タイトル: | 公開特許公報(A)_スイゼンジノリ由来多糖体を用いた胃粘膜障害を軽減する溶液組成物 |
出願番号: | 2014002415 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 31/737,A61K 36/02,A61P 1/04 |
有馬 英俊 本山 敬一 東 大志 大塚 高幸 佐藤 清明 金子 慎一郎 JP 2015131770 公開特許公報(A) 20150723 2014002415 20140109 スイゼンジノリ由来多糖体を用いた胃粘膜障害を軽減する溶液組成物 国立大学法人 熊本大学 504159235 株式会社オジックテクノロジーズ 598062952 グリーンサイエンス・マテリアル株式会社 307033763 大澤 健一 100102015 有馬 英俊 本山 敬一 東 大志 大塚 高幸 佐藤 清明 金子 慎一郎 A61K 31/737 20060101AFI20150630BHJP A61K 36/02 20060101ALI20150630BHJP A61P 1/04 20060101ALI20150630BHJP JPA61K31/737A61K35/80 ZA61P1/04 15 2 OL 15 4C086 4C088 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA26 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA17 4C086MA52 4C086NA14 4C086ZA68 4C088AA12 4C088AC16 4C088BA12 4C088BA27 4C088BA34 4C088CA03 4C088MA17 4C088MA52 4C088NA14 4C088ZA68 本発明は、スイゼンジノリ由来多糖体を含む胃粘膜障害を軽減する溶液組成物に関する。本発明はまた、スイゼンジノリ由来多糖体を含む胃潰瘍の治療または予防剤に関する。 サクランは、日本固有の食用藍藻であるスイゼンジノリから抽出される超高分子多糖体である。サクラン(スイゼンジノリ多糖体)は、多くの硫酸基とカルボン酸基、アミノ基を有する両性電解質である。また、サクランは溶液中で濃度に応じて分子構造が変化し、低濃度領域ではナノメートルサイズの粒子状で存在するが、濃度の上昇に伴い、サクラン分子鎖が互いに相互作用し、液晶構造を形成する。 一方、サクランの化学構造は、抗炎症作用を含む様々な生理活性を有するグルコサミノグリカンと類似していることから、抗炎症作用および抗アレルギー作用を示す可能性が考えられている。本発明者らにより、サクランを、テトラデカノイルホルボールアセテート(TPA)誘発性耳介皮膚炎症モデルマウスおよびカラゲニン誘発性足嚥浮腫モデルラットに塗布したところ、抗炎症作用を示すことが明らかにされている(非特許文献1)。また、アトピー性皮膚炎マウスモデルに対してサクランが抗炎症作用を示すことが報告されている(非特許文献2)。さらに、三価金属低減スイゼンジノリ由来多糖類を含む抗アレルギー性皮膚炎剤が提案されている(特許文献1)。これらの皮膚炎症に対するサクランの効果は、サクランの皮膜形成能や好中球浸潤抑制効果によると考えられる。 しかし、上記のサクランの抗炎症または抗アレルギー作用は、塗布による外的適用による効果であり、それ以外の投与経路、例えば経口投与した場合のサクランの効果については報告がない。さらに、抗炎症または抗アレルギー作用以外の作用についても報告がない。 インドメタシン等の非ステロイド抗炎症剤(NSAID)は、優れた解熱鎮痛抗炎症作用を有することが知られており、広範囲に使用され、感冒などの症状にも広く処方されている。しかし、NSAIDを経口投与した場合には、胃粘膜障害を引き起こし、しばしば胃炎や胃潰瘍を誘発することが懸念されている。そのため、イブプロフェンやサリチル酸に糖類を添加して、胃粘膜障害を軽減した医薬組成物が提案されている(特許文献2、特許文献3、特許文献4)。 また、胃痛や胃の不快感、胸焼けに効果があるサプリメントとして、ビタミンAが知られている。ビタミンAには胃の粘膜細胞を正常な状態に保つだけでなく、炎症や潰瘍を修復する働きもあると考えられているが、過剰摂取による頭痛や吐き気、肝機能障害などの副作用発現のリスクがある。