タイトル: | 公開特許公報(A)_蛍光顕微鏡による試料の観察方法 |
出願番号: | 2014007377 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G02B 21/06,G01N 23/04,G01N 23/225,H01J 37/26 |
バート ブイス リンダ フランシーナ ファン ドリエル JP 2014142639 公開特許公報(A) 20140807 2014007377 20140120 蛍光顕微鏡による試料の観察方法 エフ イー アイ カンパニ 501233536 FEI COMPANY 伊東 忠重 100107766 伊東 忠彦 100070150 大貫 進介 100091214 バート ブイス リンダ フランシーナ ファン ドリエル EP 13152215.3 20130122 G02B 21/06 20060101AFI20140711BHJP G01N 23/04 20060101ALI20140711BHJP G01N 23/225 20060101ALI20140711BHJP H01J 37/26 20060101ALI20140711BHJP JPG02B21/06G01N23/04G01N23/225H01J37/26 14 1B OL 9 2G001 2H052 5C033 2G001AA03 2G001BA11 2G001CA03 2G001GA06 2G001HA13 2G001JA14 2G001LA01 2G001MA05 2H052AA09 2H052AD23 2H052AE00 2H052AF10 5C033SS02 5C033SS10 本発明は、蛍光顕微鏡によって試料の一部を検査する方法に関する。前記試料の少なくとも一部は支持カーボン膜によって支持され、前記蛍光顕微鏡は前記試料に励起光を照射することで蛍光又は燐光を発生させ、前記試料は温度上昇によって損傷を受けやすく、前記支持カーボン膜は孔又は厚さ変化を有する。 係る方法は非特許文献1から既知である。 既知の方法は、極低温蛍光顕微鏡の設定では、極低温のガラス状の試料に光が照射され、蛍光が観察される。 極低温のガラス状の試料とはたとえば、所与の状態で試料を捕らえるように冷凍された生体試料である。冷凍中に氷の結晶が生成されることは回避されなければならない。なぜならこれらの結晶は、たとえば細胞膜に孔を空けることによってその試料の構造を損傷させるからである。結晶化は、超高速冷却速度−たとえば105K/sの範囲−で水のガラス転移温度である約130K未満にまで試料を冷凍させることによって、又は、高冷却速度と高圧を組み合わせることによって(2000barで103K/s)これら自体は既知であり、特許文献1,2に記載されている。たとえば極低温ミクロトームを用いる結果、試料の典型的な厚さが1μm以下となる。 試料を光に曝すとき、光に対する蛍光マーカーの応答が時間とともに弱くなることが知られている。これは光退色(photo bleaching)として知られている。極低温での光退色の効果は、室温での光退色ほど顕著ではないことに留意して欲しい。 光学顕微鏡で試料を観察し、かつ、その蛍光を観察した後、試料は、10nm以下の分解能で詳細を観察するための透過型電子顕微鏡(TEM)内で検査されてよい。従って試料は一般的にはTEMの支持グリッド上で調製される。TEMの支持グリッドはたとえばテッドペラ(Ted Pella)社から販売されている(たとえばhttp://www.tedpella.com/supflm_html/suptfilm.htmを参照のこと)。 よく知られた型のグリッドは所謂有孔性カーボングリッドである。有孔性カーボングリッドではカーボン支持膜が用いられ、有孔性カーボングリッドは孔を有する。孔を覆うように広がって氷内に埋め込まれる試料材料はたとえば、カーボン支持膜との干渉(回折)を起こさない透過電子によって検査されてよい。また孔が貫通孔ではなく、カーボン膜が非常に薄い−たとえば3nm以下−である有孔性カーボングリッドも既知であることに留意して欲しい。 TEM内において試料の2D像ではなく、3D断層像を生成することが知られていることに留意して欲しい。これはたとえば非特許文献2に記載されている。この結果、2D像ではなく試料の3D像が生成される。 蛍光顕微鏡観察中では、蛍光信号を短期間で集めることができるように、強い照射が望ましい。これは、信号対雑音比の観点から有利であり(短期間での雑音は長期間での雑音よりも小さい)、検出中での試料のドリフトを抑制する観点からも有利である。またこのようにして使用が容易になる。高品質画像を迅速に得ることは、関心領域の調査及び焦点合わせの点から有利である。 強い照射を利用するときの問題は、加熱が起こることで試料が損傷するすなわち破壊されるおそれがあることである。