タイトル: | 公開特許公報(A)_ルブソシドの製造方法 |
出願番号: | 2014033304 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C12P 19/56,C12R 1/245 |
下条 洋輔 野渕 翠 位上 健太郎 JP 2015156831 公開特許公報(A) 20150903 2014033304 20140224 ルブソシドの製造方法 長瀬産業株式会社 000214272 岩谷 龍 100077012 下条 洋輔 野渕 翠 位上 健太郎 C12P 19/56 20060101AFI20150807BHJP C12R 1/245 20060101ALN20150807BHJP JPC12P19/56C12P19/56C12R1:245 9 OL 14 4B064 4B064AF48 4B064BH20 4B064CA02 4B064CB07 4B064CD30 4B064CE10 4B064DA01 4B064DA10 本発明は、ステビア及び甜茶に含まれる甘味成分であるルブソシドの製造方法に関する。より詳細には、ステビア又はステビオシドを原料とし、乳酸菌、好ましくはラクトバチルス属菌、さらに好ましくはラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)による微生物変換を利用した、ルブソシドの製造方法に関する。 ステビアや甜茶に含まれる甘味成分であるルブソシドは、スクロースの100倍の甘味成分を有するがノンカロリーであり、抗う蝕性、抗血管新生、抗アレルギー作用等を有することが報告されている甘味料である。ルブソシドは、ノンカロリーの甘味成分として、過去に注目されたが、ステビアや、甜茶の原料となる植物(甜葉懸鈎子等)等の植物からの抽出による大量生産が難しいため、商品化には至らなかった。ステビアに含有されるルブソシドの量はそれほど多くはない。また、甜茶には、ステビアと比較して、ルブソシドが豊富に含有されているが、甜茶の原料となる植物の栽培が中国の一部の地域に限られ、また天候による影響から収穫量も一定ではないとされるため、ステビアの中心甘味成分であるステビオシドやレバウディオシドAと比較して、市場価格が数倍から10倍とも言われている(非特許文献1及び2)。更に、ルブソシドには、抗がん剤や、その他難溶性薬剤の溶解性を高める天然可溶化剤としての働きが報告されており、その利用価値が注目されている(特許文献1)。 ルブソシドの大量生産方法としては、麹菌(Aspergillus)由来の酵素を利用して、ステビオシドを原料としてルブソシドの生産を行なう手法が報告されている(非特許文献1及び2)。また、精製酵素でなく、クリセオバクテリウム(Chryseobacterium)の休止菌体による同様の変換も報告されている(非特許文献3)。しかしながら、非特許文献1及び2に記載された方法では、予め酵素を大量に精製する必要があり、その精製のため工程管理項目が増える、酵素精製のための菌体の増殖速度が遅い、麹菌には食経験上安全でないものも存在する、等といった問題があった。また、非特許文献3のクリセオバクテリウムについても、食経験上十分に安全なものではなく、病原性を有する可能性も排除できないため、安全性に問題があった。従って、食しても十分に安全であり、かつ精製酵素を使用するのではなく、菌自体を生体触媒、あるいは適宜乾燥固定した死菌粉体としてそのまま利用可能な菌を使用した、より簡便で安全な、ルブソシドの大量生産方法が求められていた。特表2011−517686号公報Hui-da Wan et al. Journal of Melecular Catalysis B Enzymatic2012 82, p12-17Ko JA et al. Journal of Agricultural and Food Chemistry 2012 60, p6210-6216Jiang Zu et al. Wei Sheng Wu Xue Bao 2011 51, p43-49 本発明は、上記現状に鑑み、食しても十分に安全であり、安価で簡便かつ安全なルブソシドの製造方法を提供することを課題とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、ステビアを、食経験上安全である乳酸菌、好ましくはラクトバチルス属菌、さらに好ましくはラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)を用いて処理することにより、ステビア中に大量に含有されるステビオシドを基に、工業的に有利にルブソシドを生産することができることを見出した。 