タイトル: | 公開特許公報(A)_リポソーム組成物及び治療薬 |
出願番号: | 2014011515 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 9/127,A61K 47/24,A61K 47/12,A61K 47/42,A61P 29/00,A61P 37/02,A61P 11/06,A61P 17/04,A61P 27/02,A61P 19/02,A61P 17/00,A61P 21/00,A61P 9/00,A61P 5/14,A61P 1/04,A61P 1/16,A61P 1/18,A61P 25/00,A61P 21/04,A61P 13/12,A61P 11/00 |
姜 貞勲 JP 2015137273 公開特許公報(A) 20150730 2014011515 20140124 リポソーム組成物及び治療薬 国立研究開発法人国立循環器病研究センター 510094724 特許業務法人前田特許事務所 110001427 姜 貞勲 A61K 9/127 20060101AFI20150703BHJP A61K 47/24 20060101ALI20150703BHJP A61K 47/12 20060101ALI20150703BHJP A61K 47/42 20060101ALI20150703BHJP A61P 29/00 20060101ALI20150703BHJP A61P 37/02 20060101ALI20150703BHJP A61P 11/06 20060101ALI20150703BHJP A61P 17/04 20060101ALI20150703BHJP A61P 27/02 20060101ALI20150703BHJP A61P 19/02 20060101ALI20150703BHJP A61P 17/00 20060101ALI20150703BHJP A61P 21/00 20060101ALI20150703BHJP A61P 9/00 20060101ALI20150703BHJP A61P 5/14 20060101ALI20150703BHJP A61P 1/04 20060101ALI20150703BHJP A61P 1/16 20060101ALI20150703BHJP A61P 1/18 20060101ALI20150703BHJP A61P 25/00 20060101ALI20150703BHJP A61P 21/04 20060101ALI20150703BHJP A61P 13/12 20060101ALI20150703BHJP A61P 11/00 20060101ALI20150703BHJP JPA61K9/127A61K47/24A61K47/12A61K47/42A61P29/00A61P37/02A61P11/06A61P17/04A61P27/02A61P19/02A61P29/00 101A61P17/00A61P21/00A61P9/00A61P5/14A61P1/04A61P1/16A61P1/18A61P25/00A61P21/04A61P13/12A61P11/00 6 1 OL 13 4C076 4C076AA19 4C076CC01 4C076CC04 4C076CC07 4C076CC09 4C076CC10 4C076CC11 4C076CC15 4C076CC16 4C076CC17 4C076CC18 4C076CC29 4C076DD41 4C076DD45 4C076DD63 4C076EE41 4C076FF27 4C076FF70 本発明は、炎症性自己免疫疾患の予防及び/又は治療に利用できるリポソーム組成物及びそのリポソーム組成物を用いる治療薬に関する。 炎症性自己免疫疾患は、持続性の炎症と、炎症反応によって産生されたサイトカイン等の炎症性物質による症状の悪化、それに伴い血中に遊離された患者自身の細胞や組織成分に対する免疫細胞の過剰反応を繰り返す難病である。 炎症性自己免疫疾患の治療には免疫抑制剤や炎症抑制剤が汎用されているが、病変細胞あるいは免疫細胞を選択的に認識することはできないため、薬理効果の低下、頻用による患者の負担の増加、副作用等の問題がある。 ところで、リポソームは、水溶性若しくは疎水性の物質を多量に包含できることから、薬物キャリアーとして、特に静脈注射用のドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System:DDS)のキャリアーとして高い関心がもたれている。 