さらに、体内で必要に応じてビタミンAに変換されるβ-カロチンも知られているが、吸収促進のために、亜鉛やマグネシウムなどの他のミネラル類との摂取も求められる。WO2011/01396号公報特開2005−35995号公報特開2005−139172号公報特開2005−343886号公報渡邊啓、本山敬一、東大志、金子慎一郎、有馬英俊、「カラゲニン誘発性足蹠浮腫モデルラットにおけるスイゼンジノリ由来多糖体サクランの炎症抑制作用」、第5回シクロデキストリンワークショップ講演要旨集、熊本、10/27-28 (2012)Ngatsu et al., Ann. Allergy Athma Immunol., 108, 117-122, 2012. インドメタシンなどの非ステロイド性抗炎症薬は、広く服用されているが、胃粘膜障害を引きおこし、しばしば胃炎や胃潰瘍を誘発するので、そのような胃における障害を軽減でき、あるいは予防または治療できる安全性に優れる経口投与組成物が望まれていた。 本発明の一つの目的は、安全性の高い胃粘膜障害を軽減できる組成物を提供することである。 本発明の他の一つの目的は、消化性潰瘍を抑制(予防または治療)する安全性の高い組成物を提供することである。 本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究をした結果、食用藍藻であるスイゼンジノリから抽出された多糖体であるサクランが、非ステロイド性抗炎症剤による胃粘膜障害さらには胃潰瘍の発症を有意に抑制することを見出して本発明を完成した。 本発明のサクランの胃粘膜障害軽減効果または胃潰瘍抑制効果には至適な濃度が存在し、サクランをかかる至適濃度で用いることにより特に優れた効果を発揮できる。 本発明は以下のものを含む。(1)スイゼンジノリ由来多糖体を含有する胃粘膜障害を軽減する経口投与用溶液組成物。(2)前記胃粘膜障害が非ステロイド性抗炎症剤による胃粘膜障害である前記(1)に記載の経口投与用溶液組成物。(3)上記胃粘膜障害が胃潰瘍である、胃潰瘍を抑制する前記(2)に記載の経口投与用溶液組成物。(4)前記非ステロイド性抗炎症剤が、アスピリン、サリチル酸塩、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、イブプロフェン、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、オキサプロゼン、ケトロラク、ナブメトン、メクロフェナミック、ピロキシカム、ジフルニサル、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、COX2阻害剤、アセトアミノフェノン、またはその混合物および組合せからなる群より選ばれる、前記(2)または(3)に記載の経口投与用溶液組成物。(5)前記経口投与用溶液組成物が、スイゼンジノリ由来多糖体を0.1%超、2.0%未満の濃度で含む前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の経口投与用溶液組成物。(6)スイゼンジノリ由来多糖体の濃度が、約0.5%〜約1.0%である前記(5)に記載の経口投与用溶液組成物。(7)前記経口投与用溶液組成物が、健康補助食品または医薬品である前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の経口投与用溶液組成物。(8)非ステロイド抗炎症剤が投与された患者に投与されることを特徴とする前記(7)に記載の経口投与用溶液組成物。(9)非ステロイド抗炎症剤と同時に投与されることを特徴とする前記(8)に記載の経口投与用溶液組成物。(10)非ステロイド抗炎症剤を投与した後に投与されることを特徴とする前記(8)に記載の経口投与用溶液組成物。(11)非ステロイド抗炎症剤を投与する前に投与されることを特徴とする前記(8)に記載の経口投与用溶液組成物。(12)非ステロイド抗炎症剤とスイゼンジノリ由来多糖体を含有する経口液剤。(13)前記スイゼンジノリ由来多糖体の濃度が、0.1%超、2.0%未満の濃度である前記(12)に記載の経口液剤。