米国特許第7,413,872B2号明細書米国特許第6,758,362B2号明細書米国特許第7,884,337B2号明細書米国特許第7,767,979号明細書米国特許第7,034,316号明細書SCHWARTZ, Cindy L他、‘Cryo-fluorescence microscopy facilitates correlations between light and cryo-electron microscopy and reduces the rate of photobleaching’, J. Microsc. 2007年8月、第227巻(Pt 2), pp 98-109SARTORI, Anna他、‘Correlative microscopy: Bridging the gap between fluorescence light microscopy and cryo-electron tomography’, J. Struct. Biol. 第160巻、 2007年、pp. 135-145LARSON, D.M他、’The surface of evaporated carbon films is an insulating, high-bandgap material.’, J. Struct. Biol.、2011年 本発明は強い照射を用いるときの加熱に対する解決法を供することを目的とする。 上記目的のため、本発明による方法は以下の特徴を有する。− 前記支持カーボン膜は孔又は厚さ変化を有する。その結果、前記励起光の吸光度は場所に依存し、高い励起光吸光度の部分と低い励起光吸光度の部分が得られる。− 前記試料の検査される部分は、孔又は前記低い励起光吸光度の部分の上に設けられる。− 前記照射が局在化されることで、前記試料の検査される部分に接する高い励起光吸光度の部分は照射されない。 明らかに前記加熱は前記励起光の吸収によって引き起こされる。本発明は、薄い試料による前記励起光の吸収は無視されうるが、カーボンによる吸収は無視できないという知見に基づいている。例として、ガラス状の氷はほんのわずかしか光を吸収しない。前記カーボ内で生成される熱は、熱伝導によって前記試料に到達し、このようにして前記試料の温度上昇が起こる。薄いカーボン膜の吸光度は非特許文献3に記載されている。 吸光度は光学密度で表される。吸光度A(λ)はA(λ)=log10(I0/I1)と定義される。ここで、I0は入射光の量で、I1は透過光の量である。非特許文献3は、図2で、厚さが5nmよりも大きな膜ではA(λ)=[(D-5)×0.016]nm-1(Dはカーボン膜の厚さで単位はnm)と近似されると記載している。換言すると、11nmのカーボン層は既にA(λ)=0.1の光学密度を有するので、入射光の21%を吸収し、65nmの層は入射光の約90%を吸収する(A(λ)=1)。 氷の典型的な吸光度は300〜600nm領域において0.1m-1のオーダーである。カーボン層の吸収が存在すると仮定すると、氷による吸収は、カーボン層による吸収と比較して無視されうる。 孔又は厚さ変化を有することで前記励起光の吸光度が場所に依存して変化するグリッドを使用し、強い照射を前記グリッドがほとんど光を吸収しない部分の上に位置する関心領域に限定し、かつ、前記試料のうち検査される部分(吸光度の低い領域の上に設けられる)と接する高い吸光度を有する部分の照射を回避することによって、強い照射による放熱が回避される。その結果、前記試料を損傷させることなく強い照射を利用することができる。 これらの効果は、ガラス状の極低温試料を調査するとき−温度上昇の結果、結晶化及び/又は昇華が起こることで前記試料が損傷する−に非常に顕著であることに留意して欲しい。 当業者は、たとえ高い吸光度を有していても、前記膜のうち関心領域から離れた部分−つまり加熱(その結果たとえば結晶化又は昇華が起こること)が許される部分−が、強い光によって照射されてよいことを理解することに留意して欲しい。また、たとえば前記グリッドの銅のメッシュ(又は高い熱伝導度を有する材料)と直接接触する部分も、氷の結晶化を起こすことなく照射されうる。 損傷を起こすような温度上昇(たとえば氷の結晶化を起こすような温度上昇)が起こらない限り、たとえば低吸光度と高吸光度の境界を決定するために前記試料全体が低レベルの光に曝されてよいことにさらに留意して欲しい。 膜の温度上昇は、吸収された光だけではなく、前記膜の熱伝導度にも依存することに留意して欲しい。薄い膜は厚い膜ほど光を吸収しないが、前記薄い膜の熱伝導も大きくなるので、その結果温度上昇は依然として非常に大きくなるおそれがある。 