タイトル: | 公開特許公報(A)_環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体エステルの製造方法 |
出願番号: | 2014018585 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C07D 319/12,C07B 61/00 |
野々川 竜司 JP 2015145345 公開特許公報(A) 20150813 2014018585 20140203 環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体エステルの製造方法 帝人株式会社 000003001 為山 太郎 100169085 野々川 竜司 C07D 319/12 20060101AFI20150717BHJP C07B 61/00 20060101ALN20150717BHJP JPC07D319/12C07B61/00 300 7 OL 11 4C022 4H039 4C022JA04 4H039CA42 4H039CH10 本発明は、環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体エステルの製造方法に関する。更に詳しくは、減圧、加熱下、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーと特定の化合物とを反応させながら解重合させることによって、経済的かつ効率的に環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体エステルを製造する方法に関する。 近年、地球環境保護の目的から、自然環境下で容易に分解される樹脂が注目され、世界中で研究されている。自然環境下で容易に分解される樹脂としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリカプロラクトンなどの脂肪族ポリエステルに代表される生分解性ポリマーが知られている。 とりわけ、ポリ乳酸やポリグリコール酸は、植物由来の原料から得られる乳酸あるいはその誘導体を原料とするため生体安全性が高く、環境にやさしい高分子材料である。そのため汎用ポリマーとしての利用が検討され、フィルム、繊維、射出成形品などとしての利用が検討されている。 ポリ乳酸やポリグリコール酸に代表されるポリ(α−ヒドロキシカルボン酸)は、乳酸やグリコール酸を直接重縮合する直重法や、乳酸、グリコール酸から環状2量体を合成し、これをモノマーとして重合する方法が知られており、品質、経済性を鑑みると後者の重合方法が多く採用されている。 α−ヒドロキシカルボン酸の2量体環状エステルは、α−ヒドロキシカルボン酸のオリゴマーを解重合することで得られることは広く知られている。ここで、α−ヒドロキシカルボン酸2量体環状エステルとは、α−ヒドロキシカルボン酸の2量体が環状エステル化した構造を有する化合物を意味し、代表的な化合物として、ラクチド、グリコリドなどを挙げることができる。 環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体環状エステルは経済的にかつ効率よく量産することが難しかった(例えば、特許文献1、2、3等参照)。 その理由として、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを解重合して2量体環状エステルの具体的な製造方法は、固体状態のα−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを加熱して融液とし、その融液相の表面(以下、液相の表面を単に「表面」と記載することがある。)から解重合生成物である2量体環状エステルを揮発させ、捕集するというものであり、以下のような問題点があったからである。 (1)α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーの分子量が高いために、効率的な表面更新が阻害され、α−ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステルの発生速度または揮発速度が小さい。 (2)長時間の加熱により、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマー融液相の内部で重縮合が進行し、重質化物が多量に生成するため、α−ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステルの収率が低下し、さらに重質化物残渣のクリーニングが煩雑なものとなる。 (3)α−ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステルがラクチドの場合、オリゴマーのカルボキシル末端がフリーなため、高温ではラセミ化が進行し、純度を低下させる。 以上のような理由から、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーをそのまま加熱して解重合する方法は、スケールアップによる量産化が極めて困難であった。 これに対し、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを高沸点極性有機溶媒と混合し、加熱して、当該オリゴマーを溶媒中に溶解させて溶液相(好ましくは実質的に均一溶液相)とし、該状態で更に加熱して解重合させ、生成した2量体環状エステルを溶媒と共に溜出させることで環状2量体エステルを量産する手法が提案されている(例えば、特許文献4等参照)。 しかしながら、この手法での生成物は、環状2量体エステルと溶媒との混合物であり、さらに、高沸点溶媒を共沸させるため、工程温度は高く、さらに最終的に環状2量体エステルと溶媒との分離工程が必要であり、経済的であるとは言い難い。 ところで、ポリ乳酸を製造する際に用いられるラクチドは、L−ラクチド、D−ラクチド、メソラクチドの3種類があり、ポリ(L−乳酸)を製造する際は高光学純度のL−ラクチド(ポリ(D−乳酸)はD−ラクチド)が必要である。