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タイトル:公開特許公報(A)_ヌクレオシド化合物の製造方法および組成物
出願番号:2014037518
年次:2015
IPC分類:C12P 19/40


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福田 健治 幡野 明彦 JP 2015159772 公開特許公報(A) 20150907 2014037518 20140227 ヌクレオシド化合物の製造方法および組成物 大陽日酸株式会社 000231235 学校法人 芝浦工業大学 599016431 志賀 正武 100064908 鈴木 三義 100094400 伏見 俊介 100152146 福田 健治 幡野 明彦 C12P 19/40 20060101AFI20150811BHJP JPC12P19/40 12 OL 21 4B064 4B064AF34 4B064CA21 4B064CC06 4B064CC09 4B064CD01 4B064CE11 本発明はヌクレオシド化合物の製造方法およびヌクレオシド化合物含有組成物に関する。 2’−デオキシリボヌクレオシドおよびリボヌクレオシドは、リン酸と結合して、それぞれDNAおよびRNAの核酸となり得る重要な構成成分であり、医薬品開発分野等においても需要の高い化合物である。しかし、ヌクレオシドの化学的な合成は非常に効率が悪いため、これらの分子を工業的に得ようとした場合、一般的に、サケなどの卵巣からDNAおよびRNAを抽出し、これを分解、精製してヌクレオシドを得ていた。 この方法では、天然のDNAおよびRNAに含まれる各種ヌクレオシドの全てを含む混合物が必要不必要によらず得られ、例えば2’−デオキシリボヌクレオシド由来の場合は、デオキシアデノシン(dA)、デオキシグアノジン(dG)、デオキシシチジン(dC)およびチミジン(dT)が、リボヌクレオシド由来の場合は、アデノシン(A)、グアノジン(G)、シチジン(C)およびウリジン(U)が含まれる混合物が得られる。しかしながら、その誘導体が抗がん剤、抗HIV剤に用いられるウリジンのように、特定のヌクレオシド化合物のみが選択的に又は高い割合で得られる方法の開発も求められていた。 従来、ヌクレオシド化合物を合成する方法として、イノシン又はデオキシイノシン(原料ヌクレオシド化合物)と、ピリミジン塩基又はプリン塩基とを、リン酸若しくはリン酸塩存在下の水溶液中において、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ又はピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼによって塩基交換反応させる方法が開示されていた(特許文献1)。また、ピリミジンヌクレオシド化合物(原料ヌクレオシド化合物)と、プリン塩基とを、ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼおよびプリンヌクレオシドホスホリラーゼを用いて交換反応させるプリンヌクレオシド化合物の製造方法も開発されていた(特許文献2)。特開平4−197193号公報特開平11−46790号公報 しかしながら、ホスホリラーゼの反応は可逆的であり、ホスホリラーゼを用いた製造方法で得られるのは、出発材料である原材料ヌクレオシド化合物と目的物のヌクレオシドである目的ヌクレオシド化合物の混合物である。これは上記のヌクレオシド化合物の製造方法においても同様であり、特許文献1および2では原材料ヌクレオシド化合物と目的ヌクレオシド化合物の分離については何ら検討されていない。 また、目的ヌクレオシド化合物の取得のために、目的ヌクレオシド化合物以外のヌクレオシドを各種デヒドロゲナーゼにより分解した場合にも、分解によって生産された塩基等の副生成物が生じるので、やはり副生成物と目的ヌクレオシド化合物との分離が課題となる。 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いれば、目的ヌクレオシド化合物の分離が可能ではあるが、分取には長い時間を要し、また得られる量も微量であるため、目的ヌクレオシドの量産化には不適である。 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、短時間で目的ヌクレオシド化合物を精製でき且つ量産可能なヌクレオシド化合物の製造方法の提供を課題とする。 本発明者らは、目的ヌクレオシド化合物が備えた目的塩基と担体親和性の異なるよう改変された担体親和性改変塩基を備えた担体親和性改変ヌクレオシド化合物を用い、塩基交換反応によって目的ヌクレオシド化合物を製造することで、当該反応系から目的ヌクレオシド化合物を短時間で且つ大量に精製可能となることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。(1)置換基を有する塩基である担体親和性改変塩基を備えたことにより、担体との親和性が改変された、担体親和性改変ヌクレオシド化合物を用いて、前記担体親和性改変塩基の前記置換基とは異なる側鎖を有する目的塩基を備えた目的ヌクレオシド化合物を得る、ヌクレオシド化合物の製造方法であって、前記担体親和性改変ヌクレオシド化合物と、前記目的塩基とを、リン酸イオンを含む水溶液中において、ヌクレオシドホスホリラーゼにより塩基交換反応させて、前記目的ヌクレオシド化合物を得る工程Cを含むことを特徴とするヌクレオシド化合物の製造方法。