薬物を体内の特定部位に選択的に輸送する手段として、リポソームに薬剤を封入し、その表面に抗体等のリガンドを結合する方法が提案されており、自己免疫疾患や癌治療の分野において、薬剤を封入したリポソームの有効性が報告されている。 例えば、自己免疫疾患に有益なリポソームとして、性腺刺激ホルモン、α−フェトプロテイン、トランスフェリン、グリコデリン等を内包するリポソームが特許文献1に記載されている。また例えば、自己免疫疾患に有益なリポソームとして、0.5〜8の範囲のホスファチジルエタノールアミン対ホスファチジルコリンの比で、ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンを含んでなる混合物から形成されるリポソームが特許文献2に記載されている。また例えば、炎症性疾患に有益なリポソームとして、カチオン脂質、パクリタキセル及びアニオン脂質を含有するカチオンリポソーム製剤が特許文献3に記載されている。特表2004−534722号公報特表2009−507876号公報特開2012−229255号公報 しかし、上述の技術では、病変細胞あるいは免疫細胞を選択的に認識することはできるものの、血中安定性が十分でないため、長時間且つ効率的に炎症性自己免疫疾患を治療することは困難であるという問題点を有する。 本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、病変細胞あるいは免疫細胞を選択的に認識できるとともに、長時間且つ効率的に炎症性自己免疫疾患を治療することができるリポソーム組成物及びそのリポソーム組成物を用いた治療薬を提供することを目的とする。 本発明にかかるリポソーム組成物は、ホスファチジルセリンを膜構成成分として含有するリポソームと、前記リポソームの外部表面を修飾するIgG結合能を有するリガンドと、前記リポソームの膜構成成分と前記リガンドとの双方に結合する脂肪酸からなるリンカーと、を有することを特徴とする。 本発明にかかる治療薬は、本発明にかかるリポソーム組成物を含有する炎症性自己免疫疾患を予防又は治療するための治療薬である。 本発明によれば、病変細胞あるいは免疫細胞を選択的に認識できるとともに、長時間且つ効率的に炎症性自己免疫疾患を治療することができる。HeLa、RaW264.7、マウス腹内侵出性マクロファージの各細胞を使用した抗体に対する結合特性評価試験の結果を示す写真図である。HeLa、RaW264.7、マウス腹内侵出性マクロファージの各細胞を使用した抗体に対する結合特性評価試験の結果を示すグラフである。炎症性自己免疫疾患である心筋炎動物モデルを用いて評価した心臓拡張評価試験の結果を示す写真図である。心筋炎動物モデルの経時的体重変化を示すグラフである。HE染色した心臓パラフィン切片の写真図である。サイトカインIL-1α、TNF-α、IL-6及びIL-10の変化を示すグラフである。 以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。 本実施形態にかかるリポソーム組成物は、球状のリポソームと、リポソームの外部表面を修飾するリガンドと、リンカーとを有して構成される。 リポソームは、ホスファチジルセリンを膜構成成分として含有する。例えば、リポソームは、ホスファチジルセリン(PS)及びホスファチジルコリン(PC)の組み合わせを膜構成成分として含む。 本発明では、ホスファチジルセリンを膜構成成分として含有するリポソーム(PSリポソーム)を採用しているので、マクロファージを選択的に認識することができる。またPSリポソームは、マクロファージの炎症性機能を抗炎症性機能へ変換する。即ち、PSリポソームは、アポトーシス細胞と同様のメカニズムで単核貪食系細胞であるマクロファージ、ミクログリアならびに樹状前駆細胞に取り込まれ、抗炎症性メディエーターを産生分泌することにより抗炎症的に作用する。 リポソームの直径は、組織への到達性及び安定性等を考慮して、適宜調整することができ、例えば直径150〜350nmの単層リポソームである。なお、リポソームの直径は例えば動的光散乱法により測定される。 ホスファチジルコリンとしては、特に限定されないが、好ましい例として、ジミリストリルPC(DMPC)、ジパルミトイルPC(DPPC)、ジステアロイルPC(DSPC)、ジオレイルPC(DOPC)等が挙げられる。ホスファチジルセリンとしては、特に限定されないが、ホスファチジルコリンの好ましい例として挙げたリン脂質と同様の脂質部位を有するホスファチジルセリン等が好ましい例として挙げられる。