タイトル: | 公開特許公報(A)_旋光計測方法及び旋光計測装置 |
出願番号: | 2014017020 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 21/21,A61B 5/1455 |
池田 陽 西田 和弘 JP 2015143650 公開特許公報(A) 20150806 2014017020 20140131 旋光計測方法及び旋光計測装置 セイコーエプソン株式会社 000002369 黒田 泰 100124682 竹腰 昇 100104710 井上 一 100090479 池田 陽 西田 和弘 G01N 21/21 20060101AFI20150710BHJP A61B 5/1455 20060101ALI20150710BHJP JPG01N21/21 ZA61B5/14 322 10 1 OL 14 2G059 4C038 2G059AA01 2G059AA06 2G059BB13 2G059CC16 2G059EE05 2G059EE09 2G059FF01 2G059GG02 2G059GG04 2G059HH01 2G059JJ11 2G059JJ19 2G059JJ22 2G059KK03 2G059MM01 4C038KK10 4C038KL07 4C038KM01 本発明は、旋光を計測するための旋光計測方法等に関する。 物質による光の吸収や散乱、旋光等の性質を利用することで、その物質に直接触れることなく、物質の成分を知ることができる。例えば、旋光を計測すると、物質の濃度が推定(算出)できる。旋光とは、例えばグルコースのような光学活性物質を直線偏光が通過するとき、その偏光面が回転する性質のことである。その他にも、例えば、近赤外光を生体に照射し、受光した反射光から散乱光や透過光の分光特性を取得して生体成分を計測する技術が知られている(特許文献1を参照)。特開2008−309707号公報 一般に、反射型の光計測は、特許文献1の技術のように被検体の表面に対して計測光を垂直に入射させ、反射光を受光することによって行う。しかしながら、このような入射方向と同一の方向に反射された反射光を計測する構成で旋光を計測するのは困難と考えられる。入射方向に光が伝搬する過程で起こった旋光が、入射方向を逆向きに伝搬する過程で相殺されてしまうからである。 本発明は、こうした事情に鑑みてなされたものであり、計測光の入射方向と同一の方向に反射光が反射することで旋光が相殺される事態を抑制しつつ、精度良く旋光を計測することを目的とする。 以上の課題を解決するための第1の発明は、被検体に対して非直角の入射方向で所定偏光の計測光を入射することと、前記被検体の前記入射方向とは異なる方向からの反射光のうちの前記所定偏光の旋光反映成分を判別することと、前記判別の結果に基づいて旋光を計測することと、を含む旋光計測方法である。 また、第5の発明は、被検体に対して非直角の入射方向で所定偏光の計測光を入射させる計測光照射部と、前記被検体の前記入射方向とは異なる方向からの反射光のうちの前記所定偏光の旋光反映成分を判別するための判別部と、前記判別の結果に基づいて旋光を計測する計測部と、を備える旋光計測装置である。 第1の発明及び第5の発明によれば、被検体に対して非直角の入射方向で所定偏光の計測光を入射し、計測光の入射方向とは異なる方向からの反射光のうちの当該所定偏光の旋光反映成分を判別して旋光を計測することができる。したがって、計測光の入射方向と同一の方向に反射光が反射することで旋光が相殺される事態を抑制しつつ、精度良く旋光を計測することができる。 第2の発明は、直線偏光から前記計測光と参照光とを得ることと、前記反射光に前記参照光を合成して干渉させることとを更に含み、前記判別は、前記干渉の結果を用いて前記判別を行うことを含む、第1の発明の旋光計測方法である。 また、第6の発明は、直線偏光を前記計測光と参照光とに分割する分割部と、前記反射光に前記参照光を干渉させるために合成させる合成部とを更に備え、前記判別部は、前記干渉の結果を用いて前記旋光反映成分を判別する、第5の発明の旋光計測装置である。 