(2)前記工程Cの後に、前記担体親和性改変ヌクレオシド化合物又は前記目的ヌクレオシド化合物を担体に結合させて該担体親和性改変ヌクレオシド化合物又は前記目的ヌクレオシド化合物を前記水溶液中から分離させる工程Dを含む前記(1)に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。(3)前記担体親和性改変塩基の前記置換基とは異なる側鎖を有する塩基を備え、原材料として用いられる、原材料ヌクレオシド化合物と、前記担体親和性改変塩基とを、リン酸イオンを含む水溶液中において、ヌクレオシドホスホリラーゼにより塩基交換反応させて、前記担体親和性改変ヌクレオシド化合物を得る工程Aを含む前記(1)又は(2)に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。(4)前記工程Aの後に、前記担体親和性改変ヌクレオシド化合物又は前記原材料ヌクレオシド化合物を担体に結合させて該担体親和性改変ヌクレオシド化合物又は前記原材料ヌクレオシド化合物を前記水溶液中から分離させる工程Bを含む前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のヌクレオシド化合物の製造方法。(5)前記原材料ヌクレオシド化合物の塩基、及び、前記目的ヌクレオシド化合物の前記目的塩基が、ウラシル、チミン又はそれらの誘導体のいずれかである前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のヌクレオシド化合物の製造方法。(6)前記工程A又は工程Cにおいて用いられる前記ヌクレオシドホスホリラーゼが、チミジンホスホリラーゼである前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載のヌクレオシド化合物の製造方法。(7)前記工程Cにおいて、前記担体親和性改変ヌクレオシド化合物と反応する前記目的ヌクレオシド化合物の目的塩基が、安定同位体標識又は放射性同位体標識された塩基である前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のヌクレオシド化合物の製造方法。(8)目的塩基を備えた目的ヌクレオシド化合物と、置換基を有する塩基である担体親和性改変塩基を備えたことにより担体との親和性が改変された担体親和性改変ヌクレオシド化合物、前記担体親和性改変塩基、前記目的塩基、及びヌクレオシドホスホリラーゼからなる群から選ばれる一種以上と、を含有し、前記目的塩基は、前記担体親和性改変塩基の前記置換基とは異なる側鎖を有することを特徴とする組成物。(9)組成物中のヌクレオシド化合物、塩基、リン酸化糖、及びそれらの誘導体の総量に対して、前記目的ヌクレオシド化合物の含有率が95mol%以上である前記(8)に記載の組成物。(10)前記目的塩基が、安定同位体標識又は放射性同位体標識された塩基である前記(8)又は(9)に記載の組成物。(11)置換基を有する塩基である担体親和性改変塩基を備えたことにより、担体との親和性が改変された、担体親和性改変ヌクレオシド化合物と、前記担体親和性改変塩基の前記置換基とは異なる側鎖を有する目的塩基と、を含有することを特徴とする組成物。(12)前記目的塩基が、安定同位体標識又は放射性同位体標識された塩基である前記(11)に記載の組成物。 本発明のヌクレオシド化合物の製造方法によれば、目的ヌクレオシド化合物を短時間で精製でき、且つ目的ヌクレオシド化合物を量産することが可能である。工程Cおよび工程Dの反応の概要を模式的に示した図である。工程Dの反応の概要を模式的に示した図である。工程Aおよび工程Bの反応の概要を模式的に示した図である。工程Bの反応の概要を模式的に示した図である。1H−NMRの結果を示す図である。1H−NMRの結果を示す図である。1H−NMRの結果を示す図である。15N−NMRの結果を示す図である。《ヌクレオシド化合物の製造方法》 本発明における「ヌクレオシド化合物」とはヌクレオシドホスホリラーゼの基質となり得る化合物であれば特に制限されず、DNA、又はRNA等の天然核酸の構成要素であるリボヌクレオシド及びデオキシリボヌクレオシドの他、人工核酸の構成要素、PNA、LNA等の人工的に合成される人工核酸類似化合物の構成要素を挙げることができる。 具体的なリボヌクレオシドとしては、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、5−メチルウリジン、イノシン、5−フルオロウリジン、などが挙げられ、デオキシリボヌクレオシドとしては、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、デオキシシチジン、デオキシウリジン、5’ −デオキシウリジン、アジドチミジンなどが挙げられる。 前記ヌクレオシド化合物の塩基は、ヌクレオシドホスホリラーゼの基質となり得る範囲において、−F、−Cl等のハロゲノ基、メチル基、ヒドロキシル基、C1〜C3アルキル基、アルケン、アルキン等の長鎖置換基で修飾されていてもよく、具体的には、5−フルオロウラシル、5−クロロウラシル、5−エチニルウラシル、5−ビニルウラシル、5−ヘキサ−5−エン−ウラシル等の塩基であってもよい。 本発明においてヌクレオシドホスホリラーゼとは、ヌクレオシドのリン酸加水分解を触媒する酵素を指す。具体的なヌクレオシドホスホリラーゼとしては、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ、チミジンホスホリラーゼ、ウリジンホスホリラーゼ、ピリミジントランスフェラーゼなどを挙げることができる。