タイトル: | 公開特許公報(A)_血小板製剤保存装置および血小板製剤の保存方法 |
出願番号: | 2014012598 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61J 3/00,A61K 35/14,A61P 7/04,B01F 11/00 |
本馬 敦子 落合 俊昌 宮本 篤 白石 光也 丸山 征郎 JP 2015139487 公開特許公報(A) 20150803 2014012598 20140127 血小板製剤保存装置および血小板製剤の保存方法 三菱重工業株式会社 000006208 国立大学法人 鹿児島大学 504258527 大塚製薬株式会社 000206956 酒井 宏明 100089118 高村 順 100118762 本馬 敦子 落合 俊昌 宮本 篤 白石 光也 丸山 征郎 A61J 3/00 20060101AFI20150707BHJP A61K 35/14 20150101ALI20150707BHJP A61P 7/04 20060101ALI20150707BHJP B01F 11/00 20060101ALI20150707BHJP JPA61J3/00 300AA61K35/14 AA61P7/04B01F11/00 Z 6 1 OL 25 4C047 4C087 4G036 4C047AA34 4C047CC01 4C087AA01 4C087AA02 4C087AA03 4C087BB38 4C087DA10 4C087NA03 4C087ZA53 4G036AA26 4G036AB18 本発明は、血小板製剤保存装置および血小板製剤の保存方法に関する。 血小板の輸血が必要な患者に用いられる輸血用血小板製剤がある。輸血用血小板製剤は、水平振盪した状態で保存しないと、酸素の浸透が不十分となり、血小板の代謝が嫌気性に傾き、pHの低下、または血小板の機能の低下などが生じる。そのため、輸血用血小板製剤は、例えば水平振盪機や水平および回転する振盪機などを用いて保存されている(例えば、特許文献1参照)。また、輸血用血小板製剤は、有効期限が採血後、一般的に4日間と定められている。このように、輸血用血小板製剤の保存条件は、赤血球製剤(採血後21日間、保存温度:2〜6℃)や血漿製剤(採血後1年間、保存温度:−20℃以下)などの他の血液製剤と比べて厳密であり、輸血用血小板製剤の有効期限も他の血液製剤と比べても短い。 また、本出願人は、骨髄間質細胞(BMSCs)あるいは間葉系幹細胞(MSCs)を未分化の状態で増殖培養する装置として、多軸回転によって生成した模擬微小重力環境下で対象の細胞を三次元で回転させ、骨髄間質細胞及び間葉系幹細胞の培養、中枢神経系疾患治療用の移植細胞の製造など細胞培養等を行う、三次元クリノスタットを提案している(例えば、特許文献2参照)。実開平3−75829号公報特開2010−246434号公報 輸血用血小板製剤を有効利用する観点から、輸血用血小板製剤の更なる保存期間の延長が望ましい。しかし、輸血用血小板製剤を水平振盪条件下で保存しても、輸血用血小板製剤の保存期間が長くなるにつれて血小板の機能の低下などの問題が起こり、臨床的に望ましくない。そのため、血小板の機能を低下させずに輸血用血小板製剤の保存期間の延長を図る技術が求められている。 本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、血小板製剤の機能低下の抑制を図ることができる血小板製剤保存装置および血小板製剤の保存方法を提供することを目的とする。 上述した課題を解決するための本発明は、血小板製剤を保存する血小板製剤保存容器を収容する血小板製剤収容部と、前記血小板製剤収容部をn軸回転(nは、2以上の整数 で あり、好ましくは2以上10以下の整数であり、より好ましくは2以上5以下の整数であり、更に好ましくは2である。)する回転装置と、を有することを特徴とする血小板製剤保存装置である。 本発明において、前記回転装置は、前記血小板製剤収容部を保持する保持部と、前記保持部が連結され、前記保持部を保持する第1回転体と、前記第1回転体を前記第1回転軸の回りに回転させる第1駆動部と、前記第1回転体を第1回転軸の回りに回転可能に保持する第2回転体と、前記第2回転体を前記第1回転軸の軸心方向とは異なる方向に軸心方向を有する第2回転軸の回りに回転可能に保持する脚部と、前記第2回転体を前記第2回転軸の回りに回転させる第2駆動部と、を有することが好ましい。 本発明において、前記血小板製剤収容部は、前記血小板製剤収容部の内部に複数の前記血小板製剤保存容器を仕切る一対の仕切り部を有することが好ましい。 本発明において、前記保持部は、対向する一対の保持板と、前記保持板と前記第1回転体とを連結する複数の連結部とを備え、箱状に形成されていることが好ましい。 また、本発明は、血小板を含む試料を保存する血小板製剤保存容器をn軸方向に回転(nは、2以上の整数)させ、前記血小板の凝集を抑制しながら前記血小板を保存することを特徴とする血小板製剤の保存方法である。 本発明において、前記回転装置は、前記血小板製剤収容部を保持する保持部と、前記保持部が連結され、前記保持部を保持する第1回転体と、前記第1回転体を前記第1回転軸の回りに回転させる第1駆動部と、前記第1回転体を第1回転軸の回りに回転可能に保持する第2回転体と、前記第2回転体を前記第1回転軸の軸心方向とは異なる方向に軸心方向を有する第2回転軸の回りに回転可能に保持する脚部と、前記第2回転体を前記第2回転軸の回りに回転させる第2駆動部と、を有することが好ましい。 本発明の血小板製剤保存装置を用いれば、血小板製剤の機能低下の抑制を図ることができる。本発明の血小板製剤の保存方法を用いれば、血小板製剤の機能低下の抑制を図ることができる。図1は、本発明の実施形態に係る血小板製剤保存装置の一例を示す図である。