第2の発明及び第6の発明によれば、反射光のうちの計測光の偏光成分を参照光と干渉させることができる。したがって、反射光のうちの旋光反映成分を簡単に判別可能となり、旋光を容易に計測することができるようになる。 第3の発明は、前記参照光を前記反射光に合成させるまでの前記参照光の光路長を変化させること、を更に含む第2の発明の旋光計測方法である。 また、第7の発明は、前記参照光を前記反射光に合成させるまでの前記参照光の光路長を変化させる光路長変更機構、を更に備えた第6の発明の旋光計測装置である。 第3の発明及び第7の発明によれば、参照光を反射光に合成させるまでの参照光の光路長を変化させることができる。 第4の発明は、前記計測することは、前記光路長を用いて前記旋光を計測することを含む、第3の発明の旋光計測方法である。 また、第8の発明は、前記計測部は、前記光路長を用いて前記旋光を計測する、第7の発明の旋光計測装置である。 第4の発明及び第8の発明によれば、参照光を反射光に合成させるまでの参照光の光路長を用いて旋光を計測することができる。 第9の発明は、前記分割部と前記合成部とは、一のビームスプリッターを共用して構成される、第6〜第8の何れかの発明の旋光計測装置である。 第9の発明によれば、分割部と合成部とを一のビームスプリッターを共用して構成することができる。 第10の発明は、前記計測光照射部は、前記被検体への入出射光が通過する光フロントエンド部となるレンズ部を有し、当該レンズ部を通過する前記計測光の光軸を前記レンズ部の主点からずらすことで、非直角の入射方向で前記計測光を前記被検体に入射させ、前記反射光が、前記レンズ部の主点を挟んで前記計測光の光軸と対称の位置を通過するように構成された、第5〜第9の何れかの発明の旋光計測装置である。 第10の発明によれば、レンズ部によって非直角の入射方向で計測光を被検体に入射させるとともに、入射方向とは異なる方向からの反射光を集光することができる。図1は、血糖値計測装置の全体構成例を示すブロック図。図2は、被検体の内部に進入した光の伝搬経路を説明する図。図3は、従来の反射型の光計測における問題点を説明する図。図4は、血糖値計測処理の処理手順を示すフローチャート。図5は、変形例における光学装置の構成例を示すブロック図。 以下、図面を参照して、本発明の旋光計測方法及び旋光計測装置を実施するための一形態について説明する。本実施形態は、グルコース等の光学活性物質の旋光を計測するものであり、例えば、人間の血糖値を計測する機器(血糖値計測装置)に組み込まれて利用される。本実施形態では、旋光計測装置を適用した血糖値計測装置を例示する。なお、以下説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明が適用可能な形態は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付す。[全体構成] 図1は、本実施形態における血糖値計測装置1の全体構成例を示すブロック図である。この血糖値計測装置1は、被検者の耳たぶや指先、指の表皮部等の生体を被検体7としてグルコースの旋光を計測する。そして、旋光の計測結果に基づいて血糖値を算出する。 図1に示すように、血糖値計測装置1は、主な構成として、光学装置100と、制御部200と、操作部300と、表示部400と、通信部500と、記憶部600とを備える。 光学装置100は、光源10と、直線偏光子20と、ビームスプリッター40と、集光レンズ50と、参照ミラー60と、直交分離部70と、受光部80と、増幅部90とを備える。直線偏光子20から受光部80までの各部を構成する光学素子は、光源10から出射された照射光B1の図1中に一点鎖線で示す光路に沿って適所に配置される。また、光学装置100は、ビームスプリッター40の前段においてその近傍に配置されたシャッター30を備える。 この光学装置100において、光源10、直線偏光子20、ビームスプリッター40、及び集光レンズ50は計測光照射部として機能する。また、ビームスプリッター40は、分割部及び合成部として機能する。また、集光レンズ50はレンズ部に、参照ミラー駆動部65は光路長変更機構にそれぞれ対応する。