一般的に、高温で処理することによって、ラセミ化を引き起こすため、高光学純度のL−ラクチド(あるいはD−ラクチド)を得るのは技術的に困難である。 これを解決するために、乳酸エステルから直接、チタン触媒を用いて、高純度のラクチドを製造する方法が提案されている(例えば特許文献5など参照)が、出発物質が、乳酸エステルのため、ラクチドが生成するのに伴い、2当量のアルコールが系内に発生することから、前記と同様に、最終的にラクチドとアルコールとを分離する工程が必要となり経済的とは言えない。 以上のように、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーをそのまま加熱、解重合することでα−ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステルを製造する方法は、スケールアップによる量産化が極めて困難であった。米国特許第2668162号明細書米国特許第4727163号明細書米国特許第4835293号明細書特許第4171083号公報特開2010−270102号公報 本発明の目的は、上記従来技術が有していた問題点を解消し、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーから経済的かつ効率的に環状2量体エステルを製造する方法を提供することにある。 本発明者は、前記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを減圧、高温下にて、特定の化合物と反応させた状態で解重合させることで、経済的かつ効率的に環状2量体エステルが得られることを見いだし、更に検討を加えることで本発明に到達した。 即ち本発明の目的は、1.α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを解重合して環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体エステルを製造する方法において、 0.1kPa〜5kPa、160℃〜230℃に設定した反応系内に下記特性(A)〜(C)を兼備するヒドロキシル基含有化合物を予め存在させ、反応系内にα−ヒドロキシカルボン酸あるいは一部エステルから直接脱水縮合したα−ヒドロキシルカルボン酸オリゴマーを連続的に供給し、反応系内でヒドロキシル基含有化合物とα−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーとを解重合触媒の存在下に反応させ、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマー由来の環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体と、ヒドロキシル基含有化合物とα−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーとの反応物由来の環状ヒドロキシカルボン酸2量体とを連続的に反応系内から留去することを特徴とする、環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体エステルの製造方法によって達成することができる。 特性(A):5kPa以下、160℃〜230℃の条件にて、液体であって、揮発性を示さないこと。 特性(B):化合物分子内に少なくとも1つのヒドロキシル基を含むこと。 特性(C):α−ヒドロキシルカルボン酸のカルボキシル末端と反応すること。 本発明には以下も包含される。 2.特性(A)〜(C)を兼備するヒドロキシル基含有化合物が、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンモノエーテル、多価アルコールから選ばれる一種である、上記1記載の製造方法。 3.α−ヒドロキシルカルボン酸オリゴマーが、1分子内に少なくとも1つのヒドロキシル基と少なくとも1つのカルボン酸基を有し、分子量が500〜30000である、上記1または2記載の製造方法。 4.解重合触媒が金属成分を有し、その金属成分がスズ、ジルコニウム、チタン、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムから少なくとも1つ選ばれる、上記1〜3のいずれか記載の製造方法。 5.α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを構成するα−ヒドロキシカルボン酸がL−乳酸、D−乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸のいずれかである上記1〜4のいずれか記載の製造方法。 6.上記1〜5のいずれか記載の製造方法によって得られる環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体エステル。 7.上記6記載の環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体エステルのポリα−ヒドロキシカルボン酸原料としての使用。 本発明の製造方法によれば、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーから経済的かつ効率的に環状2量体エステルを製造する方法を提供することができる。 なお、本発明の製造方法がこのような効果を奏することについて、本発明者は以下の機構であると推察している。 (1)反応系内で特定の化合物(分子内に少なくとも1つのヒドロキシル基を含む化合物)が特定量存在することで、カルボキシル末端保護α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーが生成し、オリゴマー同士の重縮合反応が抑制されることで重質化合物の生成が低減され、さらに、分子内に少なくとも1つのヒドロキシル基を含む化合物の存在により、カルボキシル末端保護α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーの分子量が低く保たれるために、表面更新が飛躍的に効率的に行われ、その結果として発生・揮発する環状2量体エステルの生成速度が飛躍的に大きくなる。 (2)α−ヒドロキシカルボン酸の2量体環状エステルがラクチドの場合、オリゴマーのフリーなカルボキシル末端は封鎖され、さらに、オリゴマー粘度も低くなるため、制御温度も低くすることが可能となり、ラセミ化が飛躍的に抑制することが出来る。 以下、本発明について詳細に説明する。<α−ヒドロキシカルボン酸> 本発明の製造方法は、グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、ラセミ乳酸、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸などの環状α−ヒドロキシカルボン酸の2量体エステルの製造方法に適用することができる。これらのα−ヒドロキシカルボン酸のオリゴマーを本発明の方法により、解重合させることにより、グリコリド、ラクチドなどの各種環状2量体エステルを製造することができる。本発明の方法は、特に高光学純度のラクチドの製造に好適である。<ヒドロキシル基含有化合物> 本発明の製造方法において用いるヒドロキシル基含有化合物は下記特性を兼備するものであれば、特に限定を受けるものではない。 特性(A):5kPa以下、160℃〜230℃の条件にて、液体であって、揮発性を示さないこと。 特性(B):化合物分子内に少なくとも1つのヒドロキシル基を含むこと。 特性(C):α−ヒドロキシルカルボン酸のカルボキシル末端と反応すること。 特性(B)のヒドロキシル基は1級アルコールが好ましい。2級、3級アルコールでは、1級アルコールに比べα−ヒドロキシルカルボン酸オリゴマーとの反応がしがたいため、ラセミ化が進行しやすくなる。 特性(A)〜(C)を兼備するヒドロキシル基含有化合物としては、ポリオキシアルキレン鎖が5〜10のポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンモノエーテル、ポリオキシアルキレンモノエステル、炭素数20以上のアルキル基からなる1級アルコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、グリセリンのモノエーテル、モノエステル誘導体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等の多価アルコール類等から選ばことができる。粘度、反応性の観点で特に好ましいのは、ポリオキシアルキレン脂肪族エーテルである。<α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーの製造方法> 本発明の製造方法の出発原料として用いるα−ヒドロキシカルボン酸のオリゴマーは、公知の方法により容易に合成することができる。すなわち、α−ヒドロキシカルボン酸またはそのα−ヒドロキシカルボン酸を一部含むエステルを、自己触媒作用により、減圧下または常圧下に、100〜230℃、好ましくは120〜210℃の温度で加熱し、水、アルコール等の低分子量物の溜出が実質的になくなるまで縮合反応またはエステル交換反応を行う。縮合反応またはエステル交換反応終了後、生成したオリゴマーは、そのままで本発明の製造方法の原料として使用することができる。また、得られたオリゴマーを反応系から取り出して、ベンゼンやトルエン等の非溶媒で洗浄して、未反応物や低重合度物を除去してから使用することもできる。 用いるα−ヒドロキシカルボン酸のオリゴマーの分子量はカルボキシル基の中和滴定から算出される値から概算したもので、分子量500〜30000が好ましく、特に好ましくは、700〜10000である。 分子量が500以下だと、低分子量オリゴマーが飛沫同伴するため、留去された環状2量体エステルの純度が低下する。 一方、分子量が30000以上だと、反応系内オリゴマーの溶融粘度が高くなるため、表面更新効率が著しく低下し、環状2量体エステルの生産速度の大幅の低下が生じ、さらに、表面更新効率を向上させようと温度を上げることになるが、これに伴い、さらなる高分子量化が進行し、表面更新を著しく低下させるだけではなく、ラセミ化が進行するため、高光学純度の環状2量体を得るのが難しくなる。 L−乳酸あるいはD−乳酸を用いてオリゴマーを製造する場合は、ラセミ化の観点で重縮合触媒あるいはエステル交換触媒を用いず、極力低い温度で自己のカルボン酸残基による自己触媒で製造するのが好ましい。ラセミ体のα−ヒドロキシカルボン酸であれば、この時点で、エステル交換触媒を用いても構わないが、解重合時の環状2量体生産速度の観点で、上記分子量範囲が好ましい。<環状2量体エステルの製造方法> 本発明の製造方法は、下記のようなプロセスで行う。 反応系内に、分子内に少なくとも1つのヒドロキシル基を含む化合物と解重合触媒との存在下、5kPa以下、160℃〜230℃の範囲にて、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを連続的に供給し、反応させながら、α−ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステルを生成させ、引き続き連続的に留出させて回収する。 反応系内でのα−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーと分子内に少なくとも1つのヒドロキシル基を含む化合物との相対重量比は、特に限定されるものではないが、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーのカルボキシル基を封鎖できる量で、かつ適切な溶融粘度になるように調整することが好ましく、反応系内中での反応物総重量の1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜25重量%の割合で初期のみ添加しておけばよい。 反応系内のα−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーの分子量は、分子内に少なくとも1つのヒドロキシル基を含む化合物の量により制御することが可能であり、最適な溶融粘度になるよう添加量を調整し、表面更新を妨げることなく行うようにすることが好ましい。 本発明の製造方法では加熱時にオリゴマーに由来する重質化物がほとんど発生しないので、反応系内のクリーニングの手間を省くことが可能である。 