タイトル: | 公開特許公報(A)_電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法、電子顕微鏡観察用試料の染色方法、および電子顕微鏡観察用染色剤の原液 |
出願番号: | 2014019311 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 1/30,G01N 1/28,G01N 33/48 |
春田 知洋 JP 2015145854 公開特許公報(A) 20150813 2014019311 20140204 電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法、電子顕微鏡観察用試料の染色方法、および電子顕微鏡観察用染色剤の原液 日本電子株式会社 000004271 布施 行夫 100090387 大渕 美千栄 100090398 春田 知洋 G01N 1/30 20060101AFI20150717BHJP G01N 1/28 20060101ALI20150717BHJP G01N 33/48 20060101ALI20150717BHJP JPG01N1/30G01N1/28 JG01N1/28 FG01N33/48 P 10 3 OL 14 2G045 2G052 2G045BA14 2G045BB22 2G045BB25 2G045BB28 2G045CB17 2G045DA44 2G045FA16 2G052AA28 2G052AA33 2G052AB17 2G052AB18 2G052FA09 2G052GA34 本発明は、電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法、電子顕微鏡観察用試料の染色方法、および電子顕微鏡観察用染色剤の原液に関する。 生体試料の微細な構造等を観察する装置として、光学顕微鏡や電子顕微鏡が知られている。特に、走査電子顕微鏡や透過電子顕微鏡等の電子顕微鏡は光学顕微鏡と比べて分解能が高いため、より微細な構造を観察する際に有効である。しかしながら、生体試料は、炭素、酸素、窒素、水素などの軽元素を含んで構成されているため、電子線を十分に散乱させることができない。したがって、電子顕微鏡で観察しても、電子顕微鏡像に十分なコントラストが得られない場合がある。そのため、電子顕微鏡で生体試料を観察する際には、一般的に、試料を重金属等で電子染色する。試料を電子染色することにより、電子線の散乱を促し、電子顕微鏡像にコントラストをつけることができる(例えば特許文献1参照)。 水酸化ランタンは、糖タンパク質に結合することにより、生物組織を電子染色することができる。糖タンパク質は主に細胞膜に局在しており、水酸化ランタンを傍細胞領域のバリア機能を果たす蛋白質群のトレーサーとして用いることができる。 有効な電子染色を行うためには、1%程度の濃度の水酸化ランタン水溶液が必要となる。しかしながら、水酸化ランタンは、25℃における水に対する溶解度は0.3mg/lであり、ほとんど水に溶けない。図9は、20mlの水に2gの水酸化ランタンを加えた様子を示す写真である。図9に示すように、水酸化ランタンは水に溶けずに懸濁している。このように水酸化ランタンはほとんど水に溶けないため、水酸化ランタン水溶液は、一般的に、硝酸ランタン水溶液に水酸化ナトリウムを加えて作製している。 現在、一般的に使われている水酸化ランタン染色液の作製法は以下の通りである。 まず、2%〜4%の硝酸ランタン水溶液(pH7.6〜pH7.8)に0.01N水酸化ナトリウムを少しずつ反応させて、水酸化ランタンを作製する。水酸化ランタンは、pH7.6〜7.8において水に不溶のため、沈殿する。この液に同量のKarnovsky固定液(2.5%グルタールアルデヒド、2%パラホルムアルデヒド、0.1Mカコジル酸ナトリウム水溶液(pH7.2))、もしくは、0.1Mカコジル酸水溶液(pH7.2)に1%四酸化オスミウム酸水溶液を溶かしたものを加え、染色液とする。 このようにして、最終濃度1%〜2%水酸化ランタン水溶液(pH7.2)を作製することができる。水酸化ランタンは溶けきらずに濁ることがあるが、沈殿が気になる場合には、アルコールを添加することにより、溶かしきることが可能である。 このようにして作製した染色液を用いると、生物細胞や組織を固定すると同時に糖タンパク質が染色される。特開2012−255697号公報 しかしながら、上述した硝酸ランタン水溶液に水酸化ナトリウムを反応させて染色剤を作製する方法では、調整に時間がかかるうえに、最終的に得られる量も安定しなかった。さらに、水酸化ランタンの生成をpH7.6〜7.8で生じる沈殿として確認し、その沈殿が生じた水溶液に同量のKarnovsky固定液等を加えて染色剤とするため、水酸化ランタンの最終濃度は安定しない。さらに、このように作製した染色剤は、水酸化ランタンの沈殿物が残っているため、コンタミネーションの原因となる。 本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、簡便に電子染色を行うことができる電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法、電子顕微鏡観察用試料の染色方法、および電子顕微鏡観察用染色剤の原液を提供することができる。 (1)本発明に係る電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法は、 水酸化ランタンを酸性溶液に溶かし、緩衝液を加えることを含む。 このような電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法では、簡便に電子染色を行うことができる。