本発明者らは、上記以外にも下記するように種々の思いがけない新知見を得て、さらに鋭意検討を重ねて本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は、以下のルブソシドの製造方法等に関する。[1]ステビアを、乳酸菌を用いて処理する工程を含むことを特徴とするルブソシドの製造方法。[2]乳酸菌が、ラクトバチルス属の乳酸菌である前記[1]に記載の製造方法。[3]乳酸菌が、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)である前記[1]又は[2]に記載の製造方法。[4]ステビアが、ステビオシドを含有する前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の製造方法。[5]乳酸菌を用いた処理温度が、25〜60℃である前記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の製造方法。[6]ステビオシドを、乳酸菌を用いて処理する工程を含むことを特徴とするルブソシドの製造方法。[7]乳酸菌が、ラクトバチルス属の乳酸菌である前記[6]に記載の製造方法。[8]乳酸菌が、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)である前記[6]又は[7]に記載の製造方法。[9]乳酸菌を用いた処理温度が、25〜60℃である前記[6]〜[8]のいずれか一項に記載の製造方法。 本発明によれば、食経験上安全な原料を使用して、安価で簡便かつ、食しても十分に安全なルブソシド、特に副産物としてヒトの健康に有害な物質を含まないルブソシドの大量生産方法を提供することができる。 また、本発明によれば、精製酵素ではなく、生体触媒、あるいは適宜乾燥固定した死菌粉体としてそのまま利用が可能な菌を使用することができるため、簡便なルブソシドの大量生産方法を提供することができる。 さらに、本発明によれば、ルブソシドを安価で簡便に製造することができるため、ルブソシドを甘味料や天然可溶化剤として実用化する新規かつ有用な産業を創造することができる。実施例1のステビオシド−乳酸菌処理サンプル1(乳酸菌を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS(−))溶液に、ステビオシドのアセトニトリル溶液を添加して培養することにより得られた乳酸菌処理物)のHPLCチャートである。実施例1のステビオシドサンプル1(乳酸菌を含有しないPBS(−)と、ステビオシドのアセトニトリル溶液の混合物)のHPLCチャートである。実施例1の乳酸菌含有サンプル(乳酸菌を含有するPBS(−)溶液)のHPLCチャートである。実施例1のルブソシドサンプル(乳酸菌を含有しないPBS(−)と、ルブソシドのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液の混合物)のHPLCチャートである。実施例2のステビオシド−乳酸菌処理サンプル2(乳酸菌を含有するPBS(−)溶液に、ステビオシドのDMSO溶液を添加して培養することにより得られた乳酸菌処理物)のHPLCチャートである。実施例2のステビオシドサンプル2(乳酸菌を含有しないPBS(−)と、ステビオシドのDMSO溶液の混合物)のHPLCチャートである。実施例3のTLC写真である。比較例1のステビア抽出物サンプル(ステビアを含有する蒸留水を加熱して得られる熱水抽出液(ステビア抽出物))及び実施例4のステビア抽出物―乳酸菌処理サンプル(ステビア抽出物の乳酸菌処理物)のHPLCチャートである。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明のルブソシドの製造方法は、ステビアを、乳酸菌を用いて処理する工程を含むことを特徴とする。 本発明のルブソシドの製造方法は、ステビアを、乳酸菌を用いて処理する工程以外の工程を含んでも良い。 本発明において使用されるステビアは、通常、従来公知の方法により得られるものを使用することができる。前記ステビアは、例えば、従来公知の方法により得られるものをそのまま使用することができるし、従来公知の方法により得られるものを、水洗いしただけのもの、水洗いしてさらに乾燥したもの、水洗いして蒸した後乾燥したもの、それらを任意の大きさに裁断、粉砕、又はペースト状化したものを使用できる。ステビアとしては、天然品もその加工品も支障なく本発明で使用できる。加工品としては、例えば、ステビアの乾燥物、裁断物、粉砕物、抽出物、ペースト等が挙げられる。