また、α−ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステルを回収する際に、低分子オリゴマー(たとえば、乳酸やラクトイル乳酸など)が共沸される。この場合、留出ライン内に充填物を入れ、理論段数を上げるか、蒸留や精留塔を入れることにより分離することができる。もしくは、次工程で、蒸留、精留や溶融晶析を行うことにより、さらに純度を上げることも可能である。 なお、本発明の製造方法では、溶媒をα−ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステルとともに留出させないので、次工程での精製処理を行う場合でも容易に実施可能である。<解重合触媒> 本発明の製造方法に用いる解重合触媒は、スズ、ジルコニウム、チタン、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムから少なくとも1つ選ばれる金属触媒であり、特に限定しないが、特に好ましくは、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、テトラブチルチタネート、フェニルブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、ジルコニウムアセチルアセテート、オクチル酸ジルコニウム、亜鉛アセチルアセテート、ステアリン酸亜鉛、アルミニウムアセチルアセテート等が挙げられる。特に好ましくは、オクチル酸スズである。 添加量は、特に反応系を阻害しなければ、特に限定されないが、生産性等を考慮するとオリゴマー対比、0.01−10重量部、好ましくは、0.05−5重量部である。 0.01重量部以下では、反応系内で発生する水分にて、一部の触媒が失活するため、触媒活性が低くなり、効率的に環状2量体エステルを効率的に生産することが難しい。10重量部以上だと、コストがかかるので好ましくないということと、温度によっては、ラセミ化を促進したり、極度の増粘を引き起こしたりするので、生産性および品質上好ましくない。添加方法はオリゴマーの流量に対して、連続的に添加する場合や、反応系内にバッチで添加し、効果が低くなった場合追加添加する場合のどちらでも構わない。 本発明により、得られるα−ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステルは、ポリα−ヒドロキシカルボン酸用の高純度モノマーとして用いることが出来る。 以下、本発明を実施例によりさらに説明する。各物性は以下の方法により測定した。(1)分子量: 用いるオリゴマーの分子量は、中和滴定から算出されるカルボキシル末端量から概算した。 オリゴマーについては、試料をメタノール/クロロホルム(v/v=1/1)に溶解、窒素気流下溶解、0.1w/v%ブロムチモールブルー(BTB)エタノール(50)溶液を指示薬とし、0.05規定水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定した。分子量=試料量/(0.05×ファクター×(滴定量−ブランク)(2)光学純度 得られた環状2量体エステルの光学純度は、加水分解しキラルHPLCにて測定した。 環状2量体エステルを5N 水酸化ナトリウム水溶液/メタノールの混合溶液にて加水分解し、所定量を希釈後、1mM硫酸銅水溶液にて希釈した。この溶液をキラルHPLCにて測定した。装置:株式会社島津製作所製HPLCカラム:株式会社住化分析センター「スミキラル(登録商標)」OA−5000カラム温度:40℃溶離液:1mM硫酸銅水溶液(3)環状2量体エステル中のヒドロキシル基含有化合物の確認 ヒドロキシル基含有化合物の有無は、1H−NMRにて確認した。[製造例1]オリゴL−乳酸: 500mLのフラスコにL−乳酸(東京化成株式会社)350gを仕込み、常圧(0.1MPa)で撹拌しながら、120℃まで段階的に昇温し、水を留出させながら縮合反応を行った。さらに、徐々に4kPa下、170℃まで段階的に昇温し、さらに縮合反応を実施した。得られたオリゴマーの分子量は1500であった。[製造例2]オリゴL−乳酸: 500mLのフラスコにL−乳酸(東京化成株式会社)350gを仕込み、常圧(0.1MPa)で撹拌しながら、120℃まで段階的に昇温し、水を留出させながら縮合反応を行った。さらに、徐々に4kPa下、200℃まで段階的に昇温し、さらに縮合反応を実施した。得られたオリゴマーの分子量は5000であった。[製造例3]オリゴL−乳酸: 500mLのフラスコにL−乳酸(東京化成株式会社)350gを仕込み、常圧(0.1MPa)で撹拌しながら、120℃まで段階的に昇温し、水を留出させながら縮合反応を行った。さらに、仕込み乳酸量に対してオクチル酸スズを0.03部添加した後、4kPa下、170℃まで段階的に昇温し、さらに縮合反応を実施した。得られたオリゴマーの分子量は12000であった。[製造例4]オリゴD−乳酸: 500mLのフラスコにD−乳酸(ピューラック・ジャパン株式会社(株))350gを仕込み、常圧(0.1MPa)で撹拌しながら、120℃まで段階的に昇温し、水を留出させながら縮合反応を行った。さらに、徐々に4kPa下、170℃まで段階的に昇温し、さらに縮合反応を実施した。得られたオリゴマーの分子量は1560であった。[製造例5]オリゴグリコール酸: 500mLのフラスコにグリコール酸(東京化成(株))350gを仕込み、常圧(0.1MPa)で撹拌しながら、200℃まで段階的に昇温し、水を留出させながら縮合反応を行った。さらに、徐々に4kPa下、200℃でさらに縮合反応を実施した。得られたオリゴマーの分子量は3000であった。[実施例1] オリゴマー投入ライン、留出ラインを付与した300mLのフラスコにポリエチレングリコール33g、製造例1で調整したオリゴマー165gを1kPa下、200℃にて混合し、次いでオクチル酸スズ1g添加し、オリゴマーと反応剤(ヒドロキシ基含有化合物)としてのポリエチレングリコールとの反応とともに解重合反応を実施した。 環状2量体エステルが留去し始めてから反応系内の液面を一定として、製造例1で調整したオリゴマーを連続供給し、この反応を8時間実施した。 