図2は、血小板製剤保存容器と血小板製剤収容部とを示す図である。図3は、血小板製剤保存装置について定義された座標系を示す説明図である。図4は、採血直後の多血小板血漿(PRP)と、実施例1および比較例1、2の方法で保存した後のPRPの血小板数を示す図である。図5は、採血直後のPRP及び実施例1および比較例1、2の方法で保存した後のPRPの平均血小板容積(MPV)を示す図である。図6は、採血直後のPRP及び実施例1および比較例1、2の方法で保存した後のPRPの血小板分布幅(PDW)を示す図である。図7は、採血直後のPRP及び実施例1および比較例1、2の方法で保存した後のPRPの血餅退縮率を示す図である。図8は、採血直後のPRP及び実施例1および比較例1、2の方法で保存した後のPRPの低浸透圧ショック回復率を示す図である。図9は、採血直後のPRP及び実施例1および比較例1、2の方法で保存した後のPRPの血小板凝集反応を示す図である。図10は、採血直後のPRP及び実施例2および比較例3の方法で保存した後のPRPの血小板数を示す図である。図11は、採血直後のPRP及び実施例2および比較例3の方法で保存した後のPRPのMPVを示す図である。図12は、採血直後のPRP及び実施例2および比較例3の方法で保存した後のPRPのPDWを示す図である。図13は、採血直後のPRP及び実施例2および比較例3の方法で保存した後のPRPの血小板凝集反応を示す図である。 以下、本発明に係る血小板製剤保存装置及び血小板製剤の保存方法を実施するための形態(以下、実施形態という)を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。[実施の形態]<血小板製剤保存装置> 本発明の実施形態に係る血小板製剤保存装置について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る血小板製剤保存装置の一例を示す図である。図2は、血小板製剤保存容器と血小板製剤収容部とを示す図である。 血小板製剤保存装置10は、3次元クリノスタット(回転装置)11と、血小板製剤収容部12とを備える。なお、本実施形態では、血小板製剤は、人間、ウサギなどの動物の血小板が用いられる。 3次元クリノスタット11は、保持部13、内側フレーム(第1回転体)14、外側フレーム(第2回転体)15、脚部16、第1モータ(第1駆動部)17および第2モータ(第2駆動部)18を備える。 保持部13は、血小板製剤収容部12を保持している。保持部13は、対向する一対の保持板13aと、複数の連結部13bとを備え、箱状に形成されている。一対の保持板13aは、それぞれ平板であり、内側フレーム14を間に挟んだ位置に向かい合って配置されている。つまり、2枚の保持板13aは、面積が最も大きい面(正面)が向かい合う向きで、平行に配置されている。連結部13bは、一端が内側フレーム14に連結され、他端が保持板13aのいずれか一方に連結されている。連結部13bは、保持板13aの四隅のうちのいずれか一箇所に連結されている。本実施形態では、連結部13bは、保持板13aとネジで固定されている。保持板13aは、四隅のそれぞれが連結部13bと連結している。保持板13aは、連結部13bによって内側フレーム14に対して固定される。保持部13は、2枚の保持板13aを複数の連結部13bによって内側フレーム14に固定する。また、保持部13は、2枚の保持板13aで囲まれた空間に血小板製剤収容部12が配置されている。保持部13は、一対の保持板13aで血小板製剤収容部12を挟むことで、一対の保持板13aの間に血小板製剤収容部12を固定する。なお、本実施形態では、保持部13が血小板製剤保存容器12をネジ止めによって支持、固定しているが、保持部13が血小板製剤保存容器12を支持、固定する機構は特に限定されない。ネジ止め以外の方法によって固定してもよい。また、対向する一対の保持板13a同士の距離は、連結部13bの長さを調整することで任意の長さに調整できる。このため、保持部13は、保持部13で挟まれる血小板製剤保存容器12の長さ等に応じて適宜任意の長さに調整することができる。 内側フレーム14は、四角形状の枠体である。内側フレーム14は、保持部13を介して血小板製剤収容部12を保持している。内側フレーム14は、第1回転軸αの回りに回転する。本実施形態おいては、第1回転軸αは、第1モータ17の回転軸を通る軸である。内側フレーム14の回転方向は、時計回りと反時計回りとのどちらでもよい。 外側フレーム15は、4つの辺部15aで構成された四角形状の枠体であり、枠体の内部に保持部13及び内側フレーム14が配置されている。外側フレーム15は、4つの辺部15aのうち、対向する一対の辺部15aが、内側フレーム14が第1回転軸αの回りに回転できるように保持している。外側フレーム15は、4つの辺部15aのうち、対向する他の一対の辺部15aが、外側フレーム15が第2回転軸βの回りに回転できるように脚部16に保持されている。なお、第2回転軸βは、第1回転軸αと直交する方向の軸である。外側フレーム15の回転方向は、時計回りと反時計回りとのどちらでもよい。 脚部16は、外側フレーム15が第2回転軸βの回りに回転できるように保持している。脚部16は、架台19に対して固定されている。第1モータ17は、内側フレーム14を第1回転軸αの回りに回転させる。 第1モータ17は、一対の辺部15aのうち一方の辺部15aの外側に設けられている。第1モータ17は、ギア、ベルトなどの動力伝達機構を介して、内側フレーム14を第1回転軸αの回りに回転する。 第2モータ18は、一対の脚部16のうちの一方の脚部16に設けられている。第2モータ18は、ギア、ベルトなどの動力伝達機構を介して、第2回転軸βの回りに外側フレーム15を回転する。 本実施形態では、3次元クリノスタット11は、第1回転軸αと第2回転軸βとが互いにほぼ直交するようにしている。