以下では、ヌクレオシドホスホリラーゼを例に挙げて説明する。 ヌクレオシドホスホリラーゼによるリボヌクレオシドのリン酸加水分解の反応は、例えば以下のように表される。上記の反応は可逆的であるので、の反応も同時に起こる。したがって、「塩基交換反応」では、リン酸加水分解によって生成した塩基が、再度リボース−1−リン酸とともにリボヌクレオシドを形成する反応において、反応系に二種以上の塩基が存在するとき、反応前とは異なる種類の塩基がリボース−1−リン酸塩基と反応し塩基が交換され得る。 本発明のヌクレオシド化合物の製造方法は、置換基を有する塩基である担体親和性改変塩基を備えたことにより、担体との親和性が改変された、担体親和性改変ヌクレオシド化合物を用いて、前記担体親和性改変塩基の前記置換基とは異なる側鎖を有する目的塩基を備えた目的ヌクレオシド化合物を得る、ヌクレオシド化合物の製造方法であって、 前記担体親和性改変ヌクレオシド化合物と、前記目的塩基とを、リン酸イオンを含む水溶液中において、ヌクレオシドホスホリラーゼにより塩基交換反応させて、前記目的ヌクレオシド化合物を得る工程Cを含む。 上記の反応1および反応2を、目的ヌクレオシド化合物を得る工程Cに当てはめると、以下のように表される。 反応1−2〜反応2−2までをまとめると、以下のように表すことができる。 工程Cの反応の概要を、図1において模式的に示して説明する。図1には、後述の工程Dも併せて示してある。 図1中の工程Cでは、置換基13を有する担体親和性改変塩基21と糖部分12とを備えた担体親和性改変ヌクレオシド化合物20と目的塩基31とをヌクレオシドホスホリラーゼにより塩基交換反応させて、目的塩基31と糖部分12とを備えた目的ヌクレオシド化合物30を得る工程を示している。 ここで、本発明における担体親和性の対象となる「担体」とは、ヌクレオシド化合物と直接的又は間接的に結合し得るものであれば特に制限されず、好ましくは、結合後にそれらの塩基及びヌクレオシド化合物を再び分離(溶離)させ得る物である。そのようなより好ましい担体として、担体が有する官能基との反応を介して当該化合物と結合し得る、イオン交換性樹脂、キレート樹脂、アフィニティー樹脂を挙げることができる。 「担体親和性改変」とは、所望のヌクレオシド又は所望の塩基と、反応系に存在する所望のヌクレオシド以外又は所望の塩基以外の化合物との間で、担体に対する親和性が本来は差別可能でなかった又は差別が容易ではなかったところ、差別可能又は差別が容易なようにヌクレオシド化合物又は塩基の担体親和性が改変されることを云う。 上記のヌクレオシドホスホリラーゼによる塩基交換反応を、工程Cにおける反応を例にすると、上記反応は可逆的であるため、反応系には、上記反応1−2の出発物質の担体親和性ヌクレオシド化合物と、上記反応2−2で生成された目的ヌクレオシド化合物とが混在している。したがって、前記工程Cにおける担体親和性改変は、工程Cにおける所望のヌクレオシド化合物である目的ヌクレオシド化合物が有する目的塩基と、目的ヌクレオシド化合物以外のヌクレオシド化合物の塩基との間で差別可能となるように改変されることが好ましい。 担体親和性が改変された「担体親和性改変塩基」を有するヌクレオシドは、同様に担体親和性が改変されるため、「担体親和性改変ヌクレオシド」となる。 改変としては、所望のヌクレオシド化合物は担体に結合するが、担体親和性改変ヌクレオシド化合物は担体に結合しないよう改変される場合が挙げられ、逆の場合としては、担体親和性改変ヌクレオシド化合物は担体に結合するが、所望のヌクレオシドは担体に結合しないよう改変される場合が挙げられる。さらに別の態様としては、担体に対しての結合においては差別可能ではないが、担体からの溶離(分離)に際し差別可能であってもよい。 このように、上記反応系には、反応1−2の出発物質のヌクレオシド化合物と反応2−2で生成された目的ヌクレオシド化合物とが混在しているが、本発明のヌクレオシド化合物の製造方法では、反応1−2の出発物質に担体親和性改変ヌクレオシド化合物を用いるので、担体への結合を利用して、反応2−2で生成された目的ヌクレオシド化合物と出発物質の担体親和性改変ヌクレオシド化合物とを容易に分離がすることが可能となる。 したがって、本発明のヌクレオシド化合物の製造方法では、担体親和性改変ヌクレオシド化合物又は前記目的ヌクレオシド化合物を担体に結合させて該担体親和性改変ヌクレオシド化合物又は前記目的ヌクレオシド化合物を前記水溶液中から分離させる工程Dを含んでいても良い。 工程Dの反応の概要を、図2において模式的に示して説明する。 工程Cで得られた組成物中には、目的ヌクレオシド化合物30の他、塩基交換反応により生成された副生成物の担体親和性改変塩基21も含まれている。さらには、該組成物中には未反応の目的塩基31及び未反応の担体親和性改変ヌクレオシド化合物20が含まれている。未反応の担体親和性改変ヌクレオシド化合物20は担体親和性改変塩基21を備えたことにより、目的ヌクレオシド化合物30と担体親和性が異なる。図2は、工程Dにおける担体とヌクレオシド化合物の結合を模式的に示したものである。図2(a)に示すように、担体親和性改変ヌクレオシド化合物20を担体に結合させることによって、工程Cで得られた組成物中から担体との親和性の低い目的ヌクレオシド化合物30を分離させ、目的ヌクレオシド化合物を得てもよい。担体親和性改変ヌクレオシド化合物20が分離された後の水溶液には、目的ヌクレオシド化合物30以外に、担体親和性改変塩基21及び目的塩基31が含まれるが、これらは互いに担体親和性が異なっているため、目的ヌクレオシド化合物30を容易に精製することが可能である。