ここで、光源10からの照射光B1の出射方向をZ方向とし、Z軸方向と垂直な平面(被検体7である生体の皮膚面とほぼ平行な面であり、Z軸方向に対する直交面)をXY平面として定義する。 光源10は、低コヒーレンス光源を実現する所定波長の照射光B1を出射する。ここで、生体を被検体とする場合、その中心波長λが900[nm]〜1300[nm]の光が計測に適している。これは、生体が散乱体であり、λが900[nm]未満の波長域では散乱により光が生体内部に進入せず、λが1300[nm]を超えると生体の約60%を占める水により光が吸収されてしまうからである。 また、本実施形態では、光の干渉現象を利用して反射光B15のうちの旋光を反映した成分(以下「旋光反映成分」という)を判別するために、後述する計測光B11の生体内部への進入距離(計測光B11の反射位置の深さl;図2を参照)を可変に制御するが、そのために干渉させる計測光B11の光路長と参照光B13の光路長との差である干渉距離Δlが深さ方向の分解能に等しい。したがって、計測を高精度に行うためには、一般的なOCT(Optical Coherence Tomography)システムで用いられる光源のように、干渉距離Δlが100[μm]以下と短い光源を用いるのがよい。 具体的には、SLED(Super Luminescent Diode)を用いることができる。例えば、中心波長λが1050[nm]であり、帯域幅Δλが60[nm]である市販のSLEDを用いる場合、次式(1)で求まる干渉距離Δlは8.1[μm]であり、計測に適している。なお、SLEDに限らず、波長900[nm]〜1300[nm]において干渉距離が100[μm]以下である光源であれば、同様に使用することができる。 直線偏光子20は、光源10からの照射光B1を直線偏光に変換する。これにより、後の計測光B11および参照光B13は、ともに直線偏光(所定偏光)となる。この直線偏光子20は、例えばグランタイプの偏光子の一種であるグラントムソンプリズム等で構成される。 シャッター30は、遮光材で形成され、ビームスプリッター40の図1に向かって右側半分を遮光することによって、直線偏光子20を経た照射光B1をビームスプリッター40の図1に向かって左側に入射させる。ここで、ビームスプリッター40と、後段の集光レンズ50とは、各々その中心を計測光B11(照射光B1)の光軸に対して右側にずらして配置されており、ビームスプリッター40の左側を透過した計測光B11は、図2に示す集光レンズ50の主点P1から左側にずれた計測光入射位置P11に入射する。 ビームスプリッター40は、直線偏光子20を経て上方から左側に入射する照射光(直線偏光)B1の光路を分岐させ、透過光と反射光とに分割する(分割部としての機能)。そのうちの透過光は、計測光B11として集光レンズ50に導かれ、反射光は、参照光B13として参照ミラー60に導かれる。また、ビームスプリッター40は、後述するように参照ミラー60によって反射される参照光B13を、被検体7の内部で反射され、集光レンズ50を介して下方から右側に入射する反射光B15と合成させて干渉させ、直交分離部70に入射させる(合成部としての機能)。詳細は後述するが、この反射光B15に参照光B13を干渉させることで、元の直線偏光の旋光を反映した旋光反映成分を増大させて、旋光反映成分を判別する。 集光レンズ50は、計測光入射位置P11に入射する計測光B11を屈折させて、被検体7の表面(皮膚面)に対して非直角(斜め)に入射させる。また、集光レンズ50は、図2に示すように、計測光入射位置P11とは主点P1を挟んで反対側(右側)の反射光入射位置P13において被検体7からの反射光B15を集光し、照射光B1の入射が遮光されているビームスプリッター40の右側に入射させる。計測光入射位置P11と反射光入射位置P13とは、主点P1を挟んで対称な位置とされる。このように、集光レンズ50は、光フロントエンド部として被検体7への入出射光を通過させる。 参照ミラー60は、ビームスプリッター40からの参照光B13を反射させて再びビームスプリッター40に入射させるものである。この参照ミラー60は、モータ等の参照ミラー駆動部65によって参照光B13の光軸方向(X軸方向)に沿う所定の可動範囲内で移動自在に構成されている。