前記乾燥方法、裁断方法、粉砕方法、抽出方法、ペースト状化方法は、従来公知の方法を使用することができる。 本発明において使用されるステビアの部位は、特に限定されず、どの部位でも使用することができるが、例えば、ステビアの葉等を好適に使用することができる。 また、前記ステビアは、成分としてステビオシドを含有することが好ましい。ステビア中のステビオシドの含有量は、特に限定されないが、ステビア全量に対して、好ましくは、約0.1〜20重量%であり、より好ましくは、約1〜15重量%である。 本発明において使用される乳酸菌としては、特に限定されないが、例えば、ラクトバチルス属、ストレプトコックス属、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、ビフィズス属等の公知の乳酸菌が挙げられる。乳酸菌は、好ましくは、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ビフィズス属等の乳酸菌であり、より好ましくは、ラクトバチルス属の乳酸菌等である。これらの乳酸菌は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 ラクトバチルス属の乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・デルブリュッキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ケフィア(Lactobacillus kefir)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)等が挙げられる。これらはいずれも公知の乳酸菌であり、公知の細胞供給施設(例えばATCC(American Type Culture Collection))より入手可能である。 前記ラクトバチルス属の乳酸菌の中でも、ルブソシドの生産能力が高い点で、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)が好ましい。ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)は、立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(住所:郵便番号305−8566 日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されている(受託日:平成15年(2003年)8月11日、受託番号:FERM BP−10123)。 本発明のルブソシドの製造方法において、ステビアを、乳酸菌を用いて処理する方法は、ステビアと乳酸菌を接触させて処理する方法であれば特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。乳酸菌処理は、例えば、乳酸菌を用いた培養が好ましい。乳酸菌を用いた培養方法は、従来十分に確立されていて、本発明もそれに従ってよい。 前記乳酸菌処理は、例えば、ステビアを含有する培地を常法により加熱減菌処理した後、該培地に乳酸菌を接種し、培養することで処理する方法が挙げられる。また、予めステビアを含有しない培地にて乳酸菌を増殖させ、遠心分離により菌体を得た後、該菌体に滅菌蒸留水又はPBS(−)等の滅菌リン酸緩衝生理食塩水にてステビアを抽出した混合溶液をそのまま無菌的に加えて培養することで、乳酸菌処理を行ってもよい。後の精製作業を考慮すると、余計な培地成分を含有しない滅菌水中での処理がより好ましい。なお、処理に用いる乳酸菌は生菌体のままでもよい。生菌体としては増殖期の菌体でも良いし、休止菌体を用いても良い。あるいは適宜溶媒により固定・乾燥を経た死滅粉体を用いても良いが、生菌体が好ましい。 滅菌方法としては、例えば、加熱滅菌、高圧滅菌、濾過滅菌等が挙げられ、これらに限定されることなく従来公知の方法を使用することができる。また、死滅粉体は、従来公知の方法を用いて取得することができる。 本発明において使用される培地は、特に限定されないが、例えば、乳酸菌の培養に通常使用される炭素源、窒素源、ミネラル源等を含むもの等を使用することができ、天然培地又は合成培地等を用いることができる。好ましくは、液体培地を用いる。 炭素源としては、特に限定されないが、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ラクトース、スクロース、セロビオース、廃糖蜜、グリセロール等が挙げられ、好ましくは、グルコース、スクロース等である。