又は、図2(b)に示すように、目的ヌクレオシド化合物30を担体に結合させることによって、工程Cで得られた組成物中から、担体との親和性の高い目的ヌクレオシド化合物30を分離(精製)させてもよい。担体親和性改変の手段としては、ヌクレオシドの塩基部分に官能基を付加(置換)し、置換基13を有する塩基とすることで、担体親和性改変塩基とする方法が好ましい。 前記置換基は、該置換基が付加されたことによって、ヌクレオシドホスホリラーゼによる反応が阻害されることのない官能基であれば特に制限されず、親和性の差別が可能となるよう種々のものを選択することができる。 担体としてイオン交換樹脂を用いる場合、担体親和性の改変により親和性の差異を与える置換基としては、種々の極性基を例示できる。極性基が付加されたことによる親和性(イオン性)の改変の結果に応じて、分離に適したイオン交換樹脂を選択すればよい。 担体親和性改変ヌクレオシド化合物がイオン交換樹脂に結合するようにイオン性を改変させる場合を例に挙げると、担体親和性改変ヌクレオシド化合物が分離に適した条件下で陽イオン性となる場合、イオン交換樹脂として、公知の強酸性陽イオン交換樹脂又は弱酸性陽イオン交換樹脂を担体として用いればよい。またそれとは逆に、担体親和性改変ヌクレオシド化合物が分離に適した条件下で陰イオン性となる場合、公知の強塩基性陰イオン交換樹脂または弱塩基性陰イオン交換樹脂を担体として用いればよい。 このように、ヌクレオシド化合物を陽イオン性へと改変し得る極性基としては、アミノ基(‐NH2、並びにメチルアミン又はジメチルアミンから1個の水素原子を除去した官能基)、ピリジン基等の官能基を挙げることができる。同様に、ヌクレオシド化合物を陰イオン性へと改変し得る極性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基等の官能基を挙げることができる。 担体としてキレート樹脂を用いる場合、キレート樹脂の有するキレート形成基と結合する、担体親和性改変によって担体への親和性の結合の差異となる置換基としては、イミノジ酢酸、イミノジプロピオン酸等の有機酸から1個の水素原子を除いた基、ポリアミンから1個の水素原子を除いた基、グルカミン基等を付加することが挙げられる。 担体親和性を改変されるヌクレオシドの種類としては特に制限されないが、例えば、担体親和性を改変されるヌクレオシドとしてウリジンを用いる場合、ウラシルのピリミジン環の5位又は6位の水素原子を前記極性基で置換することが挙げられる。具体的な極性基としては、上記のとおり、アミノ基、ピリジン基、カルボキシル基、スルホン酸基、イミノジ酢酸、イミノジプロピオン酸等の有機酸から1個の水素原子を除いた基、ポリアミンから1個の水素原子を除いた基、グルカミン基等を選択することができ、より具体的な態様としてアミノ基の場合を例示すると、ウラシルのピリミジン環の5位又は6位の水素原子をアミノ基に置換し、5−アミノウラシル又は、6−アミノウラシルとすることができる。この場合、担体親和性改変ヌクレオシド化合物は、dU−5−NH2又はdU−6−NH2である。 また、担体親和性を改変されるヌクレオシドとしてチミジンを用いる場合、チミンのピリミジン環の6位の水素原子を前記官能基で置換することが挙げられる。具体的な官能基としては、上記のとおり、アミノ基、ピリジン基、カルボキシル基、スルホン酸基、イミノジ酢酸、イミノジプロピオン酸等の有機酸から1個の水素原子を除いた基、ポリアミンから1個の水素原子を除いた基、グルカミン基等を選択することができ、より具体的な態様としてアミノ基の場合を例示すると、チミジンのピリミジン環の6位の水素原子をアミノ基に置換し、6−アミノチミンとすることができる。この場合、担体親和性改変ヌクレオシド化合物は、dT−6NH2である。 前記イオン交換樹脂、キレート樹脂等の樹脂からの溶離液は、用いる樹脂と結合する官能基の種類に応じて一般的に用いられている各種溶離液を用いることができ、溶離液の種類、濃度等を適宜選択することが可能であり、好ましい溶離液として、酢酸、ギ酸、アンモニア水、希塩酸などが挙げられる。 本発明のヌクレオシド化合物の製造方法が含む、目的ヌクレオシド化合物を得る反応工程Cを、上述したように、担体親和性を改変されるヌクレオシドとしてウリジンを用い、ウラシルのピリミジン環の5位又をアミノ基に置換し、5−アミノウラシルとし、目的ヌクレオシド化合物をチミジンとした場合、反応工程Cは以下のように表される。 上記反応系には、目的ヌクレオシド化合物であるチミジンの他に、dU−5−NH2、5−アミノウラシルといった目的物以外のヌクレオシド及び塩基が含まれることとなるが、dU−5−NH2及び5−アミノウラシルはチミジンと比較して陽イオン交換樹脂に対する親和性が高められており、チミジンが陽イオン交換樹脂に結合しない条件で、dU−5−NH2及び5−アミノウラシルが陽イオン交換樹脂に結合するため、本発明のヌクレオシド化合物の製造方法では、容易に目的ヌクレオシドであるチミジンと目的物以外のヌクレオシド及び塩基を分離可能である。なお、ヌクレオシドと塩基では担体親和性、例えば水に対する溶解性が異なり、水で溶離を行う場合、先に析出される塩基をろ過することで、塩基とヌクレオシドとの分離も容易である。 このように担体を用いてのヌクレオシド化合物又は塩基の精製は、担体へ結合又は溶離の有無で精製することが可能であるので、精製量を容易に増加させることができ、短時間で大量の目的ヌクレオシドを精製できる。 