ここで、本実施形態では、ビームスプリッター40の上方左側から照射光B1を入射させ、ビームスプリッター40の下方右側から反射光B15を入射させており、双方の入射方向が同軸上にない。そのため、参照ミラー60は、プリズムミラーやコーナーキューブプリズム等によって参照光B13の光軸を平行にずらして反射させる構成が好ましい。これにより、ビームスプリッター40において反射光B15と参照光B13とを確実に合成させ、干渉させることができる。 直交分離部70は、参照光B13による干渉後のビームスプリッター40からの反射光B15を互いに90度異なるP成分及びS成分の各偏光成分に分離する。この直交分離部70は、例えばウォラストンプリズムや偏光ビームスプリッター等で構成される。 受光部80は、直交分離部70によって分離されたP成分及びS成分を受光するためのものであり、P成分を受光するP偏光受光部81と、S成分を受光するS偏光受光部83とを備える。P偏光受光部81は、受光したP成分を光電変換し、受光光量に応じた電圧値を増幅部90に出力する。S偏光受光部83は、受光したS成分を光電変換し、受光光量に応じた電圧値を増幅部90に出力する。これらP偏光受光部81及びS偏光受光部83は、フォトダイオード等の光検出器で構成される。 増幅部90は、受光部80によって受光されたP成分とS成分との受光レベルの差及び和を増幅する演算部であり、加算器91と、減算器93と、加算用増幅器95と、減算用増幅器97とを備える。P偏光受光部81及びS偏光受光部83からの出力は、加算器91で加算されるとともに減算器93で減算され、加算用増幅器95及び減算用増幅器97でそれぞれ増幅される。加算用増幅器95は、受光レベルの和に相当する電圧値(加算出力電圧)を制御部200に出力し、減算用増幅器97は、受光レベルの差に相当する電圧値(減算出力電圧)を制御部200に出力する。 以上のように構成された光学装置100において、光源10から出射された照射光B1は、直線偏光子20を経てビームスプリッター40の左側に入射する。このビームスプリッター40を透過した計測光B11は、集光レンズ50を介して被検体7である生体の皮膚面に入射し、被検体7の内部(生体内)に進入する。そして、所定の深さ位置(血管位置)で反射光B15として反射され、集光レンズ50を介して再びビームスプリッター40に入射する。一方、ビームスプリッター40を反射した参照光B13は、参照ミラー60によって反射され、再びビームスプリッター40に入射する。このとき、参照光B13は、反射光B15の入射位置に入射する。これによって参照光B13が反射光B15と合成される。その後、反射光B15は、直交分離部70を経て受光部80で受光され、増幅部90で増幅される。 制御部200は、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサー、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の制御装置及び演算装置によって実現されるものであり、血糖値計測装置1の各部を統括的に制御する。この制御部200は、計測部としての旋光計測部201と、参照光光路長変更制御部203と、血糖値算出部205とを備える。また、旋光計測部201は、反射光B15のうちの直線偏光(所定偏光)の旋光反映成分を判別する判別部202を有する。なお、制御部200を構成する各部は、専用のモジュール回路等のハードウェアで構成することとしてもよい。 参照光光路長変更制御部203は、参照ミラー駆動部65を制御し、参照ミラー60をX軸方向に沿って移動させることで参照光の光路長を変更する。旋光計測部201は、加算用増幅器95から入力される加算出力電圧及び減算用増幅器97から入力される減算出力電圧に基づいて、旋光角を算出する。この際、判別部202は、参照光光路長変更制御部203によって変更される各光路長に対して反射光B15の強度変化を解析して、反射光B15のうちの直線偏光の偏光反映成分を判別する。すなわち、進入距離lを特定して旋光反映成分の存在を示す光路長Lを算出する。