内側フレーム14、外側フレーム15および脚部16は、直交する第1回転軸αと第2回転軸βとを組み合わせることで任意の方向に傾斜できるジンバル機構を構成している。なお、第1回転軸αと第2回転軸βとは直交するように設けられることに限定されるものではなく、第1回転軸αと第2回転軸βとが所定の角度を有するように設けられてもよい。 次に、図2を用いて、血小板製剤収容部12について説明する。血小板製剤収容部12は、血小板製剤保存容器21を複数収容可能な容器である。ここで、血小板製剤保存容器21は、血小板製剤を保存する容器であり、血小板製剤を封入する試料封入部23を備えている。血小板製剤保存容器21は、試料封入部23に小板製剤保存容器21から取り外し可能な蓋26を備えている。血小板製剤保存容器21は、試料封入部23に血小板製剤が封入された後、蓋26で試料封入部23を閉じられる。血小板製剤保存容器21は、試料封入部23に血小板製剤が封入されることで、内部に血小板製剤を保存する。試料封入部23に血小板製剤を封入する方法は、試料封入部23に取り外し可能な蓋26を設ける方法に限定されるものではなく、試料封入部23に開閉式の蓋を設けて、試料封入部23に血小板製剤を封入するようにしてもよい。 血小板製剤収容部12は、血小板製剤収容部12の内部に仕切り部24を複数備えている。仕切り部24は、血小板製剤保存容器21の幅に対応した間隔で形成されている。血小板製剤収容部12は、仕切り部24と仕切り部24との間に血小板製剤保存容器21を挿入することで、内部に血小板製剤保存容器21を保持することができる。また、血小板製剤収容部12は、複数の血小板製剤保存容器21を仕切り部24で仕切って収容しているため、血小板製剤収容部12内での血小板製剤保存容器21の位置を固定でき、かつ、血小板製剤保存容器21を容易に着脱できる。血小板製剤収容部12は、第1回転軸αと第2回転軸βとの交点の近傍にある。血小板製剤収容部12は、保持部13で保持されているため、内側フレーム14と一体になって回転する。 3次元クリノスタット11は、第1モータ17により内側フレーム14を第1回転軸αに回転させ、第1モータ17により外側フレーム15を第2回転軸βの回りに回転させ、血小板製剤収容部12を2軸回転する。3次元クリノスタット11は、第1回転軸αと第2回転軸βとを組み合わせて、血小板製剤保存容器21を3次元で回転させることで、擬似無重力状態を生成する。なお、疑似無重力状態とは、互いに直行する2軸の回転速度を制御することで中央の資料設置位置における重力の時間的平均が1×10-3G程度の微小重力(無重力)状態となることをいう。3次元クリノスタット11は、血小板製剤を擬似無重力状態に置くことにより、血小板製剤の品質を維持することができ、かつ、血小板製剤の保存期間を長くすることができる。ここで、本発明者らは、3次元クリノスタット11で血小板製剤収容部12を2軸回転させることで、血小板製剤中の血小板に働く重力の方向が分散されるため、血小板製剤中の血小板を3次元に一定の荷重で均一に撹拌させることができる。このため、3次元クリノスタット11は、一般に利用されている水平振盪機を用いて血小板製剤を水平に振盪させる場合に比べて血小板に与えるストレスを軽減させることができると思慮する。これにより、3次元クリノスタット11は、血小板凝集作用の機能低下を抑制し、血小板製剤を保存することができるため、血小板製剤の品質を維持することができると共に血小板製剤の保存期間の延長を図ることができるものと思慮する。 血小板製剤の品質として、例えば、血小板製剤中の血小板数、平均血小板容積(mean platelet volume:MPV)、血小板分布幅(platelet distribution width:PDW)、血餅退縮率、低浸透圧ショック回復率および血小板凝集反応などが挙げられる。血小板数の増減は、血小板の損傷の指標として用いられる。MPVおよびPDWは、血小板の形態の変化を示す指標となる。血小板数、MPVおよびPDWは、例えば、従来より公知の自動血球計数装置を用いて測定される。血餅退縮率は、血小板の機能の指標となる。血餅退縮率は、血小板製剤にトロンビン溶液を所定量加え、所定時間経過した後に測定することで求められる。低浸透圧ショック回復率は、血小板製剤に蒸留水を添加して血小板の形態の変化と、所定時間経過後の回復状態を、濁度の変化として測定することで求められる。血小板凝集反応は、血小板製剤に所定濃度(例えば10μM)のアデノシンニリン酸(ADP)を添加して凝集反応を比濁法により測定することで求められる。 また、本実施形態では、3次元クリノスタット11は、血小板製剤保存容器12を2軸回転しているが、これに限定されるものではなく、血小板製剤保存容器12を更に複数の回転軸(例えば、n軸回転:nは、2以上の整数であり、好ましくは2以上10以下の整数であり、より好ましくは2以上5以下の整数であり、更に好ましくは2である。) の回りに回転するようにしてもよい。この場合でも、2軸回転の場合と同様に、血小板製剤保存容器12の回転により血小板製剤中の血小板に働く重力の方向が分散され、各血小板が3次元に一定の荷重で均一に撹拌させることができる。(3次元クリノスタット11の回転の制御) 次に、血小板製剤保存装置10が3次元クリノスタット11の回転を制御して擬似無重力状態を生成する場合の一例について説明する。図3は、血小板製剤保存装置10で定義された座標系を示す説明図である。なお、図3では、第1回転軸αおよび第2回転軸βがX0軸及びY0軸に対応する。本実施形態では、架台19に対して固定された不動の基準座標系{P0,X0,Y0,Z0}が定義される。また、外側フレーム15に対して固定された座標系{P1,X1,Y1,Z1}が定義され、内側フレーム14に対して固定された座標系{P2,X2,Y2,Z2}が定義される。なお、各座標系の原点は一致し、P0=P1=P2である。