(14)前記スイゼンジノリ由来多糖体の濃度が、約0.5%〜約1.0%である前記(13)に記載の経口液剤。(15)前記非ステロイド性抗炎症剤が、アスピリン、サリチル酸塩、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、イブプロフェン、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、オキサプロゼン、ケトロラク、ナブメトン、メクロフェナミック、ピロキシカム、ジフルニサル、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、COX2阻害剤、アセトアミノフェノン、またはその混合物および組合せからなる群より選ばれる、前記(12)〜(14)のいずれか一つに記載の経口液剤。(16)胃粘膜障害をもつまたは生じるリスクをもつ哺乳類(好ましくはヒト)に対して、有効量のスイゼンジノリ由来多糖体を含有する溶液組成物を経口投与することを含む、胃粘膜障害を軽減する方法。(17)前記胃粘膜障害が非ステロイド性抗炎症剤による胃粘膜障害である前記(16)に記載の胃粘膜障害を軽減する方法。(18)上記胃粘膜障害が胃潰瘍である前記(16)に記載の胃粘膜障害を軽減する方法(19)前記胃粘膜障害をもつまたは生じるリスクをもつヒトが、非ステロイド抗炎症剤が投与された患者である、前記(16)に記載の胃粘膜障害を軽減する方法。(20)前記スイゼンジノリ由来多糖体を含有する溶液組成物を、非ステロイド抗炎症剤と同時に患者に投与する、前記(19)に記載の胃粘膜障害を軽減する方法。(21)前記スイゼンジノリ由来多糖体を含有する溶液組成物を、非ステロイド抗炎症剤を投与した後に患者に投与する、前記(19)に記載の胃粘膜障害を軽減する方法。(22)前記スイゼンジノリ由来多糖体を含有する溶液組成物を、非ステロイド抗炎症剤を投与する前に患者に投与する、前記(19)に記載の胃粘膜障害を軽減する方法。(23)前記非ステロイド性抗炎症剤が、アスピリン、サリチル酸塩、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、イブプロフェン、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、オキサプロゼン、ケトロラク、ナブメトン、メクロフェナミック、ピロキシカム、ジフルニサル、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、COX2阻害剤、アセトアミノフェノン、またはその混合物および組合せからなる群より選ばれる、前記(17)〜(22)のいずれか一つに記載の胃粘膜障害を軽減する方法。(24)前記溶液組成物が、スイゼンジノリ由来多糖体を0.1%超、2.0%未満の濃度で含む前記(16)〜(23)のいずれか一つに記載の胃粘膜障害を軽減する方法。(25)スイゼンジノリ由来多糖体の濃度が、約0.5%〜約1.0%である前記(24)に記載の胃粘膜障害を軽減する方法。 本発明のスイゼンジノリ由来多糖体を含む経口投与用の溶液組成物は、胃粘膜障害、特には、非ステロイド抗炎症剤により誘発される胃粘膜障害を軽減でき、さらには、本発明の組成物は安全性が高い。インドメタシン誘発性胃潰瘍モデルに対するサクラン同時投与の影響を確認した結果である。胃を大彎に沿って切開した後、撮影した結果である。図1の撮影した胃潰瘍の面積を測定したグラフである。インドメタシン誘発性胃潰瘍モデルに対するサクラン前処理の影響を確認した結果である。胃を大彎に沿って切開した後、撮影した結果である。図3の撮影した胃潰瘍の面積を測定したグラフである。インドメタシン誘発性胃潰瘍モデルに対するサクラン後処理の影響を確認した結果である。胃を大彎に沿って切開した後、撮影した結果である。図5の撮影した胃潰瘍の面積を測定したグラフである。 本発明で用いられるスイゼンジノリ由来多糖体は、スイゼンジノリ(Aphanothece sacrum)から抽出できる硫酸化多糖類であり、その平均分子量は、一般には約2000万と報告されているが、スイゼンジノリから常法に従って抽出されるものであれば特に制限がなく、好ましくは平均分子量が500万以上、より好ましくは平均分子量が1000万以上、さらに好ましくは平均分子量が2000万以上の硫酸化多糖類である。 