本発明のヌクレオシド化合物の製造方法は、担体親和性改変塩基の置換基とは異なる側鎖を有する塩基を備え、原材料として用いられる、原材料ヌクレオシド化合物と、前記担体親和性改変塩基とを、リン酸イオンを含む水溶液中において、ヌクレオシドホスホリラーゼにより塩基交換反応させて、担体親和性改変ヌクレオシド化合物を得る工程Aを工程Cの前に含んでいてもよい。 担体親和性改変ヌクレオシド化合物も、目的ヌクレオシドの場合と同様に、塩基交換反応によって得ることができる。 ここで、工程Aにおける「担体親和性改変」ヌクレオシド化合物は、反応1−1の出発物質の原材料ヌクレオシド化合物との間で、担体に対する親和性が差別可能なように担体親和性が改変されていることが好ましい。親和性が差別可能であることにより、反応2−1における生成物である担体親和性改変ヌクレオシド化合物を精製して取得することがより容易となる。原材料ヌクレオシド化合物は、担体親和性改変塩基の置換基とは異なる側鎖を有する塩基を備えているため、担体親和性改変ヌクレオシド化合物との、担体に対する親和性が差別可能である。 工程Aの反応の概要を、図3において模式的に示して説明する。図3には、後述の工程Bも併せて示してある。 図3中の工程Aでは、担体親和性改変塩基21の置換基13とは異なる側鎖を有する塩基11と糖部分12とを備え、原材料として用いられる、原材料ヌクレオシド化合物10と、前記担体親和性改変塩基21とをヌクレオシドホスホリラーゼにより塩基交換反応させて、担体親和性改変塩基21と糖部分12とを備えた担体親和性改変ヌクレオシド化合物20を得る工程を示している。 本発明のヌクレオシド化合物の製造方法では、前記担体親和性改変ヌクレオシド化合物又は前記原材料ヌクレオシド化合物を担体に結合させて該担体親和性改変ヌクレオシド化合物又は前記原材料ヌクレオシド化合物を前記水溶液中から分離させる工程Bを含んでいてもよい。 工程Bの反応の概要を、図4において模式的に示して説明する。 工程Aで得られた組成物中には、担体親和性改変ヌクレオシド化合物20の他、塩基交換反応により生成された副生成物の塩基11も含まれている。さらには、該組成物中には未反応の担体親和性改変塩基21及び未反応の原材料ヌクレオシド化合物10が含まれている。担体親和性改変ヌクレオシド化合物20は担体親和性改変塩基21を備えたことにより、原材料ヌクレオシド化合物10と担体親和性が異なる。図4は工程Dにおける担体とヌクレオシド化合物の結合を模式的に示したものである。図4(a)に示すように、担体親和性改変ヌクレオシド化合物20を担体に結合させることによって、工程Aで得られた組成物中から担体との親和性の低い原材料ヌクレオシド化合物10を分離させ、担体親和性改変ヌクレオシド化合物20を精製させてもよい。又は、図4(b)に示すように、原材料ヌクレオシド化合物10を担体に結合させることによって、工程Aで得られた組成物中から担体との親和性の高い原材料ヌクレオシド化合物10を分離させてもよい。原材料ヌクレオシド化合物10が分離された後の水溶液には、担体親和性改変ヌクレオシド化合物20以外に、担体親和性改変塩基21及び塩基11が含まれるが、これらは互いに担体親和性が異なっているため、担体親和性改変ヌクレオシド化合物20を容易に精製することが可能である。反応1−1〜反応2−2までをまとめると、以下のように表すことができる。 原材料ヌクレオシド化合物が有する塩基と目的ヌクレオシド化合物が有する目的塩基との間で、担体に対する親和性が本来は差別可能ではないとき、原材料ヌクレオシド化合物と目的ヌクレオシド化合物の分離(精製)は大変困難であった。例えば、原材料ヌクレオシド化合物が有する塩基及び目的ヌクレオシド化合物の目的塩基が、ウラシル、チミン又はそれらの誘導体のいずれかである場合、ウラシル及びチミンとの間では、イオン交換樹脂に対する親和性が少なく、差別が困難であるため、原材料ヌクレオシド化合物と目的ヌクレオシド化合物の分離(精製)が特に困難であった。しかし、本発明のヌクレオシド化合物の製造方法では、担体親和性ヌクレオシド化合物を介して目的ヌクレオシド化合物を製造するので、担体親和性改変ヌクレオシド化合物を反応系から分離させることで、目的ヌクレオシド化合物の精製を大変容易に行うことが可能である。 また、原材料ヌクレオシド化合物が有する塩基、担体親和性改変ヌクレオシド化合物が有する塩基又は目的ヌクレオシド化合物の塩基が、ウラシル、チミン又はそれらの誘導体のいずれかである場合、用いる前記ヌクレオシドホスホリラーゼが、チミジンホスホリラーゼとすることができる。チミジンホスホリラーゼは、チミジンの他にウリジンに対しても基質として認識可能であるため、チミジンホスホリラーゼによって反応を行うことが可能である。特に、原材料ヌクレオシド化合物が有する塩基、担体親和性改塩基及び目的塩基の全ての塩基が、ウラシル、チミン又はそれらの誘導体のいずれかである場合、チミジンホスホリラーゼのみで反応を行うことが可能である。 また、原材料ヌクレオシド化合物が有する塩基と目的ヌクレオシド化合物の塩基との間で、担体に対する親和性が本来は差別可能ではない別の場合として、当該両塩基が同種の塩基である場合がある。この場合も、原材料ヌクレオシド化合物と目的ヌクレオシド化合物の分離(精製)は大変困難であった。 当該両塩基が同じ種類の塩基である場合としては、例えば、目的ヌクレオシド化合物の目的塩基が同位体標識された塩基であって、さらに原材料ヌクレオシド化合物が有する塩基と同じ種類の塩基である場合が挙げられる。ここで、同位体標識とは、安定同位体標識又は放射性同位体標識の両方を指す。