前記照射の局在化は、光ビームの強度変調とともに前記試料全体にわたって前記光ビームのラスタースキャンを行い、前記光ビームのベクタースキャンを行い、又は、たとえば空間光変調器(SLM)を通過した広い光ビームを前記試料に照射することによって実現されうる。SLM自体は既知であり、前記透過光の位相及び/又は振幅を変化させるのに用いられる。SLMの利用例はたとえばLCDプロジェクターである。 蛍光顕微鏡(FM)の光照射系におけるSLMの利用は既知であり、特許文献3に記載されていることに留意して欲しい。しかしSLMはここでは、前記励起光の位相を局所的に変調させるのに用いられ、前記試料に入射する光の量(前記試料に入射する光の強度)を変化させない。 カーボンの代わりである支持膜とみなしうる他の材料が、カーボンと同程度の高い吸光度を有する蓋然性があることを理解することが重要である。これは、伝導性の支持膜を有したいという要求に関連する。伝導性の材料は通常高い吸光度を有する。 FMとTEMとが組み合わせられることで、2つの異なる顕微観察技術の情報が組み合わせられる強力な相関顕微鏡となる。FMは、蛍光マーカー(たとえば緑色蛍光タンパク質(GFP)又はイムノラベル)を有する領域を特定する。同時にTEMは、非常に高分解能で重金属マーカーを特定するのに用いられ得る。またFMは、大きな構造を特定して、かつ、TEM内で検査される関心領域をはるかに高い倍率で識別することができる。 前記検査は、TEMの排気可能な試料チャンバ上に設けられたFMを有する装置内で実行されることが好ましい。係る装置は、本願出願人であるFEI社から”Tecnai with iCorr”の名前で販売されてる。 本発明の態様では、ガラス状試料に励起光を照射する照射系及び前記試料から放出される蛍光を検出する検出器を備える蛍光顕微鏡を有する装置であって、前記照射系は、前記励起光の強度を変調させる空間光変調器を含み、前記蛍光顕微鏡は、前記照射を局在化する前記空間光変調器を制御する制御装置を有し、当該装置は電子顕微鏡鏡筒をさらに有することを特徴とする。 前記試料上での前記励起光の強度を変調させる空間光変調器を有する蛍光顕微鏡の照射系を備え、かつ、前記蛍光顕微鏡に前記空間光変調器用の制御装置を加えることによって、前述した方法が実行され得る。 これは、電子顕微鏡鏡筒−好適には透過型電子顕微鏡鏡筒−と組み合わせられる。 当該装置は、前記試料を極低温に保つ手段を備えられなければならない。TEMグリッドの上面を概略的に表している。図1Aの詳細を概略的に表している。図1Bで表された詳細の断面を概略的に表している。 ここで図を用いて本発明を説明する。図中、同一参照番号は対応する部位を表す。 図1AはTEMグリッドの上面を概略的に表している。 TEMグリッド10は、厚さ約25μmで直径が3.05mmの環状の薄い銅製ホイル12である。ホイルは、多数の(たとえば400個/インチ)孔14と、上に試料を設けることのできる薄いカーボン膜16を有する。銅とカーボンは、支持体を供するだけではなく、帯電を防ぐために電気伝導性をも与える。 図示されたよりも粗いメッシュ又は細かいメッシュを有するグリッド、他の材料(金、ニッケル、(カーボンコーティングされた)プラスチック)、他の形状の孔(スロット、六角形)、又は、薄い環状ホイルとは異なる形状(たとえば特許文献4,5を参照のこと)も知られていることに留意して欲しい。 孔は薄いカーボン層−たとえば3nmの層−を有してよいことにさらに留意して欲しい。これは、非特許文献3によると、光の吸収又は試料からグランド(グリッドのホルダ)への電気伝導路の提供には不十分である。 膜はカーボン膜である必要はない。本発明にとって重要なことは、その膜が吸収性の膜であること、及び、その吸収は、照射によって放熱が引き起されるホイルの部分を照射しないことによって回避されることである。 図1Bは図1Aの詳細を概略的に表している。 図1Bは、銅製ホイル12の棒、カーボン膜16、及び該カーボン膜16中に存在する多数の孔18を概略的に表している。ガラス状の氷の中のガラス状の試料22が、カーボン膜と孔を覆うように供される。 図1Cは図1Bで表された詳細の線AA’に沿った断面を概略的に表している。 図1Cは、銅製ホイル12の棒の一部とカーボン膜16の断面を概略的に表している。ホイル16は多数を孔18を有する。カーボン膜16の上にガラス状の氷20の層が図示されている。ガラス状の氷20の層内には試料22が存在する。よって関心領域は、孔の上に位置する試料22の部分である。 グリッドに強い光を照射するとき、孔18が照射され、その孔を取り囲む(接する)部分は照射されない。 銅製ホイルは他の材料−たとえばニッケル、金、(カーボンコーティングされた)プラスチック等−であってもよいことに留意して欲しい。孔は薄いカーボン層−たとえば3nmの層−を有してよいことにさらに留意して欲しい。