PCとPSの好ましい使用モル比はPC:PS=3:1から1:2の間であり、好ましくは7:3である。 本発明のリポソームにおける膜構成成分は上述の成分に限定されず、他の成分を加えることができる。例えば、膜構成成分としてホスファチジルコリンとホスファチジルセリンのほか、更にリン酸ジアルキルエステルを含むことが可能である。リン酸ジアルキルエステルの例としては、ジラウリルフォスフェート、ジミリスチルフォスフェート、ジセチルフォスフェート等が挙げられるが、これらに限定されることはない。 またリポソームには、膜構成物質として必要に応じ他の物質を加えることもでき、例えば膜安定化剤としてシトステロール、コレステロール、ジヒドロコレステロール、コレステロールエステル、フィトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、コレスタノール、ラノステロール、1−O−ステロールグルコシド、1−O−ステロールマルトシド、及びこれらの混合物を含有させることができる。 リポソームの重量は特に限定されるものでなく、リポソーム内部に塩化セシウム等の高密度な溶液を充填させることにより上昇させることができる。リポソームの密度は、リポソーム内部にデキストラン・サルフェート等の多糖類を含有させることにより上昇させることができる。 リポソームの内部には薬物を内包させることができる。薬物は、長期間血中濃度が維持されることが望まれる薬物又は特定の疾患部位や細胞への標的指向性を意図した投与が必要な薬物等が好ましい。薬物は、特に限定されるものではないが、例えば抗炎症剤、抗生物質、抗癌剤、抗血栓剤、又は免疫賦活剤等である。抗炎症剤は、例えば、ステロイド剤であるプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメサゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン等、又は、非ステロイド剤であるアセチルサリチル酸、イブプロフェン、ザルトプロフェン、ジクロフェナク、セレコキシブ等である。抗生物質は、例えばスルファゼン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン等である。抗癌剤は、特に限定されるものではないが、例えばドキソルビシン、シスプラチン、マイトマイシン、ブレオマイシン、5−フルオロウラシル、メソトレキサート、ナイトロジェンマスタード、ブスルファン、オギザリプラチン、タキソール、カンプトテシン等である。抗血栓剤は、例えばヘパリン、低分子量ヘパリン、ウロキナーゼ、トロンボモジュリン、ストレプトキナーゼ等である。免疫賦活剤は例えばムラミルペプチド類等である。 また、リポソームの内部には薬物のみならず遺伝子類を内包させることも可能である。遺伝子類は、例えば、DNA、RNA、アンチセンスDNA、siRNA、デコイ、治療用オリゴヌクレオチド等である。 リガンドは、リポソームの外部表面を修飾する。リガンドは、細胞表面上に存在するレセプター又は表面抗原と結合することができる物質である。リガンドは、IgG結合能を有するものであれば特に限定されるものではなく、プロテインA、プロテインG、抗体、抗原、ペプチド、核酸、アビジン、及び、ビオチンからなる群より選ばれ、好ましくはプロテインA又はプロテインGである。 本発明にかかるリポソーム組成物(ナノ分子と称することも可能である。)は、PSリポソームの表面にIgGを選択的に認識するリガンドをつけているため、これにより血中安定性が向上する。なお、 リンカーは、リポソームの膜構成成分とリガンドとの双方に結合する脂肪酸である。リンカーは、リポソームの膜構成成分とリガンドとの双方を結合する結合能を有していれば特に限定されるものではないが、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、又はオレイン酸の何れかであり、好ましくはパルミチン酸である。 リポソームの作製方法としては、当該分野で公知のいかなる方法を用いてもよく、具体例としては、超音波処理法、エタノール注入法、フレンチプレス法、エーテル注入法、コール酸法、カルシウム融合法、凍結融解法、逆相蒸発法等が挙げられるが、これに限られるものではない。 そして、リガンドをリポソームに修飾するため、脂肪酸であるリンカーとリガンドとを混合し反応させてリンカー−リガンドの溶液を準備する。その後、このリンカー−リガンドと作製したリポソームとを混合して本実施形態にかかるリポソーム組成物を製造することができる。 