このように、原材料ヌクレオシド化合物を安定同位体標識又は放射性同位体標識する場合に、担体親和性ヌクレオシド化合物を介して目的物である安定同位体標識又は放射性同位体標識されたヌクレオシド化合物を製造することにより、担体親和性改変ヌクレオシド化合物を反応系から分離させることで、安定同位体標識又は放射性同位体標識されたヌクレオシドのみを容易に得ることが可能となる。前記安定同位体としては、例えば13C、15N、2H、17O、18Oを挙げることができる。放射性同位体標識としては、一例として、3H、14C、13N、32P、33P、35Sを挙げることができる。 反応工程におけるヌクレオシドホスホリラーゼの反応条件は、酵素の性質や塩基およびヌクレオシドに合わせて適切な条件を適宜選択すればよい。好ましい反応条件としては、反応液中の塩基およびヌクレオシドの濃度は1〜100mMが好ましく、ヌクレオシドは20〜50mMがより好ましく、塩基は5〜50mMがさらに好ましい。反応液中のリン酸濃度は1〜1000mMが好ましく、1〜50mMがより好ましい。反応開始時のヌクレオシドに対する塩基のモル比は、目的のヌクレオシドに応じて適宜設定すればよく、例えば0.1〜1倍とすることができる。特に塩基が安定同位体標識された塩基の場合、当該標識塩基が高価であり塩基収率を高める必要があるため、塩基のモル比を0.1〜0.2倍とすることが好ましい。反応液中のヌクレオシド量及び塩基量に対するリン酸のモル比は0.01〜25倍が好ましく、0.01〜5倍がより好ましく、0.02〜0.03倍がさらに好ましい。ヌクレオシドホスホリラーゼの使用量は、反応液量に対して0.1〜100U/mL、好ましくは0.1〜10U/mLを用いることが例示できる。 反応液の温度は使用するホスホリラーゼの反応温度に合わせて定めればよいが、10〜100℃が好ましく、25〜40℃がより好ましく、37℃がさらに好ましい。反応液のpHはpH6〜9の範囲が好ましく、pH6.5〜7.5の範囲が好ましく、pH6.8〜7.2の範囲で行うことがより好ましい。反応時間についても、使用する材料(酵素の量、基質の量など)に合わせて適切な反応時間を適宜定めればよいが、0.5〜48時間が好ましく、1〜12時間がより好ましい。≪組成物≫[第一実施形態] 本発明の第一実施形態の組成物は、目的塩基を備えた目的ヌクレオシド化合物と、置換基を有する塩基である担体親和性改変塩基を備えたことにより担体との親和性が改変された担体親和性改変ヌクレオシド化合物、前記担体親和性改変塩基、前記目的塩基、及びヌクレオシドホスホリラーゼからなる群から選ばれる一種以上と、を含有し、前記目的塩基は、前記担体親和性改変塩基の前記置換基とは異なる側鎖を有するものである。 ここで、目的塩基、目的ヌクレオシド化合物、担体親和性改変塩基、担体親和性改変ヌクレオシド化合物、又はクレオシドホスホリラーゼについては、上記≪ヌクレオシド化合物の製造方法≫において説明したものである。本発明の第一実施形態の組成物は、一例として、本発明のヌクレオシド化合物の製造方法により取得することが可能である。 例えば、本発明のヌクレオシド化合物の製造方法を用いて取得された当該組成物には、下記に挙げたような高純度で目的ヌクレオシド化合物を含む組成物を得ることができる。本発明の第一の実施形態の組成物は、一例として、組成物中のヌクレオシド化合物、塩基、リン酸化糖、及びそれらの誘導体の総量に対して、前記目的ヌクレオシド化合物の含有率が95mol%以上、97mol%以上、又は99mol%以上とすることができる。 また、本発明の第一の実施形態の組成物は、前記目的塩基が、安定同位体標識又は放射性同位体標識された塩基であることが好ましい。[第二実施形態] 本発明の第二実施形態の組成物は、置換基を有する塩基である担体親和性改変塩基を備えたことにより、担体との親和性が改変された、担体親和性改変ヌクレオシド化合物と、前記担体親和性改変塩基の前記置換基とは異なる側鎖を有する目的塩基と、を含有することを特徴とするものである。当該組成物は、先に記載した本発明のヌクレオシド化合物の製造方法に好適に用いられる。 また、本発明の第二実施形態の組成物は、前記目的塩基が安定同位体標識又は放射性同位体標識された塩基であることが好ましい。 以下に共通の測定条件であるHPLCの測定条件を記載する。 HPLCの測定条件は以下の通りである。使用カラム:ODS−3、(GLサイエンス社製)カラムサイズ:φ4.6×L150mmカラム温度:40℃流速:1mL/min溶離液:80%メタノール検出波長:265nm<反応工程A:担体親和性改変ヌクレオシド化合物の製造> 1.5mLチューブ中に、リン酸緩衝液50μL(pH6.8、リン酸濃度は表1参照)、原材料ヌクレオシド化合物50mM(各Sigma社製)、担体親和性改変塩基(5-アミノウラシル、Sigma社製)50mM、ヌクレオシドホスホリラーゼ(チミジンホスホリラーゼ、Sigma社製)1Uの混合液を得た。この混合液を、温水浴中37℃で24時間反応させた後、反応後の混合液の少量を取り分けてHPLCで測定し、担体親和性改変ヌクレオシド化合物の生成量を確認した。 表1に、反応に用いた化合物、リン酸濃度条件、および原材料ヌクレオシド化合物に対する担体親和性改変ヌクレオシド化合物の生成量(モル%)を示す。 HPLCの測定結果から、dU−5−NH2又はU−5−NH2を高収率および高収量で短時間に得られたことが確認できた。<精製工程B:担体親和性改変ヌクレオシド化合物の精製> 上記の反応工程Aで得た反応後の混合液を、陽イオン交換樹脂(DOWEX50WX8、ダウ・ケミカル社製)が充填された10mLガラスカラムに流し、次いで、純水を流してカラムを洗浄した。この洗浄後の純水の分画を、HPLCを用いて分析したところ、未反応の原材料ヌクレオシド化合物(dT、dU、T、U)及び副生成物塩基(チミン、ウラシル)が検出された。