これは、非特許文献3によると、光の吸収又は試料からグランド(グリッドのホルダ)への電気伝導路の提供には不十分である。 本発明はガラス状の極低温試料でしか説明されていないが、同様の効果はたとえば、相転移温度より低い温度での化学過程の調査又はたとえばタンパク質の調査のときにも起こる。 局在化した照射は、所与の境界外部での照射すなわち有る領域の照射の回避が求められるような他の用途にも用いられ得ることに留意して欲しい。 10 グリッド 12 薄い銅製ホイル 14 孔 16 薄いカーボン膜 18 孔 20 ガラス状の氷の層 22 ガラス状の試料 蛍光顕微鏡によって試料の一部を検査する方法であって、 前記試料の少なくとも一部は支持カーボン膜によって支持され、 前記蛍光顕微鏡は前記試料に励起光を照射することで蛍光又は燐光を発生させ、 前記試料は温度上昇によって損傷を受けやすく、 前記支持カーボン膜は孔又は厚さ変化を有し、 前記支持カーボン膜は孔又は厚さ変化を有することで、前記励起光の吸光度は場所に依存し、高い励起光吸光度の部分と低い励起光吸光度の部分が得られ、 前記試料の検査される部分は、孔又は前記低い励起光吸光度の部分の上に設けられ、 前記照射が局在化されることで、前記試料の検査される部分に接する高い励起光吸光度の部分は照射されない、 ことを特徴とする方法。 前記照射の局在化は、前記試料全体にわたって前記光ビームを走査させ、かつ、前記ビーム強度を変調させることによって実現される、請求項1に記載の方法。 前記照射の局在化は、前記試料全体にわたって前記光ビームをベクタースキャンさせることによって実現される、請求項1に記載の方法。 前記照射の局在化は、前記励起光を空間光変調器に通過させて強度変調を起こすことによって実現される、請求項1に記載の方法。 前記空間光変調器が前記試料上のLCD型空間光変調器である、請求項4に記載の方法。 前記試料がガラス状の極低温試料である、請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の方法。 前記高い励起光吸光度の部分が、前記励起光の1%以上、より具体的には10%以上、最も具体的には90%以上を吸収し、 前記低い励起光吸光度の部分が、前記励起光の1%未満しか吸収しない、 請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の方法。 前記高い励起光吸光度の部分が、少なくとも5nmのカーボン、より具体的には少なくとも11nmのカーボン、最も具体的には少なくとも65nmのカーボンを有する層を含み、かつ、 前記低い励起光吸光度の部分が、最大でも5nmのカーボンを有する層又はカーボンを全く有しない層を含む、 請求項7に記載の方法。 前記試料に照射して前記試料を励起させて蛍光又は燐光を検出する前に、前記支持カーボン膜の境界を決定するために反射光又は透過光によって像が撮られる、請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の方法。 透過型電子顕微鏡内において前記試料を撮像する段階をさらに有する、請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の方法。 前記透過型電子顕微鏡が試料チャンバを備え、かつ、 前記試料が前記透過型電子顕微鏡が試料チャンバ内に存在する間に蛍光像と電子光学像の両方が取得される、 請求項1乃至10のうちのいずれか一項に記載の方法。 ガラス状試料に励起光を照射する照射系及び前記試料から放出される蛍光を検出する検出器を備える蛍光顕微鏡を有する装置であって、 前記照射系は、前記励起光の強度を変調させる空間光変調器を含み、 前記蛍光顕微鏡は、前記照射を局在化する前記空間光変調器を制御する制御装置を有し、 当該装置は電子顕微鏡鏡筒をさらに有する、 ことを特徴とする装置。 前記試料を極低温に保つ手段を備える、請求項12に記載の装置。 前記電子顕微鏡鏡筒が透過型電子顕微鏡鏡筒である、請求項13に記載の装置。 【課題】 本発明は、相関顕微鏡観察を実行する−より詳細には有孔性カーボングリッド上の試料に対して行われる−ときに用いられる蛍光顕微鏡によってTEMグリッド(12)上の試料の一部を検査する方法に関する。内部に試料材料を含むガラス状の氷を撮像するときに問題が起こる。氷が使用される光によって加熱されるためである。【解決手段】 本発明は、氷はほとんど光を吸収しないので特にカーボン支持膜(16)での吸収が加熱に関与するという知見に基づいている。前記蛍光顕微鏡の照射を前記試料の部分のうち前記カーボン支持膜内の孔(18)の上に存在する部分に局在化することによって、前記氷の加熱が低下する。前記局在化はたとえば、前記光をLCD型の空間光変調器に通過させることによって実現されてよい。【選択図】 図1B