この光路長Lを用いて旋光計測部201が旋光角を算出する。血糖値算出部205は、旋光計測部201によって算出された旋光角および光路長Lに基づいてグルコースの濃度を算出する。 操作部300は、ボタンスイッチやダイヤルスイッチ等の各種スイッチ、タッチパネル等の入力装置によって実現されるものであり、操作入力に応じた操作入力信号を制御部200に出力する。 表示部400は、LCD(Liquid Crystal Display)やELディスプレイ(Electroluminescence display)等の表示装置によって実現されるものであり、制御部200から入力される表示信号に基づいて各種画面を表示する。 通信部500は、制御部200の制御のもと、装置内部で利用される情報を外部の情報処理装置との間で送受するための通信装置である。通信部500の通信方式としては、所定の通信規格に準拠したケーブルを介して有線接続する形式や、クレードルと呼ばれる充電器と兼用の中間装置を介して接続する形式、無線通信を利用して無線接続する形式等、種々の方式を適用可能である。 記憶部600は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュROM、RAM(Random Access Memory)等の各種IC(Integrated Circuit)メモリーやハードディスク等の記憶媒体により実現されるものである。記憶部600には、血糖値計測装置1を動作させ、この血糖値計測装置1が備える種々の機能を実現するためのプログラムや、このプログラムの実行中に使用されるデータ等が事前に記憶され、或いは処理の都度一時的に記憶される。 この記憶部600には、制御部200を旋光計測部201、参照光光路長変更制御部203、及び血糖値算出部205として機能させ、血糖値計測処理(図4を参照)を行うための血糖値計測プログラム601が記憶される。その他、記憶部600には、血糖値計測処理の過程で増幅部90から入力された加算出力電圧及び減算出力電圧の各値や、旋光計測部201によって算出された旋光角、血糖値算出部205によって算出された血糖値等のデータが適宜記憶される。[原理] 図2は、被検体7の内部に進入した光の伝搬経路を説明する図である。上記したように、ビームスプリッター40を透過した計測光B11は集光レンズ50の計測光入射位置P11に入射し、集光レンズ50によって屈折されて被検体7の表面に対して非直角に入射する。このようにして被検体7に非直角に入射した計測光B11は、被検体7の内部に進入し、進入距離lの深さ位置で反射光B15として反射される。 ここで、図3を参照し、従来の反射型の光計測における問題点を説明する。図3(1)は、計測光(直線偏光)を被検体7に垂直に入射させた場合の直線偏光の伝搬経路R21,R23を示している。理解を容易にするために、説明の便宜上、伝搬経路R21と伝搬経路R23とを離して図示しているが、垂直に入射するため、実際は伝搬方向が反対である同一の経路である。また、図3(2)は、被検体7の内部を直線偏光がその入射方向に伝搬する過程で起こる旋光(偏光面の回転)を示し、図3(3)は、反射方向に伝搬する過程での旋光を示している。 図3(1)に示すように、計測光を被検体7に垂直に入射させる場合、被検体7の内部に進入した直線偏光は例えば血管や皮下脂肪など生体構造において反射され、入射方向を逆向きに伝搬する。そのため、直線偏光が被検体7の内部を入射方向に伝搬する過程で光学活性物質中を通過し、図3(2)中に矢印A21で示すように回転した偏光面は、入射方向を逆向きに伝搬する過程で再度光学活性物質中を通過することで、図3(3)中に矢印A23で示すように入射時と反対の向きに回転する。このように、計測光を被検体7に垂直に入射させるのでは、旋光が相殺されてしまい、結果旋光角(偏光面の回転角度)の算出は困難になるという問題があった。 これに対し、図2に示すように、計測光を被検体7に非直角に入射させれば、反射光B15は、入射光の入射方向とは異なる方向に反射される。すなわち、被検体7内を伝搬する光は同一の経路を往復しないため、偏光面の回転が相殺される事態を抑制でき、旋光角を算出できる。 