窒素源としては、特に限定されないが、無機態窒素源としては、例えば、アンモニア、アンモニウム塩等が挙げられ、有機態窒素源としては、例えば、ペプトン、ポリペプトン、尿素、アミノ酸、タンパク質、大豆ぺプチド等のペプチド類等が挙げられる。窒素源は、好ましくは、ペプトン、ポリペプトン、ペプチド、アミノ酸等である。また、ミネラル源としては、特に限定されないが、酵母エキスや肉エキスの他、K、P、Mg、S等を含む、例えば、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。これらの炭素源、窒素源、ミネラル源は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 培地中の炭素源及び窒素源の濃度は、乳酸菌が生育できる通常の濃度であればよく、特に限定されない。培養開始時の炭素源濃度は、通常は、培地全量に対して約0.1〜15重量%が好ましく、約1〜10重量%がより好ましい。培養開始時の窒素源の濃度は、通常は、培地全量に対して約0.05〜10重量%が好ましく、約0.1〜5重量%がより好ましい。 前記培地は、前記の窒素源、炭素源、ミネラル源に加えて、さらに、無機質、有機質、pH緩衝剤等を添加しても良い。無機質や有機質としては、特に限定されないが、例えば、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、食塩、鉄、マンガン、モリブデン、各種ビタミン類等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。 pH緩衝剤としては、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム等が好ましく挙げられる。 本発明において、ステビアは、原料として培地に添加される。ステビアは、天然物でもその加工品でも良い。加工品としては、例えば、ステビアの乾燥物、裁断物、粉砕物、抽出物、ペースト等が挙げられる。 ステビアの使用量は、特に限定されないが、培地全量に対して、好ましくは、約1〜50重量%であり、より好ましくは、約5〜40重量%である。 前記培地は、本発明の効果を奏する限り、上述したステビア以外の成分や添加剤を含んでも良い。 前記培地のpHは、例えば約3〜7とすることが好ましく、約6〜7とすることがより好ましい。pHを制御してもよく、酸又はアルカリを用いてpHの調整を行うことができる。 乳酸菌を用いた処理の好ましい実施態様として、下記のものが例示される。 予めステビアを含有しない培地に乳酸菌を接種して培養し、遠心分離により菌体を得た後、該菌体に滅菌蒸留水又はPBS(−)等の減菌リン酸緩衝生理食塩水を加えることにより、乳酸菌を含有する培地が好ましく得られる。該乳酸菌含有培地に、予め公知の方法で滅菌処理を施した前記ステビア又はその加工品を別途添加して、培養することにより、ステビアを乳酸菌を用いて処理した生産物を好ましく取得することができる。前記乳酸菌含有培地に添加するステビア又はその加工品としては、前記[0012]に記載のステビアを使用することができるし、ステビアに抽出溶媒を添加してステビア成分を抽出させることにより得られる抽出液、ステビア及び抽出溶媒の懸濁液そのままのもの、又は該懸濁液を常法により加熱して得られる熱水抽出液を使用することもできる。前記懸濁液を加熱する温度は、特に限定されないが、通常、約40〜90℃である。 また、培地として、前記抽出液、懸濁液又は熱水抽出液を使用することもでき、該培地を減菌した後、該培地に乳酸菌を直接接種して培養することにより、ステビアを乳酸菌を用いて処理した生産物を好ましく取得することもできる。 これらの工程において使用されるステビアは、ステビアの葉を乾燥粉末化したもの、あるいは該粉末を適宜溶媒で抽出したものが好ましい。 前記抽出溶媒は、特に限定されないが、例えば、蒸留水、イオン交換水、生理食塩水、有機溶媒等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール等の低級アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール;アセトン等のケトン類;酢酸エチルエステル等のエステル類等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。前記抽出溶媒は、好ましくは、蒸留水、エタノールと水の混合溶媒等であり、より好ましくは蒸留水である。 前記培地に使用されるステビアと抽出溶媒の重量比は、ステビアの種類、形状、及び乾燥状態等に応じて適宜選択され得るが、例えば、ステビア/抽出溶媒の重量比は、好ましくは、約1/100〜50/100であり、より好ましくは、約5/100〜40/100である。 