さらに十分に純水を流してカラムを洗浄した後、2%アンモニア水を流し、担体親和性改変塩基および担体親和性改変ヌクレオシド化合物を溶離させた。この溶離に用いたアンモニア水の分画を、HPLCを用いて分析したところ、未反応の担体親和性改変塩基(5−アミノウラシル)および担体親和性改変ヌクレオシド化合物(dU−5−NH2、U−5−NH2)が検出された。前記アンモニア水の分画をエバポレーターで濃縮したところ、白色固体を得た。1H−NMRで分析した。 その結果、U−5−NH2については図5に示す結果が得られた。1H-NMR(Deuterium oxide, 400 MHz): d ppm = 7.131-7.924 (1H, s, 5-CH), 6.120 (1H, t, J = 6.8 Hz, 1’-CH), 4.305-4.269 (1H, m, 3’-CH), 3.861-3.830 (1H, m, 4’-CH), 3.687-3.566 (2H, m, 5’-CH2), 2.189-2.160 (2H, m, 2’-CH2)。dU−5−NH2については図6に示す結果が得られた。1H-NMR(Deuterium oxide, 400 MHz): d ppm = 7.157 (1H, s, 5-CH), 5.190-5.778 (1H, m, 1’-CH), 4.162 (2H, t, J = 5.2 Hz, 2’-CH), 4.062 (1H, t, J = 4.8 Hz, 3’-CH), 3.960-3.930 (1H, Q, 4’-CH), 3.747-3.614 (2H, m, 5’-CH2)。 これらの結果から、得られた白色固体は、U−5−NH2、dU−5−NH2であることがそれぞれ確認された。NMRの解析結果では、U−5−NH2またはdU−5−NH2の担体親和性改変ヌクレオシド化合物以外のシグナルがほぼ検出されなかったことから、当該白色固体中およそ99%以上の高純度で担体親和性改変ヌクレオシド化合物が得られたことが確認できた。<反応工程C:目的ヌクレオシド化合物の製造> 1.5mLチューブ中に、リン酸緩衝液50μL(pH6.8、リン酸濃度は表2参照)、上記の生成工程Bで得られたdU−5−NH250mM、目的ヌクレオシド化合物の目的塩基(表2参照、各Sigma社製)50mM、ヌクレオシドホスホリラーゼ(プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)又はチミジンホスホリラーゼ(TP))、各酵素の添加量は表2参照、Sigma社製)の混合液を得た。この混合液を、37℃の温水浴中で24時間反応させた後、反応後の混合液の少量を取り分けてHPLCで分析し、目的ヌクレオシド化合物の生成量を確認した。実施例13では、37℃で2時間反応させた。 表2に反応に用いた化合物、リン酸濃度条件、ヌクレオシドホスホリラーゼ、担体親和性改変ヌクレオシド化合物に対する目的ヌクレオシド化合物の生成量(モル%)を示す。なお、目的ヌクレオシド化合物の目的塩基がプリン塩基の場合、PNPとTPの両方のヌクレオシドホスホリラーゼを前記混合液に添加した。 例として、実施例13で用いたdU−5−NH2、及び実施例13で得られたデオキシウラシル−1,3−15N2の合成を以下に示す。 HPLC分析の結果から、dA、dT、dG、dU、A、T、G、U及びデオキシウラシル−1,3−15N2を高収率および高収量で短時間に得られたことが確認できた。<精製工程D:目的ヌクレオシド化合物の精製> 上記の反応工程Cで得た反応後の混合液を、陽イオン交換樹脂(DOWEX50WX8、ダウ・ケミカル社製)が充填された10mLガラスカラムに流し、次いで、純水を流してカラムを洗浄した。この洗浄後の純水の分画を、HPLCを用いて分析したところ、目的ヌクレオシド化合物(dA、dT、dG、dU、A、T、G、U)及び未反応の目的ヌクレオシド化合物の目的塩基(アデニン、チミン、グアニン、ウラシル)が検出された。さらに十分に純水を流してカラムを洗浄した後、2%アンモニア水を流し、担体親和性改変塩基および担体親和性改変ヌクレオシド化合物を溶離させた。この溶離に用いたアンモニア水の分画を、HPLCを用いて分析したところ、担体親和性改変塩基(5−アミノウラシル)および担体親和性改変ヌクレオシド化合物(dU−5−NH2)が検出された。前記純水の分画をエバポレーターで濃縮したところ、白色固体を得た。実施例13で得られた白色固体について1H−NMRで分析したところ、図7に示す結果が得られた。1H-NMR(Metahnol-D4, 400 MHz): d ppm = 7.99-7.97 (1H, m, 5-CH), 6.27 (1H, t, J = 6.4 Hz, 1’-CH), 5.70-5.69 (1H, m, 6-CH), 4.39-4.38 (1H, m, 3’-CH), 3.86-3.83 (1H, m, 4’-CH), 3.77-3.72 (2H, m, 5’-CH2), 2.27-2.2 (2H, m, 2’-CH2)。また、実施例13で得られた白色固体について15N−NMRで分析したところ、図8に示す結果が得られた。15N-NMR(Methanol-D4, 400 MHz);δppm=143,896, 143.829 (2N, s, 1,3-N)。15N-NMRスペクトルから、1,3位のNに帰属されるシグナルが2本観測され、2か所15N標識されていることが確認できた。 以上の結果から、実施例13で得られた白色固体はdU−1,3−15N2であることが確認された。