X0軸及びY0軸は水平方向を向き、Z0軸は鉛直下向きである。 また、血小板製剤保存装置10は、回転角度検出器31と、回転角度検出器32と、モータ制御部(モータコントローラ)33及び軌道生成部34を有する制御装置35とを備えている。回転角度検出器31は、外側フレーム15の架台19に対するY0軸まわりの回転角度θを検出し、検出回転角度θSとしてモータ制御部33に出力する。回転角度検出器32は、内側フレーム14の外側フレーム15に対するX1軸まわりの回転角度φを検出し、検出回転角度φSとしてモータ制御部33に出力する。軌道生成部34は、回転角度指令θ*及び回転角度指令φ*をモータ制御部33に出力する。モータ制御部33は、検出回転角度θSを回転角度指令θ*に一致させるようにトルク指令τθ*をモータコントローラ33に出力し、検出回転角度φSを回転角度指令φ*に一致させるようにトルク指令τφ*をモータコントローラ34に出力する。モータコントローラ33は、トルク指令τθ*に従って外側フレーム15をY0軸まわりに回転させる。モータコントローラ34は、トルク指令τφ*に従って内側フレーム14をX1軸まわりに回転させる。 ここで、P0、X0、Y0、Z0は、式(数1):で表される。ここで、上付き文字「T」は、「転置」を意味している。 外側フレーム15がY0軸まわりに回転角度θだけ回転したときの座標系{X1,Y1,Z1}は式(数2):で表される。 内側フレーム14がX1軸まわりに回転角度φだけ回転したときの座標系{X2,Y2,Z2}は式(数3):で表される。 ここで、RYは、Y0軸まわりの回転を表す座標変換行列であり、式(数4):で表される。また、RXは、X1軸まわりの回転を表す座標変換行列であり、式(数5):で表される。 上式より、内側フレーム14に対して固定された座標系は、式(数6):で表される。 外側フレーム15の角速度ベクトルをω1、内側フレーム14の角速度ベクトルをω2とすると、式(数7):及び式(数8):が成立する。 したがって、内側フレーム14の角加速度ベクトルα2は、式(数9):で表される。 ゆえに、試料が固定される内側フレーム14の角加速度α2の大きさは、式(数10):で表される。 軌道生成部34は、θ(t)及びφ(t)をそれぞれ示す回転角度指令θ*及び回転角度指令φ*をモータ制御部33に対して出力する。θ(t)及びφ(t)は、時間t、所定の周期T、所定の係数b1、b2k+1、所定の正の整数k、M、Nに対して式(数11):で表される。 ここで、M、Nは、任意の正の整数mに対して式(数12):を満たす。また、b1及びb2k+1は、式(数13):の解である。 血小板製剤保存装置10の制御が式(数11)に基づいて行われる場合は、試料に作用する重力ベクトルの時間平均がゼロになり、試料に作用する重力の影響が互いに直交する3軸に均等に分散され、擬似無重力状態が生成される。 式(数11)においては、X1軸まわりの回転角加速度d2φ/dt2がゼロであるから、式(数10)から明らかなように、内側フレーム14の角加速度α2の大きさが小さくなる。 また、式(数11)により規定される軌道は、解析的な式で表現されているため、MやNのようなパラメータを変更したときに軌道がどのようになるかの予想が容易である。 さらに、式(数11)により規定される軌道は、周期性を有しているから、擬似無重力状態で実験をする場合における血小板製剤保存装置10の運転条件の設定が容易になる。例えば、実験者は、実験時間が周期Tの正の整数倍となるように周期Tを決定し、周期Tの間にY0軸まわりの回転とX1軸まわりの回転とをそれぞれ何回転させるかによってパラメータM及びNを決定すればよい。 さらに、式(数11)により規定される軌道においては、任意の時間tにおける無限階の微分関数も連続となるため、Y0軸まわり及びX1軸まわりの回転角度、回転角速度、回転角加速度が急激に変化することが防がれる。したがって、血小板製剤保存装置10を運転したときに振動が発生することが防がれる。 以下、式(数11)〜式(数13)の導出について説明する。 座標系{P2,X2,Y2,Z2}の3軸における重力加速度の成分gX、gY、gZが時間的に相殺されてゼロになるためには、(n−1)T≦t≦nT(n=1、2、・・・)で表された周期Tの各区間において式(数14):が成立すればよい。 また、試料に作用する重力の影響が互いに直交する3軸に均等に分散されるためには、式(数15):が成立すればよい。 ここで、重力加速度の成分gX、gY、gZは、式(数16):で表される。したがって、式(数14)で与えられた重力が時間的に相殺される条件は、式(数17)〜式(数19):で表される。また、式(数15)で与えられた重力の均等分散の条件は、式(数20):で表される。 式(数20)において、各被積分項の和が1であるから、重力の均等分散の条件は式(数21)〜式(数23):で表される。 式(数17)〜式(数19)及び式(数21)〜式(数23)を満たす軌道を周期関数として求めるため、周期Tの間のY0軸及びX1軸まわりの回転数をそれぞれM回転及びN回転とする。このとき、周期ごとの境界条件は、式(数24):で表される。 ここで、Y0軸まわり又はX1軸まわりの回転角速度が一定のときは、それぞれの軸まわりの角加速度がゼロとなるから、式(数10)で表される角加速度α2の大きさを小さくすることができる。 そこで、式(数25):に示すようにY0軸まわりの回転角速度を一定とした場合に、式(数17)〜式(数19)及び式(数21)〜式(数23)の条件を満たすかどうか検討する。 この場合、式(数17)は満たすが、式(数21)の左辺を計算すると、式(数26):に示されるように式(数21)を満たさない。 つぎに、式(数27):に示されるようにX1軸まわりの回転角速度を一定とした場合に、式(数17)〜式(数19)及び式(数21)〜式(数23)の条件を満たすかどうかを検討する。 