例えば、水酸化ランタンを酸性溶液に溶かした溶液はストックソリューション(原液)として保存が可能であり、このストックソリューションに緩衝液を加えることで、簡便に染色剤として使用が可能である。 さらに、このような電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法では、水酸化ランタンの沈殿を抑制できるため、コンタミネーションを抑制することができる。また、このような電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法では、正確な濃度で水酸化ランタン水溶液を作製することができるため、再現性も向上できる。 (2)本発明に係る電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法は、 水酸化ランタンを酸性溶液に溶かし、緩衝液と、試料を固定するための固定液と、を加えることを含む。 このような電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法では、簡便に電子染色を行うことができる。例えば、水酸化ランタンを酸性溶液に溶かした溶液はストックソリューション(原液)として保存が可能であり、このストックソリューションに緩衝液を加えることで、簡便に染色剤として使用が可能である。 さらに、このような電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法では、水酸化ランタンの沈殿を抑制できるため、コンタミネーションを抑制することができる。また、このような電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法では、正確な濃度で水酸化ランタン水溶液を作製することができるため、再現性も向上できる。 さらに、このような電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法では、試料を固定しつつ、電子染色を行うことができる。 (3)本発明に係る電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法において、 前記酸性溶液は、塩酸であってもよい。 このような電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法では、簡便に電子染色を行うことができる。 (4)本発明に係る電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法において、 前記緩衝液は、カコジル酸ナトリウム水溶液であってもよい。 このような電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法では、簡便に電子染色を行うことができる。 (5)本発明に係る電子顕微鏡観察用試料の染色方法は、 水酸化ランタンを酸性溶液に溶かし緩衝液を加えた溶液に試料を浸漬することを含む。 このような電子顕微鏡観察用試料の染色方法では、簡便に電子染色を行うことができる。例えば、水酸化ランタンを酸性溶液に溶かした溶液はストックソリューションとして保存が可能であり、このストックソリューションに緩衝液を加えることで、簡便に染色剤として使用が可能である。 さらに、このような電子顕微鏡観察用試料の染色方法では、水酸化ランタンの沈殿を抑制できるため、コンタミネーションを抑制することができる。また、このような電子顕微鏡観察用試料の染色方法では、正確な濃度で水酸化ランタン水溶液を作製することができるため、再現性も向上できる。 (6)本発明に係る電子顕微鏡観察用試料の染色方法は、 水酸化ランタンを酸性溶液に溶かし緩衝液と試料を固定するための固定液とを加えた溶液に試料を浸漬することを含む。 このような電子顕微鏡観察用試料の染色方法では、簡便に電子染色を行うことができる。例えば、水酸化ランタンを酸性溶液に溶かした溶液はストックソリューションとして保存が可能であり、このストックソリューションに緩衝液を加えることで、簡便に染色剤として使用が可能である。 さらに、このような電子顕微鏡観察用試料の染色方法では、水酸化ランタンの沈殿を抑制できるため、コンタミネーションを抑制することができる。また、このような電子顕微鏡観察用試料の染色方法では、正確な濃度で水酸化ランタン水溶液を作製することができるため、再現性も向上できる。 さらに、このような電子顕微鏡観察用試料の染色方法では、試料を固定しつつ、電子染色を行うことができる。 (7)本発明に係る電子顕微鏡観察用試料の染色方法において、 前記酸性溶液は、塩酸であってもよい。 このような電子顕微鏡観察用試料の染色方法では、簡便に電子染色を行うことができる。 (8)本発明に係る電子顕微鏡観察用試料の染色方法において、 前記緩衝液は、カコジル酸ナトリウム水溶液であってもよい。 このような電子顕微鏡観察用試料の染色方法では、簡便に電子染色を行うことができる。 (9)本発明に係る電子顕微鏡観察用染色剤の原液は、 水酸化ランタンと、 酸性溶液と、を含む。 本発明に係る電子顕微鏡観察用染色剤の原液では、例えば、硝酸ランタン水溶液に水酸化ナトリウムを少しずつ反応させて水酸化ランタンを作製する場合と比べて、簡便に染色剤を作製することができる。 (10)本発明に係る電子顕微鏡観察用染色剤の原液において、 前記酸性溶液は、塩酸であってもよい。本発明に係る電子顕微鏡観察用染色剤の原液では、簡便に染色剤を作製することができる。水酸化ランタンに塩酸を加えて溶かしたときの様子を示す写真。50mlの0.2Mカコジル酸ナトリウム溶液(pH7.4)、10mlの10%水酸化ランタン水溶液(pH2.2)、40mlの蒸留水を混ぜて作製した染色剤を示す写真。本実施例に係る染色剤で電子染色したヒドラの透過電子顕微鏡像。本実施例に係る染色剤で電子染色したヒドラの透過電子顕微鏡像。本実施例に係る染色剤で電子染色したヒドラの透過電子顕微鏡像。