得られたL−ラクチドの光学純度は99%であり、生産性の指標である平均留出速度は、80g/hrであった。反応系内内容物の粘度上昇は見られず、継続は可能であった。また、得られたL−ラクチド中には、ヒドロキシ基含有化合物は検出されなかった。[実施例2〜17] 反応剤(ヒドロキシ基含有化合物)およびその添加量、用いる原料オリゴマー種類、反応温度、解重合触媒、解重合触媒添加量を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果と併せて表1に示す。[比較例1、2] 反応剤(ヒドロキシ基含有化合物)を使わない以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。得られたラクチドの光学純度は低いだけではなく、留出速度も大幅に低下している。さらに、解重合後期では粘度上昇も見られ、継続は難しくなった。 本発明の製造方法により得られる2量体環状エステルは、生分解性ポリマーや医療用ポリマー等として有用なポリ(α−ヒドロキシカルボン酸)の出発原料(モノマー)等として使用することができ、その工業的意義は大きい。 α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを解重合して環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体エステルを製造する方法において、 0.1kPa〜5kPa、160℃〜230℃に設定した反応系内に下記特性(A)〜(C)を兼備するヒドロキシル基含有化合物を予め存在させ、反応系内にα−ヒドロキシカルボン酸あるいは一部エステルから直接脱水縮合したα−ヒドロキシルカルボン酸オリゴマーを連続的に供給し、反応系内でヒドロキシル基含有化合物とα−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーとを解重合触媒の存在下に反応させ、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマー由来の環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体と、ヒドロキシル基含有化合物とα−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーとの反応物由来の環状ヒドロキシカルボン酸2量体とを連続的に反応系内から留去することを特徴とする、環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体エステルの製造方法。 特性(A):5kPa以下、160℃〜230℃の条件にて、液体であって、揮発性を示さないこと。 特性(B):化合物分子内に少なくとも1つのヒドロキシル基を含むこと。 特性(C):α−ヒドロキシルカルボン酸のカルボキシル末端と反応すること。 特性(A)〜(C)を兼備するヒドロキシル基含有化合物が、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンモノエーテル、多価アルコールから選ばれる一種である、請求項1記載の製造方法。 α−ヒドロキシルカルボン酸オリゴマーが、1分子内に少なくとも1つのヒドロキシル基と少なくとも1つのカルボン酸基を有し、分子量が500〜30000である、請求項1または2記載の製造方法。 解重合触媒が金属成分を有し、その金属成分がスズ、ジルコニウム、チタン、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムから少なくとも1つ選ばれる、請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。 α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを構成するα−ヒドロキシカルボン酸がL−乳酸、D−乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸のいずれかである請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。 請求項1〜5のいずれか記載の製造方法によって得られる環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体エステル。 請求項6記載の環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体エステルのポリα−ヒドロキシカルボン酸原料としての使用。 【課題】α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーから経済的かつ効率的に環状2量体エステルを製造する方法を提供すること。【解決手段】α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを解重合して環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体エステルを製造する方法において、 0.1kPa〜5kPa、160℃〜230℃に設定した反応系内に特定のヒドロキシル基含有化合物を予め存在させ、反応系内にα−ヒドロキシカルボン酸あるいは一部エステルから直接脱水縮合したα−ヒドロキシルカルボン酸オリゴマーを連続的に供給し、反応系内でヒドロキシル基含有化合物とα−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーとを解重合触媒の存在下に反応させ、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマー由来の環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体と、ヒドロキシル基含有化合物とα−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーとの反応物由来の環状ヒドロキシカルボン酸2量体とを連続的に反応系内から留去することを特徴とする、環状α−ヒドロキシカルボン酸2量体エステルの製造方法。【選択図】なし