本発明において、前記培地に乳酸菌を接種する条件は、特に限定されず、例えば、該培地中に乳酸菌を約0.01〜30%接種することが好ましく、約0.5〜10%接種することがより好ましい。 本発明において、ステビアを、乳酸菌を用いて処理する温度は、微生物変換が効率的に実施できれば特に限定されないが、例えば、約15〜65℃が好ましく、約25〜60℃がより好ましい。 また、乳酸菌を用いて処理する処理時間は、前記培地の組成、該培地の乳酸菌接種量、前記処理温度等に応じて適宜設定され得るが、例えば、約12〜336時間が好ましく、約24〜168時間がより好ましい。乳酸菌処理は、好気条件下で行ってもよく、嫌気条件下で行っても良い。 本発明のルブソシドは、上述のようにしてステビアを乳酸菌を用いて処理して得られた生産物から、従来公知の方法を用いて、ルブソシドを採取することによって得られる。採取方法としては、ろ過、遠心分離等による粗精製又は精製、殺菌(加熱殺菌等)、希釈、濃縮、乾燥等が挙げられる。これらの採取を行なう工程を本発明の製造方法に含んでも良い。 本発明により製造されるルブソシドは、例えば、上述のようにしてステビアを乳酸菌を用いて処理して得られた生産物を、常法を用いて粗精製又は精製することにより該生産物の上澄み液を取得し、該上澄み液を希釈又は濃縮後に乾燥させることにより取得することができるし、前記生産物そのものを乾燥することにより取得することもできる。前記粗精製又は精製は、分離カラムを用いた精製、有機溶媒を用いた液相分離精製等により行なうことができる。このようにして得られる乾燥物を、従来公知の方法により濃縮、結晶化、再結晶等によってさらに精製しても良い。 本発明は、ステビオシドを、乳酸菌を用いて処理する工程を含むルブソシドの製造方法も含有する。該製造方法は、ステビオシドを、乳酸菌を用いて処理する工程以外の工程を含んでも良い。 本発明において使用されるステビオシドは、通常、従来公知の方法により得られるものを使用することができる。ステビオシドは、例えば、市販のステビオシドを使用することができ、市販のステビオシド粉末をそのまま使用することができるし、市販のステビオシド粉末を溶媒に溶解させた溶解液を使用することができる。またステビアから抽出、精製したものを使用してもよい。 ステビオシドを溶解させる溶媒は、特に限定されないが、例えば、蒸留水、イオン交換水、生理食塩水、有機溶媒等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。前記有機溶媒としては、アセトニトリル;ジメチルスルホキシド;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール等の低級アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール;アセトン等のケトン類;酢酸エチルエステル等のエステル類等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。前記ステビオシドを溶解させる溶媒は、好ましくは、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、蒸留水、エタノール、含水エタノール等であり、より好ましくは、蒸留水、含水エタノール等である。 ステビオシドを、乳酸菌を用いて処理する工程を含む本発明の製造方法の好ましい態様は、ステビアの代りにステビオシドを使用する以外は、上述した、ステビアを、乳酸菌を用いて処理する工程を含む本発明の製造方法と同様である。 上述のようにして得られたルブソシドは、甘味料として使用することができ、該ルブソシドをそのままで、食品、健康食品、サプリメント、医薬品等の製造原料として使用することができるし、該ルブソシドを常法により適宜加工したものを、食品、健康食品、サプリメント、医薬品等に使用することもできる。 前記食品とは、経口的に摂取されるものを意味し、飲料、半固形食品、固形食品、粉末食品等が挙げられる。