スイゼンジノリ(Aphanothece sacrum)は、多数のマユ型(大きさ:3.5〜4.0μ×6〜7μ)の単細胞が寒天質の中に埋没する状態で群体を形成する淡水性藍藻類であり、九州地方の熊本県、福岡県にのみ生育が確認されている。サクランは、ヘキソース構造を持つ糖構造体およびペントース構造を持つ糖構造体がα−グリコシド結合またはβ−グリコシド結合により直鎖状または分岐鎖状に連結した糖鎖ユニットの繰り返し構造を持ち、前記糖鎖ユニットが糖構造体として硫酸化ムラミン酸を含み、かつ、前記糖鎖ユニットにおいては、水酸基100個当たり2.7個以上の水酸基が硫酸化され、あるいは全元素中で硫黄元素が1.5重量%以上を占める糖誘導体を含むことに特徴を有する。 サクランは、糖構造体として硫酸化ムラミン酸を含み、且つ、少なくとも下記式:(式はヘキソースと、ヘキソースと、N−アセチルムラミン酸との3糖構造であることを示し、R、R’は糖を示し、式中の任意の−OHが−OSO3またはOCH3となっているものを含む。)で示される配列を持つ3糖構造と、下記1)〜6)に列挙する配列:1)ヘキソースと、キシロースまたはアラビノースであるペントースとの2糖構造、2)ヘキソースと、フコースまたはラムノースであるデオキシヘキソースとの2糖構造、3)ペントースと、ペントースとの2糖構造、4)ペントースとデオキシヘキソースとの2糖構造、5)ヘキソサミンとヘキソサミンとの2糖構造、6)グルクロン酸またはガラクツロン酸であるウロン酸と、デオキシヘキソースとの2糖構造、を持つ2糖構造の全てを含む糖誘導体である。 スイゼンジノリからサクランを抽出する方法の一例は、例えば、国際公開WO2008/062574号に記載されている。例えば、80℃の0.1N−NaOH水溶液にスイゼンジノリを入れて数時間攪拌することによってスイゼンジノリからサクランを抽出できる。また、他の一例としては、スイゼンジノリの水分散液をオートクレーブ中において135℃で30分間加熱することによってスイゼンジノリからサクランを抽出できる。抽出されたサクランは、遠心分離、ろ過、アルコール洗浄などによって精製してもよい。また、スイゼンジノリからサクランを抽出する前に、スイゼンジノリを凍結したのち融解させ、その後に色素を除去する工程を行ってもよい。 このように、サクランは、酸性多糖類であり、アルカリ溶液を用いることでスイゼンジノリから抽出できる。スイゼンジノリから抽出されるサクランは、例えば、グリーンサイエンス・マテリアル(株)から入手することができる。 本明細書で「約」というときは、四捨五入してその数値になる範囲を含む意味で用いられる。 また、本明細書で、「A〜B」というときは、下限としてAを含み、上限としてBを含む意味で用いられる。 本発明の経口投与用溶液組成物とは、経口から摂取可能な溶液組成物を意味し、特に断りのない限り、液状溶液、懸濁溶液、半ゲル状溶液、ゲル状溶液などの状態の溶液も含む意味で用いられる。また、本発明の経口投与用溶液組成物の使用される態様としては、これに限定されないが、例えば、医薬品(特に、液剤またはゼリー剤)、ドリンク剤、飲料、ゼリー状食品を含む意味で用いられる。 本発明の経口投与用溶液組成物または経口液剤(以下、まとめて単に「本発明の溶液組成物」という場合がある)におけるスイゼンジノリ多糖誘導体の濃度には至適濃度があり、好ましくは0.1%超、2.0%未満、より好ましくは、0.3%〜1.5%、さらに好ましくは、0.5%〜1.0%である。スイゼンジノリ多糖体が溶液中にこの濃度にて存在することにより、経口より投与された場合に、特に優れた胃粘膜障害の軽減効果および/または胃潰瘍の抑制効果を有する。 本発明の溶液組成物は、用途に応じて任意の成分を含むことができ、例えば、甘味料、芳香剤、着色剤、保存剤、安定剤、懸濁化剤、グリセリン、ソルビットまたは果汁を含んでもよい、 本発明において、「胃粘膜障害」とは、急性および慢性胃炎からくる胃粘膜病変(糜爛、出血、浮腫)、胃潰瘍、および十二指腸を含む上部消化管の障害を意味する。 