次に、本実施形態にかかる治療薬について説明する。本実施形態にかかる治療薬は、本実施形態にかかるリポソーム組成物及び薬学的に許容される担体を含む。薬学的に許容される担体は、例えば滅菌水、緩衝液、食塩水等である。治療薬は、更に、種々の塩類、糖類、蛋白質、澱粉、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコール等を含有することができる。本実施形態にかかる治療薬は、例えばボーラス注射又は連続注入により非経口的に投与できる。投与量は、特に限定されるものではなく、投与経路、症状の重篤度、患者の年齢及び状態、副作用の程度等により適宜設定できる。 本実施形態にかかる治療薬は、炎症性自己免疫疾患の予防又は治療に好適に使用できる。炎症性自己免疫疾患の予防とは、炎症性自己免疫疾患を発症させないことを意味し、また、炎症性自己免疫疾患の様々な時期の症状の進行を止めること又はその進行を抑制することを意味することもある。また、炎症性自己免疫疾患の治療とは、炎症性自己免疫疾患の様々な症状を緩和すること、症状の進行を止めること、又はその進行を抑制することをいう。 上述したように、リポソーム組成物の表面因子ホスファチジルセリンは、マクロファージを選択的に認識すると同時に、炎症性機能を抗炎症性機能へ変換する機能を有している。また、リポソームに修飾したプロテインGと血中抗体との結合は、リポソーム組成物の血中安定性を向上させ、長時間にわたる抗炎症効果が発揮できるようにする。これらの機能を有する新規リポソーム組成物は心筋炎に限らず、炎症性(自己免疫)疾患に広く応用できる。具体的には、本実施形態にかかる治療薬は、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、多発性筋炎・皮膚筋炎、血管炎症候群、シェーグレン症候群、ベーチェット病、バセドウ病、橋本病、心筋炎、川崎病、大動脈炎症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、自己免疫性膵炎、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群、糸球体腎炎、ANCA関連腎炎、アミロイドーシス、TINU症候群、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、又はサルコイドーシスの予防又は治療に好適に使用できる。 (1)リポソームの合成 リポソームの作製のために、ホスファチジルセリン(シグマ社製、純度大≧99%)とホスファチジルコリン(シグマ社製、純度≧97%)(30:70)を有機溶媒(クロロホルム:メタノール=90:10)に溶解後、ロータリーエバポレーターにて溶媒を除去して脂質のフィルムを得た。そこへPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を添加し、超音波槽中で超音波処理することでリポソーム分散液を得た。 (2)リポソーム組成物の合成 プロテインG(1mg/ml)(シグマ社製、純度?90%)は、0.3% sodium deoxycholate、0.1% sodium bicarbonate、及び0.1% sodium azide入りPBSを用いて均一に分散し、37℃になるまで加温した。プロテインGをリポソームに修飾するために脂肪酸を用いた(本実験ではパルミチン酸を使用)。パルミチン酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(10mg/ml)を50℃のエタノールに溶かし、37℃に加温したプロテインG溶液に10μl添加した。添加後、37℃、24時間、撹拌しながら反応させた。24時間後、未反応物はSephadex G-25カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により除去した。精製したプロテインG−脂肪酸の溶液と4℃で5分間超音波処理したリポソーム(1:20、w/w)を混合し、室温で20分間反応することで、プロテインG修飾リポソームであるリポソーム組成物を合成した。 (3)リポソーム組成物の粒子径の測定 リポソーム分散液とリポソーム組成物溶液(各100μl)に純水を添加し、1mlにメスアップした。粒子径の測定はゼータサイザーナノZS(シスメックス社製)を用いて行った。リポソームとリポソーム組成物の粒子径はそれぞれ349.0 ± 10.6nm、324.7 ± 13.5nmであって、プロテインGの修飾によるサイズの増加は確認できなかった。 (4)マウス腹内侵出性マクロファージの採取 マウスを安楽死させ、70%エタノールで消毒した。腹部外皮をはいで腹膜を漏出させた。冷やしたPBSを5ml腹部に注入し、3〜5分ほど軽くマッサージしてマクロファージを浮遊させた。腹内PBSを回収し、1000rpm、5分間、4℃で遠心して沈殿したマウス腹内侵出性マクロファージを実験に用いた。 (5)リポソーム組成物の細胞導入実験 FITC標識マウス抗体(5μl)(Zymed社製)をリポソーム入りDMEM(ダルベッコ・フォークト変法イーグル最小必須培地)又はリポソーム組成物入りDMEM(各1ml)に添加し、37℃、20分間、放置した。その後、DMEMを、HeLa(ヒト子宮頸がん細胞株)、RaW264.7(マウスマクロファージ細胞株)、マウス腹内侵出性マクロファージの各細胞(1×105)に添加し、更に37℃、5%CO2条件下で1時間インキュベートした。1時間後に培地を除去し、細胞をPBSで3度洗浄した。蛍光顕微鏡で蛍光物質を観察し、イメージング分析はAQUACOSMOS 2.6イメージングソフトウェア(浜松ホトニクス社製)で行った。蛍光物質の定量測定のために、細胞溶解バッファー(100 mM Tris-HCl、 1% Triton-X 100、及び2 mMEDTA)を細胞に添加し溶解した。200μlの細胞溶解液を96ウェルに分注し、マイクロプレートリーダー(Wallac社製 ARVO SX 1420)を用いて吸光度を測定した。細胞溶解液中のタンパク質濃度を測定するために、10μlの細胞溶解液を1 ml のBio-Rad Protein Assay試薬(Bio-Rad社、カリフォルニア州)と混合した。595 nmの吸光度を測定し、牛血清アルブミン(BSA)標準液 の希釈系列から作成した標準曲線を用いてタンパク質の濃度を求めた。細胞においての蛍光物質の強度はタンパク質質量あたりの相対蛍光強度(Em/mg)で表した。結果を図1及び図2に示す。 図1に示すように、FITC標識マウス抗体とリポソーム組成物を添加したRaw264.7(マウスマクロファージ細胞株)細胞群は、FITC標識マウス抗体単独又はFITC標識マウス抗体とリポソームを添加したRaw264.7細胞群よりも、画像上に強い蛍光強度を示した。マウス腹内侵出性マクロファージ細胞を用いた実験でも同様の結果が得られた。一方、FITC標識マウス抗体とリポソーム組成物を添加したHeLa(ヒト子宮頸がん細胞株)細胞群では蛍光観察ができなかった。また図2に示すように、蛍光物質の定量の結果は蛍光観察の結果と一致した。これらの結果から、リポソーム表面に修飾したプロテインGは抗体に対する結合特性を維持しており、リポソーム組成物はマクロファージを選択的に認識できることが証明された。 (6)心筋炎動物モデルの作製とリポソーム組成物の投与 リポソーム組成物による炎症抑制効果と治療効果につき、炎症性自己免疫疾患である心筋炎動物モデルを用いて評価した。動物実験は、(A)心筋炎未発症マウスにPBSを投与した群(PBS-PBS)、(B)心筋炎発症マウスにリポソームを投与した群(Myosin-liposome)、(C)心筋炎発症マウスにリポソーム組成物を投与した群(Myosin-conjugate)、および(D)心筋炎発症マウスにPBSを投与した群(Myosin-PBS)、四つに分けて実施した。図3に示すように、心筋炎発症マウスにPBSを投与した群においては著しい心臓の拡張が確認できた。 ブタ心筋ミオシン(500μg)(シグマ社製)を完全アジュバンH37Ra(Difco社製)と混合し、マウス(A/Jマウス、5〜7周齢、日本SLC社)の鼠径部と胸部の皮下に100μlずつ注入した。Pertussis toxin(500ng)(シグマ社製)は生理食塩水に希釈して腹内投与した。これを投与0日とした。7日後、同様の方法で追加注入を行ったが、pertussis toxinの投与はなかった。コントロール群はブタ心筋ミオシンの代わりにPBSを注入した。リポソーム組成物による炎症抑制効果と心筋炎発症抑制効果を評価するために、10と17日にリポソームとリポソーム組成物(200μl)を尾静脈により投与し、14と21日にそれぞれ評価を行った。結果を図4に示す。心筋炎発症マウスにPBSを投与した群は投与後17と21日目の測定で、心筋炎発症マウスにリポソームを投与した群は投与後21日目の測定で、体重減少が確認できた。一方、心筋炎発症マウスにリポソーム組成物を投与した群においては21日間体重の減少はなかった。 (7)ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色) 10%ホルマリン液で固定した心臓をパラフィンで包埋した。ミクロトームで薄切した組織をガラスに固定し、HE染色を行った。結果を図5に示す。(I)心筋炎未発症マウスにPBSを投与した群(PBS-PBS)、(II)心筋炎発症マウスにリポソームを投与した群(Myosin-liposome)、(III)心筋炎発症マウスにリポソーム組成物を投与した群(Myosin-conjugate)、および(IV)心筋炎発症マウスにPBSを投与した群(Myosin-PBS)である。リポソーム組成物投与はマクロファージの浸潤抑制と心筋炎の発症を著しく抑制することを心臓のHE染色で確認した。 (8)血中サイトカインの測定 血中サイトカインの測定は炎症性サイトカイン(IL-1α、TNF-α、およびIL-6)と抗炎症性サイトカイン(IL-10)に分けて行った。マウス血液は後大静脈から採り、シリカゲル含有の血清分離管(BD Microtainer、BD社製)に採集し、その後、遠心分離して血清を得た。血中サイトカインの濃度はMILLIPLEX MAP Mouse Cytokine/Chemokine Kit(Millipore社製)を用いて測定した。結果を図6に示す。 投与後14日目に心筋炎発症マウスにリポソーム組成物を投与した群は、心筋炎発症マウスにPBSを投与した群よりも有意なIL-1αの抑制とIL-10の増加が確認できた。一方、心筋炎発症マウスにPBSを投与した群は、投与後21日目にIL-10の増加が確認できたが、これは心筋炎の予後不良を示すものである。TNF-αは他の群と比べて心筋炎発症マウスにPBSを投与した群で、投与後21日目に顕著に増加した。投与後21日目のIL-6の濃度は、心筋炎発症マウスにPBSを投与した群よりも心筋炎発症マウスにリポソーム組成物を投与した群で、減少は確認できたが、有意差はなかった。 炎症性自己免疫疾患の予防及び/又は治療に利用できる。 ホスファチジルセリンを膜構成成分として含有するリポソームと、 前記リポソームの外部表面を修飾するIgG結合能を有するリガンドと、 前記リポソームの膜構成成分と前記リガンドとの双方に結合する脂肪酸からなるリンカーと、を有することを特徴とするリポソーム組成物。 前記リガンドは、プロテインA又はプロテインGであることを特徴とする請求項1に記載のリポソーム組成物。 前記リンカーは、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、又はオレイン酸の何れかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のリポソーム組成物。 前記リポソームは、抗癌剤、抗生物質、抗血栓剤、又は免疫賦活剤の何れか一つから選ばれる薬物を内包していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のリポソーム組成物。 請求項1乃至4の何れか1項に記載のリポソーム組成物を含有する炎症性自己免疫疾患を予防及び/又は治療するための治療薬。 前記炎症性自己免疫疾患は、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、多発性筋炎・皮膚筋炎、血管炎症候群、シェーグレン症候群、ベーチェット病、バセドウ病、橋本病、心筋炎、川崎病、大動脈炎症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、自己免疫性膵炎、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群、糸球体腎炎、ANCA関連腎炎、アミロイドーシス、TINU症候群、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、又はサルコイドーシスの何れかであることを特徴とする請求項5に記載の治療薬。 【課題】病変細胞あるいは免疫細胞を選択的に認識できるとともに、長時間且つ効率的に炎症性自己免疫疾患を治療することができるリポソーム組成物を提供する。【解決手段】ホスファチジルセリンを膜構成成分として含有するリポソームと、外部表面を修飾するIgG結合能を有するリガンドと、脂肪酸からなるリンカーと、を有する。リガンドは、プロテインA又はプロテインGである。リポソーム組成物の表面因子ホスファチジルセリンは、マクロファージを選択的に認識する。リポソームに修飾したプロテインGと血中抗体との結合は、リポソーム組成物の血中安定性を向上させる。【選択図】図1