半固形食品、固形食品としては、例えば、ドロップ、キャンディー、チューインガム等の菓子類;クッキー、クラッカー、ビスケット、ポテトチップス、パン、ケーキ、チョコレート、ドーナツ、プリン、ゼリー等の洋菓子;煎餅、羊羹、大福、おはぎ、饅頭、カステラ等の和菓子;アイスクリーム、アイスキャンディー、シャーベット、ジェラート等の冷菓;食パン、フランスパン、クロワッサン等のパン類;うどん、そば、きしめん等の麺類;かまぼこ、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品;ハム、ソーセージ、ハンバーグ、コーンビーフ等の畜肉製品;塩、胡椒、みそ、しょう油、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、甘味料、辛味料等の調味類;明石焼き、たこ焼き、もんじゃ焼き、お好み焼き、焼きそば、焼きうどん等の鉄板焼き食品;チーズ、ハードタイプのヨーグルト等の乳製品;納豆、厚揚げ、豆腐、こんにゃく、団子、漬物、佃煮、餃子、シューマイ、コロッケ、サンドイッチ、ピザ、ハンバーガー、サラダ等の各種総菜;ビーフ、ポーク、チキン等の畜産物;海老、帆立、蜆、昆布等の水産物等が挙げられる。 粉末食品としては、例えば、野菜・果実類、植物、酵母、藻類等を粉末にした各種粉末;油脂類・香料類(バニラ、柑橘類、かつお等)を粉末固形化したもの等が挙げられる。 飲料としては、例えば、スープ、味噌汁等の飲食品;インスタントコーヒー、インスタント紅茶、インスタントミルク、インスタントスープ、インスタント味噌汁等の粉末飲食品;ウイスキー、バーボン、スピリッツ、リキュール、ワイン、果実酒、日本酒、中国酒、焼酎、ビール、アルコール度数1%以下のノンアルコールビール、発泡酒、酎ハイ等のアルコール飲料;果汁(例えば、リンゴ、ミカン、ブドウ、バナナ、ナシ、ウメの果汁等)入り飲料、野菜汁(例えば、トマト、ニンジン、セロリ、キュウリ、スイカの野菜汁等)入り飲料、果汁および野菜汁入り飲料、清涼飲料水、牛乳、豆乳、乳飲料、ドリンクタイプのヨーグルト、コーヒー、ココア、茶飲料(紅茶、緑茶、麦茶、玄米茶、煎茶、玉露茶、ほうじ茶、ウーロン茶、ウコン茶、プーアル茶、ルイボスティー茶、ローズ茶、キク茶、ハーブ茶(例えば、ミント茶、ジャスミン茶)等)、栄養ドリンク、スポーツ飲料、ミネラルウォーター等の非アルコール飲料等が挙げられる。 前記健康食品とは、保健、健康維持・増進等の目的とした食品組成物を意味し、認可された特定機能性食品や、特定機能性食品の認可のないいわゆる健康食品が含まれる。前記健康食品は、例えば、液体又は半固形、固形の製品であって、クッキー、せんべい、ゼリー、ようかん、ヨーグルト、まんじゅう等の菓子類、清涼飲料、栄養飲料、スープ等が挙げられる。また、そのままお湯や水に溶かして飲用しても良い。 前記サプリメントとは、栄養素等を補うための栄養補助食品、栄養機能食品等を意味するだけではなく、健康の保持・回復・増進等のために役立つ機能等を有する健康補助食品、健康機能食品等をも意味する。このようなサプリメントの形状としては、例えば、タブレット状、丸状、カプセル(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)状、粉末状、顆粒状、細粒状、トローチ状、液状(シロップ状、乳状、懸濁状を含む)等が挙げられる。 本発明の製造方法により得られたルブソシドを医薬品に使用する場合、例えば、経口投与用剤、非経口投与剤等の製剤に使用することができる。経口投与用剤の剤型としては、例えば、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤、カプセル剤等の固形剤;エリキシル、シロップ、懸濁液等の液剤等の剤型が挙げられる。非経口投与剤の剤型としては、例えば、注射剤(静脈注射、動脈注射、筋肉注射、皮下注射、皮内注射、腹腔内注射、脊髄内注射、硬膜外注射、関節内注射、歯周組織内注射、歯槽骨周辺への注射)、経皮剤、経腸剤、点滴剤、外用剤、坐剤等が挙げられる。 本発明の製造方法により得られるルブソシドは、前記の食品、健康食品、サプリメント、医薬品の製造工程において、あるいは最終製品に、従来公知の方法を用いて添加することができる。これらの食品、健康食品、サプリメント、医薬品は、病的な血管新生やアレルギー作用等の予防、改善又は治療に用いることができる。また、本発明の製造方法により得られるルブソシドは、抗がん剤や、難溶解性薬剤の溶解性を高める天然可溶化剤として使用することもできる。 本発明を以下の実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。 尚、以下の実施例及び図において、PBS(−)とは、リン酸緩衝生理食塩水を意味し、乳酸菌とはラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(受託番号:FERM−BP−10123)を意味する。