミン塩を添加することで、機能性流体の防腐とともに、設備の錆止めをも実現できることが分かる。<泡立ちの評価> 実施例に係る試料について、1%希釈液を50ml用意し、シリンダー内で20回振とうした後、希釈液の体積変化を測定し、希釈液の泡立ちを評価した。 振とう直後、30秒後、1分後、2分後、3分後、4分後及び5分後について、各希釈液の体積(ml)を下記表4に示す。 表4に示す結果から明らかなように、トリアゾール類のアミン塩を含む希釈液を用いた例にあっては、20回振とう直後において、若干泡立ちが生じるものの、時間の経過とともに、泡立ちが解消された。このように、本発明に係る水溶性機能流体は、使用時の不都合な泡立ちがほとんどなく、水道水とほとんど同等に取り扱うことができ、取り扱い性に優れたものであることが分かる。<pH依存性の評価>(試料の調整) エマルションタイプの基準配合物を作成し、これを水で5%に希釈した。当該希釈液100gに、上記した実施例2、15、参考例1〜3、市販のベンゾイソチアゾリン系防腐剤(BIT系防腐剤)を用いた参考例Aに係る試料を含む溶液を、純分成分として0.25g相当となるように添加し、評価液とした。得られた評価液は、試料を原液あたり、5%添加したものに相当する。 得られた評価液のpHは7.9であり、ここにジエタノールアミンを添加してpHを8.8及び9.6にそれぞれ調整した2水準の試料液を用いて、評価を行った。(殺菌性の試験) 各評価液と、生菌数5×106個/mlを含む腐敗液と、を一定比率で混合し、攪拌後、24時間静置した。その後、混合液を一白金耳採取して、普通寒天平板培地で培養して、生菌の有無を確認し、混合系の細菌最小薬剤濃度(ppm)を求めた。評価結果を表5に示す。 また、上記実施例、参考例の評価に加えて、「比較試料油剤」として、市販のアミン系バイオスタティック油剤(第一級アミン6%、ユシロ化学工業株式会社製)と、腐敗液とを混合した場合についても評価を行った。通常、アミン系バイオスタティック油剤は高pH域にて使用されるものであるが、今回の実験では、pHの影響(中性域における防腐性能)を確認するため、酢酸を添加してpHを中性域(8.0又は9.2)に調整した。評価結果を表5に示す。 表5に示す結果から明らかなように、トリアゾール類のアミン塩を用いた場合にあっては、低pHであっても十分な防腐・殺菌性が発現されるのに対し、従来の第一級アミン系の耐腐敗性向上油剤(比較試料油剤)にあっては、当該油剤が高pHで防腐・殺菌性能を発揮するものであるが故、pH8.0〜9.2程度の低pHでは、防腐剤として十分に機能しないことが確認された。 このように、トリアゾール類のアミン塩を含む本発明に係る水溶性機能流体によれば、中性域のpHにおいて、十分な防腐性が発現されることが分かる。これにより、高pH化によるアルミニウム材の変色や作業者の皮膚刺激を抑えることが可能となる。 上記実施例では、水溶性機能流体として切削液を用いた場合について説明した。しかしながら、本発明に係る水溶性機能流体は切削液等の水溶性加工液に限定されるものではない。以下、「水溶性洗浄剤」における防腐・殺菌性についての防腐・殺菌性の評価結果を示す。<水溶性洗浄剤における防腐・殺菌性の評価> 各試料について、水溶性洗浄剤における防腐作用・殺菌作用を確認した。具体的には、水溶性洗浄剤(ユシロ化学工業株式会社製、製品名W80)の腐敗液(pH8.4、生菌数8×106個/ml)に各試料を所定濃度加えた後、攪拌し、1昼夜30℃に静置した後、試料を普通寒天培地平板に1白金耳塗布し、48時間培養して生菌の有無を確認した。尚、アミンを単独で用いる場合、pHが高くなり過ぎるため、塩酸を加えてpHを9±0.3に調整して実験を行った。結果を下記表6に示す。尚、表6において、生菌多数の場合を「++」、ブランクより減少しているものの生菌が存在する場合を「+」、生菌なし(完全殺菌)の場合を「−」として示した。 表6に示す結果から明らかなように、トリアゾール類を単独で用いた場合、系に対する溶解性が低いため、防腐・殺菌性が発揮されないことが分かる。また、油溶性アミンDCHA、DBZAについては、結果が良好となったが、これは塩酸塩で添加したことによって、溶解性、分散性が向上したためと考えられる。 一方、トリアゾール類のアミン塩(実施例)は、洗浄液においても強い防腐・殺菌性を示し、濃度3000ppm程度で十分な効果を示すことが分かる。すなわち、切削液だけでなく洗浄液においても、本発明のようにトリアゾール類をアミン塩の形態としてはじめて、極めて顕著な防腐・殺菌効果が発現することが分かる。以上のことから、トリアゾール類のアミン塩は、系に含まれる他の成分の影響を受けずに、あらゆる水溶性機能流体に対して、防腐・殺菌性を付与可能なことが分かった。 