本実施例に係る染色剤で電子染色したヒドラを傾斜軸を中心に−60°〜+60°傾斜したときの透過電子顕微鏡像。本実施例に係る染色剤で電子染色したヒドラのボリュームレンダリング像。本実施例に係る染色剤で電子染色したヒドラのボリュームレンダリング像を着色した図。水に水酸化ランタンを加えた様子を示す写真。 以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。 1. 電子顕微鏡観察用染色剤の原液 まず、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤の原液(以下「ストックソリューション」ともいう)について説明する。 ここで、電子顕微鏡観察用染色剤とは、電子顕微鏡観察の対象となる試料を染色するための染色剤(電子染色剤)をいう。なお、染色とは、いわゆる電子染色をいい、試料の特定の部位や、試料の周囲に電子の散乱を促す物質(重金属等)を吸着または結合させることをいう。電子顕微鏡観察用染色剤を用いて試料を染色することにより、電子顕微鏡像にコントラストをつけることができる。 また、染色された試料の観察に用いられる電子顕微鏡としては、例えば、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)、走査透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope、STEM)などが挙げられる。 本実施形態に係るストックソリューションは、水酸化ランタン(La(OH)3)と、酸性溶液と、を含む。本実施形態に係るストックソリューションは、水酸化ランタンを酸性溶液に溶かしたものである。本実施形態に係るストックソリューションは、例えば、pH1.0以上3.0以下である。より好ましくは、本実施形態に係るストックソリューションは、pH2.0である。 本実施形態に係るストックソリューションに用いられる酸性溶液は、水酸化ランタンを溶かすことができる溶液であれば特に限定されない。当該酸性溶液として、例えば、塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)等を用いることができる。 本実施形態に係るストックソリューションは、例えば、水酸化ランタンに酸性溶液を加えて溶かし、さらに、水を加えることで作製される。 本実施形態に係るストックソリューションでは、電子染色を行う際に、緩衝液を加えることで、染色剤を作製することができる。 したがって、本実施形態に係るストックソリューションによれば、例えば、硝酸ランタン水溶液に水酸化ナトリウムを少しずつ反応させて水酸化ランタンを作製する場合と比べて、簡便に染色剤を作製することができる。 2. 電子顕微鏡観察用染色剤 本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤は、上述した本実施形態に係るストックソリューションに、緩衝液を加えることで製造することができる。 緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、カコジル酸緩衝液、酢酸緩衝液、各種グッドバッファー(MES、ADA、PIPES、ACES、コラミン塩酸、BES、TES、HEPES、アセトアミドグリシン、トリセン(Tricene)、グリシンアミド、ビシン(Bicine))、Millonigのリン酸緩衝液(2.26%リン酸二水素ナトリウム(Na2HPO4)と、2.52%水酸化ナトリウム(NaH2PO4)とを混合した溶液)等を挙げることができる。 また、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤は、本実施形態に係るストックソリューションに、上記の緩衝液と、試料を固定するための固定液と、を加えることで製造することができる。 ここで、固定とは、組織や細胞などをできるだけ生時の状態のままに保つ処理をいう。 固定液としては、グルタールアルデヒド固定液、パラホルムアルデヒド固定液、グルタールアルデヒドとパラホルムアルデヒドの混合液(Karnovsky固定液)等を挙げることができる。 ここで、Karnovsky固定液は、2.5%グルタールアルデヒド、2%パラホルムアルデヒド、0.1Mカコジル酸ナトリウム水溶液からなる。 例えば、Karnovsky固定液に対して、その全体量の1/10となる量の10wt%水酸化ランタン水溶液(ストックソリューション)を加えることで、染色剤とすることができる。Karnovsky固定液には、バッファー(カコジル酸ナトリウム)が含まれるため、pHはほぼ中性(pH7.0)を保つことができる。また、この染色剤はpH7.0であっても水酸化ランタンの沈殿は生じない。 本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤は、例えば、糖タンパク質を染色することができる。本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤では、水酸化ランタンが糖タンパク質に結合することにより、生物細胞や生物組織を電子染色することができる。 本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤は、糖タンパク質を含む試料の電子染色に用いることができる。本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤は、例えば、動物または植物の細胞または組織を含む生体試料の電子染色に用いることができる。 本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤では、バッファー(カコジル酸ナトリウム)を含むため、pH7程度にすることができる。