本発明において非ステロイド抗炎症剤とは、シクロオキシゲナーゼ活性を阻害し、プロスタグランジンの生合成を抑制する薬理作用機序を有するものを意味し、これに限定されないが、例えば、アスピリン、その他のサリチル酸塩、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、イブプロフェン、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、オキサプロゼン、ケトロラク、ナブメトン、メクロフェナミック、ピロキシカム、ジフルニサル、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、COX2阻害剤、アセトアミノフェノンを含む。本発明において非ステロイド抗炎症剤とは、好ましくは、上記の物質、またはその混合物および組合せからなる群より選ばれ、特に好ましくは、アスピリン、その他のサリチル酸塩、インドメタシン、イブプロフェン、ロキソプロフェンから選ばれる。 また、サリチル酸類は、例えば、アスピリン、アスピリンアルミニウム、サリチル酸ナトリウム、サリチルアミド、サザピリン、ジフルニサル、エテンザミド、それらの塩またはそれらの水和物をあげることができる。 本発明の溶液組成物は、胃粘膜障害または胃潰瘍の予防および治療のいずれにも用いることができる。予防の目的に用いる場合は、非ステロイド抗炎症剤を服用する前に、或いは非ステロイド抗炎症剤の服用と同時に本発明の溶液組成物を投与すればよい。同時に投与する場合は、非ステロイド抗炎症剤とスイゼンジノリ由来多糖体を含む経口液剤とすることができ、それも本発明の一部である。治療に用いる場合は、胃粘膜障害または胃潰瘍が発症した後に、本発明の溶液組成物を投与すればよい。 本発明の溶液組成物を投与(または摂取)する回数やサイクルは特に制限がなく、毎日、例えば1日1回、2回または3回、投与しても良く、また数日を開けて投与してもよい。本発明の溶液組成物は安全性に優れているので、長期投与が可能である。 また、非ステロイド抗炎症剤を服用している間に本発明の溶液組成物を投与する場合は、非ステロイド抗炎症剤と同時に投与することも、あるいは間隔を空けて投与することもできる。例えば、非ステロイド抗炎症剤を食後に服用する場合は、本発明の溶液組成物を食間に投与することも可能である。 本発明の溶液組成物は、非ステロイド抗炎症剤を長期間にわたり服用する必要のある患者に対して特に有用である。 本発明の非ステロイド抗炎症剤とスイゼンジノリ由来多糖体を含む経口液剤における、非ステロイド抗炎症剤の投与量は、その種類、患者の状態、年齢その他の要因に応じて適宜変更することができるが、例えば、イブプロフェンの場合は、1日当たりの投与量は、20mg〜2000mg、好ましくは100mg〜1000mgであり、アスピリンやサリチル酸塩の場合は、1日当たりの投与量は、20mg〜2000mg、好ましくは30mg〜1000mgであり、インドメタシンの場合は、1日当たりの投与量は、10mg〜400mg、好ましくは20mg〜200mgであり、ロキソプロフェンの場合は、1日当たりの投与量は、10mg〜400mg、好ましくは20mg〜200mgである。 本発明のスイゼンジノリ由来多糖体は、天然物由来のアニオン性多糖体であるので、安全性に優れており、加えて、熱に対して比較的安定であり、オートクレーブ滅菌処理を行うことが可能であり、扱いやすく、健康補助食品や医薬用途に適しているという利点を有する。 以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例1:インドメタシン誘発性胃潰瘍に対するサクランの効果(同時処理) インドメタシン(IND)誘発性胃潰瘍モデルマウスに対するサクラン同時投与の影響、及び胃潰瘍抑制に至適なサクラン濃度について検討を行った。(サクラン水溶液の調製) サクラン(6,30,60,120mg)(グリーンサイエンス・マテリアル(株)より入手、(株)オジックテクノロジーズ製)またはヒアルロン酸(HA),フコイダン,β−グルカン(60mg)に水3mLを加えて加温(80℃,1h)した後、ホモジナイズ(24,000rpm,20s)して、サクラン(0.2,1,2,4%)またはHA,フコイダン,β−グルカン(2%)水溶液を調製した。(IND含有懸濁液の調製) IND(60mg)(東京化成工業(株)から入手)をアルミナ乳鉢で10分間練合した後、メチルセルロース(400mg)を少量ずつ加えて混練した。