式(数27)で表されたφ(t)を式(数22)に代入すると式(数28):が得られる。 ここで、式(数28)の右辺第1項と第3項の和は式(数29):のように計算される。 式(数28)の右辺第4項に含まれるsin2θは偶関数である。そして、外側フレーム15が周期Tの間にY0軸まわりにM回転することからsinθの基本角周波数は2πM/Tであるから、sinθが2乗されたsin2θの基本角周波数は4πM/Tとなる。このとき、sin2θは、一般に偶関数のフーリエ級数で表すことができるので、式(数30):で表される。ここで、係数a0及びamは、式(数31):で表される。 式(数28)の右辺第4項の被積分項に式(数30)を代入すると、式(数28)の右辺第4項は、式(数32):のように表される。 ここで、任意の正の整数mに対して式(数12)が成立するように回転数M、Nを選べば、式(数33):に示すように、式(数28)の右辺第4項はゼロとなる。 式(数29)及び式(数33)を式(数28)に代入すれば、式(数34):が得られる。ここで、式(数34)を整理すれば式(数21)と同じ形になる。 したがって、式(数24)に示した周期毎の境界条件の下でφ(t)を式(数27)で定義し、式(数21)を満たすθ(t)を求めれば、求まったθ(t)は式(数22)も同時に満たす。 同様の考え方により、式(数21)を満たすθ(t)は、式(数23)も満たすことがわかる。 そこで、式(数21)を満たすθ(t)を求めることにする。 θ(t)が式(数25)で表されるときは、Y0軸まわりの回転について角加速度が生じないから、θ(t)は式(数25)に示される関数に近いことが望ましい。式(数(31)の両辺の正弦をとれば、式:sinθ(t)=sin(2πM/T)tが得られる。したがって、この基本正弦波sin(2πM/T)tに対して波形整形を施して、式(数21)を満たすsinθ(t)を求める。 求めようとするsinθ(t)は、奇関数の周期関数であるから、一般に式(数35):のようなフーリエ級数として表すことができる。ここで、係数biは、式(数36):で表される。 ここで、高調波の次数を奇数とすれば、基本正弦波sin(2πM/T)tに同期してsinθ(t)の増加時と減少時を対象な波形にすることができるので、回転角加速度α2の偏りを減少させることができる。そこで、式(41)において、i=1の項(基本正弦波の項)とi=2k+1の項(次数が奇数である高調波の項)を残し、他の項を消去すれば波形整形に必要な次数以外の周波数成分をカットできるので結果的に角加速度の発生を抑えることができる。このとき、式(数37):が得られる。ここで、kは任意の正の整数である。 式(数37)で表されたsinθ(t)は、式(数17)を満たす。なお、外側フレーム15が周期Tの間にY0軸まわりにM回転することから、sinθは2πM/Tを基本角周波数とするフーリエ級数で表されるため、sinθ(t)が式(数37)で表されない場合であっても、式(数17)が成立するのは明らかである。また、cosθも2πM/Tを基本角周波数とするフーリエ級数で表されるため、式(数18)が成立し、さらに、任意の正の整数mに対して式(数12)が成立するように回転数M、Nを選択すれば、式(数19)も成立する。 また、式(数37)で表されたsinθ(t)は式(数21)を満たす必要があるから、係数b1及びb2k+1は、式(数38):を満たす必要がある。 さらに、回転の連続性を与えるためには、t=(n−1)T+T/4Mのときsinθ(t)=1でなければならないから、係数b1及びb2k+1は、式(数39):を満たす必要がある。 以上より、kが奇数(k=1、3、5・・・)のときは、sinθ(t)は、基本正弦波と、基本正弦波に対して基本角周波数の3、7、11・・・倍の角周波数を持つ高調波とが重畳される。このとき、式(数39)は式(数40):になる。 したがって、式(数38)及び式(数40)より、係数b1、b2k+1の解は式(数41):で表される。 一方、kが偶数(k=2、4、6・・・)のときは、sinθ(t)は、基本正弦波と、基本正弦波に対して基本角周波数の5、9、13・・・倍の角周波数を持つ高調波とが重畳される。このとき、式(数39)は式(数42):になる。 したがって、式(数38)及び式(数42)より、係数b1、b2k+1の解は式(数43):で表される。 ゆえに、式(数11)〜式(数13)が導き出された。 ここで、kが奇数のときと偶数のときの2つの場合に分けて考えたが、いずれの場合においても、係数b1、b2k+1の解として、2組の解が得られる。ここで、どちらの組の解を選択してもよいが、b2k+1の絶対値がb1の絶対値よりも小さくなる方の解を選択すれば、式(数10)で表される角加速度α2の大きさを小さくできる。 また、式(数10)で表される角加速度α2の大きさを小さくするためには、sinθ(t)に含まれる高調波の角周波数が低いことが望ましい。そこで、k=1とし、b2k+1の絶対値がb1の絶対値よりも小さくなる方の解を選択すれば、角加速度α2の大きさが最小になる。 このとき、sinθ(t)は式(数44):で表される。ここで、係数b1、b3は、式(数45):で与えられる。 よって、角加速度α2の大きさを最小にするθ(t)は、式(数46):で表される。<血小板製剤の保存方法> 本発明の実施形態に係る血小板製剤の保存方法について説明する。本実施形態に係る血小板製剤の保存方法は、3次元クリノスタット11を用いて所定の温度領域で行う。 本実施形態において、血小板製剤とは、輸血用に用いることができるのであれば特に限定されないが、一般的には末梢血から血小板を濃縮した血漿である多血小板血漿(platelet rich plasma:PRP)と同義である。通常、血小板製剤はクエン酸加血漿で1単位あたり0.2×1011の血小板を含有している。