具体的には、計測光B11を被検体7に非直角に入射させ、被検体7の内部で入射方向とは異なる方向に反射させていることから、反射光B15のうちのZ軸方向の伝搬成分は旋光が相殺されているものの、Z軸方向と直交する直交方向の伝搬成分(直交成分)は、被検体7の内部(生体内)のグルコースを通過したことによる旋光を反映(保存)している。したがって、この直交成分に着目することで、旋光角を算出することができる。 旋光角φは、次式(2)に示すように、被検体7の内部を伝搬した光の光路長Lと、その際に通過したグルコースの濃度Cとに比例する。αは所定の定数である。直交成分に着目する場合、図2中に示す直交方向の伝搬距離L1が光路長Lに相当し、被検体7に対する計測光B11の入射角度をθとすると、2×進入距離l×tanθで表される。なお、入射角度θは適宜設定してよいが、θが大きいほど光路長Lを長くすることができ、旋光を精度よく計測できる。 φ=L×C×α ・・・(2) 以上のように直交成分として旋光反映成分を含む反射光B15は、ビームスプリッター40において参照光B13と合成される。ところで、被検体7である生体は散乱体であることから、反射光B15は、被検体7の内部を伝搬したことによって大きく散乱された状態となっている。そのため、上記した相殺の問題とは別に、散乱光成分がノイズとなって旋光の計測精度を低下させる問題がある。 ここで、参照光B13は直線偏光である。一方、計測したいのは、反射光B15に含まれる旋光反映成分であり、この旋光反映成分は偏光面を維持している。したがって、反射光B15に参照光B13を合成させると、参照光B13は、散乱光成分とは干渉せずに旋光反映成分とのみ干渉する。より詳細には、計測光B11の光路長(計測光B11としてビームスプリッター40を透過してから再度ビームスプリッター40に入射するまでの光路長)と、参照光B13の光路長(参照光B13としてビームスプリッター40で反射されてから再度ビームスプリッター40に入射するまでの光路長)との差が光源10の干渉距離Δl以下である場合に干渉縞の振幅が最大となる。 したがって、参照光B13の光路長を変化させながら計測を行うと、反射光B15の強度は、参照光B13の光路長と参照光B13の光路長との差が光源10の干渉距離Δlよりも大きい間はほとんど変動せず、その変化は平坦となるのに対し、参照光B13の光路長と参照光B13の光路長との差が干渉距離Δl以下まで短くなると大きく変動し、大きく波打つ波形が得られる。すなわち、旋光反映成分を判別可能に増大させることができる。強度変化が平坦となっているときの反射光B15の強度が散乱光成分に相当する。したがって、例えば、波形が大きく波打つ時の反射光B15の強度から散乱光成分に相当する反射光B15の強度をオフセット分として除外することで散乱光成分を除外でき、旋光反映成分の強度を簡単に分離・判別することができる。また、波形が大きく波打つときの参照光B13の光路長から計測光B11の光路長を取得することで、図2に示す進入距離lを特定することができる。例えば、干渉距離Δlは100[μm]以下と短いことから、大きく波打つ波形の中心となる参照光B13の光路長を計測光B11の光路長とみなして進入距離lを特定する。 したがって、得られた旋光反映成分の強度に基づいて旋光角を算出し、この旋光角と、特定した進入距離lから求まる旋光反映成分の光路長L(直交方向の伝搬距離L1)とから血糖値を算出することができる。ここで、旋光角φは、次式(3)を用いて算出することができる。V1+V2は加算出力電圧であり、V1−V2は減算出力電圧であり、GRは増幅部90の利得比である。[処理の流れ] 図4は、血糖値計測処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、ここで説明する処理は、制御部200が記憶部600から血糖値計測プログラム601を読み出して実行することで実現できる。血糖値計測装置1は、図4の処理手順に従って処理を行うことで旋光計測方法を実施する。 図4に示すように、血糖値計測処理では、制御部200は先ず、光学装置100の動作を制御し、参照光B13の光路長を変化させながら反射光B15の強度を取得する(ステップS1)。