次いで、それを水20mLに添加し、ホモジナイズ(24,000rpm,20s)と氷冷を5回繰り返し、IND(3mg/mL)含有懸濁液を調製した。これをサクラン非含有懸濁液(I)とする。(サクラン水溶液とIND懸濁液の混合) サクラン含有IND懸濁液の調製:(I)の懸濁液3mLを各サクラン水溶液3mLに添加し、ホモジナイズ(24,000rpm,20s)と氷冷を5回繰り返し、サクラン(0.1,0.5,1,2%)/IND(1.5mg/mL)またはHA,フコイダン,β−グルカン(1%)/IND(1.5mg/mL)含有懸濁液を調製した。(サクラン非含有IND懸濁液の調製) (I)の懸濁液3mLに水3mLを添加し、ホモジナイズ(24,000rpm,20s)と氷冷を5回繰り返し、IND(1.5mg/mL)含有懸濁液を調製した。(懸濁液投与・胃潰瘍面積の測定) 18時間絶食したC57BL/6マウス(6〜8週齡,雄)に各懸濁液を経口投与(IND量として15mg/kg)し、8時間絶食・絶水した。その後に摘出した胃にホルマリンを注入し、24時間固定後、胃を大彎に沿って切開し、DinoCapture(AnMo Electronics社製)を用いて撮影し、胃潰瘍面積を測定した。撮影した結果を図1に、胃潰瘍面積を図2に示す。 0.5%および1%サクランの同時投与により、INDによる胃潰瘍面積の上昇は有意に抑制され、1%サクランの同時投与が最も高い胃潰瘍抑制効果を示した。さらに、1%サクランの胃潰瘍抑制効果は、同濃度のHA、フコイダン、β−グルカンよりも優れていた。実施例2:インドメタシン誘発性胃潰瘍に対するサクランの効果(前処理) IND誘発性胃潰瘍モデルマウスに対するサクラン前処理の影響について検討した。(サクラン水溶液の調製) サクラン,フコイダン,β−グルカン(30mg)に水3mLを加えて加温(80℃,1h)し、ホモジナイズ(24,000rpm,20s)し、サクラン,フコイダン,β−グルカン(1%)水溶液を作製した。(IND含有懸濁液の調製) IND(30mg)をアルミナ乳鉢で10分間練合した後、メチルセルロース(200mg)を少量ずつ加えて混練した。次いで、それを水20mLに添加し、ホモジナイズ(24,000rpm,20s)と氷冷を5回繰り返し、IND(1.5mg/mL)含有懸濁液を調製した。(懸濁液投与・胃潰瘍面積の測定) 17時間絶食したC57BL/6マウス(6〜8週齡,雄)にサクラン,フコイダン,β−グルカン水溶液を(マウスの体重(g))×10μLを経口投与した。1時間後に、IND含有懸濁液を経口投与した(IND量として15mg/kg)。次いで、8時間絶食・絶水した後、摘出した胃にホルマリンを注入し、24時間固定後、胃を大彎に沿って切開し、DinoCaptureを用いて撮影し、胃潰瘍面積を測定した。撮影した結果を図3に、胃潰瘍面積を図4に示す。 1%サクランの前処理により、INDによる胃潰瘍面積の上昇は有意に抑制され、その効果はβ−グルカンと同等であった。実施例3:インドメタシン誘発性胃潰瘍に対するサクランの効果(後処理) IND誘発性胃潰瘍モデルマウスに対するサクラン後処理の影響について検討した。(サクラン水溶液の調製) サクラン(30mg)に水3mLを加えて加温(80℃,1h)した後、ホモジナイズ(24,000rpm,20s)し、サクラン(1%)水溶液を調製した。(IND含有懸濁液の調製) IND(30mg)をアルミナ乳鉢で10分間練合した後、メチルセルロース(200mg)を少量ずつ加えて混練した。次いで、それを水20mLに添加し、ホモジナイズ(24,000rpm,20s)と氷冷を5回繰り返し、IND(1.5mg/mL)含有懸濁液を調製した。(懸濁液投与・胃潰瘍面積の測定) 18時間絶食したC57BL/6マウス(6〜8週齡,雄)にIND含有懸濁液を経口投与した(IND量として15mg/kg)。6時間後からサクラン水溶液を(マウスの体重(g))×10μLで1日1回経口投与した(3日間)。最後の投与から4時間後に胃を摘出し、摘出した胃にホルマリンを注入し、24時間固定後、胃を大彎に沿って切開し、DinoCaptureを用いて撮影し、胃潰瘍面積を測定した。撮影した結果を図5に、胃潰瘍面積を図6に示す。 