また、本実施形態において、血小板製剤保存容器とは血小板を安定に保存することができる容器であれば特に限定されないが、(容器の材質として可能なものを列挙)を挙げることができ、(容器の材質のうち、好ましいもの)が好ましい。また、本実施形態において、所定の温度領域とは、血液製剤を保存するのに最適な温度領域であれば特に限定されないが、一般に、血液製剤が、血小板製剤の場合、最適な温度領域は、22℃±2℃である。また、血液製剤が、赤血球製剤の場合、最適な温度領域は、4℃±2℃である。血液製剤が、血漿製剤の場合、最適な温度領域は、−20℃以下である。本実施形態では、血小板製剤を保存する場合であるため、最適な温度領域は、22℃±2℃である。なお、この温度領域を室温という場合がある。 血小板製剤を少なくとも1つの血小板製剤保存容器21の試料封入部23に封入する。その後、血小板製剤収容部12内に血小板製剤保存容器21を少なくとも1つ収容する。その後、3次元クリノスタット11を運転して、血小板製剤収容部12を2軸回転させる。これにより、血小板製剤保存容器21を3次元で回転させることができるため、血小板製剤中の血小板を3次元に一定の荷重で均一に撹拌させながら保存することができる。 よって、本実施形態に係る血小板製剤の保存方法を用いれば、血小板製剤中の血小板を3次元で回転して、一定の荷重で均一に撹拌させることで、水平振盪法を用いて血小板製剤を水平に振盪させる場合に比べて血小板に与えるストレスを軽減することができる。そのため、血小板の凝集を抑制しながら血小板製剤を保存することができるため、血小板製剤の品質を維持することができると共に血小板製剤の保存期間の延長を図ることができる。 なお、本実施形態では、血小板製剤保存容器21を血小板製剤収容部12内に収容する前に内側フレーム14に血小板製剤収容部12を保持するようにしているが、これに限定されるものではなく、血小板製剤保存容器21を血小板製剤収容部12内に収容した後、内側フレーム14に血小板製剤収容部12を保持させるようにしてもよい。 また、本実施形態では、3次元クリノスタット11を用いて血小板製剤保存容器21を回転しながら保存する場合について説明しているが、これに限定されるものではなく、3次元または3次元以上の多次元で回転可能な回転装置を用いて血小板製剤保存容器21を回転しながら保存するようにしてもよい。 また、本実施形態では、3次元クリノスタット11を用いて血小板製剤を保存する場合について説明しているが、これに限定されるものではなく、血小板の他に、例えば、抗凝固剤、保存液などを含む血小板製剤保存液、赤血球製剤、血漿製剤などの血小板製剤以外の他の血液製剤、人、動物または植物の細胞を含む培養液、または人工臓器などを保存するようにしてもよい。 本実施形態の内容を実施例及び比較例を用いて以下に詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。<保存方法>(実施例1) 日本白色種ウサギの血液(100ml)を採血した後、遠心重力を約400Gとして10分間遠心分離を行ない、沈殿した赤血球を除いた上清である多血小板血漿(platelet rich plasma:PRP)を採取した。この採取したPRPをOpticell(NUNC社製)中において、3次元クリノスタット11に設置した収容部材22内に収容して回転している状態(3次元回転条件)で、室温、72時間で保存した。なお、本実施例において、室温とは、血小板製剤を保存するために最適な温度領域であり、20℃以上24℃以下の範囲をいう。(比較例1、2) 比較例1では、PRPの保存条件を静止した状態(静置条件)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。 比較例2では、PRPの保存条件を水平に振盪した状態(水平振盪条件:BC−730 BIO CRAFT社製)に変更し、2次元の移動で保存したこと以外は、実施例1と同様にして行った。<評価方法> 採血直後のPRPと、各実施例および比較例の方法で保存した後のPRPとの血小板数、平均血小板容積(MPV)、血小板分布幅(PDW)、血餅退縮率、低浸透圧ショック回復率および血小板凝集反応を以下の方法で測定し、評価した。(血小板数、平均血小板容積(MPV)、血小板分布幅(PDW)) 採血直後のPRPと、各実施例および比較例の方法で保存した後のPRPとを、自動血球計数装置(F−820、シスメックス株式会社)を用いて、血小板数、MPVおよびPDWを測定した。血小板数、MPVは、試料を11個 作成してその平均値を求めた。PDWは、試料を8個作成してその平均値を求めた。 (血餅退縮率) 採血直後のPRPと、各実施例および比較例の方法で保存した後のPRP0.2mLに、トロンビン溶液5unit/mLを加え、よく混和した後、37度で30分静置した。その後、血餅退縮により生じた血清の重量を電子天秤で測定し、下記式(A)に基づいて血餅退縮率を求めた。血餅退縮率は、試料を6個作成 してその平均値を求めた。 血餅退縮率=血清重量/当初PRP重量×100(%) 式(A)(低浸透圧ショック回復率) 低浸透圧ショック回復率は、採血直後のPRPと、各実施例および比較例の方法で保存した後のPRPの濁度の変化により測定した。濁度の変化は、PRP0.4mLに蒸留水0.2mLを加え、CAF−100(日本分光社製)を用いて測定した5分間の濁度の変化により測定した。蒸留水を加えた直後の濁度の変化を100%とし、5分後に濁度が回復した割合を低浸透圧ショック回復率とした。低浸透圧ショック回復率は、試料を8個作成 してその平均値を求めた。(血小板凝集反応) 血小板凝集反応は、採血直後のPRPと、各実施例および比較例の方法で保存した後のPRP0.4mLに、10μMの濃度のアデノシンニリン酸(ADP)を添加して凝集反応を比濁法により測定した。血小板凝集反応は、試料を8個作成 してその平均値を求めた。