(実施例1)<ステビオシド−乳酸菌処理サンプル及びステビオシドサンプルの調製> 予め一般乳酸菌接種用培地(ニッスイ社製)に乳酸菌(ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株)を一白金耳植え、37℃で静置培養した後、遠心及びPBS(−)にて菌体ペレットの洗浄を行い、乳酸菌1×1010cfuを含むPBS(−)1mL溶液を1.5mLチューブへ用意した。一方で、市販のステビオシド(長良サイエンス社製)を、予め80%アセトニトリル溶液に20mg/mLのステビオシド濃度となるように溶解したストック溶液を用意した。該ストック溶液を、乳酸菌菌体が含まれているPBS(−)溶液へステビオシドの最終濃度が40μg/mLになるように加え、37℃で48時間静置した。これをステビオシド−乳酸菌処理サンプル1とした。また、ネガティブコントロールとして、乳酸菌を含まないPBS(−)にステビオシドを最終濃度40μg/mLになるよう前記ストック溶液を加え、同様に37℃で48時間静置したものも用意した。これをステビオシドサンプル1とした。<HPLCによる分析> 上記の通り得られたステビオシド−乳酸菌処理サンプル1及びステビオシドサンプル1を遠心し、上清10μLを以下の条件下でHPLCへ供した。HPLC(島津製作所社製)では分離カラムにYMC−Pack ODS−A (I.D. 250×4.6mm、S−5μm、12nm;YMC社製)を用いた逆相系を使用し、移動相として水及びアセトニトリルを用いたグラジエント条件下で分析を行った。カラムオーブンを37℃に設定したまま10%アセトニトリル溶液から開始し、0分から25分までに100%まで濃度を上げ、その後100%アセトニトリルによる洗浄工程を経る条件を用いた。流速1mL/分で210nmでの検出を行った。 ステビオシド−乳酸菌処理サンプル1及びステビオシドサンプル1のHPLC測定データを、それぞれ図1及び図2に示す。<乳酸菌含有サンプルの調製> 予め一般乳酸菌接種用培地(ニッスイ社製)に乳酸菌(ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株)を植え、37℃で静置培養した後、遠心及びPBS(−)にて菌体ペレットの洗浄を行い、乳酸菌1×1010cfuを含むPBS(−)1mL溶液を1.5mLチューブへ用意した。これを乳酸菌含有サンプルとした。本サンプルを遠心し、上清10μLを上述のHPLC条件で分析に供した。 乳酸菌含有サンプルのHPLC測定データを図3に示す。<ルブソシドサンプルの調製> 市販のルブソシド(和光社製)を予めジメチルスルホキシシド(DMSO)(ナカライテスク社製)に20mg/mLの濃度となるように溶解したストック溶液を用意した。乳酸菌を含まないPBS(−)にルブソシドを最終濃度40μg/mLになるよう加え、37℃で48時間静置したものも用意した。これをルブソシドサンプルとした。このサンプル10μLを上述のHPLC条件で分析に供した。 ルブソシドサンプルのHPLC測定データを図4に示す。 図1〜4の結果から、ステビオシドの乳酸菌処理物であるステビオシド−乳酸菌処理サンプル1(図1)では、14.2min付近のステビオシドのピーク(図2のピーク)が消失し、15.5min付近のルブソシドのピーク(図4のピーク)が生成したことが確認された。(実施例2) 実施例1において、80%アセトニトリル溶液をDMSOに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ない、ステビオシド−乳酸菌処理サンプル2、及びステビオシドサンプル2を調製し、実施例1と同様の方法を用いてHPLCを測定した。ステビオシド−乳酸菌処理サンプル2、及びステビオシドサンプル2のHPLC測定結果を、それぞれ図5及び図6に示す。 これらの図5及び図6の結果からも、乳酸菌を用いたステビオシドの処理により、ステビオシドが消失し、ルブソシドが生成したことが確認された。(実施例3) 実施例1及び2のHPLC測定で使用した6種の各サンプル溶液、各6μLを、TLC(薄層クロマトグラフィー)シリカゲルプレート(TLC silica gel 60 F254、メルク社製)へスポットし、移動相をクロロホルム:メタノール:水が15:13:2(v/v/v)の割合となるよう調整し、展開した後、該TLCシリカゲルプレートを乾燥し、10%硫酸溶液により噴霧した後、ドライヤーにて発色させた。その写真を図7に示す。 図7において、1はステビオシドサンプル1、2はステビオシドサンプル2、3はルブソシドサンプル、4はステビオシド−乳酸菌処理サンプル1、5はステビオシド−乳酸菌処理サンプル2、6は乳酸菌含有サンプルの展開パターンを示す。 