具体的には、制御部200は、光源10から照射光B1を出射させるための制御を行う。そして、制御部200において参照光光路長変更制御部203が、参照ミラー駆動部65を制御し、参照光B13の光路長が最短となる参照ミラー60の可動範囲の一端側から最長となる参照ミラー60の可動範囲の他端側へと移動させる。そして、制御部200は、このようにして参照光B13の光路長が除々に長くなるように変更させながら、参照ミラー60の各位置での(すなわち該当する参照光B13の光路長での)加算出力電圧及び減算出力電圧を取得する。 続いて、旋光計測部201が、ステップS1で得られた参照光B13の光路長変化に対する反射光B15の強度変化を解析し、反射光B15の強度から直線偏光の旋光反映成分を分離・判別する(ステップS3)。そして、進入距離lを特定して旋光反映成分の光路長L(直交方向の伝搬距離L1)を算出する(ステップS5)。 そして、旋光計測部201は、ステップS3で判別した旋光反映成分の強度に基づいて、上記式(3)に従って旋光角φを算出する(ステップS7)。その後、血糖値算出部205が、ステップS5で算出した旋光反映成分の光路長LとステップS7で算出した旋光角φとを上記式(1)に代入し、グルコースの濃度Cを算出することで血糖値を得る(ステップS9)。 以上説明したように、本実施形態によれば、計測光B11を被検体7に対して非直角の入射方向で入射させ、計測光B11の入射方向とは異なる方向に反射させることができる。また、参照光B13の光路長を変更しながら参照光B13を反射光B15に合成させて干渉させることによって、反射光B15から直線偏光の旋光反映成分の光の強度を分離・判別することができる。加えて、旋光反映成分の光路長Lを算出することができる。したがって、計測光の入射方向と同一の方向に反射光が反射することで旋光が相殺される事態を抑制しつつ、精度良く旋光を計測することができる。結果、血糖値を精度よく算出することができる。 なお、光学装置の構成は、図1に示した構成に限定されるものではない。図5は、光学装置100aの他の構成例を示す図である。なお、図5において、上記した実施形態と同様の構成には同一の符号を付している。 図5に示すように、本変形例における血糖値計測装置1aの光学装置100aは、光源10と、直線偏光子20と、ビームスプリッター401a,403aと、参照ミラー60と、偏光ビームスプリッター61aと、1/4位相差板63aと、直交分離部70と、受光部80と、増幅部90とを備える。直線偏光子20から受光部80までの各部を構成する光学素子は、光源10から出射された照射光B1の図5中に一点鎖線で示す光路に沿って適所に配置される。 この光学装置100aにおいて、光源10、直線偏光子20、及びビームスプリッター401aは計測光照射部として機能し、ビームスプリッター401aは分割部として機能し、ビームスプリッター403aは合成部として機能する。 本変形例では、ビームスプリッター401aを透過した透過光を計測光B11として被検体7に入射させる一方、被検体7からの反射光B15を、その反射方向に配置した別のビームスプリッター403aに入射させる。また、ビームスプリッター401aを反射した反射光を参照光B13とし、偏光ビームスプリッター61a及び1/4位相差板63aを介して参照ミラー60に入射させる。そして、参照ミラー60によって参照光B13の光軸を平行にずらして反射させ、偏光ビームスプリッター61a及び1/4位相差板63aを介してビームスプリッター401aに入射させることで反射光B15に参照光B13に合成・干渉させる。 本変形例の光学装置100aでは、別個のビームスプリッター401a,403aによって被検体7に対して直接角度をもって計測光B11を入射させ、被検体7からの反射光B15を入射させている。本変形例では、上記した実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、上記した実施形態の光学装置100aと比べて被検体7に対する計測光B11の入射角度θを大きく取り易く、旋光の計測精度の向上が図れる。 また、本発明は、光学活性物質の旋光角を計測する場合に広く適用が可能である。