<実施例1、および比較例1、2の評価結果> 採血直後のPRPと、実施例1、および比較例1、2の方法で保存した後のPRPとの血小板数、MPV、PDW、血餅退縮率、低浸透圧ショック回復率および血小板凝集反応のそれぞれの評価結果を図4〜図10に示す。図4は、採血直後のPRPと、実施例1、および比較例1、2の方法で保存した後のPRPとの血小板数の評価結果を示す図であり、図5は、採血直後のPRPと、実施例1、および比較例1、2の方法で保存した後のPRPとのMPVの評価結果を示す図であり、図6は、採血直後のPRPと、実施例1、および比較例1、2の方法で保存した後のPRPとのPDWの評価結果を示す図であり、図7は、採血直後のPRPと、実施例1、および比較例1、2の方法で保存した後のPRPとの血餅退縮率の評価結果を示す図であり、図8は、採血直後のPRPと、実施例1、および比較例1、2の方法で保存した後のPRPとの低浸透圧ショック回復率の評価結果を示す図であり、図9は、採血直後のPRPと、実施例1、および比較例1、2の方法で保存した後のPRPとの血小板凝集反応の評価結果を示す図である。(血小板数) 図4に示すように、比較例1、2よりも実施例1の方が、採血直後のPRPの血小板数と近い値だった。血小板数の減少は、血小板の損傷の指標となる。静置条件下で、室温で72時間、PRPを保存した場合には、採血直後に比べて血小板数が減少する傾向が認められることから(比較例1参照)、静置条件で血小板製剤を保存した場合には、血小板の破壊が起きている可能性が考えられる。水平振盪条件または3次元回転条件で、室温で72時間、PRPを保存した場合には、静置条件で血小板製剤を保存した場合に比べて血小板数の減少を抑制する傾向が認められた(実施例1、比較例2参照)。特に、3次元回転条件でPRPを保存した場合の血小板数は、採血直後のPRPの血小板数とほぼ近い値に維持され、かつ、水平浸透条件に比べて有意に高い血小板数を維持されていた(実施例1参照)。よって、3次元回転条件でPRPを保存した場合には、血小板の破壊を抑制する傾向があることがわかった。(MPVおよびPDW) 図5、図6に示すように、実施例1および比較例1、2のいずれの保存方法を用いて保存した後のPRPのMPVおよびPDWは、採血直後のPRPのMPVおよびPDWとほぼ近い値であり、ほとんど変化しなかった。MPVおよびPDWは、血小板の形態の変化を示す指標となる。よって、静置条件および水平振盪条件に代えて3次元回転条件で、室温で72時間、PRPを保存しても血小板の形態はこれまでの保存方法と同様に維持できていることがわかった。(血餅退縮率) 図7に示すように、実施例1および比較例1、2のいずれの保存方法を用いて保存した後のPRPの血餅退縮率は、採血直後のPRPの血餅退縮率よりも低い値であったが、比較例1、2よりも実施例1の方が血餅退縮率は高い値になった。血餅退縮とは、凝固した血液(血餅)が体積を減少させ、血清を生じる反応である。この血清を生じる反応は、血小板が関与することから、血餅退縮率は、血小板の機能の指標となる。静置条件、水平振盪条件または3次元回転条件で、室温で72時間、PRPを保存しても、血小板の機能は低下しているため、PRPの保存方法の相違による差は明確には生じていない。しかし、比較例1、2よりも実施例1の方が血餅退縮率は高い値になったことから、静置条件および水平振盪条件よりも3次元回転条件でPRPを保存した場合の方が血小板の機能の低下は抑制傾向にあることがわかった。(低浸透圧ショック回復率) 図8に示すように、比較例1、2に比べて実施例1は、採血直後のPRPの低浸透圧ショック回復率とほぼ近い値であり、ほぼ同等の値であった。血小板は低浸透圧に曝されると、血小板の体積は一旦膨張するが、その後、血小板が収縮するため、血小板の体積は減少する。よって、静置条件および水平振盪条件に代えて3次元回転条件で、室温で72時間、PRPを保存すれば、採血直後のPRPとほぼ同等の機能を維持できていることがわかった。(血小板凝集反応) 図9に示すように、実施例1および比較例1、2のいずれの保存方法を用いて保存した後のPRPの血小板凝集反応は、採血直後のPRPの血小板凝集反応よりも低い値であったが、比較例1、2よりも実施例1の方が、保存後のPRPの血小板凝集反応は高かった。血小板の凝集は、止血に重要な反応であるため、血小板凝集反応は、血小板の機能の指標となる。静置条件または水平振盪条件でPRPを保存すると、採血直後のPRPに比べて血小板の凝集反応に関わる機能は低下させるといえる。比較例1、2よりも実施例1の方が血小板凝集反応は高い値になったことから、静置条件および水平振盪条件よりも3次元回転条件でPRPを保存した場合の方が血小板の血小板凝集反応に関する機能の低下はより抑えられるため、PRPの保存方法として好ましいといえる。特に、3次元回転条件でPRPを保存したPRPでは、ADPに対する血小板凝集反応は、水平振盪条件に比べ有意に高く、血小板の凝集反応に関する機能が維持されているといえる。よって、静置条件および水平振盪条件に代えて3次元回転条件で、室温で72時間、PRPを保存すれば、採血直後のPRPとほぼ同等の機能を維持できていることがわかった。(実施例2) ヒト(20代〜40代成人男性5人 ) の血液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてPRPを採取した。この採取したPRPをOpticell(NUNC社製)中において、3次元クリノスタット11に設置した収容部材22内に収容して回転している状態(3次元回転条件)で、7日間保存した。(比較例3) 比較例3では、PRPの保存条件を水平に振盪した状態(水平振盪条件:BC−730 BIO CRAFT社製)に変更し、2次元の移動で保存したこと以外は、実施例2と同様にして行った。