その結果、ステビオシドの乳酸菌処理物である4:ステビオシド−乳酸菌処理サンプル1、及び5:ステビオシド−乳酸菌処理サンプル2は、ルブソシド単体の溶液(3:ルブソシドサンプル)と同じ位置にメインバンドを示し、ステビオシドの乳酸菌処理物が、ルブソシドを主成分として含有することが確認された。(実施例4)<ステビア抽出物の調製> ステビア葉の乾燥粉末を10g測りとり、そこへ蒸留水を100mL加え、撹拌しながら80℃で3時間抽出を行った。その後、No.2のろ紙(アドバンテック社製)で濾過し、得られた溶液を凍結乾燥へと供した。<ステビア抽出物―乳酸菌処理サンプルの調製> 予め一般乳酸菌接種用培地(ニッスイ社製)に乳酸菌(ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株)を植え、37℃で静置培養した後、遠心及びPBS(−)にて菌体ペレットの洗浄を行い、乳酸菌1×1010cfuを含むPBS(−)1mL溶液を1.5mLチューブへ用意した。一方で上記のステビア抽出物を予め滅菌蒸留水(H2O)に40mg/mLの濃度となるように溶解したストック溶液を用意した。該ストック溶液を0.22μm滅菌フィルターを通して滅菌し、乳酸菌菌体が含まれているPBS(−)溶液へステビア抽出物の最終濃度が8mg/mLになるように加え、37℃で96時間静置した。これをステビア抽出物―乳酸菌処理サンプルとした。<HPLCによる分析> 上記の通り得られたステビア抽出物―乳酸菌処理サンプルを遠心し、上清10μLを以下の条件下でHPLCへ供した。HPLC(島津製作所社製)では分離カラムにYMC−Pack ODS−A (I.D. 250×4.6mm、S−5μm、12nm;YMC社製)を用いた逆相系を使用し、移動相として水及びアセトニトリルを用いたグラジエント条件下で分析を行った。カラムオーブンを37℃に設定したまま10%アセトニトリル溶液から開始し、0分から25分までに100%まで濃度を上げ、その後100%アセトニトリルによる洗浄工程を経る条件を用いた。流速1mL/分で210nmでの検出を行った。 ステビア抽出物―乳酸菌処理サンプルのHPLC測定データを図8に示す。(比較例1)<ステビア抽出物サンプルの調製> ネガティブコントロールとして、乳酸菌を含まないPBS(−)に前記ステビア抽出物を最終濃度8mg/mLになるよう加え、同様に37℃で96時間静置したものも用意した。これをステビア抽出物サンプルとした。該サンプルを実施例4と同様の方法を用いてHPLC測定を行った。 ステビア抽出物サンプルのHPLC測定データを図8に示す。 図8の結果から、比較例1のステビア抽出物サンプルに含有される14.2min付近のステビオシドのピークが、実施例4のステビア抽出物―乳酸菌処理サンプルでは減少しており、実施例4のピークでは15.5min付近のルブソシドのピークが見られた。従って、ステビア抽出物に含有されるステビオシドを、乳酸菌を用いて処理することにより、ルブソシドを製造することができることが示された。 本発明のルブソシドの製造方法によれば、食経験上十分に安全な原料を使用して、食しても十分に安全なルブソシドを、安価で簡便に製造することができ、大量生産することができるため、ルブソシドを甘味料や難溶解性薬剤の天然可溶化剤として実用化することができる。 ステビアを、乳酸菌を用いて処理する工程を含むことを特徴とするルブソシドの製造方法。 乳酸菌が、ラクトバチルス属の乳酸菌である請求項1に記載の製造方法。 乳酸菌が、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)である請求項1又は2に記載の製造方法。 ステビアが、ステビオシドを含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。 乳酸菌を用いた処理温度が、25〜60℃である請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。 ステビオシドを、乳酸菌を用いて処理する工程を含むことを特徴とするルブソシドの製造方法。 乳酸菌が、ラクトバチルス属の乳酸菌である請求項6に記載の製造方法。 乳酸菌が、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)である請求項6又は7に記載の製造方法。 乳酸菌を用いた処理温度が、25〜60℃である請求項6〜8のいずれか一項に記載の製造方法。 【課題】食しても十分に安全であり、安価で簡便かつ安全なルブソシドの製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】ステビアを、乳酸菌を用いて処理する工程を含むことを特徴とするルブソシドの製造方法。【選択図】なし