NMRの解析結果では、dU−1,3−15N2以外のシグナルがほぼ検出されなかったことから、当該白色固体中およそ99%以上の高純度で目的ヌクレオシド化合物が得られたことが確認できた。 以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。 本発明のヌクレオシド化合物の製造方法は、所望のヌクレオシド化合物を短時間で、高純度で製造可能であるため、化学あるいは医学等の分野におけるヌクレオシド化合物の製造に有用である。本発明の組成物は、ヌクレオシド化合物の製造に用いられるほか、それ自体を試薬として、又は医薬品原材料として使用できる。10・・・原材料ヌクレオシド化合物、20・・・担体親和性改変ヌクレオシド化合物、30・・・目的ヌクレオシド化合物、11・・・原材料ヌクレオシド化合物の塩基、21・・・担体親和性改変塩基、31・・・目的塩基、12・・・糖部分、13・・・置換基、14・・・担体 置換基を有する塩基である担体親和性改変塩基を備えたことにより、担体との親和性が改変された、担体親和性改変ヌクレオシド化合物を用いて、前記担体親和性改変塩基の前記置換基とは異なる側鎖を有する目的塩基を備えた目的ヌクレオシド化合物を得る、ヌクレオシド化合物の製造方法であって、 前記担体親和性改変ヌクレオシド化合物と、前記目的塩基とを、リン酸イオンを含む水溶液中において、ヌクレオシドホスホリラーゼにより塩基交換反応させて、前記目的ヌクレオシド化合物を得る工程Cを含むことを特徴とするヌクレオシド化合物の製造方法。 前記工程Cの後に、前記担体親和性改変ヌクレオシド化合物又は前記目的ヌクレオシド化合物を担体に結合させて該担体親和性改変ヌクレオシド化合物又は前記目的ヌクレオシド化合物を前記水溶液中から分離させる工程Dを含む請求項1に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。 前記担体親和性改変塩基の前記置換基とは異なる側鎖を有する塩基を備え、原材料として用いられる、原材料ヌクレオシド化合物と、前記担体親和性改変塩基とを、リン酸イオンを含む水溶液中において、ヌクレオシドホスホリラーゼにより塩基交換反応させて、前記担体親和性改変ヌクレオシド化合物を得る工程Aを含む請求項1又は2に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。 前記工程Aの後に、前記担体親和性改変ヌクレオシド化合物又は前記原材料ヌクレオシド化合物を担体に結合させて該担体親和性改変ヌクレオシド化合物又は前記原材料ヌクレオシド化合物を前記水溶液中から分離させる工程Bを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。 前記原材料ヌクレオシド化合物の塩基、及び、前記目的ヌクレオシド化合物の前記目的塩基が、ウラシル、チミン又はそれらの誘導体のいずれかである請求項1〜4のいずれか一項に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。 前記工程A又は工程Cにおいて用いられる前記ヌクレオシドホスホリラーゼが、チミジンホスホリラーゼである請求項1〜5のいずれか一項に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。 前記工程Cにおいて、前記担体親和性改変ヌクレオシド化合物と反応する前記目的ヌクレオシド化合物の目的塩基が、安定同位体標識又は放射性同位体標識された塩基である請求項1〜6のいずれか一項に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。 目的塩基を備えた目的ヌクレオシド化合物と、 置換基を有する塩基である担体親和性改変塩基を備えたことにより担体との親和性が改変された担体親和性改変ヌクレオシド化合物、前記担体親和性改変塩基、前記目的塩基、及びヌクレオシドホスホリラーゼからなる群から選ばれる一種以上と、を含有し、 前記目的塩基は、前記担体親和性改変塩基の前記置換基とは異なる側鎖を有することを特徴とする組成物。 組成物中のヌクレオシド化合物、塩基、リン酸化糖、及びそれらの誘導体の総量に対して、前記目的ヌクレオシド化合物の含有率が95mol%以上である請求項8に記載の組成物。 前記目的塩基が、安定同位体標識又は放射性同位体標識された塩基である請求項8又は9に記載の組成物。 置換基を有する塩基である担体親和性改変塩基を備えたことにより、担体との親和性が改変された、担体親和性改変ヌクレオシド化合物と、 前記担体親和性改変塩基の前記置換基とは異なる側鎖を有する目的塩基と、を含有することを特徴とする組成物。 前記目的塩基が、安定同位体標識又は放射性同位体標識された塩基である請求項11に記載の組成物。 【課題】短時間で目的ヌクレオシド化合物を精製でき且つ量産可能なヌクレオシド化合物の製造方法の提供。【解決手段】置換基を有する塩基である担体親和性改変塩基を備えたことにより、担体との親和性が改変された、担体親和性改変ヌクレオシド化合物を用いて、前記担体親和性改変塩基の前記置換基とは異なる側鎖を有する目的塩基を備えた目的ヌクレオシド化合物を得る、ヌクレオシド化合物の製造方法であって、前記担体親和性改変ヌクレオシド化合物と、前記目的塩基とを、リン酸イオンを含む水溶液中において、ヌクレオシドホスホリラーゼにより塩基交換反応させて、前記目的ヌクレオシド化合物を得る工程を含むことを特徴とするヌクレオシド化合物の製造方法。【選択図】なし


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