以上の通り、本発明は、水溶性機能流体として、水溶性切削油、水溶性研削油、水溶性プレス油、水溶性鍛造油、水溶性圧延油、水溶性切断油、水溶性研磨油又は水溶性作動油等の水溶性加工液のみならず、水溶性洗浄剤等にも適用可能であることが分かる。<アルコール添加による相乗効果の発現> 水溶性機能流体において、上記のトリアゾール類のアミン塩とアルコールとを併用した場合の防腐作用・殺菌作用を確認した。具体的には、水溶性切削液(ユシロ化学工業株式会社製、製品名ユシローケンEC50T3)の腐敗液(シュードモナスSP、腸内細菌類を含む腐敗液、生菌数7×106個/ml、pH8.4)にベンゾトリアゾール(BT)、トリエタノールアミン(TEA)及び各種アルコールをそれぞれ所定濃度となるように添加した後、攪拌し、1昼夜30℃に静置した後、試料を普通寒天培地平板に1白金耳塗布し、48時間培養して生菌の有無を確認した。 評価結果を下記表7に示す。尚、表7において、生菌多数の場合を「++」、ブランクより減少しているものの生菌が存在する場合を「+」、生菌なし(完全殺菌)の場合を「−」として示した。 表7において、参考例4はユシロ化学工業社製「ユシローケンMIC5」(pH9.4)を添加した例であり、参考例5はユシロ化学工業社製「ユシローケンEC50T3」(pH10.4)を添加した例である。 表7に示す結果から以下のことが分かる。(1)参考例3、実施例17、実施例18の比較から、ベンゾトリアゾールのアミン塩とアルコールとを少量ずつ添加した場合(実施例18)のほうが、ベンゾトリアゾールのアミン塩を多量に添加する場合(実施例17)、或いは、アルコールを多量に添加する場合(参考例3)よりも、防腐・殺菌性が飛躍的に向上する。すなわち、ベンゾトリアゾールのアミン塩とアルコールとが相乗的に作用して、防腐・殺菌性に寄与していることが分かる。(2)実施例18〜26から、少なくとも、炭素数6〜15のアルコールについては、ベンゾトリアゾールのアミン塩と相乗的に作用して、防腐・殺菌性を飛躍的に向上可能であることが分かる。(3)実施例22はアミン濃度を低減してpHを意図的に低下させた例である。実施例22から、通常は耐腐敗性の発現が困難である中性域(pH7.4)においても、ベンゾトリアゾールのアミン塩とアルコールとの併用によって、十分な防腐・殺菌性を奏することが分かる。その効果は、高pH且つアミンを多用している既存製品(参考例4、5)に匹敵することも分かる。 上記実験では、ベンゾトリアゾールのアミン塩とアルコールとを併用した例を示したが、ベンゾトリアゾールのアミン塩に替えて、トリルトリアゾールのアミン塩を用いた場合も、全く同様の効果を示した。 以上、現時点において、最も実践的であり、且つ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う水溶性機能流体及びその使用方法もまた本発明の技術範囲に包含されるものとして理解されなければならない。 本発明は、水溶性切削油、水溶性研削油、水溶性洗浄剤、水溶性プレス油、水溶性鍛造油、水溶性圧延油、水溶性切断油、水溶性研磨油又は水溶性作動油等の水溶性機能流体に、防腐・殺菌性を付与する技術として広く利用できる。ベンゾトリアゾールのアミン塩及び/又はトリルトリアゾールのアミン塩を3000ppm以上の質量%濃度で配合してなる、水溶性機能流体。水溶性切削油、水溶性研削油、水溶性洗浄剤、水溶性プレス油、水溶性鍛造油、水溶性圧延油、水溶性切断油、水溶性研磨油又は水溶性作動油として使用される、請求項1に記載の水溶性機能流体。さらに炭素数6〜15のアルコールを配合してなる、請求項1又は2に記載の水溶性機能流体。前記アルコールが、1,2−オクタンジオール、炭素数14の分岐アルコール、炭素数15の分岐アルコール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上である、請求項3に記載の水溶性機能流体。水溶性機能流体を使用する場合において、ベンゾトリアゾールのアミン塩及び/又はトリルトリアゾールのアミン塩の質量%濃度が3000ppm以上となるように調整する、水溶性機能流体の使用方法。さらに炭素数6〜15のアルコールを共存させるように調整する、請求項5に記載の使用方法。前記アルコールとして、1,2−オクタンジオール、炭素数14の分岐アルコール、炭素数15の分岐アルコール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上を用いる、請求項6に記載の使用方法。 【課題】十分な防腐・殺菌性能を有し、被加工材等への悪影響も低減された水溶性機能流体を提供する。【解決手段】ベンゾトリアゾールのアミン塩及び/又はトリルトリアゾールのアミン塩を3000ppm以上の質量%濃度で配合してなる、水溶性機能流体とする。【選択図】なし