例えば、上記した実施形態のように生体を被検体とする場合に限らず、被検者から採取した血液等を被検体とする場合にも同様に適用できる。また、上記した実施形態のように人間の血糖値を測定する場合に限らず、果物の糖分を計測する糖分計測装置等にも同様に適用できる。糖分測定装置に適用する場合は、例えば、果物の果汁を被検体として、上記の実施形態で説明した手順で果物の糖分を測定すればよい。 また、図1に示した血糖値計測装置1や図5に示した血糖値計測装置1aは、人間の身体に取り付けられて使用されるウェアラブル機器として構成することができる。あるいは、血糖値計測装置1や血糖値計測装置1aの一部、例えば光学装置100や光学装置100aを身体に装着可能なウェアラブル機器として構成してもよい。1,a 血糖値計測装置、100,100a 光学装置、10 光源、20 直線偏光子、30 シャッター、40,401a,403a ビームスプリッター、50 集光レンズ、60 参照ミラー、61a 偏光ビームスプリッター、63a 1/4位相差板、65 参照ミラー駆動部、70 直交分離部、80 受光部、81 P偏光受光部、83 S偏光受光部、90 増幅部、91 加算器、93 減算器、95 加算用増幅器、97 減算用増幅器、200 制御部、201 旋光計測部、203 参照光光路長変更制御部、205 血糖値算出部、300 操作部、400 表示部、500 通信部、600 記憶部、601 旋光計測プログラム、B1 照射光、B11 計測光、B13 参照光、B15 計測光、7 被検体 被検体に対して非直角の入射方向で所定偏光の計測光を入射することと、 前記被検体の前記入射方向とは異なる方向からの反射光のうちの前記所定偏光の旋光反映成分を判別することと、 前記判別の結果に基づいて旋光を計測することと、 を含む旋光計測方法。 直線偏光から前記計測光と参照光とを得ることと、 前記反射光に前記参照光を合成して干渉させることと、 を更に含み、 前記判別は、前記干渉の結果を用いて前記判別を行うことを含む、 請求項1に記載の旋光計測方法。 前記参照光を前記反射光に合成させるまでの前記参照光の光路長を変化させること、 を更に含む請求項2に記載の旋光計測方法。 前記計測することは、前記光路長を用いて前記旋光を計測することを含む、 請求項3に記載の旋光計測方法。 被検体に対して非直角の入射方向で所定偏光の計測光を入射させる計測光照射部と、 前記被検体の前記入射方向とは異なる方向からの反射光のうちの前記所定偏光の旋光反映成分を判別するための判別部と、 前記判別の結果に基づいて旋光を計測する計測部と、 を備える旋光計測装置。 直線偏光を前記計測光と参照光とに分割する分割部と、 前記反射光に前記参照光を干渉させるために合成させる合成部と、 を更に備え、 前記判別部は、前記干渉の結果を用いて前記旋光反映成分を判別する、 請求項5に記載の旋光計測装置。 前記参照光を前記反射光に合成させるまでの前記参照光の光路長を変化させる光路長変更機構、 を更に備えた請求項6に記載の旋光計測装置。 前記計測部は、前記光路長を用いて前記旋光を計測する、 請求項7に記載の旋光計測装置。 前記分割部と前記合成部とは、一のビームスプリッターを共用して構成される、 請求項6〜8の何れか一項に記載の旋光計測装置。 前記計測光照射部は、前記被検体への入出射光が通過する光フロントエンド部となるレンズ部を有し、当該レンズ部を通過する前記計測光の光軸を前記レンズ部の主点からずらすことで、非直角の入射方向で前記計測光を前記被検体に入射させ、 前記反射光が、前記レンズ部の主点を挟んで前記計測光の光軸と対称の位置を通過するように構成された、 請求項5〜9の何れか一項に記載の旋光計測装置。 【課題】計測光の入射方向と同一の方向に反射光が反射することで旋光が相殺される事態を抑制すること。また、精度良く旋光を計測すること。【解決手段】 被検体に対して非直角の入射方向で所定偏光の計測光を入射することと、前記被検体の前記入射方向とは異なる方向からの反射光のうちの前記所定偏光の旋光反映成分を判別することと、前記判別の結果に基づいて旋光を計測することと、を含む旋光計測方法を構成する。【選択図】図1