<実施例2および比較例3の評価結果> 図10は、採血直後のPRPと、実施例2および比較例3の方法で保存した後のPRPとの血小板数の評価結果を示す図であり、図11は、採血直後のPRPと、実施例2および比較例3の方法で保存した後のPRPとのMPVの評価結果を示す図であり、図12は、採血直後のPRPと、実施例2および比較例3の方法で保存した後のPRPとのPDWの評価結果を示す図であり、図13は、採血直後のPRPと、実施例2および比較例3の方法で保存した後のPRPとの血小板凝集反応の評価結果を示す図である。(血小板数) 図10に示すように、実施例2では、室温で7日間保存してもほぼ一定であったのに対し、比較例3では、経過日数とともに徐々に血小板数が減少する傾向が見られた。また、7日間経過後の実施例2血小板数と比較例3の血小板数との間では、血小板数に有意な差異が認められた。よって、3次元回転条件でPRPを保存した場合には、血小板の破壊を抑制することがわかった。(MPVおよびPDW) 図11、図12に示すように、実施例2および比較例3のいずれの保存方法を用いて保存した後のPRPのMPVおよびPDWは、保存2日後から上昇する傾向が認められたが、実施例2および比較例3との間に有意な差異は認められなかった。(血小板凝集反応) 図13に示すように、実施例2および比較例3のいずれの保存方法を用いて保存した後のPRPの血小板凝集反応は、保存日数と共に減少する傾向が認められ、保存7日後にはほぼ認められなくなった。一方で、比較例3のPRPの血小板凝集反応の低下率の方は、実施例2PRPの血小板凝集反応の低下率に対して大きく、特に、保存5日後の実施例2PRPの血小板凝集反応と比較例3のPRPの血小板凝集反応との間には有意な差異が見られた。比較例3よりも実施例2の方が血小板凝集反応は高い値になったことから、水平振盪条件よりも3次元回転条件でPRPを保存した場合の方が、より高い凝集反応を示す傾向が認められるため、PRPの保存方法として好ましいといえる。特に、3次元回転条件でPRPを保存したPRPでは、ADPに対する血小板凝集反応は、水平振盪条件に比べ有意に高く、血小板の凝集反応に関する機能が維持されているといえる。よって、水平振盪条件に代えて3次元回転条件で、PRPを保存することにより、採血直後のPRPに対する機能の低下を抑えることができることがわかった。 これらの各結果から、血小板製剤を保存する際に、2次元よりも3次元で血小板製剤を保存する方が、採血直後の血小板を保持する傾向が強いことが確認できる。よって、血小板製剤を3次元で回転しながら保存することにより、血小板製剤を保存する際の攪拌運動を最小限に抑制することができ、血小板に加わる負担を最小限にすることができる可能性が高いといえる。このため、血小板製剤を3次元で回転しながら保存することは、血小板の機能の低下を抑制し、血小板の機能を保持することに寄与するといえる。 よって、血小板製剤を3次元で回転させながら保存し、血小板製剤を保存する際の攪拌運動を最小限に抑制することで、血小板の数を維持すると共に血小板の凝集を抑制しながら保存することができるため、血小板製剤の品質を維持しつつ血小板製剤の保存期間の延長に寄与することができる。この結果、品質の高い血小板製剤を提供することに寄与することが可能である。 10 血小板製剤保存装置 11 3次元クリノスタット(回転装置) 12 血小板製剤収容部 13 保持部 14 内側フレーム(第1回転体) 15 外側フレーム(第2回転体) 16 脚部 17 第1モータ(第1駆動部) 18 第2モータ(第2駆動部) 19 架台 21 血小板製剤保存容器 23 試料封入部 24 仕切り部 26 蓋 31 回転角度検出器 32 回転角度検出器 33 モータ制御部(モータコントローラ) 34軌道生成部 35制御装置 血小板製剤を保存する血小板製剤保存容器を収容する血小板製剤収容部と、 前記血小板製剤収容部をn軸回転(nは、2以上の整数)する回転装置と、を有することを特徴とする血小板製剤保存装置。 請求項1において、 前記回転装置は、擬似無重力状態を生成することを特徴とする血小板製剤保存装置。 請求項1または2において、 前記回転装置は、 前記血小板製剤収容部を保持する保持部と、 前記保持部が連結され、前記保持部を保持する第1回転体と、 前記第1回転体を前記第1回転軸の回りに回転させる第1駆動部と、 前記第1回転体を第1回転軸の回りに回転可能に保持する第2回転体と、 前記第2回転体を前記第1回転軸の軸心方向とは異なる方向に軸心方向を有する第2回転軸の回りに回転可能に保持する脚部と、 前記第2回転体を前記第2回転軸の回りに回転させる第2駆動部と、を有することを特徴とする血小板製剤保存装置。 請求項1ないし3の何れか1つにおいて、 前記血小板製剤収容部は、前記血小板製剤収容部の内部に複数の前記血小板製剤保存容器を仕切るための仕切り部を有することを特徴とする血小板製剤保存装置。 血小板製剤を保存する血小板製剤保存容器をn軸回転(nは、2以上の整数)させながら前記血小板を保存することを特徴とする血小板製剤の保存方法。 請求項5において、 前記血小板製剤保存容器をn軸回転させて擬似無重力状態を生成することを特徴とする血小板製剤の保存方法。 【課題】血小板製剤の保存期間の延長を図ることができる血小板製剤保存装置および血小板製剤の保存方法を提供する。【解決手段】血小板製剤保存装置10は、血小板製剤を保存する血小板製剤保存容器21を収容する血小板製剤収容部12と、血小板製剤収容部12を2軸回転する3次元クリノスタット11と、を有する。血小板製剤保存装置10は、血小板製剤収容部12を2軸方向に回転させることで、血小板製剤中の血小板を3次元に一定の荷重で均一に撹拌させることができる。これにより、血小板の凝集を抑制しながら血小板製剤を保存することができるため、血小板製剤の品質を維持することができると共に血小板製剤の保存期間の延長を図ることが可能となる。【選択図】図1