1%サクラン後処理により、INDによる胃潰瘍面積の上昇は有意に抑制された。 上記の記載は、本発明の目的および対象を単に説明するものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。添付の特許請求の範囲から離れることなしに、記載された実施態様に対しての、種々の変更および置換は、本明細書に記載された教示より当業者にとって明らかである。 本発明のスイゼンジノリ由来多糖体を含む経口投与用溶液組成物は、胃粘膜障害の軽減や胃潰瘍の抑制効果をもち、また安全性に優れており、有用である。 スイゼンジノリ由来多糖体を含有する胃粘膜障害を軽減する経口投与用溶液組成物。 前記胃粘膜障害が非ステロイド性抗炎症剤による胃粘膜障害である請求項1に記載の経口投与用溶液組成物。 上記胃粘膜障害が胃潰瘍である、胃潰瘍を抑制する請求項2に記載の経口投与用溶液組成物。 前記非ステロイド性抗炎症剤が、アスピリン、サリチル酸塩、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、イブプロフェン、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、オキサプロゼン、ケトロラク、ナブメトン、メクロフェナミック、ピロキシカム、ジフルニサル、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、COX2阻害剤、アセトアミノフェノン、またはその混合物および組合せからなる群より選ばれる、請求項2または3に記載の経口投与用溶液組成物。 前記経口投与用溶液組成物が、スイゼンジノリ由来多糖体を0.1%超、2.0%未満の濃度で含む請求項1〜4のいずれか一つに記載の経口投与用溶液組成物。 スイゼンジノリ由来多糖体の濃度が、約0.5%〜約1.0%である請求項5に記載の経口投与用溶液組成物。 前記経口投与用溶液組成物が、健康補助食品または医薬品である請求項1〜6のいずれか一つに記載の経口投与用溶液組成物。 非ステロイド抗炎症剤が投与された患者に投与されることを特徴とする請求項7に記載の経口投与用溶液組成物。 非ステロイド抗炎症剤と同時に投与されることを特徴とする請求項8に記載の経口投与用溶液組成物。 非ステロイド抗炎症剤を投与した後に投与されることを特徴とする請求項8に記載の経口投与用溶液組成物。 非ステロイド抗炎症剤を投与する前に投与されることを特徴とする請求項8に記載の経口投与用溶液組成物。 非ステロイド抗炎症剤とスイゼンジノリ由来多糖体を含有する経口液剤。 前記スイゼンジノリ由来多糖体の濃度が、0.1%超、2.0%未満の濃度である請求項12に記載の経口液剤。 前記スイゼンジノリ由来多糖体の濃度が、約0.5%〜約1.0%である請求項13に記載の経口液剤。 前記非ステロイド性抗炎症剤が、アスピリン、サリチル酸塩、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、イブプロフェン、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、オキサプロゼン、ケトロラク、ナブメトン、メクロフェナミック、ピロキシカム、ジフルニサル、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、COX2阻害剤、アセトアミノフェノン、またはその混合物および組合せからなる群より選ばれる、請求項12〜14のいずれか一つに記載の経口液剤。 【課題】本発明の目的は、インドメタシンなどの非ステロイド抗炎症剤により誘発される胃粘膜障害を軽減できる安全性の高い組成物を提供することである。本発明の他の一つの目的は、消化性潰瘍を抑制(予防または治療)できる安全性の高い医薬品を提供することである。【解決手段】本発明により、食用藍藻であるスイゼンジノリから抽出された多糖体であるサクランを含む、非ステロイド抗炎症剤による胃粘膜障害を軽減でき、さらには胃潰瘍の発症を有意に抑制できる経口投与用溶液組成物が提供される。また、本発明の溶液組成物による胃粘膜障害軽減効果または胃潰瘍抑制効果には至適な濃度が存在し、サクランをかかる至適濃度で用いることにより優れた効果を発揮できる。【選択図】図2