そのため、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤は、例えば、タンパク質を変性させることなく電子染色することができる。したがって、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤は、生きている生物細胞に適用することができる。 また、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤では、水酸化ランタンの沈殿が生じないため、試料のコンタミネーションを抑制することができる。 本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤では、固定液を含むため、生物細胞や生物組織を固定しつつ、染色することができる。 2. 電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法 次に、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法について説明する。本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法は、水酸化ランタンを酸性溶液に溶かし、緩衝液を加えることを含む。以下では、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法の一例を説明する。 まず、本実施形態に係るストックソリューションを作製する。具体的には、まず、水酸化ランタンに酸性溶液(例えば塩酸)を加えて溶かす。次に、最終濃度が所望の濃度(例えば10wt%)になるように蒸留水を加える。また、例えば、ストックソリューションのpHは、2.0程度にする。以上の工程により、本実施形態に係るストックソリューションを作製することができる。 次に、本実施形態に係るストックソリューションに緩衝液(バッファー)と、固定液と、を加える。例えば、本実施形態に係るストックソリューションに、例えば、Karnovsky固定液を加える。Karnovsky固定液は、バッファー(カコジル酸ナトリウム)を含む。ここで、ストックソリューションに緩衝液(バッファー)を含む固定液を加えることで、pH7程度にすることができる。 以上の工程により、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤を製造することができる。 本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法では、水酸化ランタンを酸性溶液に溶かし、バッファー(緩衝液)を加える。これにより、簡便に電子染色を行うことができる。具体的には、水酸化ランタンを酸性溶液に溶かした溶液はストックソリューションとして、保存が可能であり、このストックソリューションにバッファーを加えることで、簡便に染色剤として使用が可能である。 さらに、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法では、水酸化ランタンの沈殿を抑制できるため、コンタミネーションを抑制することができる。また、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法では、正確な濃度で水酸化ランタン水溶液を作製することができるため、再現性も向上できる。 本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法は、水酸化ランタンを酸性溶液に溶かし、緩衝液と、試料を固定するための固定液と、を加える。そのため、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法では、試料を固定しつつ、電子染色を行うことができる。 3. 電子顕微鏡観察用試料の作製方法 次に、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法について説明する。本実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法は、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の染色方法を含む。 本実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の染色方法は、水酸化ランタンを酸性溶液に溶かし緩衝液を加えた溶液に試料を浸漬することを含む。以下では、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法の一例を説明する。ここでは、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法を、生体試料に適用した例について説明する。 まず、上述した本実施形態に係る電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法により、染色剤を作製する。 次に、生体試料を上記の染色剤に浸漬させて電子染色しつつ、前固定を行う。以上の工程により、生体試料を染色することができる。 次に、前固定された生体試料を、例えばカコジル酸緩衝液で洗浄し、四酸化オスミウムで後固定する。次に、後固定された生体試料を上昇エタノール系列で脱水した後、エポキシ樹脂等に包埋する。 次に、エポキシ樹脂に包埋された生体試料を薄片化する。薄片化は、例えば、ミクロトーム(ウルトラミクロトーム)を用いて行われる。 以上の工程により、電子顕微鏡観察用試料を作製することができる。 4. 実施例 以下、実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。 (1)ストックソリューションの製造 本実施例のストックソリューションは、水酸化ランタンを塩酸に溶かすことで作製した。 具体的には、まず、2gの水酸化ランタン(和光純薬工業株式会社製)に5N塩酸を20ml加えて溶かす。そして、最終濃度が10wt%となるように蒸留水を加える。このとき、図1に示すように、水酸化ランタンは溶け、溶液のpHは2となった。この10wt%水酸化ランタン水溶液を、10倍のストックソリューションとする。 (2)本実施例に係る染色剤の製造 次に、10wt%水酸化ランタン水溶液(ストックソリューション)を、Karnovsky固定液に対して、その全体量の1/10となる量の10wt%水酸化ランタン水溶液を加え、染色剤とする。 具体的には、50mlの0.2Mカコジル酸ナトリウム水溶液(pH7.4)、10mlの25%グルタールアルデヒド、12.5mlの16%パラホルムアルデヒド、10mlの10%水酸化ランタン水溶液(pH2.0)、および27.5mlの蒸留水を混ぜることで100mlの染色剤(2.5%グルタールアルデヒド、4%パラホルムアルデヒド、1%水酸化ランタン、0.1Mカコジル酸ナトリウム水溶液(pH7.0))を作製した。 Karnovsky固定液には、バッファー(カコジル酸ナトリウム)が含まれるため、全体量の1/10のpH2の水溶液が加えられても、pHはほぼ中性を保つ。また、調整された染色剤はpH7だが水酸化ランタンの沈殿は生じない。 図2は、50mlの0.2Mカコジル酸ナトリウム溶液(pH7.4)、10mlの10%水酸化ランタン水溶液(pH2.2)、40mlの蒸留水を混ぜて作製した染色剤を示す写真である。このときの染色剤のpHは7.0であった。図2からわかるように、染色剤はpH7.0であるにも関わらず、水酸化ランタンの沈殿は生じていない。 (3)試料作製 次に、本実施例に係る染色剤を用いて、ヒドラの電子染色を行った。ヒドラの電子染色は、本実施例に係る染色剤にヒドラを浸漬させることで行った。以下、本実施例に係る試料作製について説明する。 まず、ヒドラを、上記の染色剤に浸漬させることにより、糖タンパク質を染色しつつ、前固定を行う。 次に、前固定されたヒドラを、カコジル酸緩衝液で洗浄し、1〜2%四酸化オスミウムで後固定する。次に、後固定された生体試料を上昇エタノール系列で脱水した後、エポキシ樹脂等に包埋する。次に、エポキシ樹脂に包埋されたヒドラを、ミクロトームを用いて薄片化する。 以上の工程により、試料を作製した。 (4)観察結果 このようにして作製された電子顕微鏡観察用試料を、透過電子顕微鏡で観察した。図3〜図5は、上記染色剤で電子染色したヒドラの透過電子顕微鏡像である。なお、図4および図5に示すスケールバーは、200nmである。 図3〜図5に示す透過電子顕微鏡像では、水酸化ランタンをトレーサーとして細胞間隙を可視化することができた。図3および図4では、ヒドラのセプテートジャンクションの梯子状の構造が白く浮かび上がって観察された。 また、このようにして作製された電子顕微鏡観察用試料について、電子線トモグラフィーを行った。具体的には、作製された電子顕微鏡観察用試料を、傾斜軸中心に−60°〜+60°傾斜させて透過電子顕微鏡で観察し、得られた透過電子顕微鏡像について画像処理を行った。 図6は、本実施例に係る染色剤で電子染色したヒドラを傾斜軸を中心に−60°〜+60°傾斜したときの透過電子顕微鏡像である。図7は、本実施例に係る染色剤で電子染色したヒドラのボリュームレンダリング像である。図8は、図7のボリュームレンダリング像を着色した図である。図8では、細胞膜および梯子状構造を着色した。 図7および図8に示す結果から、ヒドラのセプテートジャンクションに特有の梯子状の構造は奥行を持った隔壁状の構造であることがわかった。このように、本実施例では、電子線トモグラフィーにおいて、良好な画像を得ることができた。すなわち、本実施例に係る染色剤は、高い染色効果を有し、電子線トモグラフィーにも用いることができることがわかった。 本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。 水酸化ランタンを酸性溶液に溶かし、緩衝液を加えることを含む、電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法。 水酸化ランタンを酸性溶液に溶かし、緩衝液と、試料を固定するための固定液と、を加えることを含む電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法。 請求項1または2において、 前記酸性溶液は、塩酸である、電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法。 請求項1ないし3のいずれか1項において、 前記緩衝液は、カコジル酸ナトリウム水溶液である、電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法。 水酸化ランタンを酸性溶液に溶かし緩衝液を加えた溶液に試料を浸漬することを含む、電子顕微鏡観察用試料の染色方法。 水酸化ランタンを酸性溶液に溶かし緩衝液と試料を固定するための固定液とを加えた溶液に試料を浸漬することを含む、電子顕微鏡観察用試料の染色方法。 請求項5または6において、 前記酸性溶液は、塩酸である、電子顕微鏡観察用試料の染色方法。 請求項5ないし7のいずれか1項において、 前記緩衝液は、カコジル酸ナトリウム水溶液である、電子顕微鏡観察用試料の染色方法。 水酸化ランタンと、 酸性溶液と、を含む、電子顕微鏡観察用染色剤の原液。 請求項9において、 前記酸性溶液は、塩酸である、電子顕微鏡観察用染色剤の原液。 【課題】簡便に電子染色を行うことができる電子顕微鏡観察用染色剤の製造方法を提供する。【解決手段】本発明に係る電子顕微鏡観察用染色剤は、水酸化ランタンを酸性溶液に溶かし、緩衝液を加えることを含む。【選択図】図3